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特開2024-146167医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング装置、および医用画像処理方法
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  • 特開-医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング装置、および医用画像処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146167
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング装置、および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058906
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 駿
(72)【発明者】
【氏名】朽名 英明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健輔
(72)【発明者】
【氏名】別宮 光洋
(72)【発明者】
【氏名】栃堀 葉南
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA20
4C096AB07
4C096AB11
4C096AD14
4C096DC02
4C096DC05
4C096DC09
4C096DC11
4C096DC27
(57)【要約】
【課題】画質を担保しつつ画像処理の処理時間を短縮すること。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、決定部と、画像処理部と、出力部とを有する。取得部は、画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する入力医用画像データを取得する。決定部は、前記入力医用画像データにおいて、前記入力医用画像データより狭い画像領域であって、前記入力医用画像データに適用される画像処理により前記出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を基づいて決定する。画像処理部は、前記入力医用画像データにおいて前記決定部により決定された範囲に対して前記画像処理を実行する。出力部は、前記画像処理部による前記画像処理を実行することにより、前記出力医用画像データを出力する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する入力医用画像データを取得する取得部と、
前記入力医用画像データにおいて、前記入力医用画像データより狭い画像領域であって、前記入力医用画像データに適用される画像処理により前記出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定する決定部と、
前記入力医用画像データにおいて前記決定部で決定された範囲に対して前記画像処理を実行する画像処理部と、
前記画像処理部による前記画像処理を実行することにより、前記出力医用画像データを出力する出力部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理は、前記入力医用画像データの画質を向上させる画質向上処理と、前記入力医用画像データにおける画像の歪みを補正する歪み補正処理と、のうち少なくとも一つである、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記画像処理を規定するパラメータまたはユーザの入力に基づいて、前記範囲を決定する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理が前記歪み補正処理を含む場合、前記画像処理を規定するパラメータは、前記出力医用画像データの画像領域に対する前記入力医用画像データにおける画像の歪みを示す対応表であって、
前記決定部は、前記対応表を用いて、前記入力医用画像データに対する歪み補正処理により前記出力医用画像データの画質に影響を与える前記範囲を、前記歪み補正処理の適用範囲として決定する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理が前記画質向上処理を含む場合、前記画像処理を規定するパラメータは、前記画質向上処理において用いられるカーネルの大きさであって、
前記決定部は、前記カーネルの大きさと前記歪み補正処理の適用範囲とを用いて、前記入力医用画像データに対する前記画質向上処理により前記出力医用画像データの画質に影響を与える前記範囲を、前記画質向上処理の適用範囲として決定する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記画質向上処理は、前記入力医用画像データにおけるノイズを低減するノイズ低減処理と、前記入力医用画像データにおけるアーチファクトを低減するアーチファクト低減処理と、のうち少なくとも一つである、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記画質向上処理が前記ノイズ低減処理と前記アーチファクト低減処理とを含む場合、前記決定部は、前記ノイズ低減処理に関するカーネルと前記アーチファクト低減処理に関するカーネルとのうち大きいほうのカーネルを用いて、前記入力医用画像データに対する画質向上処理により前記出力医用画像データの画質に影響を与える前記範囲を、前記画質向上処理の適用範囲として決定する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記入力医用画像データの生成において用いられた感度マップのマスクデータを取得し、
前記決定部は、前記マスクデータを前記入力医用画像データに適用したデータをさらに用いて、前記範囲を決定する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
被検体に対する磁気共鳴撮像を実行し、MRデータを収集する撮像部と、
前記MRデータに対するフーリエ変換により、画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する入力医用画像データを取得する取得部と、
前記入力医用画像データにおいて、前記入力医用画像データより狭い画像領域であって、前記入力医用画像データに適用される画像処理により前記出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定する決定部と、
前記入力医用画像データにおける前記決定部で決定された範囲に対して前記画像処理を実行する画像処理部と、
前記画像処理部による前記画像処理を実行することにより、前記出力医用画像データを出力する出力部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する入力医用画像データを取得し、
