特開 2024-146228 リニアガイド

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024146228

(43)【公開日】2024-10-15

(54)【発明の名称】リニアガイド

(51)【国際特許分類】

   F16C 29/06 20060101AFI20241004BHJP

   F16C 33/66 20060101ALI20241004BHJP

【ＦＩ】

F16C29/06

F16C33/66 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023059008

(22)【出願日】2023-03-31

(71)【出願人】

【識別番号】000004204

【氏名又は名称】日本精工株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002000

【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所

(72)【発明者】

【氏名】小林 丈二

(72)【発明者】

【氏名】中川 匠

【テーマコード（参考）】

3J104

3J701

【Ｆターム（参考）】

3J104AA02

3J104AA36

3J104AA65

3J104AA69

3J104AA74

3J104AA76

3J104BA63

3J104BA80

3J104CA14

3J104CA16

3J104CA24

3J104CA34

3J104CA35

3J104DA05

3J104EA01

3J701AA64

3J701CA08

3J701CA13

3J701CA14

3J701EA32

3J701EA36

3J701EA67

3J701EA75

3J701EA76

3J701GA31

(57)【要約】

【課題】潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させることにより、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できるリニアガイドを提供する。
【解決手段】案内レールと、スライダと、スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、潤滑ユニットは、案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、潤滑剤供給部材を収容するケースと、を有し、潤滑剤供給部材は、案内レールの上方位置に形成された第１の凹部と、案内レールの左右両側面位置に形成された一対の第２の凹部と、案内レールのレール側軌道面に摺接する突部と、を有し、ケースは、第１の凹部内に配置される第１の押圧部と、一対の第２の凹部内に配置される一対の第２の押圧部と、を備え、第２の押圧部は、下部押圧部による下方向の締め代を、上部押圧部による上方向の締め代よりも大きくした。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、を有し、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの上方位置に形成された第１の凹部と、前記案内レールの左右両側面位置に形成された一対の第２の凹部と、前記案内レールのレール側軌道面に摺接する突部と、を有し、
前記ケースは、
前記第１の凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記第１の凹部を前記スライダの幅方向外方に押圧するように、前記第１の凹部内に配置される第１の押圧部と、
前記一対の第２の凹部の前記スライダの幅方向への移動を許容し、前記一対の第２の凹部を前記スライダの上下方向にそれぞれ押圧するように、前記一対の第２の凹部内に配置される一対の第２の押圧部と、を有し、
前記第２の押圧部は、前記第２の凹部の上方向に突出する上部押圧部と、前記第２の凹部の下方向に突出する下部押圧部と、を有し、下部押圧部による下方向の締め代を、上部押圧部による上方向の締め代よりも大きくした、
リニアガイド。

【請求項2】

前記第２の押圧部による上下方向の締め代は、前記第２の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
請求項１に記載のリニアガイド。

【請求項3】

前記第１の押圧部による幅方向の締め代は、前記第１の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
請求項１又は２に記載のリニアガイド。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、潤滑ユニットが取付けられたスライダを有するリニアガイドに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、リニアガイドは、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備え、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝間を循環する複数の転動体（ボール）を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動する。このようなリニアガイドは、各種生産設備の直線移動機構に多用されている。このリニアガイドを、長期間に亘って安定して使用するためには、転動体転動溝及びボールに十分な量の潤滑剤を供給して、潤滑状態を良好に維持することが重要である。

【0003】

特許文献１には、潤滑剤を含有する多孔質の潤滑剤供給部材と、潤滑剤供給部材を収容するケースと、ケースに収容された潤滑剤供給部材を案内レールに接触するように押圧する押圧手段と、を備えた潤滑ユニットをスライダの軸方向端部に設けることにより、潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を案内レールの転動体転動溝に長期に亘って安定的に供給できるようにしたリニアガイドが記載されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１８－４０３８９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１の潤滑ユニットは、潤滑剤供給部材の上面と左右両側面とに形成された凹部と、該凹部に所定の締め代で押圧しながら嵌合する押圧部と、を設けることによって、潤滑剤供給部材の内隅部に形成された突部と、潤滑剤供給部材の両袖部の内側に形成された一対の突部とを、案内レール上部の稜線部に形成される軸方向のレール軌道面と、案内レールの左右両側面に形成される軸方向のレール軌道面と、に向けて効果的に押圧できるため、潤滑剤を効率的且つ持続的にレール軌道面に供給できるものである。
しかしながら、図６に示されるように、ケースに収容された潤滑剤供給部材５０が経時収縮によって外径が縮んだり、押圧手段によって潤滑剤供給部材の内隅部に形成された突部が案内レールに強く押圧されたりした場合に、潤滑剤供給部材の両袖部が案内レールから離間する方向に変形して、レール軌道面への潤滑剤の供給が途中で止まる虞がある。

