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特開2024-146163織物、発光装置および織物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146163
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】織物、発光装置および織物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/547 20210101AFI20241004BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20241004BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20241004BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20241004BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20241004BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241004BHJP
【FI】
D03D15/547
D03D1/00 Z
D06M11/83
F21V8/00 241
F21V8/00 282
D06M10/00 K
D06M10/00 Z
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058900
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】川端下 栄治
(72)【発明者】
【氏名】大山 はるか
【テーマコード(参考)】
4L031
4L048
【Fターム(参考)】
4L031AA16
4L031AB32
4L031BA04
4L031BA09
4L031CB12
4L031CB13
4L031CB14
4L048AA14
4L048AA19
4L048AB06
4L048AC02
4L048BA01
4L048CA00
4L048DA24
4L048DA25
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】よりはっきりと任意の形状の発光が可能な光ファイバーを用いた織物を提供する。
【解決手段】織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、前記コーティング、及び、前記光ファイバーの表面の一部を除去して形成される発光領域と、を有することを特徴とする織物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、
前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、
前記コーティング、及び、前記光ファイバーの表面の一部を除去して形成される発光領域と、を有することを特徴とする織物。
【請求項2】
前記コーティングは、スパッタ、グラビアコーティング、塗布、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のいずれかのコーティングであることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記発光領域において前記光ファイバーは、除去前の前記光ファイバーの直径を100%とした場合に、除去後の光ファイバーの織物の厚み方向における大きさが、50%以上95%以下になる位置まで除去されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項4】
タテ糸及びヨコ糸のいずれか一方が光ファイバーであることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項5】
前記タテ糸及び前記ヨコ糸のいずれか他方の糸が、前記光ファイバーのヤング率に対し90%以下のヤング率の糸であることを特徴とする請求項4に記載の織物。
【請求項6】
前記織物は平織、綾織、朱子織のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項7】
請求項1に記載の織物と、
前記光ファイバーの一端に対して光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、
前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、
を有する織物であって、少なくとも、前記コーティング及び前記光ファイバーの表面の一部を除去して発光領域が形成される除去対象範囲に、前記光ファイバーが含まれることを特徴とする織物。
【請求項9】
請求項1に記載の織物の製造方法であって、
織物を構成する糸として前記光ファイバーを含む前記織物の表面に、前記コーティングを形成し、
所定の形状の範囲内に含まれる前記コーティングと前記光ファイバーの表面の一部を除去し、前記所定の形状の発光領域を形成することを特徴とする織物の製造方法。
【請求項10】
前記コーティングは、スパッタ、グラビアコーティング、塗布、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のうちいずれかの方法で形成されることを特徴とする請求項9に記載の織物の製造方法。
【請求項11】