前記入力医用画像データにおいて、前記入力医用画像データより狭い画像領域であって、前記入力医用画像データに適用される画像処理により前記出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定し、
前記入力医用画像データにおいて決定された範囲に対して前記画像処理を実行し、
前記画像処理を実行することにより、前記出力医用画像データを出力すること、
を備える医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング装置、および医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置は、折り返しアーチファクトの抑制等のため、最終的に出力される画像(以下、最終出力画像と呼ぶ)の視野領域よりも広い領域を撮像することがある。このとき、最終出力画像の画質等の影響を考慮し、従来では、上記の広い領域のデータすべてに対して超解像処理などの重たい画像処理を行っている。このため、従来では、最終出力画像が得られるまでに時間がかかるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-201823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を担保しつつ画像処理の処理時間を短縮することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、決定部と、画像処理部と、出力部とを有する。取得部は、画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する入力医用画像データを取得する。決定部は、前記入力医用画像データにおいて、前記入力医用画像データより狭い画像領域であって、前記入力医用画像データに適用される画像処理により前記出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定する。画像処理部は、前記入力医用画像データにおいて前記決定部で決定された範囲に対して前記画像処理を実行する。出力部は、前記画像処理部による前記画像処理を実行することにより、前記出力医用画像データを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る医用画像処理装置の一例を示すブロック図。
図2図2は、実施形態に係る実施形態に係るMRI装置の一例を示す図。
図3図3は、実施形態に係り、歪み補正処理の適用範囲の一例を示す図。
図4図4は、実施形態に係る歪み補正範囲の一例を示す図。
図5図5は、実施形態に係り、歪み補正範囲と画像向上処理を実現するCNNのカーネルと畳み込みレイヤーの数とに基づいて決定される画質向上範囲の一例を示す図。
図6図6は、実施形態に係り、ノイズ低減処理の実行後にアーチファクト低減処理が実行され、続いてGDC処理が実行される一例を示す図。
図7図7は、実施形態に係る画像処理の手順の一例を示すフローチャート。
図8図8は、実施形態の第1応用例に係り、画像処理として画質向上処理(CNN)と歪み補正処理とが適用される場合における統合範囲の一例を示す図。
図9図9は、実施形態の第2応用例に係り、マスクデータを用いた画像処理が適用される範囲の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置、および医用画像処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、医用画像処理装置1の一例を示すブロック図である。医用画像処理装置1は、例えば、医用画像を生成可能な各種モダリティや、院内などにおけるサーバなどに搭載される。なお、医用画像処理装置1における各種機能は、医用画像管理システム(以下、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)のサーバや、病院情報システム(以下、HIS(Hospital Information System)と呼ぶ)のサーバなどに搭載されてもよい。このとき、医用画像処理装置1は、ネットワークを介して、磁気共鳴撮像を実行可能な各種医用画像撮像装置2に接続される。このとき、医用画像撮像装置2は、例えば、既知のMRI装置に相当する。
【0009】
また、本医用画像処理装置1における各種機能が搭載されたとは、例えば、MRI装置、PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出コンピュータ断層撮像)-MRI装置、SPECT(single photon emission computed tomography:単一光子放出コンピュータ断層撮像)-MRI装置などである。以下、説明を具体的にするために、医用画像処理装置1は、MRI装置に搭載されているものとして説明する。このとき、MRI装置は、処理回路15における各種機能を有することとなる。
【0010】
(実施形態)
図2は、本実施形態に係るMRI装置100の一例を示す図である。図2に示すように、MRI装置100における医用画像処理装置1は、入出力インターフェース17をさらに有する。なお、医用画像処理装置1は、図1に示すように、入出力インターフェース17を非搭載であってもよい。図2に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路(システム制御部)109と、送信回路113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路119と、撮像制御回路(収集部)121と、システム制御回路(システム制御部)123と、記憶装置125と、医用画像処理装置1とを備える。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の略円筒状に形成された磁石である。静磁場磁石101は、内部の空間に略一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、円筒形の冷却容器の内面側に配置される。傾斜磁場コイル103は、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)を形成する。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR(Magnetic Resonance)信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0013】
傾斜磁場電源105は、撮像制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0014】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。
【0015】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路である。寝台制御回路109は、入出力インターフェース17を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向、場合によっては左右方向へ移動させる。
【0016】
