IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146233
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20241004BHJP
   H02K 16/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059014
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 太一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 晋
(72)【発明者】
【氏名】船場 樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏夫
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB16
5H641BB18
5H641BB19
5H641GG02
5H641GG03
5H641HH02
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】直動推力を得る方向への小型化を図り得るリニアモータを提供する。
【解決手段】リニアモータM1の可動子30は、磁極部31a,31bを有する可動体40,50を固定子20に対して軸方向に相対移動可能に組み付け、可動体40,50自身も互いに軸方向に相対移動可能に組み付けられる。可動子30は、軸方向の直交方向に見て可動体40,50の重なる収縮状態と可動体40,50の重なりが収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で直動動作を行うことで直動推力を得る。可動子30の収縮状態では可動体40,50の軸方向の重なりが大きいことから、モータM1の直動推力を得る方向には小型となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、
複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、
前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、
前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、
前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、
前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する2つ以上の複数の可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記複数の可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記複数の可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記複数の可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている、
リニアモータ。
【請求項2】
前記可動子は、伸長動作の際には、先に可動する前記可動体の移動に伴って次に可動する前記可動体の前記可動子磁極部が前記固定子に対して臨む態様となり、収縮動作の際には、先に可動した前記可動体と前記固定子との間に次に可動する前記可動体が配置されることに伴って先に可動した前記可動体の前記可動子磁極部が前記固定子に対して臨まない態様となるように構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記可動子の前記複数の可動体それぞれの前記伸長状態の保持、及び前記伸長状態の保持の解除を行い可動対象の前記可動体の移動を許容する保持部(45,55,65,15,46,56)を更に備えている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記保持部は、前記可動体を支持する軸受(15,46,56)と、前記可動体に設けられて前記伸長状態に到達すると前記軸受と係止する規制部材(45,55,65)と、を含んで構成されている、
請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記可動子は、前記複数の可動体の1つずつが順次動作するように構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記可動子は、最収縮状態において自身の全体が1つの前記可動体の軸方向長さ内に収まるように構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記固定子と前記可動子とは、前記複数の前記可動体のうち、前記固定子に対して1つ伸長状態にある前記可動体の前記可動子磁極部と前記軸方向の重なり範囲を有する配置関係となるように構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記可動子は、最伸長状態において全体が連続する1つの斜面形状となるように、前記複数の可動体の前記固定子との対向面が斜面部(40a,50a,60a)として構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項9】
前記固定子及び前記可動子は、ともに円筒状に構成されており、
前記固定子が径方向外側にかつ前記可動子が径方向内側に配置、若しくは、
前記固定子が径方向内側にかつ前記可動子が径方向外側に配置されて構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項10】
前記固定子の前記固定子磁極部及び前記可動子の前記可動子磁極部の少なくとも一方において、1つの前記固定子磁極部又は前記可動子磁極部の軸方向長さよりも小さいピッチで点在する突極が生じるような突極性を有して構成され、前記固定子磁極部と前記可動子磁極部との間の磁気伝達時に磁気減速効果が得られるバーニアモータとして構成されている、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項11】
前記突極性を有する前記固定子磁極部又は前記可動子磁極部は、極異方性配向磁石よりなる永久磁石(27,34)、又はハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石(28,35)、若しくは一対の磁石体(29a)の間に磁性体(29b)を挟む混成部材(29)を含んで構成されている、
請求項10に記載のリニアモータ。
【請求項12】
複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、
複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、
前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、