前記除去は、切削、レーザー、サンドブラストのうちいずれかの方法で行うことを特徴とする請求項9に記載の織物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーを糸として用いた織物であり、光源からの光によって発光する織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーを用いた発光する織物が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、繊維表面の研磨等により伝送される光を部分的に外に逃すことを可能として発光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-506106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような光ファイバーを用いた織物は、研磨した部分以外の光ファイバーからも光が漏出してぼんやりと発光してしまう。そのため、研磨して所定の形状の発光部分を形成しても、はっきりとその形状を浮かび上がらせることができなかった。
【0005】
本発明は、よりはっきりと任意の形状の発光が可能な光ファイバーを用いた織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
【0007】
(1) 織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、
前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、
前記コーティング、及び、前記光ファイバーの表面の一部を除去して形成される発光領域と、を有することを特徴とする織物。
【0008】
(2) 前記コーティングは、スパッタ、グラビアコーティング、塗布、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のいずれかのコーティングであることを特徴とする上記(1)に記載の織物。
【0009】
(3) 前記発光領域において前記光ファイバーは、除去前の前記光ファイバーの直径を100%とした場合に、除去後の光ファイバーの織物の厚み方向における大きさが、50%以上95%以下になる位置まで除去されていることを特徴とする上記(1)に記載の織物。
【0010】
(4) タテ糸及びヨコ糸のいずれか一方が光ファイバーであることを特徴とする上記(1)に記載の織物。
【0011】
(5) 前記タテ糸及び前記ヨコ糸のいずれか他方の糸が、前記光ファイバーのヤング率に対し90%以下のヤング率を有する糸であることを特徴とする上記(4)に記載の織物。
【0012】
(6) 前記織物は平織、綾織、朱子織のいずれかであることを特徴とする上記(1)に記載の織物。
【0013】
(7) 上記(1)に記載の織物と、
前記光ファイバーの一端に対して光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【0014】
(8) 織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、
前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、
を有する織物であって、少なくとも、前記コーティング及び前記光ファイバーの表面の一部を除去して発光領域が形成される除去対象範囲に、前記光ファイバーが含まれることを特徴とする織物。
【0015】
(9) 上記(1)に記載の織物の製造方法であって、
織物を構成する糸として前記光ファイバーを含む前記織物の表面に、前記コーティングを形成し、
所定の形状の範囲内に含まれる前記コーティングと前記光ファイバーの表面の一部を除去し、前記所定の形状の発光領域を形成することを特徴とする織物の製造方法。
【0016】
(10) 前記コーティングは、スパッタ、グラビアコーティング、塗布、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のうちいずれかの方法で形成されることを特徴とする上記(9)に記載の織物の製造方法。
【0017】
(11) 前記除去は、切削、レーザー、サンドブラストのうちいずれかの方法で行うことを特徴とする上記(9)に記載の織物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より繊細ではっきりと任意の形状の発光が可能な光ファイバーを用いた織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の織物の構成を示す構成図である。
図2】光ファイバーに直交する方向における織物の断面図である。
図3】実施形態の織物を用いた発光装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の織物について説明する。本実施形態の織物は、織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバーと、前記織物の表面に形成され前記光ファイバーから出る光を遮るコーティングと、前記コーティング、及び、前記光ファイバーの表面の一部を除去して形成される発光領域と、を有する。
【0021】
図1図3を参照して本実施形態の織物1の構成を説明する。図1は本実施形態の織物1の構成を示す構成図であり、織物1の一部を示す。図2は光ファイバー2に直交する方向(糸4に平行な方向)における織物1の断面図である。図3は本実施形態の織物1を用いた発光装置10の構成図である。織物1は、光ファイバー2と、糸4と、コーティング6とを有する。また、織物1の一部には、発光領域Eが形成されている。なお、図1及び図2において、光ファイバー2と糸4の径(の比)や、構造などは、説明のために模式的に示している。また、図2においては省略しているが、糸4の表面にもコーティング6が形成されている。
【0022】