送信回路113は、撮像制御回路121の制御により、ラーモア周波数で変調された高周波パルスを送信コイル115に供給する。例えば、送信回路113は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、RFアンプなどを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択部は、発振部によって発生したRFパルスの位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力されたRFパルスの周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力されたRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RFアンプは、振幅変調部から出力されたRFパルスを増幅して送信コイル115に供給する。
【0017】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRF(Radio Frequency)コイルである。送信コイル115は、送信回路113からの出力に応じて、高周波磁場に相当するRFパルスを発生する。
【0018】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。以下、説明を具体的にするために、受信コイル117は、複数のコイルエレメントを有するコイルアレイとして説明する。
【0019】
なお、受信コイル117は、一つのコイルエレメントにより構成されてもよい。また、図2において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像部位に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0020】
受信回路119は、撮像制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換して、MRデータを生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、撮像制御回路121に出力する。例えば、MRデータは、コイルエレメントごとに生成され、コイルエレメントを識別するタグとともに、撮像制御回路121に出力される。
【0021】
撮像制御回路121は、被検体Pに対する磁気共鳴撮像により、MRデータを収集する。具体的には、撮像制御回路121は、処理回路15から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査の種類に応じたパルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給される高周波パルスの大きさや時間幅、送信回路113により送信コイル115に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。撮像制御回路121は、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路119からMRデータを受信すると、受信したMRデータを医用画像処理装置1等へ転送する。撮像制御回路121は、撮像部に相当する。
【0022】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムをメモリ13から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0023】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ13に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリ13にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0024】
システム制御回路123は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有し、システム制御機能によりMRI装置100を制御する。具体的には、システム制御回路123は、記憶装置125に記憶されたシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。
【0025】
例えば、システム制御回路123は、入出力インターフェース17を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置125から読み出す。システム制御回路123は、撮像プロトコルを撮像制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。システム制御回路123は、例えばプロセッサにより実現される。なお、システム制御回路123は、処理回路15に組み込まれてもよい。このとき、システム制御機能は処理回路15により実行され、処理回路15は、システム制御回路123の代替として機能する。
【0026】
記憶装置125は、システム制御回路123において実行される各種プログラム、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置125は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD(Hard disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等である。また、記憶装置125は、CD(Compact Disc)-ROMドライブやDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、記憶装置125に記憶されるデータは、メモリ13に記憶されてもよい。このとき、メモリ13は、記憶装置125の代替として機能する。
【0027】
医用画像処理装置1は、通信インターフェース11と、メモリ13と、処理回路15とを有する。図1および図2に示すように、医用画像処理装置1において、通信インターフェース11と、メモリ13と、処理回路15とはバスにより電気的に接続されている。図1および図2に示すように、医用画像処理装置1は、通信インターフェース11を介して、ネットワークに接続されている。ネットワークには、例えば、各種モダリティや、HIS、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)等の医療機関内の情報処理システムと互いに通信可能に接続される。なお、図1に示す医用画像処理装置1には、操作者の各種指示を入力するための入力インターフェースや、画像処理機能157により生成された医用画像を表示するディスプレイ(出力インターフェース)を、図2に示すように入出力インターフェース17を有していてもよい。
【0028】
通信インターフェース11は、例えば、被検体Pに対する検査において当該被検体Pを撮像する各種モダリティや、HIS、PACSなどとの間でデータ通信を行う。通信インターフェース11と各種モダリティおよび病院情報システムとの通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、HL7(Health Level 7)、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)、又はその両方等が挙げられる。
