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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146164
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】通信システム及び通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/30 20090101AFI20241004BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20241004BHJP
   H04W 36/36 20090101ALI20241004BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20241004BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W36/08
H04W36/36
H04W48/16 131
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058901
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】林 浩士
(72)【発明者】
【氏名】森 正輝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE56
5K067JJ72
(57)【要約】
【課題】特定の通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワークの冗長化を実現する。
【解決手段】通信システムは、第1通信エリア100-1内の通信端末が接続可能な第1ネットワーク30に設けられた第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置と、第1通信エリアと重複する第2通信エリア100-2内の通信端末が接続可能な第2ネットワーク40に設けられた第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置と、第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、第1ネットワークを介して所定の通信先60と通信する特定の通信端末10と、を含む。特定の通信端末は、第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを第1ネットワークから第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークに設けられた第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置と、
前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークに設けられた第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置と、
前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する特定の通信端末と、を含む通信システムであって、
前記特定の通信端末は、
前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備え、
前記第2コアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、前記特定の通信端末と前記所定の通信先との間の通信を確立する、通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、前記第2ネットワークとは別に設けられた個別構築型の無線通信部及び個別構築型のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークに設けられた前記第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項5】
請求項2又は4に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークは、前記特定の通信端末以外の他の通信端末も接続可能なオープンネットワークである、通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークのコアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、閉域ネットワークを介して前記所定の通信先との間を接続する、通信システム。
【請求項7】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記第1コアネットワーク装置及び前記第2コアネットワーク装置はそれぞれ、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)を含む、通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークの無線通信部及び前記第2ネットワークの無線通信部は、互いに異なる周波数を用いて前記特定の通信端末との間で無線通信を行い、
前記接続先切替部は、前記判断部の判断結果に基づいて、前記無線通信部との無線通信に用いる周波数を切り替え、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える、通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記接続先切替部は、接続先のネットワークを前記第2ネットワークへ切り替えた後、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第2ネットワークから前記第1ネットワークへ切り替える、通信システム。
【請求項10】
第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークと、前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークとを含む通信システムにおける、前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する通信端末であって、
