(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146224
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 61/32 20060101AFI20241004BHJP
F16H 63/38 20060101ALI20241004BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20241004BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H63/38
F16H1/32 A
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059002
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 理
【テーマコード(参考)】
3J027
3J067
5H501
【Fターム(参考)】
3J027FB01
3J027FC01
3J027GB03
3J027GC03
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J067AA21
3J067AB23
3J067BA51
3J067CA31
3J067DA43
3J067DB32
3J067FA27
3J067FB45
3J067GA01
5H501AA20
5H501DD04
5H501GG01
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501LL22
5H501LL35
5H501PP02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電流値にノイズが発生する場合においても、ディテントプレートの底位置回転角度を適切に記憶できる電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】出力シャフトと、モータと、減速機と、出力シャフトの回転角度を検出する回転センサと、モータに流れる電流値を検出する電流センサと、モータを制御する制御部と、を備える。第1部材の外周縁には、谷部が設けられ、谷部は、底部、第1傾斜面、および第2傾斜面を有する。制御部は、モータを駆動し、接触位置が第1傾斜面を通過する際に、電流センサで検出される電流値が第1閾値を超えた際の回転センサの検出角度を第1回転角度として取得する第1取得工程と、第1回転角度を用いて接触位置が底部に位置する状態の底位置回転角度を演算し記憶する演算工程と、を行う。制御部は、第1取得工程において、電流センサで検出される電流値が第1閾値を超える度に、第1回転角度を更新する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面と外周縁とを有する板状の第1部材を前記面に直交する中心軸線周りに回転駆動させ、前記外周縁に接触する接触部を有する第2部材の接触位置を変える電動アクチュエータであって、
前記中心軸線を中心として延びて前記第1部材に連結される出力シャフトと、
モータと、
前記モータの回転を減速して前記出力シャフトを前記中心軸線周りに回転させる減速機と、
前記出力シャフトの回転角度を検出する回転センサと、
前記モータに流れる電流値を検出する電流センサと、
前記モータを制御する制御部と、を備え、
前記外周縁には、谷部が設けられ、前記谷部は、底部、前記底部の一方側外周縁に前記底部から続く第1傾斜面、および前記底部の他方側外周縁に前記底部から続く第2傾斜面を有し、
前記制御部は、
前記モータを駆動し、前記接触位置が前記第1傾斜面を通過する際に、前記電流センサで検出される電流値が第1閾値を超えた際の前記回転センサの検出角度を第1回転角度として取得する第1取得工程と、
前記第1回転角度を用いて前記接触位置が前記底部に位置する状態の底位置回転角度を演算し記憶する演算工程と、を行い、
前記制御部は、前記第1取得工程において、前記電流センサで検出される電流値が前記第1閾値を超える度に、前記第1回転角度を更新する、
電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1取得工程において、前記接触位置が前記底部から前記第1傾斜面を通過するように前記モータを制御する、
請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータを駆動し、前記接触位置が前記第2傾斜面を通過する際に、前記電流センサで検出される電流値が第2閾値を超えた際の前記回転センサの検出角度を第2回転角度として取得する第2取得工程を、さらに行い、
制御部は、前記演算工程において、前記第1回転角度と前記第2回転角度との間の前記回転角度を、前記接触位置が前記底部に位置する状態の底位置回転角度として記憶し、
前記制御部は、前記第2取得工程において、前記電流センサで検出される電流値が前記第2閾値を超える度に、前記第2回転角度を更新する、
請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2取得工程において、前記接触位置が前記底部から前記第2傾斜面を通過するように前記モータを制御する、
請求項3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記減速機は、内接式減速機である、
請求項1~4の何れか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記モータは、偏心回転する偏心軸部を有し、
前記減速機は、
前記偏心軸部の外周面にベアリングを介して連結される環状の外歯ギヤと、
前記外歯ギヤの径方向外側に配置され前記外歯ギヤの少なくとも一部と噛み合う内歯ギヤと、
前記外歯ギヤの回転を前記出力シャフトに伝達する環状のフランジ部と、を有する、
請求項5に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記外歯ギヤおよび前記内歯ギヤの歯形は、それぞれ、インボリュート歯形であり、
前記外歯ギヤの歯形の圧力角、および前記内歯ギヤの歯形の圧力角は、それぞれ、22°以上である、請求項6に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両操作に基づいて、パークロック機構などの切替機構を駆動する電動アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1)。電動アクチュエータによって駆動される切替機構は、ディテントプレートと、ディテントプレートの外周縁に設けられる谷部に板バネ部材の一部が嵌ることでディテントプレートの回転角度を保持する位置決め機構を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電動アクチュエータにおいて、ディテントプレートを正確に位置決めできればシステム全体の応答性を高めることができる。そこで、本発明者らは、位置決め機構に組み付けた状態で電動アクチュエータを駆動させ、その際の電動アクチュエータの電流値から、ディテントプレートの谷部の位置を演算し記憶させることを想到した。しかしながら、電動アクチュエータの電流値には様々なノイズが重畳するため、谷部の正確な特定には、これらのノイズの影響を考慮する必要がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、電流値にノイズが発生する場合においても、ディテントプレート(第1部材)の底位置回転角度を適切に記憶できる電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、面と外周縁とを有する板状の第1部材を前記面に直交する中心軸線周りに回転駆動させ、前記外周縁に接触する接触部を有する第2部材の接触位置を変える電動アクチュエータであって、前記中心軸線を中心として延びて前記第1部材に連結される出力シャフトと、モータと、前記モータの回転を減速して前記出力シャフトを前記中心軸線周りに回転させる減速機と、前記出力シャフトの回転角度を検出する回転センサと、前記モータに流れる電流値を検出する電流センサと、前記モータを制御する制御部と、を備える。記外周縁には、谷部が設けられる。前記谷部は、底部、前記底部の一方側外周縁に前記底部から続く第1傾斜面、および前記底部の他方側外周縁に前記底部から続く第2傾斜面を有する。前記制御部は、前記モータを駆動し、前記接触位置が前記第1傾斜面を通過する際に、前記電流センサで検出される電流値が第1閾値を超えた際の前記回転センサの検出角度を第1回転角度として取得する第1取得工程と、前記第1回転角度を用いて前記接触位置が前記底部に位置する状態の底位置回転角度を演算し記憶する演算工程と、を行う。前記制御部は、前記第1取得工程において、前記電流センサで検出される電流値が前記第1閾値を超える度に、前記第1回転角度を更新する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、電流値にノイズが発生する場合においても、ディテントプレートの底位置回転角度を適切に記憶できる電動アクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の電動アクチュエータを備える駆動装置を車両の左右方向一方側から視た図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のパーキング機構を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の電動アクチュエータの断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の減速機の正面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のディテントプレートおよび接触部の模式図であり、セルフラーニング工程の初期状態を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態のディテントプレートおよび接触部の模式図であり、セルフラーニング工程の第1取得工程を示す。
【
図7】
図7は、一実施形態のディテントプレートおよび接触部の模式図であり、セルフラーニング工程の第2取得工程を示す。
【
図8】
図8は、一実施形態の第1取得工程におけるモータの電流値と移動角度との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、一実施形態の第2取得工程におけるモータの電流値と移動角度との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、一実施形態の第1取得工程および第2取得工程におけるモータの電流値と移動角度との関係のグラフを1つのグラフとしてまとめたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のパーキング機構100を備える駆動装置1を車両の左右方向一方側から視た図である。本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、或いは電気自動車(EV)等の電動車両に搭載され、その駆動源として使用される。
