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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146150
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガス製造システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20241004BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20241004BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D61/00
C01B32/40
B01D53/04 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058882
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 友章
(72)【発明者】
【氏名】海野 峻太郎
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
(72)【発明者】
【氏名】尾角 英毅
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄志
【テーマコード(参考)】
4D006
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MB04
4D006MC02
4D006MC03
4D006PA04
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB65
4D006PC80
4D012BA01
4D012BA03
4D012CA03
4D012CC08
4D012CD02
4D012CG01
4D012CG03
4D012CH08
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC02
4G146JC12
4G146JD02
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】水蒸気分離膜を有する膜反応器を備えるガス製造システムにおいて、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を有効に利用する。
【解決手段】ガス製造システムは、二酸化炭素及び水素を含む原料から目的生成物及び水蒸気を生成する反応を促進する触媒が充填された反応室と、スイープガスとして水素が流れるスイープガス流路と、反応室とスイープガス流路とを隔て、水蒸気を選択的に透過させる水蒸気分離膜とを有する膜反応器と、二酸化炭素を選択的に吸着する二酸化炭素吸着材と、スイープガス流路から排出された水蒸気を含む副生ガスを二酸化炭素吸着材へ送給する副生ガスラインとを備え、副生ガスに含まれる水蒸気で二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を脱着させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び水素を含む原料から目的生成物及び水蒸気を生成する反応を促進する触媒が充填された反応室と、スイープガスとして水素が流れるスイープガス流路と、前記反応室と前記スイープガス流路とを隔て、水蒸気を選択的に透過させる水蒸気分離膜とを有する膜反応器と、
二酸化炭素を選択的に吸着する二酸化炭素吸着材と、
前記スイープガス流路から排出された水蒸気を含む副生ガスを前記二酸化炭素吸着材へ送給する副生ガスラインとを備え、
前記副生ガスに含まれる水蒸気で前記二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を脱着させるように構成されている、
ガス製造システム。
【請求項2】
前記膜反応器の前記反応室から排出された前記目的生成物と未反応の二酸化炭素とを含む主生成ガスを前記二酸化炭素吸着材へ送給する主生成ガスラインを、更に備え、
前記主生成ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着材に吸着させることによって前記主生成ガスから二酸化炭素を選択的に分離するように構成されている、
