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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146176
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発酵システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   C12M 1/38 20060101ALI20241004BHJP
   C02F 3/28 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
C12M1/00 H
C12M1/38 A
C02F3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058921
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔
(72)【発明者】
【氏名】三井 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】多川 正
【テーマコード(参考)】
4B029
4D040
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA12
4B029BB01
4B029DF01
4D040AA04
4D040AA34
4D040AA63
(57)【要約】
【課題】発酵槽内の温度分布の偏りを低減し、被処理水を効率よく発酵させることができる発酵システムを提供する。
【解決手段】発酵システム1は、被処理水W中の基質を微生物によって発酵可能に構成されている。発酵システム1は、内部に空間を有する発酵槽2と、発酵槽2内に配置され、発酵槽2内に被処理水Wを供給可能に構成された被処理水供給部3と、発酵槽2内における被処理水供給部3の下方に配置され、微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体4と、発酵槽2内に、発酵槽2内の温度を調整するための温度調整ガスGを供給可能に構成されたガス供給部5と、温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置6と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の基質を微生物によって発酵可能に構成された発酵システムであって、
内部に空間を有する発酵槽と、
前記発酵槽内に配置され、前記発酵槽内に前記被処理水を供給可能に構成された被処理水供給部と、
前記発酵槽内における前記被処理水供給部の下方に配置され、前記微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体と、
前記発酵槽内に、前記発酵槽内の温度を調整するための温度調整ガスを供給可能に構成されたガス供給部と、
前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置と、を有する、発酵システム。
【請求項2】
前記ガス温度調節装置は、前記温度調整ガスを加熱可能に構成されたガス加熱部を有している、請求項1に記載の発酵システム。
【請求項3】
前記ガス温度調節装置は、互いに温度の異なる2種以上の原料ガスを混合して前記温度調整ガスを作製可能に構成されたガス混合部を有している、請求項1に記載の発酵システム。
【請求項4】
前記発酵システムは、前記基質を前記微生物によって発酵させることによりバイオガスを製造可能に構成されているとともに、前記発酵槽で生じた前記バイオガスを貯蔵可能に構成されたバイオガス貯蔵容器と、前記バイオガス貯蔵容器に貯蔵された前記バイオガスの少なくとも一部を前記ガス温度調節装置に供給するバイオガス循環路と、をさらに有しており、前記ガス温度調節装置は、前記バイオガスを含む前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されている、請求項1に記載の発酵システム。
【請求項5】
前記発酵システムは、さらに、前記バイオガス貯蔵容器に接続され、前記バイオガス貯蔵容器から供給される前記バイオガスを燃焼させることにより発電可能に構成されたガス発電機を有しており、前記ガス温度調節装置は、前記ガス発電機を用いて前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されている、請求項4に記載の発酵システム。
【請求項6】
前記ガス温度調節装置は、前記ガス発電機から生じる廃熱を利用して前記温度調整ガスを加熱可能に構成されたガス加熱部を有している、請求項5に記載の発酵システム。
【請求項7】
前記ガス発電機は、前記バイオガスの燃焼によって生じる排ガスを前記ガス温度調節装置に導く排ガス供給路を有しており、前記ガス温度調節装置は、前記バイオガス循環路から供給される前記バイオガスと、前記排ガス供給路から供給される前記排ガスとを含む複数種類のガスを混合することにより前記温度調整ガスを作製可能に構成されたガス混合部を有している、請求項5に記載の発酵システム。
