(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146227
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】リニアガイド
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20241004BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059007
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈二
【テーマコード(参考)】
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA63
3J104BA80
3J104CA14
3J104CA16
3J104CA24
3J104CA34
3J104CA35
3J104DA05
3J104EA01
3J701AA64
3J701BA09
3J701CA08
3J701CA13
3J701CA14
3J701DA09
3J701EA32
3J701EA36
3J701EA67
3J701EA75
3J701EA76
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】サイズや規格の関係で肉厚を十分確保できない潤滑ユニットであっても、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させて、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できるリニアガイドを提供する。
【解決手段】案内レールと、スライダと、潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、潤滑ユニットは、潤滑剤供給部材と、潤滑剤供給部材を収容するケースと、押圧手段と、を有し、押圧手段は、凹部をスライダの左右方向外側に押圧するように、凹部内に配置される第1の押圧部と、潤滑剤供給部材の側面を案内レールに向けて左右方向内側に押圧する円弧状の突起であって、取付部の左右方向外側且つ下側に配置された第2の押圧部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記ケースに収容された前記潤滑剤供給部材を前記案内レール側に押圧する押圧手段と、を有し、
前記ケースには、前記スライダの軸方向の端部に取付ける取付部が設けられ、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの左右両側面の外側に配置された一対の袖部と、上下方向に延在する前記一対の袖部の上端同士を連結した連結部と、前記連結部に形成された凹部と、前記袖部に配置されて前記取付部が挿通する取付孔と、前記案内レールの側面に配置されたレール側軌道面に摺動可能な突部と、を有し、
前記押圧手段は、
前記ケースの左右方向中央の上部側に配置されて、前記凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記凹部を前記スライダの左右方向外側に押圧するように、前記凹部内に配置される第1の押圧部と、
前記潤滑剤供給部材の側面を前記案内レールに向けて左右方向内側に押圧する円弧状の突起であって、前記取付部の左右方向外側且つ下側に配置された第2の押圧部と、を有する、
リニアガイド。
【請求項2】
前記第2の押圧部を、前記ケースの内壁側に一体成形された円弧状の突起とした、
請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項3】
前記第2の押圧部を、前記潤滑剤供給部材の側面に一体成形された円弧状の突起とした、
請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項4】
前記第2の押圧部は、円弧状の突起を備えたアタッチメントと、前記アタッチメントを前記ケースに着脱する着脱部と、を有し、前記着脱部を、前記ケースの内壁側に沿って複数設けた、
請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項5】
前記取付孔は、内側に上下方向の直線部を設けたD字形状とした、
請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項6】
前記第1の押圧部及び前記第2の押圧部の軸方向先端側に面取部を設けた、
請求項1~5の何れか1項に記載のリニアガイド。
【請求項7】
前記面取部は、面取り幅を0.1~1mmとし、面取り角度を15~45°とした、
