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特開2024-146180検査システム、検査方法、および検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146180
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法、および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20241004BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20241004BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N21/90 A
G01N21/89 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058926
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 慶佑
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 義弘
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA12
2G051AB01
2G051AC11
2G051AC21
2G051EA11
2G051EA17
(57)【要約】
【課題】検査対象物の品質判定基準を自動的に調整する。
【解決手段】検査対象物を検出可能な検出部2と、演算装置51と、を備え、検出部2が少なくとも一つの撮影装置21、22を含み、演算装置51が、検出部2による検査対象物の検出結果に基づいて検査対象物の予備検査を行う予備検査機能と、予備検査の結果に基づいて検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定機能と、撮影装置21、22が撮影した検査対象物の画像と、品質判定基準と、に基づいて検査対象物の品質を判定する品質判定機能と、を実現可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を検出可能な検出部と、演算装置と、を備え、
前記検出部が少なくとも一つの撮影装置を含み、
前記演算装置が、
前記検出部による前記検査対象物の検出結果に基づいて前記検査対象物の予備検査を行う予備検査機能と、
前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定機能と、
前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、前記品質判定基準と、に基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定機能と、を実現可能である検査システム。
【請求項2】
前記予備検査機能において、前記検出部による前記検査対象物の検出結果に基づいて前記検査対象物の色味を判定する請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記品質判定基準が、二値化処理の閾値であり、
前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像を前記基準決定機能によって決定された前記閾値を用いて二値化処理した二値化画像を得るとともに、前記二値化画像における明部または暗部の面積に基づいて前記検査対象物の品質を判定する請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項4】
複数の基準画像を記憶する記憶装置をさらに備え、
前記品質判定基準が、前記基準決定機能によって前記複数の基準画像から選択された少なくとも一つの基準画像であり、
前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、選択された前記少なくとも一つの基準画像と、の比較に基づいて前記検査対象物の品質を判定する請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項5】
前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、選択された基準画像と、の比較に基づいて、前記検査対象物の品質を示す評点を算出する請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記検出部が少なくとも第一撮影装置および第二撮影装置を含み、
前記予備検査機能において使用される前記検出結果が、前記第一撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像であり、
前記品質判定機能において使用される前記画像が、前記第二撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像である請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項7】
検査対象物の予備検査を行う予備検査工程と、
前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定工程と、
前記検査対象物の画像と前記品質判定基準とに基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定工程と、を含む検査方法。
【請求項8】
コンピュータによって実行されたときに、
検査対象物の予備検査を行う予備検査機能と、
前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定機能と、
