(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146169
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】送電装置及び無線給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20241004BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241004BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/10
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058909
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 周
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】和久 直史
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE13
(57)【要約】
【課題】受電装置が受電する電力が、受電装置が要求する要求電力から乖離することを抑制する。
【解決手段】送電装置は、受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、を含む。制御部は、受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、要求電力情報に基づいて要求電力を導出し、電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に電力を無線によって送電する送電装置であって、
前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、
前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、
を含み、
前記制御部は、
前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、
前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、
前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
送電装置。
【請求項2】
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記制御部は、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力に前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記制御部は、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値を取得し、前記受電電力実績値に前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値を取得し、前記受電電力実績値が取得された送電レベルについて、前記電力テーブルに記録された前記想定受電電力を当該受電電力実績値に置換する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力から所定の調整値を差し引いた電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項6】
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記記憶媒体には、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値と前記想定受電電力との差分を示す差分情報を各送電レベルに対応付けて記録した受電実績情報が格納されており、
前記制御部は、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力に前回の送電における送電レベルに対応する前記差分を加えたものに、前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記受電電力実績値を取得した場合に前記差分情報を更新する
請求項6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記制御部は、送電実績を有する送電レベルについて、前記差分を当該送電レベルに対応付けて記録し、送電実績を有さない送電レベルについては、送電実績を有する送電レベルに対応する前記差分から推定される推定差分を当該送電レベルに対応付けて記録する
請求項6に記載の送電装置。
【請求項9】
前記記憶媒体には、前記電力テーブルが格納されるとともに、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値と前記想定受電電力との差分を示す差分情報を各送電レベルに対応付けて記録した受電実績情報が、複数の前記受電装置の各々に対応付けられて格納されている
請求項4または請求項6に記載の送電装置。
【請求項10】
受電装置と、前記受電装置に電力を無線によって送電する送電装置とを含む無線給電システムであって、
前記送電装置は、
前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、
前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、
を含み、
前記制御部は、
前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、
前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、