請求項6に記載のリニアガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑ユニットが取付けられたスライダを有するリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアガイドは、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備え、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝間を循環する複数の転動体(ボール)を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動する。このようなリニアガイドは、各種生産設備の直線移動機構に多用されている。このリニアガイドを、長期間に亘って安定して使用するためには、転動体転動溝及びボールに十分な量の潤滑剤を供給して、潤滑状態を良好に維持することが重要である。
【0003】
特許文献1には、潤滑剤を含有する多孔質の潤滑剤供給部材と、潤滑剤供給部材を収容するケースと、ケースに収容された潤滑剤供給部材を案内レールに接触するように押圧する押圧手段と、を備えた潤滑ユニットをスライダの軸方向端部に設けることにより、潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を案内レールの転動体転動溝に長期に亘って安定的に供給できるようにしたリニアガイドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の潤滑ユニットは、潤滑剤供給部材に形成された凹部と、該凹部に所定の締め代で押圧しながら嵌合する押圧部と、を設けることによって、下方が開放された略コ字状の潤滑剤供給部材の内隅部に形成された突部と、潤滑剤供給部材の袖部の内側に形成された一対の突部とを、案内レール上部の稜線部に形成される軸方向のレール軌道面と、案内レールの左右両側面に形成される軸方向のレール軌道面と、に向けて効果的に押圧し、潤滑剤を効率的且つ持続的にレール軌道面に供給できるものである。
しかしながら、潤滑ユニットのサイズや、潤滑ユニットをスライダ側に取付ける取付部の配置によっては、案内レールの側面に配置される潤滑剤供給部材の袖部の幅方向の肉厚Tを十分確保することができない場合がある。この場合、潤滑剤供給部材の突部をレール軌道面に安定して接触させることが難しくなる。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイズや規格の関係で潤滑剤供給部材の幅方向の肉厚を十分確保できない潤滑ユニットであっても、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させて、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できるリニアガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記ケースに収容された前記潤滑剤供給部材を前記案内レール側に押圧する押圧手段と、を有し、
前記ケースには、前記スライダの軸方向の端部に取付ける取付部が設けられ、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの左右両側面の外側に配置された一対の袖部と、上下方向に延在する前記一対の袖部の上端同士を連結した連結部と、前記連結部に形成された凹部と、前記袖部に配置されて前記取付部が挿通する取付孔と、前記案内レールの側面に配置されたレール側軌道面に摺動可能な突部と、を有し、
前記押圧手段は、
前記ケースの左右方向中央の上部側に配置されて、前記凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記凹部を前記スライダの左右方向外側に押圧するように、前記凹部内に配置される第1の押圧部と、
前記潤滑剤供給部材の側面を前記案内レールに向けて左右方向内側に押圧する円弧状の突起であって、前記取付部の左右方向外側且つ下側に配置された第2の押圧部と、を有する、
リニアガイド。
[2] 前記第2の押圧部を、前記ケースの内壁側に一体成形された円弧状の突起とした、
[1]に記載のリニアガイド。
[3] 前記第2の押圧部を、前記潤滑剤供給部材の側面に一体成形された円弧状の突起とした、
[1]に記載のリニアガイド。
[4] 前記第2の押圧部は、円弧状の突起を備えたアタッチメントと、前記アタッチメントを前記ケースに着脱する着脱部と、を有し、前記着脱部を、前記ケースの内壁側に沿って複数設けた、
[1]に記載のリニアガイド。
[5] 前記取付孔は、内側に上下方向の直線部を設けたD字形状とした、
[1]に記載のリニアガイド。
[6] 前記第1の押圧部及び前記第2の押圧部の軸方向先端側に面取部を設けた、
[1]~[5]の何れか1つに記載のリニアガイド。
[7] 前記面取部は、面取り幅を0.1~1mmとし、面取り角度を15~45°とした、
[6]に記載のリニアガイド。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリニアガイドによれば、袖部に十分な肉厚が確保できない潤滑剤供給部材に対し、潤滑剤供給部材の袖部を案内レールに押圧するための押圧力を効率的に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】(A)は、潤滑ユニットを示した正面図であり、(B)は、潤滑剤供給部材に作用する押圧力を示した正面図である。
