(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146223
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】超音波装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H04R3/00 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059001
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA02
5D019FF01
(57)【要約】
【課題】超音波の位相の制御を適切に行うことができる超音波装置を提供する。
【解決手段】超音波装置100は、基板10と、前記基板10の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられ、前記基板10の変位を検出するセンサ30と、前記基板10の上面に設けられ、前記センサ30の出力信号に基づき位相を制御された超音波を各々送信または受信する複数の素子20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられ、前記基板の変位を検出するセンサと、
前記基板の上面に設けられ、前記センサの出力信号に基づき位相を制御された超音波を各々送信または受信する複数の素子と、
を備える超音波装置。
【請求項2】
前記センサの出力信号に基づき前記複数の素子が各々送信または受信する超音波の位相を制御する制御部を備える請求項1に記載の超音波装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の素子が送信または受信する超音波の焦点位置に関する情報に基づき、前記超音波の位相を制御する請求項2に記載の超音波装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力信号に基づき、前記複数の素子の位置情報を算出し、前記位置情報に基づき、前記超音波の位相を制御する請求項2または3に記載の超音波装置。
【請求項5】
前記基板は、外部に固定される固定点を有し、前記制御部は、前記固定点を基準に前記位置情報を算出する請求項4に記載の超音波装置。
【請求項6】
複数の前記センサにそれぞれ接続され、平面視において前記複数の素子と重ならないように前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられた複数の配線を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波装置。
【請求項7】
前記複数の素子は、前記基板の上面の第1方向と前記第1方向に交差する第2方向に配列された2行2列の4つの第1領域に設けられ、
前記センサは、前記4つの第1領域のうち2つの間にそれぞれ相当する4つの第2領域の各々に少なくとも1つ設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波装置。
【請求項8】
前記4つの第2領域の各々に複数の前記センサが設けられ、
前記4つの第1領域のうち、前記第1方向に配列された第1領域の間に位置する第2領域に設けられた複数のセンサは、前記第2方向に配列されている請求項7に記載の超音波装置。
【請求項9】
複数の前記センサにそれぞれ接続され、平面視において前記4つの第1領域の外側を通過するように前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられた複数の配線を備える請求項7に記載の超音波装置。
【請求項10】
振動する振動層の少なくとも1つの層が一体に設けられた複数の素子は、1つのチップ上に設けられ、
前記センサは、前記1つのチップの上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波装置。
【請求項11】
前記複数の素子のうち振動する振動層が一体に設けられていない素子は別のチップに設けられ、前記基板に実装された複数のチップを備え、
前記センサは前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波装置。
【請求項12】
マトリックス状に設けられた仮想的な複数の配置領域と、前記複数の配置領域のうち隣接する配置領域の間に設けられた離間領域と、前記複数の配置領域と側辺の間のスペースと、を有する基板と、
前記複数の配置領域に各々設けられた振動素子と、
前記離間領域に設けられた変位素子と、
を備える超音波装置。
【請求項13】
前記変位素子の出力を演算し、前記振動素子の動作を制御する制御部を備える請求項12に記載の超音波装置。
【請求項14】