前記検査対象物の画像と前記品質判定基準とに基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定機能と、を実現させる検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システム、検査方法、および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料製品の包材などの検査において、検査対象物を撮影した画像に基づいて当該検査対象物の品質を検査する技術が汎用されている。国際公開第2020/121239号(特許文献1)には、偏光フィルタを有する光源および検出器を用いて取得したパリソンの画像に基づいて、パリソンの内部欠陥を検出する光学検査装置が開示されている。特開2018-136268号公報(特許文献2)には、プリフォームの側面に対して平行方向から光を照射する光源と、プリフォームを側方から撮像して撮影画像を得るカメラと、を用いて、プリフォームの側壁における透明性の異物による欠陥を検出する検査装置が開示されている。特開2017-190952号公報(特許文献3)には、プリフォームの軸線方向の一方の側から当該軸線方向に沿った平行光束の照明光で照明し、証明されたプリフォームを軸線方向の他方の側から撮影した画像を取得することで、プリフォームの底部における肉厚の欠陥濃霧を判別する検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/121239号(または特表2022-512434号公報)
【特許文献2】特開2018-136268号公報
【特許文献2】特開2017-190952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3の技術は、大半の検査対象物が所定の品質基準を満たすことを前提として、例外的に品質基準を満たさないものを不良品として検出することが前提とされていた。そのため、検査対象物の製品や製造ロットなどの違いによって検査対象物が満たすべき品質基準自体が異なる場合に、良品の一部が不良品と判定される場合があった。また、これを避けるためには、品質基準が異なる検査対象物を使用するたびに不良品として検出する条件を調整する必要があり、製品切替時の措置が煩雑になっていた。
【0005】
そこで、検査対象物の品質判定基準を自動的に調整できる検査システム、検査方法、および検査プログラムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査システムは、検査対象物を検出可能な検出部と、演算装置と、を備え、前記検出部が少なくとも一つの撮影装置を含み、前記演算装置が、前記検出部による前記検査対象物の検出結果に基づいて前記検査対象物の予備検査を行う予備検査機能と、前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定機能と、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、前記品質判定基準と、に基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定機能と、を実現可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る検査方法は、検査対象物の予備検査を行う予備検査工程と、前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定工程と、記検査対象物の画像と前記品質判定基準とに基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る検査プログラムは、コンピュータによって実行されたときに、検査対象物の予備検査を行う予備検査機能と、前記予備検査の結果に基づいて前記検査対象物の品質判定基準を決定する基準決定機能と、記検査対象物の画像と前記品質判定基準とに基づいて前記検査対象物の品質を判定する品質判定機能と、を実現させることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、検査対象物の品質判定基準を自動的に調整できる。そのため、良品を不良品と判定する誤判定を減らすことができ、ひいては省資源化に寄与する。また、品質判定基準を人為的に調整する作業を要さないため、生産効率が向上しうる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る検査システムは、一態様として、前記予備検査機能において、前記検出部による前記検査対象物の検出結果に基づいて前記検査対象物の色味を判定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、検査対象物の良品の色味にばらつきがある場合に、誤判定を減らしやすい。
【0013】
本発明に係る検査システムは、一態様として、前記品質判定基準が、二値化処理の閾値であり、前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像を前記基準決定機能によって決定された前記閾値を用いて二値化処理した二値化画像を得るとともに、前記二値化画像における明部または暗部の面積に基づいて前記検査対象物の品質を判定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、比較的平易な画像処理によって、検査対象物の品質を判定できる。
【0015】
本発明に係る検査システムは、一態様として、複数の基準画像を記憶する記憶装置をさらに備え、前記品質判定基準が、前記基準決定機能によって前記複数の基準画像から選択された少なくとも一つの基準画像であり、前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、選択された前記少なくとも一つの基準画像と、の比較に基づいて前記検査対象物の品質を判定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、検査システムによる検査の結果と人為的な検査の結果とが一致しやすい。また、品質判定基準の設定が比較的容易である。
【0017】
