(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146166
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】診断装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F25B49/02 570Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058905
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】土居 昭博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 剛
(57)【要約】
【課題】診断対象の異常に関する診断をより容易に行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る診断装置200は、空気調和機100に含まれ、空気調和機100の内部で冷媒を搬送する圧縮機113の状態量に基づき、圧縮機113の状態を診断し、空気調和機100に含まれ、圧縮機113に接続される冷媒経路130,140,L1~L6や油経路L7,L8等を含む冷媒関連機器の内部に通流する冷媒に関する状態量に基づき、流体関連機器の運転状態を診断し、圧縮機113の状態の診断結果、及び冷媒関連機器の運転状態の診断結果に基づき、冷媒関連機器の異常箇所を推定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象に含まれ、前記診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、前記流体搬送機の状態を診断し、
前記診断対象に含まれ、前記流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する前記流体に関する状態量に基づき、前記流体関連機器の運転状態を診断し、
前記流体搬送機の状態の診断結果、及び前記流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定する、
診断装置。
【請求項2】
診断結果で表される、前記流体搬送機の状態と前記流体関連機器の運転状態との相関関係に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記流体搬送機の状態量の周波数成分に基づき、前記流体搬送機の状態を診断する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記流体搬送機の状態量は、前記流体搬送機に含まれる電動機の電流又は電圧に相関する物理量である、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項5】
前記流体に関する状態量は、前記流体の圧力、温度、又は飽和温度を含む、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項6】
前記流体搬送機は、電動機、及び前記電動機により駆動される圧縮機を含む、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項7】
前記診断対象は、冷凍サイクルを有する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項8】
情報処理装置に、
診断対象に含まれ、前記診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、前記流体搬送機の状態を診断する第1の診断ステップと、
前記診断対象に含まれ、前記流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する前記流体に関する状態量に基づき、前記流体関連機器の運転状態を診断する第2の診断ステップと、
前記流体搬送機の状態の診断結果、及び前記流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定する推定ステップと、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、診断対象の複数の状態量について、多変量解析を適用して診断対象の異常に関する診断を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、診断対象に関する複数の状態量のマハラノビス距離を算出し、マハラノビス距離と閾値との比較により異常の有無を診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、異常診断のためのマハラノビス距離の閾値を決定する際に、診断対象の正常な状態や異常な状態に対応する基準空間や異常空間を学習するためのデータ収集が必要になる。そのため、例えば、状態量の数(次元数)が相対的に大きくなると、いわゆる次元の呪い(Curse of Dimensionality)におけるデータの希薄性(Data Sparsity)の問題が生じる可能性がある。具体的には、状態量の次元数の増加に応じて、状態量の組み合わせが指数関数的に増大する可能性がある。その結果、取得すべきデータ数が増加し、異常に関する診断を行うためのデータ収集に相対的に長い時間や手間を要する可能性がある。
【0006】
本開示は、診断対象の異常に関する診断をより容易に行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様では、
診断対象に含まれ、前記診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、前記流体搬送機の状態を診断し、
前記診断対象に含まれ、前記流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する前記流体に関する状態量に基づき、前記流体関連機器の運転状態を診断し、
前記流体搬送機の状態の診断結果、及び前記流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定する、
診断装置が提供される。
【0008】
本態様によれば、診断装置は、流体搬送機の状態の診断と、流体関連機器の運転状態の診断とを別に行った上で、双方の診断結果から流体関連機器の異常箇所を推定することができる。そのため、診断に使用される状態量が、流体搬送機の状態の診断に使用される状態量と流体関連機器の運転状態の診断に使用される状態量とに分けられ、その結果、閾値等のそれぞれの診断の基準を設定するために取得すべきデータ数を抑制することができる。よって、診断装置は、診断対象の異常に関する診断をより容易に実現することができる。