【請求項8】
前記ガス温度調節装置は、さらに、前記バイオガス循環路から供給される前記バイオガスの少なくとも一部を加熱可能に構成されたガス加熱部を有しており、前記ガス混合部は、前記バイオガス循環路から供給される前記バイオガス、前記ガス加熱部において加熱された前記バイオガス及び前記排ガス供給路から供給される前記排ガスのうち2種以上のガスを混合することにより前記温度調整ガスを作製可能に構成されている、請求項7に記載の発酵システム。
【請求項9】
前記微生物担体は、メタンを含む前記バイオガスを発生可能に構成されている、請求項4に記載の発酵システム。
【請求項10】
前記発酵システムは、さらに、前記発酵槽内に配置され、前記発酵槽内の雰囲気温度を測定可能に構成された温度センサを有しており、前記ガス温度調節装置は、前記温度センサにより測定される前記発酵槽内の雰囲気温度に基づいて前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の発酵システム。
【請求項11】
前記ガス供給部のガス吹き出し口は、前記発酵槽内において、前記発酵槽の高さの1/2となる位置よりも下方に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の発酵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機物を含む被処理水からの有機物の除去や資源の回収などを目的として、微生物による発酵が利用されている。微生物を用いた水処理を効率よく行う方法として、微生物が担持された微生物担体に被処理水を散布し、重力によって被処理水を透過させつつ微生物担体と接触した被処理水を発酵させる、下降流スポンジ懸架(Down-flow Hanging Sponge、DHS)法が知られている。
【0003】
微生物によって被処理水中の基質を発酵させる場合、発酵効率を高めるために、微生物の温度を発酵に適した温度に保つことが望ましい。かかる観点から、DHS法による発酵を行う場合、例えば、微生物担体に散布する被処理水の温度を調整する、あるいは微生物担体が収容された発酵槽の外壁の温度を調整する等の方法により、微生物の温度を発酵に適した温度に保つことが検討されている。例えば特許文献1には、反応槽に加熱手段としてのヒーターや温水管などを設けた散水式水処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-179517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、DHS法においては、被処理水が発酵槽の上方から下方に流れ落ちる過程で被処理水の温度が徐々に低下するため、発酵槽内における上部の温度と下部の温度との間に差が生じやすい。それ故、例えば、微生物担体に散布する被処理水の温度を発酵に適した温度にした場合であっても、発酵槽の下部の温度が発酵に適した温度よりも低くなりやすいという問題がある。
【0006】
また、特許文献1の散水式水処理装置のように、発酵槽の外壁を加熱手段によって加熱する場合には、発酵槽の外壁に近い部分を容易に加熱することができる一方で、外壁から離れた部分は加熱されにくいため、発酵槽内における外壁の近傍の温度と内部の温度との間に差が生じやすい。それ故、例えば、発酵槽の外壁を発酵に適した温度にした場合であっても、発酵槽内における外壁から離れた部分の温度が発酵に適した温度よりも低くなりやすいという問題がある。
【0007】
このように、DHS法においては、発酵槽内の温度分布に偏りが生じやすく、発酵効率の向上という点で未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、発酵槽内の温度分布の偏りを低減し、被処理水を効率よく発酵させることができる発酵システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、被処理水中の基質を微生物によって発酵可能に構成された発酵システムであって、
内部に空間を有する発酵槽と、
前記発酵槽内に配置され、前記発酵槽内に前記被処理水を供給可能に構成された被処理水供給部と、
前記発酵槽内における前記被処理水供給部の下方に配置され、前記微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体と、
前記発酵槽内に、前記発酵槽内の温度を調整するための温度調整ガスを供給可能に構成されたガス供給部と、
前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置と、を有する、発酵システムにある。
【発明の効果】
【0010】