前記変位素子は、長手方向と短手方向を有する素子であり、前記離間領域の延在方向と前記変位素子の長手方向は平行である請求項12または13に記載の超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を出力する素子をアレイ状に複数配置し、複数の素子が出力する超音波の位相を制御することで、空中のユーザの手等に触覚を生じさせるシステムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の素子が送信する複数の超音波の位相を制御することで、空中の所望の箇所に複数の超音波を集束させることができる。しかしながら、実装基板が撓むまたは歪んだ場合、素子間の相対位置が変化してしまう。そのため、所望の箇所に複数の超音波を集束することが難しくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、超音波の位相の制御を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられ、前記基板の変位を検出するセンサと、前記基板の上面に設けられ、前記センサの出力信号に基づき位相を制御された超音波を各々送信または受信する複数の素子と、を備える超音波装置である。
【0007】
上記構成において、前記センサの出力信号に基づき前記複数の素子が各々送信または受信する超音波の位相を制御する制御部を備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の素子が送信または受信する超音波の焦点位置に関する情報に基づき、前記超音波の位相を制御する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記制御部は、前記出力信号に基づき、前記複数の素子の位置情報を算出し、前記位置情報に基づき、前記超音波の位相を制御する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記基板は、外部に固定される固定点を有し、前記制御部は、前記固定点を基準に前記位置情報を算出する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、複数の前記センサにそれぞれ接続され、平面視において前記複数の素子と重ならないように前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられた複数の配線を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記複数の素子は、前記基板の上面の第1方向と前記第1方向に交差する第2方向に配列された2行2列の4つの第1領域に設けられ、前記センサは、前記4つの第1領域のうち2つの間にそれぞれ相当する4つの第2領域の各々に少なくとも1つ設けられている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記4つの第2領域の各々に複数の前記センサが設けられ、前記4つの第1領域のうち、前記第1方向に配列された第1領域の間に位置する第2領域に設けられた複数のセンサは、前記第2方向に配列されている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、複数の前記センサにそれぞれ接続され、平面視において前記4つの第1領域の外側を通過するように前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられた複数の配線を備える構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、振動する振動層の少なくとも1つの層が一体に設けられた複数の素子は、1つのチップ上に設けられ、前記センサは、前記1つのチップの上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記複数の素子のうち振動する振動層が一体に設けられていない素子は別のチップに設けられ、前記基板に実装された複数のチップを備え、前記センサは前記基板の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられている構成とすることができる。
【0017】
本発明は、マトリックス状に設けられた仮想的な複数の配置領域と、前記複数の配置領域のうち隣接する配置領域の間に設けられた離間領域と、前記複数の配置領域と側辺の間のスペースと、を有する基板と、前記複数の配置領域に各々設けられた振動素子と、前記離間領域に設けられた変位素子と、を備える超音波装置である。
【0018】
上記構成において、前記変位素子の出力を演算し、前記振動素子の動作を制御する制御部を備える構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記変位素子は、長手方向と短手方向を有する素子であり、前記離間領域の延在方向と前記変位素子の長手方向は平行である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波の位相の制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る超音波装置の平面図、
図1(b)および
図1(c)は、
図1(a)のそれぞれC-C断面およびB-B断面における基板の上面を示す図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1の超音波装置の動作を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、実施例2に係る超音波装置の平面図、
図3(b)および
図3(c)は、
図3(a)のそれぞれA-A線断面図およびB-B線断面図である。