前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備える、通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの敷地内などの特定の通信エリア内でユーザーの通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワークを提供するための通信システム及び通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークと、第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークと、第1コアネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する特定の通信端末と、を含む通信システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Local5Gのネットワーク(第1ネットワーク)と、パブリック5Gのネットワーク(第2ネットワーク)と、を含む通信システムが開示されている。このシステムでは、両ネットワークの制御プレーン機能を、パブリック5Gのネットワークのコアネットワーク装置において一括で行う構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-60972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の通信システムにおいては、特定の通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワーク(第1ネットワーク)の通信状態が不良又は不能な状態になってしまったときに、当該特定の通信端末と所定の通信先との通信が確保されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るシステムは、第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークに設けられた第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置と、前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークに設けられた第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置と、前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する特定の通信端末と、を含む通信システムである。この通信システムにおいて、前記特定の通信端末は、前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備える。また、この通信システムにおいて、前記第2コアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、前記特定の通信端末と前記所定の通信先との間の通信を確立する。
【0007】
第2態様としては、第1態様において、前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、前記第2ネットワークとは別に設けられた個別構築型の無線通信部及び個別構築型のコアネットワーク装置であってもよい。
【0008】
第3態様としては、第2態様において、前記第2ネットワークに設けられた前記第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置であってもよい。
【0009】
第4態様としては、第1態様において、前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置であってもよい。
【0010】
第5態様としては、第2又は第4態様において、前記第2ネットワークは、前記特定の通信端末以外の他の通信端末も接続可能なオープンネットワークであってもよい。
【0011】
第6態様としては、第5態様において、前記第2ネットワークのコアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、閉域ネットワークを介して前記所定の通信先との間を接続してもよい。
【0012】
第7態様としては、第2乃至第6態様のいずれかにおいて、前記第1コアネットワーク装置及び前記第2コアネットワーク装置はそれぞれ、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)を含んでもよい。
【0013】
第8態様としては、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記第1ネットワークの無線通信部及び前記第2ネットワークの無線通信部は、互いに異なる周波数を用いて前記特定の通信端末との間で無線通信を行ってもよく、前記接続先切替部は、前記判断部の判断結果に基づいて、前記無線通信部との無線通信に用いる周波数を切り替え、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替えてもよい。
【0014】
第9態様としては、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記接続先切替部は、接続先のネットワークを前記第2ネットワークへ切り替えた後、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第2ネットワークから前記第1ネットワークへ切り替えてもよい。
【0015】
本発明の第10態様に係る通信端末は、第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークと、前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークとを含む通信システムにおける、前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する通信端末である。この通信端末は、前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワーク(第1ネットワーク)の冗長化を実現でき、同ネットワークの通信状態が不良又は不能な状態になってしまったときでも、当該特定の通信端末と所定の通信先との通信を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】実施形態に係る特定ユーザー端末の主要な機能の一例を示すブロック図。
図3】同システムにおけるネットワークが個別構築型ネットワークからパブリックネットワークへ切り替わった状態を示す説明図。
図4】変形例1に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図。
図5】同システムにおけるネットワークが論理分割型ネットワークからパブリックネットワークへ切り替わった状態を示す説明図。
図6】変形例2に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図。