前記発酵システムは、前記発酵槽内に温度調整ガスを供給可能に構成されたガス供給部と、前記温度調整ガスの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置と、を有している。そのため、ガス温度調節装置によって温度を調節した後の温度調整ガスを発酵槽内に吹き込むことにより、発酵槽内の温度を微生物の発酵に適した温度に速やかに調整することができる。さらに、前記温度調整ガスを発酵槽内に吹き込むことにより、発酵槽内の雰囲気の温度を直接的に制御し、発酵槽内における温度分布の偏りを容易に低減することができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、発酵槽内の温度分布の偏りを低減することができ、被処理水を効率よく発酵させることができる発酵システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1における発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、実施形態2における、ガス混合部を備えた発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図3図3は、実施形態3における、ガス加熱部とガス混合部との両方を備えた発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図4図4は、実施形態4における、バイオガスを温度調整ガスとして用いる発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図5図5は、実施形態5における、ガス発電機から生じる排ガスを温度調整ガスとして用いる発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図6図6は、実施形態6における、発酵槽内に複数の排ガス供給路を設けた発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図7図7は、実施形態6における、鉛直方向に立設された排ガス供給路を有する発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図8図8は、実施形態6における、発酵槽の壁面に排ガス供給路を兼ねた案内部材を設けた発酵システムの概略構成を示す説明図である。
図9図9は、案内部材の他の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
前記発酵システムに係る実施形態について、図1を参照して説明する。本形態の発酵システム1は、被処理水W中の基質を微生物によって発酵可能に構成されている。図1に示すように、発酵システム1は、内部に空間を有する発酵槽2と、発酵槽2内に配置され、発酵槽2内に被処理水Wを供給可能に構成された被処理水供給部3と、発酵槽2内における被処理水供給部3の下方に配置され、微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体4と、発酵槽2内に、発酵槽2内の温度を調整するための温度調整ガスGを供給可能に構成されたガス供給部5と、温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置6と、を有している。なお、図1においては、便宜上、微生物担体4の記載を一部割愛した。
【0014】
本形態の発酵システム1は、種々の態様の発酵に適用することができる。例えば、発酵システム1は、被処理水W中の基質を嫌気的に発酵させることができるように構成されていてもよく、好気的に発酵させることができるように構成されていてもよい。さらに、発酵システム1は、被処理水W中の基質を除去することができるように構成されていてもよく、被処理水W中の基質を資源に変換し、回収することができるように構成されていてもよい。発酵システム1に用いられる被処理水Wは特に限定されることはなく、所望の基質を含む被処理水Wを用いることができる。また、発酵システム1に用いられる微生物は、被処理水Wや基質の種類及び所望する発酵の態様等に応じて公知の微生物から適宜選択することができる。
【0015】
例えば、本形態の発酵システム1は、被処理水W中の有機物を発酵させてメタンを含むバイオガスBを発生させ、バイオガスBを資源として回収することができるように構成されている。本形態の発酵システム1における被処理水Wとしては、例えば、下水汚泥や食品残渣等の有機廃棄物を含む汚水等を使用することができる。また、被処理水Wとして、例えば、機械加工を行う加工装置から回収された廃水溶性クーラント等の有機物を含む工業排水を用いることも可能である。
【0016】
発酵槽2の形状や大きさは種々の態様を取り得る。例えば、本形態の発酵システム1における発酵槽2は、高さ及び直径が2mの円筒形状を有している。
【0017】
発酵槽2の内部には、被処理水Wが流通可能に構成された仕切り板21が設けられている。発酵槽2の内部の空間は、仕切り板21により、微生物担体4が保持される上部空間22と、被処理水Wが保持される下部空間23との2つの空間に区画されている。