【0010】
以下の説明では、駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする鉛直方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前後方向一方側であり、-X側は、車両の前後方向他方側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左右方向一方側であり、-Y側は、車両の左右方向他方側である。
【0011】
本実施形態では、Z軸方向と平行な方向を「鉛直方向Z」と呼び、X軸方向と平行な方向を「前後方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向の正の側(+X側)を「前後方向一方側」と呼び、X軸方向の負の側(-X側)を「前後方向他方側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側(+Y側)を「左右方向一方側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「左右方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
図1に示すように、駆動装置1は、ハウジング2と、駆動用モータ3と、減速装置4と、差動装置5と、パークロックギヤ6と、パーキング機構100と、を備える。パーキング機構100は、電動アクチュエータ10と、切替機構70と、を備える。切替機構70は、電動アクチュエータ10に連結される連結シャフト80を有する。連結シャフト80は、中心軸線J1を中心として前後方向Xに延びる。電動アクチュエータ10は、連結シャフト80を中心軸線J1周りに回転させる。
【0013】
本実施形態において以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする周方向、すなわち、中心軸線J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0014】
ハウジング2は、駆動用モータ3、減速装置4、差動装置5、および切替機構70を内部に収容する。図示は省略するが、ハウジング2の内部には、オイルが収容される。減速装置4は、駆動用モータ3に接続される。差動装置5は、減速装置4に接続され、駆動用モータ3から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。パークロックギヤ6は、減速装置4に設けられたギヤに固定される。パークロックギヤ6は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸に連結される。パークロックギヤ6は、複数の歯部6aを有する。
【0015】
切替機構70は、電動アクチュエータ10によって、車両のシフト操作に基づいて駆動される。切替機構70は、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。切替機構70は、車両のシフト位置がパーキング位置(Pレンジ)である場合に、パークロックギヤ6をロック状態とし、車両のシフト位置がパーキング位置以外の非パーキング位置である場合に、パークロックギヤ6をアンロック状態とする。車両のシフト位置が非パーキング位置である場合とは、例えば、車両のシフト位置がドライブ位置(Dレンジ)、ニュートラル位置(Nレンジ)、或いはリバース位置(Rレンジ)等である場合を含む。
【0016】
図2は、本実施形態のパーキング機構100を示す斜視図である。
切替機構70は、連結シャフト80と、可動部70aと、パークロックアーム77と、ベース部材75と、板バネ部材(第2部材)76と、を有する。
【0017】
連結シャフト80は、電動アクチュエータ10と可動部70aとの間でこれらを連結する。連結シャフト80は、電動アクチュエータ10の動力を可動部70aに伝達する。連結シャフト80の前後方向一方側(+X側)の端部81は、電動アクチュエータ10に接続される。端部81には、前後方向Xに延びるスプライン溝が周方向に沿って複数設けられる。また、連結シャフト80は、可動部70aのディテントプレート(第1部材)71に連結される。連結シャフト80は、電動アクチュエータ10の動力によって、ディテントプレート71と一体となって、中心軸線J1周りを回転する。
【0018】
可動部70aは、車両のシフト操作に基づいて、左右方向Yに沿って移動する。すなわち、本実施形態において左右方向Yは、可動部70aが移動する移動方向に相当する。また、鉛直方向Zは、可動部70aが移動する移動方向と交差する交差方向に相当し、下側は、交差方向の一方側に相当する。本実施形態において可動部70aは、連結シャフト80を介して、電動アクチュエータ10によって移動させられる。可動部70aにおける左右方向Yの位置は、少なくとも非パーキング位置とパーキング位置との間で切り替えられる。すなわち、可動部70aは、電動アクチュエータ10によって、パーキング位置と非パーキング位置との間で移動させられる。非パーキング位置は、車両のシフト位置がパーキング位置以外である場合における可動部70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置は、車両のシフト位置がパーキング位置である場合における可動部70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置は、非パーキング位置よりも、左右方向一方側(+Y側)の位置である。
図2においては、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合について示す。
【0019】
可動部70aは、ディテントプレート71と、ロッド72と、円錐状部材73と、コイルバネ74と、を有する。ディテントプレート71は、連結シャフト80に固定される。ディテントプレート71は、連結シャフト80によって中心軸線J1周りに回転させられる。ディテントプレート71は、連結シャフト80から径方向外側に延びる。本実施形態においてディテントプレート71は、連結シャフト80から上側に延びる。本実施形態においてディテントプレート71は、板面が前後方向Xを向く板状である。ディテントプレート71は、略扇状である。ディテントプレート71は、中心軸線J1と直交する面71fと、径方向外側の縁部である外周縁71aと、を有する。
【0020】
ディテントプレート71の外周縁71aには、第1谷部79Aと第2谷部79Bとが設けられる。第1谷部79Aは、ディテントプレート71の周方向一方側に設けられる。つまり、第1谷部79Aは、ディテントプレート71の外周縁71aの一方側(一方側外周縁)に設けられる。第1谷部79Aは、パーキング位置に対応する。第2谷部79Bは、ディテントプレート71の周方向他方側に設けられる。つまり第2谷部79Bは、ディテントプレート71の外周縁71aの他方側(他方側外周縁)に設けられる。第2谷部79Bは、非パーキング位置に対応する。
【0021】
第1谷部79Aおよび第2谷部79Bは、ディテントプレート71の外周縁において中心軸線J1の径方向内側に向かって窪む。第1谷部79Aおよび第2谷部79Bは、ディテントプレート71を前後方向Xに貫通する。第1谷部79Aと第2谷部79Bとは、中心軸線J1の周方向に沿って並んで配置される。第1谷部79Aは、第2谷部79Bの左右方向他方側(-Y側)に位置する。第1谷部79Aと第2谷部79Bとがディテントプレート71に設けられることにより、ディテントプレート71のうち第1谷部79Aと第2谷部79Bとの周方向の間の部分には、径方向外側に突出する山部71cが設けられる。
【0022】
以下の説明において、第1谷部79Aと第2谷部79Bとを互いに区別しない場合、これらを単に谷部79と呼ぶ。本実施形態のディテントプレート71は、非パーキング位置に対応する谷部79として、第2谷部79Bのみが設けられる場合について説明するが、非パーキング位置に対応する複数の谷部79が設けられていてもよい。すなわち、ディテントプレート71の外周縁71aには、3個以上の谷部79が設けられていてもよい。
【0023】
ロッド72は、左右方向Yに沿って移動可能に配置される。ロッド72は、接続部72aと、ロッド本体72bと、を有する。接続部72aは、前後方向Xに延びる棒状である。接続部72aの前後方向一方側(+X側)の端部は、ディテントプレート71を前後方向Xに貫通し、ディテントプレート71に固定される。これにより、ロッド72は、ディテントプレート71を介して連結シャフト80に連結される。ロッド本体72bは、左右方向Yに延びる棒状である。本実施形態においてロッド本体72bは、接続部72aの前後方向他方側(-X側)の端部から左右方向一方側(+Y側)に延びる。ロッド本体72bは、接続部72a寄りの部分に突起部72cを有する。ロッド本体72bの左右方向一方側の端部には、左右方向Yに延びる筒部材72dが嵌め合わされて固定される。
【0024】
円錐状部材73は、ロッド本体72bが通される円錐状である。円錐状部材73は、左右方向Yに延びる。円錐状部材73の外周面のうち左右方向一方側(+Y側)の部分は、左右方向一方側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面73aである。円錐状部材73は、ロッド本体72bに対して左右方向Yに移動可能である。
【0025】
コイルバネ74は、左右方向Yに延びる。コイルバネ74は、円錐状部材73と突起部72cとの左右方向Yの間に配置される。コイルバネ74には、ロッド本体72bが通される。コイルバネ74の左右方向他方側(-Y側)の端部は、突起部72cに接触する。
コイルバネ74の左右方向一方側(+Y側)の端部は、円錐状部材73の左右方向他方側の面に接触する。コイルバネ74は、円錐状部材73がロッド本体72bに対して左右方向Yに相対移動することで伸縮し、円錐状部材73に左右方向Yの弾性力を加える。
【0026】
パークロックアーム77は、可動部70aの前後方向他方側(-X側)に位置する。パークロックアーム77は、左右方向Yに延びる回転軸線J3を中心とする支持シャフト78によって、回転可能に支持される。パークロックアーム77は、パークロックアーム本体77aと、噛合部77bと、を有する。
【0027】
パークロックアーム本体77aは、支持シャフト78から前後方向一方側(+X側)に延びる。パークロックアーム本体77aの前後方向一方側の端部77cは、可動部70aに上側から接触する。噛合部77bは、パークロックアーム本体77aから上側に突出する。支持シャフト78には図示しない巻きバネが装着される。図示しない巻きバネは、パークロックアーム77に対して、回転軸線J3を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て時計回り向きの弾性力を加える。