【
図4】
図4は、
図3(a)の2個の素子および2個のセンサを拡大した平面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、
図4のそれぞれA-A断面図およびB-B断面図である。
【
図6】
図6は、実施例2に係る超音波装置のブロック図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、基板を回路基板に実装した断面図である。
【
図8】
図8(a)は、実施例2の変形例1に係る超音波装置の平面図、
図8(b)は、
図8(a)のA-A断面図である。
【
図9】
図9(a)は、実施例3に係る超音波装置の平面図、
図9(b)および
図9(c)は、
図9(a)のそれぞれA-A断面図およびB-B断面図である。
【
図10】
図10は、実施例3における1つの素子の断面図である。
【
図11】
図11は、実施例4に係る超音波装置の平面図である。
【
図12】
図12は、実施例4の変形例1に係る超音波装置の平面図である。
【
図13】
図13は、実施例4の変形例2に係る超音波装置の平面図である。
【
図14】
図14は、実施例4の変形例3に係る超音波装置の平面図である。
【
図15】
図15は、実施例4の変形例4に係る超音波装置の平面図である。
【
図16】
図16(a)は、実施例5に係る超音波装置の平面図、
図16(b)および
図16(c)は、
図16(a)のそれぞれA-A断面図およびB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0023】
図1(a)は、実施例1に係る超音波装置100の平面図、
図1(b)および
図1(c)は、
図1(a)のそれぞれC-C断面およびB-B断面における基板10の上面を示す図であり、基板10の反りの状態を示している。
図1(a)では、基板10の厚さ方向をZ方向、素子20の配列方向をX方向およびY方向とする。
【0024】
まずは、基板10、超音波を送受信する素子20および変位を検出するセンサ30の大まかな関係について2つの例を述べる。
【0025】
第1例:基板10として、例えば半導体基板を採用し、素子20およびセンサ30は、この基板10の上に、半導体プロセスを用い形成されたモノリシック型のデバイスである。なお、基板10に空隙が形成され、支持体として半導体基板が採用されるものが考えられる。または、基板10を取り除き、別途、樹脂で支持体と空隙とを形成するものが考えられる。
【0026】
第2例:回路基板25(
図9(a)~
図9(c)参照)として、無機材料または有機材料からなる基板を採用し、別途、半導体プロセスを用い製造されたディスクリート型の素子20を有するチップ15を実装するものが考えられる。なお、第1例および第2例において、センサ30は、ディスクリート型を別途用意してもよいし、基板10または回路基板25の上に直接センサ30を作り込んでもよい。
以下に説明する実施例1は、第1例である。
【0027】
チップ15の平面形状は矩形であり、対向する辺は左右方向(X方向)に延伸し、別の対向する辺は上下方向(Y方向)に延伸する。以降、説明する素子20が作り込まれる第1領域50は、規則性を持って配列されている。ここでは、第1領域50は行列(マトリックス)状に配置されている。平面視で見たとき、隣接する2つの第1領域50の間には、第2領域52が設けられている。
【0028】
この第1領域50には、超音波を送信または受信する素子20が少なくとも1つ以上設けられている。なお、ここでは、第1領域50の配置は2行2列である。また第2領域52は、十字状または格子状に配置されている。第2領域52には、基板10の変位を検出するセンサ30(例えば歪検知素子)が設けられている。
【0029】
なお、チップ15の中央にはチップ15の平面形状の中心44がある。センサ30は、横方向(X方向)に延伸する仮想的なC-C直線と、縦方向(Y方向)に延伸する仮想的なB-B直線と、に沿って配置されている。B-B直線およびC-C直線は、中心44を通過する。第1領域50の配列が2行2列のように偶数行偶数列の場合には、B-B直線およびC-C直線は中心44を通過する。第1領域50の配列が奇数行または奇数列の場合には、B-B直線およびC-C直線は中心44を通過しない。
【0030】
1個の第1領域50内の素子20の数は1以上において適宜設定できる。また、第1領域50内の素子20の配列、および第1領域50の配列は、ある規則性をもった配列であればよい。なお、第1領域50内の素子20、および第1領域50は、不規則な配列で設けられてもよい。
【0031】
第2領域52内には、または隣接する2つの第1領域50の間には、少なくとも1つのセンサ30が設けられる。なお、ここでは、1つの第2領域52に2つのセンサ30が設けられている。よって、センサ30は、縦に4つ、横に4つが十字状に配列されている。制御部38は、例えばプロセッサであり、複数の素子20および複数のセンサ30と電気的に接続されている。制御部38は、基板10の変位を検出し、素子20の制御を行う。
【0032】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1の超音波装置100の動作を示す模式図である。
図2(a)および
図2(b)は、
図1のA-Aにおける断面の模式図であり、基板10の上面とセンサ30を図示している。