【0018】
発酵槽2の上部空間22には、被処理水供給部3と、微生物担体4と、ガス供給部5と、が配置されている。被処理水供給部3は、微生物担体4及びガス供給部5の上方に配置されており、発酵槽2内に被処理水Wを供給することができるように構成されている。被処理水供給部3は、発酵槽2の外部から発酵槽2内に被処理水Wを供給することができる限り、種々の態様を取り得る。被処理水供給部3としては、例えば、発酵槽2内に被処理水Wを散布可能に構成された散水ノズルや、被処理水Wを放出するための小孔を備えた散水管などを使用することができる。また、発酵槽2の上部空間22には、被処理水Wの発酵によって生じたバイオガスBを発酵槽2の外部に導くガス導出管24が設けられている。
【0019】
発酵システム1は、さらに、発酵槽2内に配置され、発酵槽2内の雰囲気温度を測定可能に構成された温度センサ26を有しており、ガス温度調節装置6は、温度センサ26により測定される発酵槽2内の雰囲気温度に基づいて温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されていてもよい。本形態の発酵システム1における温度センサ26は、発酵槽2の上部空間22に配置されており、上部空間22の雰囲気温度を測定することができるように構成されている。このように、発酵槽2内に温度センサ26を設けることにより、発酵槽2内の雰囲気温度を正確に測定することができる。そして、ガス温度調節装置6において、温度センサ26により測定される雰囲気温度に基づいて温度調整ガスGの温度を調節することにより、発酵槽2内の雰囲気温度を発酵に適した温度により容易に調整することができる。
【0020】
発酵槽2の下部空間23には、被処理水Wを発酵槽2の外部へ導く被処理水導出管25が設けられている。被処理水導出管25から導出された被処理水Wは、そのまま発酵システム1の外部に排出されてもよい。また、図に示さないが、被処理水導出管25から導出された被処理水Wの一部を被処理水供給部3に循環させ、発酵槽2内に供給する被処理水Wとして利用することもできる。
【0021】
発酵槽2の仕切り板21上には、多数の微生物担体4が保持されている。微生物担体4としては、例えば、樹脂製のスポンジ等の多孔質体や、筒状に成形されたプラスチック等の筒状体、多孔質体の周囲にプラスチック製の支持枠が設けられた支持枠付き多孔質体等を用いることができる。
【0022】
微生物担体4の大きさは、発酵槽2よりも十分に小さければ特に限定されることはない。例えば、微生物担体4の大きさは、一辺100mmの直方体に内包される程度であればよい。
【0023】
微生物担体4のアスペクト比は、例えば0.5以上2以下であってもよい。この場合には、発酵槽2内により多量の微生物担体4を充填し、被処理水Wの発酵効率をより高めることができる。なお、微生物担体4のアスペクト比は、微生物担体4を基準となる平面上に最も安定に載置した状態における、微生物担体4の幅の最大値に対する高さの比である。
【0024】
ガス供給部5は、発酵槽2の上部空間22に設けられており、少なくとも1か所のガス吹き出し口51を有している。ガス供給部5は、発酵槽2内に温度調整ガスGを供給することができるように構成されていればよく、その具体的な構成は種々の態様を取り得る。例えば、本形態のガス供給部5は、ガス吹き出し口51としての貫通孔を複数備えた管であり、管の基端が発酵槽2の外部に配置されたガス温度調節装置6に接続されている。ガス温度調節装置6から供給される温度調整ガスGは、ガス供給部5の貫通孔から発酵槽2の上部空間22に放出される。
【0025】
ガス供給部5のガス吹き出し口51は、発酵槽2内において、発酵槽2の高さの1/2となる位置よりも下方に配置されていることが好ましい。DHS法においては、発酵槽2内の雰囲気が下方から上方へ向かって流れやすくなっている。そのため、ガス吹き出し口51を発酵槽2の高さの1/2となる位置よりも下方に設けることにより、温度調整ガスGを発酵槽2内の雰囲気の流れに乗せて発酵槽2全体により容易に拡散させることができる。その結果、発酵槽2内の温度分布の偏りをより低減することができる。
【0026】
同様の観点から、ガス供給部5のガス吹き出し口51は、温度調整ガスGを下方に向かって吹き出すことができるように配置されていることが好ましい。
【0027】
本形態のガス温度調節装置6は、発酵槽2の外側に配置されており、ガス源7に接続されている。ガス温度調節装置6は、ガス源7から供給される温度調整ガスGの温度を調整することができるように供給されている。また、ガス温度調節装置6は、装置内において温度を調整した温度調整ガスGをガス供給部5に供給することができるように構成されている。
【0028】
温度調整ガスGとしては、発酵槽2における発酵を阻害しない限り、種々のガスを使用することができる。例えば、発酵槽2において好気的発酵が行われる場合には、温度調整ガスGとして、空気などの酸素を含むガスを使用することができる。また、発酵槽2において嫌気的発酵が行われる場合には、温度調整ガスGとして、窒素や二酸化炭素などの酸素を含まないガスを使用することができる。また、発酵槽2において嫌気的発酵が行われる場合には、発酵槽2において生じるバイオガスBを温度調整ガスGとして再利用することもできる。