請求項1に記載のガス製造システム。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸着材から脱着した二酸化炭素を前記原料として前記膜反応器へ送給する二酸化炭素供給ラインを、更に備える、
請求項1に記載のガス製造システム。
【請求項4】
前記触媒が二酸化炭素及び水素から前記目的生成物である一酸化炭素と水蒸気を生成する逆水性ガスシフト反応を生じさせる逆水性ガスシフト反応用触媒である、
請求項1乃至3のいずれかに記載のガス製造システム。
【請求項5】
前記触媒が二酸化炭素及び水素から前記目的生成物であるメタンと水蒸気を生成するメタネーション反応を生じさせるメタネーション反応用触媒である、
請求項1乃至3のいずれかに記載のガス製造システム。
【請求項6】
二酸化炭素及び水素を含む原料を反応室へ供給し、前記原料を触媒下で反応させて目的生成物及び水蒸気を生成すること、
生成された水蒸気を水蒸気分離膜で前記目的生成物から選択的に分離すること、及び、
分離された水蒸気を二酸化炭素吸着材へ供給して二酸化炭素を吸着している前記二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を脱着させること、を含む、
ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素と水素を原料としてガスを製造するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反応と分離とを同時に行う膜反応器が知られている。膜反応器では、反応場と反応系外とが分離膜で隔てられており、反応場で原料の反応により生じた生成物或いは副生物が選択的に分離膜を透過して反応系外へ分離除去されることにより、原料の反応が促進される。特許文献1は、この種の膜反応器を開示する。
【0003】
特許文献1では、ケーシングの内部に水蒸気分離膜と触媒とを配置し、一酸化炭素と水蒸気を原料として二酸化炭素とを水素を生成する水性ガスシフト反応を進行させながら、生成された水蒸気を水蒸気分離膜で選択的に反応場から分離する。水蒸気は高温の状態で分離され、分離された水蒸気は凝縮させることなく、水蒸気の状態で原料として循環使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-50129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、水蒸気分離膜を備える膜反応器では、多量の水蒸気を高温の状態で分離できる。しかし、この水蒸気は、上記のように循環使用する以外に有効活用できていなかった。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水蒸気分離膜を有する膜反応器を備えるガス製造システムにおいて、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を有効に利用するものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るガス製造システムは、
二酸化炭素及び水素を含む原料から目的生成物及び水蒸気を生成する反応を促進する触媒が充填された反応室と、スイープガスとして水素が流れるスイープガス流路と、前記反応室と前記スイープガス流路とを隔て、水蒸気を選択的に透過させる水蒸気分離膜とを有する膜反応器と、
二酸化炭素を選択的に吸着する二酸化炭素吸着材と、
前記スイープガス流路から排出された水蒸気を含む副生ガスを前記二酸化炭素吸着材へ送給する副生ガスラインとを備え、
前記副生ガスに含まれる水蒸気で前記二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を脱着させるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水蒸気分離膜を有する膜反応器を備えるガス製造システムにおいて、水蒸気分離膜で分離された高温の水蒸気を有効に利用するものを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係るガス製造システムの概略構成図である。
図2図2は、膜反応器の概略構成図である。
図3図3は、二酸化炭素分離器の概略構成図である。