【0028】
パークロックアーム77は、可動部70aの移動に伴って移動する。より詳細には、パークロックアーム77は、ロッド72および円錐状部材73の左右方向Yへの移動に伴って、回転軸線J3回りに回転する。連結シャフト80の回転に伴って、ディテントプレート71が非パーキング位置からパーキング位置に回転すると、ロッド72および円錐状部材73が左右方向一方側(+Y側)に移動する。
【0029】
円錐状部材73のテーパ面73aの外径は、左右方向一方側(+Y側)から左右方向他方側(-Y側)に向かうに従って大きくなる。そのため、円錐状部材73が左右方向一方側に移動すると、テーパ面73aによってパークロックアーム77の端部77cが上側に持ち上げられ、パークロックアーム77が回転軸線J3を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、図示は省略するが、噛合部77bがパークロックギヤ6に近づき、パークロックギヤ6の歯部6a同士の間に噛み合う。
【0030】
パークロックギヤ6とパークロックアーム77とが噛み合う場合、円錐状部材73もパーキング位置に位置する状態となり、可動部70aの全体がパーキング位置に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部70aがパーキング位置に位置する場合に、車軸に連結されたパークロックギヤ6に噛み合う。円錐状部材73は、パーキング位置において、ベース部材75における後述する支持部75bとパークロックアーム77とに接触した状態で挟まれる。パークロックアーム77がパークロックギヤ6に噛み合うことで、パークロックギヤ6は、ロック状態となる。
【0031】
パークロックアーム77がパークロックギヤ6に近づく際、パークロックギヤ6の歯部6aの位置によっては、噛合部77bが歯部6aに接触する場合がある。この場合、パークロックアーム77は、噛合部77bが歯部6a同士の間に噛み合う位置まで移動できない場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、円錐状部材73がロッド72に対して左右方向Yに移動可能であるため、ロッド72はパーキング位置に移動しつつ、円錐状部材73がパーキング位置よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する状態を許容できる。これにより、連結シャフト80の回転が阻害されることを抑制でき、連結シャフト80を回転させる電動アクチュエータ10に負荷が掛かることを抑制できる。
【0032】
また、ロッド72がパーキング位置に位置し、円錐状部材73がパーキング位置よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する状態では、コイルバネ74が圧縮変形した状態となる。そのため、コイルバネ74によって円錐状部材73に左右方向一方側向き(+Y側向き)の弾性力が加えられる。これにより、円錐状部材73を介して、コイルバネ74からパークロックアーム77に、回転軸線J3を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て反時計回りに回転する向きの回転モーメントが加えられる。したがって、パークロックギヤ6が回転して歯部6aの位置がずれると、パークロックアーム77が回転して、噛合部77bが歯部6a同士の間に噛み合う。
【0033】
連結シャフト80の回転に伴って、ディテントプレート71がパーキング位置から非パーキング位置に回転すると、ロッド72および円錐状部材73が左右方向他方側(-Y側)に移動する。円錐状部材73が左右方向他方側に移動すると、円錐状部材73によって持ち上げられていたパークロックアーム77の端部77cが自重および図示しない巻きバネからの弾性力を受けて下側に移動し、パークロックアーム77が回転軸線J3を中心として左右方向一方側(+Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、パークロックアーム77の噛合部77bがパークロックギヤ6から離れ、歯部6a同士の間から外れる。
図2においては、パークロックギヤ6から外れた状態のパークロックアーム77を示す。
【0034】
パークロックアーム77がパークロックギヤ6から外れる場合、円錐状部材73も非パーキング位置に位置する状態となり、可動部70aの全体が非パーキング位置に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合にパークロックギヤ6から外れる。円錐状部材73は、非パーキング位置において、パークロックアーム77よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する。パークロックアーム77がパークロックギヤ6から外れることで、パークロックギヤ6は、アンロック状態となる。
【0035】
ベース部材75は、可動部70aを左右方向Yに移動可能に支持する。本実施形態においてベース部材75は、可動部70aを下側から支持する。ベース部材75は、ハウジング2の内側面に固定される。ベース部材75は、ベース板75aと、支持部75bと、板バネ固定部75cと、を有する。
【0036】
本実施形態においてベース板75aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。支持部75bは、ベース板75aから上側に突出する。支持部75bは、可動部70aに接触して可動部70aを支持する部分である。本実施形態において支持部75bは、可動部70aのうち円錐状部材73に下側から接触して、可動部70aを下側から支持する。支持部75bにおける可動部70a側の面は、左右方向Yに沿って視て、可動部70a側と逆側に凹となる円弧状の曲面である。そのため、テーパ面73aを有する円錐状部材73を安定して支持できる。
【0037】
板バネ固定部75cは、ベース板75aから上側に突出する。板バネ固定部75cは、例えば、直方体状である。板バネ固定部75cは、支持部75bよりも前後方向一方側(+X側)に位置する。板バネ部材76は、ベース部材75の板バネ固定部75cに固定される。本実施形態において板バネ部材76は、板バネ固定部75cの上側の面のうち左右方向他方側(-Y側)の端部に固定される。板バネ部材76は、板バネ本体部76aと、接触部76bと、を有する。
【0038】
板バネ本体部76aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。板バネ本体部76aは、板バネ固定部75cから左右方向他方側(-Y側)に延びる。板バネ本体部76aは、ディテントプレート71の上側まで延びる。板バネ本体部76aは、左右方向他方側の端部にスリット76cを有する。スリット76cは、板バネ本体部76aを鉛直方向Zに貫通する。スリット76cは、左右方向Yに延びる。スリット76cは、板バネ本体部76aの左右方向他方側の端部まで延び、板バネ本体部76aの左右方向他方側の端部を二股に分断する。
【0039】
接触部76bは、板バネ本体部76aの左右方向他方側(-Y側)の端部に設けられる。本実施形態において接触部76bは、前後方向Xに延びる軸回りに回転可能に板バネ本体部76aに取り付けられるローラである。接触部76bは、スリット76cによって二股に分断された板バネ本体部76aの先端部分同士の間に設けられる。
【0040】
接触部76bは、板バネ部材76に生じる弾性力によってディテントプレート71の外周縁71aに押し付けられる。ここでディテントプレート71の外周縁71aのうち接触部76bと接触する位置を接触位置Pと呼ぶ。ディテントプレート71は、接触位置Pで外周縁71aに接触する接触部76bが押し付けられる。接触位置Pは、可動部70aがパーキング位置に位置する場合に、第1谷部79A内に位置する。これにより、接触部76bは、第1谷部79Aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられ、ディテントプレート71およびロッド72をパーキング位置に維持できる。また、接触位置Pは、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合に、第2谷部79B内に位置する。これにより、接触部76bは、第2谷部79Bの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ディテントプレート71およびロッド72を非パーキング位置に維持できる。
【0041】
ディテントプレート71が、中心軸線J1周りに回転すると、接触位置Pは、一方の谷部79の内側から山部71cを乗り越えて他方の谷部79に相対移動する。接触位置Pが山部71cを乗り越える際、板バネ部材76は、接触部76bを介して山部71cから中心軸線J1の径方向外側の力を受け、弾性変形する。すなわち、本実施形態において板バネ部材76は、可動部70aが非パーキング位置とパーキング位置との間で移動する際に、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形する弾性部材である。このように、本実施形態における板バネ部材76は、ディテントプレート71の回転に伴って生じる弾性力により複数の谷部79のいずれか一つに接触される接触部76bを有する弾性部材である。なお、本実施形態において第1谷部79Aと第2谷部79Bとの間で接触部76bが移動する際、ローラである接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面を転がりながら移動する。
【0042】
電動アクチュエータ10は、車両のシフト操作に基づいて切替機構70を駆動する。本実施形態において電動アクチュエータ10は、連結シャフト80を介して可動部70aを左右方向Yに移動させることで切替機構70を駆動し、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。より具体的には、電動アクチュエータ10は、ディテントプレート71を面71fに直交する中心軸線J1周りに回転駆動させ、外周縁71aに接触する接触部76bを有する板バネ部材76の接触位置Pを変える。
【0043】
図3は、電動アクチュエータ10の断面図である。
電動アクチュエータ10は、切替機構70のディテントプレート71をディテントプレートの面方向と直交する中心軸線J1周りに回転駆動する。
【0044】
電動アクチュエータ10は、ケース10Aと、モータ20と、減速機30と、出力シャフト46と、第1ベアリング51と、第2ベアリング52と、第3ベアリング53と、制御部90と、回転センサ95と、センサマグネット45と、電流センサ96と、を備える。第1ベアリング51、第2ベアリング52、および第3ベアリング53は、例えば、ボールベアリングである。
【0045】
ケース10Aは、モータ20、減速機30、出力シャフト46を含む電動アクチュエータ10の各部を内部に収容する。ケース10Aは、ケース本体11と、蓋部材12と、を有する。ケース本体11は、中心軸線J1を中心とする円筒状である。ケース本体11は、軸方向一方側に開口する開口部11hを有する。ケース本体11は、第1収容部11aと、第2収容部11bと、を有する。