本発明に係る検査システムは、一態様として、前記品質判定機能において、前記撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像と、選択された基準画像と、の比較に基づいて、前記検査対象物の品質を示す評点を算出することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、検査対象物の品質を定量的に比較しやすい。
【0019】
本発明に係る検査システムは、一態様として、前記検出部が少なくとも第一撮影装置および第二撮影装置を含み、前記予備検査機能において使用される前記検出結果が、前記第一撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像であり、前記品質判定機能において使用される前記画像が、前記第二撮影装置が撮影した前記検査対象物の画像であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第一撮影装置では色味の判定に適した画像を得る観点で撮影条件を設定するとともに、第二撮影装置では品質の判定に適した画像を得る観点で撮影条件を設定できるので、それぞれの判定に適した画像を得ることができ、検査の精度を高めやすい。
【0021】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る検査システムの概略図である。
図2】実施形態に係る検査システムの構成図である。
図3】実施形態に係る検査システムの第一変形例の構成図である。
図4】実施形態に係る検査システムの第二変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る検査システム、検査方法、および検査プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る検査システムを、プリフォームP(検査対象物の一例である。)を検査する検査システム1、および検査システム1を用いる検査方法に適用した例について説明する。
【0024】
〔検査システムの構成〕
検査システム1は、検出部2と、コンベア3と、排斥機4と、コンピュータ5と、を備える(図1図2)。コンピュータ5には、本実施形態に係る検査プログラムがインストールされている。
【0025】
本実施形態において、検出部2は第一撮影装置21および第二撮影装置22からなる。第一撮影装置21および第二撮影装置22は、いずれも、機内を通過するプリフォームPを撮影して画像データを生成するデジタルカメラを有しており、生成された画像データはコンピュータ5に転送される。なお、第一撮影装置21および第二撮影装置22は、それぞれのデジタルカメラの視野の中に存在するプリフォームPを検出して画像データを生成する装置であるから、プリフォームPを検出することができる装置である。
【0026】
第一撮影装置21および第二撮影装置22は、いずれも、コンベア3によって搬送されるプリフォームPを撮影可能な姿勢で設置されており、コンベア3の搬送方向に沿って第一撮影装置21が第二撮影装置22より上流側に設置されている。第一撮影装置21および第二撮影装置22は、コンベア3の搬送速度に追随して搬送されるプリフォームPを一点ごとに撮影できる程度の連写性能を有することが好ましい。
【0027】
コンベア3は、複数のプリフォームPを一列に整列させた状態で連続的に搬送するものである。コンベア3はエンコーダ(不図示)を有し、コンベア3の移動量がコンピュータ5に入力されるようになっている。これによってコンピュータ5が、第一撮影装置21および第二撮影装置22の撮影画像と、プリフォームPの各個体とを関連づけることができる。
【0028】
排斥機4は、コンベア3に搬送されるプリフォームPのうちの特定の個体を選択的に排斥できる装置である。排斥機4はコンピュータ5によって制御され、コンピュータ5はコンベア3のエンコーダの信号を手がかりとして、排除すべきプリフォームP(たとえば、異物が付着しているプリフォームP1)を対象として排斥機4を動作させて、これを排斥する。
【0029】
なお、本実施形態に係るコンベア3および排斥機4として、プリフォームを検査する装置に一般的に使用されているものを使用できる。
【0030】
コンピュータ5は、ハードウェアとしては公知のコンピュータである。したがってコンピュータは、CPUなどの演算装置51、ハードディスクドライブなどの記憶装置52、などのコンピュータとして一般的な構成要素を備える。
【0031】
〔検査方法および検査プログラムの構成〕
次に、検査システム1を用いる検査の方法について、二つの実施形態を説明する。二つの実施形態の違いは、コンピュータ5で実行される検査プログラムの違いにあり、検査システム1のハードウェア構成は同一である。二つの実施形態の相違点を概説すると、第一の実施形態ではプリフォームPの撮影画像を二値化処理してプリフォームPの品質を判定し、第二の実施形態ではプリフォームPの撮影画像を基準画像と比較してプリフォームPの品質を判定する。
【0032】
(共通事項)
いずれの実施形態においても、本実施形態に係る検査方法は、予備検査工程、基準決定工程、および品質判定工程、を含む。これらの各工程を実施するための機能として、本実施形態に係る検査プログラムは、予備検査機能、基準決定機能、および品質判定機能をコンピュータ5(演算装置51)に実現させる。
【0033】
いずれの実施形態においても、コンベア3によって複数のプリフォームPが一列に整列した状態で搬送される。搬送中のプリフォームPが第一撮影装置21および第二撮影装置22のそれぞれを通過する際に、各プリフォームPの画像が撮影され、各画像がコンピュータ5に転送される。なお、区別のため、第一撮影装置21によって撮影された画像を第一画像と称し、第二撮影装置22によって撮影された画像を第二画像と称することとする。
【0034】
予備検査機能は、二つの実施形態に共通であり、第一撮影装置21が撮影したプリフォームPの画像(第一画像)に基づいてプリフォームPの予備検査を行う機能である。本実施形態に係る予備検査機能では、第一画像中におけるプリフォームPに相当する部分を特定するとともに、当該部分の色味をL表色系で特定する演算処理が行われる。
【0035】