図7】同システムにおけるネットワークが個別構築型ネットワークから論理分割型ネットワークへ切り替わった状態を示す説明図。
図8】特定ユーザー端末の動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信網のコアネットワーク(例えば第5世代の移動通信システムのコアネットワークである5GC(5th Generation Core network))を利用して移動通信事業者が顧客(ユーザー)に提供する移動通信サービスに用いられる。詳しくは、本実施形態のシステムは、移動通信サービスが提供される通信エリアが互いに重複している、少なくとも2つのネットワーク(第1ネットワークと第2ネットワーク)を備え、そのうちの少なくとも1つのネットワーク(第1ネットワーク)は、特定ユーザー端末(特定の通信端末)が優先して又は専有して接続可能なネットワークである。
【0019】
第1ネットワークは、ユーザーの敷地内などの特定の通信エリア(第1通信エリア)の環境に対して当該ユーザー専用の環境を構築するためのネットワークである。この第1ネットワークは、移動通信事業者が構築、運用するネットワークであってもよいし、ユーザー自身(又はユーザーからの委託業者)が構築、運用するネットワークであってもよい。
【0020】
また、第1ネットワークは、個別構築型ネットワークであってもよいし、論理分割型ネットワークであってもよい。
【0021】
個別構築型ネットワーク(以下「A-NW」ともいう。)は、例えば、他のネットワーク(例えば第2ネットワーク)とは別に、個別に構築されるネットワークであり、特定ユーザー端末との間で無線通信を行う無線通信部及びコアネットワーク装置を備える。個別構築型ネットワークは、例えば、当該無線通信部で通信可能な帯域のすべてをユーザーが専有可能なネットワークである。このような個別構築型ネットワークは、例えば、当該無線通信部を構成する構成装置(例えば、通信端末との電波の送受信を行う無線通信部を構成する無線局)、当該コアネットワーク装置であるAMF(Access and Mobility Management Function)やUPF(User Plane Function)などを、ユーザー自身が所有、管理、運用するものであってもよい。そのほか、個別構築型ネットワークは、例えば、他のコアネットワーク装置、例えばMEC(Multi-access Edge Computing)なども、ユーザー自身が所有、管理、運用するものであってもよい。
【0022】
論理分割型ネットワーク(以下「B-NW」ともいう。)は、例えば、特定ユーザー端末との間で無線通信を行う無線通信部及びコアネットワーク装置が他のネットワーク(例えば第2ネットワーク)と共有され、他のネットワークから論理的に分割されたネットワークである。なお、無線通信部の共有部分やコアネットワーク装置の共有部分は、その全部又は一部であってもよく、例えば、無線局、AMF、UPFのうちの少なくとも1つである。そのほか、論理分割型ネットワークは、例えば、他のコアネットワーク装置(例えばMECなど)も、他のネットワークと共有されているものであってもよい。論理分割型ネットワークは、例えば、共有の無線通信部で通信可能な帯域(他のコアネットワークで使用可能な帯域)の一部を、当該特定ユーザー端末が優先して利用できるように、ネットワークスライシング技術等により他のコアネットワークから論理分割(仮想的に分割)されたものが挙げられる。
【0023】
ユーザー専用環境のネットワークを構築することは、通信の安定性やセキュリティ性の高い環境をユーザーに提供できるなどのメリットをもたらす。そのため、このようなネットワークは製造、建築、物流、医療などの幅広い分野において導入が検討されている。
【0024】
一方、第2ネットワークは、第1ネットワークとは物理的又は論理的(仮想的)に異なる別個のネットワークであって、例えば、移動通信サービスが提供される通信エリアが第1ネットワークの通信エリアと重複しており、上述した特定ユーザー端末との通信が可能なネットワークである。第2ネットワークは、公衆型のネットワーク(以下、「パブリックネットワーク」、「オープンネットワーク」又は「C-NW」ともいう。)であってもよいし、上述した個別構築型ネットワークや論理分割型ネットワークであってもよい。なお、ここでいう公衆型のネットワークは、例えば、移動通信事業者が有する移動通信網のコアネットワークであり、移動通信事業者が提供する第5世代の移動通信システムにおける公衆型のコアネットワークであってもよい。
【0025】
第1ネットワークに優先して又は専有して接続可能な特定ユーザー端末は、例えば、移動通信サービスの加入者として使用可能なスマートフォンなどのユーザ装置(UE)であり、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。また、特定ユーザー端末は、センサ機能及び通信機能を有するIoTデバイス、AR(Augmented Reality)デバイス、VR(Virtual Reality)デバイス、MR(Mixed Reality)デバイス又はスマートデバイスであってもよい。また、特定ユーザー端末は、眼鏡型デバイス(例えば、ARグラス、VRグラス、MRグラス、スマートグラス)、時計型デバイス(例えば、スマートウォッチ)などのウェアラブルデバイスであってもよい。また、特定ユーザー端末は、現在位置情報を取得する機能及び通信機能を有するGNSS(Global Navigation Satellite System)トラッカー、防犯ブザー、歩数計などであってもよい。
【0026】
本実施形態のシステムにおいて、特定ユーザー端末は、第1ネットワークの通信状態が不良又は不能な状態(障害発生状態)に陥ったときに、接続先のネットワークを第1ネットワークから第2ネットワークへ切り替える機能を有する。これにより、本実施形態では、第1ネットワークの冗長化を実現でき、第1ネットワークで障害が発生して所定の通信先(サーバ等)との通信が確保されない状況になっても、第2ネットワークを介して当該所定の通信先(サーバ等)との通信を確保することが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態におけるネットワークの構成及び通信方式などは、特定の世代の標準規格の準拠するものに限定されない。本実施形態におけるネットワークの構成及び通信方式などは、例えばLTE、LTE-Advanced、第5世代、又は、その後の世代の標準規格の準拠するものであってもよい。
【0028】
〔個別構築型ネットワークとパブリックネットワークとの切り替え〕
図1は、本実施形態に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図である。
図1において、本実施形態のシステムは、第1ネットワークとしてのA-NW(個別構築型ネットワーク)30と、第2ネットワークとしてのC-NW(パブリックネットワーク)40と、を備えている。