前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、
前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、
前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する第1及び第2可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記第1及び第2可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記第1及び第2可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記第1及び第2可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている、
リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸方向の直動推力を得るリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータとしては、複数の磁極部が直線状に配置される固定子と、同じく複数の磁極部が直線状に配置されるとともに固定子に対して直動動作するように組み合わされる可動子とを備えてなる。例えば、固定子は、コイルを有する磁極部を備える電機子にて構成される。可動子は、永久磁石を有する磁極部を備える界磁子にて構成される。そして、これら固定子及び可動子の相互磁気作用により、軸方向の直動推力が得られるものとなっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-236832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータの一態様として、直動推力を得る方向に小型に構成することが要求されている。すなわち、本開示の目的は、直動推力を得る方向への小型化を図り得るリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るリニアモータは、複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する2つ以上の複数の可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記複数の可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記複数の可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記複数の可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている。
【0006】
上記構成によれば、リニアモータの可動子は、可動子磁極部を有する2つ以上の複数の可動体を固定子に対して軸方向に相対移動可能に組み付け、かつ複数の可動体自身も互いに軸方向に相対移動可能に組み付けられる。可動子は、軸方向の直交方向に見て複数の可動体の重なる収縮状態と複数の可動体の重なりが収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で直動動作を行い、リニアモータの直動推力を得る。可動子の収縮状態では、複数の可動体の軸方向の重なりが大きいことから、モータとして直動推力を得る方向への小型が図れる。
【0007】
本開示の一態様に係るリニアモータは、複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する第1及び第2可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記第1及び第2可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記第1及び第2可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記第1及び第2可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている。
【0008】
上記構成によれば、リニアモータの可動子は、可動子磁極部を有する第1及び第2可動体を固定子に対して軸方向に相対移動可能に組み付け、かつ第1及び第2可動体自身も互いに軸方向に相対移動可能に組み付けられる。可動子は、軸方向の直交方向に見て第1及び第2可動体の重なる収縮状態と第1及び第2可動体の重なりが収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で直動動作を行い、リニアモータの直動推力を得る。可動子の収縮状態では、複数の可動体の軸方向の重なりが大きいことから、モータとして直動推力を得る方向への小型が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図2】第1実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図3】第1実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図4】第2実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図5】第2実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図6】第3実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図7】第3実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図8】第4実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図9】第4実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図10】第5実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図11】第5実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図12】第5実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図13】第6実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図14】第6実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図15】第7実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図16】第7実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図17】第8実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