(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146171
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20241004BHJP
H03F 1/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H03F3/45 220
H03F1/30 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058911
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸雄
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC02
5J500AF17
5J500AH10
5J500AK02
5J500AK05
5J500AM02
5J500AM13
5J500AT01
5J500DN01
5J500DN14
5J500DN22
5J500DN23
5J500DP01
5J500NC00
5J500NF10
(57)【要約】
【課題】トランジスタの温度変化にかかわらず、負荷変動に対して高速に応答する電圧生成回路を提供することが可能な電圧生成回路を提供する。
【解決手段】電圧生成回路は、差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、前記差動回路は、第1導電型の第1トランジスタと、第2導電型の第2トランジスタと、第1導電型の第3トランジスタと、第2導電型の第4トランジスタと、電流源とを備え、出力回路は、第5トランジスタと、第6トランジスタと、電流源とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、
前記差動回路は、
ゲートに第1基準電圧が入力される第1導電型の第1トランジスタと、
ドレインが前記第1トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第2トランジスタと、
ゲートに第2基準電圧が入力され、ソースが前記第1トランジスタのソースに接続された第1導電型の第3トランジスタと、
ゲートが前記第2トランジスタのゲートに接続され、かつ、ドレインが前記第3トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第4トランジスタと、
前記第2トランジスタのゲートと前記第4トランジスタのゲートとを接続する第1配線と、
前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインとを接続する第2配線と、
前記第1配線と前記第2配線とを接続する第3配線と、
前記第3トランジスタのドレインと前記第4トランジスタのドレインとを接続する第4配線と、
前記第1トランジスタ及び前記第3トランジスタのソースに接続され、定電流を流す電流源と、
を備え、
前記出力回路は、
ゲートが前記第4配線に接続された第2導電型の第5トランジスタと、
前記第5トランジスタのソースと出力電圧端子とを接続する第5配線と、
ゲートが前記第5トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第5配線に接続された第1導電型の第6トランジスタと、
前記第5トランジスタのドレインと前記第6トランジスタのゲートとに接続され、定電流を流す電流源と、
を備えた電圧生成回路。
【請求項2】
差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、
前記差動回路は、第1基準電圧及び第2基準電圧の差分を調整した電圧を前記出力回路に出力する同一導電型の2つのトランジスタと、前記2つのトランジスタに接続され定電流を流す電流源とを含み、
前記電圧生成回路は、前記差動回路からの電圧に応じた出力電圧を発生する第1のトランジスタと、当該第1のトランジスタとは導電型が異なり前記出力電圧を調整する第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとに接続され定電流を流す電流源とを含む、電圧生成回路。
【請求項3】
前記差動回路は、前記第1基準電圧と、前記出力回路からの出力電圧を特定の増幅率で変更した前記第2基準電圧との差分を調整し、調整した電圧を前記出力回路に対して出力する、請求項1又は2に記載の電圧生成回路。
【請求項4】
前記出力回路は、ソースフォロワ回路である、請求項1又は2に記載の電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレギュレータとして、オペアンプを利用した電圧生成回路(例えば特許文献1)、及びソースフォロワ回路を利用した電圧生成回路(例えば特許文献2)が開示されている。
【0003】
特許文献1の
図1に開示されるオペアンプでは、非反転入力端子に基準電圧が入力され、反転入力端子に帰還信号が入力される。オペアンプの出力端子は、並列接続された負帰還抵抗及び負帰還容量を介して、反転入力端子に接続される。負帰還抵抗及び負帰還容量により、出力電圧の増幅率が設定される。この構成により、増幅回路の利得が一定となる領域(帯域)を広げることができる。また、オペアンプの開放利得のばらつきの影響が小さくなり、出力波形の歪みを抑制することができる。
【0004】
特許文献2の
