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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146191
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】建設機械の油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241004BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/20 M
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058947
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮平
(72)【発明者】
【氏名】金濱 充彦
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】走行操作ペダルの操作時における走行ジャーキーの発生の誤検出を防止し,良好な走行操作性を得ることができる建設機械の油圧制御システムを提供する。
【解決手段】コントローラは,走行操作装置の操作信号に基づいて,走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた目標操作圧を算出し,圧力センサにより検出された走行電磁比例制御弁が生成する制御操作圧を入力し,目標操作圧と制御操作圧との圧力差を算出し,圧力差の変化に基づいて走行ジャーキーが発生したか否か判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される走行モータを含む複数のアクチュエータと,
前記油圧ポンプから吐出され,前記走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行切換制御弁を含む複数の切換制御弁と,
走行操作レバー及び前記走行操作レバーの基端に隣接して位置する走行操作ペダルを有し,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた操作信号を生成する走行操作装置を含む複数の操作装置と,
前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記操作量に応じた目標操作圧を算出し,前記目標操作圧に応じた指令電流を生成するとともに,走行ジャーキーが発生したと判定したとき,前記目標操作圧を補正して前記目標操作圧の変化速度を制限するコントローラと,
前記指令電流に応じた制御操作圧を生成し,前記走行切換制御弁を作動させる走行電磁比例制御弁と
を備えた建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記走行電磁比例制御弁が生成する制御操作圧を検出する圧力センサを更に備え,
前記コントローラは,
前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた目標操作圧を算出し,
前記圧力センサにより検出された前記制御操作圧を入力し,前記目標操作圧と前記制御操作圧との圧力差を算出し,前記圧力差の変化に基づいて前記走行ジャーキーが発生したか否か判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記圧力差が正の値であるときの第1閾値と,前記圧力差が負の値であるときの第2閾値を設定し,
前記圧力差が第1閾値より大きい第1走行状態と,前記圧力差が第2閾値より小さい第2走行状態の状態切り替わり回数が第1所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第1所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが発生したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が,第1所定時間内に,前記第1所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第1所定時間内に前記第1所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが発生したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記第1所定回数は1回~3回であることを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項5】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が前記第1所定回数に達し,前記走行ジャーキーが発生したと判定した後,更に,前記状態切り替わり回数が第2所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが継続していると判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が,第2所定時間内に,前記第2所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定時間内に前記第2所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが継続していると判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定時間内に前記第2所定回数に達しなかった場合に,前記走行ジャーキーが終了したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項7】
請求項5記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記第2所定回数は1回~2回であることを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項8】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記建設機械は,上部旋回体と,上部旋回体の前部に上下方向に回動可能に取り付けられ,作業を行うフロント作業機とを有し,
前記油圧制御システムは,前記フロント作業機の姿勢を検出する角度センサを備え,
前記コントローラは,
前記角度センサの検出信号に基づいて前記フロント作業機の姿勢情報を取得し,前記フロント作業機が下方に回動して前記フロント作業機の姿勢が水平に近づくにしたがって絶対値が大きくなるよう,前記圧力差の閾値を決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項9】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記走行操作装置の前記操作信号に基づいて前記操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,前記走行方向が前記後進方向であるときよりも前記前進方向であるときの方が絶対値が大きくなるよう,前記圧力差の閾値を決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項10】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記圧力差に基づいて前記走行操作ペダルの振動の大きさを推定し,前記走行操作ペダルの振動の大きさに応じて,前記目標操作圧の変化速度の制限度合いを決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,建設機械の油圧制御システムに係わり,特に走行時におけるジャーキー現象の発生を抑制することができる建設機械の油圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンや油圧ショベル等の建設機械においては,オペレータが走行操作装置を操作して行う走行中に,路面の影響で車体が振動し,走行ジャーキーが発生することがある。走行ジャーキーとは,路面の影響で車体が振動したときにオペレータの姿勢が不安定となり,オペレータの揺れが操作している操作レバー又は操作ペダルに伝わり,操作レバー又は操作ペダルが車体の振動と異なる位相で揺れ,車体の走行が意図せず加減速する現象である。
【0003】
従来,このような走行ジャーキーの発生を効果的に抑制する種々の方式が提案されており,その一例として特許文献1がある。
【0004】
特許文献1には,慣性センサを用いて上部旋回体或いは運転室内の座席の振動を検出し,上部旋回体或いは座席の前後方向における加速度の増減が所定回数以上繰り返された場合,或いは操作圧センサにより走行操作装置の走行指令値を検出し,走行指令値の増減が所定回数以上繰り返された場合に所定条件が満たされ,走行操作が不安定になっている(走行ジャーキーが発生している)と判定し,走行指令値を補正し,走行指令値の変動を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WО2021/025035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は,慣性センサを用いて上部旋回体或いは座席の振動や走行指令値を検出し,上部旋回体或いは座席の振動加速度の増減や走行指令値の増減が所定回数以上繰り返されたかどうかを判定することにより,走行ジャーキーの発生を検出している。しかし,上部旋回体或いは座席の振動加速度の増減や走行指令値の増減で走行ジャーキーの発生を判定した場合は,走行ジャーキーの発生を誤検知する可能性がある。
【0007】
より具体的には,建設機械の走行操作装置は,左右の走行レバーと,それぞれ左右の走行レバーの基端に位置し,走行レバーと連動して動作する左右の走行ペダルを有し,走行の操作形態として,オペレータが走行レバーを手操作する場合と,走行ペダルを足操作する場合がある。
【0008】
走行中に車体が振動して揺れた場合,車体の床部に取り付けられた走行レバー及び走行ペダルが揺れるとともに,オペレータの身体も揺れる。このとき,オペレータの上半身は車体の揺れに応じて大きく揺れやすいが,オペレータの下半身は運転席のシートで保持されているため上半身ほど大きく揺れない。このため,オペレータが走行レバーを手操作する場合は,その揺れが走行レバーに伝わって走行レバーも大きく揺れ,車体の揺れ方と走行レバーの揺れ方の相違に起因して走行ジャーキーが発生しやすい。一方,オペレータが走行ペダルを足操作する場合は,足操作による走行ペダルの揺れは小さく,車体の揺れ方と走行ペダルの揺れ方の相違は小さく,走行ジャーキーは発生しにくい。そのため,上部旋回体或いは座席の振動加速度の増減や走行指令値の増減を検出して走行ジャーキーの発生を検出するシステムでは,操作レバーを手操作した場合は,走行ジャーキーの発生を検出できても,走行ペダルを足操作した場合は,走行ジャーキーが発生していないにも係わらず,走行ジャーキーが発生したと誤検知する可能性がある。
【0009】