【0046】
第1収容部11aは、ケース本体11の軸方向他方側の部分である。第1収容部11aは、軸方向他方側に位置する底板部11cと、底板部11cの径方向外縁から軸方向一方側に延びる周壁部11dと、を有する。底板部11cには、底板部11cを軸方向に貫通する孔部11eが設けられる。孔部11eは、中心軸線J1を中心とする略円形状の孔である。孔部11eの軸方向一方側の部分は、第1ベアリング51を保持する第1ベアリング保持部11fを構成する。第1ベアリング51は、第1ベアリング保持部11fに保持される。
【0047】
第2収容部11bは、ケース本体11の軸方向一方側の部分である。第2収容部11bは、第1収容部11aと軸方向に繋がる。第2収容部11bは、軸方向一方側に開口する筒状である。第2収容部11bの内周面には、軸方向一方側を向く段差面11gを有する段差が設けられる。
【0048】
蓋部材12は、ケース本体11の軸方向一方側の端部に固定される。蓋部材12は、ケース本体11の開口部11hを軸方向一方側から塞ぐ。蓋部材12は、開口部11hを軸方向一方側から塞ぐ蓋本体部12aと、蓋本体部12aから軸方向他方側に突出する第2ベアリング保持部12bと、を有する。第2ベアリング保持部12bは、中心軸線J1を中心とし、軸方向他方側に開口する円筒状である。第2ベアリング保持部12bの内周面には、第2ベアリング52が保持される。
【0049】
モータ20は、例えば三相ブラシレスDCモータである。モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、を有する。ロータ21は、中心軸線J1を中心として回転可能である。ロータ21は、モータシャフト23と、ロータコア24aと、マグネット24bと、を有する。モータシャフト23は、中心軸線J1を中心として回転可能である。モータシャフト23は、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる略円筒状である。モータシャフト23は、中空シャフトである。モータシャフト23は、軸方向の両側に開口する。モータシャフト23は、第1収容部11aの内部と第2収容部11bの内部とに跨って延びている。モータシャフト23は、本体部23aと、偏心軸部23bと、を有する。
【0050】
本体部23aは、モータシャフト23の軸方向一方側の部分である。本体部23aの外周面にはロータコア24aが固定される。本体部23aの軸方向一方側の端部は、第2収容部11bの内部に配置される。本体部23aのうち軸方向一方側の端部以外の部分は、第1収容部11aの内部に配置される。
【0051】
偏心軸部23bは、モータシャフト23の軸方向他方側の部分である。偏心軸部23bは、本体部23aと軸方向に繋がる。偏心軸部23bは、第1収容部11aの内部に配置される。偏心軸部23bは、ロータコア24aよりも軸方向他方側に配置される。軸方向に見て、偏心軸部23bの内周面は、中心軸線J1を中心とする円形状である。軸方向に見て、偏心軸部23bの外周面は、中心軸線J1に対して偏心した偏心軸線J2を中心とする円形状である。偏心軸線J2は、中心軸線J1と平行な仮想軸線である。偏心軸部23bの外周面には、第3ベアリング53の内輪が嵌め合わされて固定される。これにより、第3ベアリング53は、モータシャフト23に固定される。偏心軸部23bは、ロータ21の中心軸線J1周りの回転に伴い偏心回転する。すなわち、モータ20は、偏心回転する偏心軸部23bを有する。
【0052】
ロータコア24aは、中心軸線J1を中心とする円環状である。ロータコア24aは、第1収容部11aの内部に配置される。ロータコア24aは、本体部23aの外周面に固定される。マグネット24bは、ロータコア24aの外周面に固定される。本実施形態において、マグネット24bは、周方向に間隔をあけて複数配置される。
【0053】
ステータ22は、ロータ21と径方向に対向して配置される。ステータ22は、ロータ21の径方向外側に、ロータ21と隙間を介して配置される。ステータ22は、第1収容部11aの内部に配置される。ステータ22は、ロータコア24aを径方向外側から囲む環状のステータコア22aと、ステータコア22aに装着されたインシュレータ22bと、インシュレータ22bを介してステータコア22aに装着された複数のコイル部22cと、を有する。ステータコア22aの外周面は、周壁部11dの内周面に固定されている。これにより、ステータ22は、ケース10Aに固定されている。
【0054】
減速機30は、第1収容部11aの内部に配置される。減速機30は、ロータコア24aおよびステータ22の軸方向他方側に配置される。減速機30は、モータシャフト23および出力シャフト46に連結される。減速機30は、モータ20の回転を減速して出力シャフト46に伝達し出力シャフト46を中心軸線J1周りに回転させる。減速機30は、外歯ギヤ31と、内歯ギヤ32と、フランジ部42と、複数の突出部43と、を有する。
【0055】
外歯ギヤ31は、偏心軸線J2を中心とする円環状である。外歯ギヤ31は、第3ベアリング53の外輪に嵌め合わされる。外歯ギヤ31は、モータシャフト23の偏心軸部23bに第3ベアリング53を介して連結される。これにより、外歯ギヤ31には、モータシャフト23の回転が伝達される。外歯ギヤ31は、偏心軸線J2周りにモータシャフト23と相対的に回転可能である。
【0056】
図4は、減速機30の正面図である。
本実施形態の減速機30は、内接式減速機である。本明細書において、「内接式減速機」とは、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32とを有し、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32との噛み合う場所が、周方向に移動する際に回転を減速する減速機を意味する。
【0057】
外歯ギヤ31は、複数の貫通孔部31bと、外歯歯車部31cと、を有する。本実施形態において、複数の貫通孔部31bのそれぞれは、外歯ギヤ31を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、複数の貫通孔部31bのそれぞれは、円形状である。複数の貫通孔部31bは、中心軸線J1を囲んで配置される。本実施形態において、貫通孔部31bは、8個設けられる。
【0058】
外歯歯車部31cは、外歯ギヤ31の外周面に沿って設けられる。外歯歯車部31cは、外歯ギヤ31の外周面に沿って並ぶ複数の外歯歯部31dによって構成される。本実施形態において、外歯歯車部31cは、79個の外歯歯部31dによって構成される。外歯歯車部31cの歯数N1は、78以下であってもよいし、80以上であってもよい。外歯ギヤ31の歯形は、それぞれ、インボリュート歯形である。
【0059】
図4に示す第1仮想線L1は、軸方向に見て、偏心軸線J2と、外歯歯部31dのピッチ点31fとを結ぶ仮想線である。第1仮想線L1は、偏心軸線J2と直交する直線である。
図4に示すように、ピッチ点31fは、外歯歯部31dの歯面のうち内歯ギヤ32の後述する内歯歯部32bと接触する部分である。第1接線L3は、外歯歯部31dの歯面と接する接線のうち、ピッチ点31fと接する接線である。第1仮想線L1と第1接線L3とが成す角度は、外歯歯部31dの圧力角α1である。圧力角α1は、外歯ギヤ31の歯形の圧力角である。本実施形態において、複数の外歯歯部31dそれぞれの圧力角α1は、22°以上、25.5°以下である。
【0060】
内歯ギヤ32は、外歯ギヤ31の径方向外側に配置される。内歯ギヤ32は、外歯ギヤ31を径方向外側から囲む。内歯ギヤ32は、中心軸線J1を中心とする環状である。
図3に示すように、内歯ギヤ32の外周面は、周壁部11dの内周面に固定される。すなわち、内歯ギヤ32は、ケース10Aに固定される。
図4に示すように、内歯ギヤ32は、内歯歯車部32aを有する。
【0061】
内歯歯車部32aは、内歯ギヤ32の内周面に沿って設けられる。内歯歯車部32aは、内歯ギヤ32の内周面に沿って並ぶ複数の内歯歯部32bによって構成される。本実施形態において、内歯歯車部32aは、80個の内歯歯部32bによって構成される。内歯歯車部32aの歯数N2は、79以下であってもよいし、81以上であってもよい。内歯歯車部32aの一部は、外歯歯車部31cの一部と噛み合っている。すなわち、内歯ギヤ32は、外歯ギヤ31の少なくとも一部と噛み合う。本実施形態において、内歯ギヤ32の歯形は、それぞれ、インボリュート歯形である。
【0062】
図4に示す第2仮想線L2は、軸方向に見て、中心軸線J1と、内歯歯部32bのピッチ点32dとを結ぶ仮想線である。第2仮想線L2は、中心軸線J1と直交する直線である。
図4に示すように、ピッチ点32dは、内歯歯部32bの歯面のうち外歯歯部31dのピッチ点31fと接触する部分である。第2接線L4は、内歯歯部32bの歯面と接する接線のうち、ピッチ点32dと接する接線である。第2仮想線L2と第2接線L4とが成す角度は、内歯歯部32bの圧力角α2である。圧力角α2は、内歯ギヤ32の歯形の圧力角である。本実施形態において、複数の内歯歯部32bそれぞれの圧力角α2は、22°以上、25.5°以下である。圧力角α1と圧力角α2とは、互いに同じ角度であってもよいし、互いに異なる角度であってもよい。本実施形態において、圧力角α1と圧力角α2とは、互いに同じ角度である。
【0063】
図3に示すように、フランジ部42は、外歯ギヤ31の軸方向他方側に配置される。フランジ部42は、外歯ギヤ31と軸方向に間隔をあけて配置される。フランジ部42は、中心軸線J1を中心とする円環状である。フランジ部42は、出力シャフト46のうちモータシャフト23よりも軸方向他方側の部分に固定される。フランジ部42には、複数の突出部43が設けられる。
【0064】
本実施形態において、複数の突出部43のそれぞれは、フランジ部42から軸方向一方側に突出する円柱状である。本実施形態において、複数の突出部43とフランジ部42とは、同一の単一部材の一部である。
図4に示すように、複数の突出部43それぞれの外径は、複数の貫通孔部31bそれぞれの内径よりも小さい。複数の突出部43は、中心軸線J1を囲んで配置される。本実施形態において、突出部43は、8個設けられる。
図3に示すように、複数の突出部43のそれぞれは、複数の貫通孔部31bのそれぞれに軸方向他方側から挿入される。
図4に示すように、各突出部43は、貫通孔部31bの内側面を介して、外歯ギヤ31を中心軸線J1周りに揺動可能に支持する。
【0065】
出力シャフト46は、電動アクチュエータ10の駆動力を、連結シャフト80を介して切替機構70に出力する。
図3に示すように、出力シャフト46は、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる。出力シャフト46は、中心軸線J1を中心に回転可能である。出力シャフト46には、減速機30を介してモータシャフト23の回転が伝達される。出力シャフト46は、モータシャフト23の内部を軸方向に通される。出力シャフト46は、モータシャフト23から軸方向両側に突出している。すなわち、出力シャフト46の少なくとも一部は、モータシャフト23の内部に位置する。なお、出力シャフト46とフランジ部42とは、同一の単一部材の一部であってもよい。
