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特開2024-146197制御装置、制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146197
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/098 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
H02P25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058959
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝久
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 佑哉
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA22
5H501BB08
5H501DD01
5H501GG01
5H501GG05
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501JJ25
5H501JJ26
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】ノッチフィルタの深さを設定することができる制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械の制御装置であって、前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する増加量推定部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械の制御装置であって、
前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する増加量推定部を備える
制御装置。
【請求項2】
前記第一積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合における予め定めたゲイン余裕と、前記増加量推定部にて推定した前記増加量とを加算する加算部を備える
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記工作機械は、前記移動対象を駆動するモータと、前記ノッチフィルタの出力と、前記推定動作に対応する周波数を示す信号とに基づき、前記モータに供給するトルクを制御するトルク制御部を備え、
前記周波数に含まれる共振周波数と、前記加算部の加算結果とに基づき、前記ノッチフィルタの深さを演算する深さ演算部を備える
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記推定動作に対応する周波数を示す信号は正弦波状のトルク指令を含み、
前記トルク指令に基づいて前記共振周波数を推定する周波数推定部を備え、
前記深さ演算部は、前記周波数推定部が推定する前記共振周波数に基づき、前記ノッチフィルタの深さを演算する
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振しないように、前記増幅器の増幅率を変更する変更部を備える
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記変更部は、前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したか否かを判定する判定部を備え、前記判定部にて前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したと判定する間、前記増幅率の低下を行い、
前記周波数推定部は、前記増幅率の低下を行う都度、前記共振周波数の推定を行い、
前記深さ演算部は、前記判定部にて前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振していないと判定した場合に、前記ノッチフィルタの深さを演算する
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第二平均速度が前記第一平均速度と所定係数との乗算値以上である場合、前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したと判定する
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記移動対象はテーブルを含み、
前記第一積載条件は無積載であることを含み、
前記第二積載条件は少なくとも治具を前記テーブルに積載することを含む
請求項1から7のいずれか一つに記載の制御装置。
【請求項9】
移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械の制御方法であって、
