(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146157
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20241004BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20241004BHJP
B60W 40/107 20120101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/105
B60W40/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058893
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 康太
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BB03
3D241CC01
3D241DB02Z
3D241DB05Z
(57)【要約】
【課題】駐車支援中で目標速度が一定のときに自車両の不要な加減速を抑制する。
【解決手段】実施形態の駐車支援装置は、自車両の駐車の目標位置へ前記自車両を移動させるための目標速度を算出する目標速度制御部と、前記自車両の前記目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する速度フィードバック制御部と、前記目標速度が一定のときに、前記目標加速度を、絶対値が小さくなるように補正する補正処理部と、前記目標加速度に基づいて前記自車両の制駆動力を制御する車両制御部と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の駐車の目標位置へ前記自車両を移動させるための目標速度を算出する目標速度制御部と、
前記自車両の前記目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する速度フィードバック制御部と、
前記目標速度が一定のときに、前記目標加速度を、絶対値が小さくなるように補正する補正処理部と、
前記目標加速度に基づいて前記自車両の制駆動力を制御する車両制御部と、を備える駐車支援装置。
【請求項2】
前記補正処理部は、
前記目標速度が一定のときの不感帯処理モードにおいて、
前記目標加速度が予め定められた不感帯の範囲内に入っている場合には、前記目標加速度を、0に補正し、
前記目標加速度が前記不感帯の範囲内に入っていない場合には、前記目標加速度を、絶対値が所定のオフセット値だけ減るように補正する、請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記補正処理部は、前記目標速度が一定のときの不感帯処理モードから、前記目標速度が変化して、前記目標速度が一定ではないときの通常モードに切り替わる場合に、前記目標加速度の変化率が予め定められた変化率上限値を超えないように前記目標加速度を補正する、請求項1に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両(乗用車など)の駐車支援装置が研究開発され、使用されている。駐車支援装置では、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって制駆動力(制動力と駆動力)制御や操舵制御を行うことで、駐車を支援する。制駆動力制御では、例えば、FB(Feedback)制御を用いる。具体的には、例えば、まず、自車両の駐車目標位置と実位置の偏差に基づいて目標速度を算出する。次に、目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する。次に、目標加速度と実加速度の偏差に基づいて要求制駆動力を算出する。そして、要求制駆動力に基づいて自車両の制駆動力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、例えば、路面状況(段差、低摩擦路面など)や制駆動力装置(エンジン、ブレーキなど)の経年変化などの諸要因により、自車両に不要な加減速が発生することがある。そして、特に、目標速度が一定のときには、不要な加減速が発生すると、乗員が乗り心地の悪化を感じやすいので、改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、駐車支援中で目標速度が一定のときに自車両の不要な加減速を抑制することができる駐車支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、実施形態の駐車支援装置は、自車両の駐車の目標位置へ前記自車両を移動させるための目標速度を算出する目標速度制御部と、前記自車両の前記目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する速度フィードバック制御部と、前記目標速度が一定のときに、前記目標加速度を、絶対値が小さくなるように補正する補正処理部と、前記目標加速度に基づいて前記自車両の制駆動力を制御する車両制御部と、を備える。
【0007】
この構成により、目標速度が一定のときに、目標加速度を絶対値が小さくなるように補正することで、不要な加減速を抑制することができる。
【0008】
また、実施形態の駐車支援装置において、前記補正処理部は、前記目標速度が一定のときの不感帯処理モードにおいて、前記目標加速度が予め定められた不感帯の範囲内に入っている場合には、前記目標加速度を、0に補正し、前記目標加速度が前記不感帯の範囲内に入っていない場合には、前記目標加速度を、絶対値が所定のオフセット値だけ減るように補正する。
【0009】
この構成により、目標加速度が不感帯の範囲内に入っている場合には目標加速度を0に補正する。また、目標加速度が不感帯の範囲内に入っていない場合には目標加速度を絶対値が所定のオフセット値だけ減るように補正する。これにより、不要な加減速を抑制するとともに、目標加速度に対する実加速度の追従性の大幅な低下を回避することができる。
【0010】