前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、送電装置及び無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線送電に関する技術として以下の技術が知られている。特許文献1には、送電装置から無線で受電した電力に基づく第1受電電圧値を測定する第1測定手段と、送電装置に対して送電電力の調整を要求する第1要求手段と、第1要求手段による要求の後に送電装置から受電した電力に基づく第2受電電圧値を測定する第2測定手段と、調整の内容と、第1受電電圧値と前記第2受電電圧値との差とに基づいて、検出機能に関連するキャリブレーション処理が必要か否かを判定する判定手段と、キャリブレーション処理が必要と判定された場合、送電装置へ送電の停止及びキャリブレーション処理を要求する第2要求手段と、を備えることを特徴とする受電装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、受電装置に対して無線で送電する送電手段を有する送電装置であって、受電装置における時間的に変化する電力の需要についての情報を取得する取得手段と、電力の需要についての情報に基づいて、電力の需要が変化するのに先立って送電する電力の量を変化させてから、送電が実行されるように前記送電手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする送電装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、受電装置に電力を送電する送電装置であって、受電装置と無線通信を行う通信手段と、送電装置に1種類以上の固有の電力値の電力を送電する送電手段と、受電装置に前記受電装置で必要な電力を送電するか否かの判断を行う判断手段とを備え、通信手段は、受電装置が受電した電力を変換した1種類以上の変換値を受信し、判断手段は、該変換値と前記固有の電力値に基づいて前記判断を行うことを特徴とする送電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-151124号公報
【特許文献2】特開2016-1976号公報
【特許文献3】特開2015-8608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NFC(Near Field Communication)を用いた無線給電の規格であるWireless Charging規格(以下WLC規格と称する)に準拠した無線給電システムにおける電力の送受信の態様は以下のとおりである。
【0007】
はじめに無線給電システムを構成する送電装置と受電装置との間で通信リンクが確立される。次に、受電装置は、要求電力に関する情報(以下、要求電力情報と称する)を送電装置に送信する。要求電力情報には、受電装置が要求する電力の前回受電した受電電力に対する変化率を示す情報が含まれる。送電装置は、前回の送電電力に、要求電力情報に含まれる変化率を乗じて得られる電力を次回の送電における電力として設定し、受電装置に対して送電を行う。
【0008】
送電装置から送電される送電電力と、受電装置が受電する受電電力との関係は、必ずしも比例関係であるとは限らない。この場合、受電電力が要求電力から乖離してしまうおそれがある。更に、WLC規格においては、受電電力が要求電力を超えることは許容されていない。
【0009】
図1Aは、送電電力と受電電力とが比例関係である場合のグラフである。
図1Aには、1回目の送電における送電電力が60mWであり、これに対応する受電電力が30mWであり、受電装置からの要求電力が1回目の受電における受電電力(30mW)に対して100%増し(すなわち要求電力は60mW)であり、受電装置からの要求に基づく送電装置からの2回目の送電における送電電力が120mW(60mW×2)である場合が例示されている。送電電力と受電電力とが
図1Aに例示されるように比例関係である場合、受電装置が2回目に受電する受電電力は60mWとなり要求電力と一致する。
【0010】
図1Bは、送電電力と受電電力とが比例関係でない場合のグラフである。
図1Bには、1回目の送電における送電電力が65mWであり、これに対応する受電電力が30mWであり、受電装置からの要求電力が1回目の受電における受電電力(30mW)に対して100%増し(すなわち要求電力は60mW)であり、受電装置からの要求に基づく送電装置からの2回目の送電における送電電力が130mW(65mW×2)である場合が例示されている。送電電力と受電電力とが
図1Bに例示されるように比例関係でない場合、受電装置が2回目に受電する受電電力は65mWとなり要求電力(60mW)を超えるので、規格違反となる。
【0011】
開示の技術は上記した点に鑑みてなされたものであり、受電装置が受電する電力が、受電装置が要求する要求電力から乖離することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示の技術に係る送電装置は、受電装置に電力を無線によって送電する送電装置であって、前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、を含む。前記制御部は、前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0013】
開示の技術に係る無線給電システムは、受電装置と、前記受電装置に電力を無線によって送電する送電装置とを含む無線給電システムであって、前記送電装置は、前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、を含む。前記制御部は、前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術によれば、受電装置が受電する電力が、受電装置が要求する要求電力から乖離することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】送電電力と受電電力とが比例関係である場合のグラフである。
【
図1B】送電電力と受電電力とが比例関係でない場合のグラフである。
【
図2】開示の技術の実施形態に係る無線給電システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】WLC規格に基づいた送電装置において実施される処理の流れの一例を示す図である。
【
図4】開示の技術の実施形態に係る電力テーブル及び調整値情報の一例を示す図である。
【