【0009】
また、本開示の第2の態様では、上述の第1の態様を前提として、
診断装置は、診断結果で表される、前記流体搬送機の状態と前記流体関連機器の運転状態との相関関係に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定してもよい。
【0010】
また、本開示の第3の態様では、上述の第1又は第2の態様を前提として、
前記流体搬送機の状態量の周波数成分に基づき、前記流体搬送機の状態を診断してもよい。
【0011】
また、本開示の第4の態様では、上述の第1乃至第3の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記流体搬送機の状態量は、前記流体搬送機に含まれる電動機の電流又は電圧に相関する物理量であってもよい。
【0012】
また、本開示の第5の態様では、上述の第1乃至第4の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記流体に関する状態量は、前記流体の圧力、温度、又は飽和温度を含んでもよい。
【0013】
また、上述の第6の態様では、上述の第1乃至第5の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記流体搬送機は、電動機、及び前記電動機により駆動される圧縮機を含んでもよい。
【0014】
また、本開示の第7の態様では、上述の第1乃至第6の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記診断対象は、冷凍サイクルを有していてもよい。
【0015】
また、本開示の第8の態様では、
情報処理装置に、
診断対象に含まれ、前記診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、前記流体搬送機の状態を診断する第1の診断ステップと、
前記診断対象に含まれ、前記流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する前記流体に関する状態量に基づき、前記流体関連機器の運転状態を診断する第2の診断ステップと、
前記流体搬送機の状態の診断結果、及び前記流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、前記流体関連機器の異常箇所を推定する推定ステップと、を実行させる、
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
上述の実施形態によれば、診断対象の異常に関する診断をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】空気調和機の異常に関する診断の処理フローを説明する図である。
【
図4】圧縮機診断処理の診断結果及び湿り運転診断処理の診断結果と、空気調和機100の異常箇所との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0019】
[診断システムの構成]
図1、
図2を参照して、本実施形態に係る診断システム1の構成について説明する。
【0020】
図1は、診断システム1の構成の一例を示す図である。
図2は、診断装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、診断システム1は、空気調和機100と、診断装置200とを含む。
【0022】
診断システム1は、診断装置200において、空気調和機100の異常に関する診断を行う。
【0023】
空気調和機100は、診断システム1における診断対象である。
【0024】
空気調和機100は、室外機110と、室内機120と、冷媒経路130,140とを含む。空気調和機100は、室外機110、室内機120、冷媒経路130,140等で構成される冷凍サイクル(冷媒回路)を動作させ、室内機120が設置される室内の温度や湿度等を調整する。
【0025】
室外機110は、温度等の調整対象の建物の室外に配置される。室外機110は、冷媒経路130,140のそれぞれの一端に接続され、冷媒経路130,140の何れか一方から冷媒を吸入し、何れか他方に冷媒を排出する。
【0026】
室内機120は、温度等の調整対象の建物の室内に配置される。室内機120は、冷媒経路130,140のそれぞれの他端に接続され、冷媒経路130,140の何れか一方から冷媒を吸入し、何れか他方に冷媒を排出する。
【0027】
冷媒経路130,140は、例えば、管路により構成され、冷媒が室外機110及び室内機120の間で循環可能なように、室外機110及び室内機120との間を接続する。
【0028】
室外機110は、冷媒経路L1~L6と、油経路L7,L8と、四方切換弁111と、アキュムレータ112と、圧縮機113と、油分離器114と、室外熱交換器115と、室外膨張弁116と、駆動装置117と、センサ群118と,制御装置119とを含む。
【0029】
冷媒経路L1~L6は、例えば、管路として構成される。
【0030】
冷媒経路L1は、室外機110の外部の冷媒経路130の一端と四方切換弁111との間を接続する。
【0031】
冷媒経路L2は、四方切換弁111と圧縮機113の入口との間を接続する。
【0032】
冷媒経路L2は、冷媒経路L21,L22を含む。
【0033】
冷媒経路L21は、四方切換弁111とアキュムレータ112との間を接続する。
【0034】
冷媒経路L22は、アキュムレータ112と圧縮機113の入口との間を接続する。
【0035】
冷媒経路L3は、四方切換弁111と圧縮機113の出口との間を接続する。
【0036】
冷媒経路L3は、冷媒経路L31,L32を含む。
【0037】
冷媒経路L31は、圧縮機113の出口と油分離器114との間を接続する。
【0038】
冷媒経路L32は、四方切換弁111と油分離器114との間を接続する。
【0039】
冷媒経路L4は、四方切換弁111と室外熱交換器115との間を接続する。
【0040】
冷媒経路L5は、室外熱交換器115と室外膨張弁116との間を接続する。
【0041】
冷媒経路L6は、室外機110の外部の冷媒経路140の一端と室外膨張弁116との間を接続する。
【0042】
油経路L7は、例えば、管路として構成され、油分離器114により分離された油を冷媒経路L22に流入させ、冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻すために用いられる。
【0043】
尚、油経路L7を通過する油には、例えば、液相の冷媒(以下、「液冷媒」)が溶け込んでいる場合がある。つまり、油経路L7には、油だけでなく、液冷媒も通流する。
【0044】