前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する
制御方法。
【請求項10】
移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械を制御するコンピュータプログラムであって、
前記工作機械の制御装置に、
前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する
処理を実行させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、工作機械を制御する制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物を積載したテーブルのモータを駆動制御する工作機械のNC制御装置がある。NC制御装置は、位置指令を入力し、モータの位置をエンコーダによって検出し、フィードバック制御を行う。位置指令に基づいて速度指令を生成する増幅器の後段に、共振周波数を除去する為のノッチフィルタが設けてある。
【0003】
NC制御装置はスイープ信号発生器と、周波数分析器とを備える。スイープ信号発生器から、一定振幅で周波数を徐々に変化させた正弦波が位置指令として入力される。周波数分析器は、入力された正弦波に基づき、共振周波数を求める。NC制御装置は、求めた共振周波数をノッチフィルタの中心周波数に設定し、供給周波数を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-346813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NC制御装置はノッチフィルタの深さを設定していないので、安定した制御系を容易に構成することができない。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ノッチフィルタの深さを設定することができる制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械の制御装置であって、前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度 と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する増加量推定部を備える。
【0008】
本開示においては、第二積載条件を満たす場合に、第一積載条件におけるゲイン余裕と比較した際のゲイン余裕の増加量を推定する。推定した増加量はノッチフィルタの深さの演算に使用される。
【0009】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記第一積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合における予め定めたゲイン余裕と、前記増加量推定部にて推定した前記増加量とを加算する加算部を備える。
【0010】
本開示においては、第一積載条件を満たす場合における予め定めたゲイン余裕と、前記増加量とを加算する。加算結果は、ノッチフィルタの深さの演算に使用される。
【0011】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記工作機械は、前記移動対象を駆動するモータと、前記ノッチフィルタの出力と、前記推定動作に対応する周波数を示す信号とに基づき、前記モータに供給するトルクを制御するトルク制御部を備え、前記周波数に含まれる共振周波数と、前記加算部の加算結果とに基づき、前記ノッチフィルタの深さを演算する深さ演算部を備える。
【0012】
本開示においては、共振周波数と、加算結果とに基づいて、ノッチフィルタの深さを演算する。
【0013】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記推定動作に対応する周波数を示す信号は正弦波状のトルク指令を含み、前記トルク指令に基づいて前記共振周波数を推定する周波数推定部を備え、前記深さ演算部は、前記周波数推定部が推定する前記共振周波数に基づき、前記ノッチフィルタの深さを演算する。
【0014】
本開示においては、周波数推定部が推定する共振周波数に基づき、ノッチフィルタの深さを演算する。
【0015】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振しないように、前記増幅器の増幅率を変更する変更部を備える。
【0016】
本開示においては、共振周波数の推定中に発振しないように、増幅器の増幅率を変更する。
【0017】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記変更部は、前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したか否かを判定する判定部を備え、前記判定部にて前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したと判定する間、前記増幅率の低下を行い、前記周波数推定部は、前記増幅率の低下を行う都度、前記共振周波数の推定を行い、前記深さ演算部は、前記判定部にて前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振していないと判定した場合に、前記ノッチフィルタの深さを演算する。