図5】開示の技術の実施形態に係る送電装置の制御部が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】開示の技術の他の実施形態に係る送電装置の制御部が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】開示の技術の他の実施形態に係る送電装置の制御部が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】開示の技術の他の実施形態に係る送電装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】開示の技術の他の実施形態に係る受電実績情報及び調整値情報の一例を示す図である。
【
図10】開示の技術の実施形態に係る送電装置の制御部が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図2は、開示の技術の実施形態に係る無線給電システム1の構成の一例を示す図である。無線給電システムは、WLC規格に準拠した送電装置10及び受電装置20を有する。
図2には、送電装置10から供給される電力を受電する1つの受電装置20が示されているが、無線給電システム1は複数の受電装置を含んでいてもよい。
【0018】
送電装置10は、アンテナ11、通信部12、送電部13、制御部14及びメモリ15を有する。通信部12は、各種情報を受電装置20との間で無線通信によって送受信するための処理を行う。各種情報はアンテナ11を介して送受信される。送電部13は、受電装置20に対して無線給電方式による送電を行うための処理を行う。送電装置10からの送電電力は、アンテナ11から送出される。
【0019】
制御部14は、送電部13による送電及び通信部12による情報通信の切り替え制御を行う。制御部14は、受電装置20との間で情報通信を行う場合、送信データの作成又は受信データの解析を行う。制御部14は、受電装置20に送電を行う場合、受電装置20から提供される後述するWLCL CTLメッセージに含まれる要求電力情報に基づいて、送電電力の階級である送電レベルを決定する。メモリ15は不揮発性の記憶媒体である。メモリ15には電力テーブル16及び調整値情報17が格納されている。制御部14は、電力テーブル16及び調整値情報17に基づいて送電レベルを決定する。電力テーブル16及び調整値情報17の詳細については後述する。
【0020】
受電装置20は、アンテナ21、通信部22、受電部23、制御部24及び測定部25を有する。通信部22は、各種情報を送電装置10との間で無線通信によって送受信するための処理を行う。各種情報はアンテナ21を介して送受信される。受電部13は、送電装置10から送出された電力を受電する。送電装置10から送出された電力は、アンテナ21を介して受電部23に入力される。
【0021】
制御部24は、受電部23による受電及び通信部22による通信の切り替え制御を行う。制御部24は、送電装置10との間で情報通信を行う場合、送信データの作成又は受信データの解析を行う。制御部24は、送電装置10から送出された電力を受電した場合、充電IC(integrated circuit)30及び電池31に対して電力を供給する。電池31は、充電IC30による制御の下、受電装置20が受電した電力によって充電される。測定部25は、電池31の電圧及び充電電流等の測定を行い、測定値を制御部24に通知する。
【0022】
図3は、送電装置10が受電装置20に送電を行う場合に、送電装置10において実施される処理の大まかな流れの一例を示す図であり、一般的なWLC規格における処理を示している。送電装置10の制御部14は、周辺の受電装置に存在確認を行うためにポーリングを実施する。制御部14は、受電装置20からその装置固有の識別情報を含む有効な応答があれば、その受電装置20との間で通信リンクを確立する(ステップS1:NFC Link Establishment)。
【0023】
次に、送電装置10の制御部14は、受電装置20に対してWLC CAPメッセージの提供を依頼する。WLC CAPメッセージには次のステートにおける時間規定や電池31の充電時間の情報が含まれる(ステップS2:Wireless Charging Control Activation)。
【0024】
次に、送電装置10の制御部14は、受電装置20に対してWLCL CTLメッセージの提供を依頼する。WLCL CTLメッセージには受電装置20におけるエラー情報、送電要求の有無、要求電力に関する情報(以下、要求電力情報と称する)が含まれている(ステップS3:Wireless Charging Control)。
【0025】
次に、送電装置10の制御部14は、受電装置20から提供された要求電力情報に応じた送電を行うべく送電レベルを決定し、決定した送電レベルでの送電を受電装置20に対して行う(ステップS4:Wireless Power Transfer)。
【0026】
受電装置20は、送電装置10から送出された電力を受電し、受電した電力によって電池31の充電を行う。受電装置20の測定部25は、電池31の充電期間中、充電電流、電池電圧、受電電圧、シャント電流、電池温度を測定し、測定値を制御部24に通知する。また測定部25は、電池31の充電期間中、充電IC30からのステータス信号を受信し、これを制御部24に供給する。
【0027】
受電装置20は、電池31の充電期間中、下記の(1)~(4)のいずれかの情報を含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に送信する。
(1)受電装置20は、充電電流又は電池温度の測定値が異常である場合、エラー情報を含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に送信する。
(2)受電装置20は、受電電圧が閾値よりも低い場合、送電レベルのアップを要求する要求電力情報を含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に送信する。要求電力情報には、受電装置20が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報が含まれる。
(3)受電装置20は、シャント電流が閾値よりも大きい場合、送電レベルのダウンを要求する要求電力情報を含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に送信する。