本実施形態の織物1について説明する。織物1は、織物を構成するタテ糸及びヨコ糸のうち、少なくとも一部に光ファイバー2が用いられている。本実施形態では、一例としてヨコ糸が光ファイバー2であり、タテ糸が光ファイバーではない糸4である織物1について説明する。
【0023】
なお、タテ糸とヨコ糸に用いられる光ファイバー2と糸4の配置は、本実施形態に示すものに限定されず、少なくとも、発光領域Eを通るタテ糸及びヨコ糸の少なくともいずれかが光ファイバー2であればよい。より具体的には、織物1のタテ糸及びヨコ糸のいずれか一方が全て光ファイバー2で構成されてもよいし、織物1のすべてのタテ糸及びヨコ糸が光ファイバー2で構成されてもよい。また、織物1のうち発光領域Eに対応する部分のみタテ糸及びヨコ糸の一方または両方が光ファイバー2であってもよい。また、タテ糸やヨコ糸を光ファイバー2とする場合に、光ファイバー2の間に光ファイバーではない糸4が一定の間隔で織り込まれていてもよい。
【0024】
光ファイバー2は、光源からの光を伝送する。そして後述する織物1における発光領域Eにおいて光が外部に放射されることで、織物1の発光領域Eが発光する。本実施形態では光ファイバー2は織機で織る際のヨコ糸として織り込まれる。本実施形態の光ファイバー2は、織物としての柔軟性を要求されるため、ガラス繊維ではなくアクリル繊維のような樹脂製の光ファイバーが好ましい。
【0025】
光ファイバー2の直径(コーティング6を含まない径)は、100μm以上1200μm以下であることが好ましい。100μm未満の場合、製織中に糸切れが発生しやすくなったり、製織後も折れやすくなってしまう。1200μmより太い場合、通常の織機での製織が難しくなる。
【0026】
光ファイバー2の材料は、ポリメチルメタクリレート系樹脂(PMMA)、石英、アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、架橋直鎖シリコーンのいずれかであればよく、アクリル樹脂が好ましい。
【0027】
糸4は、光ファイバー2とともに織物1を構成する糸である。本実施形態では、糸4はタテ糸として用いられる。糸4は、光ファイバー2とともに織物を構成できる糸であれば特に限定されず、化学繊維等の長繊維を用いる場合はモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。
【0028】
糸4は光ファイバー2より柔らかいことが好ましい。糸の柔らかさはヤング率で示すことができ、光ファイバー2のヤング率を100%とした時の糸4のヤング率の比率は90%以下であることが好ましい。光ファイバー2は直線性が高い方が、ファイバー内での光の損失が抑制され、より遠くまで光を伝達することができ、結果として発行領域Eをよりはっきりと発光させることができる。糸4のヤング率が光ファイバー2よりも小さい糸を用いることで、製織後の糸4の屈曲角を大きくすることができ、光ファイバー2の直線性を担保したまま製織することができる。なお、糸4のヤング率の上記比率の下限値は、50%以上であればよい。
【0029】
糸4の径が光ファイバー2より小さい場合、光ファイバー2から放射される光が糸4によって遮られる面積がより小さくなるので、発光領域Eをより明るく発光させることができる。
【0030】
糸4の材料は、一般的に入手できる糸であれば特に限定するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂や、生分解性樹脂や、熱硬化性樹脂や、エラストマーなどの合成樹脂を用いることができる。また、天然繊維や無機繊維を用いることができる。
【0031】
合成樹脂の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、EVA樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ベクトラン(登録商標)、PTFEなどを用いることができる。
【0032】
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、修飾でんぷん樹脂、ポリカプロラクト樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などを用いることができる。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0034】
エラストマーとしては、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーなどを用いることができる。
【0035】
天然繊維としては、綿や麻や絹などを用いることができる。無機繊維としては、ガラスやセラミックスや金属などを用いることができる。
【0036】
光ファイバー2及び糸4に対しては、後述するコーティング膜との密着性を向上するために、製織後、α線や、β線や、γ線や、電子線を所定の条件で照射したり、紫外線を所定の条件で照射したり、コロナを所定の条件で照射したり、グロー放電により発生するプラズマを所定の条件で照射してもよい。
【0037】
コーティング6は、織物1の表面に形成され、光ファイバー2に伝送される光が外部に漏出しないように、光を遮る膜である。コーティング6は、少なくとも織物1の発光領域Eが形成される面に形成される。織物1の両面にコーティング6を形成すると、光ファイバー2からの光の漏出をより確実に抑制することができる。図2においては、両面にコーティング6が形成され、光ファイバー2の周囲全体にコーティング6が形成されている状態を示している。なお、光ファイバー2が織物1の一部にのみ用いられている場合には、その光ファイバー2がある部分のみにコーティング6が形成されてもよい。
【0038】
