(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146204
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20241004BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20241004BHJP
A61B 3/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10 100
A61B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058972
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】福地 成樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB02
4C316AB07
4C316AB16
4C316FA07
4C316FA18
4C316FC01
4C316FC02
(57)【要約】
【課題】被検者の姿勢保持の負担を低減できる眼科装置を提供すること。
【解決手段】眼科装置は、被検眼を検査する眼科装置であって、前記被検眼を検査する検査部と、前記検査部を支持する基台と、前記基台に対する前記検査部の位置である検査部位置を変位させる駆動部と、被検者の顔を支持することによって、検査時に前記被検眼の位置を保つ顔支持手段と、前記基台に対する前記顔支持手段の位置である顔支持位置を、第1の顔支持位置と、第1の顔支持位置に対して被検者側に変位された第2の顔支持位置と、の間で変位させる変更手段と、を備え、前記駆動部は、前記検査部位置を、前記第1の顔支持位置において適正作動距離となる第1の検査部位置と、前記第2の顔支持位置において前記適正作動距離となる第2の検査部位置と、の間で前記検査部位置を変位可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する眼科装置であって、
前記被検眼を検査する検査部と、
前記検査部を支持する基台と、
前記基台に対する前記検査部の位置である検査部位置を変位させる駆動部と、
被検者の顔を支持することによって、検査時に前記被検眼の位置を保つ顔支持手段と、
前記基台に対する前記顔支持手段の位置である顔支持位置を、第1の顔支持位置と、第1の顔支持位置に対して被検者側に変位された第2の顔支持位置と、の間で変位させる変更手段と、
を備え、
前記駆動部は、前記検査部位置を、前記第1の顔支持位置において適正作動距離となる第1の検査部位置と、前記第2の顔支持位置において前記適正作動距離となる第2の検査部位置と、の間で前記検査部位置を変位可能であることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記顔支持手段は、被検者の顎を支持する顎台を含み、
前記変更手段は、前記顔支持手段のうち前記顎台およびそれよりも上方にある一部を、前記顔支持手段と前記基台との接続部に対して変位させる、請求項1記載の眼科装置。
【請求項3】
前記変更手段によって前記顔支持位置が変更されたか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記駆動部を制御する制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の眼科装置。
【請求項4】
前記検査部は、被検眼の蛍光造影画像およびOCT画像の少なくともいずれかを撮影する撮影光学系を有する、請求項1から3のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼科装置としては、例えば、レーザ走査検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)、眼底カメラ、眼屈折力測定装置、角膜形状測定装置、角膜内皮細胞撮影装置、眼圧測定装置、またはこれらの複合装置などが知られている。これらの装置は、例えば、筐体に形成される検査窓を介して光源から出射された光を被検眼に投光し、投光された光の反射光に基づいて被検眼の撮影または測定を行う。
【0003】
上記のような眼科装置は、テーブル上に設置される据え置き型が主流である。据え置き型の装置の多くは、被検者の顔を支持するための顔支持部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。検者が装置の前で座った状態で、顔支持部によって被検者の顔が支持されることによって、検査時に被検眼の位置が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、顔支持部に顔を配置する際、被検者の姿勢が、体を前傾させつつ首を反対側に反らせる不自然な姿勢となってしまう場合がある。この姿勢は、腰や首への負担がかかりやすい。検者の下半身をテーブルの下に潜りこませることは、種々の要因によって難しい場合があり、被検者の姿勢は制約されている。例えば、装置サイズ、テーブルの形状、および、テーブルの高さ調整が適切でないこと等が、要因の一例として挙げられる。
【0006】
検査の際に、被検者が上記の不自然な姿勢であることで、検査の進行に悪影響が生じ得る。例えば、固視が安定しにくくなる。また、例えば、長時間の検査においては、こまめに休憩をとる必要が生じ、結果として検査時間が長くなりやすい。また、一般的に、高齢者は身体が硬いので、上記の姿勢をとることが難しく、被検者の補助が必要となる場合がある。
【0007】