図3に開示されるソースフォロワ回路は、Pチャネル型MOSトランジスタ(MP2)とNチャネル型MOSトランジスタ(NM2)とを備え、出力電圧(Vout)が入力電圧を追従(フォロー)するように動作する。具体的には、特許文献2のソースフォロワ回路は、負荷の変動によって、出力電圧が増加した場合、MP2に流れる電流が増加することで、MP2のドレイン電圧が増加する。これによりNM2のゲート電流が増加するため、MP2の増加分の電流を流すように、NM2のソース-ドレイン間に流れる電流が大きくなる。NM2に流れる電流が大きくなることで、負荷電流の増加が抑制されるため、出力電圧の増加が抑制される。このように、ソースフォロワ回路は、負荷が変動した場合でも、安定した出力電圧を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-96750号公報
【特許文献2】特開2015-76679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるオペアンプでは、負帰還抵抗及び負帰還容量で構成される帰還回路における遅延(位相遅れなど)、オペアンプ自体の応答時間の遅延などにより、基準電圧に対して所望の出力電圧が得られるまでの時間が長くなり得る。また、特許文献2に開示されるソースフォロワ回路では、PVC(Process VDD Temperature)の少なくとも一つの要因、例えばトランジスタの温度変化により、出力電圧が変動し得る。つまりPVCに依存した出力電圧が出力され得る。このように、従来技術では、トランジスタの温度変化にかかわらず、負荷変動に対して高速に応答する電圧生成回路を得る上で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を踏まえ、トランジスタの温度変化にかかわらず、負荷変動に対して高速に応答する電圧生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る電圧生成回路は、差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、前記差動回路は、ゲートに第1基準電圧が入力される第1導電型の第1トランジスタと、ドレインが前記第1トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第2トランジスタと、ゲートに第2基準電圧が入力され、ソースが前記第1トランジスタのソースに接続された第1導電型の第3トランジスタと、ゲートが前記第2トランジスタのゲートに接続され、かつ、ドレインが前記第3トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第4トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記第4トランジスタのゲートとを接続する第1配線と、前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインとを接続する第2配線と、前記第1配線と前記第2配線とを接続する第3配線と、前記第3トランジスタのドレインと前記第4トランジスタのドレインとを接続する第4配線と、前記第1トランジスタ及び前記第3トランジスタのソースに接続され、定電流を流す電流源と、を備え、前記出力回路は、ゲートが前記第4配線に接続された第2導電型の第5トランジスタと、前記第5トランジスタのソースと出力電圧端子とを接続する第5配線と、ゲートが前記第5トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第5配線に接続された第1導電型の第6トランジスタと、前記第5トランジスタのドレインと前記第6トランジスタのゲートとに接続され、定電流を流す電流源と、を備える。
【0009】
本発明に係る電圧生成回路は、差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、前記差動回路は、第1基準電圧及び第2基準電圧の差分を調整した電圧を前記出力回路に出力する同一導電型の2つのトランジスタと、前記2つのトランジスタに接続され定電流を流す電流源とを含み、前記電圧生成回路は、前記差動回路からの電圧に応じた出力電圧を発生する第1のトランジスタと、当該第1のトランジスタとは導電型が異なり前記出力電圧を調整する第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとに接続され定電流を流す電流源とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランジスタの温度変化にかかわらず、負荷変動に対して高速に応答する電圧生成回路を提供することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態にかかる電圧生成回路の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1比較例にかかる電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2比較例にかかる電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
[実施形態]
(電圧生成回路100の構成)