【
図4】(A)は、ケースを示した正面図であり、(B)は、取付部を示した要部断面図である。
【
図6】(A)は、別実施例1の潤滑ユニットを示した正面図であり、(B)は、アタッチメントを示した図である。
【
図7】第2実施形態のケース及びアタッチメントを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係るリニアガイド(直動案内装置)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、スライダの上下方向、幅方向、軸方向とは、長手方向を水平にして配置された案内レールに組み付けられたスライダの状態における方向をそれぞれ表している。スライダの幅方向は、案内レールの長手方向及びスライダの上下方向に垂直な方向であって、左右方向とも言い、スライダの軸方向は、案内レールの長手方向に沿う方向であって、前後方向とも言う。
【0011】
(第1実施形態)
図1~
図2に基づいて、リニアガイドの構成について説明する。
図1は、本発明に係るリニアガイドの斜視図であり、
図2は、スライダの斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態のリニアガイド10は、直線状の案内レール20と、案内レール20を跨ぐように組み付けられ、不図示の複数の転動体(ボール)を介してスライド自在に係合するスライダ30と、を備えている。
【0012】
案内レール20の両側面23には、断面略半円形または断面ゴシックアーチ形状のレール側軌道面21が軸方向に形成され、案内レール20の上面24と両側面23とが交差する稜線部には、断面略1/4円弧状のレール側軌道面22が軸方向に形成されている。
【0013】
スライダ30は、
図2に示すように、スライダ本体31と、スライダ本体31の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップ32と、各エンドキャップ32の更に軸方向端部に取り付けられた潤滑ユニット33と、からなる。
【0014】
スライダ本体31は、略コ字状に形成されており、上下方向の一対の袖部の内側面に、案内レール20のレール側軌道面21、22に対向する不図示のスライダ側軌道面を有するとともに、転動体戻し路を有している。また、略コ字状に形成されたエンドキャップ32は、スライダ本体31のスライダ側軌道面及び転動体戻し路を連通させる不図示の湾曲路を有しており、レール側軌道面21、22、スライダ側軌道面、転動体戻し路、及び両端部の湾曲路で、転動体循環路を形成している。転動体循環路内には、複数のボールが転動自在に装填されている。
【0015】
次に、
図2~
図5に基づいて、潤滑ユニット33について説明する。
図3(A)は、潤滑ユニットを示した正面図であり、
図3(B)は、潤滑剤供給部材に作用する押圧力を示した正面図であり、
図4(A)は、ケースを示した正面図であり、
図4(B)は、取付部を示した要部断面図であり、
図5は、潤滑剤供給部材を示した正面図である。
【0016】
図2に示すように、潤滑ユニット33は、合成樹脂製のケース40と、ケース40内に収容される潤滑剤供給部材50と、サイドシール60と、を備える。
【0017】
サイドシール60は、エンドキャップ32の外形に合わせた略コ字状の鋼板であり、上下方向の一対の袖部には、取付ネジ用の貫通孔61が形成されるとともに、それら両袖部を連結する連結部には、グリースニップル用の貫通孔64が形成されている。サイドシール60と案内レール20とは非接触であり、略コ字状の鋼板の内側には、スライダ30と案内レール20との間の隙間をシールするため、ニトリルゴムやグリースを含有したポリウレタンゴムなどの弾性体65が設けられている。
【0018】
潤滑剤供給部材50は、ゴムや合成樹脂等の多孔質体、繊維交絡体などで形成されて、潤滑剤を含浸する。潤滑剤としては、鉱油、合成油、グリースなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。繊維交絡体としては、羊毛フェルト、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。
【0019】
潤滑剤供給部材50は、案内レール20の上面24及びレール側軌道面21、22を含む両側面23に対向するように、下方が開放された略コ字状に成形されている。言い換えると、潤滑剤供給部材50は、上下方向に延在する左右一対の袖部50a、50aと、両袖部の上部同士を連結する左右方向の連結部50bと、を有している。
【0020】
潤滑剤供給部材50の両袖部の内側には、案内レール20のレール側軌道面21に摺接して潤滑剤を供給するための略半円形の突部51が突設されている。また、潤滑剤供給部材50の両袖部と連結部とで形成される内隅部には、案内レール20のレール側軌道面22に摺接して潤滑剤を供給するための1/4円弧状の突部52が突設されている。