【0006】

本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させることにより、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できるリニアガイドを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
［１］ 案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、を有し、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの上方位置に形成された第１の凹部と、前記案内レールの左右両側面位置に形成された一対の第２の凹部と、前記案内レールのレール側軌道面に摺接する突部と、を有し、
前記ケースは、
前記第１の凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記第１の凹部を前記スライダの幅方向外方に押圧するように、前記第１の凹部内に配置される第１の押圧部と、
前記一対の第２の凹部の前記スライダの幅方向への移動を許容し、前記一対の第２の凹部を前記スライダの上下方向にそれぞれ押圧するように、前記一対の第２の凹部内に配置される一対の第２の押圧部と、を有し、
前記第２の押圧部は、前記第２の凹部の上方向に突出する上部押圧部と、前記第２の凹部の下方向に突出する下部押圧部と、を有し、下部押圧部による下方向の締め代を、上部押圧部による上方向の締め代よりも大きくした、
リニアガイド。
［２］ 前記第２の押圧部による上下方向の締め代は、前記第２の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
［１］に記載のリニアガイド。
［３］ 前記第１の押圧部による幅方向の締め代は、前記第１の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
［１］又は［２］に記載のリニアガイド。

【発明の効果】

【0008】

本発明のリニアガイドによれば、ケース内の潤滑剤供給部材の下方向への位置ずれを防止しつつ、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させることができるため、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明に係るリニアガイドの斜視図である。

【図2】図１に示すスライダの斜視図である。

【図3】潤滑ユニットを示した正面図である。

【図4】（Ａ）は、ケースを示した正面図であり、（Ｂ）は、潤滑剤供給部材を示した正面図である。

【図5】（Ａ）は、第２の押圧部によって潤滑剤供給部材に作用する押圧力を示した正面図であり、（Ｂ）は、潤滑剤供給部材が経時収縮した状態を示した潤滑ユニットの正面図である。

【図6】潤滑ユニットの従来例を示す分解斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、本発明の各実施形態に係るリニアガイド（直動案内装置）を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、スライダの上下方向、幅方向、軸方向とは、長手方向を水平にして配置された案内レールに組み付けられたスライダの状態における方向をそれぞれ表している。スライダの幅方向は、案内レールの長手方向及びスライダの上下方向に垂直な方向であって、左右方向とも言い、スライダの軸方向は、案内レールの長手方向に沿う方向であって、前後方向とも言う。

【0011】

図１～図２に基づいて、リニアガイドの構成について説明する。図１は、本発明に係るリニアガイドの斜視図であり、図２は、スライダの斜視図である。図１に示すように、リニアガイド１０は、直線状の案内レール２０と、案内レール２０を跨ぐように組み付けられ、不図示の複数の転動体（ボール）を介してスライド自在に係合するスライダ３０と、を備えている。

【0012】

案内レール２０の両側面２３には、断面略半円形または断面ゴシックアーチ形状のレール側軌道面２１が軸方向に形成され、案内レール２０の上面２４と両側面２３とが交差する稜線部には、断面略１／４円弧状のレール側軌道面２２が軸方向に形成されている。

【0013】

スライダ３０は、図２に示すように、スライダ本体３１と、スライダ本体３１の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップ３２と、各エンドキャップ３２の更に軸方向端部に取り付けられた潤滑ユニット３３と、からなる。

【0014】

スライダ本体３１は、略コ字状に形成されており、両袖部の内側面に、案内レール２０のレール側軌道面２１、２２に対向する不図示のスライダ側軌道面を有するとともに、転動体戻し路を有している。また、略コ字状に形成されたエンドキャップ３２は、スライダ本体３１のスライダ側軌道面及び転動体戻し路を連通させる不図示の湾曲路を有しており、レール側軌道面２１、２２、スライダ側軌道面、転動体戻し路、及び両端部の湾曲路で、転動体循環路を形成している。転動体循環路内には、複数のボールが転動自在に装填されている。