(4)受電装置20は、充電IC30からのステータス信号が満充電を示す場合、送電の停止要求を含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に送信する。
【0028】
送電装置10は、受信したWLCL CTLメッセージの内容に応じて、送電レベルを増減させて送電を継続するか、送電を停止する。送電装置10において、
図3に示すステップS1及びS2の処理が完了した後は、ステップS3及びS4の処理が繰り返し行われることになる。ステップS3及びS4の処理の繰り返しをWLC規格においてはWLCサイクルと称する。
【0029】
送電装置10の制御部14は、WLCサイクルにおけるステップS4において、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる要求電力情報に応じた送電を行うべく送電レベルを決定し、決定した送電レベルでの送電を受電装置20に対して行う。制御部14は、メモリ15に格納された電力テーブル16に基づいて送電レベルを決定する。
【0030】
図4は、電力テーブル16及び調整値情報17の一例を示す図である。電力テーブル16は、想定受電電力P
estを各送電レベルに対応付けて記録した情報である。送電レベルは、送電装置10が受電装置20に送電する電力の階級である。想定受電電力P
estは、当該送電レベルにて送電を行った場合に受電装置20が受電する電力の想定値である。
図4に例示する電力テーブル16によれば、例えば、送電装置10が送電レベル「5」にて送電を行った場合、受電装置20における想定受電電力P
estは69mWである。
【0031】
電力テーブル16は、例えば、送電装置10と受電装置20との間で行われるテスト送電において、受電装置20が実際に受電した電力に基づいて作成することができる。すなわち、送電装置10は、送電レベル毎に送電を行い、受電装置20が受電した電力の実測値を送電レベル毎に取得する。複数の送電レベルの各々について、送電レベルと、その送電レベルに対応する受電電力の実測値とを対応付けることにより電力テーブル16が作成される。調整値情報17は、調整値dを含む。調整値dは、受電装置が要求する要求電力を超える大きさの電力を受電装置20が受電するリスクを抑制するためのマージンとして用いられる。
図4には、調整値dが「5mW」に設定されている場合が例示されている。
【0032】
図5は、WLCサイクルにおいて送電装置10の制御部14が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS11において、制御部14は、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる要求電力情報を取得する。要求電力情報には、受電装置20が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報が含まれる。例えば、受電装置20が前回受電した電力に対して50%増しの電力を要求する場合、要求電力情報には、変化率150%を示す情報が含まれる。
【0033】
ステップS12において、制御部14は、ステップS11において取得した要求電力情報に基づいて、受電装置20が要求している電力である要求電力Preqを導出する。すなわち、制御部14は、下記の(1)式に示すように、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力Pest_aに、ステップS11において取得した要求電力情報によって示される変化率Aを乗じて得られる値を要求電力Preqとして導出する。なお、前回の送電における送電レベルは、メモリ15に保存されている。前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力Pest_aは、電力テーブル16を参照することにより導出される。
Preq=Pest_a×A ・・・ (1)
【0034】
ステップS13において、制御部14は、電力テーブル16に基づいて、ステップS12において導出された要求電力Preqに応じた送電レベルを決定する。具体的には、制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、ステップS12において導出された要求電力Preqを超えない最大の想定受電電力Pestに対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0035】
ステップS14において、制御部14は、ステップS13において決定した送電レベルによる送電を行うべき指示を送電部13に発する。これにより、受電装置20からの要求に応じた送電が行われる。
【0036】
ステップS15において、制御部14は、受電装置20への送電を停止させるか否かを判断する。制御部14は、エラー情報又は送電の停止要求を含むWLCL CTLメッセージを受電装置20から受信した場合に受電装置20への送電を停止させる。受電装置20への送電を停止させない場合、処理はステップS11に戻される。
【0037】
本実施形態に係る送電装置10において、制御部14が送電レベルを決定する処理について具体例を挙げて説明する。ここでは、前回の送電における送電レベルが「4」であるものとする。送電レベル「4」に対応する想定受電電力P
est_aは、
図4に例示する電力テーブル16によれば「66mW」である。また、要求電力情報には、受電装置20が前回受電した電力に対して「50%UP」を要求する情報(すなわち、変化率150%を示す情報)が含まれているものとする。この場合、制御部14は、受電装置20が要求している要求電力P
reqを、(1)式に基づいて下記の演算を行うことにより導出する。
P
req=66mW×1.5=99mW
【0038】
制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preq(99mW)を超えない最大の想定受電電力Pest(99mW)に対応する送電レベル「10」を今回の送電における送電レベルとして決定する。