【0018】
本開示においては、周波数推定部による共振周波数の推定中に発振していないと判定した場合に、ノッチフィルタの深さを演算する。
【0019】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記判定部は、前記第二平均速度が前記第一平均速度と所定係数との乗算値以上である場合、前記周波数推定部による前記共振周波数の推定中に発振したと判定する。
【0020】
本開示においては、共振周波数の推定中に発振したか否かの判定を実現する。
【0021】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記移動対象はテーブルを含み、前記第一積載条件は無積載であることを含み、前記第二積載条件は少なくとも治具を前記テーブルに積載することを含む。
【0022】
本開示においては、第一平均速度は、無積載のテーブルが移動する場合の平均速度である。第二平均速度は、少なくとも治具を積載したテーブルが移動する場合の平均速度である。
【0023】
本開示の一実施形態に係る制御方法は、移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械の制御方法であって、前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する。
【0024】
本開示においては、第二積載条件を満たす場合に、第一積載条件におけるゲイン余裕と比較した際のゲイン余裕の増加量を推定する。推定した増加量はノッチフィルタの深さの演算に使用される。
【0025】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、移動対象に対する速度指令と速度検出部によって検出される前記移動対象の速度との差分に基づく信号を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の出力に適用されるノッチフィルタとを備える工作機械を制御するコンピュータプログラムであって、前記工作機械の制御装置に、前記移動対象への積載に関する第一積載条件を満たす前記移動対象に予め推定した推定動作を実行させた場合における第一平均速度と、前記移動対象への積載に関する第二積載条件を満たす前記移動対象に前記推定動作を実行させた場合における第二平均速度との比に基づいて、前記第二積載条件を満たす前記移動対象を移動させる場合におけるゲイン余裕の増加量を推定する処理を実行させる。
【0026】
本開示においては、第二積載条件を満たす場合に、第一積載条件におけるゲイン余裕と比較した際のゲイン余裕の増加量を推定する。推定した増加量はノッチフィルタの深さの演算に使用される。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一実施形態に係る制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムにあっては、第二積載条件を満たす場合に、第一積載条件におけるゲイン余裕と比較した際のゲイン余裕の増加量を推定する。推定した増加量はノッチフィルタの深さの演算に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】工作機械の略示斜視図である。
図2】工作機械のブロック図である。
図3】X軸モータに関するブロック線図である。
図4】ノッチフィルタの深さを演算する深さ演算処理を説明するフローチャートである。
図5】ノッチフィルタを適用した場合の周波数特性を模式的に示すボード線図である。
図6図5に示すボード線図の部分拡大図である。
図7】各ゲイン余裕と、共振周波数と、ノッチフィルタの深さとの関係を示すマップの作成処理を説明するフローチャートである。
図8】各ゲイン余裕と、中心周波数及びノッチフィルタの深さとの関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本発明を実施の形態に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図中の上下前後左右を使用する。図1は、工作機械1の略示斜視図である。工作機械1は、前後に延びた矩形の基台2を備える。基台2の上面後部に立柱3が設けてある。立柱3の後面に制御装置4が設けてあり、立柱3の前面に主軸ヘッド5が設けてある。主軸ヘッド5は、上下方向に移動可能である。
【0030】