【0066】
出力シャフト46は、出力シャフト本体41と、出力シャフト本体41の外周面に固定される取付部材44と、を有する。出力シャフト本体41は、軸方向に延びる。出力シャフト本体41は、第1ベアリング51および第2ベアリング52によって、中心軸線J1周りに回転可能に支持される。出力シャフト本体41は、連結部41aと、延伸部41bと、を有する。
【0067】
連結部41aは、出力シャフト本体41の軸方向他方側の部分である。連結部41aは、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。連結部41aは、軸方向他方側に開口する。連結部41aの軸方向他方側の端部は、孔部11eの内部に挿入されている。連結部41aの軸方向一方側の端部は、偏心軸部23bの内部に挿入されている。連結部41aは、第1ベアリング51によって中心軸線J1周りに回転可能に支持される。
【0068】
連結部41aの内部には、軸方向他方側から連結シャフト80の端部81が挿入可能である。連結シャフト80の端部81の外周面に設けられた複数のスプライン溝が、連結部41aの内周面に設けられた複数のスプライン溝に嵌め合わされると、連結部41aと連結シャフト80とが互いに連結される。また、出力シャフト46は、連結シャフト80を介してディテントプレート71(
図2参照)に連結される。出力シャフト46の回転は、連結シャフト80を介してディテントプレート71に伝達される。これにより、電動アクチュエータ10は、切替機構70を駆動する。
【0069】
延伸部41bは、出力シャフト本体41の軸方向一方側の部分である。延伸部41bは、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる円柱状である。延伸部41bは、連結部41aと軸方向に繋がる。延伸部41bは、モータシャフト23の内部を軸方向に通される。延伸部41bの軸方向一方側の部分は、モータシャフト23よりも軸方向一方側に突出する。延伸部41bの軸方向一方側の端部は、第2ベアリング52によって中心軸線J1周りに回転可能に支持される。上述のように、連結部41aは、第1ベアリング51によって中心軸線J1周りに回転可能に支持される。これらにより、出力シャフト46は、第1ベアリング51および第2ベアリング52を介して、ケース10Aに支持される。
【0070】
本実施形態において、延伸部41bの外径は、モータシャフト23の本体部23aの内径よりも僅かに小さい。延伸部41bは、本体部23aの内部に隙間嵌めされる。延伸部41bと本体部23aとの間の径方向の隙間は、延伸部41bによって、モータシャフト23を中心軸線J1周りに回転可能に支持できる程度に小さい。よって、モータシャフト23は、出力シャフト46、第1ベアリング51、および第2ベアリング52を介して、ケース10Aに支持される。これにより、ケース10Aに対して、モータシャフト23が径方向に移動することを抑制できる。
【0071】
取付部材44は、延伸部41bの外周面のうちモータシャフト23よりも軸方向一方側の部分に固定される。取付部材44は、固定筒部44aと、環状部44bと、を有する。固定筒部44aは、中心軸線J1を中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。固定筒部44aは、延伸部41bの外周面に固定される。環状部44bは、固定筒部44aの軸方向他方側の端部から径方向外側に広がる略円環板状である。
【0072】
センサマグネット45は、中心軸線J1を囲む環状である。センサマグネット45は、固定筒部44aの外周面に固定される。センサマグネット45の径方向外縁部は、環状部44bよりも径方向外側に位置し、回転センサ95と軸方向に対向する。
【0073】
軸方向において、モータシャフト23の本体部23aの軸方向他方側の端部と、出力シャフト46の連結部41aの軸方向一方側の端部との間には、ワッシャ61が配置される。ワッシャ61は、延伸部41bを囲む円環板状である。ワッシャ61の板面は、軸方向を向く。ワッシャ61は、本体部23aおよび連結部41aのそれぞれと軸方向に接触する。また、軸方向において、本体部23aの軸方向一方側の端部と環状部44bとの間には、ワッシャ62が配置される。ワッシャ62は、延伸部41bを囲む円環板状である。
ワッシャ62の板面は、軸方向を向く。ワッシャ62は、本体部23aおよび環状部44bのそれぞれと軸方向に接触する。ワッシャ61およびワッシャ62は、例えば、スリップワッシャである。
【0074】
制御部90は、モータ20を制御する。制御部90は、ステータ22の軸方向一方側に配置される。制御部90は、基板91と、基板91に実装される複数の素子(図示略)と、を有する。基板91は、ケース10Aの段差面11gに固定される。基板91は、径方向に広がる板状である。基板91および基板91に実装される素子は、モータ20に電力を供給するインバータ回路が設けられる。図示を省略するが、基板91は、ステータ22の複数のコイル部22cのそれぞれと電気的に接続される。制御部90は、複数のコイル部22cのそれぞれに供給する電力を制御する。基板91には、貫通孔91aが設けられる。軸方向に見て、貫通孔91aは、中心軸線J1を中心とする円形状である。貫通孔91aには、出力シャフト46の延伸部41bが軸方向に通される。
【0075】
基板91には、回転センサ95と電流センサ96とが実装される。すなわち、制御部90は、回転センサ95および電流センサ96に接続される。制御部90は、回転センサ95における回転角度の検出結果、および電流センサ96における電流値の検出結果を基にモータ20を制御する。
【0076】
回転センサ95は、制御部90の軸方向一方側を向く面うち貫通孔91aの周縁部に固定される。回転センサ95は、出力シャフト46に固定されるセンサマグネット45の径方向外縁部と軸方向に対向する。本実施形態において、回転センサ95は、磁気センサである。回転センサ95は、例えば、ホールICなどのホール素子である。回転センサ95は、センサマグネット45の磁界を検出することでセンサマグネット45の回転を検出する。これにより、回転センサ95は、出力シャフト46の回転角度を検出する。回転センサ95は、モータシャフト23の回転角度を検出するものであってもよい。この場合、回転センサ95は、検出したモータシャフト23の回転角度と減速機30の減速比から連結シャフト80の回転角度を算出する。すなわち、回転センサ95は、出力シャフト46の回転角度を間接的に検出するものであってもよい。
【0077】
電流センサ96は、モータ20に流れる電流値を検出する。電流センサ96は、例えば、シャント抵抗を用いる方式の電流センサである。なお、モータ20に流れる電流値とは、すなわち、制御部90がステータ22に供給する電流値である。モータ20に流れる電流値は、モータ20のロータ21が出力するトルクと相関関係を有する。制御部90は、ステータ22に流れる電流値を監視することで、ロータ21の回転時にロータ21に加わる反力を監視できる。
【0078】
なお、制御部90は、電流センサ96によって検出される検出値に対しローパスフィルタをかけてノイズを除去することが好ましい。電流センサ96の検出値には、歯車の表面粗さや、ロータ21とステータ22との間の磁気的な脈動に起因するノイズが重畳される場合がある。制御部90がローパスフィルタを有することで、このようなノイズに対し、制御部90が電流値をご検知することを抑制できる。
【0079】
制御部90からモータ20に電力が供給されてモータシャフト23が中心軸線J1周りに回転すると、偏心軸部23bは、中心軸線J1を中心として周方向に公転する。偏心軸部23bの公転は、第3ベアリング53を介して外歯ギヤ31に伝達される。外歯ギヤ31は、貫通孔部31bの内周面と突出部43の外周面との接触する位置が変化しつつ、中心軸線J1周りに公転する。外歯ギヤ31が中心軸線J1周りに公転すると、外歯ギヤ31の外歯歯車部31cと内歯ギヤ32の内歯歯車部32aとの噛み合う位置が、周方向に変化する。これにより、外歯ギヤ31を介して、内歯ギヤ32にモータシャフト23の駆動力が伝達される。
【0080】
上述のように、内歯ギヤ32は、ケース10Aに固定されている。そのため、内歯ギヤ32に伝達される駆動力の反力によって、外歯ギヤ31は偏心軸線J2周りに回転する。このとき、外歯ギヤ31の回転は、モータシャフト23の回転に対して減速される。本実施形態の減速機30の構成では、モータシャフト23の回転に対する出力シャフト46の回転の減速比、すなわち減速機30の減速比Rは、R=(N2-N1)/N1で表される。上述のように、本実施形態において、外歯歯車部31cの歯数N1は、79であり、内歯歯車部32aの歯数N2は、80である。したがって、本実施形態における減速比Rは、1/79となる。したがって、本実施形態の減速機30によれば、モータシャフト23の回転に対する出力シャフト46の回転の減速比Rを比較的大きくできるとともに、モータシャフト23の回転トルクに対する出力シャフト46の回転トルクを大きくできる。
【0081】
外歯ギヤ31の偏心軸線J2周りの回転は、貫通孔部31bの内側面および突出部43を介して、フランジ部42に伝達され、フランジ部42が中心軸線J1周りに回転する。上述のように、出力シャフト46は、フランジ部42と固定されるため、出力シャフト46は、フランジ部42とともに中心軸線J1周りに回転する。すなわち、フランジ部42は、外歯ギヤ31の回転を出力シャフト46に伝達する。このようにして、出力シャフト46には、減速機30を介してモータシャフト23の回転が伝達される。
【0082】
図4に示す外歯歯部31dの圧力角α1は、大きくなるにしたがって、外歯歯部31dの歯面は、径方向外側を向く。一方で、内歯歯部32bの圧力角α2は、大きくなるにしたがって、内歯歯部32bの歯面は径方向内側を向く。そのため、圧力角α1および圧力角α2が大きくなるにしたがって、外歯歯部31dから内歯歯部32bに加わる力のうち周方向を向く周方向成分が低下する。これにより、内歯歯部32bから外歯歯部31dに加わる反力の周方向成分が低下するため、外歯ギヤ31が偏心軸線J2周りに回転する回転トルクが低下する。すなわち、圧力角α1および圧力角α2が大きくなるにしたがって、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32との間の駆動伝達効率が低下する。
【0083】
本実施形態によれば、上述のように、複数の外歯歯部31dの圧力角α1および複数の内歯歯部32bの圧力角α2は、それぞれ、25.5°以下である。よって、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32との間の駆動伝達効率が低下しすぎることを抑制できるため、電動アクチュエータ10の駆動効率が低下しすぎることを抑制できる。
【0084】