【0029】
A-NW30は、例えばユーザーの敷地内に設定された通信エリア100-1内の特定ユーザー端末10が専有して接続可能なネットワークである。すなわち、A-NW30には、移動通信事業者が提供する当該A-NW30を用いた移動通信サービスの顧客(ユーザー)の特定ユーザー端末10のみが接続でき、当該顧客の通信端末ではない非特定ユーザー端末10'は接続できない。
【0030】
本実施形態において、A-NW30の無線通信部を構成する無線局31、A-NW30のコアネットワーク装置であるMEC32及びUPF33、第1コアネットワークセンター装置35は、パブリックネットワーク40の無線局41、MEC42、UPF43、第2コアネットワークセンター装置45とは別個に構築されている。無線局31、MEC32、UPF33は、ユーザー自身が構築したものであってもよいし、移動通信事業者(例えば、パブリックネットワーク40の移動通信事業者)が構築したものであってもよい。
【0031】
なお、A-NW30の無線通信部を構成する他の構成装置、あるいは、無線通信部以外でA-NW30を構成する他のコアネットワーク装置(例えば、制御プレーン機能群の一部を構成するSMF(Session Management Function)、PCF(Policy Control Function)、UDM(Unified Data Management)など)は、パブリックネットワーク40と共用されるものであってもよい。
【0032】
C-NW40は、移動通信事業者が有する移動通信網のネットワークであり、移動通信事業者の加入者(ユーザー)に対して提供するパブリック5Gのネットワークである。図1に示すように、C-NW40の通信エリア100-2は、A-NW30の通信エリア100-1と重複するように設定されている。詳しくは、C-NW40の通信エリア100-2は、A-NW30の通信エリア100-1の全エリアが当該通信エリア100-2内に含まれるように設定されている。移動通信事業者のパブリック5Gの加入者(ユーザー)の通信端末である非特定ユーザー端末10'は、このC-NW40に接続することができる。
【0033】
各ネットワーク30,40の無線通信部を構成する無線局31,41は、通信エリア100-1,100-2内の通信端末10,10'との間で電波の送受信を行う。無線局は、基地局とも呼ばれ、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-NodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0034】
A-NW30のコアネットワーク装置であるUPF33は、例えば、MEC32とともに配置される。UPF33は、ユーザープレーン(U-plane)機能群の一部を構成し、無線局31を介して特定ユーザー端末10とサーバ60との間のユーザーデータの転送を行う。
【0035】
C-NW40のコアネットワーク装置であるUPF43は、例えば、MEC42とともに配置される。UPF43は、ユーザープレーン(U-plane)機能群の一部を構成し、無線局41を介して非特定ユーザー端末10'とアプリケーションサーバとの間のユーザーデータの転送を行う。本実施形態では、後述するように、特定ユーザー端末10がC-NW40に接続された場合には、UPF43は、無線局41を介して特定ユーザー端末10とサーバと60の間のユーザーデータの転送を行う。
【0036】
本実施形態において、A-NW30のコアネットワーク装置である第1コアネットワークセンター装置35には、図1に示すように、SMF36、AMF37、PCF38などが備わっている。SMF36は、UPF33を介して通信端末10との間でユーザデータの送受信を行い、通信端末10のセッション管理を行うノードである。AMF37は、無線局31を介して特定ユーザー端末10との間で制御関係の情報の送受信を行い、個別構築型ネットワーク30における特定ユーザー端末10のモビリティ管理を行う。PCF38は、ポリシー制御を行うノードである。
【0037】
C-NW40のコアネットワーク装置である第2コアネットワークセンター装置45には、図1に示すように、SMF46、AMF47、PCF48などが備わっている。SMF46は、UPF43を介して通信端末10'との間でユーザデータの送受信を行い、通信端末10'のセッション管理を行うノードである。AMF47は、無線局41を介して通信端末10'との間で制御関係の情報の送受信を行い、C-NW40における通信端末10'のモビリティ管理を行う。PCF48は、ポリシー制御を行うノードである。
【0038】
なお、第1コアネットワークセンター装置35(AMF、SMF、PCF)の一部又は全部は、C-NW40の第2コアネットワークセンター装置45と共用される場合には個別に配置する必要はない。ただし、例えば特定ユーザー端末10がIoTデバイスである場合などにおいては、IoT専用のコアネットワークセンター装置として、図1に示すように、個別に配置してもよい。
【0039】
図2は、本実施形態に係る特定ユーザー端末10の主要な機能の一例を示すブロック図である。
図2において、特定ユーザー端末10は、網側通信部11、サーバ側通信部12、制御部13、記憶部14、判断部15、接続先切替部16を備える。
【0040】
網側通信部11は、A-NW30やC-NW40に接続して各ネットワーク30,40の各装置と通信する機能を有する。網側通信部11は、接続するネットワークをA-NW30とC-NW40との間で切り替え可能なものである。A-NW30は、予め決められた特定の周波数帯域での無線通信のみ可能でありC-NW40は、サポートされた全周波数帯域での無線通信が可能である。そのため、通信周波数を切り替える機能が求められる。網側通信部11としては、例えば、DSDA(Dual SIM Dual Active)を利用し、A-NW30をメイン回線とし、C-NW40をサブ回線として設定する。
【0041】
サーバ側通信部12は、網側通信部11が接続したA-NW30,C-NW40を介して、サーバ60と通信する機能を有する。
【0042】
制御部13は、所定の制御プログラムを読み込んで実行し、特定ユーザー端末10の各部を制御する。
【0043】
記憶部14は、制御部13が所定の制御プログラムを実行するために必要な情報などを記憶する手段としての機能を有する。
【0044】
判断部15は、A-NW30の通信状態を判断する手段としての機能を有する。例えば、受信電波の電界強度、時間、スループット、A-NW30の死活状態を監視し、A-NW30の通信状態に障害が発生していないかどうかを監視する。障害発生時にサーバ60との通信ができなくなる理由は、A-NW30の障害、A-NW30の無線通信部(基地局)の障害、無線通信部(基地局)のアクセス規制、DNSサーバの不具合、アプリケーションサーバ(サーバ60)の障害など、複数の要因が想定される。判断部15は、ネットワークを切り替えることで解消可能な障害の発生を判断できればよい。