主軸ヘッド5は上下延びる主軸(図示略)を備える。主軸の下端部に工具を装着する。主軸ヘッド5の上端部には主軸の回転を行う主軸モータ6が設けてある。立柱3の上下方向中途部に、二つの連結板8を介して工具マガジン7が設けてある。二つの連結板8は立柱3から前方に突出し、左右に並ぶ。二つの連結板8の前端部に工具マガジン7が固定してある。工具マガジン7は、例えばタレット式の工具マガジン7であり、複数の工具を収納する。工具マガジン7は主軸ヘッド5よりも前側に位置する。制御装置4は、マガジンモータ7a(図2参照)の駆動によって工具マガジン7を回転して、工具を所定位置に割り出し、Z軸モータ5a(図2参照)の駆動によって、主軸ヘッド5の下降を行い、主軸に工具を装着する。また制御装置4は、Z軸モータ5aの駆動によって、主軸ヘッド5の上昇を行い、工具を主軸から取り外し、工具マガジン7に収納する。
【0031】
基台2の上面前部にワークを保持する保持装置11が設けてある。保持装置11は、テーブル9及び移動台10を備える。テーブル9は移動台10の上に設けてある。テーブル9はX軸モータ9a(図2参照)の駆動によって、左右方向に移動する。移動台10はY軸モータ10a(図2参照)の駆動によって、前後方向に移動する。移動台10の移動によって、テーブル9は前後方向に移動する。
【0032】
図2は、工作機械1のブロック図である。制御装置4は、制御部4a、主記憶部4b、補助記憶部4c及びインタフェース4dを備える。制御部4aは、プロセッサ又はロジック回路を含む。プロセッサとしては、例えばCPU、MPU又はGPU等が挙げられる。ロジック回路としては、例えばFPGA、ASIC又はCPLD等が挙げられる。
【0033】
主記憶部4bは揮発性メモリ、例えばRAMを含む。補助記憶部4cは、例えば不揮発性メモリ又はハードディスク等を有する。不揮発性メモリは、例えばEPROM、EEPROM又はフラッシュメモリ等である。補助記憶部4cは工作機械1の制御プログラム(プログラム製品)を記憶する。制御プログラムは加工プログラム、共振周波数を求めるプログラム及びノッチフィルタの深さを演算するプログラム等を含む。補助記憶部4cは後述の基準平均速度Vb 、所定係数α、ゲイン余裕gmd、深さ計算関数d(f,g)を予め記憶する。尚制御プログラムを記憶した持ち運び可能な記憶媒体4e、例えば光ディスクに制御プログラムを記憶し、記憶媒体4eから補助記憶部4cにインストールしてもよい。光ディスクとしては、例えばCD-ROM、DVD等が挙げられる。また制御装置4を通信可能に構成し、ネットワークを介してサーバから補助記憶部4cに制御プログラムをダウンロードしてもよい。
【0034】
CPU4aは補助記憶部4cからRAM4bに制御プログラムを読み出し、制御プログラムに基づき、駆動信号をインタフェース4d、及び駆動回路9b、10b、5b、6b又は7bを介してX軸モータ9a、Y軸モータ10a、Z軸モータ5a、主軸モータ6又はマガジンモータ7aに出力する。X軸モータ9aにエンコーダ9cが設けてある。Y軸モータ10aにエンコーダ10cが設けてある。エンコーダ9c、10cは駆動回路9b、10bに検出値を送信する。駆動回路9b、10bはエンコーダ9c、10cの検出値を受け、フィードバック制御を実施する。
【0035】
Z軸モータ5a、主軸モータ6及びマガジンモータ7aにエンコーダ(図示略)が設けてある。エンコーダは駆動回路5b、6b、7bに検出値を送信する。駆動回路5b、6b、7bはエンコーダの検出値を受け、フィードバック制御を実施する。作業者は操作部20を操作し、操作部20はインタフェース4dを介して制御装置4に情報を入力する。操作部20はキーボード、タッチパネル又はスイッチ等を有する。制御装置4はインタフェース4dを介して表示部29に表示信号を出力する。表示部29は情報を表示する。表示部29は、液晶パネル又は有機ELパネル等を備える。
【0036】
図3は、X軸モータ9aに関するブロック線図である。駆動回路9bは、位置制御部21、速度制御部22、ノッチフィルタ23、トルク制御部24、速度検出部25及び生成部26等を備える。位置制御部21には、制御プログラムに基づいて入力された位置指令40とエンコーダ9cの検出値41との差分、即ち位置指令40の位置から検出値41を減算した値を示す信号が入力される。検出値41は位置フィードバックである。位置制御部21は増幅器(図示略)等を有し、入力された差分を増幅して速度指令42を出力する。速度検出部25は微分器(図示略)等を有する。検出値41は速度検出部25に入力される。速度検出部25は検出値に基づき、X軸モータ9aの回転速度43、即ち速度フィードバックを求めて出力する。
【0037】
速度制御部22には、速度指令42と回転速度43との差分、即ち速度指令42から回転速度43を減算した信号が入力される。速度制御部22は増幅器22a等を有し、入力された差分を増幅してトルク指令44を出力する。増幅器22aの増幅率は変更可能である。制御部4aは増幅器22aの増幅率を変更することができる。トルク指令44はノッチフィルタ23に入力される。
【0038】
ノッチフィルタ23に中央周波数が設定してある。ノッチフィルタ23は入力信号における中央周波数の信号成分を減衰させて、出力する。ノッチフィルタ23は、トルク指令44から中央周波数の信号成分を減衰させて、出力する。
【0039】