ここで,走行ジャーキーの発生を検出した場合は,ローパスフィルタなどの信号平滑処理手段を用いて,操作信号(指令値)の変動抑制制御を行うが,走行ジャーキーの発生を誤検知した場合に変動抑制制御を行うと,信号平滑処理手段による指令値の伝達遅れが発生し,走行操作の応答性が低下してしまう。そのため,オペレータが走行ペダルを操作した場合に,オペレータの操作の意図と異なる動きになって,走行操作性が低下する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は,走行操作ペダルの操作時における走行ジャーキーの発生の誤検出を防止し,良好な走行操作性を得ることができる建設機械の油圧制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために,本発明は,油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される走行モータを含む複数のアクチュエータと,前記油圧ポンプから吐出され,前記走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行切換制御弁を含む複数の切換制御弁と,走行操作レバー及び前記走行操作レバーの基端に隣接して位置する走行操作ペダルを有し,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた操作信号を生成する走行操作装置を含む複数の操作装置と,前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記操作量に応じた目標操作圧を算出し,前記目標操作圧に応じた指令電流を生成するとともに,走行ジャーキーが発生したと判定したとき,前記目標操作圧を補正して前記目標操作圧の変化速度を制限するコントローラと,前記指令電流に応じた制御操作圧を生成し,前記走行切換制御弁を作動させる走行電磁比例制御弁とを備えた建設機械の油圧制御システムにおいて,前記走行電磁比例制御弁が生成する制御操作圧を検出する圧力センサを更に備え,前記コントローラは,前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた目標操作圧を算出し,前記圧力センサにより検出された前記制御操作圧を入力し,前記目標操作圧と前記制御操作圧との圧力差を算出し,前記圧力差の変化に基づいて前記走行ジャーキーが発生したか否か判定するものとする。
【0012】
このように本発明においては,特許文献1のように車体の振動ではなく,走行操作ペダルの揺れ(振動)に直接係わるパラメータである目標操作圧と制御操作圧との圧力差の変化に基づいて走行ジャーキーを発生したかどうかを判定するため,走行操作ペダルの揺れを正確に推定し,走行操作ペダルの操作時における走行ジャーキー発生の誤検出を防止し,良好な走行操作性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,走行操作ペダルの操作時における走行ジャーキー発生の誤検出を防止し,良好な走行操作性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
図2】キャビン内の運転室を運転席側から見た図である。
図3】本発明の第1実施形態に係わる油圧制御システムの油圧駆動装置を示す図である。
図4】油圧制御システムのコントローラを示す図である。
図5】走行ジャーキー発生時における目標操作圧と制御操作圧の変化を示す図である。
図6】コントローラの処理内容を示す機能ブロック図である。
図7】操作信号から操作量を算出するための操作信号と操作量との関係を示す図である。
図8】操作量から目標操作圧を算出するための操作量と目標操作圧との関係を示す図である。
図9】コントローラの処理の全体の流れを示すフローチャートである。
図10A図9のフローチャートのステップS110,S130,S150,S170における電磁比例制御弁の指令電流生成処理の詳細を示すフローチャートである。
図10B図9のフローチャートのステップS110,S130,S150,S170における電磁比例制御弁の指令電流生成処理の詳細を示すフローチャートである。
図10C図9のフローチャートのステップS110,S130,S150,S170における電磁比例制御弁の指令電流生成処理の詳細を示すフローチャートである。
図11】本実施形態の走行制御により得られる基本的な効果を示す図であって,図の左側は,本実施形態の制御の適用前の目標操作圧及び制御操作圧の変化を示し,図の右側は本実施形態の制御の適用後の目標操作圧及び制御操作圧の変化を示す。
図12】本発明の第2の実施形態におけるコントローラの処理内容を示す機能ブロック図である。
図13図12に示すコントローラの状態判定部の詳細を示す機能ブロック図である。
図14図13に示す圧力差閾値決定部の処理の一例を示すフローチャートである。
図15】圧力差閾値決定部の処理で用いるブーム角度と第1閾値係数K1との関係を示す図である。
図16】圧力差閾値決定部の処理で用いる走行方向が前進方向である場合の第2閾値係数と後進方向である場合の第2閾値係数との関係を表形式で示す図である。
図17】操作ペダルの操作トルクに基づいて基本閾値を決めるときの操作ペダルの操作トルクと基本閾値との関係を示す図である。
図18】本発明の第3の実施形態におけるコントローラの状態判定部の詳細を示す機能ブロック図である。
図19】操作ペダルの振動の大きさの推定に用いる目標操作圧と制御操作圧の差分と操作ペダルの振動の大きさとの関係を示す図である。
図20】操作ペダルの振動の大きさとフィルタ時定数τとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
(油圧ショベル)
図1は,本発明に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
【0017】
図1において,油圧ショベルは,クローラ式の下部走行体1と,下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と,上部旋回体2の前部に上下方向に回動可能に取り付けられ,掘削などの作業を行うフロント作業機3とから概略構成されている。
【0018】
下部走行体1は左右の走行モータ1a,1bと左右のクローラ1c,1dとを備え,走行モータ1a,1bによって左右のクローラ1c,1dを駆動することにより走行を行う。
【0019】
上部旋回体2には,キャビン4,原動機5,油圧ポンプ6及び旋回モータ2aなどが備えられており,旋回モータ2aにより上部旋回体2が下部走行体1に対して右方向又は左方向に旋回される。
【0020】
フロント作業機3は,ブーム3a,アーム3b及びバケット3cから構成されており,ブーム3aはブームシリンダ3dにより上下動され,アーム3bはアームシリンダ3eによりダンプ方向(開く方向)又はクラウド方向(掻き込む方向)に操作され,バケット3cはバケットシリンダ3fによりダンプ方向又はクラウド方向に操作される。
【0021】
(運転室)
図2は,キャビン4内の運転室を運転席側から見た図である。
【0022】
図2において,キャビン4内には運転室4aが形成され,運転室4a内に,オペレータが着座する運転席51と,フロント作業機3及び上部旋回体2の動作を指示する左右の操作レバー52a,53aを有し,操作レバー52a,53aの操作量に応じた操作信号を生成する操作装置52,53と,下部走行体1の左右のクローラ1c,1dの動作を指示する左右の操作レバー54a,55a及び左右の操作ペダル54b,55bを有し,操作レバー54a,55a及び操作ペダル54b,55bの操作量に応じた操作信号を生成するレバー/ペダル方式の操作装置(以下,走行操作装置と言うことがある)54,55とが配置されている。左右の操作ペダル(以下,走行操作ペダル或いは走行ペダルと言うことがある)54b,55bはそれぞれ左右の操作レバー(以下,走行操作レバー或いは走行レバーと言うことがある)54a,55aの基端部に隣接して位置している。
【0023】
また,運転室4aの乗降口側(運転席17に着座するオペレータからみて左側)には,ロック解除位置(オペレータの乗降を妨げる下降位置)とロック位置(オペレータの乗降を許容する上昇位置)に回動操作されるゲートロックレバー8が設けられている。ゲートロックレバー8の基端部分には,ゲートロックレバー8がロック解除位置(下降位置)にあるときに閉じ状態,ロック位置(上昇位置)にあるときに開き状態となるゲートロックスイッチ8aが設けられている。ゲートロックスイッチ8aは油圧駆動装置のゲートロック弁48(図2参照)に電気的に接続されており,ゲートロックレバー8がロック位置にあるとき,ゲートロック弁48はOFF位置にあり,操作レバー52a,53aと,走行操作レバー54a,55a及び走行操作ペダル54b,55bの操作が無効となる。ゲートロックレバー8がロック解除位置に切り換わると,ゲートロック弁48はON位置に切り換わり,操作レバー52a,53aと,走行操作レバー54a,55a及び走行操作ペダル54b,55bの操作が可能となる。
【0024】
また,運転席51から見て右側に,制御に係わる閾値の設定やその他の車体設定に用いる入力部58aを備えた,視界補助に用いられるモニタ58が設置されている。
【0025】
(操作装置)
オペレータは運転席51に着座し,左手で操作装置52の操作レバー52aを,右手で操作装置53の操作レバー53aを操作する。操作装置52,53は,それぞれ,中立位置から左右,上下の十字方向を基準として任意の方向に操作可能であり,1つの操作レバー52a,53aで2つのアクチュエータを動作させることができる。操作レバー52aの右方向R及び左方向Lの操作はアームシリンダ3eのアームクラウドとアームダンプの動作を指示し,操作レバー52aの前方向F及び後方向Rの操作は旋回モータ2aの右旋回と左旋回の動作を指示する。操作レバー53aの前方向F及び後方向Rの操作はブームシリンダ3dのブーム下げとブーム上げの動作を指示し,操作レバー53aの右方向R及び左方向Lの操作はバケットシリンダ3fのバケットダンプとバケットクラウドの動作を指示する。
【0026】
また,オペレータは,左手で走行操作装置54の操作レバー54aを,右手で走行操作装置55の操作レバー55aを操作するとともに,左足で走行操作装置54の操作ペダル54bを,右足で走行操作装置55の操作ペダル55bを操作する。走行操作レバー54a,55aはそれぞれ中立位置から前方向F及び後方向Rに操作可能であり,走行操作レバー54aの前方向F及び後方向Rの操作は左走行モータ1aの前進方向及び後進方向の動作を指示し,走行操作レバー55aの前方向F及び後方向Rの操作は右走行モータ1bの前進方向の及び後進方向の動作を指示する。
【0027】
走行操作ペダル54b,55bはそれぞれ中立位置から前後方向に傾動可能であり,走行操作ペダル54bの前方向F及び後方向Rの踏み込み操作は,走行操作レバー54aの操作と同様に,左走行モータ1aの前進方向及び後進方向の動作を指示し,走行操作ペダル55bの前方向F及び後方向Rの踏み込み操作は,走行操作レバー55aの操作と同様に,右走行モータ1bの前進方向の及び後進方向の動作を指示する。
【0028】
なお,本明細書において前方向,後方向,右方向,左方向とは車体である上部旋回体102の前方向,後方向,右方向,左方向を意味する。
【0029】