本開示は、従来技術の問題点に鑑み、被検者の姿勢保持の負担を低減できる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様にかかる眼科装置は、被検眼を検査する眼科装置であって、前記被検眼を検査する検査部と、前記検査部を支持する基台と、前記基台に対する前記検査部の位置である検査部位置を変位させる駆動部と、被検者の顔を支持することによって、検査時に前記被検眼の位置を保つ顔支持手段と、前記基台に対する前記顔支持手段の位置である顔支持位置を、第1の顔支持位置と、第1の顔支持位置に対して被検者側に変位された第2の顔支持位置と、の間で変位させる変更手段と、を備え、前記駆動部は、前記検査部位置を、前記第1の顔支持位置において適正作動距離となる第1の検査部位置と、前記第2の顔支持位置において前記適正作動距離となる第2の検査部位置と、の間で前記検査部位置を変位可能である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被検者の姿勢保持の負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施例に係る変更部の概略構成を示す図であり、第1の顔支持位置および第1の検査部位置を示している。
【
図4】実施例に係る変更部の概略構成を示す図であり、第2の顔支持位置および第2の検査部位置を示している。
【
図5】変容例に係る変更部の概略構成を示す図であり、第1の顔支持位置および第1の検査部位置を示している。
【
図6】変更部の概略構成を示す図であり、第2の顔支持位置および第2の検査部位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る実施例を図面に基づいて説明する。実施例の眼科装置は、被検眼を検査する。特に断りが無い限り、本実施例における眼科装置は、眼底撮影装置である。一例として、実施例における眼底撮影装置は、OCT装置と、眼底正面画像撮影装置と、の複合装置である。実施例における眼底撮影装置は、眼底画像として、蛍光造影画像を撮影可能である。蛍光造影画像は、造影剤(例えば、インドシアニングリーン、フルオレセイン等)を静注した状態で撮影される。但し、眼科装置は、これに限定されるものではない。眼科装置は、例えば、眼屈折力測定装置、角膜測定装置、角膜内皮細胞撮影装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT、SLO等のいずれかであってもよい。
<装置外観>
図1,2に基づいて、眼科装置の外観を説明する。
図1に示すように、本実施例の眼科装置10は、据え置き型の装置である。眼科装置10は、眼科装置10とは別体のテーブル500の上に設置される。検査は、被検者が椅子600に座った状態で行われる。
【0012】
眼科装置10において、テーブル500に直接置かれる部分を基台20と称する。眼科装置10は、顔支持部40、および、XYZ駆動部30が、基台20によって支持されており、更に、XYZ駆動部30が検査部100を支持している。
【0013】
図2に示すように、眼科装置10は、基台20と、XYZ駆動部30と、顔支持部40と、変更部50と、検査部100と、を少なくとも有している。追加的に、眼科装置10は、表示部95、および操作部96、を備える。
【0014】
基台20は、装置全体を支持する。XYZ駆動部30は、例えば、検査部100を基台20に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。換言すれば、XYZ駆動部30は、基台20に対する検査部100の位置である検査部位置を変位させる。
【0015】
顔支持部40は、例えば、顎台である。顔支持部40は、例えば、額当て41、顎受け42、および基部46などを備える。額当て41には被検者の額が当接される。顎受け42は、被検者の顎を支持する。顎受け42は、顎台駆動部43の駆動によって上下方向に移動されてもよい。基部46は、額当て41、顎受け42を支持する。顔支持部40は、顎受け42に顎が載っているか否かを検知する顎台センサ44を備えてもよい。例えば、顎台センサ44は、例えば、顎受け42が被検者の顎で下方向に押し込まれたことを検知する。顎台センサ44は、例えば、フォトセンサ、磁気センサ、圧力センサ、接触センサなどであってもよい。
【0016】
変更部50は、基台20に対する顔支持部40の位置である顔支持位置を、Z方向(検査部100の作動距離方向)に変位する。変更部50の詳細は後述する。
【0017】
表示部95は、例えば、被検眼の撮影画像または測定結果等を表示させる。表示部95は、例えば、眼科装置10と一体的に設けられてもよいし、眼科装置10とは別に設けられて有線または無線によって接続されてもよい。また、表示部95は、タッチパネルであってもよい。
【0018】
操作部96には、検者による各種操作指示が入力される。操作部96は、入力された操作指示に応じた信号を出力する。操作部96には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、ボタン、タッチパネル等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。なお、表示部95がタッチパネルである場合、表示部95が操作部96として機能してもよい。
<検査部>
検査部100は、被検眼を検査する。検査部100は、例えば、検査に利用される光学系を有している。本実施例において、検査部100は、OCT光学系、および、正面撮影光学系を少なくとも有する。各光学系の詳細については、例えば、本出願人による特開2021-100704号公報および特開2016-059399号公報等を参照されたい。
【0019】
制御部90は、CPU、ROM、RAM等で実現される。制御部90のROM92には、眼科装置10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。
<変更部>