図1は、本開示の実施形態にかかる電圧生成回路100の構成を示す図である。電圧生成回路100は、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)などに定電圧を供給するレギュレータと解釈してよい。電圧生成回路100は、差動回路10及び出力回路20を備える。
【0014】
(差動回路10)
差動回路10は2つの入力電圧の差電圧を増幅する回路である。差動回路10は差動増幅回路と解釈してよい。差動回路10は、第1トランジスタMN1、第2トランジスタMP1、第3トランジスタMN2、第4トランジスタMP2及び電流源Itlを備える。また差動回路10は、第1配線W1、第2配線W2、第3配線W3、及び第4配線W4を備える。
【0015】
第1トランジスタMN1は、ゲートに第1基準電圧が入力される第1導電型トランジスタである。具体的には、第1トランジスタMN1は、N型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。以下では、MOSFETをMOSトランジスタと称する場合がある。
【0016】
第1トランジスタMN1のドレインは、第2トランジスタMP1のドレインに接続される。第1トランジスタMN1のソースは、第3トランジスタMN2のソースと電流源Itlとに接続される。第1トランジスタMN1のゲートは、基準電圧(Vref)の入力端子VIN1に接続される。基準電圧(Vref)は第1基準電圧と解釈してよい。入力端子VIN1は、基準電圧生成回路(不図示)に接続される。
【0017】
電流源Itlは、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2にバイアスを与えるための定電流を流す定電流源である。電流源Itlは、例えばMOSトランジスタにより構成される。電流源Itlは、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2のソースと、不図示の直流電源に接続される。電流源Itlには接地電圧が印加される。
【0018】
第2トランジスタMP1は、ドレインが第1トランジスタMN1のドレインに接続された第2導電型トランジスタである。具体的には、第2トランジスタMP1は、P型MOSトランジスタである。第2トランジスタMP1のドレインは、第1トランジスタMN1のドレインと、第4トランジスタMP2のゲートと、第2トランジスタMP1のゲートとに接続される。第2トランジスタMP1のソースは、直流電源(不図示)に接続される。
【0019】
第3トランジスタMN2は、ゲートに第2基準電圧が入力され、ソースが第1トランジスタMN1のソースに接続された第1導電型トランジスタである。具体的には、第3トランジスタMN2は、N型MOSトランジスタである。第3トランジスタMN2のソースは、第1トランジスタMN1のソースと、電流源Itlとに接続される。
【0020】
第3トランジスタMN2のドレインは、第4トランジスタMP2のドレインと、第5トランジスタMP3のゲートとに接続される。第3トランジスタMN2のソースは、電流源Itlと、第1トランジスタMN1のソースとに接続される。第3トランジスタMN2のゲートは、帰還電圧(Vfb)の入力端子VIN2に接続される。帰還電圧(Vfb)は、出力回路20からの出力電圧Voutを特定の増幅率βで変更した第2基準電圧と解釈してよい。当該入力端子VIN2は、帰還電圧生成回路(不図示)に接続される。
【0021】
第4トランジスタMP2は、ゲートが第2トランジスタMP1のゲートに接続され、かつ、ドレインが第3トランジスタMN2のドレインに接続された第2導電型トランジスタである。具体的には、第4トランジスタMP2は、P型MOSトランジスタである。第4トランジスタMP2のドレインは、第3トランジスタMN2のドレインと、第5トランジスタMP3のゲートとに接続される。第4トランジスタMP2のソースは、直流電源(不図示)に接続される。
【0022】
第1配線W1は、第2トランジスタMP1のゲートと第4トランジスタMP2のゲートとを接続する配線である。第2配線W2は、第1トランジスタMN1のドレインと第2トランジスタMP1のドレインとを接続する配線である。第3配線W3は、第1配線W1と第2配線W2とを接続する配線である。第4配線W4は、第3トランジスタMN2のドレインと第4トランジスタMP2のドレインとを接続する配線である。
【0023】
第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2は、差動対を構成する。第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2は、第1基準電圧及び第2基準電圧の差分を調整した電圧を出力回路に出力する同一導電型の2つのトランジスタと解釈してよい。第2トランジスタMP1及び第4トランジスタMP2は、カレントミラー回路を構成する。この構成により、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2に1つの電流源Itlを利用しながら、動作範囲が広く、及びゲインが大きい差動回路10を実現することができる。
【0024】
(出力回路20)
出力回路20は、ソースフォロワ回路の一例である。ソースフォロワ回路は、電圧利得が1に近いものの、高入力インピーダンスを有するため、出力回路20への微少な入力信号、つまり差動回路10からの電圧を略減衰させることなく入力し、入力した電圧に出力電圧Voutを追従(フォロー)させることができる。また、ソースフォロワ回路は、低出力インピーダンスを有するため、あらゆるタイプの負荷に適用することができるという特徴を有する。従って、近年では駆動電圧が低い傾向になりつつある大規模集積回路の定電圧源として有用である。