【0015】

次に、図２～図５に基づいて、潤滑ユニット３３について説明する。図３は、潤滑ユニットを示した正面図であり、図４（Ａ）は、ケースを示した正面図であり、図４（Ｂ）は、潤滑剤供給部材を示した正面図である。図５（Ａ）は、第２の押圧部によって潤滑剤供給部材に作用する押圧力を示した正面図であり、図５（Ｂ）は、潤滑剤供給部材が経時収縮した状態を示した潤滑ユニットの正面図である。

【0016】

図２に示すように、潤滑ユニット３３は、合成樹脂製のケース４０と、ケース４０内に収容される潤滑剤供給部材５０と、サイドシール６０と、を備える。

【0017】

サイドシール６０は、エンドキャップ３２の外形に合わせた略コ字状の鋼板であり、その両袖部には、取付ネジ用の貫通孔６１が形成されるとともに、それら両袖部を連結する左右方向の連結部には、グリースニップル用の貫通孔６４が形成されている。サイドシール６０と案内レール２０とは非接触であり、略コ字状の鋼板の内側には、スライダ３０と案内レール２０との間の隙間をシールするため、ニトリルゴムやグリースを含有したポリウレタンゴムなどの弾性体６５が設けられている。

【0018】

潤滑剤供給部材５０は、案内レール２０の上面２４及びレール側軌道面２１、２２を含む両側面２３に対向するように、下方が開放された略コ字状に成形されている。言い換えると、潤滑剤供給部材５０は、上下方向に延設された左右一対の袖部と、両袖部の上端同士を連結する左右方向の連結部と、を有している。

【0019】

潤滑剤供給部材５０は、ゴムや合成樹脂等の多孔質体、繊維交絡体などで形成されて、潤滑剤を含浸する。潤滑剤としては、鉱油、合成油、グリースなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。繊維交絡体としては、羊毛フェルト、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。

【0020】

潤滑剤供給部材５０のコ字状の両側面内側には、案内レール２０のレール側軌道面２１に摺接して潤滑剤を供給するための略半円形の突部５１が突設されている。また、コ字用部の両側面と上面との内隅部には、案内レール２０のレール側軌道面２２に摺接して潤滑剤を供給するための１／４円弧状の突部５２が突設されている。

【0021】

さらに、潤滑剤供給部材５０の上端部略中央には、上方に開放する第１の凹部５３が形成されている。また、潤滑剤供給部材５０の両外側面には、側方に開放する略コ字状の第２の凹部５４が形成されている。第１の凹部５３は、幅方向に対向する互いに平行な２つの平面を持って略コ字状に形成され、第２の凹部５４は、上下方向に対向する互いに平行な２つの平面を持った略コ字状に形成されている。

【0022】

ケース４０は、ポリアセタールやポリアミドなどの硬質樹脂を射出成型して製作されており、エンドキャップ３２と略同一サイズの略コ字状に形成されている。ケース４０は、収容される潤滑剤供給部材５０の外周部を覆う外周壁４１と、潤滑剤供給部材５０の軸方向端面を覆う端壁４２と、によって潤滑剤供給部材５０を収容するための収容部４３を形成している。
なお、ケース４０は、鋼、アルミニウムなどの金属材料を、切削加工やプレス加工して製作したものであってもよい。

【0023】

収容部４３内の上部で、左右方向略中央部には、案内レール２０の上方位置に配置される上部押圧手段である円筒状の第１の押圧部４４が設けられている。また、第１の押圧部４４の内側には、グリースニップルようの貫通孔６４と連通する貫通孔４８が形成されている。なお、第１の押圧部４４は、外周壁４１及び端壁４２に連続して形成された構成としてもよい。

【0024】

収容部４３内の左右両側で、高さ方向略中央部には、案内レール２０の左右両側面位置に配置される側部押圧手段である円筒状の第２の押圧部４５が左右対称に形成されている。また、第２の押圧部４５の内側には、潤滑ユニット３３をスライダ本体３１にねじ固定するためのねじ挿通孔４７が設けられている。なお、第２の押圧部４５は、外周壁４１及び端壁４２に連続して形成された構成としてもよい。

【0025】

第２の押圧部４５は、上半分の上部押圧部４５ａと、下半分の下部押圧部４５ｂと、を有している。図３及び図４（Ａ）に示すように、下部押圧部４５ｂは、上部押圧部４５ａよりも、ねじ挿通孔４７の中心からの上下方向の突出量が大きくなるように形成されている。これにより、第２の押圧部４５の外形の上下方向の中心は、ねじ挿通孔４７の中心よりも所定の偏心量σ、下方向に偏心しており、第２の押圧部４５全体が上下方向に長い楕円状に形成されている。