また、潤滑剤供給部材50の上端部略中央には、上方に開放する第1の凹部53が形成されている。第1の凹部53は、幅方向に対向する互いに平行な2つの平面を持って略コ字状に形成されている。
さらに、潤滑剤供給部材50の両袖部50a、50aには、それぞれケース40側に形成された取付部46が挿通される軸方向の取付孔54、54が穿設されている。各取付孔54、54は、左右内側に上下方向の直線部が設けられたD字状に形成されている。該構成によれば、サイズの小さい潤滑剤供給部材50であっても両袖部の左右方向の肉厚を極力厚くすることができる。これら潤滑剤供給部材50に関する構成は、
図5を参照するとよい。
【0021】
ケース40は、ポリアセタールやポリアミドなどの硬質樹脂を射出成型して製作されており、エンドキャップ32と略同一サイズの略コ字状に形成されている。ケース40は、収容される潤滑剤供給部材50の外周部を覆う外周壁41と、潤滑剤供給部材50の軸方向端面を覆う端壁42と、によって潤滑剤供給部材50を収容するための収容部43を形成している。
なお、ケース40は、鋼、アルミニウムなどの金属材料を、切削加工やプレス加工して製作したものであってもよい。
【0022】
収容部43内には、潤滑剤供給部材50の取付孔54、54に挿通される軸方向の取付部46、46と、上部押圧手段である第1の押圧部44と、側部押圧手段である第2の押圧部45と、が設けられている。この構成は、
図4(A)を参照するとよい。
【0023】
取付部46は、軸方向に形成された筒状部材であって、その内側には、ケース40をスライダ本体31側に取付固定するための、ねじ挿通孔47が形成されている。また、取付部46の外形は、潤滑剤供給部材50が嵌合されるように、左右内側に上下方向の直線部46aが設けられたD字状に形成されている。
【0024】
第1の押圧部44は、案内レール20の上方位置に配置されて潤滑剤供給部材50の上部を押圧する押圧手段であり、収容部43内の上部であって、左右方向略中央部に配置された円筒状の部材である。また、第1の押圧部44の内側には、グリースニップル用の貫通孔64と連通する貫通孔48が形成されている。なお、第1の押圧部44は、外周壁41及び端壁42に連続して形成された構成としてもよい。
【0025】
第2の押圧部45は、収容部43内の左右両側の下端側に設けられた突起部であり、外周壁41及び端壁42に連続して左右対称に形成されている。より具体的には、第2の押圧部45は、取付部46の左右外側且つ下方側に配置され、外周壁41の内壁から左右内側に向けて突設された円弧状の突起部である。
【0026】
以上により、潤滑剤供給部材50の第1の凹部53にケース40の第1の押圧部44を嵌め込むと共に、一対の取付孔54、54に、それぞれ取付部46を嵌め込んで、ケース40の収容部43内に潤滑剤供給部材50を収納する。この構成は、
図3(A)を参照するとよい。
【0027】
これにより、ケース40は、潤滑剤供給部材50を収容することで、取り扱い中に、潤滑剤供給部材50が損傷することを防止できる。特に、潤滑剤供給部材50の潤滑剤含浸量が70重量%以上になると、その分、樹脂の量が少なくなり、潤滑剤供給部材50の強度が低下するため、ケースの使用は有効である。
【0028】
このとき、第1の押圧部44の外径は、第1の凹部53の内幅(左右幅)より大きく設定されているため、第1の押圧部44と、第1の凹部53とは、片面当たり締め代T1だけ干渉する。
同様に、一対の第2の押圧部45、45は、収容部43下端側の幅方向を幅狭にするように設定されているため、一対の第2の押圧部45、45の左右内側の円弧部と、潤滑剤供給部材50の側面下端とは、締め代T2だけ干渉する。
通常、締め代T1、T2は、案内レール20のレール幅の1%以下、具体的には、案内レール20のレール幅が30mmの場合には、片側0.2~0.3mm程度が目安になるが、本実施例では、締め代T1、T2は、必要な押圧力によって、レール幅が30mmの場合に、片側0.02~1.0mm程度にしてもよい。
即ち、第1の押圧部44は、締め代T1で第1の凹部53に圧入され、第2の押圧部45は、締め代T2で潤滑剤供給部材50の側面下部に圧入されている。この構成は、
図3(A)を参照するとよい。
【0029】
なお、第1の押圧部44は、第1の凹部53に対して幅方向の押圧力を作用させるが、上下方向への移動は許容され、拘束されない。同様に、第2の押圧部45は、潤滑剤供給部材50の側面下部に対して幅方向内側の押圧力を作用させるが、上下方向への移動は許容され、拘束されない。
【0030】
また、第2の押圧部45には、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第2の押圧部45の先端側縁部の左右内側の1箇所に、面取り角度θ、面取り量C3からなる面取部44a、45aが設けられている。これにより、潤滑剤供給部材50のケース40への装着が容易になる。各面取部44a、45aの面取り角度θは、15~45°が好ましい。また、各面取部44a、45aの面取り量C3は、0.1~1mm程度とするのが好ましい。
なお、第1の押圧部44の先端側縁部の幅方向端部にも一対の面取部44a、44aが同様に設けられている。