【0025】
出力回路20は、第5トランジスタMP3、第6トランジスタMN3、電流源If、電流源Ib及び第5配線W5を有する。
【0026】
第5トランジスタMP3は、ゲートが第4配線W4に接続された第2導電型トランジスタである。具体的には、第5トランジスタMP3は、P型MOSトランジスタである。第5トランジスタMP3のドレインは、電流源Ibに接続される。第5トランジスタMP3のソースは、電流源Ifと、出力電圧端子と、第6トランジスタMN3のドレインとに接続される。第5トランジスタMP3は、差動回路からの電圧に応じた出力電圧Voutを発生する第1のトランジスタと解釈してよい。
【0027】
電流源Ibは、第5トランジスタMP3及び第6トランジスタMN3にバイアスを与えるための定電流を流す定電流源である。電流源Ibは、例えばMOSトランジスタにより構成される。電流源Ibを構成するMOSトランジスタに特定の電圧が印加されることにより、MOSトランジスタが飽和領域で動作する。これにより電流源Ibを定電流源とすることができる。電流源Ibは、第5トランジスタMP3のドレインと第6トランジスタMN3のゲートとに接続される。また電流源Ibはグランドに接続されており、電流源Ibには接地電圧が印加される。
【0028】
第6トランジスタMN3は、ゲートが第5トランジスタMP3のドレインに接続され、かつ、ドレインが第5配線W5に接続された第1導電型トランジスタである。具体的には、第6トランジスタMN3は、N型MOSトランジスタである。第6トランジスタMN3のソースは、不図示の直流電源に接続される。第6トランジスタMN3は、ネガティブフィードバック(負帰還)回路として動作するトランジスタと解釈してよい。第6トランジスタMN3は、第5トランジスタMP3の出力電圧Voutを調整するトランジスタと解釈してよい。
【0029】
電流源Ifは、第5トランジスタMP3及び第6トランジスタMN3にバイアスを与える電流源である。電流源Ifは、例えばMOSトランジスタにより構成される。電流源Ifを構成するMOSトランジスタに特定の電圧が印加されることにより、MOSトランジスタが飽和領域で動作する。これにより電流源Ifを定電流源とすることができる。電流源Ifは、不図示の直流電源と第5トランジスタMP3のソースとに接続される。電流源Ifには、直流電源からの電源電圧が印加される。電流源Ifが供給する基準電流の電流量は、電流源Ibが供給する基準電流の電流量より多くなるように設定される。
【0030】
第5配線W5は、第5トランジスタMP3のソースと出力電圧端子VOとを接続する配線である。
【0031】
(電圧生成回路100の動作)
次に
図2から
図4を参照して電圧生成回路100の動作を説明する。
図2、
図3、及び
図4は、電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、第1トランジスタMN1には、特定の波形の基準電圧(Vref)が入力され、第3トランジスタMN2には、基準電圧(Vref)を反転した電圧(帰還電圧(Vfb))が入力される。
【0033】
(温度変化:帰還電圧低下時)
例えば、出力回路20の第5トランジスタMP3の温度変化によって、
図2の(1)に示すように帰還電圧(Vfb)の値が低下した場合、
図2の(2)に示すように基準電圧(Vref)は、相対的に帰還電圧(Vfb)よりも大きくなり得る。この場合、
図2の(3)に示す第1トランジスタMN1のゲート-ソース間電圧は、
図2の(4)に示す第3トランジスタMN2のゲート-ソース間電圧よりも大きくなる。従って、第1トランジスタMN1のソース-ドレイン間電流が増加する。
【0034】
第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2には、定電流源である電流源Itlが接続されているため、第1トランジスタMN1のソース-ドレイン間電流が増加すると、キルヒホッフの電流則により、第3トランジスタMN2のソース-ドレイン間電流が減少する。これにより、差動回路10は、
図2の(5)に示すように、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2に入力される基準電圧の差分に相当する電圧を調整(増幅)して、単相の電圧信号(実線)として出力回路20に対して出力する。
【0035】
(温度変化:帰還電圧増加時)
例えば、出力回路20の第5トランジスタMP3の温度変化によって、
図3の(1)に示すように帰還電圧(Vfb)の値が増加した場合、
図3の(2)に示すように基準電圧(Vref)は、相対的に帰還電圧(Vfb)よりも小さくなり得る。この場合、
図3の(3)に示す第1トランジスタMN1のゲート-ソース間電圧は、
図3の(4)に示す第3トランジスタMN2のゲート-ソース間電圧よりも小さくなる。従って、第1トランジスタMN1のソース-ドレイン間電流が減少する。
【0036】
第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2には、定電流源である電流源Itlが接続されているため、第1トランジスタMN1のソース-ドレイン間電流が減少すると、キルヒホッフの電流則により、第3トランジスタMN2のソース-ドレイン間電流が増加する。これにより、差動回路10は、