生成部26は、正弦波状のトルク指令を出力する。生成部26は、正弦波状のトルク指令の周波数を変更することができる。生成部26は、共振周波数を検出する為に、所定の周波数範囲において周波数を変更し、各周波数のトルク指令を出力することができる。
【0040】
X軸モータ9aに、X軸モータ9aに流れた電流を検出する電流検出器9eが設けてある。ノッチフィルタ23からのトルク指令の値(電流値)と、生成部26からのトルク指令の値(電流値)とは加算され、加算結果から電流検出器9eにて検出した電流値、即ち電流フィードバックが減算される。減算結果はトルク制御部24に入力される。トルク制御部24は電流指令をX軸モータ9aに出力する。X軸モータ9aは電流指令に基づいて回転する。
【0041】
演算回路9dは、速度検出部30、平均化部31、周波数平均速度演算部32、積算平均速度演算部33、バンドストップフィルタ34及び平均化部35等を備える。検出値41は速度検出部30に入力される。速度検出部30は微分器を有する。速度検出部30は検出値に基づき、X軸モータ9aの回転速度を求めて、平均化部31及びバンドストップフィルタ34に出力する。平均化部31は、回転速度を絶対値にして平均化し、周波数平均速度演算部32に出力する。
【0042】
バンドストップフィルタ34は、回転速度を示す信号から、生成部26からトルク制御部24に入力されたトルク指令の周波数と同じ周波数の信号成分を減衰させて、平均化部35に出力する。平均化部35は、トルク指令の周波数と同じ周波数の信号成分を減衰させた回転速度を絶対値にして平均化し、周波数平均速度演算部32に信号を出力する。
【0043】
周波数平均速度演算部32は、平均化部31から入力された回転速度、即ち生成部26からトルク制御部24に入力されたトルク指令の周波数と同じ周波数の信号成分を含む回転速度から、平均化部35から入力された回転速度、生成部26からトルク制御部24に入力されたトルク指令の周波数と同じ周波数の信号成分を減衰させた回転速度を減算し、平均速度を演算する。換言すれば、周波数平均速度演算部32は、生成部26からトルク制御部24に入力されたトルク指令と同じ周波数の信号成分について、平均速度を演算する。
【0044】
生成部26は、所定の周波数範囲において周波数を変更し、各周波数のトルク指令を出力する。周波数平均速度演算部32は、生成部26にてトルク指令の周波数が変更される都度、平均速度Vave を演算する。制御部4aは、周波数平均速度演算部32が演算した周波数の異なる各平均速度Vave を、周波数に紐づけて補助記憶部4cに逐次記憶する。制御部4aは、最も高い平均速度Vave を有する周波数を共振周波数と推定する。
【0045】
積算平均速度演算部33は、周波数平均速度演算部32が出力した周波数の異なる各平均速度を積算して平均化し、積算平均速度を制御装置4に出力する。補助記憶部4cは積算平均速度を記憶する。Y軸モータ10aの駆動回路10b及び演算回路10dは、X軸モータ9aの駆動回路9b及び演算回路9dと同様な構成を備えており、その詳細な説明を省略する。
【0046】
例えば作業者は加工を開始する前にテーブル9に治具12を搭載し、制御装置4にノッチフィルタ23の深さを演算させて、ノッチフィルタ23に深さを設定することができる。制御部4aは、例えばX軸モータ9aを駆動し、ノッチフィルタ23の深さを演算する。なお作業者は治具12にワークを設けて、ノッチフィルタ23の深さを演算させることもできる。
【0047】
図4は、ノッチフィルタ23の深さを演算する深さ演算処理を説明するフローチャートである。ここでは、制御部4aがX軸モータ9aに移動指令、即ち位置指令40を出力し、ノッチフィルタ23の深さを演算する場合について説明する。
【0048】
制御部4aは、速度制御部22の増幅器22aの増幅率を所定割合、例えば5%低下させる(S1)。制御部4aは共振周波数を推定する(S2)。ステップS2を実行する制御部4aは周波数推定部に対応する。制御部4aは補助記憶部4cを参照し、周波数平均速度演算部32が演算した周波数の異なる各平均速度のうち、最も高い平均速度Vave を有する周波数を共振周波数fm と推定する。平均速度Vave は、治具をテーブル9に積載すること、即ち第二積載条件が成立する場合における平均速度である。平均速度Vave は、第二平均速度に対応する。
【0049】
制御部4aは、共振周波数fm の推定中に発振したか否か判定する(S3)。共振周波数fm の推定中に発振したと判定した場合(S3:YES)、制御部4aはステップS1に処理を戻し、増幅率を更に低下させて、共振周波数fm を再度推定する。ステップS1及びS3を実行する制御部4aは変更部に対応する。ステップS3を実行する制御部4aは判定部に対応する。共振周波数の推定中に発振した場合、周波数平均速度演算部32は、誤った平均速度を演算する可能性が高い。そのため、制御部4aは、共振周波数fm の推定中に発振しないように、増幅器22aの増幅率を更に低下させて、共振周波数fm を再度推定する。
【0050】