油経路L8は、例えば、管路として構成され、アキュムレータ112により分離された液冷媒を含む油を冷媒経路L22に流入させ、冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻すために用いられる。
【0045】
四方切換弁111は、空気調和機100の冷房運転の場合と暖房運転の場合とで冷媒が循環する流れを逆転させる。
【0046】
空気調和機100の冷房運転時に、四方切換弁111は、
図1中の実線の経路を接続する。具体的には、空気調和機100の冷房運転時に、四方切換弁111は、冷媒経路L1と冷媒経路L2との間、及び冷媒経路L3と冷媒経路L4との間を接続させる。
【0047】
一方、空気調和機100の暖房運転の場合、四方切換弁111は、
図1中の点線の経路を接続する。具体的には、空気調和機100の暖房運転時に、四方切換弁111は、冷媒経路L4と冷媒経路L2との間、及び冷媒経路L1と冷媒経路L3との間を接続させる。
【0048】
アキュムレータ112は、冷媒経路L21から吸入される冷媒に含まれる液冷媒を分離し、冷媒経路L22に液冷媒の一部又は全部が除去された冷媒を吐出する。アキュムレータ112で分離される液冷媒には油が含まれる。アキュムレータ112には、油経路L8と接続される油排出口が設けられ、分離された冷媒を含む油は、油排出口を通じて油経路L8に流出し、油経路L8及び冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻される。
【0049】
圧縮機113は、冷媒経路L22から冷媒を吸入し、高圧に圧縮して冷媒経路L31に吐出する。
【0050】
圧縮機113は、電動機113Aと、圧縮機構部113Bとを含む。
【0051】
電動機113Aは、駆動装置117から供給される所定の電力を用いて、圧縮機構部113Bを回転駆動する。所定の電力は、例えば、三相交流の電力である。
【0052】
圧縮機構部113Bは、電動機113Aを動力源として稼働する。圧縮機構部113Bは、圧縮機113の入口から冷媒を吸入し、高圧に圧縮して圧縮機113の出口から外部に吐出する。
【0053】
空気調和機100の冷房運転時において、圧縮機113により圧縮された高温高圧の冷媒は、冷媒経路L3及び冷媒経路L4を通じて、室外熱交換器115に流入する。
【0054】
一方、空気調和機100の暖房運転時において、圧縮機113により圧縮された高温高圧の冷媒は、冷媒経路L3及び冷媒経路L1を通じて、室外機110の外部の冷媒経路130に流出する。そして、高温高圧の冷媒は、冷媒経路130を通じて、室内機120に流入する。
【0055】
油分離器114は、冷媒経路L31から流入する冷媒から油を分離し、油の一部又は全部が分離され除去された後の冷媒を冷媒経路L32に流出させる。また、油分離器114には、油経路L7と接続される油排出口が設けられ、冷媒から分離された油は、油排出口を通じて油経路L7に流出し、油経路L7及び冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻される。
【0056】
室外熱交換器115は、外気と内部を通過する冷媒との間で熱交換を行う。具体的には、室外熱交換器115には、ファン115Aが併設され、室外熱交換器115は、ファン115Aにより送風される外気と内部を通流する冷媒との間で熱交換を行う。
【0057】
空気調和機100の冷房運転時において、室外熱交換器115は、冷媒経路L4から流入する、圧縮機113で圧縮された高温高圧の冷媒に外気への放熱を行わせ、凝縮・液化した冷媒(液冷媒)を冷媒経路L5に流出させる。
【0058】
また、空気調和機100の暖房運転時において、室外熱交換器115は、冷媒経路L5から流入する低温低圧の液冷媒に外気から吸熱を行わせ、蒸発した冷媒を冷媒経路L4に流出させる。
【0059】
室外膨張弁116は、空気調和機100の暖房運転時において、所定の開度に閉じられ、冷媒経路L6から流入する冷媒(液冷媒)を所定の圧力に減圧させる。一方、室外膨張弁116は、空気調和機100の冷房運転時において、全開状態にされ、冷媒経路L5から冷媒経路L6に冷媒(液冷媒)を通過させる。室外膨張弁116は、例えば、電磁弁である。
【0060】
駆動装置117は、所定の電源から供給される電力を用いて、電動機113Aを駆動する。例えば、駆動装置117は、所定の電源から供給される電力を用いて、所定の周波数及び所定の電圧の三相交流の電力を生成し、電動機113Aに供給することにより、電動機113Aを駆動するインバータ装置である。
【0061】
センサ群118は、室外機110に搭載され、空気調和機100の制御等に利用される複数のセンサである。センサ群118の出力は、制御装置119及び診断装置200に取り込まれる。
【0062】
センサ群118は、例えば、電流センサ118Aと、温度センサ118Bと、圧力センサ118Cとを含む。
【0063】
電流センサ118Aは、電動機113Aの電流に関する情報を取得し、その情報を表す信号を出力する。
【0064】
温度センサ118Bは、圧縮機113の出口の冷媒の温度に関する情報を取得し、その情報を表す信号を検出する。例えば、温度センサ118Bは、圧縮機113の出口の冷媒の温度を配管内で直接計測してもよいし、圧縮機113の出口から流出する冷媒が流れる配管の温度を外部から計測してもよい。温度センサ118Bは、例えば、圧縮機113の出口の配管の温度を計測するサーミスタである。
【0065】
圧力センサ118Cは、圧縮機113の出口の冷媒の圧力に関する情報を取得し、その情報を表す信号を出力する。
【0066】
制御装置119は、センサ群118の出力に基づき、例えば、四方切換弁111や圧縮機113(駆動装置117)や室外膨張弁116等を直接の制御対象として、室外機110の動作を制御する。例えば、制御装置119は、駆動装置117と別に設けられてもよいし、駆動装置117と一体化されていてもよい。
【0067】
室内機120は、室内膨張弁121と、室内熱交換器122と、制御装置123とを含む。
【0068】
室内膨張弁121は、空気調和機100の冷房運転時において、所定の開度に閉じられ、冷媒経路140から流入する、過冷却状態の液冷媒を所定の圧力に減圧させる。一方、室内膨張弁121は、空気調和機100の暖房運転時において、全開状態にされ、室内熱交換器122から流出する冷媒(液冷媒)を冷媒経路140に向かって通過させる。室内膨張弁121は、例えば、電磁弁である。
【0069】
室内熱交換器122は、室内空気と内部を通過する冷媒との間で熱交換を行う。具体的には、室内機120に搭載されるファン122Aの作用で、室内熱交換器122の周囲に室内空気が通過し、室内熱交換器122の内部の冷媒との間で熱交換が促進される。そして、ファン122Aの作用で、室内熱交換器122の内部との冷媒との間の熱交換が行われた室内空気が室内機120の外部に送り出されることにより、室内の冷房或いは暖房が実現される。