【0045】
接続先切替部16は、判断部15がA-NW30の通信状態について判断した結果に基づき、接続先のネットワークをA-NW30からC-NW40へ切り替える手段としての機能を有する。本実施形態では、判断部15がA-NW30の通信状態に障害が発生していると判断した場合に、接続先切替部16は、接続先のネットワークをA-NW30からC-NW40へ切り替える。
【0046】
A-NW30の通信状態に障害が発生していない場合、特定ユーザー端末10は、図1の符号L1で示す矢印のように、網側通信部11によりA-NW30の第1コアネットワークセンター装置35のAMF37と通信してA-NW30に接続し、サーバ側通信部12によりUPF33を介してサーバ60と通信する。ここで、特定ユーザー端末10の判断部15がA-NW30の通信状態に障害が発生していると判断した場合、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをA-NW30からC-NW40へ切り替える。これにより、特定ユーザー端末10の網側通信部11は、C-NW40の第2コアネットワークセンター装置45のAMF47と通信してC-NW40との接続を確立する。その結果、特定ユーザー端末10は、サーバ側通信部12により、図3の符号L2で示す矢印のように、C-NW40のUPF43を介し、サーバ60と通信する。図3の例では、AMF37で障害が発生した例であるため、判断部15は、周波数モードや接続先のAMFを変更してC-NW40に接続し、サーバ60との通信を確保している。
【0047】
本実施形態によれば、特定ユーザー端末10が専有して接続可能なA-NW30(第1ネットワーク)の通信状態に障害が発生した場合でも、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にC-NW40(第2ネットワーク)に変更され、サーバ60との通信が確保される。これにより、A-NW30の冗長化が実現され、例えば、常時稼働を必要とするIoTサービスの障害や、ミッションクリティカルなサービスに大きな影響を及ぼす障害などがA-NW30に発生しても、特定ユーザー端末10とサーバ60との通信を確保することができる。
【0048】
C-NW40を介して特定ユーザー端末10とサーバ60との間の通信を行う場合、通信のセキュリティを確保することが求められる場合がある。特に、C-NW40とサーバ60との間がインターネットなどの汎用ネットワーク70を介して接続される場合には、通信のセキュリティを確保することが求められる。そのような場合には、例えば、C-NW40のUPF43とサーバ60との間をVPNなどの閉域ネットワークで接続して、通信のセキュリティを確保してもよい。
【0049】
本実施形態において、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをC-NW40へ切り替えた後も、判断部15は、A-NW30の通信状態を監視、判断している。そして、判断部15がA-NW30の通信状態の障害が解消されていると判断した場合、接続先切替部16は、接続先のネットワークをC-NW40からA-NW30へ切り替える。これにより、特定ユーザー端末10は、再び、図1の符号L1で示す矢印のように、網側通信部11によりA-NW30のAMF37と通信してA-NW30に接続し、サーバ側通信部12によりUPF33を介してサーバ60と通信することができる。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、A-NW30の通信状態に障害が発生した後、A-NW30の通信状態の障害が復旧した場合には、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にC-NW40からA-NW30に戻され、サーバ60との通信が確保される。これにより、A-NW30の通信状態の障害が復旧した場合には、迅速に平常状態に戻すことができる。
【0051】
〔変形例1〕
〔論理分割型ネットワークとパブリックネットワークとの切り替え〕
次に、本実施形態におけるシステムの一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
本変形例1のシステムは、第1ネットワークがB-NW(論理分割型ネットワーク)80で、第2ネットワークがC-NW(パブリックネットワーク)40である例である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と重複する説明については適宜省略する。
【0052】
図4は、本変形例1に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図である。
B-NW80は、ユーザーの敷地内に設定された通信エリア内の特定ユーザー端末10が専有して接続可能なネットワークであり、特定ユーザー端末10との間で無線通信を行う無線通信部がC-NW40と共有されているものである。本変形例1では、B-NW80の無線局がC-NW40の無線局41と共用されている。また、B-NW80のUPFやMECも、C-NW40のUPF43やC-NW40のMEC42と共用されている。ただし、B-NW80のコアネットワーク装置である第1コアネットワークセンター装置35は、上述した実施形態のA-NW30と同様、図4に示すように、SMF36、AMF37、PCF38などが備わっている。
【0053】
B-NW80には、移動通信事業者が提供する当該B-NW80を用いた移動通信サービスの顧客(ユーザー)の特定ユーザー端末10のみが接続でき、当該顧客の通信端末ではない非特定ユーザー端末は接続できない。
【0054】
特定ユーザー端末10の判断部15は、B-NW80の通信状態を判断する手段としての機能を有し、B-NW80の通信状態に障害が発生していないかどうかを監視する。また、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、判断部15がB-NW80の通信状態について判断した結果に基づき、接続先のネットワークをB-NW80からC-NW40へ切り替える手段としての機能を有する。本実施形態では、判断部15がB-NW80の通信状態に障害が発生していると判断した場合に、接続先切替部16は、接続先のネットワークをB-NW80からC-NW40へ切り替える。
【0055】
B-NW80の通信状態に障害が発生していない場合、特定ユーザー端末10は、図4の符号L3で示す矢印のように、網側通信部11によりB-NW80の第1コアネットワークセンター装置35のAMF37と通信してB-NW80に接続し、サーバ側通信部12により、C-NW40と共用されているUPF43を介してサーバ60と通信する。このとき、UPF43は、ネットワークスライシング技術等により、C-NW40から論理分割(仮想的に分割)されているB-NW80により、サーバ60との通信が行われる。