【0033】
図2(a)は、基板10に撓みがなく、基板10の上面43が平面である理想的な場合を示している。位置40は、素子20が出力する複数の超音波42を集束させる位置、すなわち音場焦点であり、例えばユーザの手の位置である。ユーザの手の位置は、例えば光学方式のトラッキングシステム等により得られる。
【0034】
位置40に超音波42を集束させる方法の例を説明する。素子20の積層膜18が振動することで、素子20は例えば放射状に超音波を発する。この超音波は、空間における音圧の場を形成し、任意の位置での超音波圧は、経時的に周期的な変化をする。このため、超音波圧の経時的変化は位相を有する。複数の素子20が超音波を発すると、各々の素子20のそれぞれが、音圧の場を形成する。超音波42が集束するとは、音圧の場において、ある位置で超音波圧が強め合うことである。この位置を、集束位置または焦点位置と呼ぶ。
【0035】
集束位置40の座標を(x,y,z)とし、各素子20の位置の座標を(xi,yi,zi)とする。iは整数であり、
図2では、1~4である。
【0036】
図1のように、素子20が16個設けられている場合、iは1~16である。位置40と素子20との相対距離riは数1により表される。なお、座標(xi,yi,zi)は、
図1(a)において仮定したXY座標とは異なっていてもよい。
【数1】
【0037】
各素子20が出力する超音波42の超音波圧piを数2とする。
【数2】
ここで、Aは超音波42の振幅に相当する係数、kは超音波42の波数、ωは超音波42の周波数、tは時間、θiは超音波42の位相、θ0は基準とする位相である。
【0038】
各超音波42の位相θiを数3のように設定する。
【数3】
これにより、超音波42は位置40に集束する。
【0039】
出力された超音波42が集束する位置40に、人体の一部をかざすと、この集束された超音波によりユーザは皮膚に触感が得られる。このように、非接触インターフェースに実施例1の超音波装置を用いることができる。なお、人体の皮膚が触覚を感じやすい音波の周波数は例えば約200Hzである。数100kHzの搬送波に200Hz程度の低周波の音波を変調した超音波を皮膚に照射することで、皮膚に触覚を与えることができる。
【0040】
図2(b)は、基板10の上面43が湾曲した場合を示している。例えば、プロセスの過程で熱処理したり、材料の異なる膜を積層したりすると、熱膨張係数の違いにより、基板10に反りが発生することがある。各素子20の位置の座標は、それぞれ変化し、(x1´,y1´,z1´)~(x4´,y4´,z4´)と変わる。このため、基板10の反りを考慮しないと、位置40に超音波42が集束しなくなることがある。
【0041】
この反りを検知するため、
図1(a)のように、基板10の上面43にひずみ(反り)を検出するセンサ30として、例えば歪ゲージを設けている。X方向に並ぶ4個のセンサ30は基板10の左右方向(X方向)のひずみを主に検出し、Y方向に並ぶ4個のセンサ30は上下方向(X方向)のひずみを主に検出する。歪む前の基板10の長さをL、力が加わることで変化する長さをΔLとすると、ひずみεはΔL/Lで示される。ここで、引っ張られる方向のひずみεを正とする。
【0042】
図1(b)および
図1(c)は、基板10が撓んだときの上面43を示している。
図1(b)および
図1(c)に示すように、基板10の中心44をゼロ起点とすると、基板10の周縁がゼロ起点に対して+Z方向に反るように、基板10が撓んでいる。基板10が撓むと、センサ30は、基板10のひずみを検出する。例えばX方向に配列したセンサ30は、歪εx1、εx2、εx3およびεx4を検出する。例えばY方向に配列したセンサ30は、歪εy1、εy2、εy3およびεy4を検出する。
【0043】
センサ30が検出した歪εx1、εx2、εx3、εx4、εy1、εy2、εy3およびεy4から基板10の撓みの状態を認識でき、各素子20の座標を演算および算出できる。例えば、
図2(b)における素子20の座標(x1´,yi´,zi´)がセンサ30により算出できる。センサ30が検出した歪εから素子20の座標(x1´,yi´,zi´)を算出する方法は、例えば、予め、基板10を撓ませて歪εと座標(x1´,yi´,zi´)を測定し、歪εと座標(x1´,yi´,zi´)との対応関係をメモリに記憶させておけばよい。歪εと座標(x1´,yi´,zi´)との対応関係は、シミュレーションにより算出してもよい。
【0044】
基板10の撓みだけでは、座標(x1´,yi´,zi´)が正確に算出できないことがある。そこで、基板10が外部に固定される固定点41を基準点となるように定めておく。固定点41と超音波42を集束させる位置40との相対位置は基板10が撓んでも変わらないとすると、固定点41の座標(x0,y0,z0)を基準に、座標(x1´,yi´,zi´)を算出できる。
【0045】
例えば、制御部38は、各素子20の座標(x1´,yi´,zi´)に基づき、数1~数3を用い、素子20が出力する超音波42の位相を制御する。これにより、基板10が撓んだ場合でも超音波42を所望の位置40に集束させることができる。
【0046】
このように、制御部38は、センサ30の出力信号に基づき、複数の素子20がそれぞれ送信または受信する超音波42の位相を制御する。これにより、基板10が撓んだ場合でも、超音波の位相の制御を適切に行うことができる。
