(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146173
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058916
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】江口 智康
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】応力集中による不具合を抑制することが可能な積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ100は、内部電極と誘電体層とが積層された容量領域15と、積層方向において積層体を挟む一対のカバー誘電体層16と、内部電極14が、交互に露出する一対の端面と、内部電極を側面から挟む一対のサイドマージン領域18とを有し、一対の端面上に形成され、第1金属層と第2金属層からなる外部電極を有し、第1金属層は、一対のカバー誘電体層および一対のサイドマージン領域の内部電極側の第1部分57aと、を覆い、カバー誘電体層およびサイドマージン領域の第1部分以外の第2部分58aを覆わず、内部電極の一部に接触し、ニッケルまたは銅を主成分とし、第2金属層は、第1金属層を覆い、第2部分のうち少なくとも第1金属層21a側の部分を覆い、スズを主成分とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極と複数の誘電体層とが第1方向に交互に積層された積層体と、前記第1方向において前記積層体を挟む一対のカバー誘電体層と、積層された前記複数の内部電極が、交互に露出し第2方向において対向する一対の端面と、を備え、前記複数の誘電体層は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記複数の内部電極を挟む一対のサイドマージン領域を有する素体と、
前記一対の端面をそれぞれ覆い、少なくとも一方の外部電極は、対応する端面において、前記複数の内部電極の一部と、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記複数の内部電極側の第1部分と、を覆い、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記第1部分以外の第2部分を覆わず、前記複数の内部電極の一部に接触し、ニッケルまたは銅を主成分とする第1金属層と、前記第1金属層を覆い、前記対応する端面において前記第2部分のうち少なくとも前記第1金属層側の部分を覆い、スズを主成分とする第2金属層と、を備える一対の外部電極と、
を備える積層セラミック電子部品。
【請求項2】
複数の内部電極と複数の誘電体層とが第1方向に交互に積層された積層体と、前記第1方向において前記積層体を挟む一対のカバー誘電体層と、積層された前記複数の内部電極が、交互に露出し第2方向において対向する一対の端面と、を備え、前記複数の誘電体層は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記複数の内部電極を挟む一対のサイドマージン領域を有する素体と、
前記一対の端面をそれぞれ覆い、少なくとも一方の外部電極は、対応する端面において、前記複数の内部電極の一部と、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記複数の内部電極側の第1部分と、を覆い、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記第1部分以外の第2部分を覆わず、前記複数の内部電極の一部に接触する第1金属層と、前記第1金属層を覆い、前記対応する端面において前記第2部分のうち少なくとも前記第1金属層側の部分を覆い、前記第1金属層のヤング率より小さいヤング率を有する第2金属層と、を備える一対の外部電極と、
を備える積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1金属層は、ニッケルまたは銅を主成分とし、
前記第2金属層はスズを主成分とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1部分の面積は前記第2部分の面積の1/10以上かつ9/10以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記少なくとも一方の外部電極は、前記素体の前記対応する端面以外の面を覆わない請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記第2金属層は、前記対応する端面の端まで覆う請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記第2金属層は、前記対応する端面の周縁部の少なくとも一部の第3部分を覆わない請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記第3部分の幅は前記第2部分の幅の1/2以下である請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記一対の外部電極の両方は、前記第1金属層と前記第2金属層を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品において、内部ニッケル電極層を外部ニッケル電極層が覆わない非被覆領域を設け、非被覆領域に外部銅電極層を設けることが知られている(例えば、特許文献1)。外部電極がサイドマージン部の側面を覆わない構造が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-14532号公報