【0056】
ここで、特定ユーザー端末10の判断部15がB-NW80の通信状態に障害が発生していると判断した場合、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをB-NW80からC-NW40へ切り替える。これにより、特定ユーザー端末10の網側通信部11は、C-NW40の第2コアネットワークセンター装置45のAMF47と通信してC-NW40との接続を確立する。その結果、特定ユーザー端末10は、サーバ側通信部12により、図5の符号L4で示す矢印のように、C-NW40のUPF43を介してサーバ60と通信する。このときは、C-NW40によりサーバ60との通信が行われる。
【0057】
図5の例では、AMF37で障害が発生した例であるため、判断部15は、周波数モードや接続先のAMFを変更してC-NW40に接続し、サーバ60との通信を確保している。
【0058】
本変形例1によれば、特定ユーザー端末10が専有して接続可能なB-NW80(第1ネットワーク)の通信状態に障害が発生した場合でも、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にC-NW40(第2ネットワーク)に変更され、サーバ60との通信が確保される。これにより、B-NW80の冗長化が実現され、例えば、常時稼働を必要とするIoTサービスの障害や、ミッションクリティカルなサービスに大きな影響を及ぼす障害などがB-NW80に発生しても、特定ユーザー端末10とサーバ60との通信を確保することができる。
【0059】
本変形例1においても、判断部15は、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをC-NW40へ切り替えた後も、B-NW80の通信状態を監視、判断している。そして、判断部15がB-NW80の通信状態の障害が解消されていると判断した場合、接続先切替部16は、接続先のネットワークをC-NW40からB-NW80へ切り替える。これにより、特定ユーザー端末10は、再び、図4の符号L3で示す矢印のように、網側通信部11によりB-NW80のAMF37と通信してB-NW80に接続し、サーバ側通信部12によりC-NW40と共用されているUPF43を介してサーバ60と通信することができる。
【0060】
したがって、本変形例1においても、B-NW80の通信状態に障害が発生した後、B-NW80の通信状態の障害が復旧した場合には、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にC-NW40からB-NW80に戻され、サーバ60との通信が確保される。これにより、B-NW80の通信状態の障害が復旧した場合には、迅速に平常状態に戻すことができる。
【0061】
〔変形例2〕
〔個別構築型ネットワークと論理分割型ネットワークとの切り替え〕
次に、本実施形態におけるシステムの他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2のシステムは、第1ネットワークがA-NW(個別構築型ネットワーク)30で、第2ネットワークがB-NW(論理分割型ネットワーク)80である例である。本変形例2は、例えば、同一ユーザーが自分の敷地内にA-NW30とB-NW80を構築して使用する例である。このような例としては、IoTデバイス用にA-NW30を用い、IoTデバイス以外の通信デバイス用にB-NW80を用いる例や、A-NW30のバックアップ回線としてB-NW80を構築する例などが挙げられる。なお、以下の説明では、上述した実施形態や変形例1と重複する説明については適宜省略する。
【0062】
図6は、本変形例2に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図である。
A-NW30は、上述した実施形態と同様、例えばユーザーの敷地内に設定された通信エリア100-1内の特定ユーザー端末10が専有して接続可能なネットワークである。B-NW80も、同じ敷地内に設定された通信エリア内の他の特定ユーザー端末17が専有して接続可能なネットワークである。なお、A-NW30には、特定ユーザー端末10のみが接続でき、他の特定ユーザー端末17や非特定ユーザー端末10'は接続できない。B-NW80には、他の特定ユーザー端末17と特定ユーザー端末10のみが接続でき、非特定ユーザー端末10'は接続できない。
【0063】
B-NW80は、無線通信部やコアネットワーク装置がC-NW40と共有されているものである。本変形例2のB-NW80も、上述した変形例1と同様、無線局及びUPFがC-NW40の無線局41及びUPF43と共用されている。
【0064】
特定ユーザー端末10の判断部15は、A-NW30の通信状態を判断する手段としての機能を有し、A-NW30の通信状態に障害が発生していないかどうかを監視する。また、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、判断部15がA-NW30の通信状態に障害が発生していると判断した場合に、接続先のネットワークをA-NW30からB-NW80へ切り替える。
【0065】
A-NW30の通信状態に障害が発生していない場合、特定ユーザー端末10は、図6の符号L1で示す矢印のように、網側通信部11によりA-NW30のAMF37と通信してA-NW30に接続し、サーバ側通信部12によりUPF33を介してサーバ60と通信する。ここで、特定ユーザー端末10の判断部15がA-NW30の通信状態に障害が発生していると判断した場合、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをA-NW30からB-NW80へ切り替える。
【0066】
このとき、例えば、A-NW30のUPF33に障害が発生している場合、特定ユーザー端末10の網側通信部11は、AMF37と通信してB-NW80との接続を確立する。そして、特定ユーザー端末10は、サーバ側通信部12により、図7の符号L3で示す矢印のように、B-NW80のUPF43を介してサーバ60と通信する。
【0067】
図7の例では、A-NW30のUPF33で障害が発生した例であるため、判断部15は、周波数モードを変更してB-NW80に接続し、サーバ60との通信を確保している。本変形例2における特定ユーザー端末10には、A-NW30との接続動作時にB-NW80で用いられ得る周波数のセルサーチ機能を備えるのが好ましい。
【0068】
本変形例2によれば、特定ユーザー端末10が専有して接続可能なA-NW30(第1ネットワーク)の通信状態に障害が発生した場合でも、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にB-NW80(第2ネットワーク)に変更され、サーバ60との通信が確保される。これにより、A-NW30の冗長化が実現され、例えば、常時稼働を必要とするIoTサービスの障害や、ミッションクリティカルなサービスに大きな影響を及ぼす障害などがA-NW30に発生しても、特定ユーザー端末10とサーバ60との通信を確保することができる。
