(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001462
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】着色用組成物、着色方法及び顔料分散液
(51)【国際特許分類】
C09D 11/326 20140101AFI20231227BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231227BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231227BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20231227BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231227BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231227BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231227BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231227BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20231227BHJP
【FI】
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
C09D11/037
C09D5/02
C09D7/65
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100135
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 敬
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光伸
(72)【発明者】
【氏名】塚田 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056FC02
2H186AA18
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA06
2H186FB10
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4J038DF012
4J038HA066
4J038JA25
4J038JB02
4J038JC26
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA20
4J038MA07
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA04
4J038NA19
4J039BA32
4J039BC07
4J039BC12
4J039BC29
4J039BC33
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA33
4J039EA44
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】金属顔料の耐水性及び記録物の金属光沢感に優れる着色用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る着色用組成物は、金属顔料と、分散剤と、を含有し、前記金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、前記表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、前記分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料と、分散剤と、を含有し、
前記金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、
前記表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、
前記分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下である、水系の着色用組成物。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【請求項2】
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し1~10質量%である、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、下記式(3)で示される化合物である、請求項1に記載の着色用組成物。
【化1】
(式中、R
3は水素原子または炭素数が4以下のアルキル基。R
4は水素原子または炭素数が3以下のアルキル基であって、式中に複数種を含んでもよく、複数種のオキシアルキレンユニットの並び順は問わない。Xは10以上の整数。)
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、下記式(4)で示される化合物である、請求項1に記載の着色用組成物。
【化2】
(式中、X1、X2は独立して1以上の整数であり、X1+X2は10以上の整数。式中、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの順番は問わない。)
【請求項5】
前記金属粒子は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項6】
前記金属粒子は鱗片状である、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項7】
前記金属顔料の体積平均粒子径D50は3~9μmである、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項8】
前記金属顔料の体積平均粒子径D50は1μm以下である、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(1)中のR1又は前記一般式(2)中のR2が、炭素数15~30の炭化水素基である、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項10】
前記着色用組成物は、塗料組成物である、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項11】
有機溶剤を含有する、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項12】
芳香族の一価アルコール、炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールのいずれかの有機溶剤を含有する、請求項1に記載の着色用組成物。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を備える、着色方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の着色用組成物の調製に用いる顔料分散液であって、
前記金属顔料と、前記分散剤と、を含有し、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下である、水系の顔料分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色用組成物、着色方法及び顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属光沢感を有する着色体を製造するために用いられる、アルミニウムなどの金属顔料を含有する着色用組成物が開発されている。また、近年は環境面及び取扱いの容易さなどの観点から、組成物の開発において有機溶媒を主溶媒とする非水系組成物よりも水を主溶媒とする水系組成物が志向されている。例えば、特許文献1には、フッ素系化合物によって表面処理されたアルミニウム顔料を含む水系組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属顔料の耐水性及び記録物の金属光沢感の点で未だ不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る着色用組成物の一態様は、