また,本実施形態において,操作装置52,53及び操作装置54,55は電気式の操作装置であり,それぞれ,操作信号として電気信号を発生する信号生成部52c,53c,54c,55c(図2参照)を備えている。また,走行操作装置54の操作レバー54aと操作ペダル54bはそれぞれ同じ信号生成部54cを作動させて電気信号を生成し,走行操作装置55の操作レバー55aと操作ペダル55bも,同様に,それぞれ同じ信号生成部55cを作動させて電気信号を生成する。
【0030】
操作装置52,53は操作信号として操作パイロット圧を生成する油圧パイロット式であってもよい。
【0031】
(油圧制御システム)
図3は,本発明の第1実施形態に係わる油圧制御システムの油圧駆動装置を示す図であり,図4は油圧制御システムのコントローラを示す図である。図4に,上述した操作装置52,53及び操作装置54,55の構成が模式図で合わせて示されている。
【0032】
図3において,油圧駆動装置は,原動機5(例えばディーゼルエンジン)と,この原動機5によって駆動される油圧ポンプ6と,油圧ポンプ6から吐出される圧油により駆動される上述した左右の走行モータ1a,1bを含む複数のアクチュエータ1a,1b,2a,3d,3e,3fと,油圧ポンプ6から吐出され,走行モータ1a,1bに供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する走行切換制御弁13,14を含む複数の切換制御弁13,14,15,16,17,18を内蔵したコントロールバルブ19と,パイロットリリーフ弁49により一定圧に保持された圧油を吐出し,パイロット一次圧を生成するパイロットポンプ47と,パイロットポンプ47により生成されたパイロット一次圧が導かれ,パイロット二次圧として指令電流に応じた制御圧力(以下,制御操作圧と言うことがある)を生成し,走行切換制御弁13,14を作動させる走行電磁比例制御弁20,21,22,23を含む複数の電磁比例制御弁20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31と,電磁比例制御弁20~31にパイロットポンプ47により生成されたパイロット一次圧を導くかどうかを選択する前述したゲートロック弁48とを備えている。
【0033】
電磁比例制御弁20~31により生成された制御操作圧は切換制御弁13~18の対応する1対の受圧部に導かれ,切換制御弁13~18はその制御操作圧によって作動し,制御操作圧に応じた流量の圧油が複数のアクチュエータ1a~3fの対応するものに供給される。
【0034】
電磁比例制御弁20~31に制御操作圧を生成させる指令電流は,操作装置52,53及び操作装置54,55の操作信号(電気信号)に基づいて,図4に示すコントローラ34によって生成され,制御操作圧によって切換制御弁13~18を切り換えることにより,操作信号に応じて複数のアクチュエータ1a~3fを駆動することができる。
【0035】
操作装置52,53が操作信号として操作パイロット圧を生成する油圧パイロット式である場合は,操作装置52,53に係わる電磁比例制御弁24~31を廃止し,操作装置52,53が生成した操作パイロット圧を,直接,切換制御弁16~18の受圧部に導き,切換制御弁16~18を切り換えればよい。
【0036】
また,本実施形態に係わる油圧制御システムは,図4に示されるコントローラ34と,走行電磁比例制御弁20~23が生成する制御操作圧を検出する圧力センサ35,36,37,38とを有し,コントローラ34は,操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作信号(電気信号)に基づいて操作量に応じた目標操作圧を算出し,目標操作圧に応じた指令電流を生成するとともに,走行ジャーキーが発生したと判定した場合は,走行操作装置54,55の目標操作圧を補正して目標操作圧の変化速度を制限する。
【0037】
図4において,操作装置52,53及び操作装置54,55は,前述したように,操作信号として電気信号を発生する信号生成部52c,53c,54c,55c(図2参照)を備えている。また,走行操作装置54,55の操作ペダル54b,55bは,それぞれ,操作レバー54a,55aの基端に位置し,操作レバー54a,55
と連動して動作する。
【0038】
(走行ジャーキーの検出原理)
本発明による走行ジャーキーの検出原理を説明する。
【0039】
走行操作ペダル54b,55bの操作による不整地の走行中に減速をしたときに走行ジャーキーが発生した場合を想定する。走行ジャーキーとは,オペレータが走行操作装置54,55を操作して行う走行中に,路面の影響で車体(上部旋回体2)が振動し,車体の振動がオペレータに伝わることでオペレータの姿勢が不安定となり,オペレータの揺れが操作している操作レバー54a,55a又は操作ペダル54b,55bに伝わり,操作レバー54a,55a又は操作ペダル54b,55bが車体の振動と異なる位相で揺れ,車体の走行が意図せず加減速する現象である。
【0040】
図5は,そのような走行ジャーキー発生時における目標操作圧(走行操作ペダル54b,55bの操作による操作信号に基づいてコントローラ34が算出した圧力)と制御操作圧(指令電流により電磁比例制御弁20~23が動作して生成された圧力)の変化を示す図である。図中,点線が目標操作圧を示し,実線が制御操作圧を示している。
【0041】
コントローラ34が走行レバー54a,55a或いは走行ペダル54b,55bの操作による操作信号に基づいて目標操作圧を算出してから,指令電流により電磁比例制御弁20~23が動作して制御操作圧が生成されるまで,電磁比例制御弁20~23の動作遅れなどに起因して発生する追従性の遅れ時間があり,図5に点線と実線で示すように目標操作圧と制御操作圧とに圧力差が発生する。この圧力差を目標操作圧-制御操作圧の式で算出される値として定義した場合,走行操作ペダル54b,44bの操作量が減少し,目標操作圧が低下する過程において,圧力差は負の値となり,目標操作圧と制御操作圧の変化(振動)の位相のずれに起因して,時間の経過とともに圧力差が減少する(圧力差の絶対値が増大する)。その後,走行ジャーキーの振動により操作量が減少から増加に転じて,目標操作圧が増大すると,圧力差は正の値となり,時間の経過とともに目標操作圧の増加速度が大きくなるに従圧力差は増大する。以後,走行ジャーキーが継続する間,操作量の増減が繰り返され,圧力差の増減も繰り返される。
【0042】
図5において,時刻t1は走行の減速時に目標操作圧が減少する過程で,圧力差が予め設定した閾値「-X」よりも小さくなった時点(圧力差の絶対値が閾値「X」より大きくなった時点)であり,時刻t2は,その後,操作量が減少から増加に転じて,目標操作圧が増大する過程で,圧力差が予め設定した閾値「X」よりも大きくなった時点である。言い換えると,時刻t2は,圧力差が閾値「X」より大きい走行状態と,圧力差が閾値「-X」より小さい走行状態の切り替わりが発生した時点である。時刻t3,t4についても同様である。
【0043】
本明細書において,閾値「X」を第1閾値と言い,閾値「-X」を第2閾値と言うことがある。また,圧力差が第1閾値「X」より大きくなった走行状態を「状態1」或いは「第1走行状態」と言い,圧力差が第2閾値「-X」より小さくなった走行状態を「状態2」或いは「第2走行状態」と言うことがある。
【0044】
本発明は,図5に示すような走行ジャーキー発生時の圧力差の変化に着目し,走行ジャーキーが発生したか否か判定するものである。
【0045】
ここで,図5は,走行ジャーキーが走行ペダル54b,55bを操作した場合のものであると説明したが,走行レバー54a,55aを操作した場合にも圧力差は同様に発生し,走行ジャーキーの発生を検出することができる。ただし,車体の振動が同じであっても,オペレータに足操作される走行ペダル54b,55bの揺れはオペレータに手操作される走行レバー54a,55aの揺れより小さい。このため,従来のように車体の振動を検出して走行ジャーキーの発生を検出した場合は,走行ペダルを足操作して走行する場合に,走行ジャーキーが発生していないにも係わらず走行ジャーキーが発生したと誤検出する可能性がある。
【0046】
これに対し,本発明では,車体の振動ではなく,走行ペダル54b,55bの揺れ(振動)に直接係わる目標操作圧と制御操作圧との圧力差の変化に基づいて走行ジャーキーを発生したか否か判定する。より具体的には,本発明は,圧力差が正の値であるときの第1閾値と,圧力差が負の値であるときの第2閾値を設定し,圧力差が第1閾値より大きい第1走行状態と,圧力差が第2閾値より小さい第2走行状態の状態切り替わり回数が所定回数に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが発生したと判定する。このため,走行ペダル54b,55bの揺れを正確に推定することができ,走行ペダル54b,55bの操作時における走行ジャーキー発生の誤検出を防止し,良好な操作性を得ることができる。
【0047】
(コントローラ)
図6は,コントローラ34の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0048】
コントローラ34は,目標操作圧演算部34aと,状態判定部34bと,目標圧補正部34cと,電磁弁制御部34dを有している。
【0049】
コントローラ34は,目標操作圧演算部34aにおいて,操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作信号に基づいて,操作量に応じた目標操作圧を算出する。
【0050】
図7は,操作信号から操作量を算出するための操作信号と操作量との関係を示す図であり,図8は,操作量から目標操作圧を算出するための操作量と目標操作圧との関係を示す図である。
【0051】
コントローラ34は,操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作レバー及び操作ペダルのそれぞれに対し,図7に示すような操作信号と操作量の関係と,図8に示すような操作量と目標操作圧の関係を記憶しておき,目標操作圧演算部34aにおいて,操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作レバー及び操作ペダルの操作信号を図7に示した操作信号と操作量の関係に参照させて対応する操作量を算出し,算出した操作量を図8に示した操作量と目標操作圧の関係に参照させて対応する目標操作圧を算出する。
【0052】
次いで,コントローラ34は,状態判定部34bにおいて,以下の処理を行う。
【0053】
1.コントローラ34は,圧力センサ35~38により検出された制御操作圧を入力し,目標操作圧演算部34aにおいて算出した目標操作圧と制御操作圧との圧力差を算出し,圧力差の変化に基づいて走行ジャーキーを発生したか否か判定する。
【0054】
2.より詳しくは,コントローラ34は,閾値として,圧力差が正の値であるときの第1閾値「X」と,前記圧力差が負の値であるときの第2閾値「-X」を設定し,圧力差が第1閾値「X」より大きい第1走行状態と,圧力差が第2閾値「-X」より小さい第2走行状態の状態切り替わり回数が第1所定回数に達したか否か判定し,第1走行状態と第2走行状態の状態切り替わり回数が第1所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが発生したと判定する。
【0055】
3.その場合,コントローラ34は,状態切り替わり回数が,第1所定時間内に,第1所定回数に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第1所定時間内に第1所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが発生したと判定する。