【0039】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る送電装置10は、受電装置20に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部14と、受電装置20が受電する電力の想定値である想定受電電力Pestを各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブル16が格納されたメモリ15と、を含む。制御部14は、受電装置20が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、要求電力情報に基づいて要求電力Preqを導出し、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preqを超えない最大の想定受電電力Pestに対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0040】
本実施形態に係る送電装置10によれば、電力テーブル16に基づいて送電レベルを決定するので、送電電力と受電電力とが比例関係でない場合においても、受電装置20が受電する電力が、受電装置20が要求する要求電力から乖離することを抑制することが可能となる。これにより、受電装置20が受電する電力が、受電装置20が要求する要求電力を超えるリスクを抑制することが可能となる。
【0041】
送電装置10の制御部14は、電力テーブル16に記録され想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preqから、調整値情報17に含まれる調整値dを差し引いた電力を超えない最大の想定受電電力Pestに対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定してもよい。例えば、受電装置20における要求電力Preqが99mWと導出される場合において、調整値dが5mWである場合、制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preq(99mW)から調整値d(5mW)を差し引いた電力(94mW)を超えない最大の想定受電電力Pest(94mW)に対応する送電レベル「9」を、次回の送電における送電レベルとして決定する。このように、送電レベルを決定する際に、調整値dをマージンとして用いることで、受電装置20が受電する電力が、受電装置20が要求する要求電力を超えるリスクを抑制する効果を促進させることができる。
【0042】
[第2の実施形態]
開示の技術の第2の実施形態に係る無線給電システム1において、受電装置20は、要求電力情報に加え、自身が受電した電力の実績値である受電電力実績値Paを含むWLCL CTLメッセージを送電装置10に提供する。第2の実施形態に係る送電装置10の制御部14は、受電電力実績値Paに基づいて受電装置20が要求する要求電力Preqを導出し、導出した要求電力Preqに基づいて次回の送電における送電レベルを決定する。
【0043】
図6は、WLCサイクルにおいて第2の実施形態に係る送電装置10の制御部14が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS21において、制御部14は、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる要求電力情報を取得する。要求電力情報には、受電装置20が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報が含まれる。
【0044】
ステップS22において、制御部14は、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる受電電力実績値Paを取得する。受電電力実績値Paは、受電装置20が受電した電力の実績値である。本ステップS22において、制御部14は、前回の送電に対する受電電力実績値Paを取得する。
【0045】
ステップS23において、制御部14は、ステップS21において取得した要求電力情報及びステップS22において取得した受電電力実績値Paに基づいて、受電装置20が要求している電力である要求電力Preqを導出する。すなわち、制御部14は、下記の(2)式に示すように、ステップS22において取得した受電電力実績値Paに、ステップS21において取得した要求電力情報によって示される変化率Aを乗じて得られる値を要求電力Preqとして導出する。
Preq=Pa×A ・・・ (2)
【0046】
ステップS24において、制御部14は、電力テーブル16に基づいて、ステップS23において導出された要求電力Preqに応じた送電レベルを決定する。具体的には、制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、ステップS23において導出された要求電力Preqを超えない最大の想定受電電力Pestに対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0047】
ステップS25において、制御部14は、ステップS24において決定した送電レベルによる送電を行うべき指示を送電部13に発する。これにより、受電装置20からの要求に応じた送電が行われる。
【0048】
ステップS26において、制御部14は、受電装置20への送電を停止させるか否かを判断する。制御部14は、エラー情報又は送電の停止要求を含むWLCL CTLメッセージを受電装置20から受信した場合に受電装置20への送電を停止させる。受電装置20への送電を停止させない場合、処理はステップS21に戻される。
【0049】
本実施形態に係る送電装置10において、制御部14が送電レベルを決定する処理について具体例を挙げて説明する。ここでは、前回の送電に対する受電電力実績値Paが「70mW」であるものとする。また、要求電力情報には、受電装置20が前回受電した電力に対して「50%UP」を要求する情報(すなわち、変化率150%を示す情報)が含まれているものとする。この場合、制御部14は、受電装置20が要求している要求電力Preqを、(2)式に基づいて下記の演算を行うことにより導出する。
Preq=70mW×1.5=105mW
【0050】
制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preq(105mW)を超えない最大の想定受電電力Pest(99mW)に対応する送電レベル「10」を次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0051】