【0070】
空気調和機100の冷房運転時において、室内熱交換器122は、室内膨張弁121により減圧された低温低圧の液冷媒に室内空気から吸熱させ、室内空気の温度を下げる。
【0071】
一方、空気調和機100の暖房運転時において、室内熱交換器122は、冷媒経路130を通じて室外機110から流入する高温高圧の冷媒に室内空気への放熱を行わせ、室内空気の温度を上げる。
【0072】
制御装置123は、例えば、室内膨張弁121やファン122A等を直接の制御対象として、室内機120の動作を制御する。
【0073】
診断装置200は、空気調和機100の異常に関する診断を行う。
【0074】
空気調和機100の異常に関する診断には、例えば、空気調和機100の異常の有無の診断が含まれる。また、空気調和機100の異常に関する診断には、空気調和機100の異常箇所の推定が含まれてもよい。また、空気調和機100の異常に関する診断には、空気調和機100の異常の程度(異常度合い)に関する診断が含まれてもよい。
【0075】
診断装置200は、診断対象の空気調和機100に含まれていてもよいし、空気調和機100の外部に設けられてもよい。
【0076】
診断対象の空気調和機100に含まれる場合、診断装置200は、例えば、空気調和機100に内蔵され、空気調和機100の動作を制御する制御装置である。当該制御装置は、上記の制御装置119であってもよいし、制御装置123であってもよい。この場合、診断装置200としての制御装置は、空気調和機100の動作を制御する制御機能と、空気調和機100の異常に関する診断を行う診断機能とに兼用される。また、診断装置200は、上記の制御装置とは別に設けられてもよい。診断装置200は、例えば、駆動装置117に内蔵される。この場合、診断装置200は、空気調和機100の異常に関する診断機能に専用であってもよいし、他の機能と兼用されてもよい。
【0077】
また、診断対象の空気調和機100の外部に設けられる場合、診断装置200は、例えば、空気調和機100が設置される建物やその敷地内に設置される、空気調和機100の管理用の端末装置やエッジコントローラやエッジサーバである。また、診断装置200は、空気調和機100が設置される建物やその敷地の遠隔に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバであってもよい。また、診断装置200は、可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。携帯端末は、例えば、空気調和機100のリモコン等の専用の携帯端末であってもよいし、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC(Personal Computer)等の汎用の携帯端末であってもよい。
【0078】
また、診断対象の空気調和機100の外部に設けられる場合、診断装置200は、複数の空気調和機100のそれぞれの異常に関する診断を行ってもよい。
【0079】
診断装置200の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、
図2に示すように、診断装置200は、外部インタフェース201と、補助記憶装置202と、メモリ装置203と、CPU204と、高速演算装置205と、通信インタフェース206と、入力装置207と、出力装置208とを含む。外部インタフェース201、補助記憶装置202、メモリ装置203、CPU204、高速演算装置205、通信インタフェース206、入力装置207、及び出力装置208は、バスBS2により接続される。
【0080】
外部インタフェース201は、記録媒体201Aからデータの読み取りや記録媒体201Aへのデータの書き込みのためのインタフェースとして機能する。記録媒体201Aには、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、SDメモリカード、USBメモリ等の汎用の記録媒体が含まれる。また、記録媒体201Aは、例えば、空気調和機100の製造工場や修理施設等において利用される専用の記録媒体であってもよい。これにより、診断装置200は、記録媒体201Aを通じて、処理で利用する各種データを読み込み、補助記憶装置202に格納したり、各種機能を実現するプログラムをインストールしたりすることができる。
【0081】
尚、診断装置200は、通信インタフェース206を通じて、処理で利用する各種データやプログラムを外部装置から取得してもよい。
【0082】
補助記憶装置202は、インストールされた各種プログラムを格納すると共に、各種処理に必要なファイルやデータ等を格納する。補助記憶装置202は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Disc)やフラッシュメモリ等を含む。
【0083】
メモリ装置203は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置202からプログラムを読み出して格納する。メモリ装置203は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)を含む。
【0084】
CPU204は、補助記憶装置202からメモリ装置203にロードされた各種プログラムを実行し、プログラムに従って診断装置200に関する各種機能を実現する。
【0085】
高速演算装置205は、CPU204と連動し、CPU204よりも高い速度で演算処理を行う。高速演算装置205は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含む。
【0086】
尚、高速演算装置205は、必要な演算処理の速度に応じて、省略されてもよい。
【0087】
通信インタフェース206は、外部機器と通信可能に接続するためのインタフェースとして用いられる。これにより、診断装置200は、通信インタフェース206を通じて、例えば、センサ群180の出力データを取得することができる。また、通信インタフェース206は、接続される機器との間の通信方式等によって、複数の種類の通信インタフェースを有してもよい。
【0088】
また、診断装置200が空気調和機100に含まれる場合、通信インタフェース206は、例えば、空気調和機100に含まれる他の機器との間での通信のみを行うインタフェースである。また、診断装置200が空気調和機100に含まれる場合、通信インタフェース206は、空気調和機100に含まれる他の機器との通信を行うインタフェース、及び空気調和機100の外部の機器との通信を行うインタフェースの双方を含んでもよい。
【0089】
入力装置207は、ユーザから各種入力を受け付ける。
【0090】