【0056】
4.第1所定回数は,好ましくは,1回~3回である。
【0057】
5.コントローラ34は,状態切り替わり回数が第1所定回数に達し,走行ジャーキーが発生したと判定した後,更に,状態切り替わり回数が第2所定回数に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第2所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが継続していると判定する。
【0058】
6.その場合,コントローラ34は,状態切り替わり回数が,第2所定時間内に,第2所定回数に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第2所定時間内に第2所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが継続していると判定し,状態切り替わり回数が第2所定時間内に第2所定回数に達しなかった場合に,走行ジャーキーが終了したと判定する。
【0059】
7.第2所定回数は,好ましくは,1回~2回である。
【0060】
そして,コントローラ34は,状態判定部34bにおいて走行ジャーキーが発生したと判定したとき,目標圧補正部34cにおいて,目標操作圧を補正して目標操作圧の変化速度が制限し,電磁弁制御部34dにおいて,補正された目標操作圧に応じた指令電流を生成し,電磁比例制御弁20~23に出力する。
【0061】
一方,コントローラ34は,目標操作圧演算部34aにおいて,操作装置52,53の操作レバーの操作信号に対して,走行操作装置54,55の操作レバー及び操作ペダルの操作信号の場合と同様,図7に示した操作信号と操作量の関係と図8に示した操作量と目標操作圧の関係を用いて走行以外の目標操作圧を算出し,その目標操作圧を,直接,電磁弁制御部34dに送り,目標操作圧に応じた指令電流を生成し,電磁比例制御弁24~31に出力する。
【0062】
(コントローラの制御フロー)
次に,図9図10A図10B及び図10Cを用いて,上記コントローラ34の処理のうち,走行操作装置54,55の操作レバー及び操作ペダルの操作信号に係わる部分について,フローチャートを用いて詳しく説明する。
【0063】
図9は,コントローラ34の処理の全体の流れを示すフローチャートである。図10A図10B及び図10Cは,図9のフローチャートのステップS110,S130,S150,S170における電磁比例制御弁20~23の指令電流生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【0064】
図9において,コントローラ34は,左の走行レバー54a又は走行ペダル54b(左走行レバー/ペダル)が前方向に操作され,信号生成部54cによって生成された左前進方向の操作信号を入力したか否か判定し(ステップS100),判定がYESであれば,左前進方向用の電磁比例制御弁20の指令電流を生成し出力する処理を行う(ステップS110)。ステップS100の判定がNOである場合,コントローラ34は,右の走行レバー55a又は走行ペダル55b(右走行レバー/ペダル)が前方向に操作され,信号生成部55cによって生成された右前進方向の操作信号を入力したか否か判定し(ステップS120),判定がYESであれば,右前進方向用の電磁比例制御弁22の指令電流を生成し出力する処理を行う(ステップS130)。
【0065】
ステップS120の判定がNOである場合,コントローラ34は,左の走行レバー54a又は走行ペダル54b(左走行レバー/ペダル)が後方向に操作され,信号生成部54cによって生成された左後進方向の操作信号を入力したか否か判定し(ステップS140),判定がYESであれば,左後進方向用の電磁比例制御弁21の指令電流を生成し出力する処理を行う(ステップS150)。ステップS140の判定がNOである場合,コントローラ34は,右の走行レバー55a又は走行ペダル55b(右走行レバー/ペダル)が後方向に操作され,信号生成部55cによって生成された右後進方向の操作信号を入力したか否か判定し(ステップS160),判定がYESであれば,右後進方向用の電磁比例制御弁23の指令電流を生成し出力する処理を行う(ステップS170)。
【0066】
このようにコントローラ34は,走行レバー54a,55a及び走行ペダル54b,55bの操作により走行用の電磁比例制御弁20~23を作動させ,制御操作圧を発生させる。
【0067】
また,コントローラ34は,走行左側前進操作,走行右側前進操作,走行左側後進操作,走行右側後進操作に対して,それぞれ独立して走行制御を行う。
【0068】
次に,図10A図10B及び図10Cに示すフローチャートを用いて,図9のフローチャートのステップS110,S130,S150,S170における指令電流生成処理の詳細を説明する。
【0069】
なお,ステップS110,S130,S150,S170の処理は,走行レバー/ペダルが左か右かの点と,操作方向が前方向か後方向かの点を除いて同じなので,走行レバー/ペダルが左の走行レバー54a及び走行ペダル54bであり,操作方向が前方向ある場合のステップS110の処理で代表して説明する。
【0070】
図10Aにおいて,コントローラ34は,まず,走行レバー54a又は走行ペダル54b(左走行レバー/ペダル)の操作信号を入力し,操作量を算出する(ステップS1)。この操作量の算出は,前述したように,図7に示した操作信号と操作量の関係を用いて行う。次いで,コントローラ34は,圧力センサ35の検出信号を入力し,左前進方向用の電磁比例制御弁20により生成された制御操作圧を取得する(ステップS2)。
【0071】
コントローラ34は,ステップS1で算出した走行レバー/ペダルの操作量を応じた目標操作圧を算出する(ステップS3)。この目標操作圧の算出は,前述したように,図8に示した操作量と目標操作圧の関係を用いて行う。次いで,コントローラ34は,ステップS3で算出した目標操作圧とステップS2で取得した制御操作圧との差分(圧力差)Dを以下の式により計算する(ステップS4)。
【0072】
D=目標操作圧-制御操作圧
その後,コントローラ34は,目標操作圧と制御操作圧の差分Dが走行操作圧差分の第1閾値「X」(正の値)より大きいか否か判定し(ステップS5),判定がYESの場合,走行状態を「状態1」として記憶する(ステップS6)。「状態1」は,図5の時刻t2における状態1に相当する。
【0073】
次いで,コントローラ34は,目標操作圧と制御操作圧の差分Dが走行操作圧差分の第2閾値「-X」(負の値)より小さいか否か判定し(ステップS7),判定がYESの場合,走行状態を「状態2」として記憶する(ステップS8)。「状態2」は,図5の時刻t1における状態2に相当する。ステップS5の判定がNOの場合も,ステップS7に進んで同様の判定を行い,判定がYESの場合,ステップS8に進み,走行状態を「状態2」として記憶する(ステップS8)。
【0074】
ここで,圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」は,走行ペダル54b,55bを足操作した走行時における車体(上部旋回体2)の振動に対する走行ペダル54b,55bの振動への影響の大きさに基づいて決定され,走行ペダル54b,55bの操作トルク,制御操作圧の目標操作圧に対する追従性に基づいて決定される。
【0075】
パイロットポンプ47により生成されたパイロット一次圧は例えば4MPaであるとき,第1閾値「X」は例えば0.1MPaであり,第2閾値「-X」はは例えば-0.1MPaである。
【0076】
また,後述する第2実施形態で説明するように,第1閾値「X」及び第2閾値「-X」をフロント作業機3の姿勢や車体の走行方向(前進方向か後進方向か)に応じて変更することで,走行ジャーキーの誤検知を減らすことができる。
【0077】
次いで,コントローラ34は,前回記憶した走行状態が「状態1」で,今回記憶した走行状態が「状態2」であるか(走行状態が状態1から状態2に切り替わったか),又は,前回記憶した走行状態が「状態2」で,今回記憶した走行状態が「状態1」であるかどうか(走行状態が状態2から状態1に切り替わったか)を判定し(ステップS9),判定がYESの場合,走行ジャーキー判定のカウント値JCに1を追加する(ステップS10)。走行ジャーキー判定のカウント値JCの初期設定は0である。
【0078】
ステップS9のYESの判定は,図5において,時刻t1で「状態2」が発生し,時刻t2で「状態1」に切り替わった場合に相当し,「状態1」(第1走行状態)と「状態2」(第2走行状態)の切り替わりが1回発生した場合に相当する。
【0079】
ステップS10の後,図10BのステップS11に進む。
【0080】
ステップS7の判定がNOの場合,ステップS9に進み,同様の判定を行い,判定がYESの場合,ステップS10の処理をした後,図10BのステップS11に進む。
【0081】
図10BのステップS11において,コントローラ34は,前回の走行ジャーキー判定が初期設定の無効かどうか判定する。ステップS11の判定がYESである場合,更に走行ジャーキー判定のカウント値JCが0よりも大きい(JC>0)か否かを判定し(ステップS12),判定がYESである場合は,走行判定時間のカウント値TCに1を追加する(ステップS13)。走行判定時間のカウント値TCの初期設定は0である。また,フローチャートの制御サイクルを0.01秒とした場合,走行判定時間のカウント値TCの「1」は0.01秒に相当する。ステップS12の判定がNOである場合は,ステップS18に進む。
【0082】
ステップS11において,判定がNOである場合の処理は後述する。
【0083】
ステップS13の処理の後,コントローラ34は,走行判定時間のカウント値TCが走行判定時間の閾値Y1(第1所定時間)より小さい(TC<Y1)か否かを判定し(ステップS14),判定がYESである場合は,更に,走行ジャーキー判定のカウント値JCが走行ジャーキー判定の閾値Z1(第1所定回数)以上である(JC≧Z1)か否かを判定する(ステップS15)。
【0084】
本実施形態において,閾値Y1(第1所定時間)の時間換算値は例えば3秒であり,フローチャートの制御サイクルが0.01秒である場合,閾値Y1は例えば「300」である。閾値Z1(第1所定回数)は例えば「1回」である。
【0085】
ステップS14の走行判定時間の閾値Y1(第1所定時間)とステップS15の走行ジャーキー判定の閾値Z1(第1所定回数)は,走行ジャーキー判定のカウント値JCの発生頻度,すなわち,所定時間内でのステップS9の判定YESの発生回数(本実施形態では状態1と状態2の状態切り替わり頻度)が,走行ジャーキーが発生したとみなせる回数に達したか否か判定するための閾値である。閾値Y1と閾値Z1を上記のように設定し,ステップS14とステップS15の判定が共にYESである場合,コントローラ34は,3秒(制御サイクル300回)以内にステップS9のYESの判定が1回出現した(図5の動作状態において,時刻t1の状態2と時刻t2の状態1の切り替わりが1回発生した)と判定し,走行ジャーキーが発生したと判定する。
【0086】
ここで,走行ジャーキー発生時に走行ペダル54b,55bが振動する周期は油圧ショベルの仕様によって異なり,ステップS14の走行判定時間の閾値Y1は走行ペダル54b,55bの振動周期に基づいて設定される。