コーティング6の材料は、光を遮ることができ、製織後の織物に表面加工できる材料であればよい。例えば、スパッタリングや蒸着で製膜する場合、クロム、銅、チタン、銀、白金、金などの他、ステンレス、ニッケルクロムなどの合金、ITO、酸化チタン、酸化ニオブなどの金属酸化物を用いることができる。コーティング、塗工、塗装などの場合、塗料として用いられる樹脂であれば限定するものではないが、光を遮る目的のため、暗色の顔料を混錬することが好ましい。
【0039】
コーティング6は、例えば、スパッタ、グラビアコーティング、塗布(塗工)、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のうちいずれかのコーティングである。
【0040】
コーティング6の厚さは、遮光性が確保できれば厚みについては限定されないが、風合いや柔らかさを求められる素材の場合、薄い方が好ましく、パーテーションに用いるなど、自立性が求められる素材の場合、厚い方が好ましい。厚みについては表面のコーティング層の作製方法で、適宜、調整でき、例えば100nm以上200μm以下であることが好ましい。
【0041】
発光領域Eは、コーティング6と、光ファイバー2の表面(つまり、織物1の表面側)の一部が除去されることにより、光ファイバー2が露出して光源から照射され伝送された光が外部に放射される領域である。発光領域Eは、織物1の片面に形成されればよいが、両面に形成してもよい。両面に発光領域Eが形成された場合には、両側に向けて発光する織物を提供できる。
【0042】
発光領域Eに含まれる光ファイバー2には、織物1の表面側のコーティング6と光ファイバー2の一部が除去されることで、光が放射される発光部2aが長さ方向に沿って形成される。コーティング6及び光ファイバー2の一部を所望の形状で除去することにより、発光領域Eを所望の形状に形成することができる。図1(及び図3)において、光ファイバー2と糸4とを白色で示している部分が、コーティング及び光ファイバーが除去された部分であり、発光領域Eである。より具体的には、発光領域Eに含まれる光ファイバー2の発光部2aから光が放射され、発光領域Eが形成される。図3の発光装置10の織物1の一例では、アルファベットの「ABC」の形に発光領域Eが形成され、光源12からの光によってABCの形状に発光させることができる。コーティング6によって光ファイバー2が被覆されている発光領域E以外の領域は、光が漏出しないので、ABCの文字の形でくっきりと発光する。
【0043】
発光領域E内の光ファイバー2については、図2に示すように、その発光領域Eが形成される側の表面のコーティング6が除去されるとともに、その除去されたコーティング6に被覆されていた光ファイバー2の一部も除去されている。図2においてはわかりやすくするために、光ファイバー2の上半分が除去されて断面形状が半円になったものを示しているが、この断面形状に限定されない。発光領域Eにおいて、少なくとも発光する側のコーティング6が除去され、光ファイバー2の一部が除去されていればよく、例えば、除去後の光ファイバー2の発光部2a表面に凹凸があってもよいし、湾曲していてもよい。また、発光部2aの表面は織物1の面と平行でなくてもよいが、なるべく平行である方が織物1の前面に向けてよりはっきり発光させることができる。
【0044】
そして、光ファイバー2は、光が伝送されるコアとその周囲を囲むクラッドで構成されるが、発光領域Eにおいては、光ファイバー2のコアの一部まで除去されて、コアが露出していることが好ましい。これにより、発光領域Eをより明るく発光させることができる。
【0045】
より具体的には、発光領域Eにおいては、光ファイバー2の除去前の元の直径を100%とした場合に、除去後の光ファイバー2の織物1の厚み方向における大きさ(幅)が、50%以上95%以下になる位置まで除去されていることが好ましい。つまり、図2に示すように、除去前のコーティング6も含めた光ファイバー2の直径をaとし、織物1の厚み方向における、除去後の光ファイバー2の発光部2aまでの大きさ(幅)をbとした場合に、b/aが50%以上95%以下であることが好ましい。光ファイバー2を元の直径の95%以下となるまで除去することにより、コーティング6を除去することで形成される細かく繊細な図柄の発光領域Eであっても十分な輝度が得られ、図柄をはっきり視認できるように発光させることができる。また、元の直径の50%以上とすれば、光ファイバー2における光の伝送特性と光ファイバーの強度を十分に維持することができる。
【0046】
発光領域Eにおいては糸4も一部削られた構造となる。そのため発光領域Eにおいては光ファイバー2と糸4が一部削られて除去された構造となるが、残っているコーティング6が光ファイバー2や糸4を補強する。つまり、本実施形態の織物1によれば、構成する糸の一部を除去して発光領域Eが形成されるが、発光領域Eを形成するためのコーティング6により十分に強度が維持された織物1を得ることができる。そして織物1の光ファイバー2や糸4の全面(全体)にコーティング6が形成されることで、より強度が維持され、かつ、光の漏出が抑制されてはっきりと発光する織物が得られる。
【0047】
本実施形態の織物1の織組織は特に限定されず、平織、綾織、朱子織とすることができる。綾織と朱子織の場合には、タテ糸とヨコ糸のうちいずれかが織物1の片面により多くあらわれるので、発光領域Eを形成する面により多くあらわれる糸を光ファイバー2とした織物を形成することが好ましい。そうすると、光ファイバー2の発光方向への露出がより多くなり、よりはっきりと発光させることができる。例えば、本実施形態のように光ファイバー2をヨコ糸とした場合、ヨコ糸がより多く表にあらわれる面のコーティング6を除去して発光領域Eを形成すればよい。なお、強く発光させる必要がない場合や、あえて弱い光にする場合などは、織物1の光ファイバー2がより多くあらわれる面とは反対の面に発光領域Eを形成してもよい。