金属顔料と、分散剤と、を含有し、
前記金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、
前記表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、
前記分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【0006】
本発明に係る着色方法の一態様は、
上記一態様の着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を備えるものである。
【0007】
本発明に係る顔料分散液の一態様は、
上記一態様の着色用組成物の調製に用いる顔料分散液であって、
前記金属顔料と、前記分散剤と、を含有し、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0009】
1.着色用組成物
本発明の一実施形態に係る着色用組成物は、金属顔料と、分散剤と、を含有し、
前記金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、
前記表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、
前記分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【0010】
従来、アルミなどの金属顔料において、耐水性やリーフィング性(金属顔料が印刷層の外表面付近に好適に配列する性質)などを得るために、フッ素系の表面処理剤を用いた表面処理が行われている。しかしながら、このようなフッ素系の表面処理剤で表面処理された金属顔料は、耐水性、分散安定性、及びこれらにも関係する記録物の金属光沢感の点でいまだ不十分であった。特に、水系の組成物においては、水が多量に存在するため金属顔料(特にアルミ顔料)が水によって酸化され水素が発生しやすい。これは、記録物の金属光沢感や水系媒体中での分散安定性が劣る一因となり得る。また、フッ素系の表面処理剤により表面処理された金属顔料は疎水性が高いため、水中で凝集しやすく、凝集した粒子がほぐれにくい。それゆえ、粒子径が大きい金属顔料を用いた組成物において、その保管中に金属顔料が沈降した際、容器を振るなどしても沈降がほぐれず再分散性に劣ることがある。
【0011】
本出願人が検討した結果、金属顔料の表面処理剤として、特定の、リン酸アルキルエステルや、ホスホン酸アルキルを用いることで、優れた耐水性が得られることが分かった。また、水系媒体中での分散安定性や沈降した粒子の再分散性も良好であった。しかしながら、上記表面処理剤を用いても、水系媒体中で金属顔料が凝集してしまい、記録物の金属光沢感がやや劣る傾向があった。
【0012】
そこで、さらに詳細に検討した結果、金属顔料の分散剤としてポリオキシアルキレンアミン系化合物を用いることで、分散安定性がより向上し、特に優れた記録物の金属光沢感が得られた。
【0013】
本発明において「着色用組成物」とは、被着色体に付着(コーティング)させ、被着色体に金属光沢色を着色するために用いる組成物である。限られるものではないが、着色用組成物としては、例えば、インク組成物、塗料組成物などが挙げられる。なお、インク組成物は、インクジェット法により吐出されるインクジェットインク組成物であることが好ましい。また、塗料組成物は、インク組成物とは異なるものであり、インクジェット法は適用されない。
【0014】
以下、本実施形態に係る着色用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0015】
1.1 金属顔料
本実施形態に係る着色用組成物は、金属顔料を含有する。金属顔料は、後述する表面処理剤により表面が処理された金属粒子である。より具体的には、金属顔料は、表面処理剤のリン含有酸基の部分が金属粒子表面に対して化学結合されているものと推測される。このとき、表面処理剤そのものが、水素結合や分子間力等により金属粒子表面に結合するものとは限らず、表面処理剤の残基を有する金属粒子であり得る。すなわち、金属顔料においては、金属粒子の表面に存在し得る水酸基が表面処理剤のリン含有酸基の部分と反応することにより、金属粒子と表面処理剤とが共有結合により結合しているものと考えられる。または、表面処理剤は、物理吸着などにより金属粒子の表面に付着していても良い。このようにして表面処理剤は、金属粒子に、結合や物理吸着などにより、付着していると考えられる。
【0016】
金属顔料の含有量は、特に制限されないが、着色用組成物の総質量に対して、0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.1~5.0質量%であることがさらに好ましく、0.3~3.0質量%であることがよりさらに好ましく、0.5~2.0質量%であることが特に好ましく、0.7~1.5質量%であることがより特に好ましい。金属顔料の含有量が上記範囲内であると、着色用組成物の分散安定性がより向上し、光沢もより良好となる傾向にある。
【0017】
1.1.1 金属粒子
金属粒子は、外観上視認される部位の少なくとも一部が金属材料で構成され、例えば、全体あるいは外表面付近が金属材料で構成される。金属粒子は、着色用組成物を用いて製造される着色物において、金属光沢を付与する機能を有する。
【0018】
〔構成材料〕
金属粒子は、少なくとも、表面付近を含む領域が金属材料で構成されたものであればよい。例えば、金属粒子全体が金属材料で構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成された基部と、当該基部を被覆する金属材料で構成された被膜とを有するものであってもよい。また、金属粒子は、その表面に不働態膜のような酸化被膜等が形成されていてもよい。
【0019】
金属粒子を構成する金属材料としては、単体としての金属や各種合金等を用いることができ、卑金属を用いるものであることがより好ましい。金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、鉄、銅、及びこれらの金属を少なくとも1つ以上有する合金等が挙げられる。
【0020】
なお、「卑金属」とは、イオン化傾向が水素よりも大きい金属であればよく、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄、亜鉛、鉛、銅、ニッケル、コバルト、クロム等の金属の単体の他、これらの合金も含まれる概念である。
【0021】
上記金属材料の中でも、金属粒子は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであることが好ましい。かかる金属材料は、比重が比較的小さいため、着色用組成物中での分散安定性がより良好となる傾向にある。また、かかる金属材料は光沢性を確保する観点及びコストの観点から好ましいものであるが、水分の存在により酸化され、光沢性が低下すると共に、金属粒子同士が凝集しやすくなることがある。これに対して、後述する表面処理剤で表面処理された金属粒子であれば、光沢性や分散性が良好となり、かかる金属材料の好ましい特性を享受可能である。
【0022】
〔形状〕
金属粒子は、その形状は特に限定されないが、例えば、鱗片状、球状、紡錘形状、針状が挙げられる。これらの中でも、金属粒子は鱗片状であることが好ましい。金属粒子が鱗片状であることにより、着色用組成物が付着される被着色体上で、主面が被着色体の表面形状に沿うように金属顔料を配置することができ、金属顔料が本来有する光沢性等をより効果的に発現させることができる傾向にある。
【0023】
本発明において「鱗片状」とは、板状であり、例えば、所定の角度から観察した際、例えば、平面視した際の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状である。
特に、投影面積が最大となる方向から観察した際、すなわち、平面視した際の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率S1/S0が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上であり、よりさらに好ましくは10以上であり、特に好ましくは20以上であり、より特に好ましくは30以上である。S1/S0の上限は、特に限定されないが、好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは100以下であり、特に好ましくは80以下である。一方、300~700が好ましく、400~600がより好ましい。