【0029】
ガス温度調節装置6において温度調整ガスGの温度を調整する方法は特に限定されることはなく、種々の方法を採用することができる。例えば、本形態のガス温度調節装置6は、温度調整ガスGを加熱可能に構成されたガス加熱部61を有しており、ガス源7からガス温度調節装置6に供給された温度調整ガスGを加熱して所望の温度に調整できるように構成されている。ガス加熱部61としては、例えば、電力や燃料の燃焼熱によって温度調整ガスGを加熱可能に構成されたヒーターや、熱媒との熱交換によって温度調整ガスGを加熱可能に構成された熱交換器などを使用することができる。
【0030】
また、発酵システム1の周囲に廃熱を発生させる機器や設備がある場合、ガス加熱部61は、発酵システム1の外部の機器や設備で生じた廃熱を用いて温度調整ガスGを加熱することができるように構成されていてもよい。このように、廃熱を用いて温度調整ガスGを加熱することにより、温度調整ガスGを加熱する際の消費エネルギーの削減が期待できる。
【0031】
なお、図には示さないが、ガス温度調節装置6は、温度調整ガスGを冷却可能に構成されたガス冷却部を有しており、ガス源7からガス温度調節装置6に供給された温度調整ガスGを冷却して所望の温度に調整できるように構成されていてもよい。この場合、ガス冷却部としては、例えば、冷媒との熱交換によって温度調整ガスGを加熱可能に構成された熱交換器などを使用することができる。
【0032】
ガス温度調節装置6からガス供給部5に供給する温度調整ガスGの温度は、発酵に用いられる微生物の種類や発酵槽2における発酵の態様等に応じて適宜設定すればよい。例えば、本形態の発酵システム1のように、発酵槽2において嫌気的発酵によりメタンを含むバイオガスを製造しようとする場合、ガス温度調節装置6において温度調整ガスGの温度を30℃以上60℃以下の範囲内に調整する事が好ましい。また、温度調整ガスGとして、酸素を含まないガスを使用することが好ましい。
【0033】
次に、本形態の発酵システム1の作用効果を説明する。発酵システム1は、発酵槽2内に温度調整ガスGを供給可能に構成されたガス供給部5と、温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されたガス温度調節装置6と、を有している。そのため、ガス温度調節装置6によって温度を調節した後の温度調整ガスGを発酵槽2内に吹き込むことにより、発酵槽2内の温度を微生物の発酵に適した温度に速やかに調整することができる。さらに、温度調整ガスGを発酵槽2内に吹き込むことにより、発酵槽2内の雰囲気の温度を直接的に制御し、発酵槽2内における温度分布の偏りを容易に低減することができる。
【0034】
以上のように、本形態の発酵システム1は、発酵槽2内の温度分布の偏りを低減することができ、被処理水Wを効率よく発酵させることができる。
【0035】
(実施形態2)
本形態においては、図2を参照しつつガス温度調節装置の他の態様の例を説明する。なお、本形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一の符号は、特に示さない限り、既出の形態における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
【0036】
本形態の発酵システム102は、図2に示すように、発酵槽2と、被処理水供給部3と、微生物担体(図示略)と、ガス供給部5と、ガス温度調節装置602と、を有している。発酵システム102におけるガス温度調節装置602以外の部分の構成は、実施形態1の発酵システム1における対応する部分の構成と同様である。
【0037】
本形態のガス温度調節装置602は、互いに温度の異なる2種以上の原料ガスG1、G2、・・・を混合して温度調整ガスGを作製可能に構成されたガス混合部62を有している。本形態のガス混合部62は、より具体的には、第1の原料ガスG1が充填された第1のガス源7aと、第2の原料ガスG2が充填された第2のガス源7bとの2つのガス源7を接続することができるように構成されている。ガス混合部62は、これらのガス源7から供給される原料ガスG1と原料ガスG2とを混合して温度調整ガスGを作製することができるように構成されている。ガス源7における原料ガスG1、G2の種類は、発酵槽2における発酵を阻害しない限り特に限定されることはない。例えば、原料ガスG1と原料ガスG2とは、互いに同一の種類のガスであってもよく、異なる種類のガスであってもよい。
【0038】
また、ガス温度調節装置602は、発酵槽2内に設けられた温度センサ26に接続されており、温度センサ26により測定される発酵槽2内の雰囲気温度に基づいて、第1の原料ガスG1と第2の原料ガスG2との混合比率を調節することができるように構成されている。