【0029】
メモリ13は、種々の情報を記憶する記憶回路により実現される。例えば、メモリ13は、HDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ13は、記憶部に相当する。なお、メモリ13は、HDDやSSD等以外にも、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、CD(Compact Disc)およびDVD(Digital Versatile Disc)などの光学ディスク、可搬性記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。
【0030】
メモリ13は、処理回路15により実現される取得機能151、再構成機能153、決定機能155、画像処理機能157、および出力機能159を、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する。メモリ13は、取得機能151により通信インターフェース11を介して受信された各種データを記憶する。具体的には、メモリ13は、例えば、取得機能151により撮像制御回路121または医用画像撮像装置2から取得されたMRデータを記憶する。また、メモリ13は、再構成機能153および画像処理機能157により生成された磁気共鳴画像(以下、MR画像と呼ぶ)を記憶する。また、医用画像処理装置1が各種画像サーバなどにより実現される場合、メモリ13は、取得機能151により取得された医用画像を記憶する。
【0031】
また、メモリ13は、画像処理機能157において実行される各種画像処理に関するプログラム、アプリケーションソフト、学習済みモデルなどを記憶する。画像処理の対象となる画像は、例えば、再構成機能153により生成されたMR画像、および/または取得機能151により取得された医用画像などである。以下、説明を具体的にするために、画像処理の対象を含む(画像処理に入力される)医用画像のデータを、入力医用画像データと呼ぶ。また、画像処理後の(画像処理から出力される)医用画像のデータを出力医用画像データと呼ぶ。
【0032】
本実施形態における入力医用画像データは、画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する。出力医用画像データの画像領域は、例えば、予め入出力インターフェース17を介したユーザの指示により、設定される。ユーザにより設定された出力医用画像データの画像領域は、視野領域(以下、FOV(Field of View)と呼ぶ)に対応する。すなわち、入力医用画像データの画像領域は、FOVより広い画像領域を有する。換言すれば、入力医用画像データの画像領域は、FOVを包含する。
【0033】
画像処理は、例えば、入力医用画像データにおける画像の歪みを補正する歪み補正処理と、入力医用画像データの画質を向上させる画質向上処理と、のうち少なくとも一つを有する。入力医用画像データがMR画像である場合、歪み補正処理は、傾斜磁場の歪みに起因する入力医用画像データにおける画像の歪みを補正する処理である。画像処理は、処理の計算に時間を要する重い処理である。画像処理の内容は、例えば、当該画像処理を規定するパラメータにより特徴づけられる。歪み補正処理は、傾斜磁場歪み補正(Gradient Distortion Correction:以下、GDCと呼ぶ)とも称される。なお、歪み補正処理は、GDCに限定されず他の処理であってもよい。
【0034】
メモリ13は、GDCに関して、例えば、出力医用画像データの画像領域(FOV)に対する入力医用画像データにおける画像の歪みを、対応表として記憶する。例えば、MRI装置100の出荷時、据え付け時、および/またはメンテナンス時などにおいて、傾斜磁場の歪みに起因する画像の歪みが、出力医用画像データの画像領域(FOV)と入力医用画像データの画像領域との対応表(Look Up Table)として生成される。当該対応表は、例えば、出力医用画像データの画像領域(FOV)における複数の位置(例えば画素)が、入力医用画像データの画像領域におけるどの位置に対応しているかを示す、座標の対応表である。メモリ13は、当該対応表を記憶する。
【0035】
GDCは、出力医用画像データの画像領域に対する入力医用画像データにおける画像の歪みを用いて、入力医用画像データにおける画像の歪みを補正する。すなわち、歪み補正処理を規定するパラメータは、出力医用画像データの画像領域に対する入力医用画像データにおける画像の歪み対応表である。GDCは、画像の歪みを示す対応表を用いて、入力医用画像データにおける画像の歪みを補正して、出力医用画像データを出力する。
【0036】
画質向上処理は、例えば、入力医用画像データにおけるノイズを低減するノイズ低減処理と、入力医用画像データにおけるアーチファクトを低減するアーチファクト低減処理と、のうち少なくとも一つである。
【0037】
ノイズ低減処理は、例えば、入力医用画像データにおけるノイズを低減可能な学習済みモデル(以下、ノイズ低減モデルと呼ぶ)、または入力医用画像データにおけるノイズを低減可能なノイズ低減フィルタにより実現される。ノイズ低減処理は、ノイズ低減モデルまたはノイズ低減フィルタを入力医用画像データに適用することで、ノイズが低減された出力医用画像データを出力する。
【0038】
アーチファクト低減処理は、例えば、入力医用画像データにおいて発生したアーチファクトを低減可能な学習済みモデル(以下、アーチファクト低減モデルと呼ぶ)により実現される。アーチファクト低減モデルにより低減されるアーチファクトは、例えば、ギブス(Gibbs)アーチファクトである。ギブスアーチファクトは、打ち切りアーチファクト、トランケーション(truncation)アーチファクト、リンギング(ringing)アーチファクトなどとも称される。
【0039】
ノイズ低減モデルおよびアーチファクト低減モデルを実現する学習済みモデルは、例えば、DNN(Deep Neural Network)などにより予め学習されたニューラルネットワークを用いたモデルなどにより実現される。学習済みモデルの適用例として、例えば、CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)がある。CNNは、例えば、少なくとも一つの畳み込みフィルタと、入力層と、複数の畳み込み層と、出力層とを有する。畳み込みフィルタは、畳み込みに関するカーネルに相当する。異なる畳み込みフィルタは、異なる大きさが異なるカーネルを有する。ノイズ低減モデルおよびアーチファクト低減モデルとしては既知のものが適用可能であるため、説明は省略する。
【0040】
ノイズ低減フィルタは、平滑化フィルタ、ガウシアンフィルタ、エッジ強調フィルタなどの既知のフィルタ処理により実現される。ノイズ低減フィルタは、荷重マトリックスとも称されるカーネルを有する。ノイズ低減フィルタとしては既知のものが適用可能であるため、説明は省略する。
【0041】