なお、鱗片状には、平板状、湾曲板状等の形状も含まれる。
【0024】
上記比率S1/S0の値は、例えば、任意の50個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。観察は、例えば電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて行うことができる。または、後述する金属顔料の体積平均粒子径D50と、金属顔料の平均厚みを用い、単位をあわせたうえで、体積平均粒子径D50/平均厚みとし、これを上記範囲としてもよい。
【0025】
金属粒子における好ましい体積平均粒子径D50と平均厚みは、後述する金属顔料における体積平均粒子径D50と平均厚みと同様にできる。また、好ましい測定方法も同様とできる。
【0026】
〔製造方法〕
金属粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、気相成膜法により金属からなる膜を形成し、その後、当該膜を粉砕することにより得られたものであるのが好ましい。当該方法を用いることにより、比較的薄い金属粒子であっても好適に製造することができ、また各金属粒子間での特性のばらつきを抑制することができる。
【0027】
このような方法を用いて金属粒子を製造する場合、例えば、基材上に、金属からなる膜の形成を行うことが好ましい。基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム等を用いることができる。また、基材は、成膜面に離型剤層を有するものであってもよい。
【0028】
また、粉砕は、液体中において、膜に超音波振動を付与することにより行われることが好ましい。これにより、所望の粒子径を有する金属粒子が容易に得られ、各金属粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を低減できる傾向にある。
【0029】
また、上記のような方法で、粉砕を行う場合、液体としては、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物や、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリル等の極性化合物を好適に用いることができる。このような液体を用いることにより、金属粒子の酸化等を低減しつつ、金属粒子の生産性を特に優れたものとできる。また、各金属粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を低減できる傾向にある。
【0030】
1.1.2 表面処理剤
金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、該表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物である。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【0031】
1.1.2.1 表面処理剤の構造
上記式(1)で表される化合物は、ホスホン酸が有する水素原子がR1基で置換された化合物である。このような化合物は、R1基部位による立体障害が比較的小さいため、金属粒子表面に均一に配置されやすく、耐水性等をより良好にできる傾向にある。
【0032】
上記式(2)で表される化合物は、リン酸が有する3個の水酸基の1個又は2個がR2基でエステル化された化合物である。上記式(2)中のaが1である場合、すなわちリン酸が有する3個の水酸基のうち1個がR2基でエステル化される場合、R2基部位による立体障害がより小さいものとなり、金属粒子表面に均一に配置されやすく、金属顔料の分散安定性や光沢をより良好にできる傾向にある。上記式(2)中のaが2である場合、すなわちリン酸が有する3個の水酸基のうち2個がR2基でエステル化される場合、R2基部位による立体障害がより大きいものとなり、金属粒子表面に水を近づき難くさせる効果が高まり、金属顔料をより分散性や耐水性に優れたものとできる傾向がある。上記式(2)で表される化合物により表面処理を行う場合には、上記式(2)で表される化合物のうちaが2で表される化合物を含むことが好ましい。
【0033】
上記式中、R1及びR2は、炭素数が13以上の炭素骨格を有する炭化水素基であり、これは、13個以上の炭素原子が連続して結合した骨格を有する炭化水素基である。上記式(1)においては、R1の炭素数13以上の炭素骨格の何れかの炭素原子がPのリン原子に直接結合している。上記式(2)においては、R2の炭素数13以上の炭素骨格の何れかの炭素原子が(R2-O-)のOの酸素原子に直接結合しており、該酸素原子がPのリン原子に直接結合している。すなわち、Pに結合するR1の位置、及び、Oに結合するR2の位置は特に限定されるものではない。
【0034】
炭素数が13以上の炭素骨格を有する炭化水素基としては、例えば、炭素間に2重結合、3重合結合を有さない飽和炭化水素基や、炭素間に2重結合又は3重合結合を有する不飽和炭化水素基などが挙げられる。R1及びR2の炭化水素基は、炭素骨格が芳香環構造を有する芳香族炭化水素基、鎖状または環状の脂肪族炭化水素基などであってもよい。特に鎖状の脂肪族炭化水素基が、分散安定性などがより優れ好ましい。鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖型でも直鎖型でもよく、分散安定性、吐出安定性、光沢などがより優れる点で、直鎖型が好ましい。
【0035】
上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)中のR1又は上記一般式(2)中のR2が、独立して、炭素数13~35の炭化水素基であることが好ましく、炭素数15~30の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数15~26の炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数15~22の炭化水素基であることが特に好ましく、炭素数16~20の炭化水素基であることがより特に好ましく、炭素数18の炭化水素基であることが殊更に好ましい。R1、R2の炭素数が上記範囲内であると、分散性、光沢及び耐水性により優れる傾向にある。
【0036】
上記一般式中、R1及びR2は、置換基で置換されていてもよい炭化水素基である。すなわち、R1及びR2は、炭素原子と水素原子を含み、炭素原子と水素原子の間の結合を少なくとも有し、未置換水素原子を1つ以上有するものであればよい。
【0037】
R1及びR2が置換基を有しない場合、R1及びR2は炭素原子と水素原子からなる炭化水素基である。例えば、R1及びR2が鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0038】
R1及びR2の炭化水素基が有する水素原子の一部が置換基で置換されている場合、置換基の数は、R1及びR2が置換基を有さない場合の炭化水素基の水素原子の数の50%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また置換基の数は、5個以下が好ましく、3個以下がより好ましく、2個以下がさらに好ましく、1個以下が特に好ましい。また置換基の数は0個以上であり、置換基で置換されている場合の置換基の数の下限は1個以上である。置換基は、式中のリン原子から見て最も離れた位置にある炭素原子に設けられていることが、分散安定性がより優れる傾向にあり好ましい。
【0039】
置換基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシアルキレン含有基などが挙げられる。これらのうち、オキシアルキレン含有基は、オキシアルキレン構造を有する基であって、オキシアルキレン構造はアルキレンオキシド構造ともいう。オキシアルキレン含有基は、アルキレンオキシド単位を1個以上有しており、2個以上有していても良い。特に、複数のアルキレンオキシド単位を有しており、これらが繰り返されている構造を有するものであってもよい。アルキレンオキシド単位の繰り返し数は、10以下であるのが好ましく、4以下であるのがより好ましい。下限は1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。アルキレンオキシド単位におけるアルキレンの炭素数は1以上4以下であるのが好ましい。