【特許文献2】特開2017-195359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミック電子部品を実装基板に実装したときに、外部電極が素体に接する端部に応力が集中すると、素体のクラックまたは外部電極の剥がれ等の不具合が生じることがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、応力集中による不具合を抑制することが可能な積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の内部電極と複数の誘電体層とが第1方向に交互に積層された積層体と、前記第1方向において前記積層体を挟む一対のカバー誘電体層と、積層された前記複数の内部電極が、交互に露出し第2方向において対向する一対の端面と、を備え、前記複数の誘電体層は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記複数の内部電極を挟む一対のサイドマージン領域を有する素体と、前記一対の端面をそれぞれ覆い、少なくとも一方の外部電極は、対応する端面において、前記複数の内部電極の一部と、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記複数の内部電極側の第1部分と、を覆い、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記第1部分以外の第2部分を覆わず、前記複数の内部電極の一部に接触し、ニッケルまたは銅を主成分とする第1金属層と、前記第1金属層を覆い、前記対応する端面において前記第2部分のうち少なくとも前記第1金属層側の部分を覆い、スズを主成分とする第2金属層と、を備える一対の外部電極と、を備える積層セラミック電子部品である。
【0007】
本発明は、上記構成において、複数の内部電極と複数の誘電体層とが第1方向に交互に積層された積層体と、前記第1方向において前記積層体を挟む一対のカバー誘電体層と、積層された前記複数の内部電極が、交互に露出し第2方向において対向する一対の端面と、を備え、前記複数の誘電体層は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記複数の内部電極を挟む一対のサイドマージン領域を有する素体と、前記一対の端面をそれぞれ覆い、少なくとも一方の外部電極は、対応する端面において、前記複数の内部電極の一部と、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記複数の内部電極側の第1部分と、を覆い、前記一対のカバー誘電体層および前記一対のサイドマージン領域の前記第1部分以外の第2部分を覆わず、前記複数の内部電極の一部に接触する第1金属層と、前記第1金属層を覆い、前記対応する端面において前記第2部分のうち少なくとも前記第1金属層側の部分を覆い、前記第1金属層のヤング率より小さいヤング率を有する第2金属層と、を備える一対の外部電極と、を備える積層セラミック電子部品である。
【0008】
上記構成において、前記第1金属層は、ニッケルまたは銅を主成分とし、前記第2金属層はスズを主成分とする構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1部分の面積は前記第2部分の面積の1/10以上かつ9/10以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記少なくとも一方の外部電極は、前記素体の前記対応する端面以外の面を覆わない構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第2金属層は、前記対応する端面の端まで覆う構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第2金属層は、前記対応する端面の周縁部の少なくとも一部の第3部分を覆わない構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第3部分の幅は前記第2部分の幅の1/2以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記一対の外部電極の両方は、前記第1金属層と前記第2金属層を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、応力集中による不具合を抑制することが可能な積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の第1面を、外部電極を透過してみた図である。
【
図5】
図5は、
図1の第2面を、外部電極を透過してみた図である。
【
図6】
図6は、比較対象1の積層セラミックコンデンサの
図1のA-A断面に相当する断面図である。
【
図7】
図7は、比較対象2の積層セラミックコンデンサの