図4図4は、第1実施形態の変形例1に係るガス製造システムの概略構成図である。
図5図5は、本開示の第2実施形態に係るガス製造システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。図1は本開示の第1実施形態に係るガス製造システム1の概略構成を示す図である。本実施形態に係るガス製造システム1は、水素及び二酸化炭素を含む原料から逆水性ガスシフト反応によって目的生成物である一酸化炭素を生成するものである。ガス製造システム1で製造される製品は一酸化炭素と水素を含む合成ガスであって、この合成ガスは、例えば、一酸化炭素と水素から軽油などの石油代替燃料や化学品を合成するFT合成反応の原料として用いられる。
【0011】
<ガス製造システム1の概略構成>
ガス製造システム1は、膜反応器2と、二酸化炭素分離器3と、二酸化炭素源4と、水素源5とを備える。二酸化炭素源4は、特に限定されないが、二酸化炭素が貯蔵された二酸化炭素ホルダや、二酸化炭素を排出する他のプラント等が例示される。また、水素源5は、特に限定されないが、水素が貯蔵された水素タンクや、水電解によって水素を生成する水電解装置等が例示される。
【0012】
<膜反応器2>
図2は、膜反応器2の概略構成を示す図である。図1及び図2に示すように、膜反応器2は、逆水性ガスシフト反応が行われる反応室17とスイープガスが流れるスイープガス流路18と、反応室17とスイープガス流路18を隔てる分離膜エレメント14とを備える。
【0013】
膜反応器2の容器本体10は、任意の軸方向Aに延びる両端閉塞の円筒形状を有する。容器本体10の第1端部には反応室17への入口である原料入口11が配置され、容器本体10の第1端部と反対側の第2端部には反応室17からの出口である主生成ガス出口12が配置されている。原料入口11と主生成ガス出口12は軸方向Aに離れている。
【0014】
原料入口11には二酸化炭素供給ライン20及び水素供給ライン21が接続されている。二酸化炭素供給ライン20は、二酸化炭素源4から原料入口11へ二酸化炭素を送給する。水素供給ライン21は水素源5から原料入口11へ水素を送給する。主生成ガス出口12には主生成ガスライン22が接続されている。主生成ガスライン22は、主生成ガス出口12から出た主生成ガスを二酸化炭素分離器3へ送給する。
【0015】
分離膜エレメント14は、容器本体10に挿通された中空の円筒形状を有する。分離膜エレメント14の中空部分は、反応室17から分離膜エレメント14を透過した透過ガス及びスイープガスが通過するスイープガス流路18となっている。
【0016】
分離膜エレメント14は、二酸化炭素及び一酸化炭素の通過を阻止し、水蒸気の透過を許容する水蒸気分離膜14a、いわゆる、脱水膜を含む。但し、分離膜エレメント14は、厳密に二酸化炭素及び一酸化炭素の透過を阻止するのではなく、水蒸気に対し僅かな二酸化炭素及び一酸化炭素の透過を許容するものであってよい。また、分離膜エレメント14は、厳密に水蒸気のみの透過を許容するのではなく、僅かな水素の透過を許容するものであってよい。分離膜エレメント14は、多孔質支持基材に水蒸気分離膜14aが担持されたものである。分離膜エレメント14は、特に限定されないが、分子篩作用を利用したものが例示される。水蒸気分離膜14aは、特に限定されないが、ナノ多孔質ゼオライト分離膜が例示される。ナノ多孔質ゼオライト分離膜を含む分離膜エレメント14は、セラミックス質、アルミナ質、炭素質、SiC質、SiO質、又は金属質からなる多孔質支持基材の表面にナノ多孔質ゼオライト分離膜が担持されたものである。
【0017】
分離膜エレメント14の外壁は膜反応器2内に露出している。膜反応器2の内壁と分離膜エレメント14の外壁との間は逆水性ガスシフト反応が生じる反応室17となっており、当該反応室17には水性ガスシフト反応用の触媒13が充填されている。触媒13は、逆水性ガスシフト反応に活性を示すものであれば特に限定されない。このような触媒13として、Ni,Co,Fe等のVIII族触媒、Mo等のVI族触媒、Cu系触媒などの金属錯体触媒が知られている。
【0018】