なお、R1及びR2は、置換基で置換されていない無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ドデシルホスホン酸(ラウリルホスホン酸)、テトラデシルホスホン酸(ミリスチルホスホン酸)、ヘキサデシルホスホン酸(セチルホスホン酸)、オクタデシルホスホン酸(ステアリルホスホン酸)等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上であることが好ましい。より好ましくは、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸から選ばれる1種以上であり、オクタデシルホスホン酸であることがさらに好ましい。
【0041】
上記一般式(2)で表され、aが1である場合の化合物としては、例えば、リン酸モノオクチルエステル、リン酸モノラウリルエステル、リン酸モノイソトリデシルエステル、リン酸モノステアリルエステルが挙げられ、これらから選ばれる1種以上であることが好ましい。より好ましくは、リン酸モノイソトリデシルエステル、リン酸モノステアリルエステルから選ばれる1種以上であり、リン酸モノステアリルエステルであることがさらに好ましい。
上記一般式(2)で表され、aが2である場合の化合物としては、例えば、リン酸ジオクチルエステル、リン酸ジラウリルエステル、リン酸ジイソトリデシルエステル、リン酸ジステアリルエステルが挙げられ、これらから選ばれる1種以上であることが好ましい。より好ましくは、リン酸ジイソトリデシルエステル、リン酸ジステアリルエステルから選ばれる1種以上であり、リン酸ジステアリルエステルであることがさらに好ましい。
【0042】
1.1.2.2 表面処理剤の含有量
本実施形態に係る着色用組成物における表面処理剤の含有量は、金属粒子の総質量に対し25~40質量%である。
【0043】
かかる含有量の下限値は、26質量%以上が好ましく、27質量%以上がより好ましく、28質量%以上がさらに好ましく、29質量%以上がよりさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。表面処理剤の含有量が金属粒子の総質量に対し25質量%以上であると、表面処理剤による処理を金属顔料に十分施すことができるため、耐水性を優れたものとできる。
【0044】
かかる含有量の上限値は、38質量%以下が好ましく、36質量%以下がより好ましく、34質量%以下がよりさらに好ましく、32質量%以下が特に好ましい。表面処理剤の含有量が金属粒子の総質量に対し40質量%以下であると、金属顔料の疎水性を高め過ぎないため、金属顔料の凝集が抑制され、金属光沢性を優れたものとできる。加えて、分散性も良好とできる傾向にある。
【0045】
なお、同様の観点から、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の含有量は、着色用組成物100質量%に対し0.375~0.600質量%であることが好ましく、0.400~0.500質量%であることがより好ましく、0.420~0.470質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
なお、表面処理剤の上記含有量は、金属粒子の表面に付着している一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の量ともいえる。
【0047】
本実施形態に係る着色用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物以外の表面処理剤を含むものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、フッ素系化合物が挙げられる。フッ素系化合物としては、フッ素と、リン、硫黄、窒素から選ばれる1種以上と、を構成元素として含む化合物を好ましく用いることができ、具体的にはフッ素系ホスホン酸、フッ素系カルボン酸、フッ素系スルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0048】
表面処理剤による金属粒子への表面処理は、例えば、気相成膜法により形成した金属製の膜を液体中で粉砕して金属粒子を形成する際に、当該液体中に表面処理剤を含ませておくことにより行うものであってもよい。
【0049】
1.1.3 粒子径及び厚み
金属顔料の体積平均粒子径D50は、3~9μmであることが好ましい。この場合における下限は、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、6μm以上であることが特に好ましい。また、この場合における上限は、8.5μm以下であることがより好ましく、8.0μm以下であることがさらに好ましく、7.5μm以下であることがよりさらに好ましく、7.0μm以下であることが特に好ましい。
【0050】
金属顔料の体積平均粒子径D50が上記範囲内である着色用組成物は、塗料組成物として好適に用いられ、この場合本発明の優れた効果をより享受でき好ましい。従来、粒子径が大きい場合には金属顔料が沈降しやすく、初期分散は優れていても、沈降した粒子がほぐれにくく再分散性に劣る課題があった。これに対し、本実施形態に係る着色用組成物によれば、粒子径が大きく沈降がみられる、体積平均粒子径D50が上記範囲内にある金属顔料を用いる場合であっても、容器を振ることでほぐすことができ、分散性(再分散性)に優れる傾向にある。加えて、粒子径が大きいことにより、金属顔料の比表面積が小さく耐水性により優れ、また金属光沢感により優れる傾向にある。なお、フッ素系やシラン系化合物の表面処理剤は疎水性が高く粒子が水中で凝集しやすいため、沈降し凝集した粒子は容器を振ってもほぐすことができず、良好な再分散性を得ることができない。
【0051】
一方で、金属顔料の体積平均粒子径D50は、1μm以下であることが好ましい。この場合における上限は、0.80μm以下であることがより好ましく、0.70μm以下であることがさらに好ましく、0.60μm以下であることが特に好ましく、0.50μm以下であることがより特に好ましい。この場合における下限は、特に制限されないが、0.10μm以上であることが好ましく、0.20μm以上であることがより好ましく、0.30μm以上であることがさらに好ましい。金属顔料の体積平均粒子径D50が上記範囲である着色用組成物は、インクジェットインク組成物として好適に用いられ、インクジェット吐出安定性に優れる傾向にある。加えて、金属顔料の比表面積が大きい場合には水による酸化を受けやすいため耐水性の課題がより生ずるが、本実施形態に係る着色用組成物においては金属顔料の粒子径が上記範囲であっても、良好な耐水性を得ることができる傾向にある。さらに、金属顔料の沈降が生じ難いため、分散性に優れる傾向にある。
【0052】
なお、「体積平均粒子径D50」とは、着色用組成物をレーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置にて測定した体積分布のメジアン径のことを指し、多数個の測定結果を大きさ毎の存在比率の累積として表した場合に、累積でちょうど中央値の50%を示す粒子のサイズである。なお、金属粒子が鱗片状である場合、体積平均粒子径D50は、金属粒子を球状換算した際の形状、大きさに基づいて求められるものとする。
【0053】
金属顔料の平均厚みは、5~90nmであることが好ましく、5~70nmであることがより好ましく、5~50nmであることがさらに好ましく、5~30nmであることがよりさらに好ましく、10~20nmであることが特に好ましい。金属顔料の平均厚みが上記範囲であると、リーフィング性がより向上し、記録物の金属光沢感により優れる傾向にある。
【0054】
なお、金属顔料の平均厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。限るものではないが、例えば、NanoNaviE-Sweep(SIIナノテクノロジー社製)を用いた原子間力顕微鏡法により測定することができる。例えば、任意の50個の金属顔料で測定を行い平均値とする。すなわち、平均厚みは算術平均厚みであることが好ましい。
【0055】
1.2 分散剤
本実施形態に係る着色用組成物は、分散剤を含有し、該分散剤はポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、該分散剤の含有量は金属粒子の総質量に対し10質量%以下である。
【0056】