【0031】
次に、各押圧部44、45の作用と効果について説明する。
第1の凹部53に第1の押圧部44が締め代T1で圧入されることで、第1の凹部53には、第1の凹部53の内幅を広げる方向の左右方向の押圧力が作用する。これにより、潤滑剤供給部材50の突部51,52は幅方向に変位して、案内レール20のレール側軌道面21,22に対する突部51,52の押圧力が増加する。
また、潤滑剤供給部材50の側面下部に第2の押圧部45が締め代T2で圧入されることで、潤滑剤供給部材50には、両袖部下端側である開放端側を閉じる方向に作用する押圧力が作用する。
【0032】
これにより、本実施例のように、潤滑剤供給部材50の両袖部50a、50aに取付孔54が形成されたことによって、取付孔54と案内レール20の側面との間の袖部50aの肉厚Tを十分に確保できない場合であっても、潤滑剤供給部材50の突部52に、案内レール20のレール側軌道面21,22に向けて押圧する押圧力を効果的に作用させることができる。この構成は、
図3(B)を参照するとよい。
また、例えば、潤滑剤供給部材50に含浸された潤滑剤の量が少なくなり、潤滑剤供給部材50の外形が縮小して両袖部が離間する方向に変形した場合であっても、第2の押圧部45によって、潤滑剤供給部材50の両袖部が離間する方向に変形することを防止できる。すなわち、潤滑剤供給部材50の突部51がレール側軌道面21から離間して非接触となり、潤滑剤の供給が途中で止まってしまうことを防止できる。
【0033】
以上によれば、潤滑剤供給部材50に含浸される潤滑剤を、突部51,52からレール側軌道面21,22へ最後までスムーズに供給できる。なお、レール側軌道面21,22に対する突部51,52の押圧力は、潤滑剤供給部材50の外形と、第1の凹部53と、第1の押圧部44及び第2の押圧部45の寸法で調整される。
【0034】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態のケース及びアタッチメントを示した正面図である。本実施形態のケース40Aは、外周壁41の内壁側にアタッチメント70を取付けるための凹部からなる着脱部49が形成されている。それ以外の部分は、第1実施形態の潤滑ユニット33と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0035】
着脱部49は、
図6に示される例では、外周壁41の全体に所定間隔で並べて配置されている。なお、着脱部49は、外周壁41の内壁のうち、左右両側面にのみに並べて設けた構成としてもよい。
【0036】
アタッチメント70は、円弧状の押圧部71と、押圧部71の反対側の面に形成されて、着脱部49に着脱可能に取付けるための凸部である取付部72と、を有している。このとき、押圧部71は、上記の第2の押圧部45と同様の形状としている。押圧部71は、正面視で円弧状に形成された板状部材であってもよいし、厚さ方向に対しても円弧状に形成された傘状に形成された部材であってもよい。
【0037】
該構成によれば、各アタッチメント70として、予め、潤滑剤供給部材50の外周面を押圧する締め代となる押圧部71の高さが異なるものを用意しておくことにより、潤滑剤供給部材50の外周面を押圧する位置と、締め代とを変更することができる。
具体的には、ケース40Aに取り付けるアタッチメント70として、基準の締め代のアタッチメント70と、基準よりも締め代が小さくなるアタッチメント70Aと、基準よりも締め代が大きくなるアタッチメント70Bと、を任意に選択できる。
また、アタッチメント70として、押圧部71の一部を切欠くことにより、ケース40Aの外周壁41が屈曲する部分の近傍に取付けられる場合に、押圧部71の一部が外周壁41側に干渉することを防止する、アタッチメント70Cも選択できる。
【0038】
また、アタッチメント70として、上述の第2の押圧部45よりも、押圧部71の曲率Rが大きいアタッチメントと、曲率Rが小さいアタッチメントと、を目的に応じて任意に選択できるようにしてもよい。該構成によれば、例えば、ケース40Aに曲率の大きいアタッチメント70を取付けることにより、アタッチメント70と潤滑剤供給部材50の外周面との間の接触部で、潤滑剤供給部材50が大きく沈み込むこと防止できる。また、曲率の小さいアタッチメント70を取付けることにより、押圧部71を潤滑剤供給部材50の外周面に食い込ませて締め代をより大きくすることもできる。
【0039】
また、アタッチメント70の種類や設置位置を変更することによって、ケース40Aの形状を変更することなく、潤滑剤供給部材50を押圧する位置や締め代等を調整・変更できる。このため、汎用性が向上するとともに、コストも低く抑えることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の潤滑ユニットを示した正面図である。本実施形態の潤滑ユニット33Bでは、第2の押圧部45を設けないケース40Bと、第2の押圧部45に相当する突部が設けられた潤滑剤供給部材50Bと、を有する。
【0041】