【0069】
本変形例2においても、判断部15は、特定ユーザー端末10の接続先切替部16が接続先のネットワークをB-NW80へ切り替えた後も、A-NW30の通信状態を監視、判断している。そして、判断部15がA-NW30の通信状態の障害が解消されていると判断した場合、接続先切替部16は、接続先のネットワークをB-NW80からA-NW30へ切り替える。これにより、特定ユーザー端末10は、再び、図6の符号L1で示す矢印のように、網側通信部11によりAMF37と通信してA-NW30に接続し、サーバ側通信部12によりUPF33を介してサーバ60と通信することができる。
【0070】
したがって、本変形例2においても、A-NW30の通信状態に障害が発生した後、A-NW30の通信状態の障害が復旧した場合には、特定ユーザー端末10の接続先が自動的にB-NW80からA-NW30に戻され、サーバ60との通信が確保される。これにより、A-NW30の通信状態の障害が復旧した場合には、迅速に平常状態に戻すことができる。
【0071】
次に、特定ユーザー端末10の動作について説明する。
なお、以下の動作は、ユーザーの敷地内に設定された通信エリア内の特定ユーザー端末10が専有して接続可能なネットワークとして、A-NW30とB-NW80とが設けられ、かつ、特定ユーザー端末10がC-NW40にも接続可能な環境のものである。したがって、上述した実施形態、変形例1、変形例2のいずれのシステムにも適用可能であるが、適用されるシステムに使用されない動作については適宜省略することができる。
【0072】
また、特定ユーザー端末10の網側通信部11にはDSDAを利用し、メイン回線にはA-NW30及びB-NW80の設定を用い、サブ回線にはC-NW40の設定を用いる。A-NW30とB-NW80とは、互いに周波数が異なるので、メイン回線の設定で周波数を変更することにより、A-NW30とB-NW80とを切り替えることができる。
【0073】
図8は、特定ユーザー端末10の動作の流れを示すフローチャートである。
初期状態において、特定ユーザー端末10は、メイン回線がA-NW30に設定され、サブ回線がC-NW40に設定され(S1)、メイン回線が正常である場合には、A-NW30に接続してサーバ60との通信が行われる。
【0074】
ここで、A-NW30(メイン回線)の使用中に特定ユーザー端末10がサーバ60との通信障害に陥った場合(S2のNo)、その原因としては、A-NW30のネットワーク障害以外の障害(DNSサーバの不具合、サーバ60の障害など)も想定される。そこで、特定ユーザー端末10の判断部15は、A-NW30のネットワーク障害が発生しているか否かを判断する(S3)。
【0075】
なお、ここでいうネットワーク障害とは、例えば、コアネットワーク障害、基地局(無線局)の障害、基地局(無線局)のアクセス規制などが挙げられる。また、このようなネットワーク障害が発生しているか否かの判断は、例えば、ネットワークリジェクトの有無、無応答判定、圏外判定などによって行うことができる。
【0076】
A-NW30のネットワーク障害が発生していると判断された場合(S3のYes)、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、網側通信部11のDSDAのメイン回線の周波数を、A-NW30の周波数からB-NW80の周波数へと変更する。これにより、メイン回線の接続先ネットワークがA-NW30からB-NW80へ切り替わる(S4)。その結果、特定ユーザー端末10の網側通信部11はB-NW80に接続し、サーバ側通信部12はB-NW80を介してサーバ60との通信を行う(S5のYes)。
【0077】
B-NW80を介してサーバ60との通信を行っている間、特定ユーザー端末10の判断部15は、A-NW30の通信状態を監視、判断する。具体的には、定期的に、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、網側通信部11のDSDAのメイン回線の周波数を、B-NW80の周波数からA-NW30の周波数へと変更して、メイン回線の接続先ネットワークをB-NW80からA-NW30へ戻す(S6)。そして、A-NW30への位置登録が成功してA-NW30への接続が成功するか否かを判断する(S7)。
【0078】
この判断でA-NW30への接続が成功したら(S7のYes)、A-NW30の障害が復旧していると判断して、特定ユーザー端末10のサーバ側通信部12は、A-NW30を介してサーバ60との通信を行う。一方、A-NW30への接続が失敗したら(S7のNo)、特定ユーザー端末10の網側通信部11は再びB-NW80への接続に戻し(S4)、サーバ側通信部12はB-NW80を介してサーバ60との通信を行う(S5のYes)。
【0079】
また、B-NW80を介してサーバ60との通信を行っている間に、特定ユーザー端末10がサーバ60との通信障害に陥った場合(S5のNo)、特定ユーザー端末10の判断部15は、B-NW80のネットワーク障害が発生しているか否かを判断する(S8)。
【0080】
B-NW80のネットワーク障害が発生していると判断された場合(S8のYes)、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、網側通信部11のDSDAのサブ回線を使用し、接続先のネットワークをB-NW80からC-NW40へ切り替わる(S9)。その結果、特定ユーザー端末10の網側通信部11はC-NW40に接続し、サーバ側通信部12はC-NW40を介してサーバ60との通信を行う。
【0081】
C-NW40を介してサーバ60との通信を行っている間、特定ユーザー端末10の判断部15は、B-NW80の通信状態を監視、判断する。具体的には、サブ回線(C-NW40)の使用中に、メイン回線(B-NW80)のネットワーク障害が発生しているか否かを判断する(S10)。そして、メイン回線(B-NW80)のネットワーク障害が発生していない(解消している)と判断したら(S10のNo)、特定ユーザー端末10の接続先切替部16は、網側通信部11のDSDAをメイン回線に切り替え、接続先のネットワークをC-NW40からB-NW80へ戻す(S4)。その結果、特定ユーザー端末10の網側通信部11はB-NW80に接続し、サーバ側通信部12はB-NW80を介してサーバ60との通信を行う。
【0082】
そして、特定ユーザー端末10の判断部15が、A-NW30の通信状態を監視、判断し(S6,S7)、A-NW30への位置登録が成功してA-NW30への接続が成功したら(S7のYes)、特定ユーザー端末10のサーバ側通信部12は、A-NW30を介してサーバ60との通信を行う。