分散剤の含有量の上限値は、金属粒子の総質量に対し、9.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、7.0質量%以下であることがさらに好ましく、6.0質量%以下であることが特に好ましい。分散剤の含有量が金属粒子の総質量に対し10質量%以下であると、金属粒子に対する表面処理剤による表面処理が分散剤の存在によって阻害されることを抑制でき、表面処理を適切に施すことができるため、優れた耐水性が得られる。
【0057】
分散剤の含有量の下限値は、分散剤を含有するものであれば特に制限されないが、金属粒子の総質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、3.0質量%以上であることがよりさらに好ましく、4.0質量%以上であることが特に好ましい。分散剤の含有量が金属粒子の総質量に対し1.0質量%以上であると、金属粒子が良好に分散した状態で表面処理が行われるため、粒子全体に均一に表面処理を施すことができ、耐水性や分散性が向上する傾向にある。また、分散剤自体が有する分散安定性の機能を良好に発揮できる傾向にある。
【0058】
以上より、分散剤の含有量は、金属粒子の総質量に対し1~10質量%であると、良好な耐水性や分散性を得ることができる傾向にあり好ましい。
【0059】
なお、同様の観点から、分散剤の含有量は着色用組成物100質量%に対し0.015~0.15質量%であることが好ましく、0.030~0.12質量%であることがより好ましく、0.050~0.10質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、分子内にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物であれば、いかなるものであってもよいが、下記式(3)で示される化合物であることが好ましい。なお、下記式(3)で示される化合物は、その塩であってもよい。ポリオキシアルキレンアミン系化合物が下記式(3)で示される化合物であると、耐水性や分散性がより向上する傾向にある。
【0061】
【化1】
(式中、R
3は水素原子または炭素数が4以下のアルキル基。R
4は水素原子または炭素数が3以下のアルキル基であって、式中に複数種を含んでもよく、複数種のオキシアルキレンユニットの並び順は問わない。Xは10以上の整数。)
【0062】
上記式(3)中、R3は、水素原子または炭素数が4以下のアルキル基であればよいが、炭素数が4以下のアルキル基が好ましく、メチル基であるのがより好ましい。R4は、水素原子または炭素数が3以下のアルキル基であればよいが、水素原子、メチル基であるのが好ましい。
【0063】
ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、特に、下記式(4)で示される化合物であることが好ましい。なお、下記式(4)で示される化合物は、その塩であってもよい。ポリオキシアルキレンアミン系化合物が下記式(4)で示される化合物であると、耐水性や分散性がよりさらに向上する傾向にある。
【0064】
【化2】
(式中、X1、X2は独立して1以上の整数であり、X1+X2は10以上の整数。式中、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの順番は問わない。)
【0065】
上記式(4)中、X2に対するX1の比率であるX1/X2の値、すなわち、ポリオキシアルキレンアミン系化合物の分子内におけるオキシプロピレンユニットの物質量に対するオキシエチレンユニットの物質量の比率の下限は、0.05であるのが好ましく、0.15であるのがより好ましく、0.70であるのがさらに好ましい。また、X1/X2の値の上限は、10.00であるのが好ましく、8.00であるのがより好ましく、6.00であるのがさらに好ましい。
【0066】
上記式(4)中、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの順番は問わない。より具体的には、上記式(4)では、連続するオキシエチレンユニットの末端にメチル基が結合しており、連続するオキシプロピレンユニットの末端にアミノ基が結合しているが、連続するオキシプロピレンユニットの末端にメチル基が結合しており、連続するオキシエチレンユニットの末端にアミノ基が結合していてもよい。また、上記式(4)で示される化合物は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0067】
なお、上記式(3)においても、オキシアルキレンユニットが、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットを有する場合、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットに関して、上記と同様とすることが好ましく、例えば、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの比率に関して、上記範囲とすることが好ましい。
【0068】
上記式(4)で示される化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、JEFFAMIN M2070(ハンツマン社製)、GENAMIN(M41/2000)(クラリアント社製)などが挙げられる。
【0069】
ポリオキシアルキレンアミン系化合物の重量平均分子量の下限は、特に限定されないが、400以上であるのが好ましく、500以上であるのがより好ましく、800以上であるのがさらに好ましく、1000以上であるのがもっとも好ましい。また、ポリオキシアルキレンアミン系化合物の重量平均分子量の上限は、特に限定されないが、8000以下であるのが好ましく、5000以下であるのがより好ましく、3000以下であるのがさらに好ましい。
【0070】
ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本実施形態に係る着色用組成物は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物以外の分散剤を含有していてもよい。このような分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。なお、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びそれに対応するメタアクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0072】
1.3 水
本実施形態に係る着色用組成物は、組成物の溶媒成分として少なくとも水を含有する、水系の組成物である。本発明において「水系」とは、組成物に含まれる液媒体成分中、水の含有量が20質量%以上のものをいう。水の含有量は、液媒体成分中、好ましくは30~100質量%であり、より好ましくは40~90質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%である。なお、液媒体とは、水や有機溶剤などの溶媒成分である。
【0073】
水の含有量は、着色用組成物100質量%に対し、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30~99質量%であり、さらにより好ましくは40~90質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%である。
【0074】
水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射又は過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0075】
1.4 有機溶剤
本実施形態に係る着色用組成物は、組成物の溶媒成分として有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤を含有することにより、比較的高い疎水性を有する金属顔料が溶媒に分散されやすくなり、分散性が向上する傾向にある。有機溶剤の含有量は、液媒体成分中、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは15~45質量%であり、さらに好ましくは25~40質量%である。なお、液媒体とは、水や有機溶剤などの溶媒成分である。
【0076】
有機溶剤の含有量は、着色用組成物の総質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上であるのがさらに好ましく、10質量%以上であるのが特に好ましい。さらには20質量%以上が好ましく、30質量%以上であるのがより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、有機溶剤の含有量は、着色用組成物に含む液媒体成分の総質量に対して上記範囲とすることも好ましい。