ステップS3において、制御部4aは、例えば平均速度Vave が基準平均速度Vb と所定係数αとの乗算値以上であるか否か、即ちVave ≧Vb ×αが成立するか否か判定する。基準平均速度Vb は、テーブル9が無積載であること、即ち第一積載条件が成立する場合における平均速度である。基準平均速度Vb は積算平均速度演算部33にて演算される平均速度であり、予め求めてある。例えば、サンプルとして複数台(例えば5台)で計測した平均値を基準平均速度Vb として求めてもよく、また、工作機械を製造・出荷する際に、無積載の状態で計測して1台ずつ固有の値を基準平均速度Vb として求めてもよい。基準平均速度Vb は第一平均速度に対応する。所定係数αは、例えば実験によって予め求めてある。平均速度Vave が基準平均速度Vb と所定係数αとの乗算値以上である場合、発振したと判定する。平均速度Vave が基準平均速度Vb と所定係数αとの乗算値以上でない場合、発振していないと判定する。
【0051】
ステップS3において、発振していないと判定した場合(S3:NO)、制御部4aはゲイン余裕増加量gmeを推定する(S4)。ステップS4を実行する制御部4aは増加量推定部に対応する。ゲイン余裕増加量gmeは以下の式で表される。
me=-201log10(Vave /Vb )
【0052】
ゲイン余裕増加量gmeは、第二積載条件を満たすテーブル9を移動させる場合における第一積載条件下でのゲイン余裕と比較した際のゲイン余裕の増加量を示す。治具12を積載した場合、例えば無積載の場合に比べて、治具のイナーシャ分ゲインが低下するため、ゲイン余裕が増加する。この増加したゲイン余裕の増加量がゲイン余裕増加量gmeに相当する。
【0053】
制御部4aは、推定したゲイン余裕増加量gmeとゲイン余裕gmdとを加算し、ゲイン余裕低下許容量gm を演算する(S5)。即ち制御部4aは、gm =gme+gmdを演算する。ステップS5を実行する制御部4aは加算部に対応する。ゲイン余裕gmdは、無積載のテーブル9、即ち第一積載条件を満たすテーブル9を移動させる場合におけるのゲイン余裕を示し、予め求めてある。即ち、ゲイン余裕低下許容量gm は、無積載の場合のゲイン余裕に、治具12の積載によって増加したゲインを加味した、ノッチフィルタ23の深さの演算に使用するパラメータである。なおgm 、gme、gmdは全てノッチフィルタ適用前の値である。
【0054】
制御部4aは、ノッチフィルタ23の深さを演算する(S6)。ステップS6を実行する制御部4aは深さ演算部に対応する。制御部4aは、深さ計算関数d(f,g)に、推定した共振周波数fm と、ゲイン余裕低下許容量gm を適用し、ノッチフィルタ23の深さを演算する。深さ計算関数d(f,g)は、例えば、以下のようにして求める。
【0055】
図5は、ノッチフィルタ23を適用した場合の周波数特性を模式的に示すボード線図、図6は、図5に示すボード線図の部分拡大図である。図6は、位相交差周波数周りの部分を示す。図5及び図6は、400Hzを中心周波数としたノッチフィルタ23を適用した場合のボード線図である。図6のゲイン線図において、ゲイン余裕G1はグラフ51aのゲイン余裕を示し、ゲイン余裕G2はグラフ52aのゲイン余裕を示し、ゲイン余裕G3はグラフ53aのゲイン余裕を示し、ゲイン余裕G4はグラフ54aのゲイン余裕を示し、ゲイン余裕G5はグラフ55aのゲイン余裕を示す。グラフ51aのノッチフィルタ23の深さをd1、グラフ52aの前記深さをd2、グラフ53aの前記深さをd3、グラフ54aの前記深さをd4、グラフ55aの前記深さをd5とした場合、深さの大きさの関係は、d1<d2<d3<d4<d5である。
【0056】
図5及び図6の位相線図において、グラフ51bはゲイン線図のグラフ51aに対応し、グラフ52bはグラフ52aに対応し、グラフ53bはグラフ53aに対応し、グラフ54bはグラフ54aに対応し、グラフ55bはグラフ55aに対応する。
【0057】
後述の作成処理に示すように、無積載の場合において、所定の周波数範囲に含まれる各周波数を中心周波数とするノッチフィルタ23を駆動回路9bに適用したゲイン余裕をシミュレーションで演算する。例えば、所定の周波数範囲が300から900Hzである場合、まず300Hzを中心周波数とし、異なる深さを有する複数のノッチフィルタ23を適用し、各ノッチフィルタ23を適用した場合のゲイン余裕を求める。次に、中心周波数を変更し、例えば310Hzを中心周波数とし、異なる深さを有する複数のノッチフィルタ23を適用し、各ノッチフィルタ23を適用した場合のゲイン余裕を求める。このようにして、中心周波数を900Hzになるまで変更し、ゲイン余裕を求める。例えば図6に示すように、各中心周波数について、ゲイン余裕G1~G5を求める。後述の作成処理に示すように、ゲイン余裕等を使用して、点群が記憶される。
【0058】
図7は、各ゲイン余裕と、共振周波数と、ノッチフィルタの深さとの関係を示すマップの作成処理を説明するフローチャート、図8は、各ゲイン余裕と、共振周波数と、ノッチフィルタの深さとの関係を示すマップの一例である。各ゲイン余裕と、共振周波数と、ノッチフィルタの深さとの関係を示すマップは予め作成される。