表1は、外歯歯部31dの圧力角α1(外歯ギヤ31の歯形の圧力角)および内歯歯部32bの圧力角α2(内歯ギヤ32の歯形の圧力角)のそれぞれと、電動アクチュエータ10の逆駆動時の逆駆動トルクTrとの関係を示す。
【0085】
【0086】
本実施形態において、逆駆動では、出力シャフト46に回転トルクを加えて出力シャフト46を中心軸線J1周りに回転させ、減速機30を介して出力シャフト46の回転をモータシャフト23に伝達して、モータシャフト23を中心軸線J1周りに駆動する。本実施形態において、逆駆動では、制御部90からステータ22への電力の供給は停止されている。本実施形態において、逆駆動トルクTrは、出力シャフト46に加える回転トルクであって、電動アクチュエータ10を逆駆動するために必要な回転トルクである。表1において、逆駆動トルクTrの欄に示す「×」は、電動アクチュエータ10の逆駆動トルクTrが大きくなりすぎたため、電動アクチュエータ10を逆駆動できなかったことを示す。
【0087】
圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが17°以上、21°以下においては、逆駆動トルクTrは、1.3[N・m]以上、10.6[N・m]以下の範囲であり、電動アクチュエータ10を逆駆動できた。また、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが22°より大きくなると、電動アクチュエータ10の逆駆動トルクTrが大きくなりすぎたため、電動アクチュエータ10を逆駆動できない。
【0088】
このように、外歯ギヤ31および内歯ギヤ32の歯形は、それぞれ、インボリュート歯形であり、外歯ギヤ31の歯形の圧力角α1、および内歯ギヤ32の歯形の圧力角α2は、それぞれ、22°以上とすることによって、電動アクチュエータ10が逆駆動することを抑制できる。なお、外歯歯車部31cの歯数および内歯歯車部32aの歯数が、本実施形態と異なる場合についても、圧力角α1,α2を22°以上とすることで、同様に、電動アクチュエータ10が逆駆動することを抑制できる。これは、外歯歯車部31cおよび内歯歯車部32aの歯数によらず、圧力角α1,α2が22°以上の場合、外歯ギヤ31に加わる力のうち外歯ギヤ31をモータシャフト23に押し付ける成分が、外歯ギヤ31に加わる力のうち外歯歯部31dと内歯歯部32b同士の噛み合いが外れる向きに外歯ギヤ31を移動させて、外歯ギヤ31を中心軸線J1周りに公転させる成分よりも大きくなるためであると考えられる。圧力角α1,α2が22°以上の場合には、出力シャフト46に対して逆駆動させる回転トルクを加えるほど、外歯ギヤ31がモータシャフト23に押し付けられる力の反力で外歯歯部31dと内歯歯部32b同士が強く噛み合うため、逆駆動トルクTrが無限大となり、電動アクチュエータ10が逆駆動することを抑制できるものと考えられる。
【0089】
次に本実施形態の制御部90による制御方法について説明する。切替機構70に組み付けられた電動アクチュエータ10は、セルフラーニング工程を行う。セルフラーニング工程において、制御部90は、接触部76bが第1谷部79Aおよび第2谷部79Bの底部79cにそれぞれ配置される際のディテントプレート71の回転角度(底位置回転角度θc)を記憶する。記憶した底位置回転角度θcは、出力シャフト46の回転角度の制御に利用される。
【0090】
図5~
図7は、本実施形態のディテントプレート71および接触部76bの模式図である。
図5は、セルフラーニング工程の初期状態を示し、
図6は、セルフラーニング工程の第1取得工程を示し、
図7は、セルフラーニング工程の第2取得工程を示す。また、各図において、周方向一方側(一方側外周縁)を+θで表示し、周方向他方側(他方側外周縁)を-θで表示する。
【0091】
図5に示すように、ディテントプレート71の複数の谷部79は、それぞれ、底部79cと、第1傾斜面79dと、第2傾斜面79eと、を有する。底部79cは、中心軸線J1の径方向と直交する部分である。第1傾斜面79dは、底部79cの周方向一方側(+θ)に連続的に延びる。つまり、第1傾斜面79dは、底部79c一方側外周縁(外周縁71aの一方側)に底部79cから続いている。第2傾斜面79eは、底部79cの周方向他方側(-θ)に連続的に延びる。つまり、第2傾斜面79eは、底部79cの他方側外周縁(外周縁71aの他方側)に底部79cから続いている。第1傾斜面79d、および第2傾斜面79eは、それぞれ滑らかに湾曲する。
【0092】
本実施形態において、第1谷部79Aと第2谷部79Bとは、互いに同形状である。また、それぞれの谷部79において、第1傾斜面79dと第2傾斜面79eとは、軸方向から見て、底部79cと中心軸線J1とを通過する基準線L5に対し線対称形状となっている。
【0093】
以下の説明において、ディテントプレート71の外周縁71aの各部分における「傾斜角」とは、ディテントプレート71を軸方向から見て、各部分の周方向(径方向と直交する方向)に対する角度を意味する。それぞれの谷部79は、底部79cにおける傾斜角が、0°となる。
【0094】
第1傾斜面79dは、第1領域79daと第2領域79dbとを有する。第1領域79daは、第2領域79dbよりも底部79c側に位置する。第1領域79daは、底部79cに続く。第1領域79daは、径方向内側に向かって窪む凹状の湾曲面である。第1領域79daの曲率中心は、外周縁71aに対し径方向外側に位置する。第1領域79daの傾斜角は、底部79cから離れるに従い徐々に大きくなる。
【0095】
第2領域79dbは、第1領域79daよりも底部79cから離れた側に位置する。第2領域79dbは、径方向外側に向かって凸状の湾曲面である。第2領域79dbの曲率中心は、外周縁71aに対し径方向内側に位置する。第2領域79dbの傾斜角は、底部79cから離れるに従い徐々に小さくなる。第1領域79daと第2領域79dbとの間には、第1境界部79dcが設けられる。第1境界部79dcは、湾曲方向が逆転する変曲点である。
【0096】
第2傾斜面79eは、第3領域79eaと第4領域79ebとを有する。第3領域79eaは、第4領域79ebよりも底部79c側に位置する。第3領域79eaは、底部79cに続く。第3領域79eaは、径方向内側に向かって窪む凹状の湾曲面である。第3領域79eaの曲率中心は、外周縁71aに対し径方向外側に位置する。第3領域79eaの傾斜角は、底部79cから離れるに従い徐々に大きくなる。
【0097】
第4領域79ebは、第3領域79eaよりも底部79cから離れた側に位置する。第4領域79ebは、径方向外側に向かって凸状の湾曲面である。第4領域79ebの曲率中心は、外周縁71aに対し径方向内側に位置する。第4領域79ebの傾斜角は、底部79cから離れるに従い徐々に小さくなる。第3領域79eaと第4領域79ebとの間には、第2境界部79ecが設けられる。第2境界部79ecは、湾曲方向が逆転する変曲点である。
【0098】
本実施形態の組み立て直後の切替機構70において、接触部76bは、ディテントプレート71の何れかの谷部79の内部に配置される。
図5では、接触部76bと外周縁71aとの接触位置Pが、第1谷部79Aの底部79cに位置する場合について図示する。しかしながら、組立直後の接触位置Pは、第2谷部79Bの内部に位置していてもよいし、何れかの谷部79の内部において第1傾斜面79d又は第2傾斜面79eに位置していてもよい。
【0099】
ここでは、2つの谷部79のうち、第1谷部79Aに関するセルフラーニング工程について説明する。本実施形態のセルフラーニング工程は、第1取得工程と、回帰工程と、第2取得工程と、演算工程と、を有する。本実施形態の制御部90は、第1谷部79Aに関するセルフラーニング工程を行った後に、同様の手順で第2谷部79Bに関するセルフラーニング工程を行う。なお、第2谷部79Bに関するセルフラーニング工程を行った後に、第1谷部79Aのセルフラーニング工程を行ってもよい。また、第1谷部79Aと第2谷部79Bのセルフラーニング工程を一括して行ってもよい。
【0100】
図6に示す第1取得工程において、制御部90は、モータ20を駆動することでディテントプレート71を中心軸線J1周りの周方向他方側(-θ)に回転させる。制御部90は、例えば、接触位置Pが、第1境界部79dcを超える程度に、ディテントプレート71を周方向他方側(-θ)に回転させる。これにより、接触位置Pは、ディテントプレート71に対し周方向一方側(+θ)に相対的に移動するとともに第1傾斜面79dに沿って中心軸線J1の径方向外側に移動する。制御部90は、ディテントプレート71を回転させながら、回転センサ95によって検出される出力シャフト46の回転角度、および電流センサ96によって検出されるモータ20の電流値を監視する。なお、出力シャフト46の回転角度とは、すなわちディテントプレート71の回転角度を意味する。
以下の説明において、ディテントプレート71の回転に伴い、接触位置Pのディテントプレート71に相対して移動する角度を「移動角度」と呼ぶ、接触位置Pの移動角度は、ディテントプレート71の回転角度と、絶対値が等しく正負が逆転した角度である。
【0101】
図8は、第1取得工程におけるモータ20の電流値(絶対値)と、中心軸線J1周りの接触位置Pの移動角度の関係を示すグラフである。
第1取得工程は、制御部90がモータ20を駆動し接触位置Pが第1傾斜面79dを通過する際に電流センサ96で検出される電流値が第1閾値Iaを超えた際の回転センサ95の検出角度を第1回転角度θaとして取得する工程である。
【0102】
接触位置Pが第1傾斜面79dに沿って周方向一方側(+θ)に移動すると、接触部76bがディテントプレート71に及ぼす反力も大きくなるため、モータ20に流れる電流値も徐々に大きくなる。制御部90は、電流値が、予め設定される第1閾値Iaを超えた際の回転センサの検出角度を第1回転角度θaとして取得する。
【0103】
図8に示すように、接触位置Pが第1回転角度θaを取得するまでの間に、モータ20の電流値は、1又は2以上のノイズn1、n2によって第1閾値Iaを超える場合がある。ノイズn1、n2の原因としては、モータ20のロータコア24aの磁気的な不均一や、減速機30のギヤの噛み合いにおける摩擦などが想定される。これらのノイズn1、n2は、完全になくすことが困難である。本実施形態において、制御部90は、第1取得工程において、電流センサ96で検出される電流値が第1閾値Iaを超える度に、第1回転角度θaを更新することで、ノイズn1、n2が発生する場合においても、適切に第1回転角度θaを検出(取得)することができる。なお、本明細書において、電流のノイズとは、出力トルクと無関係に発生する電流値の乱れを意味する。
【0104】
ここで、第1取得工程において、ノイズn1、n2が発生する際の接触位置Pの移動角度をそれぞれ第1ノイズ角度θa1、第2ノイズ角度θa2と呼ぶ。
図8に示す例では、接触位置Pが周方向一方側(+θ)に移動し、移動角度が第1ノイズ角度θa1に達する際に、電流値にはノイズn1が重畳して制御部90は、モータ20の電流値が第1閾値Iaを超えたことを検知する。これにより、制御部90は、まず、第1回転角度として、第1ノイズ角度θa1を取得する。