入力装置207は、例えば、ユーザからの機械的な操作入力を受け付ける形態の入力装置(以下、「操作入力装置」)を含む。操作入力装置は、例えば、ボタン、トグル、レバー、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド等を含む。
【0091】
また、入力装置207は、ユーザからの音声入力を受付可能な音声入力装置を含んでもよい。音声入力装置は、例えば、ユーザの音声を集音可能なマイクロフォンを含む。
【0092】
また、入力装置207は、ユーザからのジェスチャ入力を受付可能なジェスチャ入力装置を含んでもよい。ジェスチャ入力装置は、例えば、ユーザのジェスチャの様子を撮像可能なカメラを含む。
【0093】
また、入力装置207は、ユーザからの生体入力を受付可能な生体入力装置を含んでもよい。生体入力装置は、例えば、ユーザの指紋や虹彩に関する情報を内包する画像データを取得可能なカメラを含む。
【0094】
出力装置208は、診断装置200のユーザに向けて情報を出力する。
【0095】
出力装置208は、例えば、視覚的に情報を出力する照明装置や表示装置である。照明装置は、例えば、インジケータランプ等である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等である。
【0096】
また、出力装置208は、聴覚的な情報を出力する音出力装置であってもよい。音出力装置は、例えば、ブザー、アラーム、スピーカ等である。
【0097】
尚、診断装置200が空気調和機100に含まれる場合、入力装置207及び出力装置208は、診断装置200から省略されてもよい。空気調和機100に搭載される各種の入力装置や出力装置を診断装置200に関する用途に兼用可能な場合もあるからである。
【0098】
[診断処理の詳細]
次に、
図3、
図4を参照して、診断装置200により実行される、空気調和機100の異常に関する診断処理の詳細について説明する。
【0099】
図3は、空気調和機100の異常に関する診断の処理フローを説明する図である。
図4は、圧縮機診断処理P106の診断結果及び湿り運転診断処理P108の診断結果と、空気調和機100の異常箇所との関係を示す図である。
【0100】
図3に示すように、診断装置200は、特徴量算出処理P102、特徴量算出処理P104、圧縮機診断処理P106、湿り運転診断処理P108、及び最終診断処理P110を含む、空気調和機100の異常に関する診断処理を実行する。
【0101】
空気調和機100の異常に関する診断処理は、例えば、補助記憶装置202に格納されるプログラムをメモリ装置203にロードしCPU204で実行されることにより実現される。空気調和機100の異常に関する診断処理は、例えば、所定のタイミングで自動的に実施される。所定のタイミングは、例えば、空気調和機100の運転時における所定の時間間隔ごとに設けられる。また、空気調和機100の異常に関する診断処理は、入力装置207を通じて受け付けられる、ユーザからの診断の処理を要求する所定の入力に応じて実施されてもよい。
【0102】
特徴量算出処理P102では、診断装置200は、電動機113Aの電流検出値に基づき、圧縮機113の状態を診断するための特徴量(以下、「圧縮機診断用特徴量」)を算出する。電動機113Aの電流検出値は、電流センサ180Aの出力に基づき取得される。
【0103】
例えば、圧縮機診断用特徴量は、電動機113Aの電流ベクトルの大きさ(振幅)の1次の高調波成分(以下、「電流ベクトル1次成分」)である。1次の高調波成分とは、電動機113Aの機械角での回転周波数に相当する周波数成分を意味する。圧縮機113の圧縮室の油シール性が低下する異常が生じると、圧縮室の気密性が不足し冷媒ガスが漏れることで、圧縮室の油シール性が十分な正常時に対して電流ベクトル1次成分が相対的に小さくなることがあるからである。また、液相の冷媒(液冷媒)が圧縮機113の圧縮室に入り込み、液冷媒が圧縮される異常状態(以下、「液圧縮」)が生じると、圧縮室の異常昇圧によって、液圧縮が生じていない正常時に対して電流ベクトル1次成分が相対的に大きくなることがあるからである。
【0104】
尚、圧縮機診断用特徴量は、圧縮機113の電流に相関する物理量として、電流ベクトル1次成分とは異なる状態量であってもよい。例えば、圧縮機診断用特徴量として、電流ベクトル1次成分に代えて、或いは、加えて、電流ベクトルの大きさの整数次の高調波成分(即ち、機械角での回転周波数の整数倍の周波数成分)が使用されてもよい。また、圧縮機診断用特徴量として、電流に相関する物理量に代えて、或いは、加えて、圧縮機113の電圧、電力、振動、音、超音波、磁束、温度、トルク等に相関する物理量が使用されてもよい。また、圧縮機診断用特徴量として、周波数成分に代えて、時間領域の状態量が使用されてもよい。時間領域の状態量は、例えば、電動機113Aの相電流の、機械角或いは電気角での1周期分の正弦波状時間波形等である。
【0105】
電動機113Aの電流ベクトルの大きさは、電動機113Aの3相の電流検出値の2乗値の総和の平方根で表される。また、電流ベクトル1次成分は、電流ベクトルの大きさの周波数成分のうち、圧縮機113の機械角での回転周波数の周波数成分を表す。
【0106】
特徴量算出処理P104では、診断装置200は、圧縮機113の出口の冷媒の温度検出値及び圧力検出値に基づき、冷媒が通流する配管を含む冷媒関連機器の運転状態を診断するための特徴量(以下、「湿り運転診断用特徴量」)を算出する。圧縮機113の出口の冷媒の温度検出値及び圧力検出値は、温度センサ118B及び圧力センサ118Cの出力に基づき取得される。
【0107】
冷媒関連機器には、例えば、配管としての冷媒経路130,140,L1~L6や油経路L7,L8が含まれる。また、冷媒関連機器には、例えば、配管に設置される室外膨張弁116や室内膨張弁121等の電磁弁が含まれる。また、冷媒関連機器には、例えば、温度センサ118Bや圧力センサ118C等の冷媒の状態を測定するセンサが含まれる。
【0108】
例えば、湿り運転診断用特徴量は、例えば、圧縮機113の出口の冷媒のスーパーヒート(Superheat:過熱度)である。圧縮機113の出口の冷媒のスーパーヒートは、圧縮機113の出口の冷媒の温度と飽和温度との差である。圧縮機113の出口の冷媒の飽和温度は、圧縮機113の出口の冷媒の圧力から決まる。
【0109】
圧縮機診断処理P106では、診断装置200は、圧縮機診断用特徴量に基づき、圧縮機113の状態を診断する。
【0110】
圧縮機113の状態は、例えば、圧縮機113の内部の状態である。圧縮機113の内部の状態には、圧縮機113の内部の油シール性の低下が生じている異常な状態と、圧縮機113の内部で液圧縮が生じている異常な状態と、圧縮機113の内部にこれらの異常が生じていない正常な状態とが含まれる。