【0083】
以上、本実施形態(変形例を含む。)によれば、特定の通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワーク(第1ネットワーク)の冗長化を実現でき、同ネットワークの通信状態が不良又は不能な状態になってしまったときでも、当該特定の通信端末と所定の通信先との通信を確保することができる。また、第1ネットワークの通信状態が正常化した場合には、接続先が第1ネットワークに復帰し、平常状態(第1ネットワークを介した通信状態)に自動的に戻ることができる。
【0084】
また、本発明は、特定の通信端末が優先して又は専有して接続可能なネットワーク(第1ネットワーク)の冗長化を実現できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0085】
また、本明細書で説明された処理工程並びにシステム、コアネットワークの構成装置(コアネットワーク装置)、情報処理装置(サーバ)、基地局及び通信端末(端末、端末装置、ユーザ装置(UE)、移動局、移動機)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0086】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0087】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0088】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0089】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0090】
10 :特定ユーザー端末
10' :非特定ユーザー端末
11 :網側通信部
12 :サーバ側通信部
13 :制御部
14 :記憶部
15 :判断部
16 :接続先切替部
17 :特定ユーザー端末
30 :個別構築型ネットワーク(A-NW)
31 :無線局
32 :MEC
33 :UPF
35 :第1コアネットワークセンター装置
36 :SMF
37 :AMF
38 :PCF
40 :パブリックネットワーク(C-NW)
41 :無線局
42 :MEC
43 :UPF
45 :第2コアネットワークセンター装置
46 :SMF
47 :AMF
48 :PCF
60 :サーバ
70 :汎用ネットワーク
80 :論理分割型ネットワーク(B-NW)
100-1,100-2:通信エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークに設けられた第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置と、
前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークに設けられた第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置と、
前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する特定の通信端末と、を含む通信システムであって、
前記特定の通信端末は、
前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備え、
前記第2コアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、前記特定の通信端末と前記所定の通信先との間の通信を確立し、
前記接続先切替部は、接続先のネットワークを前記第2ネットワークへ切り替えた後、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第2ネットワークから前記第1ネットワークへ切り替える、通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、前記第2ネットワークとは別に設けられた個別構築型の無線通信部及び個別構築型のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークに設けられた前記第2無線通信部及び第2コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークに設けられた前記第1無線通信部及び第1コアネットワーク装置は、他のネットワークと共用された共用の無線通信部及び共用のコアネットワーク装置である、通信システム。
【請求項5】
請求項2又は4に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークは、前記特定の通信端末以外の他の通信端末も接続可能なオープンネットワークである、通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信システムにおいて、
前記第2ネットワークのコアネットワーク装置は、前記接続先切替部が接続先を切り替えた前記特定の通信端末から前記第2ネットワークへのアクセスがあったとき、閉域ネットワークを介して前記所定の通信先との間を接続する、通信システム。
【請求項7】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記第1コアネットワーク装置及び前記第2コアネットワーク装置はそれぞれ、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)を含む、通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記第1ネットワークの無線通信部及び前記第2ネットワークの無線通信部は、互いに異なる周波数を用いて前記特定の通信端末との間で無線通信を行い、
前記接続先切替部は、前記判断部の判断結果に基づいて、前記無線通信部との無線通信に用いる周波数を切り替え、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える、通信システム
【請求項9】
1通信エリア内の通信端末が接続可能な第1ネットワークと、前記第1通信エリアと重複する第2通信エリア内の通信端末が接続可能な第2ネットワークとを含む通信システムにおける、前記第1ネットワークに対して優先して又は専有して接続可能で、該第1ネットワークを介して所定の通信先と通信する通信端末であって、
前記第1ネットワークとの通信状態を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第1ネットワークから前記第2ネットワークへ切り替える接続先切替部と、を備え
前記接続先切替部は、接続先のネットワークを前記第2ネットワークへ切り替えた後、前記判断部の判断結果に基づいて、接続先のネットワークを前記第2ネットワークから前記第1ネットワークへ切り替える、通信端末。