基準決定機能および品質判定機能は二つの実施形態で異なるため、以下では別々に説明する。なお、いずれの実施形態においても、予備検査機能、基準決定機能、品質判定機能、の順で各機能が実現されるが、基準決定機能が品質判定機能に用いる品質判定基準を決定する機能であるため、品質判定機能について先に説明し、使用される品質判定基準を明らかにしてから、当該品質判定基準を決定する基準決定機能について説明する。
【0036】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る品質判定機能では、第二撮影装置22が撮影したプリフォームPの画像(第二画像)を二値化処理した二値化画像を得るとともに、当該二値化画像における暗部の面積に基づいてプリフォームPの品質を判定する。プリフォームPは透明な物品であるので、第二画像において比較的高い明度で現れる。一方、異物が付着しているプリフォームP1の場合、異物は光を透過しないかまたは光を乱反射するため、第二画像において異物の部分が比較的低い明度で現れる。そのため、異物がない場合の二値化画像に比べて、異物がある場合の二値化画像は、暗部の面積が大きくなる。これを利用して、暗部の面積が所定の基準値を超えるプリフォームP1について、異物が付着している可能性があるものと判定し、排斥対象とする。
【0037】
ここで行われる二値化処理は、公知の二値化処理である。すなわち、二値化処理に供される第二画像の全画素について、明度が閾値以上である部分を明部とし、明度が閾値より小さい部分を暗部とする。
【0038】
ここで、プリフォームPの色味によって品質判定の結果が異なりうることが問題になる。たとえば、プリフォームPが無色透明の場合に比べて、有色透明である場合の方が、第二画像におけるプリフォームPの明度が低くなる傾向がある。そのため、無色透明の場合と有色透明の場合とで同じ閾値を用いると、後者の方が暗部の面積が大きくなりやすい。これに起因して、プリフォームPが有色透明の場合に、異物が付着していないにも関わらず排斥対象とされることが生じうる。そこで本実施形態では、色味を参酌して閾値を調整することによって、この問題の解決を図る。
【0039】
本実施形態に係る基準決定機能では、予備検査機能によって判定された検査対象のプリフォームPの色味(予備検査の結果の一例である。)に基づいて、二値化処理の閾値を決定する。具体的な方法としては、予備検査機能によって特定されるL値、a値、およびb値の少なくとも一つの大小に基づいて所定の候補の中から閾値を選択する方法や、閾値をL値、a値、およびb値の少なくとも一つの関数として決定する方法、などが例示される。
【0040】
これによって、検査対象のプリフォームPの色味を考慮して決定された閾値を用いて二値化処理が行われるので、プリフォームPの色味に起因する誤判定を回避しやすい。
【0041】
以上の各機能のうち、品質判定機能はプリフォームPの全ての個体に対して実現される。これは、プリフォームPを全数検査して、異物が付着している可能性があるものと判定されるプリフォームPを排斥対象とする必要があるためである。
【0042】
これに対し、予備検査機能および基準決定機能については、プリフォームPの全ての個体に対して実現されることは排除されないものの、必ずしもこれを要さない。プリフォームPの色味は、プリフォームPの型番や納入単位(ロット)などの一定の取扱単位において一定の範囲内にあることが期待されるため、当該取扱単位内においては二値化の閾値を同一としても品質判定の精度が低下しないことが多いためである。予備検査機能および基準決定機能は、たとえば、プリフォームPの型番切替ごと、ロット切替ごと、所定の数量(たとえば100本)ごと、などのタイミングで実現されうる。
【0043】
なお、予備検査機能が実現される頻度と、基準決定機能が実現される頻度と、が一致しなくてもよい。たとえば、予備検査機能をプリフォームPのすべての個体に対して実現してプリフォームPの色味の変化傾向を把握するとともに、プリフォームPの色味が所定の範囲を逸脱したときに基準決定機能が実現されるようにしてもよい。
【0044】
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係る品質判定機能では、第二撮影装置22が撮影したプリフォームPの画像(第二画像)と基準画像との比較に基づいてプリフォームPの品質を判定する。基準画像は、良品のプリフォームP(すなわち、異物が付着していないプリフォームPである。)についてあらかじめ撮影されたものであり、記憶装置52がこれを記憶している。
【0045】
検査対象のプリフォームPに異物が付着していない場合、第二画像と基準画像とが高い一致度を示すことが期待される。一方、異物が付着しているプリフォームP1の場合、異物が存在する範囲において第二画像と基準画像とが明確に相違する。そこで、第二画像および基準画像のプリフォームPに相当する部分どうしの各画素を比較し、比較対象とされた画素の全部に亘るその差の合計を当該プリフォームPの評点として算出する。そして、評点が所定の基準値を超えるプリフォームP1について、異物が付着している可能性があるものと判定し、排斥対象とする。
【0046】
ここでも、プリフォームPの色味によって品質判定の結果が異なりうることが問題になる。たとえば、基準画像におけるプリフォームPが無色透明であり、検査対象のプリフォームPが有色透明である場合、両者の色味が異なるため、第二画像および基準画像のプリフォームPに相当する部分どうしの各画素を比較した際に、各画素において少しずつ差があることになる。そのため、差の合計が大きな値になりやすく、プリフォームPに異物が付着していないにも関わらず排斥対象とされることが生じうる。そこで本実施形態では、色味を参酌して基準画像を選択することによって、この問題の解決を図る。
【0047】
本実施形態では、記憶装置52が複数の基準画像を記憶している。この複数の基準画像は、互いに色味が異なる複数の良品のプリフォームPを、それぞれ個別に撮影したものである。また、それぞれの基準画像には、撮影対象の良品の色味を示す数値(たとえばL値、a値、およびb値の少なくとも一つである。)が関連づけられている。
【0048】