【0111】
例えば、診断装置200は、電動機113Aの電流ベクトル1次成分が所定の閾値TH1に対して相対的に小さい場合、圧縮機113の油シール性の低下が生じている異常な状態にあると診断する。閾値TH1に対して相対的に小さいとは、閾値TH1より小さいことであってもよいし、閾値TH1以下であることであってもよい。
【0112】
閾値TH1は、圧縮機113の油シール性の低下が生じていると判断可能な電流ベクトル1次成分の上限値である。閾値TH1は、例えば、圧縮機113と同じ仕様の圧縮機を用いて実施される、正常な状態及び油シール性が低下した疑似的な異常な状態の双方での実験やコンピュータシミュレーション等を通じて予め設定される。
【0113】
また、診断装置200は、電動機113Aの電流ベクトル1次成分が所定の閾値TH2(>TH1)に対して相対的に大きい場合、圧縮機113に液圧縮が生じている異常な状態にあると診断する。閾値TH2に対して相対的に大きいとは、閾値TH2より大きいことであってもよいし、閾値TH2以上であることであってもよい。
【0114】
閾値TH2は、圧縮機113の液圧縮が生じていると判断可能な電流ベクトル1次成分の下限値である。閾値TH2は、例えば、圧縮機113と同じ仕様の圧縮機を用いて実施される、正常な状態及び液圧縮が生じた疑似的な異常な状態の双方での実験やコンピュータシミュレーション等を通じて予め設定される。
【0115】
一方、診断装置200は、電動機113Aの電流ベクトル1次成分が、圧縮機113の油シール性の低下及び液圧縮の何れか一方が生じていると診断される範囲にない場合、圧縮機113が正常な状態にあると診断する。
【0116】
湿り運転診断処理P108では、診断装置200は、湿り運転診断用特徴量に基づき、冷媒回路を含む冷媒関連機器の運転状態を診断する。
【0117】
冷媒関連機器の運転状態とは、例えば、圧縮機113により搬送される、冷媒関連機器の内部を通流する冷媒の運転状態である。冷媒関連機器の運転状態には、所定の湿り運転の状態と、過熱運転の状態とが含まれる。所定の湿り運転の状態とは、圧縮機113の出口の冷媒のスーパーヒート(過熱度)が、運転条件等から想定される所定基準に対して相対的に小さい運転状態を意味し、過熱運転の状態とは、所定の湿り運転の状態にない運転状態を意味する。
【0118】
例えば、診断装置200は、圧縮機113の出口(吐出側)の冷媒のスーパーヒートに基づき、圧縮機113の出口の冷媒が湿り運転の状態であるか否かを診断する。
【0119】
具体的には、診断装置200は、圧縮機113の出口の冷媒のスーパーヒートが所定の閾値TH3に対して相対的に小さい場合、冷媒関連機器が異常な湿り運転の状態にあると診断する。閾値TH3に対して相対的に小さいとは、閾値TH3より小さいことであってもよいし、閾値TH3以下であることであってもよい。
【0120】
閾値TH3は、圧縮機113の出口の冷媒が所定の湿り運転の状態であると判断可能なスーパーヒートの上限値である。閾値TH3は、固定値であってもよいし、運転条件等により可変される可変値であってもよい。閾値TH3は、例えば、圧縮機113と同じ仕様の圧縮機を用いて実施される、正常な状態及び所定の湿り状態に対応する疑似的な異常な状態の双方での実験やコンピュータシミュレーション等を通じて予め設定される。
【0121】
一方、診断装置200は、圧縮機113の出口の冷媒のスーパーヒートが所定の湿り運転の状態であると診断される範囲にない場合、圧縮機113の出口の冷媒が正常な過熱運転の状態にあると診断する。
【0122】
最終診断処理P110では、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果、及び湿り運転診断処理P108の診断結果の双方に基づき、空気調和機100の異常の有無を診断する。そして、診断装置200は、空気調和機100に異常がある場合、空気調和機100の異常箇所を推定する。
【0123】
例えば、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が表す圧縮機113の状態と、湿り運転診断処理P108の診断結果が表す冷媒関連機器の運転状態との相関関係に基づき、冷媒関連機器の異常の有無を診断し、異常がある場合、異常箇所を推定する。
【0124】
例えば、
図4に示すように、圧縮機診断処理P106の診断結果が表す圧縮機113の状態と、湿り運転診断処理P108の診断結果が表す冷媒関連機器の運転状態との組み合わせに対して、冷媒関連機器の異常の有無及び異常箇所が一義的に決定される。
【0125】
診断装置200は、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108の診断結果が共に正常な状態を表している場合、冷媒関連機器が正常であると診断する。
【0126】
一方、診断装置200は、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108の診断結果のうちの少なくとも一方が異常な状態を表している場合、冷媒関連機器が異常であると診断する。
【0127】
具体的には、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が正常な状態を表し、湿り運転診断処理P108の診断結果が異常な湿り運転状態を表す場合、冷媒関連機器における湿り運転原因部品が故障していると診断してよい。湿り運転原因部品は、冷媒関連機器において、湿り運転の原因となる特定の部品であり、例えば、冷媒回路の電磁弁である。湿り運転の原因となる特定の部品としての電磁弁は、例えば、室外膨張弁116や室内膨張弁121等を含む。
【0128】
また、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が圧縮機113の油シール性の低下の異常状態を表し、湿り運転診断処理P108の診断結果が正常な過熱運転の状態を表す場合、油回路(油経路L7や油経路L8)の詰まりが生じていると推定してよい。
【0129】
また、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が圧縮機113の油シール性の低下の異常状態を表し、湿り運転診断処理P108の診断結果が異常な湿り運転状態を表す場合、湿り運転原因部品が故障していると診断してよい。
【0130】
また、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が圧縮機113の液圧縮の異常状態を表し、湿り運転診断処理P108の診断結果が正常な過熱運転の状態を表す場合、温度センサ118Bが故障していると診断してよい。
【0131】