図1のA-A断面に相当する断面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、比較対象1および2の積層セラミックコンデンサを実装基板に実装したときの図であり、
図8(c)は、実施形態の積層セラミックコンデンサを実装基板に実装したときの図である。
【
図9】
図9は、比較対象3の積層セラミックコンデンサの第1面を、外部電極を透過してみた図である。
【
図10】
図10は、積層セラミックコンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造する方法を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)から
図12(c)は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造する方法を示す断面図である。
【
図13】
図13(a)から
図13(d)は、実施形態における外部電極の様々な例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例に実施形態について説明する。
【0018】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図4は、
図1の第1面を、外部電極を透過してみた図である。
図5は、
図1の第2面を、外部電極を透過してみた図である。
図4および
図5において、金属層21aおよび21bが設けられる領域を太点線で示している。
【0019】
図1~
図5において、Z方向(第1方向)は、誘電体層14、内部電極12aおよび12bが積層される積層方向であって、素体10の第5面55と第6面56が対向する方向である。X方向(第2方向)は、素体10の長さ方向であって、素体10の第1面51と第2面52が対向する方向である。Y方向(第3方向)は、内部電極12aおよび12bの幅方向であり、素体10の第3面53と第4面54が対向する方向である。X方向と、Y方向とおよびZ方向は、互いに直交している。
【0020】
積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10と、外部電極20aおよび20bとを備える。
【0021】
素体10は、複数の誘電体層14と、複数の内部電極12aおよび12bと、カバー誘電体層16とを有する。複数の内部電極12aと複数の内部電極12bとはZ方向に交互に積層されている。複数の内部電極12aのうち1つと複数の内部電極12bのうち1つとの間に複数の誘電体層14のうち1つが設けられている。誘電体層14、内部電極12aおよび12bが積層された積層体40の積層方向(Z方向)における最外層は内部電極12aおよび12bであり、積層体40のZ方向において積層体40を挟む一対のカバー誘電体層16が設けられている。誘電体層14を挟み内部電極12aと内部電極12bが対向する領域は容量領域15である。
図2における素体10のX方向において容量領域15を挟む領域は一対のエンドマージン領域42である。
図3から
図5におけるY方向において容量領域15を挟む領域は一対のサイドマージン領域18である。
【0022】
第1面51および第2面52には、内部電極12aおよび12bが交互に露出する。第1面51から内部電極12aが露出し内部電極12bは露出しない。第2面52から内部電極12bが露出し内部電極12aは露出しない。すなわち、内部電極12aと12bとは、異なる第1面51および第2面52に接続されている。
【0023】
図2、
図4および
図5のように、外部電極20a(および20b)(一対の外部電極)は、金属層21a(および21b)(第1金属層)と金属層22a(および22b)(第2金属層)とを備えている。第1面51(および第2面52)において、内部電極12a(および12b)を囲みカバー誘電体層16およびサイドマージン領域18の内部電極12a(および12b)側の部分は部分57a(および57b)(第1部分)であり、カバー誘電体層16およびサイドマージン領域18の部分57a(および57b)以外の部分は部分58a(および58b)(第2部分)である。金属層21a(および21b)は、内部電極12a(および12b)に接触し、部分57a(および57b)をそれぞれ覆いかつ接触し、部分58a(および58b)をそれぞれ覆わない。
【0024】
金属層22a(および22b)は、金属層21a(および21b)を覆い、第1面51(および第2面52)において部分58a(および58b)を覆いかつ接触する。金属層22a(および22b)は第3面53および第4面54には設けられていない。
【0025】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ(X方向における長さ)0.25mm、幅(Y方向における幅)0.125mm、高さ(Z方向における高さ)0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0026】
サイドマージン領域18のY方向における幅は、例えば10μm~30μmである。エンドマージン領域42のX方向における長さは、例えば10μm~50μmである。
【0027】