また、実施形態の駐車支援装置において、前記補正処理部は、前記目標速度が一定のときの不感帯処理モードから、前記目標速度が変化して、前記目標速度が一定ではないときの通常モードに切り替わる場合に、前記目標加速度の変化率が予め定められた変化率上限値を超えないように前記目標加速度を補正する。
【0011】
この構成により、不感帯処理モードから通常モードに切り替わる場合に、目標加速度の変化率が大きくなりすぎて乗り心地が悪化する事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態において、車室の一部を透視した場合の車両の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車両の平面図(俯瞰図)である。
【
図3】
図3は、実施形態において、車両後方から見た場合の車両のダッシュボードの構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態の駐車支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態のECUの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態において、補正前の目標加速度と補正後の目標加速度の関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、従来技術において、各パラメータの経時的な変化の例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態において、各パラメータの経時的な変化の例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態のECUによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうちの少なくとも一つを得ることが可能である。
【0014】
本実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0015】
図1は、実施形態において、車室の一部を透視した場合の車両1の外観斜視図である。
図2は、実施形態の車両1の平面図(俯瞰図)である。
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを備えている。車室2a内には、乗員としてのドライバーの座席2bに臨む状態で、操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。
【0016】
操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールである。加速操作部5は、例えば、ドライバーの足下に位置されたアクセルペダルである。制動操作部6は、例えば、ドライバーの足下に位置されたブレーキペダルである。変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、これらの構成は、上述のものに限定されない。
【0017】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。
【0018】
また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置において手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。これらの表示装置8、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。
【0019】
モニタ装置11は、スイッチ、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12(
図3参照)が設けられている。
【0020】
図3は、実施形態において、車両後方から見た場合の車両1のダッシュボードの構成図である。
図3に例示されるように、表示装置12は、例えば、ダッシュボード24の計器盤部25に設けられ、計器盤部25の略中央で、速度表示部25aと回転数表示部25bとの間に位置されている。表示装置12の画面の大きさは、表示装置8の画面(
図1)の大きさよりも小さい。この表示装置12には、主として車両1の駐車支援に関する情報を示す画像が表示されうる。
【0021】
また、
図1及び
図2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。
【0022】
図4は、実施形態の駐車支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図4に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵するEPS13(電動パワーステアリングシステム)を有している。EPS13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。EPS13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。以下の説明においては、EPS13は、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。EPS13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、ドライバーが操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0023】
また、
図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a~15dが設けられている。
【0024】
また、ECU14は、撮像部15の画像から、車両1の周辺の路面に示された区画線等を識別し、区画線等に示された駐車区画を検出(抽出)する。
【0025】
また、
図1及び
図2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a~16dと、八つの測距部17a~17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。