【0059】
マップは、例えば以下のようにして作成される。ここでは、マップの作成処理を行うコンピュータプログラムに基づいて、作成装置がマップの作成を実行する場合について説明する。作成装置は制御部及び記憶部を有する。制御部はプロセッサまたはロジック回路等を備える。記憶部は書き換え可能である。記憶部は、パラメータとして、ゲイン余裕低下許容量gmd、ノッチフィルタ23の中心周波数f、ノッチフィルタ23の深さdを予め記憶し、ノッチフィルタ23適用後のゲイン余裕の低下量gm1n を予め記憶し、所定値β、γ、δ、最小周波数fmin 、最大周波数fmax 、最大深さdmax 最大ゲイン余裕低下量gmax を予め記憶する。また後述の作成処理にて作成された点群を記憶するための記憶領域を示すパラメータとして、マップdmap (f、gmd)を予め記憶する。
【0060】
まず制御部は、無積載の場合、即ち第一積載条件を満たす場合の周波数特性からノッチフィルタ23適用前のゲイン余裕gm1を求める(S11)。制御部は、ゲイン余裕低下許容量gmdに初期値(例えば0.5[dB])を記憶し(S12)、中心周波数fに初期値(最小周波数fmin 、例えば300Hz)を記憶し(S13)、深さdに初期値(例えば-2.5[dB])を記憶する(S14)。
【0061】
制御部は、中心周波数f、深さdのノッチフィルタ23の周波数特性を演算して、無積載の場合における周波数特性に加算し、ノッチフィルタ23を適用した周波数特性を演算する(S15)。制御部は、ノッチフィルタ23を適用した周波数特性のゲイン余裕gmnを求める(S16)。制御部は、ノッチフィルタ23適用後のゲイン余裕の低下量gm1n を求める。具体的には、gm1-gmnを演算する(S17)。
【0062】
制御部は、ノッチフィルタ23適用後のゲイン余裕の低下量gm1n が、ゲイン余裕低下許容量gmdを超過したか否か判定する(S18)。gm1n がgmdを超過している場合(S18:YES)、制御部は深さdに所定値βを加算する(S19)。βは、例えば2.5[dB]である。制御部は深さdを、中心周波数f及びゲイン余裕低下許容量gmdにおける最適な深さとしてマップdmap (f、gmd)に記憶する(S20)。
【0063】
制御部は、中心周波数fに所定値γを加算し、深さdに初期値(例えば-2.5[dB])を記憶する(S21)。所定値γは、例えば10[Hz]である。制御部は、中心周波数fが最大周波数fmax を超過したか否か判定する(S22)。最大周波数fmax は、例えば所定の周波数範囲の最大値である。前記最大値は例えば900[Hz]である。中心周波数fが最大周波数fmax を超過していない場合(S22:NO)、制御部はステップS15に処理を戻す。
【0064】
中心周波数fが最大周波数fmax を超過している場合(S22:YES)、制御部はゲイン余裕低下許容量gmdに所定値δを加算し、中心周波数fに最小周波数fmin を記憶する(S23)。所定値δは例えば0.5[dB]であり、最小周波数fmin は、例えば所定の周波数範囲の最小値である。前記最小値は例えば300[Hz]である。制御部は、ゲイン余裕低下許容量gmdが、最大ゲイン余裕低下量gmax を超過しているか否か判定する(S24)。最大ゲイン余裕低下量gmax は、例えば8.0[dB]である。ゲイン余裕低下許容量gmdが最大ゲイン余裕低下量gmax を超過していない場合(S24:NO)、制御部は処理をステップS15に戻す。ゲイン余裕低下許容量gmdが最大ゲイン余裕低下量gmax を超過している場合(S24:YES)、制御部は処理を終了する。
【0065】
ステップS18において、gm1n がgmdを超過していない場合(S18:NO)、制御部は、深さdから所定値βを減算する(S25)。即ち、深さdをより深くする。制御部は、深さdが最大深さdmax を超過したか否か判定する(S26)。最大深さdmax は例えば37.5[dB]である。深さdが最大深さdmax を超過した場合(S26:YES)、制御部は、処理をステップS19に進める。深さdが最大深さdmax を超過していない場合(S26:NO)、制御部は、処理をステップS15に戻す。
【0066】
上述の作成処理において、ノッチフィルタ23の深さdは、例えば、初期値の-2.5[dB]から最大深さdmax の-37.5[dB]まで2.5[dB]刻みで設定可能である。例えばステップS19、ステップS21及びステップS25において、ノッチフィルタ23の深さdは2.5[dB]刻みで変更される。またノッチフィルタ23の中心周波数fは、例えば最小周波数fmin の300[Hz]から最大周波数fmax の900[Hz]まで10[Hz]刻みで設定可能である。例えば、ステップS21において、ノッチフィルタ23の中心周波数fは10[Hz]刻みで変更される。またゲイン余裕低下許容量gmdは、初期値の0.5[dB]から最大ゲイン余裕低下量gmax の8.0[dB]まで0.5[dB]刻みで設定可能である。例えばステップS23において、最大ゲイン余裕低下量gmax は0.5[dB]刻みで変更される。上述の作成処理によって、マップdmap (f、gmd)に記憶された点群が図8の点群に相当する。