【0105】
制御部90は、第1回転角度として第1ノイズ角度θa1を取得した後にも、ディテントプレート71を回転させ、接触位置Pを周方向一方側(+θ)に移動させる。ノイズn1は、電流値が瞬間的に高くなる極値として検出されるため、接触位置Pが第1ノイズ角度θa1を超えた後に、電流値は再び第1閾値Iaを下回る。制御部90は、接触位置Pの移動角度が第2ノイズ角度θa2に達する際に、モータ20の電流値が第1閾値Iaを超えたことを再び検知する。制御部90は、第1回転角度を更新し、第1回転角度として、第2ノイズ角度θa2を取得する。
【0106】
さらに、制御部90は、ディテントプレート71の回転駆動を継続する。接触位置Pが第2ノイズ角度θa2を超えた後に、電流値は再び第1閾値Iaを下回る。制御部90は、接触位置Pの移動角度が第1回転角度θaに達する際に、モータ20の電流値が第1閾値Iaを超えたことを再度検知して第1回転角度を更新する。この後にも、ディテントプレート71の回転は、所定の角度に達するまで継続されるが、モータ20の電流値は、上昇を続けるため電流値が第1閾値Iaを下回ることがない。このため、接触位置Pが第1回転角度θaを超えた後に、制御部90は、電流値が第1閾値Iaを超える現象を検知することはなく、第1回転角度θaがさらに更新されることはない。本実施形態によれば、制御部90が、第1取得工程において、電流センサ96で検出される電流値が第1閾値Iaを超える度に、第1回転角度を更新することで、ノイズn1、n2が発生する場合においても、適切に第1回転角度θaを取得できる。
【0107】
なお、第1取得工程におけるモータ20の電流値は、接触位置Pが第1領域79daを通過する際に比較的急激に大きくなり、接触位置Pが第2領域79dbを通過する際に比較的緩やかに大きくなる。本実施形態では、第1回転角度θaを第1領域79da内に設定することが好ましい。これにより、制御部90は、電流値が急激に大きくなる領域で第1閾値Iaを超えたことを監視すればよく、第1閾値Iaを超えたことを正確に判定しやすくなる。このため、制御部90は、より正確な第1回転角度θaを得ることができる。なお、第1回転角度θaは、第2領域79db内に設定されていてもよい。
【0108】
制御部90は、第1取得工程を行った後に、接触位置Pを
図5に示す初期状態とする回帰工程を行う。第1取得工程を行った直後の接触位置Pは、第1傾斜面79dの第2領域79db、又は第2領域79dbよりも周方向一方側(+θ)に位置する。制御部90は、回帰工程において、ディテントプレート71を周方向一方側(+θ)に一定角度だけ回転させる。より具体的には、制御部90は、回帰工程において、第1取得工程におけるディテントプレート71の回転角度と、同じ角度だけディテントプレート71を第1取得工程と反対側に回転させる。これにより、制御部90は、接触位置Pを周方向他方側(-θ)に移動させて第1谷部79Aの底部79c近傍に位置させる。回帰工程後の接触位置Pは、必ずしも完全に底部79cに一致する必要はなく、底部79cに対し若干、周方向一方側又は他方側にずれて配置されていてもよい。回帰工程を経ることで、電動アクチュエータ10は、第2取得工程を行う準備を完了させる。
【0109】
図7に示す第2取得工程において、制御部90は、モータ20を駆動することでディテントプレート71を中心軸線J1周りの周方向一方側(+θ)に回転させる。制御部90は、例えば、接触位置Pが、第2境界部79ecを超える程度に、ディテントプレート71を周方向一方側(+θ)に回転させる。これにより、接触位置Pは、ディテントプレート71に対し周方向他方側(-θ)に相対的に移動するとともに第2傾斜面79eに沿って中心軸線J1の径方向外側に移動する。制御部90は、ディテントプレート71を回転させながら、回転センサ95によって検出される出力シャフト46の回転角度、および電流センサ96によって検出されるモータ20の電流値を監視する。
【0110】
図9は、第2取得工程におけるモータ20の電流値(絶対値)と、中心軸線J1周りの接触位置Pの移動角度の関係を示すグラフである。なお、第1取得工程と第2取得工程とでは、モータ20の回転方向が逆転しているため、第1取得工程と第2取得工程とで、電流値の実測値は正負逆転する。
【0111】
第2取得工程は、制御部90がモータ20を駆動し接触位置Pが第2傾斜面79eを通過する際に電流センサ96で検出される電流値が第2閾値Ibを超えた際の回転センサ95の検出角度を第2回転角度θbとして取得する工程である。
【0112】
接触位置Pが、第2傾斜面79eに沿って周方向他方側(-θ)に移動すると、接触部76bがディテントプレート71に及ぼす反力も大きくなるため、モータ20に流れる電流値も徐々に大きくなる。制御部90は、電流値が、予め設定される第2閾値Ibを超えた際の回転センサの検出角度を第2回転角度θbとして取得する。本実施形態において、第1閾値Iaと第2閾値Ibとは、互いに異なる値であるが、これらは互いに同じ値であってもよい。第1取得工程および第2取得工程にける第1閾値Iaおよび第2閾値Ibは、それぞれの谷部79の形状に応じて適当に設定される。
【0113】
図9に示すように、第2取得工程においても第1取得工程と同様に、接触位置Pが第2回転角度θbを取得するまでの間に、モータ20の電流値は、1又は2以上のノイズn3、n4によって第2閾値Ibを超える場合がある。本実施形態において、制御部90は、第2取得工程において、電流センサ96で検出される電流値が第2閾値Ibを超える度に、第2回転角度θbを更新することで、ノイズn3、n4が発生する場合においても、適切に第2回転角度θbを取得できる。
【0114】
ここで、第2取得工程において、ノイズn3、n4が発生する際の接触位置Pの移動角度をそれぞれ第3ノイズ角度θb3、第4ノイズ角度θb4と呼ぶ。
図9に示す例では、接触位置Pが周方向他方側(-θ)に移動し、移動角度が第3ノイズ角度θb3に達する際に、電流値にはノイズn3が重畳して制御部90は、モータ20の電流値が第2閾値Ibを超えたことを検知する。これにより、制御部90は、まず、第2回転角度として、第3ノイズ角度θb3を取得する。
【0115】
制御部90は、第2回転角度として第3ノイズ角度θb3を取得した後にも、ディテントプレート71を回転させ、接触位置Pを周方向他方側(-θ)に移動させる。接触位置Pが第3ノイズ角度θb3を超えた後に、電流値は再び第2閾値Ibを下回る。制御部90は、接触位置Pの移動角度が第4ノイズ角度θb4に達する際に、ノイズn4によってモータ20の電流値が第2閾値Ibを超えたことを再び検知する。制御部90は、第2回転角度を更新し、第2回転角度として、第4ノイズ角度θb4を取得する。
【0116】
さらに、制御部90は、ディテントプレート71の回転駆動を継続する。接触位置Pが第4ノイズ角度θb4を超えた後に、電流値は再び第2閾値Ibを下回る。制御部90は、接触位置Pの移動角度が第2回転角度θbに達する際に、モータ20の電流値が第2閾値Ibを超えたことを再度検知して第2回転角度を更新する。この後にも、ディテントプレート71の回転は、所定の角度に達するまで継続される。しかしながら、モータ20の電流値は、上昇を続けるため電流値が第2閾値Ibを下回ることがない。このため、接触位置Pが第2回転角度θbを超えた後に、制御部90は、電流値が第2閾値Ibを超える現象を検知することはなく、第2回転角度θbがさらに更新されることはない。本実施形態によれば、制御部90が、第2取得工程において、電流センサ96で検出される電流値が第2閾値Ibを超える度に、第2回転角度を更新することで、ノイズn3、n4が発生する場合においても、適切に第2回転角度θbを取得できる。
【0117】
なお、第2取得工程におけるモータ20の電流値は、接触位置Pが第3領域79eaを通過する際に比較的急激に大きくなり、接触位置Pが第4領域79ebを通過する際に比較的緩やかに大きくなる。本実施形態では、第2回転角度θbを第3領域79ea内に設定することが好ましい。これにより、制御部90は、電流値が急激に大きくなる領域で第2閾値Ibを超えたことを監視すればよく、第2閾値Ibを超えたことを正確に判定しやすくなる。このため、制御部90は、より正確な第2回転角度θbを得ることができる。なお、第2回転角度θbは、第4領域79eb内に設定されていてもよい。
【0118】
図10は、
図8および
図9に示す接触位置Pの移動角度と電流値(絶対値)との関係のグラフを1つのグラフとしてまとめたものである。
制御部90は、第1取得工程および第2取得工程の後に演算工程を行う。演算工程において制御部90は、第1回転角度θaと第2回転角度θbとの間の回転角度を接触位置Pが底部79cに位置する状態の底位置回転角度θcとして記憶する。制御部90は、演算工程において、第1回転角度θaと第2回転角度θbとの間を予め設定される比率で分けた角度を底位置回転角度θcとして記憶する。
【0119】
本実施形態において、制御部90は、第1回転角度θaと第2回転角度θbと中央の角度を第1谷部79Aの底位置回転角度θcとする。すなわち、本実施形態の制御部90には、予め設定される比率として「1:1」が記憶されている。制御部90は、演算工程において、第1回転角度θaと第2回転角度θbとの間を1:1で分けた角度を底位置回転角度θcとして記憶する。すなわち、本実施形態の底位置回転角度θcは、以下の式で表される。
θc=(θa+θb)/2
【0120】
本実施形態では、予め設定される比率として「1:1」の場合を例示した。しかしながら、この比率は一例であり、第1傾斜面79dと第2傾斜面79eの形状に応じて適切に設定される。また、予め設定される比率として、第1回転角度θaと第2回転角度θbとの間を「x:y」で分けた角度を底位置回転角度θcとする場合、底位置回転角度θcは、以下の式で表される。
θc={(y×θa)+(x×θb)}/(x+y)
比率を適切に設定することで、第1傾斜面79dと第2傾斜面79eとが底部79cを中心とする対称形状ではない場合であっても、底位置回転角度θcを算出することができる。なお、「x:y」に代入される値は、予備実験を行うなどして適切な値を予め求めて制御部90に記録しておく。
【0121】
本実施形態で記憶される底位置回転角度θcは、モータ20の駆動による切替機構70の動作において、ディテントプレート71の停止位置として使用される。本実施形態の制御部90は、上述のセルフラーニング工程を、第1谷部79Aおよび第2谷部79Bに対してそれぞれ行うことで第1谷部79Aおよび第2谷部79Bの底位置回転角度θcをそれぞれ記憶する。すべての谷部79に対するセルフラーニング工程が終わった後に、制御部90は、すべての谷部79に対応する複数の底位置回転角度θcを記憶することとなる。本実施形態において、第1谷部79Aの底位置回転角度θcは、パーキング状態のディテントプレート71の停止位置としてモータ20の制御に利用される。一方で、第2谷部79Bの底位置回転角度θcは、非パーキング状態のディテントプレート71の停止位置としてモータ20の制御に利用される。
【0122】