以上により、画質向上処理は、各種カーネルを用いて、入力医用画像データにおける画像の画質を向上させる。画質向上処理を規定するパラメータは、例えば、当該画質向上処理において用いられるカーネルの大きさである。なお、画質向上処理がCNNなどの学習済みモデルで実現される場合、画質向上処理を規定するパラメータは、当該画質向上処理において用いられるカーネルの大きさに加えて、畳み込み層の総数(畳み込みレイヤーの数)を有しいてもよい。これらのことから、画質向上処理は、画質向上処理に関するカーネルを用いて、入力医用画像データの画質を向上させて、出力医用画像データを出力する。
【0042】
処理回路15は、医用画像処理装置1の全体の制御を行う。処理回路15は、上述のプロセッサなどにより実現される。処理回路15は、取得機能151、再構成機能153、決定機能155、画像処理機能157、および出力機能159などを備える。取得機能151、再構成機能153、決定機能155、画像処理機能157、および出力機能159をそれぞれ実現する処理回路15は、取得部、再構成部、決定部、画像処理部、出力部に相当する。取得機能151、再構成機能153、決定機能155、画像処理機能157、および出力機能159などの各機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ13に記憶されている。処理回路15は、プロセッサである。例えば、処理回路15は、プログラムをメモリ13から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、取得機能151、再構成機能153、決定機能155、画像処理機能157、および出力機能159などの各機能を有することとなる。
【0043】
処理回路15は、取得機能151により、MRデータに対するフーリエ変換の実行に伴って再構成機能153により生成された入力医用画像データを取得する。入力医用画像データは、上述のように、画像処理機能157による画像処理後の出力医用画像データより広い画像領域を有する。例えば、図2に示すように、処理回路15がMRI装置100に搭載されている場合、再構成機能153により再構成されたMR画像を、入力医用画像データとして、再構成機能153から取得する。また、例えば、図1に示すように、処理回路15が単独の医用画像処理装置1に搭載された場合、取得機能151は、MR装置などの医用画像撮像装置2により生成された医用画像を、入力医用画像データとして、医用画像撮像装置2またはPACSなどの医用画像保管装置から、通信インターフェース11を介して取得する。取得機能151は、取得した入力医用画像データをメモリ13に記憶させてもよい。
【0044】
処理回路15は、再構成機能153により、MRデータに基づいてMR画像を、入力医用画像データとして再構成する。具体的には、再構成機能153は、MRデータに対してフーリエ変換を適用することで、入力医用画像データを生成する。再構成機能153は、生成された入力医用画像データを、メモリ13に記憶させる。
【0045】
処理回路15は、決定機能155により、入力医用画像データに適用される当該画像処理により出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定する。出力医用画像データの画像領域(FOV)は、当該出力医用画像データの画像領域の画質に影響を与える範囲に包含される。すなわち、当該範囲は、FOVを含み、画像処理による処理結果がFOVに影響する領域に相当する。より詳細には、画像処理がFOVの外側の領域、すなわちFOVの外縁の周辺の領域に含まれる画素値を用いる場合、決定機能155により決定される範囲は、入力医用画像データにおいて、FOVの外側の領域とFOVとを含む画像領域に対応する。決定機能155は、当該画像処理を規定するパラメータまたは入出力インターフェース17を介したユーザの入力に基づいて、当該範囲を決定する。ユーザの入力は、例えば、FOV設定時に実施されてもよい。例えば、決定機能155は、ユーザが任意に手動で範囲をクロッピングして、当該範囲を決定する。
【0046】
決定される範囲は、入力医用画像データにおいて、入力医用画像データの画像領域より狭い領域である。例えば、画像処理機能157により実行される画像処理が歪み補正処理を含む場合、決定機能155は、出力医用画像データの画像領域に対する入力医用画像データにおける画像の歪みを示す対応表を、メモリ13から読みだす。決定機能155は、当該歪み補正処理を規定するパラメータとして当該対応表を用いて、入力医用画像データに対する歪み補正処理により出力医用画像データの画質に影響を与える範囲を、歪み補正処理の適用範囲として決定する。
【0047】
図3は、歪み補正処理の適用範囲(以下、歪み補正範囲と呼ぶ)の一例を示す図である。図3における矢印は、歪み補正処理の流れを示している。図3に示す出力医用画像データOMIDは、FOVに対応する。図3に示す入力医用画像データIMIDは、出力医用画像データOMIDを包含し、出力医用画像データOMIDより大きい画像領域を有する。GDCの実行前において、決定機能155は、対応表を用いて、図3に示すように、入力医用画像データIMIDに対して、FOVに外接する矩形の歪み補正範囲GDCAを設定する。具体的には、決定機能155は、対応表を用いて、出力医用画像データOMIDを示す矩形のFOVの4つの頂点の座標を、入力医用画像データIMIDにおいて特定する。次いで、決定機能155は、入力医用画像データIMIDにおいて特定された4つの点を結ぶことにより、入力医用画像データIMIDにおいて、歪み補正範囲GDCAを決定する。
【0048】
なお、歪み補正範囲GDCAは、図3に示すFOVの外接の矩形に限定されない。例えば、歪み補正範囲GDCAは、出力医用画像データOMIDを示す矩形のFOVの4辺に対応するものであってもよい。図4は、歪み補正範囲の一例を示す図である。図4に示す入力医用画像データIMIDは、出力医用画像データOMIDを対応表により特定した歪み補正範囲GDCAを有する。例えば、決定機能155は、対応表を用いて、出力医用画像データOMIDを示す矩形のFOVの4つの辺に対応する複数の座標を、入力医用画像データIMIDにおいて特定する。次いで、決定機能155は、入力医用画像データIMIDにおいて特定された4つの辺を結ぶことにより、入力医用画像データIMIDにおいて、歪み補正範囲GDCAを決定する。
【0049】
画像処理機能157により実行される画像処理が画質向上処理を含む場合、決定機能155は、画質向上処理において用いられるカーネルの大きさを、メモリ13から読みだす。決定機能155は、画質向上処理を規定するパラメータとして、当該カーネルの大きさを用いて、入力医用画像データに対する画質向上処理により出力医用画像データの画質に影響を与える範囲を、画質向上処理の適用範囲(以下、画質向上範囲と呼ぶ)として決定する。例えば、画像処理が画質向上処理と歪み補正処理とを含む場合、決定機能155は、カーネルの大きさと歪み補正処理の適用範囲とを用いて、画質向上範囲を決定する。以下、説明を具体的にするために、画質向上処理は、CNNにより実現されるものとする。
【0050】
図5は、歪み補正範囲GDCAと画像向上処理を実現するCNNのカーネルと畳み込みレイヤーの数とに基づいて決定される画質向上範囲IQIAの一例を示す図である。図5に示すように、決定機能155は、例えば、歪み補正範囲GDCAの周囲に、例えばカーネルの大きさを付与することで、入力医用画像データIMIDにおいて画質向上範囲IQIAを決定する。