【0047】
複数の超音波42を位置40に集束させたい場合には、制御部38は、複数の超音波42を集束させる位置40に関する情報に基づき、複数の超音波42の位相を制御する。これにより、基板10が撓んだ場合でも超音波42を所望の位置40に集束させることができる。
【0048】
制御部38は、センサ30の出力信号に基づき、複数の素子20の位置情報(例えば座標(x1´,yi´,zi´))を算出し、位置情報に基づき、複数の超音波42の位相を制御する。このように、複数の素子20の位置情報に基づき数1~数3を用いて超音波42の位相を制御することで、基板10が撓んだ場合でも超音波42を所望の位置40により正確に集束させることができる。
【0049】
超音波42を集束させる位置40の座標と基板10内の座標との相対関係が変わってしまうと、超音波42が集束される位置が所望の位置40からずれてしまう。そこで、基板10は、外部に固定された固定点41を有し、制御部38は、固定点41を基準に複数の位置情報を算出する。これにより、位置情報を正確に算出でき、超音波42を所望の位置40により正確に集束させることができる。
【0050】
図1(a)のように、複数の素子20は、基板10の上面43のX方向とY方向に配列された2行2列の4つの第1領域50に設けられている。センサ30は、4つの第2領域52の各々に少なくとも1つ設けられている。このように、平面視で見たときに、基板10の中心44を通る十字に対応する位置(先に述べた、中心44を通るB-B直線およびC-C直線の通過する第2領域52)にセンサ30を設けることで、センサ30の個数が少なくてもセンサ30の出力信号に基づき基板10の撓んだ状態を把握できる。
【0051】
また、第2領域52の各々に複数のセンサ30が設けられており、各第2領域52内のセンサ30は、X方向またはY方向に配列されている。このX方向に配列されたセンサ30により、X方向における基板10の撓みを把握でき、Y方向に配列されたセンサ30により、Y方向における基板10の撓みを把握できる。よって、制御部38は、センサ30の出力信号に基づき、アレイ状の複数の素子20の位置をより正確に算出できる。
下部電極12、圧電層14および上部電極16は、振動体となり、基板10においてお互いに機械的に分離されて形成されている。下部電極12または上部電極16は、複数の素子20において一体に連続して設けられていてもよい。
基板10上に、下部電極12とコンタクト孔を介して接続された配線19aおよび上部電極16に接続された配線19bが設けられている。また圧電層14および上部電極16を覆うように保護膜が設けられていてもよい。
空隙13が活性層11に接する領域は振動領域54である。圧電層14を挟み下部電極12と上部電極16とが重なる領域は、駆動領域56である。振動領域54および駆動領域56の平面形状は例えば円で、両者の中心は略一致する。
この振動領域54を別の表現で言えば積層膜18が振動する領域であり、駆動領域56は、下部電極12と上部電極16との間の重畳部で交流電圧が印加された領域である。振動領域54および駆動領域56の平面形状は、略円形以外でもよく、例えば略多角形状でもよい。
圧電層14の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BTO(チタン酸バリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、ZnO(酸化亜鉛)またはKNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)である。配線19a~19cは、例えば金層、銅層またはアルミニウム層等の金属層である。
金属線31は、例えば銅ニッケル合金またはニッケルクロム合金である。センサ30として、金属式のひずみセンサを例に説明したが、センサ30は、半導体式のひずみセンサでもよい。
基板10の厚さは、例えば10μm~100μmである。活性層11の厚さは例えば1μm~10μmである。下部電極12および上部電極16の厚さは例えば10nm~500nmである。圧電層14の厚さは、例えば1μm~10μmである。振動領域54の直径は、例えば200μm~2000μm、駆動領域56の直径は、振動領域54よりも小さく、例えば100μm~1500μmである。
基板10は、半田等のバンプ27によりプリント基板などの回路基板25に搭載されている。回路基板25には、制御部38の少なくとも一部が設けられていてもよい。基板10のうちバンプ27により固定された箇所が固定点41となる。固定点41以外では、基板10は固定されていない。このため、基板10は撓みやすくなる。よって、センサ30を用い素子20の位置を算出することで、超音波42を所望の位置40に集束できる。基板10と回路基板25との間は、隙間があってもよいが、樹脂テープ、ソルダーレジストまたはシリコン等の柔らかい材料が隙間を埋めるように設けられていてもよい。
超音波装置104では、センサ30は、基板10の下面、すなわち素子20が設けられた面と反対の面に設けられている。センサ30は、基板10の上面、下面および内部の少なくとも1つに設けられていればよい。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。