【0026】
また、
図4に例示されるように、駐車支援システム100では、ほかに、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。
【0027】
車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、EPS13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0028】
ECU14は、
図4に示すように、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。
【0029】
CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の目標位置(駐車目標位置)の決定、車両1の移動経路の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。
【0030】
RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8,12で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。
【0031】
なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0032】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。
【0033】
また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、制動操作部6の可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0034】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、ドライバーによる操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの例である。
【0035】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、加速操作部5の可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0036】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、変速操作部7の可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0037】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果を、ブレーキシステム18を介して取得する。
【0038】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0039】
本実施形態では、ECU14は、ハードウェアとソフトウェア(制御プログラム)が協働することにより、駐車支援装置としての機能の少なくとも一部を実現する。
【0040】
図5は、実施形態のECU14の機能構成を示すブロック図である。ECU14は、機能構成として、位置FB(Feedback)制御部141と、速度FB制御部142と、補正処理部143と、加速度FB制御部144と、車両制御部145と、を備える。位置FB制御部141、速度FB制御部142、加速度FB制御部144は、FB(Feedback)制御として、例えば、PI(Proportional-Integral)制御を実行するが、これに限定されず、ほかに、PID(Proportional-Integral-Differential)制御などを実行してもよい。
【0041】
位置FB制御部141は、車両1の駐車の目標位置と実位置の偏差に基づいて目標速度を算出する。位置FB制御部141は、車両1の駐車の目標位置へ車両1を移動させるための目標速度を算出する目標速度制御部の例である。
【0042】
速度FB制御部142は、車両1の目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する。
【0043】
以下、
図6も併せて参照する。
図6において、縦軸は目標加速度である。
図6は、実施形態において、補正前の目標加速度と補正後の目標加速度の関係を示すグラフである。
補正処理部143は、目標速度が一定のときに、目標加速度を、絶対値が小さくなるように補正する。例えば、補正処理部143は、目標速度が一定のときの不感帯処理モードにおいて、目標加速度が予め定められた不感帯の範囲内に入っている場合には、目標加速度を、0に補正し、目標加速度が不感帯の範囲内に入っていない場合には、目標加速度を、絶対値が所定のオフセット値だけ減るように補正する。
【0044】
図6の例では、補正前の目標加速度TA11のいずれか1点の値に対して、補正処理部143による補正を行う場合、補正後の目標加速度TA12のうち横軸の位置が同じ点の値が出力される。具体的には、補正前の目標加速度TA11が不感帯の範囲(―D~D)内に入っている場合には、補正後の目標加速度TA12は0になる。なお、Dは、実験やシミュレーションなどによって予め適切な値に設定しておく。
【0045】
また、補正前の目標加速度TA11が不感帯の範囲内に入っていない場合には、補正後の目標加速度TA12は絶対値がオフセット値Dだけ減る。
【0046】
図5に戻って、また、補正処理部143は、不感帯処理モードから、目標速度が変化して、目標速度が一定ではないときの通常モードに切り替わる場合に、目標加速度の変化率が予め定められた変化率上限値を超えないように目標加速度を補正する。
【0047】
加速度FB制御部144は、車両1の目標加速度と実加速度の偏差に基づいて要求制駆動力を算出する。
【0048】
車両制御部145は、要求制駆動力に基づいて制駆動力装置300(エンジン、ブレーキシステム18など)に指示信号を出力することで、車両1の制駆動力を制御する。
【0049】