【0087】
また,ステップS15の走行ジャーキー判定の閾値Z1(第1所定回数)は,走行振動時ではなく,オペレータの意図した走行時に走行状態が「状態1」と「状態2」に切り替わる頻度をもとに決定される。走行ジャーキー判定の閾値Z1の回数を小さめの値に設定した場合は,走行ジャーキーが始まった際に走行制御が働くまでの時間が短くなるため,走行ジャーキーの影響を速やかに解消することができるが,その分,走行ジャーキーの誤検出の可能性が大きくなる。走行ジャーキー判定の閾値Z1を大きめの値に設定した場合は,走行ジャーキーの誤検知の可能性が小さくなるが,その分,走行ジャーキーが始まった際に走行制御が働くまでの時間が長くなるため,走行ジャーキーの影響を受けやすくなる。走行ジャーキー判定の閾値Z1は,走行ジャーキーの影響解消の早さと走行ジャーキーの誤検出防止の兼ね合いを見て決定される。
【0088】
本実施形態では,閾値Z1(第1所定回数)を1回に設定したが,誤検出の可能性を小さくするため2回又は3回に設定してもよい。この閾値の変更は,例えば図2に示すモニタ58の入力部58aを操作して所望の閾値を選択し,選択した閾値情報をコントローラ34に送信すること行うことができる。
【0089】
なお,ステップS15の走行ジャーキー判定の閾値Z1を「2回」或いはそれ以上に設定した場合,図10BにおけるステップS9の判定YESの発生回数が1回であった場合,ステップS15の判定はNOとなり,ステップS18に進む。
【0090】
次いで,ステップS15の判定がYESである場合,コントローラ34は,走行ジャーキー判定を有効にし,走行ジャーキーの継続を判定するため,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCを0にリセットし(ステップS16),ステップS18に進む。
【0091】
一方,ステップS14の判定がNOである場合は,走行判定時間の閾値Y1内に走行ジャーキーが発生しなかったと判定した場合であり,コントローラ34は,走行ジャーキーの発生を続けて判定するため,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCを0にリセットし(ステップS17),ステップS18に進む。
【0092】
ステップS18において,コントローラ34は,走行ジャーキー判定が有効かどうか判定し,その判定がYESの場合,目標操作圧に1次ローパスフィルタを作用させ,目標操作圧を補正する(ステップS19)。
【0093】
ここで,目標操作圧に作用させる1次ローパスフィルタのフィルタ時定数τは,実際の車体(上部旋回体2)の走行レバー/ペダル振動に対する走行加減速への影響度合いをもとに決定される。また,後述する第3実施形態で説明するように,目標操作圧と制御操作圧の差分Dの大きさに基づいて,フィルタ時定数τを変更してもよく,これによりペダルの振動幅に応じて,フィルタの作用を補正することができる。
【0094】
次に,コントローラ34は,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23を制御する(ステップS20)。
【0095】
ステップS18の判定がNOである場合は,コントローラ34は直接ステップS20に進み,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23を制御する。
【0096】
次に,ステップS11の判定がNOである場合について説明する。
【0097】
ステップS11における判定がNOである場合は,ステップS16において走行ジャーキー判定を有効にした(走行ジャーキーが発生した)と判定した場合であり,コントローラ34は,その後の走行ジャーキーの継続を判定するため,ステップS13~S17と同等の処理を行う。
【0098】
すなわち,コントローラ34は,ステップS11の判定がNOである場合,走行判定時間のカウント値TCに1を追加し(ステップS21),ステップS16又はS17において,走行判定時間のカウント値TCを0にリセットした後の走行判定時間のカウント値TCが走行判定時間継続の閾値Y2(第2所定時間)より小さい(TC<Y2)か否かを判定し(ステップS22),判定がYESである場合は,更に,走行ジャーキー判定のカウント値JCが走行ジャーキー継続判定の閾値Z2(第2所定回数)以上(JC≧Z2)か否かを判定する(ステップS23)。
【0099】
走行判定時間継続の閾値Y2(第2所定時間)は,図10BのステップS19のフィルタ制御による振動の減衰を考慮し,図10BのステップS14の走行判定時間の閾値Y1(第1所定時間)より短い例えば1.5秒相当の「150」に設定され,走行ジャーキー継続判定の閾値Z2(第2所定回数)は,例えば,図10BのステップS15の走行ジャーキー判定の閾値Z1(第1所定回数)と同じ「1回」に設定される。
【0100】
ステップS23の判定がYESである場合は,ステップS9の判定がYESであった場合であり,コントローラ34は,走行ジャーキーが継続していると判定し,走行ジャーキーの継続を続けて監視するため,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCを0にリセットする(ステップS24)。
【0101】
ステップS23において,判定がNOの場合は,ステップS9の判定がNOで,ステップS10において,走行ジャーキー判定のカウント値JCに1が追加されなかった場合であり,前述したステップS18に進み,ステップS18,S19,S20及びステップS11の処理を行う。
【0102】
ステップS22において,判定がNOである場合は,走行判定時間継続の閾値Y2内に走行ジャーキーが終了した場合であり,コントローラ34は,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCを0にリセットし,走行ジャーキー判定を無効にする(ステップS25)。
【0103】
ステップS23の判定がNOの場合は,前述したステップS18に進む。
【0104】
(動作例)
図10A図10B及び図10Cに示すフローチャートを,動作例を用いて更に説明する。動作例は,走行ジャーキー判定の閾値Z1が1回である場合のものである。
【0105】
~動作例1~
通常走行時。
【0106】
通常走行時は,目標操作圧と制御操作圧との圧力差が第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を超えることはなく,ステップS5,S7,S9における判定はNOとなる。そのため,走行ジャーキー判定は初期設定の無効のままであり,ステップS20において,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23が制御される。
【0107】
このときの制御の流れは以下のようである。
【0108】
S1~S4→S5(NO)→S7(NO)→S9(NO)→S11(YES)→S12(NO)→S18(NO)→S20(目標操作圧補正なし)
~動作例2~
通常走行中に車体が振動し,図5に示す状態2が発生したが,状態2から状態1の切り替わりが発生せず,走行ジャーキー発生の判定結果に至らなかった場合
この場合は,ステップS9の判定はNOであり,走行ジャーキー判定のカウント値JCは初期設定の0のままである。そのため,ステップS12の判定もNOで,走行ジャーキー判定は無効のままであり,ステップS20において,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23が制御される。
【0109】
このときの制御の流れは以下のようである。
【0110】
S1~S4→S5(NO)→S7(YES)→S8→S9(NO)→S11(YES)→S12(NO)→S18(NO)→S20(目標操作圧補正なし)
~動作例3~
図5に示す状態2から状態1の切り替わりが1回発生し,走行ジャーキーが発生したと判定された後,走行判定時間継続の閾値Y2の時間内に走行ジャーキーが終了した場合
(3-1)
<状態2と状態1の切り替わりが1回発生し,走行ジャーキーが発生したと判定されるまでの動作>
ステップS5若しくはステップS7でYESと判定され,ステップS9でNOと判定された後,ステップS7若しくはステップS5でYESと判定され,ステップS9でYESと判定された場合(状態1と状態2の切り替わりが発生した場合),ステップS10において,走行ジャーキー判定のカウント値JCが1となる(走行ジャーキーが発生したと判定される)。このため,ステップS12の判定がYESとなり,ステップS13において,走行判定時間のカウント値TCに1が追加される。このときは,走行判定時間のカウント値TCは走行判定時間の閾値Y1内であり,ステップS14においてYESと判定される。また,上述したように本動作例では,走行ジャーキー判定の閾値Z1は1(1回)であり,ステップS15の判定はYESとなり,ステップS16において,走行ジャーキー判定が有効になる。これによりステップS18の判定がYESとなり,ステップS19において目標操作圧に1次ローパスフィルタをかける補正が行われ,ステップS20においてその補正された目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0111】
このときの制御の流れは以下のようである。
(1)前回記憶された走行状態が「状態1」であった場合
S1~S4→S5(NO)→S7(YES)→S8→S9(YES)→S10→S11(YES)→S12(YES)→S13→S14(YES)→S15(YES)→S16→S18(YES)→S19→S20(目標操作圧補正あり)
(2)前回記憶された走行状態が「状態2」であった場合
S1~S4→S5(YES)→S6→S7(NO)→S9(YES)→S10→S11(YES)→S12(YES)→S13→S14(YES)→S15(YES)→S16→S18(YES)→S19→S20(目標操作圧補正あり)
(3-2)
<走行ジャーキーが発生したと判定された後の動作>
その後,状態1と状態2の切り替わりが発生しない場合,ステップS9はNOであり,ステップS16の処理により走行ジャーキー判定は有効になっているため,ステップS11の判定もNOである。また,ステップS22の走行判定時間継続の閾値Y2の時間内では,ステップS22の判定がYESで,ステップS23の判定はNOである。このため処理はステップS18,S19,S20に進み,目標操作圧が補正され,その補正された目標操作圧に基づいて電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0112】
このときの制御の流れは以下のようである。
【0113】
S1~S4→S5(YES)→S6→S7(NO)→S9(NO)→S11(NO)→S21→S22(YES)→S23(NO)→S18(YES)→S19→S20(目標操作圧補正あり)
このように走行ジャーキーが発生したと判定された後は,目標操作圧が補正され,その補正された目標操作圧に基づいて電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0114】
(3-3)
<走行ジャーキーの終了時の動作>