分離膜エレメント14の第1端部には、スイープガス流路18の入口であるスイープガス入口15が配置されている。分離膜エレメント14の第1端部と反対側の第2端部には、スイープガス流路18の出口であるスイープガス出口16が配置されている。スイープガス入口15とスイープガス出口16は軸方向Aに離間している。スイープガス入口15にはスイープガス供給ライン25が接続されている。スイープガス供給ライン25を通じてスイープガス入口15へスイープガスが供給される。スイープガス入口15へ供給されたスイープガスは、スイープガス流路18を通過し、分離膜エレメント14を透過してきた透過ガスを同伴して、スイープガス出口16から排出される。スイープガス出口16には副生ガスライン26が接続されている。
【0019】
原料入口11及びスイープガス入口15は、逆水性ガスシフト反応システムにおいて軸方向Aの同一側に配置されており、反応室17の気体の流れとスイープガスの流れとは略平行となる。但し、膜反応器2は、反応室17の気体の流れとスイープガスの流れが対向するように構成されていてもよい。
【0020】
スイープガスは、水素又は水素を含むガスである。本開示では、反応室17の水素の分離膜エレメント14の透過を抑制するために、スイープガスとして水素が用いられている。
【0021】
<二酸化炭素分離器3>
図3は、二酸化炭素分離器3の概略構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素分離器3は、吸着槽31、再生槽32、及び、乾燥槽33と、乾燥槽33の出口から吸着槽31の入口まで二酸化炭素吸着材30を搬送するコンベア35とを備える。
【0022】
吸着槽31、再生槽32、及び乾燥槽33の各槽は、上部の入口と底部の出口とを有し、粒状の二酸化炭素吸着材30が入口から供給されるとともに出口から排出されることによって、二酸化炭素吸着材30が槽内を上から下へ向かって所定の速度で移動する。二酸化炭素吸着材30が、処理の流れに沿って吸着槽31から乾燥槽33まで重力によって移動するように、上から吸着槽31、再生槽32、及び乾燥槽33の順に上下方向に並んで配置されている。二酸化炭素吸着材30は、複数種類のガスを含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着し、吸着した二酸化炭素を保持する機能を有する。二酸化炭素吸着材30は、例えば、二酸化炭素吸着剤として機能するアミン化合物を多孔性物質に担持させたものである。多孔性物質としては、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ、金属酸化物などが例示される。
【0023】
吸着槽31の入口には、コンベア35によって搬送されてくる二酸化炭素吸着材30が投入される。吸着槽31の下部に主生成ガスライン22の下流端部が接続されており、膜反応器2から排出された主生成ガスが主生成ガスライン22を通じて吸着槽31へ送給される。主生成ガスには、主生成物である一酸化炭素の他に、未反応の二酸化炭素及び水素が含まれる。主生成ガスは吸着槽31へ導入される前に二酸化炭素の吸着反応に適切な温度まで冷却されてもよい。二酸化炭素の吸着反応に適切な温度は、二酸化炭素吸着材30によって異なり、例えば、60℃程度である。
【0024】
吸着槽31内には、上向きに流れる主生成ガスと下向きに移動する二酸化炭素吸着材30とが連続的に接触する向流式の移動層が形成されている。主生成ガスと二酸化炭素吸着材30とが接触すると、二酸化炭素吸着材30が二酸化炭素を選択的に吸着することによって、主生成ガスから二酸化炭素が分離される。二酸化炭素が分離された主生成ガスは、吸着槽31の上部から製品ガスライン28へ排出される。一酸化炭素と水素を含む主生成ガスは、製品ガスライン28を通じて外部へ送給される。一方、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素吸着材30は、吸着槽31の出口から排出されて再生槽32へ投入される。
【0025】
再生槽32の下部には、副生ガスライン26を通じて膜反応器2から送給される副生ガスが供給される。副生ガスには、水蒸気と水素が含まれている。再生槽32では、上向きに流れる水蒸気と下向きに移動する二酸化炭素吸着材30とが連続的に接触する向流式の移動層が形成されている。水蒸気と二酸化炭素吸着材30とが接触すると、水蒸気が二酸化炭素吸着材30の表面で凝縮し、その際に凝縮熱を放出する。この凝縮熱が二酸化炭素吸着材30から二酸化炭素が離脱するためのエネルギーとして利用される。このような脱着用水蒸気の凝縮による二酸化炭素の脱着は、脱着用水蒸気と二酸化炭素吸着材30とが接触すると短時間で完了する。
【0026】