【0026】

以上により、潤滑剤供給部材５０の第１の凹部５３にケース４０の第１の押圧部４４を嵌め込むと共に、一対の第２の凹部５４に、それぞれ第２の押圧部４５を嵌め込むことで、ケース４０の収容部４３内に潤滑剤供給部材５０を収納することができる。この構成は、図３を参照するとよい。

【0027】

これにより、ケース４０は、潤滑剤供給部材５０を収容することで、取り扱い中に、潤滑剤供給部材５０が損傷することを防止できる。特に、潤滑剤供給部材５０の潤滑剤含浸量が７０重量％以上になると、その分、樹脂の量が少なくなり、潤滑剤供給部材５０の強度が低下するため、ケースの使用は有効である。

【0028】

このとき、第１の押圧部４４の外径は、第１の凹部５３の内幅（左右幅）より大きく設定されているため、第１の押圧部４４と第１の凹部５３とは、片面当たり締め代Ｔ１だけ干渉する。
同様に、第２の押圧部４５は、第２の凹部の内幅（上下幅）よりも大きく設定されている。具体的には、上部押圧部４５ａは、第２の凹部５４の内幅の上面の上方に突出することにより締め代Ｔ２だけ干渉し、下部押圧部４５ｂ、第２の凹部５４の内幅の下面の下方向に突出することにより締め代Ｔ３だけ干渉する。このとき、締め代Ｔ３を、締め代Ｔ２よりも幅広とした（締め代Ｔ３＞締め代Ｔ２）。

【0029】

即ち、第１の押圧部４４は、締め代Ｔ１で第１の凹部５３に圧入され、第２の押圧部４５は、上部側が締め代Ｔ２で第２の凹部５４に圧入され、下部側が締め代Ｔ３で第２の凹部５４に圧入されている。この構成は、図３を参照するとよい。
なお、第１の押圧部４４は、第１の凹部５３に対して幅方向の押圧力を作用させるが、上下方向への移動は許容され、拘束されない。また、第２の押圧部４５は、第２の凹部５４に対して上下方向の押圧力を作用させるが、幅方向への移動は許容され、拘束されない。

【0030】

このとき、第２の押圧部４５による締め代Ｔ２，Ｔ３は、第２の押圧部４５が圧入される第２の凹部５４の切欠幅の２０％以内に設定することが好ましい。具体的には、第２の凹部の切欠幅が１０ｍｍであった場合には、締め代Ｔ３は、２ｍｍを上限とする。
第１の押圧部４４による締め代Ｔ１についても、第１の押圧部４４が圧入される第１の凹部５３の切欠幅の２０％以内に設定することが好ましい。

【0031】

次に、各押圧部４４、４５の作用と効果について説明する。
第１の凹部５３に第１の押圧部４４が締め代Ｔ１で圧入されることで、第１の凹部５３には、第１の凹部５３の内幅を広げる方向の左右方向の押圧力が作用する。これにより、潤滑剤供給部材５０の突部５１，５２は幅方向に変位して、案内レール２０のレール側軌道面２１，２２に対する突部５１，５２の押圧力が増加する。

【0032】

また、第２の凹部５４に、第２の押圧部４５が締め代Ｔ２、Ｔ３で圧入されることで、第２の凹部５４には、第２の凹部５４の内幅を広げる方向の上下方向の押圧力が作用する。これにより、潤滑剤供給部材５０の突部５１及び突部５２が、互いに接近する上下方向に変位するため、案内レール２０のレール側軌道面２１，２２に対する突部５１，５２の押圧力が増加する。この構成は、図５（Ａ）を参照するとよい。

【0033】

また、第２の凹部５４の下部は、下部押圧部４５ｂによって、締め代Ｔ２よりも幅広な締め代Ｔ３で圧入されるため、潤滑剤供給部材５０の両袖部下端側である開放端側を閉じる方向に作用する押圧力がより強くなる。
これにより、例えば、潤滑剤供給部材５０に含浸された潤滑剤の量が少なくなり、潤滑剤供給部材５０の外形が縮小して両袖部が離間する方向に変形した場合であっても、下部押圧部４５ｂによって、潤滑剤供給部材５０の両袖部が離間する方向に変形することを防止できる。すなわち、潤滑剤供給部材５０の突部５１がレール側軌道面２１から離間して非接触となり、潤滑剤の供給が途中で止まってしまうことを防止できる。この構成は、図５（Ｂ）を参照するとよい。