本実施形態の制御部90は、セルフラーニング工程として、1つの谷部79に対し、第1取得工程と第2取得工程と演算工程とを行う。本実施形態によれば、制御部90は、第1取得工程、第2取得工程、および演算工程を経ることで、ディテントプレート71の谷部79の底部79cの底位置回転角度θcを記憶することができる。本実施形態の制御部90は、セルフラーニング工程で記憶した各谷部79の底位置回転角度θcをモータ20の制御に利用することで、パーキング状態と非パーキング状態との相互の移行時にディテントプレート71を正確に回転させることができる。これにより、モータ20の停止後に板バネ部材76の弾性力によってディテントプレート71が回転することを抑制でき、切替機構70の応答性を高めることができる。さらに、本実施形態の減速機30を有する電動アクチュエータ10のように、逆駆動を許容しない電動アクチュエータ10においても、接触位置Pを底部79cに正確に位置させることが可能となる。
【0123】
なお、制御部90が行うセルフラーニング工程は、本実施形態に限定されず、その他の構成を採用してもよい。例えば、セルフラーニング工程は、第1取得工程および演算工程のみを有し、第2取得工程を有していなくてもよい。第2取得工程を有さない場合、制御部90は、第1回転角度θaのみを取得し、第2回転角度θbを取得しない。また、第2取得工程を有さない場合、制御部90は、演算工程において、第1回転角度θaを用いて、接触位置Pが底部79cに位置する状態の底位置回転角度θcを演算し記憶する。一例として、制御部90は、第1回転角度θaに対し所定の角度を足す又は引くことで底位置回転角度θcを算出する。すなわち、制御部90が行うセルフラーニング工程は、第1回転角度θaを取得する第1取得工程と、第1回転角度θaを用いて底位置回転角度θcを演算し記載する演算工程と、を有していれば、必ずしも第2取得工程を有していなくてもよい。また、第2取得工程として、本実施形態とは異なる手順で第2回転角度θbを取得する工程を行っていてもよい。一例として、第2取得工程は、接触位置Pを底部79cに近づける方向に第2傾斜面79eを移動させて、電流センサ96で検出されるモータ20の電流値が、所定の閾値を下回った際の値を第2回転角度θbとする工程であってもよい。
【0124】
本実施形態の制御部90は、第1取得工程において、接触位置Pを底部79cから第1傾斜面79dに向けて周方向一方側(+θ)に移動させる。すなわち、制御部90は、第1取得工程において、接触位置Pが底部79cから第1傾斜面79dを通過するようにモータ20を制御する。また、制御部90は、第2取得工程において、接触位置Pを底部79cから第2傾斜面79eに向けて周方向他方側(-θ)に移動させる。すなわち、制御部90は、第2取得工程において、接触位置Pが底部79cから第2傾斜面79eを通過するようにモータ20を制御する。本実施形態によれば、制御部90は、第1傾斜面79d、および第2傾斜面79eを接触位置Pが底部79cから離れる方向に移動する際に第1取得工程、および第2取得工程をそれぞれ行う。接触部76bは、ディテントプレート71の外周縁71aに対し径方向内側に向かう方向に押し付けられている。このため、モータ20の負荷は、接触位置Pが底部79cに近づく方向に移動する場合よりも、接触位置Pが底部79cから離れる方向に移動する場合の方が大きくなる。結果的に、モータ20に流れる電流値は、接触位置Pが底部79cに近づく方向に移動する場合よりも、接触位置Pが底部79cから離れる方向に移動する場合のほうが、大きくなる。本実施形態によれば、第1取得工程および第2取得工程において、接触位置Pが底部79cから離れる方向に移動する際にモータ20の電流値を監視する。このため、第1閾値Iaおよび第2閾値Ibとして、より大きな値を設定することができる。電流センサ96で検出されるモータ20の電流値には、様々なノイズが乗っている。本実施形態によれば、第1閾値Iaおよび第2閾値Ibをノイズよりも十分に大きな値に設定できるため、ノイズが発生する場合においても、適切に第1回転角度θaおよび第2回転角度θbを取得できる。
【0125】
なお、本実施形態では、接触位置Pが底部79cから離れる方向に移動する際に第1取得工程および第2取得工程が行われる場合について説明した。しかしながら、第1取得工程および第2取得工程の両方、又は少なくとも一方は、接触位置Pが底部79cに近づく方向に移動する際に行われていてもよい。この場合、第1閾値Iaおよび第2閾値Ibを適切に設定することで十分に正確な第1回転角度θaおよび第2回転角度θbを取得できる。
【0126】
本実施形態の制御部90は、第1取得工程と第2取得工程との間で回帰工程を行う。すなわち、制御部90は、第1取得工程の後に接触位置Pを周方向他方側(-θ)に移動させ第1傾斜面79dを通過させた後に第2取得工程を行う。本実施形態によれば、第1取得工程の後に、接触位置Pを底部79cの近傍に配置することができる。これにより、1つ谷部79に対し、第1取得工程と第2取得工程とを連続的に行い第1回転角度θaおよび第2回転角度θbを取得することができる。本実施形態では、1つの谷部79に対する演算工程を完了させ底位置回転角度θcを記憶した後に、他の谷部79に対して、第1取得工程、回帰工程、第2取得工程、および演算工程を別途行い他の谷部79の底位置回転角度θcを記憶する。本実施形態によれば、複数の谷部79のセルフラーニング工程を、別々に行い、各底位置回転角度θcを確実に算出できる。
【0127】
本実施形態では、第1取得工程を行った後に第2取得工程を行う場合について説明したが、この順準は入れ替えることができる。すなわち制御部90は、第2取得工程を行い、底部79cに戻る回帰工程を行った後に、第1取得工程を行ってもよい。
【0128】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態およびその変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態および変形例によって限定されることはない。
【0129】
例えば、上述の実施形態では、接触部76bが第1谷部79Aに配置される状態をパーキング状態とし、第2谷部79Bに配置される状態を非パーキング状態とした。しかしながら、
図2に示す切替機構70の構成によっては、接触部76bが第1谷部79Aに配置される状態を非パーキング状態とし、第2谷部79Bに配置される状態をパーキング状態としてもよい。
【0130】
本発明が適用される電動アクチュエータの用途は、特に限定されない。減速機の構成は、本実施形態に限定されず、例えば、外歯歯車部および内歯歯車部のそれぞれはインボリュート歯車であり、外歯歯部の圧力角および内歯歯部の圧力角のそれぞれが22°以上であれば、外歯歯部の圧力角および内歯歯部の圧力角それぞれの角度は特に限定されない。また、外歯歯車部の歯数および内歯歯車部の歯数のそれぞれは、特に限定されない。また、複数の突出部は外歯ギヤに設けられ、複数の貫通孔部は出力フランジ部に設けられてもよい。この場合、複数の突出部のそれぞれは、外歯ギヤから出力フランジ部に向かって、すなわち軸方向他方側に向かって突出し、貫通孔部に挿入される。また、伝達機構に設けられる突出部の個数および貫通孔部の個数は、それぞれ、7個以下であってもよいし、9個以上であってもよい。また、複数の突出部とフランジ部とは別体であってもよい。この場合、複数の突出部のそれぞれは、フランジ部を貫通する複数の孔のそれぞれに圧入等によって固定される。
【0131】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 面と外周縁とを有する板状の第1部材を前記面に直交する中心軸線周りに回転駆動させ、前記外周縁に接触する接触部を有する第2部材の接触位置を変える電動アクチュエータであって、前記中心軸線を中心として延びて前記第1部材に連結される出力シャフトと、モータと、前記モータの回転を減速して前記出力シャフトを前記中心軸線周りに回転させる減速機と、前記出力シャフトの回転角度を検出する回転センサと、前記モータに流れる電流値を検出する電流センサと、前記モータを制御する制御部と、を備え、前記外周縁には、谷部が設けられ、前記谷部は、底部、前記底部の一方側外周縁に前記底部から続く第1傾斜面、および前記底部の他方側外周縁に前記底部から続く第2傾斜面を有し、前記制御部は、前記モータを駆動し、前記接触位置が前記第1傾斜面を通過する際に、前記電流センサで検出される電流値が第1閾値を超えた際の前記回転センサの検出角度を第1回転角度として取得する第1取得工程と、前記第1回転角度を用いて前記接触位置が前記底部に位置する状態の底位置回転角度を演算し記憶する演算工程と、を行い、前記制御部は、前記第1取得工程において、前記電流センサで検出される電流値が前記第1閾値を超える度に、前記第1回転角度を更新する、電動アクチュエータ。
(2) 前記制御部は、前記第1取得工程において、前記接触位置が前記底部から前記第1傾斜面を通過するように前記モータを制御する、(1)に記載の電動アクチュエータ。
(3) 前記制御部は、前記モータを駆動し、前記接触位置が前記第2傾斜面を通過する際に、前記電流センサで検出される電流値が第2閾値を超えた際の前記回転センサの検出角度を第2回転角度として取得する第2取得工程を、さらに行い、制御部は、前記演算工程において、前記第1回転角度と前記第2回転角度との間の前記回転角度を、前記接触位置が前記底部に位置する状態の底位置回転角度として記憶し、前記制御部は、前記第2取得工程において、前記電流センサで検出される電流値が前記第2閾値を超える度に、前記第2回転角度を更新する、(1)又は(2)に記載の電動アクチュエータ。
(4) 前記制御部は、前記第2取得工程において、前記接触位置が前記底部から前記第2傾斜面を通過するように前記モータを制御する、(3)に記載の電動アクチュエータ。
(5) 前記減速機は、内接式減速機である、(1)~(4)の何れか一項に記載の電動アクチュエータ。
(6) 前記モータは、偏心回転する偏心軸部を有し、前記減速機は、前記偏心軸部の外周面にベアリングを介して連結される環状の外歯ギヤと、前記外歯ギヤの径方向外側に配置され前記外歯ギヤの少なくとも一部と噛み合う内歯ギヤと、前記外歯ギヤの回転を前記出力シャフトに伝達する環状のフランジ部と、を有する、(5)に記載の電動アクチュエータ。
(7) 前記外歯ギヤおよび前記内歯ギヤの歯形は、それぞれ、インボリュート歯形であり、前記外歯ギヤの歯形の圧力角、および前記内歯ギヤの歯形の圧力角は、それぞれ、22°以上である、(6)に記載の電動アクチュエータ。
【符号の説明】
【0132】
10…電動アクチュエータ、20…モータ、23b…偏心軸部、30…減速機、31…外歯ギヤ、32…内歯ギヤ、42…フランジ部、46…出力シャフト、71…ディテントプレート(第1部材)、71a…外周縁、71f…面、76…板バネ部材(第2部材)、76b…接触部、79…谷部、79c…底部、79d…第1傾斜面、79e…第2傾斜面、90…制御部、95…回転センサ、96…電流センサ、Ia…第1閾値、Ib…第2閾値、J,J1…中心軸線、P…接触位置、α1,α2…圧力角、θa…第1回転角度、θb…第2回転角度、θc…底位置回転角度