再生槽32の上部には、二酸化炭素回収ライン27が接続されている。二酸化炭素回収ライン27には、再生槽32からの二酸化炭素の排出を促すブロワやポンプが設けられていてもよい。再生槽32から二酸化炭素回収ライン27へ排出された二酸化炭素は、副生ガスに含まれる水素と共に、二酸化炭素回収ライン27及びこれと接続された二酸化炭素供給ライン20を通じて膜反応器2へ供給され、再び原料として循環利用される。また、二酸化炭素回収ライン27は、二酸化炭素ホルダと接続されていてもよい。この場合、二酸化炭素及び水素は、二酸化炭素回収ライン27を通じて二酸化炭素ホルダへ送給され、二酸化炭素ホルダに貯蔵される。この二酸化炭素ホルダは、二酸化炭素源4として使用されてもよい。
【0027】
再生槽32で二酸化炭素が脱着されて凝縮水を含んだ二酸化炭素吸着材30は、再生槽32の出口から排出されて乾燥槽33へ投入される。乾燥槽33には乾燥用ガス源39から乾燥ガスライン24を通じて乾燥用ガスが供給されており、槽内を上向きに流れる乾燥用ガスと槽内を下向きに移動する二酸化炭素吸着材30とが接触することによって、二酸化炭素吸着材30が乾燥される。なお、乾燥槽33での二酸化炭素吸着材30の乾燥は、水蒸気、熱水などの熱媒を用いて間接加熱することにより行われてもよい。
【0028】
乾燥後の二酸化炭素吸着材30は、乾燥槽33の底部からコンベア35へ排出される。二酸化炭素吸着材30は、コンベア35によって吸着槽31へ移送され、二酸化炭素吸着材30として再利用される。
【0029】
上記のガス製造システム1では、連続式の二酸化炭素分離器3を採用しているが、バッチ式の二酸化炭素分離器3が採用されてもよい。この場合、一つの処理槽に主生成ガスライン22、副生ガスライン26、乾燥ガスライン24、二酸化炭素回収ライン27、製品ガスライン28、及び乾燥排ガスライン29が接続される。そして、二酸化炭素分離時には主生成ガスライン22及び製品ガスライン28が開放され且つ残りのラインは閉止され、二酸化炭素吸着材30の再生時には副生ガスライン26及び二酸化炭素回収ライン27が開放され且つ残りのラインは閉止され、二酸化炭素吸着材30の乾燥時には乾燥ガスライン24及び乾燥排ガスライン29が開放され且つ残りのラインは閉止される。
【0030】
<ガス製造システム1によるガス製造方法>
上記のガス製造システム1を用いたガス製造方法を説明する。
【0031】
図1に示すように、スイープガス供給ライン25を通じてスイープガス入口15へスイープガスが供給される。本開示では、反応室17の水素の分離膜エレメント14の透過を抑制するために、スイープガスとして水素又は水素を含むガスが用いられている。水素源5から膜反応器2の原料入口11へ水素が供給され、二酸化炭素源4から膜反応器2の原料入口11へ二酸化炭素が供給される。このように原料入口11から膜反応器2の反応室17へ導入される原料は、水素と二酸化炭素を含む。原料の水素と二酸化炭素の混合比は、体積比で約3:1である。原料の温度は、触媒13に対応した反応に好適な温度に調整されている。反応室17では、触媒13の作用によって逆水性ガスシフト反応が生じ、生成ガスである一酸化炭素及び水蒸気が生じる。
【0032】
反応室17で生成した生成ガスの大部分は、主生成ガス出口12から主生成ガスとして主生成ガスライン22へ排出される。主生成ガスには、一酸化炭素の他、水蒸気、水素、及び二酸化炭素が含まれる。二酸化炭素は未反応の原料に由来し、水素は未反応の原料やスイープガスに由来する。主生成ガスは、主生成ガスライン22を通じて二酸化炭素分離器3へ供給される。主生成ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素分離器3で二酸化炭素吸着材30に吸着され、主生成ガスから分離される。二酸化炭素が分離された主生成ガスは、一酸化炭素の他に水素を含む製品として製品ガスライン28を通じて外部へ送られる。
【0033】
反応室17で生成した水蒸気の大部分は、分離膜エレメント14を透過してスイープガス流路18へ移動し、反応室17から分離される。反応室17の水素は、分離膜エレメント14を透過可能ではあるが、スイープガスに含まれる水素によって分離膜エレメント14の透過が抑制される。このように、原料である水素は反応室17に留まり、生成ガスである水蒸気が水蒸気分離膜14aを含む分離膜エレメント14を透過して反応室17から分離される。これにより、逆水性ガスシフト反応の順反応の反応速度が向上する。