本実施形態に係る送電装置10によれば、受電装置20が要求する要求電力Preqを、受電電力実績値Paを用いて導出するので、要求電力Preqの推定精度を高めることができる。したがって、受電電力の要求電力からの乖離を抑制する効果を促進させることが可能となる。なお、送電レベルを決定する際に、第1の実施形態と同様、調整値dを用いてもよい。
【0052】
送電装置10の制御部14は、受電装置20から提供された受電電力値実績値P
aに基づいて、電力テーブル16を更新してもよい。
図7は電力テーブル16を更新する処理を含むフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図6に示すフローチャートに対してステップS22Aの処理が追加されたものである。ステップS22Aにおいて、送電装置10の制御部14は、受電電力実績値P
aが取得された送電レベルについて、電力テーブル16に記録された想定受電電力P
estを当該受電電力実績値P
aに置換する。例えば、送電レベルを「10」として送電を行った場合の受電電力実績値P
aが「100mW」である場合、制御部14は、電力テーブル16における送電レベル「10」に対応する想定受電電力P
estの値を、送電レベル「10」に対応する受電電力実績値P
aである「100mW」に置換する。制御部14は、各送電レベルに対応する想定受電電力P
estを、最新の受電電力実績値P
aに置換する処理を、WLCサイクルの各サイクルにおいて行う。
【0053】
このように、電力テーブル16に記録される想定受電電力Pestを、受電電力実績値Paに置換することで、電力テーブル16における想定受電電力Pestの精度を高めることができる。これにより、電力テーブル16に基づいて導出される要求電力Preqの推定精度を高めることができるので、受電電力の要求電力からの乖離を抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0054】
[第3の実施形態]
図8は、開示の技術の第3の実施形態に係る送電装置10の構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係る送電装置10は、複数の受電装置20に対して送電を行うものであり、メモリ15には、電力テーブル16に加え、受電装置20毎に作成された受電実績情報18及び調整値情報17が格納されている。受電実績情報18の各々及び調整値情報17の各々は、対応する受電装置20を識別する識別情報19が対応付けられている。識別情報19は例えばNFC IDであってもよい。また、WLC規格のOption領域のDevice Infoに格納されるデバイスの情報を識別情報19として用いることもできる。
【0055】
図9は、ある1つの受電装置20に対応付けられた受電実績情報18及び調整値情報17の一例を示す図である。受電実績情報18は、対応する受電装置20が受電した電力の実績値である受電電力実績値P
aと、電力テーブル16に記録された想定受電電力P
estとの差分Δ(=P
a-P
est)を示す差分情報を、各送電レベルに対応付けて記録した情報である。受電実績情報18は、各送電レベルにおける送電実績の有無を示す1ビットの情報を含む。
【0056】
送電装置10の制御部14は、受電装置20から受電電力実績値P
aを取得した場合、対応する送電レベルにおける実績有無情報の値を「1」にする。送電装置10の制御部14は、ある送電レベルについて取得した受電電力実績値P
aと、その送電レベルにおける想定受電電力P
estとの差分Δ(=P
a-P
est)を導出し、導出した差分Δを、その送電レベルに対応付けて記録することで、受電実績情報18を構築する。例えば、送電レベル「4」に対応する受電電力実績値Paと送電レベル「4」に対応する想定受電電力P
estとの差分Δが、送電レベル「4」に対応付けられて記録される。
図9に例示する受電実績情報18には、送電レベル「4」及び「13」について送電を行った実績があり、これらの送電レベルにおける受電電力実績値P
aと想定受電電力P
estとの差分Δが、それぞれ「2mW」及び「8mW」であることが示されている。
【0057】
送電装置10の制御部14は、送電実績を有する送電レベルについては、上記したように、受電電力実績値P
aと想定受電電力P
estとの差分Δを当該送電レベルに対応付けて記録する。一方、送電装置10の制御部14は、送電実績を有さない送電レベルについては、送電実績を有する送電レベルに対応付けられた差分Δから推定される推定差分を当該送電レベルに対応付けて記録する。制御部14は例えば、いわゆる線形補間の要領で推定差分を導出してもよい。例えば、
図9に例示するように、送電実績を有する送電レベル「4」及び「13」における受電電力実績値P
aと想定受電電力P
estとの差分Δが、それぞれ「2mW」及び「8mW」である場合、送電実績を有さない送電レベル「5」から「12」については、送電レベルが高くなるにつれて差分が「2mW」から「8mW」に向けて直線的に増加するように設定された値を推定差分としてもよい。
【0058】
また、送電実績を有さず且つ線形補間ができない送電レベルについては、送電実績を有する最も近い送電レベルに対応付けられた差分Δを推定差分として適用してもよい。
図9には、送電実績を有さない送電レベル「1」~「3」について、送電実績を有する最も近い送電レベル「4」に対応付けられた差分「2mW」を推定差分として適用し、送電実績を有さない送電レベル「14」、「15」について、送電実績を有する最も近い送電レベル「13」に対応付けられた差分「8mW」を推定差分として適用している場合が例示されている。
【0059】
送電装置10の制御部14は、受電装置20から受電電力実績値Paを取得した場合に、受電実績情報18を更新する。すなわち、制御部14は、送電実績を有さない送電レベルについて受電電力実績値Paを取得した場合には、取得した受電電力実績値Paと想定受電電力Pestとの差分Δを、当該送電レベルにおける差分情報として記録する。また、制御部14は、送電実績を有する送電レベルについて、新たな受電電力実績値Paを取得した場合には、既に記録されている差分Δを、最新の受電電力実績値Paに基づく差分Δに置換する。
【0060】