また、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果が圧縮機113の液圧縮の異常状態を表し、湿り運転診断処理P108の診断結果が異常な湿り運転の状態を表す場合、湿り運転原因部品が故障していると診断してよい。
【0132】
また、診断装置200は、空気調和機100(冷媒関連機器)の異常の有無を診断し、異常がある場合にその原因箇所を推定する代わりに、上述の相関関係(
図4)に基づき、冷媒関連機器の特定箇所の異常の有無を診断(推定)してもよい。特定箇所は、冷媒関連機器の異常の原因箇所として推定可能な湿り運転原因部品、油回路(油経路L7や油経路L8)、及び温度センサ118Bのうちの少なくとも1つである。
【0133】
例えば、診断装置200は、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108の双方の診断結果に基づき、油回路(油経路L7や油経路L8)の異常の有無を診断する。また、診断装置200は、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108の双方の診断結果に基づき、湿り運転原因部品(電磁弁)及び温度センサ118Bの故障の有無を診断してもよい。
【0134】
診断装置200は、例えば、診断結果を補助記憶装置や記録媒体201A等に記録し蓄積させる。これにより、診断システム1のユーザは、診断装置200の補助記憶装置や記録媒体201Aから蓄積されたデータを取り出して、空気調和機100の異常に関する診断結果を時系列で確認することができる。
【0135】
また、診断装置200は、出力装置208を通じて、診断結果をユーザに向けて出力してもよい。これにより、診断システム1のユーザは、空気調和機100の異常に関する診断結果を出力装置208からの視覚的或いは聴覚的な情報によって確認することができる。
【0136】
また、診断装置200は、通信インタフェース206を通じて、診断結果を外部機器に送信してもよい。これにより、外部機器は、診断装置200から受信される診断結果を蓄積することができる。外部機器は、例えば、診断システム1のユーザが利用する端末装置である。これにより、診断システム1のユーザは、自身が利用する端末装置を通じて、空気調和機100の異常に関する診断結果を時系列で確認することができる。また、診断装置200が空気調和機100に含まれる場合、外部機器は、空気調和機100の管理用の端末装置、エッジコントローラ、エッジサーバ、オンプレミスサーバ、クラウドサーバ等であってもよい。
【0137】
このように、本例では、診断装置200は、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108を実施し、双方の診断結果に基づき、空気調和機100(冷媒関連機器)の異常箇所を診断(推定)する。
【0138】
これにより、例えば、対象の状態量の全てを多変量解析に適用して診断を行う場合に比して、圧縮機診断処理P106及び湿り運転診断処理P108のそれぞれで用いる状態量の数(次元)を減らすことができる。そのため、診断のために必要な基準(閾値TH1~TH3)を設定するために収集すべき必要なデータ数を相対的に少なくすることができる。よって、ユーザの手間を低減させ、より容易に空気調和機100の異常に関する診断を実現することができる。
【0139】
また、異常箇所を診断(推定)するための最終診断処理P110は、圧縮機診断処理P106の診断結果が表す状態と、湿り運転診断処理P108の診断結果が表す運転状態との組み合わせにより一義的に決定される(
図4参照)。そのため、診断装置200は、最終診断処理P110を単純な論理演算によって実行することができる。よって、診断装置200は、CPU204の処理負荷の増大を抑制することができる。
【0140】
また、冷媒関連機器の異常の有無を診断する場合、冷媒関連機器の運転に必要なセンサとは、別に診断用の追加のセンサが必要になる可能性がある。例えば、油回路や電磁弁の詰まりの有無を診断するためには、冷媒関連機器の運転に必要な温度センサや圧力センサとは別に、電磁弁や油回路の前後に診断用の温度センサを設置する必要が生じる。これに対して、本例では、診断装置200は、圧縮機診断処理P106の診断結果、及び湿り運転診断処理P108の診断結果から冷媒関連機器の異常を推定することができる。そのため、診断用のセンサを追加する必要がなく、空気調和機100のコスト上昇を抑制することができる。
【0141】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明する。
【0142】
上述の実施形態は、適宜、変形や変更が加えられてもよい。
【0143】
例えば、上述の実施形態において、診断対象は、空気調和機100とは異なる冷凍サイクルを有する機器やシステム等であってもよい。診断対象は、例えば、冷凍機、流体機械、オイルコン等を含む。
【0144】
また、診断対象は、冷凍サイクルを有する機器とは異なる機器やシステム等であってもよい。具体的には、診断対象は、内部に通流する流体を搬送する流体搬送機と、流体搬送機により搬送される流体が内部に通流する流体関連機器とを含む機器やシステムであればよい。これにより、上記と同様の方法によって、診断対象の機器やシステム等に搭載される流体関連機器の異常箇所を推定することができる。
【0145】
[作用]
次に、本実施形態に係る診断装置及びプログラムの作用について説明する。
【0146】
例えば、診断対象の複数の状態量について、多変量解析を適用して診断対象の異常に関する診断を行う技術が知られている。具体的には、診断対象機器に関する複数の状態量のマハラノビス距離を算出することで、マハラノビス距離と閾値との比較により異常の有無を診断することができる。
【0147】
しかしながら、上記の手法では、異常診断のためのマハラノビス距離の閾値を決定する際に、診断対象の正常な状態や異常な状態に対応する基準空間や異常空間を学習するためのデータ収集が必要になる。そのため、例えば、状態量の数(次元数)が相対的に多くなると、いわゆる次元の呪いにおけるデータの希薄性の問題が生じる可能性がある。具体的には、状態量の次元数の増加に応じて、状態量の組み合わせが指数関数的に増大する可能性がある。その結果、取得すべきデータ数が増加し、異常に関する診断を行うためのデータ収集に相対的に長い時間や手間を要する可能性がある。また、状態量の次元数が増加すると、収集されるデータの状態量空間における偏りが生じやすくなる。そのため、収集されたデータの状態量空間における偏りによって、適切な診断基準を生成することができず、その結果、異常の有無を適切に診断できない可能性がある。
【0148】
また、例えば、診断対象の機器の異常の有無を診断する場合、診断対象の状態量を取得するセンサが必要になる。そのため、例えば、診断対象の特定の状態量を取得するセンサが設置されていない場合、追加で設置する必要が生じ、その結果、診断対象の機器のコスト上昇を招来する可能性がある。