【0034】
スイープガス流路18へ移動した水蒸気は、スイープガスに同伴してスイープガス出口16を通じてスイープガス流路18から排出される。従って、スイープガス流路18から排出された副生ガスには、水素及び水蒸気が含まれる。スイープガス出口16から排出される水蒸気の温度は、触媒13の種類によっても異なるが、例えば、約300℃である。スイープガス出口16から排出された副生ガスは、副生ガスライン26を通じて二酸化炭素分離器3へ供給される。副生ガス中の水蒸気は二酸化炭素分離器3で二酸化炭素吸着材30の再生、即ち、二酸化炭素の脱着に利用される。二酸化炭素分離器3で水蒸気によって二酸化炭素吸着材30から脱着された二酸化炭素は、副生ガスに含まれる水素と共に、二酸化炭素回収ライン27を通じて二酸化炭素ホルダ又は二酸化炭素供給ライン20へ送られる。
【0035】
<変形例1>
ここで、第1実施形態に係るガス製造システム1の変形例1について説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
図4は、第1実施形態の変形例1に係るガス製造システム1の概略構成図である。図4に示すように、第1実施形態の変形例1に係るガス製造システム1は、上記第1実施形態に係るガス製造システム1と、二酸化炭素源4が二酸化炭素ホルダ41を有し、副生ガスライン26が二酸化炭素ホルダ41へ副生ガスを送給するように構成されている点で相違する。
【0037】
二酸化炭素ホルダ41は、二酸化炭素を二酸化炭素吸着材40に吸着した状態で貯蔵している。二酸化炭素吸着材40は、二酸化炭素を選択的に吸着し、吸着した二酸化炭素を保持する機能を有する。副生ガスに含まれる水蒸気は、二酸化炭素吸着材40から二酸化炭素を脱着させるために利用される。二酸化炭素吸着材40は、固体状でも液体状でもよい。二酸化炭素吸着材40が固体状である場合には、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素吸着材40に、副生ガスライン26を介して送給された副生ガス中の水蒸気が接触することにより、二酸化炭素吸着材40から二酸化炭素が脱着される。二酸化炭素吸着材40が液体状である場合には、副生ガスの熱エネルギーで二酸化炭素吸着材40を間接的に加熱することにより、二酸化炭素吸着材40から二酸化炭素が脱着される。二酸化炭素吸着材40から脱着した二酸化炭素は、原料として二酸化炭素供給ライン20を通じて膜反応器2へ送られる。
【0038】
〔第2実施形態〕
続いて、本開示の第2実施形態に係るガス製造システム1について説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図5は本開示の第2実施形態に係るガス製造システム1の概略構成を示す図である。図5に示すように、本実施形態に係るガス製造システム1は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタネーション反応によって目的生成物であるメタンガスを合成するものである。ガス製造システム1で製造されるメタンガスは、例えば、パラキシレンの原料として用いられる。パラキシレンは、ポリエステル繊維やペットボトル用樹脂の原料となる。
【0040】
第2実施形態に係るガス製造システム1は、上記第1実施形態に係るガス製造システム1と、膜反応器2の触媒13がメタネーション反応用触媒である点で相違する。また、膜反応器2ではメタネーション反応が行われることから、原料の水素と二酸化炭素の混合比は、体積比で約4:1である。
【0041】
膜反応器2では、水素及び二酸化炭素を原料として触媒13下でメタネーション反応が生じ、メタンガスと水蒸気とが生成する。生成した水蒸気の大部分は、分離膜エレメント14を透過してスイープガス流路18へ移動し、スイープガスである水素とともに副生ガスとして膜反応器2から排出される。膜反応器2から排出された副生ガスは、二酸化炭素分離器3へ送給される。膜反応器2から排出された副生ガスは、上記の第1実施形態の変形例と同様に、二酸化炭素源4へ送給されてもよい。
【0042】
膜反応器2で生成したメタンガスは、未反応の二酸化炭素及び水素とともに主生成ガスとして膜反応器2から排出される。膜反応器2から排出された主生成ガスは、二酸化炭素分離器3で二酸化炭素が選択的に分離されたのち、製品として外部へ送られる。