内部電極12aおよび12bは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極12aおよび12bとして、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)または金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極12aおよび12bの厚みは、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0028】
誘電体層14は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、およびペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。例えば、誘電体層14において、主成分セラミックは、90原子%以上含まれている。誘電体層14の厚みは、例えば、2μm以上かつ5μm以下である。
【0029】
誘電体層14には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層14への添加物として、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはシリコン(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0030】
カバー誘電体層16の主成分セラミックの組成は、誘電体層14の主成分セラミックと同じでもよいし、異なっていてもよい。サイドマージン領域18は、誘電体層14と異なるサイド誘電体層でもよい。この場合、サイド誘電体層の主成分セラミックの組成は、誘電体層14の主成分セラミックと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
外部電極20aおよび20bのうち金属層21aおよび21bは、銅、ニッケル、アルミニウム(Al)、Zn(亜鉛)などの金属、またはこれらの2以上の合金(例えば、銅とニッケルとの合金)を主成分とし、金属層21aおよび21bの緻密化のためのガラス成分を含んでいる。金属層21aおよび21bを焼成する場合には、金属層21aおよび21bの焼結性を制御するための共材、などのセラミックを含んでいる。ガラス成分は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、亜鉛、アルミニウム、ケイ素またはホウ素等の酸化物である。共材は、例えば、誘電体層14の主成分と同じ材料を主成分とするセラミック成分である。
【0032】
外部電極20aおよび20bのうち金属層22aおよび22bは、スズ等を主成分とする。金属層22aおよび22bは、金属層21aおよび21bより柔らかい。すなわち、金属層22aおよび22bのヤング率は、金属層21aおよび21bのヤング率より小さい。
【0033】
図6は、比較対象1の積層セラミックコンデンサの
図1のA-A断面に相当する断面図である。
図6のように、比較対象1の積層セラミックコンデンサ110では、外部電極20aは、第1面51と、第3面53、第4面54、第5面55および第6面56の各々の端部と、に設けられている。外部電極20bは、第2面52と、第3面53、第4面54、第5面55および第6面56の各々の端部と、に設けられている。金属層22aおよび22bは金属層21aおよび21b上に設けられている。金属層22aおよび22bは、それぞれ第1面51および第2面52には接して設けられていない。
【0034】
図7は、比較対象2の積層セラミックコンデンサの
図1のA-A断面に相当する断面図である。
図7のように、比較対象2の積層セラミックコンデンサ112では、外部電極20aおよび20bは、それぞれ第1面51および第2面52に設けられ、第3面53、第4面54、第5面55および第6面56に設けられていない。金属層21aおよび21bは第1面51および第2面52の全面に設けられ、金属層22aおよび22bは、金属層21aおよび21bの外側の第1面51および第2面52には接して設けられていない。
【0035】
図8(a)および
図8(b)は、比較対象1および2の積層セラミックコンデンサを実装基板に実装したときの図であり、
図8(c)は、実施形態の積層セラミックコンデンサを実装基板に実装したときの図である。
図8(a)に示すように、実装基板30上のランド31に、比較対象1の積層セラミックコンデンサ110を実装する。外部電極20aおよび20bとランド31とは、はんだ等の接合材32により接合される。実装基板30と素体10との線膨張係数との差に起因する熱応力が素体10加わると、第5面55における外部電極20aおよび20bの端部の箇所60に応力が集中する。これにより、素体10にクラック62が生じる可能性がある。
【0036】
図8(b)に示すように、比較対象2の積層セラミックコンデンサ112は、外部電極20aおよび20bが第5面55に設けられていないため、素体10の第5面55での応力集中を抑制できる。しかし、外部電極20aおよび20bが第1面51に接する端部の箇所64は金属層21aおよび21bの端部である。金属層21aおよび21bは硬い金属のため、箇所64に応力が集中すると、金属層21aおよび21bが素体10から剥がれる可能性がある。
【0037】