【0039】
本形態のガス温度調節装置602は、第1の原料ガスG1と第2の原料ガスG2と所望の比率で混合することにより、温度調整ガスGの温度を、第1の原料ガスG1の温度から第2の原料ガスG2の温度までの範囲内において所望の値に調節することができる。そして、ガス混合部62において作製した温度調整ガスGを、ガス供給部5のガス吹き出し口51から発酵槽2内に供給することにより、発酵槽2内の温度を調整することができる。
【0040】
本形態のガス温度調節装置602のように、互いに温度の異なる原料ガスG1と原料ガスG2とを混合して温度調整ガスGを作製することにより、温度調整ガスGの加熱および冷却に必要なエネルギーを低減でき、温度調整ガスGの温度を効率的に制御することができる。それ故、本形態の発酵システム102は、発酵槽2内の温度をより容易に発酵に適した温度に調整し、発酵効率を高めることができる。その他、本形態の発酵システム102は、実施形態1の発酵システム1と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
(実施形態3)
本形態においては、図3を参照しつつ、ガス加熱部61とガス混合部62との両方を備えたガス温度調節装置603の例を説明する。本形態の発酵システム103は、図3に示すように、発酵槽2と、被処理水供給部3と、微生物担体(図示略)と、ガス供給部5と、ガス温度調節装置603と、を有している。発酵システム103におけるガス温度調節装置603以外の部分の構成は、実施形態1の発酵システム1における対応する部分の構成と同様である。
【0042】
ガス温度調節装置603は、ガス加熱部61と、ガス加熱部61の下流に接続されたガス混合部62と、ガス加熱部61及びガス混合部62の上流に接続された分配部63と、を有している。分配部63は、ガス源7から供給される原料ガスG3をガス加熱部61とガス混合部62とに分配することができるように構成されている。
【0043】
このように構成されたガス温度調節装置603は、ガス源7から供給される原料ガスG3の一部をガス加熱部61において加熱するとともに、ガス加熱部61で加熱された原料ガスG3’と、分配部63を通過した未加熱の原料ガスG3とをガス混合部62において混合することができる。温度調整ガスGが取り得る温度範囲の上限は、ガス混合部62において混合される原料ガスのうち最も温度の高い原料ガスの温度となる。それ故、原料ガスG3の一部をガス加熱部61で加熱することにより、温度調整ガスGが取り得る温度範囲の上限をより高くすることができる。さらに、ガス温度調節装置603は、加熱後の原料ガスG3’と、未加熱の原料ガスG3とをガス混合部62において混合することにより、温度調整ガスGの温度をより精密に調節することができる。従って、本形態の発酵システム103は、発酵槽2内の温度をより広い温度範囲から調整することができるととともに、発酵槽2内の温度をより精密に調整することができる。その他、本形態の発酵システム103は、実施形態1の発酵システム1と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
(実施形態4)
本形態では、図4を参照しつつ、発酵槽2において発生したバイオガスBを温度調整ガスGとして再利用可能に構成された発酵システム104の例を説明する。本形態の発酵システム104は、図4に示すように、発酵槽2と、被処理水供給部3と、微生物担体(図示略)と、ガス供給部5と、ガス温度調節装置6と、を有している。発酵システム104におけるガス温度調節装置6以外の部分の構成は、実施形態1の発酵システム1における対応する部分の構成と同様である。
【0045】
また、発酵システム104は、発酵槽2で生じたバイオガスBを貯蔵可能に構成されたバイオガス貯蔵容器704と、バイオガス貯蔵容器704に貯蔵されたバイオガスBの少なくとも一部をガス温度調節装置6に供給するバイオガス循環路71と、をさらに有している。そして、ガス温度調節装置6は、バイオガスBを含む温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されている。
【0046】
本形態のガス温度調節装置6は、バイオガス循環路71から供給されるバイオガスBを加熱可能に構成されたガス加熱部61を有している。また、ガス温度調節装置6は、発酵槽2内に設けられた温度センサ26に接続されており、温度センサ26により測定される発酵槽2内の雰囲気温度に基づいてバイオガスBの温度を調節し、所望の温度を有する温度調整ガスGを作製できるように構成されている。
【0047】
バイオガス貯蔵容器704は、ガス温度調節装置6に加え、バイオガスBを消費して動作するバイオガス消費装置8に接続されていてもよい。例えば、本形態のバイオガス貯蔵容器704には、バイオガス消費装置8としてのガス発電機81が接続されている。この場合、ガス温度調節装置603のガス加熱部61は、バイオガス消費装置8から生じる廃熱Hを利用して温度調整ガスを加熱可能に構成されていることが好ましい。これにより、ガス加熱部61において温度調整ガスGを加熱する際の消費エネルギーを削減することが期待できる。