本実施形態に係る基準決定機能では、予備検査機能によって判定された検査対象のプリフォームPの色味(予備検査の結果の一例である。)に基づいて、記憶装置52が記憶している複数の基準画像の中から、検査対象のプリフォームPの検査に用いる品質判定基準として最も適している基準画像を選択する。たとえば、予備検査機能によって特定されるL値、a値、およびb値の少なくとも一つに最も近い値が関連づけられている基準画像が選択される。
【0049】
これによって、検査対象のプリフォームPの色味を考慮して決定された基準画像を用いて評点の算出が行われるので、プリフォームPの色味に起因する誤判定を回避しやすい。
【0050】
なお、予備検査機能および基準決定機能がプリフォームPの全ての個体に対して実現されることを必ずしも要しない点、および、予備検査機能と基準決定機能との頻度が一致しなくてもよい点、について、第一の実施形態と同様である。
【0051】
〔検査システムの効果〕
以上のように、本実施形態に係る検査システム1を用いてプリフォームPの検査を行うことで、プリフォームPが有色透明である場合に、プリフォームP自体の色味に起因して誤って排斥対象とされることが生じにくい。また、プリフォームPの色味を考慮して品質判定基準を調整する操作を人為的に行う必要がないため、円滑かつ省力化した検査を実現できる。
【0052】
〔変形例〕
続いて、上記の実施形態に係る検査システム1の変形例について、図面を参照して説明する。
【0053】
第一の変形例に係る検査システム1Aでは、検出部2が測色計23および撮影装置24からなる(図3)。測色計23は、プリフォームPの色味を測定して所定の表色系で表した数値(検出結果の一例である。)を出力する装置であり、公知のものを使用できる。測色計23の出力値は、コンピュータ5に入力される。本変形例では、予備検査機能において測色計23の出力値が使用され、品質判定機能において撮影装置24の撮影画像が使用される。このように、本発明に係る予備検査機能は、撮影画像に基づいて色味を判定する態様に限定されない。
【0054】
第二の変形例に係る検査システム1Bでは、検出部2が単一の撮影装置25からなる(図4)。本変形例では、予備検査機能と品質判定機能の双方において、撮影装置25が撮影した画像が使用される。本変形例によれば、上記の実施形態に比べて撮影装置の数を減らすことができるため、検査システムの設置スペースおよび設置コストの面で有利である。その反面、色味の判定に適した画像の態様と品質の判定に適した画像の態様とが一致するとは限らないため、検査の精度の点で不利な場合がある。
【0055】
いずれの変形例についても、それぞれ特筆した点の他については、上記の実施形態と同様である。なお、基準決定機能および品質判定機能の二つの実施形態のいずれについても、各変形例の適用が可能である。
【0056】
上記の実施形態および変形例から明らかなように、本発明において、検出部を構成する装置の種類および点数は、少なくとも一つの撮影装置を含む限り限定されない。特に、予備検査機能に供される検出結果は画像に限定されず、したがって当該検出結果を得るための装置は撮影装置に限定されない。
【0057】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る検査システム、検査方法、および検査プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0058】
上記の実施形態では、予備検査機能においてプリフォームPの色味を判定する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る予備検査機能は、検査対象物の色味を判定する態様に限定されない。その他の態様として、検査対象物の光沢を判定する態様(予備検査の結果は光沢である。)、検査対象物の赤外分光測定を行う態様(予備検査の結果は赤外分光スペクトルである。)、検査対象物の近赤外分光測定を行う態様(予備検査の結果は近赤外分光スペクトルである。)、などが例示されるが、これらに限定されない。なお、選択される予備検査機能の態様に対応した検出結果が得られる装置が、検出部に含まれうる。たとえば、予備検査機能が検査対象物の光沢を判定する態様で実現される場合は、検出部は光沢計を含みうる。
【0059】
上記の実施形態では、品質判定機能について、プリフォームPの画像の二値化処理を行う例、および、プリフォームPの画像を基準画像と比較する例、について説明した。しかし本発明において、品質判定機能において検査対象物の画像を使用する態様は限定されない。また、品質判定機能ついて選択される態様に応じて品質判定基準が決定づけられ、これに対応して基準決定機能の態様が決定される。
【0060】
上記の実施形態では、予備検査機能において、プリフォームPの色味をL表色系で特定する構成を例として説明した。しかし本発明に係る予備検査機能において色味を特定する場合、使用される表色系は任意であり、XYZ表色系、マンセル表色系、RGB表色系、Lh色空間、PCCS(日本色研配色体系)などの公知のものを使用できる。なお、選択される表色系に応じて、予備検査機能において用いられる検出結果を得るための装置の仕様が決定されうる。
【0061】
上記の実施形態では、検出部2とコンピュータ5(演算装置51)とが別体である構成を例として説明した。しかし本発明において、検出部と演算装置とが同一の構成要素に組み込まれていてもよい。たとえば、撮影装置と演算装置とが一体に組み込まれたデバイス(スマートフォン等が代表的である。)を用いる場合も、本発明を実施できる。
【0062】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、たとえばプリフォームやボトルなどの検査に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 :検査システム
2 :検出部
21 :第一撮影装置
22 :第二撮影装置
3 :コンベア
4 :排斥機
5 :コンピュータ
51 :演算装置
52 :記憶装置
P :プリフォーム
P1 :異物が付着しているプリフォーム
1A :検査システム(第一の変形例)
23 :測色計
24 :撮影装置
1B :検査システム(第二の変形例)
25 :撮影装置
図1
図2
図3
図4