【0051】
処理回路15は、画像処理機能157により、入力医用画像データIMIDにおいて決定された範囲に対して、画像処理を実行する。すなわち、画像処理機能157は、入力医用画像データにおいて決定機能155で決定された範囲に対して画像処理を実行する。例えば、画像処理機能157は、図3に示すように、入力医用画像データIMIDにおける歪み補正範囲GDCAに対してGDCを実行することで、出力医用画像データOMIDを生成する。GDCの処理内容は、既知のものが適用可能であるため、説明は省略する。また、画像処理機能157は、図5に示すように、入力医用画像データIMIDにおける画質向上範囲IQIAに対して画質向上処理を実行することで、画質が向上された医用画像データ(以下、画質向上データと呼ぶ)IQIDを生成する。次いで、画像処理機能157は、図5に示すように、画質向上データIQIDにおける歪み補正範囲GDCAに対してGDCを実行することで、出力医用画像データOMIDを生成する。
【0052】
なお、図5では、一つの画質向上処理が実行されているが、本実施形態は、これに限定されない。例えば、画像向上処理は複数実行されてもよい。例えば、画質向上処理としてノイズ低減処理とアーチファクト低減処理とが適用される場合、画像処理機能157は、予め設定された順序で、ノイズ低減処理とアーチファクト低減処理とを実行する。
【0053】
図6は、ノイズ低減処理の実行後にアーチファクト低減処理が実行され、続いてGDC処理が実行される一例を示す図である。なお、図6では、ノイズ低減処理の後にアーチファクト低減処理が実行されているが、ノイズ低減処理とアーチファクト低減処理との実行順序はこれに限定されない。例えば、アーチファクト低減処理の後にノイズ低減処理が実行されてもよい。図6に示すように、画像処理に先立って、歪み補正範囲GDCAと、ノイズ低減処理が実行される範囲(以下、ノイズ低減範囲NRAと呼ぶ)と、アーチファクト低減処理が実行される範囲(以下、アーチファクト低減範囲ARAと呼ぶ)とが、決定機能155により決定される。例えば、ノイズ低減範囲NRAは、例えば、歪み補正範囲GDCAとノイズ低減処理に関するカーネルの大きさなどにより、決定機能155により予め決定される。アーチファクト低減範囲ARAは、例えば、歪み補正範囲GDCAとノイズ低減処理に関するカーネルの大きさなどにより、決定機能155により予め決定される。
【0054】
処理回路15は、画像処理機能157により、入力医用画像データIMIDにおいて設定されたノイズ低減範囲NRAに対して、アーチファクト低減処理を実行し、ノイズが低減されたノイズ低減画像NRIを生成する。次いで、画像処理機能157は、ノイズ低減画像NRIにおいて設定されたアーチファクト低減範囲ARAに対して、アーチファクト低減処理を実行し、ノイズおよびアーチファクトが低減された低減画像RIを生成する。入力医用画像データIMIDに対してノイズ低減処理とアーチファクト低減処理とが適用された上記低減画像RIは、入力医用画像データIMIDにおけるアーチファクトとノイズとが低減された画像である。続いて、画像処理機能157は、低減画像RIにおける歪み補正範囲GDCAに対してGDCを実行することで、出力医用画像データOMIDを生成する。
【0055】
処理回路15は、出力機能159により、決定された範囲に対する画像処理の実行により、出力医用画像データOMIDを出力する。例えば、出力機能159は、画像処理の結果の出力医用画像データOMIDを、入出力インターフェース17におけるディスプレイに出力する。また、出力機能159は、出力医用画像データOMIDを、メモリ13および/または記憶装置125に出力する。また、出力機能159は、出力医用画像データOMIDを、通信インターフェース11およびネットワークを介して、PACSなどの医用画像保管装置に出力する。なお、出力機能159は、出力医用画像データOMIDを、通信インターフェース11およびネットワークを介して、院内および/または院外に設置された各種サーバに出力してもよい。
【0056】
以上のように構成された本実施形態のMRI装置100または医用画像処理装置1により実行される画像処理の手順について、図7を用いて説明する。図7は、画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
(画像処理)
(ステップS701)
撮像制御回路121は、被検体Pに対する磁気共鳴撮像を実行し、MRデータを収集する。撮像制御回路121は、収集されたMRデータを、医用画像処理装置1および/または記憶装置125へ転送する。なお、図1に示すように、医用画像処理装置1単体で画像処理が実現される場合、本フローチャートにおけるステップS701では、取得機能151がMRデータを取得する処理となる。
【0058】
(ステップS702)
処理回路15は、再構成機能153により、MRデータに対してフーリエ変換を実行する。すなわち、再構成機能153は、MRデータから入力医用画像データIMIDを再構成する。これにより、取得機能151は、入力医用画像データIMIDを取得する。なお、図1に示すように、医用画像処理装置1単体で画像処理が実現される場合であって、再構成機能153が搭載されていない場合、ステップS701に処理は不要となる。このとき、取得機能151は、MRI装置により再構成された入力医用画像データIMIDを、MRI装置から取得する。
【0059】
(ステップS703)
処理回路15は、取得機能151により、入力医用画像データIMIDに適用される画像処理を規定するパラメータを、メモリ13から取得する。画像処理を規定するパラメータは、当該画像処理の内容に相当する。画像処理が歪み補正処理(GDC)である場合、当該パラメータは上述の対応表に相当する。また、画像処理が画質向上処理であって、ノイズ低減処理および/またはアーチファクト低減処理がフィルタで実現される場合、当該パラメータは上述のフィルタのカーネルに相当する。また、画像処理が画質向上処理であって、ノイズ低減処理および/またはアーチファクト低減処理が学習済みモデル(例えば、CNN)で実現される場合、当該パラメータは上述の畳み込みに関するカーネルおよび畳み込みレイヤーの数に相当する。
【0060】
(ステップS704)
処理回路15は、決定機能155により、入力医用画像データIMIDにおける画像処理の適用範囲を決定する。例えば、画像処理が歪み補正処理である場合、決定機能155は、画像処理を規定するパラメータに対応する対応表に基づいて、入力医用画像データIMIDにおける歪み補正範囲GDCAを決定する。また、画像処理が画質向上処理であって、ノイズ低減処理および/またはアーチファクト低減処理が学習済みモデル(例えば、CNN)で実現される場合、決定機能155は、畳み込みに関するカーネルおよび畳み込みレイヤーの数に基づいて、画質向上範囲IQIAを決定する。画像処理として歪み補正処理と画質向上処理とが実行される場合、決定機能155は、歪み補正範囲GDCAと畳み込みに関するカーネルと畳み込みレイヤーの数とに基づいて、入力医用画像データIMIDにおける画質向上範囲IQIAを決定する。なお、決定機能155は、入出力インターフェース17を介したユーザの入力(クロッピング)に基づいて、当該範囲を決定してもよい。
【0061】
(ステップS705)