その後,ステップS22の走行判定時間継続の閾値Y2の時間内に走行ジャーキーが終了すると,ステップS22の判定がNOとなり,ステップS25において,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCが0にリセットされ,走行ジャーキー判定が無効となる。これによりステップS18の判定がNOとなってステップS19の目標操作圧の補正処理が終了し,ステップS20において,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0115】
このときの制御の流れは以下のようである。
【0116】
S1~S4→S5(YES)→S6→S7(NO)→S9(NO)→S11(NO)→S21→S22(NO)→S25→S18(NO)→S20(目標操作圧補正無し)
~動作例4~
動作例3の(3-2)の動作後,走行判定時間継続の閾値Y2の時間内に,再び状態1と状態2の切り替わりが発生した場合,
動作例3の(3-2)の動作後,ステップS5若しくはステップS7でYESと判定され,ステップS9の判定がYESとなると,ステップS10において,走行ジャーキー判定のカウント値JCが1となる。また,ステップS16の処理により走行ジャーキー判定は有効になってるため,ステップS11の判定はNOであり,処理はステップS21,S22,S23へと進む。そしてステップS23の判定がYESとなり(走行ジャーキーが継続していると判定され),ステップS24において,走行ジャーキーの継続を続けて判定するため,走行ジャーキー判定のカウント値JC及び走行判定時間のカウント値TCが0にリセットされる。この後,処理はステップS18,S19,S20に進み,目標操作圧が補正され,その補正された目標操作圧に基づいて電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0117】
このときの制御の流れは以下のようである。
(1)前回記憶された走行状態が「状態1」であった場合
S1~S4→S5(NO)→S7(YES)→S8→S9(YES)→S11(NO)→S21→S22(YES)→S23(YES)→S24→S18(YES)→S19→S20(目標操作圧補正あり)
(2)前回記憶された走行状態が「状態2」であった場合
S1~S4→S5(YES)→S6→S7(NO)→S9(YES)→S11(NO)→S21→S22(YES)→S23(YES)→S24→S18(YES)→S19→S20(目標操作圧補正あり)
その後,ステップS22の走行判定時間継続の閾値Y2の時間内に走行ジャーキーが終了すると,動作例3の(3-3)のようにステップS19の目標操作圧の補正処理が終了し,ステップS20において,目標操作圧に応じて走行用の電磁比例制御弁20~23が制御され,走行モータ1a,1bの駆動が制御される。
【0118】
(効果)
以上のように構成した本実施形態によれば,次の効果が得られる。
【0119】
1.図11は,本実施形態の走行制御により得られる基本的な効果を示す図であり,図の左側は,本実施形態の制御の適用前の目標操作圧及び制御操作圧の変化を示し,図の右側は本実施形態の制御の適用後の目標操作圧及び制御操作圧の変化を示している。
【0120】
本実施形態の走行制御を行うことにより,目標操作圧が図11の右側に点線で示すように補正され,補正後の目標操作圧に基づいて生成された指令電流により走行用の電磁比例制御弁20~23が制御されることにより,電磁比例制御弁20~23から出力される制御操作圧は,図11の右側に実線で示すように補正され,走行ジャーキーの影響を早期に終了させることができる。
【0121】
2.本実施形態では,車体の振動ではなく,走行操作ペダル54b,55bの揺れ(振動)に直接係わる目標操作圧と制御操作圧との圧力差の変化,すなわち圧力差が閾値「X」又は「-X」を超えた状態切り替わり回数に基づいて走行ジャーキーを発生したか否か判定する(圧力差が第1閾値「X」より大きい第1走行状態と,圧力差が第2閾値「-X」より小さい第2走行状態の状態切り替わり回数が第1所定回数に達した場合に,走行ジャーキーが発生したと判定する)ため,走行ペダル54b,55bの揺れを正確に推定し,走行操作ペダル54b,55bの操作時における走行ジャーキー発生の誤検出を防止することができる。このため,走行ジャーキー発生を誤検出した場合に発生する1次ローパスフィルタ(信号平滑処理手段)による走行操作の応答性の低下を防止し,良好な操作性を得ることができる。
【0122】
3.また,コントローラ34は,状態切り替わり回数が,第1所定時間Y1内に,第1所定回数Z1に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第1所定時間Y1内に第1所定回数Z1に達した場合に,走行ジャーキーが発生したと判定するため,状態切り替わり頻度に基づいて走行ジャーキーの発生を判定でき,走行ペダル54b,55bの揺れをより正確に推定し,走行ジャーキー発生の誤検出を更に減らすことができる。
【0123】
4.また,コントローラ34は,状態切り替わり回数が第1所定回数Z1に達し,走行ジャーキーが発生したと判定した後,更に,状態切り替わり回数が第2所定回数Z2に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第2所定回数Z2に達した場合に,走行ジャーキーが継続していると判定する。これにより走行ジャーキー発生後の走行ジャーキーの継続を正確に推定することができる。
【0124】
5.また,コントローラ34は,状態切り替わり回数が,第2所定時間Y2内に,第2所定回数Z2に達したか否か判定し,状態切り替わり回数が第2所定時間Y2内に第2所定回数Z2に達した場合に,走行ジャーキーが継続していると判定し,状態切り替わり回数が第2所定時間Y2内に第2所定回数Z2に達しなかった場合に,走行ジャーキーが終了したと判定する。これにより状態切り替わり頻度に基づいて走行ジャーキーの継続を判定でき,走行ジャーキーの継続をより正確に推定することができる。
【0125】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を図1図2図12及び図14図17を用いて説明する。
【0126】
図1において,本実施形態の油圧制御システムは,油圧ショベルのフロント作業機3の姿勢を検出する角度センサ60を備えている。角度センサ60は,ブーム3aに設けられ,ブーム3aの水平方向に対する角度(ブーム角度)を検出する慣性センサ等の角度センサである。
【0127】
図12は,本発明の第2の実施形態におけるコントローラの処理内容を示す機能ブロック図であり,図13は,コントローラ34の状態判定部34bの詳細を示す機能ブロック図である。
【0128】
図12において,本実施形態のコントローラ34は,操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作信号と,圧力センサ35~38の検出信号に加え,角度センサ60の検出信号を入力する。
【0129】
図13において,コントローラの状態判定部34bは,状態判定処理部34bAと圧力差閾値決定部34bBを有し,状態判定処理部34bAは操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作信号と,圧力センサ35~38の検出信号を入力し,図9及び図10A図10Cに示すフローチャートを用いて説明した前述した処理を行う。
【0130】
圧力差閾値決定部34Bは,角度センサ60の検出信号に基づいてフロント作業機3の姿勢情報(ブーム角度)を取得し,フロント作業機3が下方に回動してフロント作業機3の姿勢が水平に近づくにしたがって絶対値が大きくなるよう,圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を決定する。
【0131】
圧力差閾値決定部34Bは,走行操作装置54,55の操作信号に基づいて操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,走行方向が後進方向であるときよりも前進方向であるときの方が絶対値が大きくなるよう,圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を決定する。
【0132】
図14は,圧力差閾値決定部34Bの処理の一例を示すフローチャートである。図15は,圧力差閾値決定部34Bの処理で用いるブーム角度と第1閾値係数K1との関係を示す図であり,図16は,走行方向が前進方向である場合の第2閾値係数と後進方向である場合の第2閾値係数との関係を表形式で示す図である。
【0133】
図15において,圧力差閾値決定部34Bは,角度センサ60の検出信号からブーム3aの姿勢情報としてブーム角度を取得し,ブーム角度を図15に示したブーム角度と第1閾値係数K1との関係に参照させて,対応する第1閾値係数K1を算出する(ステップS210)。図16のブーム角度と第1閾値係数K1との関係は,ブーム角度が小さくなるにしたがって(フロント作業機3が水平の姿勢に近づくにしたがって)第1閾値係数K1が大きくなるように設定され,コントローラ34に記憶されている。
【0134】
次いで,圧力差閾値決定部34Bは,走行操作装置54,55の操作信号に基づいて,操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,判定した走行方向を図16に示した走行方向と第2閾値係数K2との関係に参照させ,走行方向に対応する第2閾値係数K2を決定する(ステップS220)。図17の表には,走行方向が前進方向である場合は第2閾値係数K2は1より小さい例えば0.8であり,後進方向である場合は第2閾値係数K2は1よりより大きい例えば1.2である走行方向と第2閾値係数K2との関係が設定され,コントローラ34に記憶されている。
【0135】
次いで,圧力差閾値決定部34Bは,以下の式から圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を算出する(ステップS230)。
【0136】
第1閾値「X」=基本閾値「X0」×K1×K2
第2閾値「-X」=基本閾値「-X0」×K1×K2
基本閾値「X0」は,走行ペダル54b,55bの操作トルクに基づいて予め決められた値であり,コントローラ34に記憶されている。
【0137】
図17は,走行ペダル54b,55bの操作トルクに基づいて基本閾値「X0」を決めるときの走行ペダル54b,55bの操作トルクと基本閾値「X0」との関係を示す図であり,この図に示すように,基本閾値「X0」は走行ペダル54b,55bの操作トルクが小さくなるにしたがって大きくなるように,機械出荷時に設定されている。
【0138】
走行ペダル54b,55bの操作トルクはオペレータが足で走行ペダル54b,55bを踏みこむときの踏み込み易さ(踏み込み力)に影響し,走行ペダル54b,55bの操作トルクが大きいときより小さいときの方が車体の振動に対する足操作による走行ペダル54b,55bの振動(揺れ)が大きくなり,それに合わせて第1閾値「X」及び第2閾値「-X」の絶対値を大きくする必要がある。一方,機械出荷時の走行ペダル54b,55bの操作トルクには若干のばらつきがあり,第1閾値「X」及び第2閾値「-X」はそのバラツキを考慮して設定する必要がある。
【0139】
図17に示すように,走行ペダル54b,55bの操作トルクが小さくなるにしたがって大きくなるよう基本閾値「X0」を設定することにより,機械出荷時の走行ペダル54b,55bの操作トルクのばらつきが吸収され,第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を適切な値となる。