【0077】
有機溶剤としては、例えば、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、アルコール類、多価アルコール類等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0078】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0079】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0080】
なお、上記のアルキレングリコールは、モノエーテルよりも、ジエーテルのほうが、組成物中に含まれ得る樹脂を溶解又は膨潤させやすい傾向があり、摩擦堅牢性をより向上できる点で好ましい。
【0081】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0082】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0083】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは樹脂の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0084】
アルコール類としては、例えば、アルカンが有する1つの水素原子がヒドロキシル基によって置換された化合物が挙げられる。該アルカンとしては、炭素数10以下のものが好ましく、6以下のものがより好ましく、3以下のものが更に好ましい。アルカンの炭素数は1以上であり、2以上であることが好ましい。アルカンは、直鎖型であってもよく、分枝型であってもよい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール、2-フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノキシプロパノールなどがあげられる。
【0085】
多価アルコール類は、分子中に2個以上の水酸基を有するものである。多価アルコール類は、例えば、アルカンジオール類とポリオール類とに分けることができる。
【0086】
アルカンジオール類とは、例えば、アルカンが2個の水酸基で置換された化合物が挙げられる。アルカンジオール類としては、例えば、エチレングリコール(別名:エタン-1,2-ジオール)、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール(別名:1,3-ブタンジオール)、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができる。
【0087】
ポリオール類としては、例えば、アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物、水酸基を3個以上有する化合物などが挙げられる。
【0088】
アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコールや、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のトリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0089】
水酸基を3個以上有する化合物は、アルカンやポリエーテル構造を骨格とする、3個以上の水酸基を有する化合物である。水酸基を3個以上有する化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレントリオールなどが挙げられる。
【0090】
多価アルコール類の含有量は、着色用組成物の総質量に対して、1~40質量%が好ましく、3~35質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0091】
上記有機溶剤は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0092】
本実施形態に係る着色用組成物は、芳香族の一価アルコール、炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールのいずれかの有機溶剤を含有することが好ましい。このような有機溶剤は、疎水性が高いため、金属粒子表面に処理される表面処理剤との親和性がよい。換言すれば、このような有機溶剤は、疎水性である金属顔料表面と、溶媒成分である水との間をつなぐ機能を有する。これにより、上記有機溶剤を含有することで、分散性がより向上する傾向にある。
【0093】
芳香族の一価アルコールは、芳香族環を有する一価アルコールであり、芳香族環はベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。芳香族の一価アルコールにおいて、水酸基が結合したアルキレン骨格部分の炭素数は1~4が好ましく、1~3がより好ましい。
【0094】
炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールは、炭素数4~10の脂肪族の一価アルコールが好ましく、炭素数4~8の脂肪族の一価アルコールがより好ましい。
【0095】
芳香族の一価アルコール又は炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールの含有量は、着色用組成物の総質量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上であるのがさらに好ましく、3質量%以上であるのが特に好ましい。また、かかる含有量の上限値は、着色用組成物の総質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。また、芳香族の一価アルコール又は炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールの含有量は、着色用組成物に含む液媒体成分の総質量に対して上記範囲とすることも好ましい。
【0096】
1.5 その他の成分
本実施形態に係る着色用組成物は、上述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、レベリング剤、バインダー、重合促進剤、重合禁止剤、光重合開始剤、界面活性剤、浸透促進剤、保湿剤、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤、等が挙げられる。
【0097】
バインダーとしては、樹脂であればよいが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等が好ましく挙げられる。アクリル系樹脂は、アクリルモノマーを少なくとも重合して得た樹脂であり、アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体樹脂でも良い。他のモノマーは例えばビニルモノマーなどがあげられる。
【0098】
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等が好ましく挙げられる。
【0099】
2.着色方法
本発明の一実施形態に係る着色方法は、上述の着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を備えるものである。
【0100】
本実施形態に係る着色方法によれば、上述の着色用組成物を用いるものであるため、優れた金属顔料の耐水性及び記録物の金属光沢感を得ることができる。
【0101】
被着色体の形状は、特に限定されず、シート状、板状、物体状など、いかなるものであってもよい。また、被着色体の材質も任意であり、例えば、紙、布帛、プラスチック材料、金属、ガラス、セラミックス、木材などが挙げられる。なお、被着色体とは、着色を受けるものであればよく、記録媒体に限るものではない。
【0102】
被着色体に付着させる手法も限定されず、例えば、刷毛による塗布、ローラーによる塗布、スプレー塗布、バーコーターによる塗布、インクジェット法による付着等にて行うことができる。着色用組成物の粘度等は、付着させる手法に応じて成分の種類や濃度を変更することにより選択できる。
【0103】
着色方法は、被着色体の前処理工程、乾燥工程等を含んでもよい。このような工程を含むと、被着色体の金属光沢感がより良好となる場合がある。