本実施例の変更部50を
図3,
図4に基づいて説明する。本実施例の変更部50は、顔支持部40を前後方向(Z方向)に移動させることによって顔支持位置を変更する。
図3に示すように、変更部50は、例えば、スライド部51とガイド部52を備える。スライド部51は、Z方向にスライド(摺動)する。スライド部51は、例えば、シャフトまたは板部材などである。ガイド部52は、スライド部51をZ方向にスライド可能に保持する。ガイド部52は、例えば、ブッシュまたはガイドレールなどである。
【0020】
例えば、スライド部51の一端は顔支持部40(例えば、基部46)に固定され、他端側がガイド部52の孔に挿入される。ガイド部52は、基台20に固定されている。したがって、スライド部51がガイド部52に挿入された状態でZ方向にスライドされることによって、基台20に対する顔支持部40の位置である顔支持位置が変化する。
図3に示す第1の顔支持位置と、
図4に示す第2の顔支持位置との間で、顔支持部40は移動可能である。
図3および
図4に示すように、第2の顔支持位置は、第1の顔支持位置に対して被検者側に変位されている。
【0021】
検者は、基台20に対して顔支持部40を引き出すことによって、顔支持位置を、被検者の体型および姿勢、足元のスペースの余裕等を考慮して、被検者の姿勢保持の負担が軽減される位置に移動させることができる。すなわち、被検者の体の前傾と首の反り返りを抑制できる。
【0022】
本実施例では、XYZ駆動部30は、基台20上の検査部100の位置、すなわち、検査部位置を、第1の顔支持位置において適正作動距離となる第1の検査部位置と、第2の顔支持位置において適正作動距離となる第2の検査部位置と、の間で検査部位置を変位可能である。適正作動距離(ワーキングディスタンス)は、装置毎に予め定められた被検眼から検査窓までの距離である。これにより、本実施例では、第1の顔支持位置および第2の顔支持位置のそれぞれの場合において、検査部により検査を行うことができる。
【0023】
OCTでは、一回の検査で、複数のスキャンパターンで撮影が行われる場合があり、また、OCT-Angiographyのように所要時間の長い撮影方法で撮影が行われる場合がある。また、蛍光造影検査では、特に、造影初期等において数十秒から数分程度姿勢を維持する必要があるうえ、撮り直しが困難である。これらの撮影では、被検者は姿勢を長時間保持する必要があり、更には、安定した固視が要求される。これに対し、本実施例では、被検者の腰や首への負担の少ない姿勢で検査が可能である。また、腰や首への負担を低減できることで、固視が安定しやすくなり、結果として、撮影成功率が向上し、検査時間の短縮化を図ることができる。その点からもいっそう、被検者の負担軽減が図られる。
<変容例>
なお、第1実施例において、変更部50は、スライド部51とガイド部52を備えたが、その他の移動機構が用いられてもよい。例えば、変更部50として、リンク機構、テレスコピック機構などが用いられてもよい。
【0024】
なお、第1実施例において、変更部50は、顔支持部40全体を移動させたが、顔支持部40の一部を移動させてもよい。
【0025】
例えば、
図5,
図6に示すように、変更部150は、顔支持部40のうち、顎受け42以上の部分を被検者側に移動させる機構を有していてもよい。換言すれば、基部46よりも上の位置において、顎受け42以上の部分を被検者側に移動させる機構が、顔支持部40に設けられていてもよい。
図5,
図6に示す変更部150は、顔支持部40の途中がスライド可能であることで顔支持部40の一部がZ方向に移動される機構である。顎受け42以上の部分を被検者側に移動させることで、被検者の首から下の姿勢の自由度を高めることができ、より負担の少ない姿勢で検査を行うことができる。
【0026】
図5,
図6では、顔支持部40の途中がスライド可能であることで顔支持部40の一部がZ方向に移動される機構を示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
例えば、顔支持部40のうち、顎受け42以上の部分が、6軸以上の自由度を持つロボットアームで支持されており、ロボットアームを制御することによって顔支持部40の一部を移動させてもよい。ロボットアームの場合、Z方向への移動だけでなくY方向(高さ方向)への移動についても、1つのデバイスで実現できる。つまり、顎受け42の高さ調整部を兼用してもよい。
【0028】
なお、眼科装置10は、変更検知部57を備えてもよい(
図3参照)。変更検知部57は、変更部50によって顔支持位置が変更されたか否かを検知する。変更検知部57は、例えば、エンコーダ、マイクロスイッチ、位置センサなどによってスライド部51の位置を検出してもよい。変更検知部57を備える場合、制御部90は、変更検知部57の検知結果によってXYZ駆動部30を制御してもよい。この場合、制御部90は、XYZ駆動部30の被検者側の駆動リミットを、顔支持位置に応じて変更してもよい。
【0029】
また、上記実施例において、顔支持部40は手動で被検者側に引き出されるものとしたが、顔支持部40をZ方向に移動させるアクチュエータを有していてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、検査部10はXYZ方向へ駆動するものとして説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、被検眼を中心に、水平方向、および、上下方向の少なくとも1方向に、検査部10を旋回させる旋回機構を有していてもよい。この場合、顔支持部40をZ方向に移動させる際、旋回機構ごと検査部10を移動させることが望ましい。
【符号の説明】
【0031】
10 眼科装置
100 検査部
20 基台
30 駆動部
40 顔支持部
50 変更部