【0140】
本実施形態においては,以上のように圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を決定することにより,フロント作業機3が下方に回動してフロント作業機3の姿勢が水平に近づくにしたがって絶対値が大きくなるよう圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」が決定される。また,走行操作装置54,55の操作信号が指示する走行方向が後進方向であるときよりも前進方向であるときの方が絶対値が大きくなるよう圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」が決定される。
【0141】
本実施形態によれば,以下の効果が得られる。
【0142】
油圧ショベルが不整地を走行する場合の車体の振動の大きさ(振幅)は,フロント作業機3の姿勢や走行方向によって異なり,走行ジャーキーの発生し易さも異なる。
【0143】
すなわち,ブーム角度が小さく,フロント作業機3の姿勢が水平方向に近い場合は,車体は揺れやすいため車体の振動は大きくなり,走行ジャーキーが発生しやすい。一方,ブーム角度が大きく,フロント作業機3の姿勢が垂直に近い場合は,車体は揺れにくいため,車体の振動は小さくなり,走行ジャーキーは発生しにくい。
【0144】
また,車体を前進方向に走行させるときは,オペレータは操作ペダルを前方向F(図2参照)に押し込むため,オペレータの上半身が座席の背もたれから離れ,オペレータの上半身が揺れやすくなり,走行ジャーキーが発生しやすい。一方,車体を後進方向に走行させるときは,オペレータは操作ペダルを後方向R(図2参照)に押し込むため,オペレータの上半身は座席の背もたれに保持され,オペレータの上半身は揺れにくくなり,走行ジャーキーは発生しにくい。
【0145】
このため,フロント作業機3の姿勢や走行方向に係わらず,同じ値の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を用いた場合は,走行ジャーキーの発生を誤検知する可能性がある。
【0146】
本実施形態では,上述したようにフロント作業機3の姿勢や走行方向に合わせて第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を補正するため,走行ジャーキー発生の誤検知を減らすことができる。
【0147】
なお,本実施形態では,フロント作業機3の姿勢を検出するため,ブーム3aの角度(ブーム角度)を検出する角度センサ60を用いたが,ブーム角度に加えてアーム3bの角度(アーム角度)を検出する角度センサを更に設け,ブーム角度とアーム角度の組合せでフロント作業機3の姿勢を検出してもよい。これによりフロント作業機3の姿勢をより正確に検出することができ,走行ジャーキー発生の誤検知を更に減らすことができる。
【0148】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態を図18図20を用いて説明する。
【0149】
図18は,本発明の第3の実施形態におけるコントローラ34の状態判定部34bの詳細を示す機能ブロック図である。
【0150】
図18において,コントローラの状態判定部34bは,状態判定処理部34bAとフィルタ時定数算出部34bCを有し,状態判定処理部34bAは操作装置52,53及び走行操作装置54,55の操作信号と,圧力センサ35~38の検出信号を入力し,図9及び図10A図10Cに示すフローチャートを用いて説明した前述した処理を行う。
【0151】
フィルタ時定数算出部34bCは,図10AのステップS4で算出された圧力差Dに基づいて走行ペダル54b,55bの振動の大きさ(振幅)を推定し,走行ペダル54b,55bの振動の大きさ(振幅)に応じて,目標操作圧の変化速度の制限度合いを決定する。
【0152】
図19は,走行ペダル54b,55bの振動の大きさの推定に用いる目標操作圧と制御操作圧の差分Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係を示す図であり,図20は,走行ペダル54b,55bの振動の大きさとフィルタ時定数τとの関係を示す図である。
【0153】
フィルタ時定数算出部34bCは,図10AのステップS4で算出された目標操作圧と制御操作圧の差分Dを図19に示した目標操作圧と制御操作圧の差分Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係に参照させて,対応する走行ペダル54b,55bの振動の大きさを算出する。図20に示す圧力差Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係は,圧力差Dが大きくなるにしたがって走行ペダル54b,55bの振動の大きさが増加するように設定され,コントローラ34に記憶されている。
【0154】
また,フィルタ時定数算出部34bCは,走行ペダル54b,55bの振動の大きさを図20に示した走行ペダル54b,55bの振動の大きさとフィルタ時定数τとの関係に参照させ,対応するフィルタ時定数τを算出する。図21に示す走行ペダル54b,55bの振動の大きさとフィルタ時定数τとの関係は,走行ペダル54b,55bの振動の大きさが大きくなるにしたがってフィルタ時定数τが大きくなるように設定され,コントローラ34に記憶されている。
【0155】
図20を用いて算出されたフィルタ時定数τは図10BのステップS19のフィルタ処理で用いられ,走行ペダル54b,55bの振動の大きさに応じて目標操作圧の変化速度の制限度合いが決定される。
【0156】
このように目標操作圧と制御操作圧の差分Dの大きさに基づいてフィルタ時定数τを決定することにより,走行ペダル54b,55bの振動の大きさ(振幅)に合わせてローパスフィルタの作用を補正することができ,ローパスフィルタの減衰性能を向上させることができる。その結果,目標操作圧の変化速度の制限作用が向上し,走行ジャーキーを素早く抑制することができる。
【0157】
なお,第2の実施形態においては,コントローラ34の状態判定部34bが圧力差閾値算出部34bBを備え,第2の実施形態においては,コントローラ34の状態判定部34bがフィルタ時定数算出部34bCを備える構成としたが,第Iの実施形態と第2の実施形態を組み合わせ,状態判定部34bは圧力差閾値算出部34bBとフィルタ時定数算出部34bCの両方を備える構成としてもよい。
【0158】
(その他)
以上の実施形態では,走行操作装置54,55は操作信号として電気信号を生成する電気式であるとしたが,操作信号として操作パイロット圧を生成する油圧パイロット式であってもよい。その場合は,IMUセンサによって操作レバー操作量を検出してコントローラ34内で目標操作圧を算出する一方,上述した実施形態と同様,走行切換制御弁13,14に導かれる制御操作圧を圧力センサ35~38で検出し,コントローラ34内で制御操作圧を算出して,それらの目標操作圧と制御操作圧に基づいて電気式の走行操作装置54,55の操作信号と同様な演算処理を行えばよい。また,操作パイロット圧を走行切換制御弁13,14に導く油路に走行電磁比例制御弁20~23を配置し,走行ジャーキーの発生を検出しないときは走行電磁比例制御弁20~23を全開とし,走行ジャーキーの発生を検出したときに,電磁比例制御弁20~23を上述した実施形態のように制御すればよい。
【符号の説明】
【0159】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 フロント作業機
1a,1b 走行モータ
1a,1b,2a,3d,3e,3f 複数のアクチュエータ
3a ブーム
3b アーム
3c バケット
4 キャビン
6 油圧ポンプ
13~18 切換制御弁
13,14 走行切換制御弁
20~31 電磁比例制御弁
20~23 走行電磁比例制御弁
34 コントローラ
35,36,37,38 圧力センサ
52,53 操作装置
52a,53a 操作レバー
54,55 操作装置(走行操作装置)
54a,55a 操作レバー(走行操作レバー,走行レバー)
54b,55b 操作ペダル(走行操作ペダル,走行ペダル)
52c,53c,54c,55c 信号生成部
X 第1閾値
-X 第2閾値
Y1 走行判定時間の閾値(第1所定時間)
Y2 走行判定時間継続の閾値(第2所定時間)
Z1 走行ジャーキー判定の閾値(第1所定回数)
Z2 走行ジャーキー継続判定の閾値(第2所定回数)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される走行モータを含む複数のアクチュエータと,
前記油圧ポンプから吐出され,前記走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行切換制御弁を含む複数の切換制御弁と,
走行操作レバー及び前記走行操作レバーの基端に隣接して位置する走行操作ペダルを有し,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた操作信号を生成する走行操作装置を含む複数の操作装置と,
前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記操作量に応じた目標操作圧を算出し,前記目標操作圧に応じた指令電流を生成するとともに,走行ジャーキーが発生したと判定したとき,前記目標操作圧を補正して前記目標操作圧の変化速度を制限するコントローラと,
前記指令電流に応じた制御操作圧を生成し,前記走行切換制御弁を作動させる走行電磁比例制御弁と
を備えた建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記走行電磁比例制御弁が生成する制御操作圧を検出する圧力センサを更に備え,
前記コントローラは,
前記走行操作装置の操作信号に基づいて,前記走行操作レバー及び走行操作ペダルの操作量に応じた目標操作圧を算出し,
前記圧力センサにより検出された前記制御操作圧を入力し,前記目標操作圧と前記制御操作圧との圧力差を算出し,前記圧力差の変化に基づいて前記走行ジャーキーが発生したか否か判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記圧力差が正の値であるときの第1閾値と,前記圧力差が負の値であるときの第2閾値を設定し,
前記圧力差が第1閾値より大きい第1走行状態と,前記圧力差が第2閾値より小さい第2走行状態の状態切り替わり回数が第1所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第1所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが発生したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が,第1所定時間内に,前記第1所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第1所定時間内に前記第1所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが発生したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記第1所定回数は1回~3回であることを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項5】