具体的に説明すると、潤滑剤供給部材50Bは、その両側面下部側に、左右方向外側に向けて締め代T2が形成されるように突出する円弧状の第2の押圧部55、55が形成されている。それ以外の部分は、上述の実施形態の潤滑ユニット33と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0042】
該構成によれば、潤滑剤供給部材50Bの第2の押圧部55が、潤滑剤の含浸量の大容量化と、ケース40Bに収容された際に案内レール20側に押圧するための押圧部としての機能と、を兼用する。
【0043】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0044】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記ケースに収容された前記潤滑剤供給部材を前記案内レール側に押圧する押圧手段と、を有し、
前記ケースには、前記スライダの軸方向の端部に取付ける取付部が設けられ、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの左右両側面の外側に配置された一対の袖部と、上下方向に延在する前記一対の袖部の上端同士を連結した連結部と、前記連結部に形成された凹部と、前記袖部に配置されて前記取付部が挿通する取付孔と、前記案内レールの側面に配置されたレール側軌道面に摺動可能な突部と、を有し、
前記押圧手段は、
前記ケースの左右方向中央の上部側に配置されて、前記凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記凹部を前記スライダの左右方向外側に押圧するように、前記凹部内に配置される第1の押圧部と、
前記潤滑剤供給部材の側面を前記案内レールに向けて左右方向内側に押圧する円弧状の突起であって、前記取付部の左右方向外側且つ下側に配置された第2の押圧部と、を有する、
リニアガイド。
本構成によれば、袖部に十分な肉厚が確保できない潤滑剤供給部材に対し、潤滑剤供給部材の袖部を案内レールに押圧するための押圧力を効率的に作用させることができる。
【0045】
(2) 前記第2の押圧部を、前記ケースの内壁側に一体成形された円弧状の突起とした、
(1)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、第2の押圧部を継続的に使用するケース側に一体成形できるため、簡易且つ安価に構成できる。
【0046】
(3) 前記第2の押圧部を、前記潤滑剤供給部材の側面に一体成形された円弧状の突起とした、
(1)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材の体積を大きくして潤滑剤の保持量を増やす作用と、潤滑剤供給部材を案内レール側に押付ける作用とを両立できる。
【0047】
(4)前記第2の押圧部は、円弧状の突起を備えたアタッチメントと、前記アタッチメントを前記ケースに着脱する着脱部と、を有し、前記着脱部を、前記ケースの内壁側に沿って複数設けた、
(1)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、アタッチメントの種類と着脱位置を調整することにより、潤滑剤供給部材を押圧する位置と、締め代とを任意に変更することができるため、汎用性が向上する。
【0048】
(5) 前記取付孔は、内側に上下方向の直線部を設けたD字形状とした、
(1)~(4)の何れか1つに記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材の取付部近傍の幅方向の肉厚を極力厚くすることができるため、押圧手段によって潤滑剤供給部材に作用させる押圧力をより安定させることができる。
【0049】
(6)前記第1の押圧部及び前記第2の押圧部の軸方向先端側に面取部を設けた、
(1)~(5)の何れか1つに記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材をケースに収容する際に、潤滑剤供給部材が各押圧部の先端側に引っ掛かることを防止できるため、潤滑剤供給部材のケースへの装着が容易になる。
【0050】
(7) 前記面取部は、面取り幅を0.1~1mmとし、面取り角度を15~45°とした、
(6)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、簡易な構成で潤滑剤供給部材のケースへの装着がスムーズ且つ容易になる。
【符号の説明】
【0051】
10 リニアガイド
20 案内レール
21 レール側軌道面
22 レール側軌道面
30 スライダ
31 スライダ本体
32 エンドキャップ
33 潤滑ユニット
41 外周壁
42 端壁
43 収容部
44 第1の押圧部(押圧手段)
45 第2の押圧部(押圧手段)
47 ねじ挿通孔
48 貫通孔
49 着脱部
50 潤滑剤供給部材
51 突部
52 突部
53 第1の凹部
54 取付孔
60 サイドシール
61 貫通孔
64 貫通孔
65 弾性体
70、70A、70B、70C アタッチメント
71 押圧部
72 取付部
T1、T2 締め代