【0149】
これに対して、本実施形態では、診断装置は、診断対象に含まれ、診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、流体搬送機の状態を診断する。また、診断装置は、診断対象に含まれ、流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する流体に関する状態量に基づき、流体関連機器の運転状態を診断する。そして、診断装置は、流体搬送機の状態の診断結果、及び流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、流体関連機器の異常箇所を推定する。
【0150】
診断装置は、例えば、上述の診断装置200である。診断対象は、例えば、上述の空気調和機100である。流体は、例えば、上述の冷媒である。流体搬送機は、例えば、上述の圧縮機113である。流体搬送機の状態量は、例えば、上述の電流、電圧、電力、振動、音、超音波、光、磁束等である。流体搬送機の状態は、例えば、上述の圧縮機113の正常状態、油シール性の低下による異常状態、及び液圧縮による異常状態を含む。流体関連機器は、例えば、上述の冷媒関連機器である。流体関連機器の運転状態は、例えば、上述の過熱運転の状態、及び湿り運転の状態を含む。異常箇所は、例えば、上述の湿り運転原因部品(冷媒回路の電磁弁)、油回路(油経路L7や油経路L8)の詰まり、温度センサ118B等を含む。
【0151】
また、本実施形態では、プログラムは、情報処理装置に、第1の診断ステップと、第2の診断ステップと、推定ステップとを実行させる。情報処理装置は、例えば、上述の診断装置200である。具体的には、第1の診断ステップでは、診断対象に含まれ、診断対象の内部で流体を搬送する流体搬送機の状態量に基づき、流体搬送機の状態を診断する。また、第2の診断ステップでは、診断対象に含まれ、流体搬送機に接続される配管を含む流体関連機器の内部に通流する流体に関する状態量に基づき、流体関連機器の運転状態を診断する。そして、推定ステップでは、流体搬送機の状態の診断結果、及び流体関連機器の運転状態の診断結果に基づき、流体関連機器の異常箇所を推定する。
【0152】
情報処理装置は、例えば、上述の診断装置200である。第1の診断ステップは、例えば、上述の圧縮機診断処理P106に相当する処理ステップである。第2の診断ステップは、例えば、上述の湿り運転診断処理P108に相当する処理ステップである。推定ステップは、例えば、上述の最終診断処理P110に相当する処理ステップである。
【0153】
これにより、診断装置や情報処理装置は、流体搬送機の状態の診断と、流体関連機器の運転状態の診断とを別に行った上で、双方の診断結果から流体関連機器の異常箇所を推定することができる。そのため、診断に使用される状態量が、流体搬送機の状態の診断に使用される状態量と流体関連機器の運転状態の診断に使用される状態量とに分けられ、その結果、閾値等のそれぞれの診断の基準を設定するために取得すべきデータ数を抑制することができる。よって、診断装置や情報処理装置は、診断対象の異常に関する診断をより容易に実現することができる。また、取得すべきデータ数(次元数)の抑制によって、データの偏りを抑制することができる。そのため、閾値等の診断の基準をより適切に設定することができ、その結果、診断装置や情報処理装置は、診断対象の異常に関する診断をより適切に行うことができる。また、診断装置や情報処理装置は、流体搬送機の状態の診断結果、及び流体関連機器の運転状態の診断結果から流体関連機器の異常を推定することができる。そのため、診断対象のために追加のセンサを設ける必要がない。よって、診断装置や情報処理装置は、診断対象の流体関連機器のコスト上昇を抑制することができる。
【0154】
また、本実施形態では、診断装置は、診断結果で表される、流体搬送機の状態と流体関連機器の運転状態との相関関係に基づき、流体関連機器の異常箇所を推定する。
【0155】
これにより、診断装置は、例えば、異常箇所ごとに流体搬送機の状態及び流体関連機器の運転状態の相関関係を対応付けておくことで、流体関連機器の異常箇所を推定することができる。
【0156】
また、本実施形態では、流体搬送機の状態量の周波数成分に基づき、流体搬送機の状態を診断してもよい。
【0157】
これにより、診断装置は、例えば、流体搬送機の異常時における流体搬送機の状態量の周波数成分の特徴を考慮して、流体搬送機の状態を診断することができる。
【0158】
また、本実施形態では、流体搬送機の状態量は、流体搬送機に含まれる電動機の電流又は電圧に相関する物理量であってもよい。電流又は電圧に関する物理量は、例えば、上述の電流ベクトル1次成分である。
【0159】
これにより、診断装置は、流体搬送機に含まれる電動機の電流や電圧に関する物理量に基づき、流体搬送機の状態を診断することができる。
【0160】
また、本実施形態では、流体に関する状態量は、流体の圧力、温度、又は飽和温度を含んでもよい。
【0161】
これにより、診断装置は、流体の圧力や温度や飽和温度に基づき、流体関連機器の運転状態を診断することができる。
【0162】
また、本実施形態では、流体搬送機は、電動機、及び電動機により駆動される圧縮機を含んでもよい。電動機及び圧縮機は、例えば、上述の電動機113A及び圧縮機構部113Bである。
【0163】
これにより、診断装置は、電動機及び圧縮機を含む流体搬送機によって内部に流体が通流される診断対象について、流体関連機器の異常箇所を推定することができる。
【0164】
また、本実施形態では、診断対象は、冷凍サイクルを有していてもよい。
【0165】
これにより、診断装置は、冷凍サイクルを有する診断対象について、流体関連機器の異常箇所を推定することができる。
【0166】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0167】
1 診断システム
100 空気調和機
110 室外機
111 四方切換弁
112 アキュムレータ
113 圧縮機
113A 電動機
113B 圧縮機構部
114 油分離器
115 室外熱交換器
115A ファン
116 室外膨張弁
117 駆動装置
118 センサ群
118A 電流センサ
118B 温度センサ
118C 圧力センサ
120 室内機
121 室内膨張弁
122 室内熱交換器
122A ファン
130,140 冷媒経路
180 センサ群
180A 電流センサ
200 診断装置
L1~L6 冷媒経路
L7,L8 油経路
L21,L22,L31,L32 冷媒経路
P102 特徴量算出処理
P104 特徴量算出処理
P106 圧縮機診断処理
P108 運転診断処理
P110 最終診断処理
TH1~TH3 閾値