図8(c)に示すように、積層セラミックコンデンサ100では、金属層22aおよび22bは、第1面51および第2面52のうち金属層21aおよび21bが覆わない部分58aおよび58bを覆う。金属層22aおよび22bは、金属層21aおよび21bより柔らかい。このため、箇所64に応力が集中しても金属層22aおよび22bは、比較対象2の積層セラミックコンデンサ112に比べ、素体10から剥がれにくい。金属層21aおよび21bの端部の箇所66には、箇所64より応力が集中しにくいため、金属層21aおよび21bは素体10から剥がれにくい。
【0038】
図9は、比較対象3の積層セラミックコンデンサの第1面を、外部電極を透過してみた図である。金属層21aが設けられる領域を太破線で示している。
図9のように、比較対象3の積層セラミックコンデンサ114では、金属層21aは、Y方向における内部電極12aの端部の領域70を覆っていない。これにより、金属層22aは、領域70において内部電極12aに接触する。金属層22aと内部電極12aとの接触抵抗が高い場合、外部電極20aと内部電極12aとの接触抵抗が高くなってしまう。
【0039】
図4および
図5のように、実施形態の積層セラミックコンデンサ100では、金属層21aおよび21bは、内部電極12aおよび12bに接触し、部分57aおよび57bを覆う。これにより、外部電極20aと内部電極12aとの接触抵抗を低くすることができる。
【0040】
(積層セラミックコンデンサの製造方法)
積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図10は、積層セラミックコンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【0041】
(グリーンシート成形工程)
まず、グリーンシートを成形する(工程S10)。工程S10では、例えばセラミック粉末に各種の添加化合物(焼結補助剤など)を添加することで得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノールまたはトルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法またはドクターブレード法を用い、基材上にグリーンシートを塗工して乾燥させる。基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0042】
(内部電極印刷工程)
続いて、グリーンシート上に内部電極を印刷する(工程S12)。工程S12では、基材上のグリーンシートに、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストを、例えばグラビア印刷法を用い印刷する。これにより、グリーンシート上に、内部電極12aおよび12bに対応する複数の内部電極パターンを互いに離間させて成膜する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層14の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0043】
(圧着工程)
続いて、グリーンシートを積層し圧着する(工程S14)。工程S14では、内部電極12aおよび12bとなる内部電極パターンが印刷されたグリーンシートを積層することにより積層シートを形成する。積層シートの積層方向における両端面には、カバー誘電体層16に対応するグリーンシートがそれぞれ積層される。続いて、積層シートを加圧することにより複数のグリーンシート間を圧着する。圧着手段としては、例えば静水圧プレスを用いる。続いて、切断ブレードにより積層シートを所定のカット線に沿って積層方向に切断することにより複数の素体10が形成される。
【0044】
(焼成工程)
続いて、素体10を焼成する(工程S16)。工程S16では、素体10を、250℃~500℃の窒素ガス囲気中で脱バインダ処理した後、還元雰囲気中で1300℃~1400℃で1時間程度焼成する。これにより、素体10、サイド誘電体層18aおよび18b内の各粒子が焼結する。
【0045】
(第1金属層形成工程)
続いて、金属層21aおよび21bを形成する(工程S18)。以下に
図11(a)から
図12(b)を参照して工程S18について説明する。
【0046】
図11(a)から
図12(c)は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造する方法を示す断面図である。
図11(a)のように、平板状の弾性体24上に金属シート28を配置する。金属シート28は、第1面51を覆うように配置される。素体10の第2面52上にテープ26が貼り付けられる。
【0047】
続いて、
図11(b)のように、テープ26を不図示の押圧装置により下方(-X方向)へ押圧させる。これにより、素体10の第1面51は金属シート28の表面に押し付けられる。このとき、金属シート28の押し付けられた部分は素体10からの押圧により凹み、素体10の下方の弾性体24も凹む。金属シート28の凹んだ部分は、弾性体24からの復元力により素体10の第1面51に押し当てられる。これにより第1面51に金属シート28の一部が貼り付く。このとき、積層方向(Z方向)における第1面51の両端部では、素体10の角部に沿って金属シート28が貼り付く。その後、素体10の押圧力が増加すると、金属シート28の貼り付いた部分とその他の部分の間にせん断力が生ずるため、張り付いた部分と他の部分は互いに切り離される。
【0048】
続いて、