【0104】
3.顔料分散液
本発明の一実施形態に係る顔料分散液は、上述の着色用組成物の調製に用いる顔料分散液であって、
前記金属顔料と、前記分散剤と、を含有し、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
【0105】
本実施形態に係る顔料分散液によれば、優れた金属顔料の耐水性及び記録物の金属光沢感を得ることができる。
【0106】
本発明において「顔料分散液」とは、着色用組成物の調製に用いる組成物であり、好ましくはインク組成物の調製に用いる組成物である。なお、顔料分散液をそのままで、塗料組成物などの着色用組成物として用いてもよい。なお、顔料分散液における顔料濃度は、着色用組成物における顔料濃度よりも比較的高く、当該顔料分散液を用いて調製した着色用組成物における顔料濃度よりも高い。
【0107】
金属顔料の含有量は、特に制限されないが、顔料分散液の総質量に対して、30質量%以下が好ましく、10~30質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
【0108】
本実施形態に係る顔料分散液に含まれる各成分及びその含有量等は、上述の着色用組成物と同様にしてもよい。
【0109】
4.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0110】
4.1 着色用組成物の調製
20μmのPET基材上にアセトンにより可溶化させた離型樹脂をロールコーターによりコーティングすることで離型層を形成した。離型層付PET基材を、5m/sの速度でアルミニウム真空蒸着機に搬送し、減圧下においてアルミニウム層を15nmの膜厚で形成した。作製したアルミニウム/離型樹脂/PET基材をテトラヒドロフラン槽内に浸漬し、40kHzの超音波を照射することで、アルミニウム顔料をPET基材から剥離し、アルミニウム顔料の剥離液を得た。次いで、遠心分離機にてテトラヒドロフランを除去後、ジエチレングリコールジエチルエーテルを適当量添加してアルミニウム濃度5質量%のアルミニウム粒子懸濁液を得た。
【0111】
アルミニウム粒子懸濁液を、ビーズミルを用いて目的の平均粒子径になるまで攪拌による粉砕を行い、インクジェット可能な粒子径(体積平均粒子径D50=0.5μm以下)のアルミニウム粒子懸濁液を得た。なお、実施例23~28及び比較例13~16では、塗料組成物に適するものとするため、下表5に記載した平均粒子径となるように粉砕した。
【0112】
粉砕工程後に、下表1~5に記載した各例の分散剤を表中の質量比となるように添加し、40kHzの超音波照射のもと55℃1時間熱処理を行うことで、凝集を解して一次粒子までアルミニウム粒子を分散した。
【0113】
一次粒子まで分散したアルミニウム粒子懸濁液に対し、下表1~5に記載した各例の表面処理剤を表中の質量比となるように添加した。その後、40kHz超音波照射下にて55℃3時間熱処理することで、表面処理されたアルミニウム顔料の分散液を得た。
【0114】
得られたアルミニウム顔料分散液に遠心分離を行うことで溶媒を除去し、アルミニウム顔料の含有量が20質量%となるように水を混合して溶媒を水系溶媒に置換し、攪拌して、各例に対応した顔料分散液を得た。この顔料分散液は、着色用組成物の調製に用いる組成物としてもよいし、または、この顔料分散液を、塗料などの着色用組成物として用いてもよい。なお、顔料分散液における金属顔料の含有量は30質量%以下であることが好ましい。
【0115】
なお、表面処理後の表面処理されたアルミニウム顔料の分散液から除去した溶媒を分析したところ、何れの例も表面処理剤は含まれていなかった。このことから、下表1~5中の各例における表面処理剤は、組成物に含まれる金属粒子に付着していると推測する。
【0116】
次に、上記顔料分散液を、下表1~5に記載した組成となるように、水、有機溶剤などを添加し、各実施例及び各比較例に係る着色用組成物を得た。この着色用組成物を後述の評価に用いた。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
上表1~5の記載について説明を補足する。
【0123】
〔金属顔料〕
表中の「D50」とは、体積平均粒子径D50を表し、マイクロトラックMT-3300(マイクロトラック・ベル社製、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置)を用いて測定した。
また、各実施例及び各比較例における金属顔料の平均厚みは15nmであり、NanoNaviE-Sweep(SIIナノテクノロジー社製)を用いた原子間力顕微鏡法により測定を行い、任意の50個の金属顔料で測定を行い平均値して算出した。
【0124】
〔分散剤〕
【化3】
(式中、X1、X2は独立して1以上の整数であり、X1+X2は10以上の整数。式中、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの順番は問わない。)
・「アミン系化合物A1」:ポリオキシアルキレンアミン系化合物、式(4)で示される化合物、X1/X2=3.0、重量平均分子量:2000、「Jeffamine M-2070」ハンツマン社製商品名。
・「アミン系化合物A2」:ポリオキシアルキレンアミン系化合物、式(4)で示される化合物、X1/X2=0.11、重量平均分子量:600。
・「アミン系化合物A3」:ポリオキシアルキレンアミン系化合物、式(4)で示される化合物、X1/X2=6.33、重量平均分子量:1000。
・「アミン系化合物A4」:ポリオキシアルキレンアミン系化合物、式(4)で示される化合物、X1/X2=7.25、重量平均分子量:3000。
なお、アミン系化合物A2~A4は、アミン系化合物A1を基準として、モノマー比率や反応条件を適宜調整することにより得た。
・「AQ-320」:ポリエーテルリン酸系分散剤、「ディスパロンAQ-320」楠本化成社製商品名。
【0125】
〔表面処理剤〕
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
・「リン酸C18」:式(2)で表される化合物、モノ体(aが1)・ジ体(aが2)の1:1混合製品であるSC有機化学社製「Phoslex A-18」を用いた。
・「リン酸ドデシル」:式(2)で表される化合物、モノ体・ジ体の1:1混合製品であるSC有機化学社製「Phoslex A-12」を用いた。
・「リン酸トリデシル」:式(2)で表される化合物、モノ体・ジ体の1:1混合製品であるSC有機化学社製「Phoslex A-13」を用いた。
・「リン酸イソトリデシル」:式(2)で表される化合物。モノ体・ジ体の混合品(城北化学社製「JP-513」)を用いた。
・「リン酸オクタデシル」:式(2)で表される化合物、モノ体・ジ体の1:1混合製品であるSC有機化学社製「Phoslex A-18」を用いた。
・「ホスホン酸オクタデシル」:式(1)で表される化合物、東京化成工業社製「製品コード:O0371」を用いた。
・「リン酸オレイル」:式(2)で表される化合物、モノ体・ジ体の混合製品である東京化成工業社製「製品コード:O0146」を用いた。
・「リン酸テトラコシル」:式(2)で表される化合物。モノ体・ジ体の混合品(城北化学社製「JP-524R」)を用いた。
・「リン酸オクチル」:式(1)または式(2)で表される化合物に該当せず、東京化成工業社製「製品コード:O0380」を用いた。
・「FHP」:式(1)または式(2)で表される化合物に該当せず、2-(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸、ユニマテック社製。
・「オクタデシルトリメトキシシラン」:式(1)または式(2)で表される化合物に該当せず、東京化成工業社製「製品コード:O0256」を用いた。
【0126】
4.2 評価方法
4.2.1 耐水性
各例の着色用組成物を、パックに封入して、70℃の恒温槽に6日放置し、組成物の単位質量あたりの発生ガス量を求め、以下の基準に従い耐水性を評価した。発生ガス量が少ないほど、耐水性に優れていると言える。B以上を良好なレベルとした。
(評価基準)
A:発生ガス量が0.2mL/g未満。
B:発生ガス量が0.2mL/g以上0.4mL/g未満。
C:発生ガス量が0.4mL/g以上1.0mL/g未満。
D:発生ガス量が1.0mL/g以上。
【0127】
4.2.2 光沢