処理回路15は、画像処理機能157により、入力医用画像データIMIDにおける決定された適用範囲に対して画像処理を実行する。例えば、図3に示す場合、画像処理機能157は、入力医用画像データIMIDにおける歪み補正範囲GDCAに対して歪み補正処理を実行する。また、図5に示す場合、画像処理機能157は、入力医用画像データIMIDにおける画質向上範囲IQIAに対して画質向上処理を実行し、画質向上データIQIDを生成する。次いで、画像処理機能157は、画質向上データIQIDに設定された歪み補正範囲GDCAに対して歪み補正処理を実行する。
【0062】
また、図6に示す場合、画像処理機能157は、入力医用画像データIMIDにおけるノイズ低減範囲NRAに対してノイズ低減処理を実行し、ノイズ低減画像NRIを生成する。次いで、画像処理機能157は、ノイズ低減画像NRIに設定されたアーチファクト低減範囲ARAに対してアーチファクト低減処理を実行する。続いて、画像処理機能157は、低減画像RIに設定された歪み補正範囲GDCAに対して歪み補正処理を実行する。以上により、本ステップでは、出力医用画像データOMIDが生成される。
【0063】
(ステップS706)
処理回路15は、出力機能159により、画像処理の実行により生成された出力医用画像データOMIDを出力する。例えば、出力機能159は、出力医用画像データOMIDを、入出力インターフェース17におけるディスプレイに出力する。また、図1に示すように、医用画像処理装置1単体で画像処理が実現される場合、出力機能159は、通信インターフェース11およびネットワークを介して、PACSなどの医用画像保管装置、ビューワなどに、出力医用画像データOMIDを出力する。以上により、本実施形態の画像処理は完了する。
【0064】
以上に述べた実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、画像処理後の出力医用画像データOMIDより広い画像領域を有する入力医用画像データIMIDを取得し、入力医用画像データIMIDにおいて、入力医用画像データIMIDより狭い画像領域であって、入力医用画像データIMIDに適用される画像処理により出力医用画像データOMIDの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定し、入力医用画像データIMIDにおいて決定された範囲に対して画像処理を実行し、決定された範囲に対する前記画像処理の実行により、出力医用画像データOMIDを出力する。
【0065】
また、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1において実行される画像処理は、入力医用画像データIMIDの画質を向上させる画質向上処理と、入力医用画像データIMIDにおける画像の歪みを補正する歪み補正処理と、のうち少なくとも一つである。また、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、画像処理を規定するパラメータまたはユーザの入力に基づいて、画像処理の適用範囲を決定する。また、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1において実行される画質向上処理は、入力医用画像データIMIDにおけるノイズを低減するノイズ低減処理と、入力医用画像データIMIDにおけるアーチファクトを低減するアーチファクト低減処理と、のうち少なくとも一つである。
【0066】
また、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1において画像処理が歪み補正処理を含む場合、画像処理を規定するパラメータは、出力医用画像データOMIDの画像領域に対する入力医用画像データIMIDにおける画像の歪みを示す対応表であって、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、当該対応表を用いて、入力医用画像データIMIDに対する歪み補正処理により出力医用画像データOMIDの画質に影響を与える範囲を、歪み補正処理の適用範囲として決定する。
【0067】
また、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1において画像処理が画質向上処理を含む場合、当該画像処理を規定するパラメータは、画質向上処理において用いられるカーネルの大きさであって、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、カーネルの大きさと歪み補正処理の適用範囲とを用いて、入力医用画像データIMIDに対する画質向上処理により出力医用画像データOMIDの画質に影響を与える当該範囲を、画質向上処理の適用範囲として決定する。
【0068】
これらのことから、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1によれば、入力医用画像データIMIDのデータ領域よりも小さく、かつ、出力医用画像データ(FOV)OMIDの画質に影響するデータ領域で、画像処理を実行することができる。すなわち、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1によれば、FOVの画質に影響する範囲を決定し、その範囲に対して画像処理を実行することができる。このため、実施形態に係るMRI装置100および医用画像処理装置1によれば、出力医用画像データ(FOV)OMIDの画質を従来と同様な画質で担保することができ、さらに従来よりも画像処理が適用されるデータ領域が小さいため、従来の比べて画像処理の処理速度を向上させることができる。
【0069】
(第1応用例)
本応用例は、入力医用画像データIMIDに対して複数の画像処理が適用される場合、複数の画像処理の処理内容を考慮して、全ての画像処理により適用される範囲(以下、統合範囲と呼ぶ)を決定することにある。例えば、画質向上処理がノイズ低減処理とアーチファクト低減処理とを含む場合、処理回路15は、決定機能155により、ノイズ低減処理に関するカーネルとアーチファクト低減処理に関するカーネルとのうち大きいほうのカーネルを用いて、入力医用画像データIMIDに対する画質向上処理により出力医用画像データOMIDの画質に影響を与える範囲を、画質向上処理の適用範囲(統合範囲)として決定する。なお、決定機能155は、歪み補正範囲GDCAを用いて、画質向上処理の適用範囲を決定してもよい。このとき、決定機能155は、画質向上処理および歪み補正処理を含む画像処理に亘って統一した画像処理の範囲(統合範囲)を決定することができる。
【0070】
図8は、画像処理として画質向上処理(CNN)と歪み補正処理とが適用される場合における統合範囲IAの一例を示す図である。図8に示すように、統合範囲IAは歪み補正範囲GDCAを包含するため、統合範囲IAは、画質向上範囲IQIAに相当するものとなる。このとき、処理回路15は、画像処理機能157により、画質向上処理(CNN)と歪み補正処理とを、ともに統合範囲IAを用いて実行する。
【0071】