図11(c)のように、テープ26を不図示の押圧装置により上方(+X方向)へ移動させる。これにより、素体10が弾性体24から離れるように移動する。このとき、金属シート28の切り離された部分は素体10の第1面51に貼り付く。
【0049】
続いて、
図11(a)から
図11(c)と同様に、素体10の第2面52に金属シート28を貼り付ける。
図12(a)に示すように、第1面51および第2面52の全面に金属シート28が貼り付けられる。
【0050】
続いて、
図12(b)にように、バレル研磨を行う。これにより、金属シート28の外側の部分が研磨され、第1面51および第2面52のうち周縁部の部分58aおよび58bにおける金属シート28が除去され、金属層21aおよび21bが形成される。このとき、素体10の角が研磨され、素体10の角部が丸くなってもよい。バレル研磨の条件を選択することで、素体10より金属シート28をより研磨することもできる。
【0051】
(第2金属層形成工程)
続いて、金属層22aおよび22bを形成する(工程S20)。以下に
図12(c)を参照して工程S20について説明する。
【0052】
図12(c)に示すように、金属層21aおよび21bの表面をめっき処理することで、金属層21aおよび21bの表面に金属層22aおよび22bを形成する。めっき条件を適宜選択することにより、金属層21aおよび21bの端面にも金属層22aおよび22bを形成することで、部分58aおよび58bに接する金属層22aおよび22bを形成できる。めっき処理の時間を適宜選択することで、金属層22aおよび22bは、部分58aおよび58bの全面を覆うことができる。無電解めっきまたはスパッタリング法等により、金属層21aおよび21bの表面および部分58aおよび58bに薄いシード層を形成した後に、シード層の表面に金属層22aおよび22bをめっき法により形成してもよい。
【0053】
金属層21aと22aにより外部電極20aが形成され、金属層21bと22bにより外部電極20bが形成される。
【0054】
(外部電極形成工程の別の例)
図10の工程S16の素体10の焼成工程の前に、
図12(a)のように、第1面51および第2面52に金属シート28として、ペーストを塗布する。続いて、
図10の工程S16の焼成を行う。
図12(b)のように、金属シート28が収縮し、第1面51および第2面52の周縁部に金属層21aおよび21bに覆われない部分58aおよび58bが形成される。続いて、
図12(c)のように、金属層22aおよび22bを形成する。このように外部電極20aおよび20bを形成してもよい。外部電極20aおよび20bの形成方法は上記方法には限定されない。
【0055】
(外部電極の例)
図13(a)から
図13(d)は、実施形態における外部電極の様々な例を示す断面図である。
図13(a)に示すように、金属層22a(および22b)は部分58a(および部分58b)をすべて覆っていてもよい。
【0056】
図14は、
図13(b)の第1面を、外部電極を透過してみた図である。金属層21aおよび22aが覆う領域を太点線で示している。
図13(b)および
図14に示すように、金属層22a(および22b)は部分58a(および部分58b)のうち内側の部分を覆い、外側の部分59aを覆わなくてもよい。この場合にも、最も応力が集中する外部電極20a(および20b)の端部の箇所64は、柔らかい金属層22a(および22b)と素体10とが接しているため、金属層22a(および22b)の素体10からの剥がれを抑制できる。
【0057】
図13(c)に示すように、金属層22a(および22b)と金属層21a(および21b)との間に、金属層23aを設けてもよい。外部電極20a(および20b)の最も外側の金属層22aおよび22bが内部電極12a(および12b)と接触する金属層21aおよび21bより柔らかければよい。
【0058】
図13(d)に示すように、金属層22a(および22b)は、第5面55および第6面56の端部を覆ってもよい。この場合にも、最も応力が集中する外部電極20a(および20b)の端部の箇所60は、柔らかい金属層22a(および22b)と素体10とが接しているため、金属層22a(および22b)の素体10からの剥がれを抑制できる。また、
図8(a)のような、クラック62の発生を抑制できる。また、金属層21a(および21b)の端部の箇所64が素体10の角部に設けられていないため、箇所64における応力集中を抑制できる。
【0059】
図13(a)から
図13(d)において、内部電極12a(および12b)は、例えばニッケルを主成分とする。金属層21a(および21b)は、例えばニッケルまたは銅を主成分とする。金属層22a(および22b)は、例えばスズを主成分とする。金属層23aは、例えば金属層21a(および21b)が銅主成分とし、金属層22a(および22b)がスズを主成分とする場合に、拡散のバリア層として設けられ、ニッケルを主成分とする。
【0060】
以上のように、実施形態では、
図2および
図4のように、金属層21a(および21b)は部分57a(および57b)を覆い部分58a(および58b)を覆わない。金属層22a(および22b)は、金属層21a(および21b)のヤング率より小さなヤング率を有し、金属層21a(および21b)を覆い、第1面51(および第2面52)において部分58a(および58b)のうち少なくとも金属層21a(および21b)側の部分を覆う。これにより、