【0067】
作成したマップに基づいて、即ち、各ゲイン余裕と、共振周波数(中心周波数)と、ノッチフィルタの深さとの関係に基づいて、深さ計算関数d(f,g)が作成される。深さ計算関数d(f,g)は例えば以下の式(1)~(3)で表される。
【0068】
d=-10a ×(f-fb )+b・・・・・(1)
a=a3 3 +a2 2 +a1 1 +a0 ・・(2)
b=b3 3 +b2 2 +b1 1 +b0 ・・(3)
ここで、dはノッチフィルタ23の深さ、fは共振周波数、gはゲイン余裕、fb は基準周波数(例えば、所定の周波数範囲における最小周波数fmin )、an 及びbn は3次関数の係数を示す。an 及びbn は予め定めてある。図8の破線で示したグラフ51c~58cは深さ計算関数d(f,g)を視覚的に表す。深さ計算関数d(f,g)は3次関数に限定されず、2次以下の関数または4次以上の関数でもよい。深さ計算関数d(f,g)は、計算量及び要求される精度等に基づいて決定すればよい。
【0069】
推定した共振周波数fm 及びゲイン余裕低下許容量gm を深さ計算関数d(f,g)のf,gに適用し、ノッチフィルタ23の深さd、即ち適切なノッチフィルタ23の深さを求める。例えば、制御部4aは、共振周波数fm 及び深さ推奨値を表示部29に表示する。作業者は表示部29を視認し、操作部20を操作して、共振周波数fm 及び深さ推奨値を入力し、適切なノッチフィルタ23の深さを設定することができる。
【0070】
ノッチフィルタ23の深さを求めない場合、深さを決定する為に周波数解析用の測定器、例えば周波数アナライザを使用し、治具12を積載した状態の周波数特性を取得するか、または過去の事例から平均的な深さのノッチフィルタ23を設定しておき、徐々に深くして発振が収まる点を探索する等の対応が必要となる。このような対応をした場合、時間及び費用が嵩み、また熟練した作業者が必要である。実施の形態によれば、このような時間及び費用を削減し、熟練した作業者が不要となる。また本実施の形態では、ノッチフィルタ23の深さを、ゲイン余裕低下許容量gm をパラメータとすることで、モータのフィードバックシステムの安定性を確保して決めている。そのため、必要以上に強い補償にしてモータのフィードバックシステムを不安定にすることを抑制しつつ、最大の補償量が得られるノッチフィルタを選択できるため、共振の抑制を容易にできる。
【0071】
なお深さ計算関数d(f,g)に代えて、マップを補助記憶部4cに記憶し、マップに基づいてノッチフィルタ23の深さを求めてもよい。
【0072】
なおY軸モータ10aについても、X軸モータ9aの場合と同様に、共振周波数及びノッチフィルタの深さを演算してもよい。なおZ軸モータ5a、主軸モータ6又はマガジンモータ7aについて、共振周波数及びノッチフィルタの深さを演算する構成を設けてもよい。即ち、共振周波数及びノッチフィルタの深さを演算する移動対象はテーブル9に限らず、主軸ヘッドまたはマガジンモータ7aを対象にしてもよい。また本発明は、X軸またはY軸方向に平行移動するテーブルを駆動するモータのみならず、X軸に平行な軸であるA軸回りに回転するテーブル、Y軸と平行な軸であるB軸回りに回転するテーブル、Z軸に平行な軸であるC軸回りに回転するテーブルを駆動するモータにも適応可能である。
【0073】
実施の形態において、制御装置4は駆動回路及び演算回路を含まないが、制御装置4は駆動回路及び演算回路を含んでもよい。
【0074】
実施の形態に係る制御装置4にあっては、第二積載条件を満たす場合に、第一積載条件におけるゲイン余裕gmdと比較した際のゲイン余裕増加量gmeを推定する。推定したゲイン余裕増加量gmeはノッチフィルタ23の深さの演算に使用される。また第一積載条件を満たす場合における予め定めたゲイン余裕gmdと、ゲイン余裕増加量gmeとを加算する。加算結果は、ノッチフィルタの深さの演算に使用される。また共振周波数fm と、加算結果gm とに基づいて、ノッチフィルタ23の深さを演算する。
【0075】
また共振周波数の推定中に発振しないように、増幅器22aの増幅率を変更する。また共振周波数の推定中に発振していないと判定した場合に、ノッチフィルタ23の深さを演算する。また共振周波数の推定中に発振したか否かの判定を実現する。
【0076】
なおコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトに配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0077】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 工作機械
4 制御装置
4a 制御部
9a X軸モータ
10a Y軸モータ
21 位置制御部
22 速度制御部
22a 増幅器
23 ノッチフィルタ
24 トルク制御部
26 生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8