セイコーエプソン社製「SC-S80650」の改造機を用い、各例の記録物を作製した。インクジェットヘッドのノズル列のノズル密度が360npi、360ノズルとした。インクジェットヘッドに各例の着色用組成物を充填した。最適な吐出が行えるようにインクジェットヘッドの駆動波形を最適化した。記録媒体として、ポリ塩化ビニル製のフィルム(Mactac社製、Mactac5829R)を用いた。記録を行う際の、記録パターンにおけるインク付着量は5mg/inch2、記録解像度1440×1440dpiとした。なお、実施例23~28及び比較例13~16では、バーコーターで上記と同じ付着量となるよう付着した。なおこれらの例は塗料として適している。
【0128】
各例の記録物の印刷部について、光沢度計であるMINOLTA MULTI GLOSS 268を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど光沢性に優れていると言える。B以上を良好なレベルとした。
(評価基準)
A:光沢度が400以上。
B:光沢度が350以上400未満。
C:光沢度が300以上350未満。
D:光沢度が300未満。
【0129】
4.2.3 吐出安定
上記光沢評価と同様の方法で、各例の着色用組成物をインクジェット吐出し、10分間の連続吐出後、ノズル検査を行った。以下の基準に従い吐出安定を評価した。
(評価基準)
A:不吐出ノズルなし。
B:不吐出ノズルが1%以下。
C:不吐出ノズルが1%超3%以下。
D:不吐出ノズルが3%超。
【0130】
4.2.4 再分散性
上表5における各例の着色用組成物を、ガラス容器に100ml入れ密封し、室温で2カ月放置した。放置後、容器を20回振ってから、組成物に含まれる金属顔料の体積平均粒子径D50を測定し、放置前と比較し、以下の基準に従い金属顔料の再分散性を評価した。放置前に対する着色用組成物中に含まれる金属顔料の体積平均粒子径D50の比率が小さいほど、金属顔料の再分散性に優れていると言える。放置前を100%とする。なお、金属顔料の平均粒子径が3μm以上の例は、1カ月放置後、金属顔料の沈降がみられたが、これを上記の通り容器を振ることで、金属顔料を再分散させた場合の評価である。また、上表1~4における各例の着色用組成物は、何れも評価はAであった。
(評価基準)
A:放置前に対し110%未満。
B:放置前に対し110%以上150%以下。
C:放置前に対し150%超。
【0131】
4.3 評価結果
評価結果を上表1~5に示す。
【0132】
上表1~5より、金属顔料と、分散剤と、を含有し、金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、表面処理剤は、上記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、表面処理剤の含有量は、金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、分散剤の含有量は、金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである、本発明に係る各実施例の着色用組成物は、いずれも耐水性と金属光沢感が良好であった。
【0133】
比較例1~7、13~15と各実施例の対比より、分散剤の含有量が金属粒子の総質量に対し10質量%でない場合や、表面処理剤の含有量が金属粒子の総質量に対し25~40質量%でない場合には、耐水性や金属光沢感に劣った。
【0134】
比較例8~11、16と各実施例の対比より、表面処理剤が一般式(1)または一般式(2)で表される化合物でない場合には、耐水性や金属光沢感に劣った。
【0135】
比較例12と各実施例の対比より、分散剤がポリオキシアルキレンアミン系化合物でない場合には、耐水性や金属光沢感に劣った。
【0136】
実施例1~9の結果より、分散剤の含有量は少量であっても、耐水性及び金属光沢感が良好であった。
【0137】
実施例15~19の結果より、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)中のR1又は一般式(2)中のR2が、炭素数15~30の炭化水素基のとき、耐水性及び金属光沢感が良好であり、特に炭素数18付近の炭化水素基のとき、耐水性、金属光沢感及び吐出安定に優れていた。
【0138】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0139】
着色用組成物の一態様は、
金属顔料と、分散剤と、を含有し、
前記金属顔料は、表面処理剤により表面が処理された金属粒子であり、
前記表面処理剤は、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であり、
前記分散剤は、ポリオキシアルキレンアミン系化合物であり、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
(R1-)P(O)(OH)2 (1)
(R2-O-)aP(O)(OH)3-a (2)
(式中、R1、R2は独立して、置換基で置換されていてもよい炭素数13以上の炭化水素基。aは1又は2。)
【0140】
上記着色用組成物の一態様において、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し1~10質量%であってもよい。
【0141】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、下記式(3)で示される化合物であってもよい。
【化4】
(式中、R
3は水素原子または炭素数が4以下のアルキル基。R
4は水素原子または炭素数が3以下のアルキル基であって、式中に複数種を含んでもよく、複数種のオキシアルキレンユニットの並び順は問わない。Xは10以上の整数。)
【0142】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記ポリオキシアルキレンアミン系化合物は、下記式(4)で示される化合物であってもよい。
【化5】
(式中、X1、X2は独立して1以上の整数であり、X1+X2は10以上の整数。式中、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットの順番は問わない。)
【0143】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記金属粒子は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであってよい。
【0144】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記金属粒子は鱗片状であってもよい。
【0145】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記金属顔料の体積平均粒子径D50は3~9μmであってもよい。
【0146】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記金属顔料の体積平均粒子径D50は1μm以下であってもよい。
【0147】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(1)中のR1又は前記一般式(2)中のR2が、炭素数15~30の炭化水素基であってもよい。
【0148】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
前記着色用組成物は、塗料組成物であってもよい。
【0149】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
有機溶剤を含有するものであってよい。
【0150】
上記着色用組成物のいずれかの態様において、
芳香族の一価アルコール、炭素数4以上の脂肪族の一価アルコールのいずれかの有機溶剤を含有するものであってよい。
【0151】
着色方法の一態様は、
上記いずれかの態様の着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を備えるものである。
【0152】
顔料分散液の一態様は、
上記いずれかの態様の着色用組成物の調製に用いる顔料分散液であって、
前記金属顔料と、前記分散剤と、を含有し、
前記表面処理剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し25~40質量%であり、
前記分散剤の含有量は、前記金属粒子の総質量に対し10質量%以下であり、水系のものである。
【0153】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。