図3の(5)に示すように、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2に入力される基準電圧の差分に相当する電圧を調整(増幅)して、単相の電圧信号(実線)として出力回路20に対して出力する。
【0037】
(負荷変動:出力電圧増加時)
負荷の変動によって
図4の(1)に示す出力電圧(Vout)が増加した場合、
図4の(2)に示す第5トランジスタMP3のソース-ゲート間電圧が増加するため、
図4の(3)に示す第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電流が増加する。従って、
図4の(2)に示す第5トランジスタMP3のソース-ゲート間が増加し、
図4の(4)に示す第5トランジスタMP3のドレイン電圧が増加する。
【0038】
第5トランジスタMP3のドレイン電圧の増加により、
図4の(5)に示す第6トランジスタMN3のゲート電流が増加するため、
図4の(6)に示す第6トランジスタMN3のソース-ドレイン間電流が増加する。ここで、第5トランジスタMP3及び第6トランジスタMN3には、定電流源である電流源Ibが接続されているため、キルヒホッフの電流則により、第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電流が減少に転じる。これにより、第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電圧の増加と、第5トランジスタMP3のドレイン電圧の増加とが抑制されるため、第6トランジスタMN3のゲート電流の増加と、第6トランジスタMN3のソース-ドレイン間電流の増加とが抑制される。この結果、出力電圧(Vout)の増加が抑制される。
【0039】
(負荷変動:出力電圧減少時)
負荷の変動によって
図4の(1)に示す出力電圧(Vout)が減少した場合、
図4の(2)に示す第5トランジスタMP3のソース-ゲート間電圧が減少するため、
図4の(3)に示す第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電流が減少する。従って、
図4の(2)に示す第5トランジスタMP3のソース-ゲート間が減少し、
図4の(4)に示す第5トランジスタMP3のドレイン電圧が減少する。
【0040】
第5トランジスタMP3のドレイン電圧の減少により、
図4の(5)に示す第6トランジスタMN3のゲート電流が減少するため、
図4の(6)に示す第6トランジスタMN3のソース-ドレイン間電流が減少する。ここで、第5トランジスタMP3及び第6トランジスタMN3には、定電流源である電流源Ibが接続されているため、キルヒホッフの電流則により、第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電流が増加に転じる。これにより、第5トランジスタMP3のソース-ドレイン間電圧の減少と、第5トランジスタMP3のドレイン電圧の減少とが抑制される。第5トランジスタMP3のソース電圧の減少が抑制されるため、第6トランジスタMN3のゲート電流の減少と、第6トランジスタMN3のソース-ドレイン間電流の減少とが抑制される。この結果、出力電圧(Vout)の減少が抑制される。
【0041】
以上のことから、出力回路20では、出力電圧(Vout)の増加と減少が速やかに抑制される。つまり、出力変動が過渡状態から定常状態へ速やかに移行する。
【0042】
(第1比較例)
図5は、第1比較例にかかる電圧生成回路の動作を説明するための図である。第1比較例にかかる電圧生成回路100Aは、オペアンプ30を利用した電圧生成回路である。オペアンプ30の非反転入力端子には基準電圧が入力され、オペアンプの反転入力端子には帰還信号が入力される。また当該オペアンプの出力端子は、並列接続された不図示の負帰還抵抗及び負帰還容量を介して、反転入力端子に接続される。負帰還抵抗及び負帰還容量により出力電圧の増幅率が設定される。この構成により、増幅回路の利得が一定となる領域(帯域)を広げることができる。また、オペアンプの開放利得のばらつきの影響が小さくなり、出力波形の歪みを抑制することができる。
【0043】
しかしながら、電圧生成回路100Aでは、負帰還抵抗及び負帰還容量で構成される帰還回路における遅延(位相遅れなど)、オペアンプ自体の応答時間の遅延などにより、基準電圧に対して所望の出力電圧が得られるまでの時間が長くなり得る。
【0044】
(第2比較例)
図6は、第2比較例にかかる電圧生成回路の動作を説明するための図である。第2比較例にかかる電圧生成回路100Bは、ソースフォロワ回路40を利用した電圧生成回路である。ソースフォロワ回路40は、Pチャネル型MOSトランジスタMPとNチャネル型MOSトランジスタMNとを備え、出力電圧が入力電圧を追従(フォロー)するように動作する。具体的には、ソースフォロワ回路40は、出力電圧の増加した場合、Pチャネル型MOSトランジスタMPに流れる電流が増加することで、Pチャネル型MOSトランジスタMPのドレイン電圧が増加する。これによりNチャネル型MOSトランジスタMNのゲート電流が増加するため、Pチャネル型MOSトランジスタMPの増加分の電流を流すように、Nチャネル型MOSトランジスタMNに流れる電流が大きくなる。Nチャネル型MOSトランジスタMNに流れる電流が大きくことで、負荷電流の増加が抑制され、出力電圧の増加が抑制される。