【0048】
発酵槽2において被処理水Wを嫌気的に発酵させてバイオガスBを発生させる場合、本形態の発酵システム1のように、バイオガスBの一部を温度調整ガスGとして循環させることにより、発酵システム1の外部からの酸素の混入を低減することができる。これにより、発酵システム1の系内における嫌気性雰囲気が維持されやすくなり、酸素の混入による発酵効率の低下をより容易に回避することができる。さらに、バイオガスBの一部を温度調整ガスGとして循環させることにより、温度調整ガスGの原料となる原料ガスを別途準備することなく発酵槽2内の発酵を促進させることができる。その他、本形態の発酵システム104は、実施形態1の発酵システム1と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
(実施形態5)
本形態では、図5を参照しつつ、ガス発電機から生じる廃熱Hおよび排ガスEを利用して温度調整ガスGの温度を調節可能に構成された発酵システム105の例を説明する。本形態の発酵システム105は、図5に示すように、発酵槽2と、被処理水供給部3と、微生物担体(図示略)と、ガス供給部5と、ガス温度調節装置603と、バイオガス貯蔵容器704と、を有している。発酵システム105におけるガス温度調節装置603及びバイオガス貯蔵容器704以外の部分の構成は、実施形態1の発酵システム1における対応する部分の構成と同様である。
【0050】
本形態の発酵システム105は、さらに、バイオガス貯蔵容器704に接続され、バイオガス貯蔵容器704から供給されるバイオガスBを燃焼させることにより発電可能に構成されたガス発電機81を有している。発酵システム105のガス温度調節装置603は、ガス発電機81を用いて温度調整ガスGの温度を調節可能に構成されている。また、ガス温度調節装置603は、発酵槽2内に設けられた温度センサ26に接続されており、温度センサ26により測定される発酵槽2内の雰囲気温度に基づいて温度調整ガスGの温度を調節できるように構成されている。
【0051】
本形態のガス温度調節装置603は、より具体的には、ガス加熱部61と、ガス加熱部61の下流に接続されたガス混合部62と、ガス加熱部61及びガス混合部62の上流に接続された分配部63と、を有している。分配部63は、バイオガス循環路71を介してバイオガス貯蔵容器704に接続されており、バイオガス貯蔵容器704から供給されるバイオガスBをガス加熱部61とガス混合部62とに分配することができるように構成されている。
【0052】
ガス温度調節装置603のガス加熱部61は、ガス発電機81から生じる廃熱Hを利用してバイオガスBを加熱可能に構成されている。これにより、ガス加熱部61においてバイオガスBを加熱する際の消費エネルギーを削減することが期待できる。なお、ガス加熱部61は、ガス発電機81において発電された電力や、発酵システム105の外部から供給される電力を利用してバイオガスBを加熱可能に構成されていてもよい。
【0053】
ガス温度調節装置603のガス混合部62は、バイオガス循環路71から供給されるバイオガスBと、バイオガスBとは異なる温度を有するガスとを混合することにより温度調整ガスGを作製可能に構成されている。より具体的には、ガス混合部62は、分配部63と、ガス加熱部61と、後述するガス発電機81の排ガス供給路82とにそれぞれ接続されている。そして、ガス混合部62は、バイオガス循環路71から分配部63を介して供給される未加熱のバイオガスB、ガス加熱部61によって加熱されたバイオガスB’及び排ガス供給路82から供給される排ガスEのうち2種以上のガスを混合することにより温度調整ガスGを作製可能に構成されている。
【0054】
本形態の発酵システム105におけるガス発電機81は、バイオガスBの燃焼によって生じる排ガスEをガス温度調節装置603のガス混合部62に導く排ガス供給路82を有している。また、ガス温度調節装置603のガス混合部62は、前述したように、バイオガス循環路71から供給されるバイオガスBと、排ガス供給路82から供給される排ガスEとを含む複数種類のガスを混合することにより温度調整ガスGを作製可能に構成されている。
【0055】
本形態の発酵システム105のように、発酵槽2において嫌気的発酵を行う場合には、発酵槽2内の雰囲気を嫌気性雰囲気にすることが望ましい。これに対し、ガス発電機81から生じる排ガスEは、ガス発電機81における燃焼によって酸素の量が少なくなっているため、温度調整ガスGに配合する場合においても発酵効率の低下を容易に回避することができる。さらに、排ガスEは、ガス発電機81内での燃焼によってある程度高い温度を有しているため、排ガスEを温度調整ガスGに配合することにより、エネルギーを消費せずに温度調整ガスGの温度を調節することができる。このように、ガス発電機81から生じる排ガスEは、発酵槽2において嫌気的発酵を行う場合に、温度調整ガスGに好適な性質を有している。そして、排ガスEを単にガス発電機81から排出する代わりに温度調整ガスGに配合することにより、排ガスEを有効利用することができる。