本実施形態に係る調整値情報17は、2つの調整値d1及びd2を有する。調整値d1は、送電実績を有さない送電レベルにて送電を行う場合に適用されるものであり、調整値d2は送電実績を有する送電レベルにて送電を行う場合に適用されるものである。調整値d1及びd2は、それぞれ要求電力を超える大きさの電力を受電装置20が受電するリスクを抑制するためのマージンである。送電実績を有する送電レベルにて送電を行う場合におけるマージンは、送電実績を有さない送電レベルにて送電を行う場合におけるマージンよりも小さくすることが可能である。したがって、調整値d2は、調整値d1よりも小さい値とされている(d1>d2)。
図9に例示する調整値情報17において、調整値d1が「10mW」とされ、調整値d2が「2mW」とされている。なお、受電実績情報18において送電実績を有する送電レベルの数が所定数に達した場合に、調整値d1をより小さい値に変更してもよい。
【0061】
第3の実施形態に係る送電装置10の制御部14は、電力テーブル16及び受電実績情報18に基づいて受電装置20が要求する要求電力P
reqを導出して、導出した要求電力P
reqに基づいて、次回の送電における送電レベルを決定する。
図10は、WLCサイクルにおいて第3の実施形態に係る送電装置10の制御部14が実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS31において、制御部14は、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる要求電力情報を取得する。要求電力情報には、受電装置20が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報が含まれる。
【0063】
ステップS32において、制御部14は、受電装置20から提供されたWLCL CTLメッセージに含まれる受電電力実績値Paを取得する。受電電力実績値Paは、受電装置20が受電した電力の実績値である。本ステップS32において、制御部14は、前回の送電に対する受電電力実績値Paを取得する。
【0064】
ステップS33において、制御部14は、ステップS31において取得した要求電力情報及びステップS32において取得した受電電力実績値Paの発信元の受電装置20に対応する受電実績情報18を更新する。すなわち、制御部14は、ステップS32において取得した受電電力実績値Paに対応する送電レベルにおける実績有無情報の値を「1」に設定する。また、制御部14は、ステップS32において取得した受電電力実績値Paと、電力テーブル16に記録された、当該送電レベルに対応する想定受電電力Pestとの差分Δ(=Pa-Pest)を導出し、導出した差分Δを差分情報として当該送電レベルに対応付けて記録する。例えば、送電レベルを「10」として送電を行った場合の受電装置20における受電電力実績値Paが「107mW」であった場合、制御部14は、受電電力実績値Pa(107mW)と、電力テーブル16に記録された、送電レベル「10」に対応する想定受電電力Pest(99mW)との差分Δとして「8mW」を導出し、導出した差分Δを受電実績情報18における差分情報として送電レベル「10」に対応付けて記録する。
【0065】
ステップS34において、制御部14は、ステップS31において取得した要求電力情報に基づいて、受電装置20が要求している電力である要求電力Preqを導出する。すなわち、制御部14は、下記の(3)式に示すように、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力をPest_aに、ステップS33において導出した差分Δを加えたものに、ステップS31において取得した要求電力情報によって示される変化率Aを乗じて得られる値を要求電力Preqとして導出する。なお、前回の送電における送電レベルは、メモリ15に保存されている。前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力をPest_aは、電力テーブル16を参照することにより導出される。
Preq=(Pest_a+Δ)×A ・・・ (3)
【0066】
ステップS35において、制御部14は、電力テーブル16に基づいて、ステップS34において導出された要求電力Preqに応じた送電レベルを決定する。具体的には、制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、ステップS34において導出された要求電力Preqから、調整値情報17に記録された調整値d1又はd2を差し引いた電力を超えない最大の想定受電電力Pestに対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0067】
ステップS36において、制御部14は、ステップS35において決定した送電レベルによる送電を行うべき指示を送電部13に発する。これにより、受電装置20からの要求に応じた送電が行われる。
【0068】
ステップS37において、制御部14は、受電装置20への送電を停止させるか否かを判断する。制御部14は、エラー情報又は送電の停止要求を含むWLCL CTLメッセージを受電装置20から受信した場合に受電装置20への送電を停止させる。受電装置20への送電を停止させない場合、処理はステップS31に戻される。
【0069】
本実施形態に係る送電装置10において、制御部14が送電レベルを決定する処理について具体例を挙げて説明する。ここでは、前回の送電における送電レベルが「4」であるものとする。送電レベル「4」に対応する想定受電電力P
est_aは、
図4に例示する電力テーブル16によれば「66mW」である。また、前回の送電に対する受電電力実績値P
aが「68mW」であるものとする。また、要求電力情報には、受電装置20が前回受電した電力に対して「100%UP」を要求する情報(すなわち、変化率200%を示す情報)が含まれているものとする。
【0070】
この場合、制御部14は、受電電力実績値Pa(68mW)と、送電レベル「4」に対応する想定受電電力Pest(66mW)との差分Δ(=Pa-Pest)として「2mW」を導出し、この差分Δを受電実績情報18における差分情報として送電レベル「4」に対応付けて記録する。また、制御部14は、受電装置20が要求している要求電力Preqを、(3)式に基づいて下記の演算を行うことにより導出する。
Preq=(66mW+2mW)×2=136mW
【0071】
制御部14は、電力テーブル16に記録された想定受電電力Pestのうち、導出された要求電力Preq(136mW)から調整値d1(10mW)を差し引いた電力(126mW)を超えない最大の想定受電電力Pest(115mW)に対応する送電レベル「12」を次回の送電における送電レベルとして決定する。