【0043】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係るガス製造システム1は、
二酸化炭素及び水素を含む原料から目的生成物及び水蒸気を生成する反応を促進する触媒13が充填された反応室17と、スイープガスとして水素が流れるスイープガス流路18と、反応室17とスイープガス流路18とを隔て、水蒸気を選択的に透過させる水蒸気分離膜14aとを有する膜反応器2と、
二酸化炭素を選択的に吸着する二酸化炭素吸着材30,40と、
スイープガス流路18から排出された水蒸気を含む副生ガスを二酸化炭素吸着材30,40へ送給する副生ガスライン26とを備え、
副生ガスに含まれる水蒸気で二酸化炭素吸着材30,40から二酸化炭素を脱着させるように構成されているものである。
【0044】
これにより、膜反応器2で水素と二酸化炭素の反応によって生じて水蒸気分離膜14aによって目的生成物から分離された水蒸気を、二酸化炭素吸着材30,40からの二酸化炭素の脱着に有効に利用できる。
【0045】
本開示の第2の項目に係るガス製造システム1は、第1の項目に係るガス製造システム1において、膜反応器2の反応室17から排出された目的生成物と未反応の二酸化炭素とを含む主生成ガスを二酸化炭素吸着材30へ送給する主生成ガスライン22を、更に備え、主生成ガスに含まれる二酸化炭素を二酸化炭素吸着材30に吸着させることによって主生成ガスから二酸化炭素を選択的に分離するように構成されているものである。
【0046】
これにより、主生成ガスから二酸化炭素を分離するために必要なエネルギーを副生ガスから得ているので、水蒸気を別途生成する場合と比較してガス製造システム1全体の必要エネルギーを削減できる。
【0047】
本開示の第3の項目に係るガス製造システム1は、第1又は2の項目に係るガス製造システム1において、二酸化炭素吸着材30,40から脱着した二酸化炭素を原料として膜反応器2へ送給する二酸化炭素供給ライン20を、更に備えるものである。
【0048】
これにより、原料の二酸化炭素を膜反応器2へ供給するために必要なエネルギーを副生ガスから得ているので、水蒸気を別途生成する場合と比較してガス製造システム1全体の必要エネルギーを削減できる。
【0049】
本開示の第4の項目に係るガス製造システム1は、第1乃至3のいずれかの項目に係るガス製造システム1において、触媒13が二酸化炭素及び水素から目的生成物である一酸化炭素と水蒸気を生成する逆水性ガスシフト反応を生じさせる逆水性ガスシフト反応用触媒であるものである。
【0050】
本開示の第5の項目に係るガス製造システム1は、第1乃至3のいずれかの項目に係るガス製造システム1において、触媒13が二酸化炭素及び水素から目的生成物であるメタンと水蒸気を生成するメタネーション反応を生じさせるメタネーション反応用触媒であるものである。
【0051】
第4及び第5の項目に開示の通り、本開示に係るガス製造システム1は、水素及び二酸化炭素を原料とし、水蒸気分離膜14aで反応により生成した水蒸気を分離する膜反応器2を備えてガスを製造するシステムに適用できる。
【0052】
本開示の第6の項目に係るガス製造方法は、
二酸化炭素及び水素を含む原料を反応室17へ供給し、原料を触媒13下で反応させて目的生成物及び水蒸気を生成すること、
生成された水蒸気を水蒸気分離膜14aで目的生成物から選択的に分離すること、及び、
分離された水蒸気を二酸化炭素吸着材30,40へ供給して二酸化炭素を吸着している二酸化炭素吸着材30,40から二酸化炭素を脱着させること、を含むものである。
【0053】
これにより、水素と二酸化炭素の反応によって生じて水蒸気分離膜14aによって目的生成物から分離された水蒸気を、二酸化炭素吸着材30,40からの二酸化炭素の脱着に有効に利用できる。
【0054】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で2つの実施形態に纏められているが、開示された複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :ガス製造システム
2 :膜反応器
3 :二酸化炭素分離器
13 :触媒
14a :水蒸気分離膜
17 :反応室
18 :スイープガス流路
20 :二酸化炭素供給ライン
22 :主生成ガスライン
26 :副生ガスライン
30 :二酸化炭素吸着材
40 :二酸化炭素吸着材
図1
図2
図3
図4
図5