図8(c)のように、素体10のクラックまたは外部電極20aおよび20bの剥がれ等の不具合を抑制できる。不具合を抑制する観点から、金属層22a(および22b)のヤング率は、金属層21a(および21b)のヤング率の3/4以下が好ましく、1/2以下がより好ましい。金属層21aおよび21bが第1面51および第2面52にそれぞれ露出する内部電極12aおよび12b全体にそれぞれ接触する。これにより、外部電極20aおよび20bと内部電極12aおよび12bとの接触抵抗を小さくすることができる。
【0061】
柔らかい金属はヤング率が低い。ニッケル、銅およびスズのヤング率は、それぞれ204GPa、130GPaおよび41GPaである。よって、金属層21aおよび21bはニッケルまたは銅を主成分とし、金属層22aおよび22bはスズを主成分とする。金属層21aおよび21bはニッケルまたは銅に共材等を含んでもよい。金属層22aおよび22bはスズ・銀・銅はんだまたはスズ・銀はんだ、等のスズを主成分とするはんだでもよい。ここで、主成分とは、意図的または意図せずに他の元素または化合物が添加されることを許容し、例えば含有率が50原子%以上であり、80原子%以上であり、90原子%以上である。
【0062】
図13(d)のように、外部電極20aおよび20bのうち金属層22aおよび22bは、第3面53、第4面54、第5面55および第6面56の端部を覆ってもよい。しかし、積層セラミックコンデンサが大型化する。そこで、
図13(a)から
図13(c)のように、外部電極20a(および20b)は、素体10の第1面51(および第2面52)以外の面を覆わない。これにより、積層セラミックコンデンサを小型化することができる。
【0063】
図13(a)のように、金属層22a(および22b)は、第1面51(および第2面52)の端まで覆ってもよいし、
図13(b)のように、金属層22a(および22b)は、第1面51(および第2面52)の周縁部の少なくとも一部の部分59a(第3部分)を覆わなくてもよい。
【0064】
図4および
図5において、部分58aおよび58bの面積が大きすぎると、金属層21aおよび21bと内部電極12aおよび12bとの位置合わせがずれた場合に、金属層21aおよび21bから内部電極12aおよび12bが露出する可能性がある。この観点から、部分58aの面積は、部分57aと部分58aの合計の面積の9/10以下が好ましく、4/5以下がより好ましい。部分58bの面積は、部分57bと部分58bの合計の面積の9/10以下が好ましく、4/5以下がより好ましい。
【0065】
部分58aおよび58bの面積が小さすぎると、金属層21aおよび21bの端部の箇所66(
図8(c)参照)が、第1面51および第2面52の端の箇所64に近くなり、箇所66の応力集中が大きくなり、金属層21aおよび21bが素体10から剥がれる可能性がある。この観点から、部分58aの面積は、部分57aと部分58aの合計の面積の1/10以上が好ましく、1/5以上がより好ましい。部分58bの面積は、部分57bと部分58bの合計の面積の1/10以上が好ましく、1/5以上がより好ましい。
【0066】
図4および
図5のように、サイドマージン領域18における部分57aおよび57bのY方向における幅をL1b、部分58aおよび58bのY方向における幅をL2b、サイドマージン領域18のY方向における幅をL3bとする。カバー誘電体層16における部分57aおよび部分57bのZ方向における幅をL1a、部分58aおよび58bのZ方向における幅をL2a、カバー誘電体層16のZ方向における幅をL3aとする。
【0067】
金属層21a(および21b)から内部電極12a(および12b)を露出させない観点から、幅L1a(およびL1b)は、幅L3a(およびL3b)の1/10以上が好ましく、1/5以上がより好ましい。金属層21a(および21b)の剥がれを抑制する観点から、幅L1a(およびL1b)は、それぞれ幅L3a(およびL3b)の9/10以下が好ましく、4/5以下がより好ましい。
【0068】
図14において、金属層22aが設けられていない幅L4aおよびL4bが大きいと、金属層21aの端に応力が集中し、金属層21aが素体10から剥がれやすくなる。この観点から、幅L4aおよびL4bは、それぞれ幅L2aおよびL2bの1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましい。第2面52においても同じである。
【0069】
一対の外部電極20aおよび20bの両方が、第1金属層21aおよび21bと第2金属層22aおよび22bを備える例を説明した。少なくとも一方の外部電極20aおよび20bが、対応する第5面55および第6面56のうち少なくとも一方の面の金属層21aおよび21b、および金属層22aおよび22bを備えればよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 素体
12a、12b 内部電極
14 誘電体層
15 容量領域
16 カバー誘電体層
18 サイドマージン領域
20a、20b 外部電極
21a、21b、22a、22b 金属層
28 金属シート
40 積層体
42 エンドマージン領域
51 第1面
52 第2面
53 第3面
54 第4面
55 第5面
56 第6面
57a、57b、58a、58b、59a 部分