請求項2記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が前記第1所定回数に達し,前記走行ジャーキーが発生したと判定した後,更に,前記状態切り替わり回数が第2所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが継続していると判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記状態切り替わり回数が,第2所定時間内に,前記第2所定回数に達したか否か判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定時間内に前記第2所定回数に達した場合に,前記走行ジャーキーが継続していると判定し,前記状態切り替わり回数が前記第2所定時間内に前記第2所定回数に達しなかった場合に,前記走行ジャーキーが終了したと判定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項7】
請求項5記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記第2所定回数は1回~2回であることを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項8】
請求項記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記建設機械は,上部旋回体と,上部旋回体の前部に上下方向に回動可能に取り付けられ,作業を行うフロント作業機とを有し,
前記油圧制御システムは,前記フロント作業機の姿勢を検出する角度センサを備え,
前記コントローラは,
前記角度センサの検出信号に基づいて前記フロント作業機の姿勢情報を取得し,前記フロント作業機が下方に回動して前記フロント作業機の姿勢が水平に近づくにしたがって絶対値が大きくなるよう,前記圧力差の前記第1閾値及び前記第2閾値を決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項9】
請求項記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記走行操作装置の前記操作信号に基づいて前記操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,前記走行方向が前記後進方向であるときよりも前記前進方向であるときの方が絶対値が大きくなるよう,前記圧力差の前記第1閾値及び前記第2閾値を決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【請求項10】
請求項1記載の建設機械の油圧制御システムにおいて,
前記コントローラは,
前記圧力差に基づいて前記走行操作ペダルの振動の大きさを推定し,前記走行操作ペダルの振動の大きさに応じて,前記目標操作圧の変化速度の制限度合いを決定することを特徴とする建設機械の油圧制御システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
D=目標操作圧-制御操作圧
その後,コントローラ34は,圧力差Dが走行操作圧力差の第1閾値「X」(正の値)より大きいか否か判定し(ステップS5),判定がYESの場合,走行状態を「状態1」として記憶する(ステップS6)。「状態1」は,図5の時刻t2における状態1に相当する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
次いで,コントローラ34は,圧力差Dが走行操作圧力差の第2閾値「-X」(負の値)より小さいか否か判定し(ステップS7),判定がYESの場合,走行状態を「状態2」として記憶する(ステップS8)。「状態2」は,図5の時刻t1における状態2に相当する。ステップS5の判定がNOの場合も,ステップS7に進んで同様の判定を行い,判定がYESの場合,ステップS8に進み,走行状態を「状態2」として記憶する(ステップS8)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
ここで,目標操作圧に作用させる1次ローパスフィルタのフィルタ時定数τは,実際の車体(上部旋回体2)の走行レバー/ペダル振動に対する走行加減速への影響度合いをもとに決定される。また,後述する第3実施形態で説明するように,目標操作圧と制御操作圧の圧力差Dの大きさに基づいて,フィルタ時定数τを変更してもよく,これによりペダルの振動幅に応じて,フィルタの作用を補正することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0130
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0130】
圧力差閾値決定部34Bは,角度センサ60の検出信号に基づいてフロント作業機3の姿勢情報(ブーム角度)を取得し,フロント作業機3が下方に回動してフロント作業機3の姿勢が水平に近づくにしたがって絶対値が大きくなるよう,圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を決定する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
圧力差閾値決定部34Bは,走行操作装置54,55の操作信号に基づいて操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,走行方向が後進方向であるときよりも前進方向であるときの方が絶対値が大きくなるよう,圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を決定する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0132
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0132】
図14は,圧力差閾値決定部34Bの処理の一例を示すフローチャートである。図15は,圧力差閾値決定部34Bの処理で用いるブーム角度と第1閾値係数K1との関係を示す図であり,図16は,走行方向が前進方向である場合の第2閾値係数と後進方向である場合の第2閾値係数との関係を表形式で示す図である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
図15において,圧力差閾値決定部34Bは,角度センサ60の検出信号からブーム3aの姿勢情報としてブーム角度を取得し,ブーム角度を図15に示したブーム角度と第1閾値係数K1との関係に参照させて,対応する第1閾値係数K1を算出する(ステップS210)。図16のブーム角度と第1閾値係数K1との関係は,ブーム角度が小さくなるにしたがって(フロント作業機3が水平の姿勢に近づくにしたがって)第1閾値係数K1が大きくなるように設定され,コントローラ34に記憶されている。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
次いで,圧力差閾値決定部34Bは,走行操作装置54,55の操作信号に基づいて,操作信号が指示する走行方向が前進方向か後進方向かを判定し,判定した走行方向を図16に示した走行方向と第2閾値係数K2との関係に参照させ,走行方向に対応する第2閾値係数K2を決定する(ステップS220)。図17の表には,走行方向が前進方向である場合は第2閾値係数K2は1より小さい例えば0.8であり,後進方向である場合は第2閾値係数K2は1よりより大きい例えば1.2である走行方向と第2閾値係数K2との関係が設定され,コントローラ34に記憶されている。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
次いで,圧力差閾値決定部34Bは,以下の式から圧力差の第1閾値「X」及び第2閾値「-X」を算出する(ステップS230)。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
図19は,走行ペダル54b,55bの振動の大きさの推定に用いる目標操作圧と制御操作圧の圧力差Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係を示す図であり,図20は,走行ペダル54b,55bの振動の大きさとフィルタ時定数τとの関係を示す図である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0153】
フィルタ時定数算出部34bCは,図10AのステップS4で算出された目標操作圧と制御操作圧の圧力差Dを図19に示した目標操作圧と制御操作圧の圧力差Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係に参照させて,対応する走行ペダル54b,55bの振動の大きさを算出する。図20に示す圧力差Dと走行ペダル54b,55bの振動の大きさとの関係は,圧力差Dが大きくなるにしたがって走行ペダル54b,55bの振動の大きさが増加するように設定され,コントローラ34に記憶されている。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0156
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0156】
このように目標操作圧と制御操作圧の圧力差Dの大きさに基づいてフィルタ時定数τを決定することにより,走行ペダル54b,55bの振動の大きさ(振幅)に合わせてローパスフィルタの作用を補正することができ,ローパスフィルタの減衰性能を向上させることができる。その結果,目標操作圧の変化速度の制限作用が向上し,走行ジャーキーを素早く抑制することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
なお,第2の実施形態においては,コントローラ34の状態判定部34bが圧力差閾値決定部34bBを備え,第2の実施形態においては,コントローラ34の状態判定部34bがフィルタ時定数算出部34bCを備える構成としたが,第Iの実施形態と第2の実施形態を組み合わせ,状態判定部34bは圧力差閾値決定部34bBとフィルタ時定数算出部34bCの両方を備える構成としてもよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10A
【手続補正16】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正の内容】
図13
【手続補正17】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図14
【補正方法】変更
【補正の内容】
図14
【手続補正18】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17
【手続補正19】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図19
【補正方法】変更
【補正の内容】
図19