【0034】

なお、単純に第２の凹部５４を下方に向けた締め代Ｔ３を増やした場合、レール側軌道面において、潤滑剤供給部材５０を下向きに移動させる力を受けて、潤滑剤供給部材５０がレール側軌道面から離れてしまうおそれがある。しかし、上述の第２の押圧部４５によれば、下部押圧部４５ｂを、ねじ挿通孔４７の中心に対して下方にオフセットしたことにより、潤滑剤供給部材５０がケース内４０で下方に移動することを防止しつつ、潤滑剤供給部材５０の突部５１を下側のレール側軌道面２２に長期に安定して接触させることができる。

【0035】

従って、潤滑剤供給部材５０に含浸される潤滑剤を、突部５１，５２からレール側軌道面２１，２２へ最後までスムーズに供給できる。なお、レール側軌道面２１，２２に対する突部５１，５２の押圧力は、第１の凹部５３及び第２の凹部５４と、第１の押圧部４４及び第２の押圧部４５の寸法で調整される。

【0036】

なお、上述の第２の押圧部４５は、下部押圧部４５ｂを構成する円弧面の曲率Ｒ３を、上部押圧部４５ａを構成する円弧面の曲率Ｒ２よりも大きくした構成としてもよい。該構成によれば、下部押圧部４５ｂと第２の凹部５４との間の接触部で、潤滑剤供給部材５０が大きく沈み込むこと防止し、ケース４０自体が下方に移動することを防止できる。

【0037】

尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。

【0038】

以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
（１） 案内レールと、該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダの軸方向の端部に取付けられた潤滑ユニットと、を備えるリニアガイドであって、
前記潤滑ユニットは、前記案内レールに供給される潤滑剤が含浸された潤滑剤供給部材と、前記潤滑剤供給部材を収容するケースと、を有し、
前記潤滑剤供給部材は、前記案内レールの上方位置に形成された第１の凹部と、前記案内レールの左右両側面位置に形成された一対の第２の凹部と、前記案内レールのレール側軌道面に摺接する突部と、を有し、
前記ケースは、
前記第１の凹部の前記スライダの上下方向の移動を許容し、前記第１の凹部を前記スライダの幅方向外方に押圧するように、前記第１の凹部内に配置される第１の押圧部と、
前記一対の第２の凹部の前記スライダの幅方向への移動を許容し、前記一対の第２の凹部を前記スライダの上下方向にそれぞれ押圧するように、前記一対の第２の凹部内に配置される一対の第２の押圧部と、を有し、
前記第２の押圧部は、前記第２の凹部の上方向に突出する上部押圧部と、前記第２の凹部の下方向に突出する下部押圧部と、を有し、下部押圧部による下方向の締め代を、上部押圧部による上方向の締め代よりも大きくした、
リニアガイド。
本構成によれば、ケース内の潤滑剤供給部材の下方向への位置ずれを防止しつつ、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触を安定させることができるため、案内レールに潤滑剤供給部材に含浸された潤滑剤を効率的且つ持続的に供給できる。

【0039】

（２） 前記第２の押圧部による上下方向の締め代は、前記第２の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
（１）に記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触をより安定させることができる。

【0040】

（３） 前記第１の押圧部による幅方向の締め代は、前記第１の凹部の切欠幅の２０％以内とした、
（１）又は（２）に記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材のレール側軌道面への接触をより安定させることができる。

【符号の説明】

【0041】

１０ リニアガイド
２０ 案内レール
２１ レール側軌道面
２２ レール側軌道面
３０ スライダ
３１ スライダ本体
３２ エンドキャップ
３３ 潤滑ユニット
４１ 外周壁
４２ 端壁
４３ 収容部
４４ 第１の押圧部
４５ 第２の押圧部
４５ａ 上部押圧部
４５ｂ 下部押圧部
４７ ねじ挿通孔
５０ 潤滑剤供給部材
５１ 突部
５２ 突部
５３ 第１の凹部
５４ 第２の凹部
６０ サイドシール
６１ 貫通孔
６４ 貫通孔
６５ 弾性体
Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３ 締め代
Ｒ２、Ｒ３ 曲率

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】