【0056】
また、本形態の発酵システム105におけるガス混合部62は、バイオガス循環路71から供給されるバイオガスB、ガス加熱部61において加熱されたバイオガスB及び排ガス供給路82から供給される排ガスEのうち2種以上のガスを混合することにより温度調整ガスGを作製可能に構成されている。そのため、発酵システム105は、温度調整ガスGの取り得る温度範囲をより広くするとともに、温度調整ガスGの温度をより精密に調整することができる。その他、本形態の発酵システム105は、実施形態1の発酵システム1と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
(実施形態6)
本形態においては、図6図9を参照しつつガス供給部5の他の態様の例を説明する。前述したように、ガス供給部5は、発酵槽2内に温度調整ガスGを供給することができれば、どのような態様であってもよい。例えば図6に示すように、ガス供給部5は、高さ方向に互いに間隔をあけて配置された複数の管52を有しており、ガス温度調節装置6から供給される温度調整ガスGを、これらの管52のそれぞれから発酵槽2内に放出することができるように構成されていてもよい。また、例えば図7に示すように、ガス供給部5は、水平方向に互いに間隔をあけて配置された複数の管52を有しており、ガス温度調節装置6から供給される温度調整ガスGを、これらの管52のそれぞれから発酵槽2内に放出することができるように構成されていてもよい。
【0058】
また、ガス供給部5は、図8及び図9に示すように、発酵槽2の内壁面27から突出し、発酵槽2の内壁面27を伝う被処理水Wを発酵槽2の内壁面27よりも内側に誘導可能に構成された案内部材53、54を兼ねていてもよい。案内部材53、54は、被処理水Wを発酵槽2の内壁面27よりも内側に誘導し、案内部材53、54の先端から微生物担体4に滴下することができる。これにより、被処理水Wをより効率よく発酵させることができる。
【0059】
案内部材53、54の数、配置及び形状は種々の態様を取り得る。例えば図8に示す案内部材53は、発酵槽2の内壁面27に沿った円環状の形状を有しており、発酵槽2の内壁面27から水平方向に突出するように配置されている。また、図8においては、3個の案内部材53が上下方向に互いに間隔をあけて配置されている。案内部材53の内部には、温度調整ガスGの流路531が設けられており、流路531は案内部材53の先端に開口している。ガス温度調節装置6から供給された温度調整ガスGは、案内部材53の流路531を通り、案内部材53の先端から発酵槽2内に供給される。
【0060】
また、例えば図9に示す案内部材54は、発酵槽2の内壁面27に沿った円環状の形状を有しており、発酵槽2の内壁面27から斜め下方に突出するように配置されている。また、図9においては、3個の案内部材54が上下方向に互いに間隔をあけて配置されている。案内部材54の内部には、温度調整ガスGの流路541が設けられており、流路541は案内部材54の先端に開口している。ガス温度調節装置6から供給された温度調整ガスGは、案内部材54の流路541を通り、案内部材54の先端から発酵槽2内に供給される。
【0061】
以上、実施形態1~6に基づいて本発明に係る発酵システムの態様を説明したが、本発明に係る発酵システムの具体的な態様は実施形態1~6の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0062】
例えば、実施形態1~5においては、ガス供給部5として貫通孔が設けられた管を用いる例を説明したが、このような構成を有するガス供給部5に替えて、例えば実施形態6に示すガス供給部を用いることも可能である。
【0063】
また、実施形態4~5においては、バイオガス貯蔵容器704に貯蔵されたバイオガスBをガス温度調節装置6、603に導入し、バイオガスBからなる温度調整ガスGを作製する発酵システム104、105の例を説明したが、ガス温度調節装置には、さらに、外部から原料ガスを供給するガス源が接続されていてもよい。この場合には、例えば、発酵システムの運転の初期段階等のように発酵槽内の雰囲気が安定しない場合、ガス源から供給される原料ガスを用いて温度調整ガスGを作製し、発酵槽の雰囲気がある程度安定した後にバイオガスBを用いて温度調整ガスGを作製することができる。そして、このように、発酵槽内の雰囲気の状態に応じて温度調整ガスGの原料となる原料ガスを使い分けることにより、発酵システムの運転の初期段階から容易に発酵効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1、102~105 発酵システム
2 発酵槽
3 被処理水供給部
4 微生物担体
5 ガス供給部
6、602~603 ガス温度調節装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9