【0045】
しかしながら、電圧生成回路100Bでは、PVCの少なくとも一つの要因、例えばトランジスタの温度変化が考慮されていないため、温度変化に伴って変動する電圧(VtMP)を入力電圧(基準電圧)に重畳した電圧が、出力電圧として出力される。つまりPVCに依存した出力電圧が出力され得るため、出力電圧が一定とならない場合がある。
【0046】
(作用・効果)
以上に説明したように、本開示の実施形態にかかる電圧生成回路100の差動回路10は、差動対を構成する2つのトランジスタと、当該2つのトランジスタに接続され定電流源(電流源Itl)とを備える。また電圧生成回路100の出力回路20は、差動回路10の差動対からの電圧に応じた出力電圧を発生する第1のトランジスタと、当該トランジスタとは導電型が異なり出力電圧を調整する第2のトランジスタと、これらのトランジスタに接続され定電流源(電流源Ib)とを備える。
【0047】
この構成により、トランジスタの温度が変化したことで、帰還電圧が増減した場合でも、第1トランジスタMN1及び第3トランジスタMN2に入力される基準電圧の差分に相当する電圧を特定の電圧値に維持することができる。また、負荷の変動によって出力電圧が増減した場合でも、出力電圧(Vout)の増減を抑制することができる。つまり、本開示の実施形態にかかる電圧生成回路100は、トランジスタの温度変化にかかわらず、負荷変動に対して高速に応答する電圧生成回路を提供することができる。
【0048】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、前記差動回路は、ゲートに第1基準電圧が入力される第1導電型の第1トランジスタと、ドレインが前記第1トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第2トランジスタと、ゲートに第2基準電圧が入力され、ソースが前記第1トランジスタのソースに接続された第1導電型の第3トランジスタと、ゲートが前記第2トランジスタのゲートに接続され、かつ、ドレインが前記第3トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第4トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記第4トランジスタのゲートとを接続する第1配線と、前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインとを接続する第2配線と、前記第1配線と前記第2配線とを接続する第3配線と、前記第3トランジスタのドレインと前記第4トランジスタのドレインとを接続する第4配線と、前記第1トランジスタ及び前記第3トランジスタのソースに接続され、定電流を流す電流源と、を備え、前記出力回路は、ゲートが前記第4配線に接続された第2導電型の第5トランジスタと、前記第5トランジスタのソースと出力電圧端子とを接続する第5配線と、ゲートが前記第5トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第5配線に接続された第1導電型の第6トランジスタと、前記第5トランジスタのドレインと前記第6トランジスタのゲートとに接続され、定電流を流す電流源と、を備えた電圧生成回路。
【0050】
(付記2)
差動回路及び出力回路を含む電圧生成回路であって、前記差動回路は、第1基準電圧及び第2基準電圧の差分を調整した電圧を前記出力回路に出力する同一導電型の2つのトランジスタと、前記2つのトランジスタに接続され定電流を流す電流源とを含み、前記電圧生成回路は、前記差動回路からの電圧に応じた出力電圧を発生する第1のトランジスタと、当該第1のトランジスタとは導電型が異なり前記出力電圧を調整する第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとに接続され定電流を流す電流源とを含む、電圧生成回路。
【0051】
(付記3)
前記差動回路は、前記第1基準電圧と、前記出力回路からの出力電圧を特定の増幅率で変更した前記第2基準電圧との差分を調整し、調整した電圧を前記出力回路に対して出力する、付記1又は2に記載の電圧生成回路。
【0052】
(付記4)
前記出力回路は、ソースフォロワ回路である、付記1又は2に記載の電圧生成回路。
【0053】
なお、第1導電型トランジスタはP型MOSトランジスタに限定されず、N型MOSトランジスタと解釈してよい。この場合、第2導電型トランジスタはP型MOSトランジスタと解釈してよい。
【0054】
また、第1導電型トランジスタはP型MOSトランジスタに限定されず、PNP型バイポーラトランジスタと解釈してよい。この場合、第2導電型トランジスタはNPN型バイポーラトランジスタと解釈してよい。
【符号の説明】
【0055】
10 差動回路
20 出力回路
30 オペアンプ
40 ソースフォロワ回路
100 電圧生成回路
100A 電圧生成回路
100B 電圧生成回路
Ib 電流源
If 電流源
Itl 電流源
MN1 第1トランジスタ
MN2 第3トランジスタ
MN3 第6トランジスタ
MP1 第2トランジスタ
MP2 第4トランジスタ
MP3 第5トランジスタ
MP Pチャネル型MOSトランジスタ
MN Nチャネル型MOSトランジスタ
VIN1 入力端子
VIN2 入力端子
VO 出力電圧端子
Vout 出力電圧
W1 第1配線
W2 第2配線
W3 第3配線
W4 第4配線
W5 第5配線