【0048】
また、平織の場合には両面ともばらつきなくタテ糸とヨコ糸が表にあらわれる。そのため、例えば、織物1の両面に発光領域Eを形成する場合には、織組織を平織とすることで、両面の発光の強さが同等の織物を形成することができる。
【0049】
発光装置10は、本実施形態の織物1を用いた装置であり、照明装置や電飾装置などとして利用することができる。発光装置10は、本実施形態の織物1と、光ファイバー2の一端に対して光を照射する光源12とを備える。図3の発光装置10では、一例としてABCの形状に発光する織物1を例示している。また、図3の織物1は、図面の左右方向の糸がヨコ糸の光ファイバー2である。光源12は、織物1の光ファイバーに光を照射する。光源12は、例えば、複数のLEDで構成される。LED等の光源12から照射された光が光ファイバー2の一端に導光される。導入された光は、光ファイバー2内で伝送され、発光領域Eにおいて織物1の前方に向けて放出される。発光装置10によって、任意の形状の発光領域Eを有する織物1に対して光を照射し、発光領域Eを発光させることができる。また、光源12から供給する光の色を変えることで、1つの織物1を用いて様々な色で発光させることもできる。また、光源12の各LEDの点灯、点滅のタイミングなどを設定することで、様々な発光パターンで織物1を発光させることもできる。
【0050】
なお、本実施形態では発光領域Eを形成した後の織物1について説明したが、発光領域Eを形成する前の状態で織物が提供されてもよい。具体的には、発光領域Eを形成する前の織物は、織物の少なくとも一部の糸を構成する光ファイバー2と、前記織物の表面に形成され前記光ファイバー2から出る光を遮るコーティング6と、を有する織物である。そして、少なくとも、前記コーティング6及び光ファイバー2の一部を除去して発光領域Eが形成される除去対象範囲に前記光ファイバーが含まれる織物である。光ファイバー2とそれ以外の糸4の配置方法は上述の通りであり、織物の全体に光ファイバー2を織り込んでもよいし、発光領域Eとする部分のみに光ファイバー2を織り込んでもよい。このような形態の織物の場合には、発光領域Eを形成可能な除去対象範囲内で、後から任意の形状でコーティング6と光ファイバー2の一部を除去して発光領域Eを形成することができる。光ファイバー2が部分的に織り込まれて、織物の一部に除去対象範囲が形成される場合には、その織物の除去対象範囲が分かるように、例えば織物の表面に当該範囲を示す枠線を描いて提供されればよい。
【0051】
次に、本実施形態の織物1の製造方法を説明する。織物1の製造方法は、織物を構成する糸として光ファイバー2を含む織物の表面に、コーティング6を形成し、所定の形状の範囲内に含まれるコーティング6と光ファイバー2の一部とを除去し、所定の形状の発光領域Eを形成する方法である。
【0052】
具体的には、まず、光ファイバー2と糸4とでコーティング前の織物1を作製する。本実施形態では一例として、ヨコ糸を光ファイバー2とし、タテ糸を光ファイバーではない糸4で作製した織物1とする。
【0053】
次に、作製した織物1に対してコーティング6を形成する。コーティング6は、少なくとも発光領域Eを形成する面に形成するが、光の漏出をより確実に防ぐために両面に形成するのが好ましい。コーティング6の形成方法は、光ファイバー2及び糸4にコーティング6を形成できる方法であれば特に限定されず、公知の方法が用いられる。コーティング6の形成方法は、例えば、スパッタ、グラビアコーティング、塗布(塗工)、ディップ、メッキ、塗装、蒸着のうちいずれかの方法でよい。
【0054】
次に、織物1の発光領域Eを形成する部分における、コーティング6及び光ファイバー2の一部を除去して、発光領域Eを形成する。具体的には発光領域Eを形成する部分のみについて、コーティング6と、そのコーティングに被覆された光ファイバー2の一部と、を除去する。コーティングの除去方法は、コーティング6及び光ファイバー2を除去でき、織物1の厚み方向における除去量(コーティング6及び光ファイバー2の除去量)をコントロールできる方法であれば特に限定されない。具体的には除去方法は、切削、レーザー、サンドブラストのうちいずれかの方法であればよい。なお、上記除去の過程で発光領域Eに含まれる糸4についても、そのコーティング6や糸4の一部が除去される。
【0055】
発光領域Eの形状にコーティング等を除去する方法は除去方法に応じて異なる。レーザーなどのように発光領域E部分のみ除去可能な方法の場合には、発光領域Eの形状に除去処理を行う。また、サンドブラストのように除去処理の範囲を細かく設定できない方法の場合には、除去しない部分をマスキング等で保護した上で除去処理を行い、発光領域Eを形成する。また、コーティング6や光ファイバー2を除去する量(厚さ)に応じて、レーザーの強さやサンドブラストで用いる研削材の種類を設定したり、研削を行う時間などの条件を設定したりすればよい。
【0056】
以上の本実施形態の織物1によれば、任意の形状に発光させることができる織物を提供することができる。そして、本実施形態の織物1によれば、発光領域E以外の部分に光ファイバーから出る光を遮るコーティング6が形成されているので、発光領域Eの形状でよりくっきりと発光する織物を提供できる。
【0057】
なお、本実施形態の織物1は、タテ糸とヨコ糸の二軸織物として説明したが、これに限られず、三軸織物や四軸織物であってもよい。三軸織物や四軸織物の場合も、少なくとも発光領域Eを通るいずれかの方向の糸を光ファイバーとすれば、発光領域Eの形状に発光する織物を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 織物
2 光ファイバー
4 糸
6 コーティング
E 発光領域
図1
図2
図3