以上に述べた実施形態の第1応用例に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、例えば、画質向上処理がノイズ低減処理とアーチファクト低減処理とを含む場合、ノイズ低減処理に関するカーネルとアーチファクト低減処理に関するカーネルとのうち大きいほうのカーネルを用いて、入力医用画像データIMIDに対する画質向上処理により出力医用画像OMIDデータの画質に影響を与える範囲を、画質向上処理の適用範囲として決定する。これにより、第1応用例に係るMRI装置100および医用画像処理装置1によれば、画像処理の内容に応じた当該画像処理が適用される範囲を決定する必要はないため、画像処理の範囲の設定に関する計算コストを削減することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0072】
(第2応用例)
本応用例は、入力医用画像データIMIDがパラレルイメージングにより再構成された場合、当該パラレルイメージングに関する感度マップのマスクを用いて、当該画像処理が適用される範囲を決定することにある。例えば、処理回路15は、取得機能151により、入力医用画像データIMIDの生成において用いられた感度マップのマスクデータを、例えばメモリ13から取得する。なお、医用画像処理装置1単体で画像処理が実現される場合、取得機能151は、入力医用画像データIMIDが生成されたMRI装置から、マスクデータを取得する。マスクデータは、例えば、感度マップにおいて感度が所定の閾値未満となる画素を、0に置き換えたデータ(0で埋めたデータ)に相当する。
【0073】
処理回路15は、決定機能155により、取得されたマスクデータを入力医用画像データIMIDに適用したデータをさらに用いて、画像処理が適用される範囲を決定する。例えば、決定機能155は、入力医用画像データIMIDにおけるFOVに対してマスクデータを適用する。これにより、入力医用画像データIMIDにおけるFOVに対して0以外が刈り込まれた(クロッピングされた)データ(以下、マスク切り出しデータと呼ぶ)が抽出される。すなわち、入力医用画像データIMIDにおけるFOVは、マスクデータを用いてクロッピングされる(切り出される)。次いで、決定機能155は、マスク切り出しデータにおいて、前述の対応表を用いて歪み補正範囲GDCAを決定する。例えば、決定機能155は、入力医用画像データIMIDにおいて、マスク切り出しデータにおけるFOVに外接する矩形を、歪み補正範囲GDCAとして決定する。なお、決定機能155は、入力医用画像データIMIDにおけるマスク切り出しデータに対応する領域を、歪み補正範囲GDCAとして決定してもよい。続いて、決定機能155は、実施形態と同様に、歪み補正範囲GDCAと画質向上処理に関するカーネルなどとを用いて、画質向上処理の適用範囲を決定する。
【0074】
図9は、マスクデータMDを用いた画像処理が適用される範囲の一例を示す図である。図9に示すように、マスク切り出しデータMCDは、入力医用画像データIMIDに対してマスクデータMDを適用することで生成される。図9に示すように、歪み補正範囲GDCAは、入力医用画像データIMIDにおいて、マスク切り出しデータMCDにおけるFOVに外接する矩形である。画質向上範囲IQIAは、マスク切り出しデータMCDを用いて決定された歪み補正範囲GDCAと、画質向上処理に関するカーネルなどとを用いて、決定される。
【0075】
以上に述べた実施形態の第2応用例に係るMRI装置100および医用画像処理装置1は、入力医用画像データIMIDの生成において用いられた感度マップのマスクデータMDを取得し、マスクデータMDを入力医用画像データIMIDに適用したデータ(切り出しデータMCD)をさらに用いて、画像処理の適用範囲を決定する。これにより、本応用例によれば、図6などに比べて図9に示すように、画像処理の適用範囲をさらに縮小させることができる。これらのことから、本応用例によれば、出力医用画像データ(FOV)OMIDの画質を従来と同様な画質で担保しつつ、画像処理の処理速度をさらに向上させることができる。
【0076】
実施形態における技術的思想を医用画像処理方法で実現する場合、当該医用画像処理方法は、画像処理後の出力医用画像データOMIDより広い画像領域を有する入力医用画像データIMIDを取得し、入力医用画像データIMIDにおいて、入力医用画像データIMIDより狭い画像領域であって、入力医用画像データIMIDに適用される画像処理により出力医用画像データOMIDの画像領域の画質に影響を与える範囲を決定し、入力医用画像データIMIDにおいて決定された範囲に対して当該記画像処理を実行し、決定された範囲に対する画像処理の実行により、出力医用画像データOMIDを出力する。医用画像処理方法により実行される画像処理の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0077】
本実施形態における技術的思想を医用画像処理プログラムで実現する場合、当該医用画像処理プログラムは、コンピュータに、画像処理後の出力医用画像データOMIDより広い画像領域を有する入力医用画像データIMIDを取得し、入力医用画像データIMIDにおいて、入力医用画像データIMIDより狭い画像領域であって、入力医用画像データIMIDに適用される画像処理により出力医用画像データOMIDの画像領域の画質に影響を与える範囲を基づいて決定し、入力医用画像データIMIDにおいて決定された範囲に対して当該記画像処理を実行し、決定された範囲に対する画像処理の実行により、出力医用画像データOMIDを出力することを実現させる。医用画像処理プログラムは、例えば、コンピュータが読取可能な非不揮発性記憶媒体に記憶される。
【0078】
例えば、画像処理に関する各種サーバ装置(処理装置)に医用画像処理プログラムを非不揮発性記憶媒体からインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、画像処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。医用画像処理プログラムにおける処理手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0079】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、画質を担保しつつ画像処理の処理時間を短縮することができる。
【0080】
いくつかの実施形態を参照して本開示を説明したが、これらの実施形態は、本開示の原理と用途の例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 医用画像処理装置
2 医用画像撮像装置
11 通信インターフェース
13 メモリ
15 処理回路
17 入出力インターフェース
100 磁気共鳴イメージング装置
101 静磁場磁石
103 傾斜磁場コイル
105 傾斜磁場電源
107 寝台
109 寝台制御回路
111 ボア
113 送信回路
115 送信コイル
117 受信コイル
119 受信回路
121 撮像制御回路
123 システム制御回路
125 記憶装置
151 取得機能
153 再構成機能
155 決定機能
157 画像処理機能
159 出力機能
1071 天板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9