なお、車両制御部145が加速度FB制御部144の機能を含んでいてもよい。つまり、車両制御部145が目標加速度に基づいて車両1の制駆動力を制御するようにしてもよい。その場合、請求項に記載の「車両制御部」は、実施形態における加速度FB制御部44と車両制御部145に相当する。
【0050】
次に、
図7、
図8を用いて、従来技術と本実施形態での各パラメータの経時的な変化の違いについて説明する。
【0051】
図7は、従来技術において、各パラメータの経時的な変化の例を示すグラフである。(a)は速度のグラフであり、(b)は加速度のグラフである。従来技術における駐車支援では、時刻t11に駐車支援制御が開始され、目標速度TS1は、時刻t11から時刻t12まで増大し、時刻t12から時刻t13まで一定となり、時刻t13から時刻t14まで減少する。
【0052】
このとき、目標速度TS1が一定の時刻t12から時刻t13までの間に、例えば、路面状況(段差、低摩擦路面など)や制駆動力装置(エンジン、ブレーキなど)の経年変化などの諸要因により、自車両に不要な加減速が発生することがある。
図7の例では、実速度AS1と、目標加速度TA1に、ハンチング(振動)が発生しており、このとき、不図示の実加速度も不要な増減を繰り返す(つまり、不要な加減速が発生する)。このように、目標速度が一定のときに、不要な加減速が発生すると、乗員が乗り心地の悪化を感じやすいので、改善が望まれている。
【0053】
一方、
図8は、実施形態において、各パラメータの経時的な変化の例を示すグラフである。(a)は速度のグラフであり、(b)は加速度のグラフであり、(c)はモード遷移図である。本実施形態における駐車支援では、時刻t21に駐車支援制御が開始され、目標速度TS1は、時刻t21から時刻t22まで増大し、時刻t22から時刻t23まで一定となり、時刻t23から時刻t24まで減少する。この点は従来技術の場合と同様である。
【0054】
そして、目標速度TS1が一定の時刻t22から時刻t23までの間の不感帯処理モードにおいて、補正処理部143は目標加速度を絶対値が小さくなるように(
図8の例では目標加速度TA2を0に)補正する(
図6)。したがって、例えば、路面状況(段差、低摩擦路面など)や制駆動力装置(エンジン、ブレーキなど)の経年変化などの諸要因があっても、実速度AS2と、目標加速度TA2に、ハンチング(振動)が発生せず、このとき、不図示の実加速度に不要な増減は発生しない。つまり、自車両に不要な加減速が発生しない(発生しても従来技術の場合よりは小さい)ので、乗員の乗り心地の悪化が抑制される。
【0055】
次に、
図9を参照して、実施形態のECU14による処理について説明する。
図9は、実施形態のECU14による処理を示すフローチャートである。なお、この処理の間、ECU14は、適宜、車両1の目標位置、実位置、実速度、実加速度などの各種情報を算出、取得等しているものとする。
【0056】
ステップS1において、ドライバーによる操作に応じて、ECU14は、駐車支援を開始する。
【0057】
次に、ステップS2において、位置FB制御部141は、車両1の駐車の目標位置と実位置の偏差に基づいて目標速度を算出する。
【0058】
次に、ステップS3において、速度FB制御部142は、車両1の目標速度と実速度の偏差に基づいて目標加速度を算出する。
【0059】
次に、ステップS4において、補正処理部143は、目標速度が一定か否かを判定し、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合はステップS6に進む。
【0060】
ステップS5において、補正処理部143は、目標加速度を、絶対値が小さくなるように補正する(
図6)。
【0061】
次に、ステップS6において、加速度FB制御部144は、車両1の目標加速度と実加速度の偏差に基づいて要求制駆動力を算出する。
【0062】
次に、ステップS7において、車両制御部145は、要求制駆動力に基づいて制駆動力装置300に指示信号を出力することで、車両1の制駆動力を制御する。
【0063】
次に、ステップS8において、ECU14は、駐車支援を終了するか否かを判定し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合はステップS2に戻る。
【0064】
このように、本実施形態のECU14によれば、目標速度が一定のときに、目標加速度を絶対値が小さくなるように補正することで、不要な加減速を抑制することができる。なお、ここでの抑制とは、0にすることに限定されず、従来技術の場合よりも減ることを意味する。
【0065】
また、具体的には、
図6に示すように、目標加速度TA11が不感帯の範囲(-D~D)内に入っている場合には、補正後の目標加速度TA12は0になる。また、目標加速度TA11が不感帯の範囲(-D~D)内に入っていない場合には、補正後の目標加速度TA12は絶対値がオフセット値Dだけ減る。これらにより、不要な加減速を抑制するとともに、目標加速度に対する実加速度の追従性の大幅な低下を回避することができる。
【0066】
また、不感帯処理モードから通常モードに切り替わる場合に、目標加速度の変化率(躍度。加加速度)が予め定められた変化率上限値を超えないように目標加速度を補正する。これにより、加速度の変化率が大きくなりすぎて乗り心地が悪化する事態を回避できる。なお、従来から、加速度が大きくなった場合だけでなく、加速度の変化率が大きくなった場合にも、車両の乗り心地が悪化することがわかっている。
【0067】
車両1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
例えば、
図6では、補正後の目標加速度TA12を線形なグラフとしたが、非線形なグラフ(二次関数、指数関数などのグラフ)としてもよい。つまり、目標加速度を補正するときのオフセット値は、目標加速度の大きさによらず一定であることに限定されず、目標加速度の大きさに応じて変わってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両、10…操作入力部、11…モニタ装置、12…表示装置、13…EPS、14…ECU、100…駐車支援システム、141…位置FB制御部、142…速度FB制御部、143…補正処理部、144…加速度FB制御部、145…車両制御部、300…制駆動力装置