【0072】
本実施形態に係る送電装置10によれば、受電装置20が要求する要求電力Preqを、受電実績情報18を用いて導出するので、要求電力Preqの推定精度を高めることができる。したがって、受電電力の要求電力からの乖離を抑制する効果を促進させることが可能となる。また、送電回数を重ねる度に、各送電レベルにおける差分情報が蓄積されていくので、要求電力Preqの推定精度を高めることができる。また、受電実績情報18を受電装置20毎に有することで、同一の受電装置20に対する2回目以降の送電時においては、WLCサイクルの初期から受電装置20が要求する電力に近い電力を供給することが可能となる。
【0073】
なお、第1乃至第3の実施形態においてはWLC規格に準拠した送電装置10及び受電装置20に開示の技術を適用する場合を例示したが、開示の技術はWLC規格に準拠しない無線給電システムに適用することが可能である。
【0074】
また、第2及び第3の実施形態においては、受電装置20から送電装置10に受電電力実績値Paを含む情報を提供する場合を例示したが、送電装置10が、受電装置20が受電した電力の実測値を測定又は推定することにより受電電力実績値Paを取得してもよい。
【0075】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
受電装置に電力を送電する送電装置であって、
前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、
前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、
を含み、
前記制御部は、
前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、
前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、
前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
送電装置。
【0076】
(付記2)
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記制御部は、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力に前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
付記1に記載の送電装置。
【0077】
(付記3)
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記制御部は、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値を取得し、前記受電電力実績値に前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
付記1に記載の送電装置。
【0078】
(付記4)
前記制御部は、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値を取得し、前記受電電力実績値が取得された送電レベルについて、前記電力テーブルに記録された前記想定受電電力を当該受電電力実績値に置換する
付記1から付記3のいずれか1つに記載の送電装置。
【0079】
(付記5)
前記制御部は、前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力から所定の調整値を差し引いた電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
付記1から付記4のいずれか1つに記載の送電装置。
【0080】
(付記6)
前記要求電力情報は、前記受電装置が要求する電力の前回受電した電力に対する変化率を示す情報を含み、
前記記憶媒体には、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値と前記想定受電電力との差分を示す差分情報を各送電レベルに対応付けて記録した受電実績情報が格納されており、
前記制御部は、前回の送電における送電レベルに対応する想定受電電力に前回の送電における送電レベルに対応する前記差分を加えたものに、前記変化率を乗じて得られる値を前記要求電力として導出する
付記1に記載の送電装置。
【0081】
(付記7)
前記制御部は、前記受電電力実績値を取得した場合に前記差分情報を更新する
付記6に記載の送電装置。
【0082】
(付記8)
前記制御部は、送電実績を有する送電レベルについて、前記差分を当該送電レベルに対応付けて記録し、送電実績を有さない送電レベルについては、送電実績を有する送電レベルに対応する前記差分から推定される推定差分を当該送電レベルに対応付けて記録する
付記6又は付記7に記載の送電装置。
【0083】
(付記9)
前記記憶媒体には、前記電力テーブルが格納されるとともに、前記受電装置が受電した電力の実績値である受電電力実績値と前記想定受電電力との差分を示す差分情報を各送電レベルに対応付けて記録した受電実績情報が、前記複数の受電装置の各々に対応付けられて格納されている
付記4から付記8のいずれか1つに記載の送電装置。
【0084】
(付記10)
受電装置と、前記受電装置に電力を無線によって送電する送電装置とを含む無線給電システムであって、
前記送電装置は、
前記受電装置に送電する電力の階級である送電レベルを決定する制御部と、
前記受電装置が受電する電力の想定値である想定受電電力を各送電レベルに対応付けて記録した電力テーブルが格納された記憶媒体と、
を含み、
前記制御部は、
前記受電装置が要求している電力である要求電力に関する情報を含む要求電力情報を取得し、
前記要求電力情報に基づいて前記要求電力を導出し、
前記電力テーブルに記録された想定受電電力のうち、導出された前記要求電力を超えない最大の想定受電電力に対応する送電レベルを、次回の送電における送電レベルとして決定する
無線給電システム。
【符号の説明】
【0085】
1 無線給電システム
10 送電装置
14 制御部
15 メモリ
16 電力テーブル
17 調整値情報
18 受電実績情報
19 識別情報
20 受電装置