図18】第8実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図19】第9実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図20】第9実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図21】第10実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図22】第10実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図23】第11実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図24】第11実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図25】第12実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図26】第12実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図27】第13実施形態におけるリニアモータの概略構成図である。
図28】第14実施形態における固定子及び可動子の概略構成図である。
図29】第14実施形態を一部変更した変更例を示す概略構成図である。
図30】第14実施形態を一部変更した変更例を示す概略構成図である。
図31】第14実施形態を一部変更した変更例を示す概略構成図である。
図32】第14実施形態を一部変更した変更例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、リニアモータの第1実施形態について説明する。
(リニアモータM1)
図1図2及び図3に示すように、本実施形態のリニアモータM1は、自身の軸L1方向(単に軸方向という)に直動推力を得るモータである。リニアモータM1は、ケース部材10と、固定子20と、可動子30とを備えている。本実施形態のリニアモータM1は、固定子20を電機子として、可動子30を界磁子として構成されている。リニアモータM1は、固定子20への給電に基づき、固定子20に対して可動子30を軸方向に往復直動動作させるとともに、可動子30自身も軸方向に伸縮動作させるものである。以下では、可動子30が軸方向に伸長する方向を先端方向とし、可動子30が軸方向に収縮する方向を基端方向とする。
【0011】
(ケース部材10)
ケース部材10は、軸方向に延びる円筒状の側壁部11と、側壁部11の軸方向端部を閉塞する円盤状の底壁部12とを備え、有底円筒状をなしている。ケース部材10には、固定子20と可動子30とがそれぞれ収容されている。可動子30の構成及び動作の詳細は後述するが、可動子30の収容される状態は、可動子30が最も収縮動作した状態である(図1参照)。
【0012】
ケース部材10は、側壁部11の軸方向における基端部を底壁部12にて閉塞する形状をなしている。側壁部11の軸方向における先端部は、軸方向に動作する可動子30と干渉しないように一部又は全部を解放させた開口部13を有している。ケース部材10の内部における底壁部12の中心部には、可動子30を支持する略円柱状の支持柱部14が設けられている。支持柱部14は、ケース部材10の底壁部12から開口部13に向けて軸方向に延びている。支持柱部14は、ケース部材10の軸方向長さより若干短い長さにて、ケース部材10内に収まる長さにて構成されている。支持柱部14の先端部の外周面には、可動子30の動作を許容しつつ支持する軸受15が設けられている。
【0013】
(固定子20)
固定子20は、ケース部材10の側壁部11の内周面に固定されている。固定子20は、軸方向に延びる略円筒状に構成されている。固定子20は、軸方向長さが支持柱部14の同方向長さよりも若干短い長さで、側壁部11の同方向長さよりも1/3程度短い長さにて構成されている。固定子20についても、ケース部材10内に収まる長さにて構成されている。固定子20は、ケース部材10の底壁部12に当接するように側壁部11の基端部寄りに配置されている。
【0014】
(磁極部21)
固定子20は、本実施形態では6つの固定子磁極部(単に磁極部という)21を有している。6つの磁極部21は、軸方向に並んで配置されている。各磁極部21はコイル22を含み、互いに同一構成となっている。各磁極部21のコイル22は、一例として、軸方向に向く巻回軸周りで固定子20の周方向に巻回する態様、若しくは径方向に向く巻回軸周りに巻回される同極のコイル部を固定子20の周方向に複数個配置する態様等をなしている。
【0015】
各磁極部21のコイル22は、軸方向一方側から順にU相、-W相、V相、-U相、W相、-V相として設定されている。各コイル22は、モータ制御装置(図示略)からそれぞれ対応する3相電源の供給を受ける。各磁極部21は、自身のコイル22への電源供給に基づいて、径方向内側に位置する可動子30の動作のための直動磁界を生じさせる。固定子20の磁気回路にケース部材10が含まれる場合、ケース部材10も固定子20の一部として機能する。
【0016】
(可動子30)
可動子30は、固定子20の径方向内側に配置されている。可動子30は、固定子20からの直動磁界を受けて軸方向に沿って往復動作する構成とともに、自身も軸方向に伸縮動作するように構成されている。
【0017】
可動子30は、第1可動体40及び第2可動体50を備えている。第1及び第2可動体40,50は、それぞれ軸方向に延びる略円筒状に構成されている。第1及び第2可動体40,50は、それぞれ支持柱部14の軸方向長さと略同等で、ケース部材10の側壁部11の同方向長さより若干短い長さにて構成されている。また、第1可動体40は、第2可動体50よりも小径に構成されており、第2可動体50の径方向内側に収容可能に構成されている。
【0018】
(磁極部31)
可動子30は、本実施形態では10個の可動子磁極部(単に磁極部という)31を有している。可動子30の10個の磁極部31は、第1可動体40に5つの磁極部31aを、第2可動体50に5つの磁極部31bをそれぞれ有している。本実施形態の可動子30の各磁極部31及び固定子20の各磁極部21は、可動子30の5つ分の磁極部31と固定子20の6つ分の磁極部21と同等の軸方向長さにて構成されている。つまり、可動子30の磁極数を5極、固定子20の磁極数を6極として、本実施形態のリニアモータM1は構成されている。
【0019】
(第1可動体40)
第1可動体40は、磁性金属材よりなる略円筒状の可動子基部41と、可動子基部41の外周面に設けられる略円環状の5つの磁性凸部42と、同じく可動子基部41の外周面に設けられる略円環状の5つの永久磁石43とを備えている。各磁性凸部42は、可動子基部41の外周面に対して一体に形成、若しくは別体の組み付けにて設けられている。各磁性凸部42と各永久磁石43とは、互いに略同一形状をなしている。各磁性凸部42と各永久磁石43とは、軸方向に交互に互いに接するようにして配置されている。各磁性凸部42と各永久磁石43とは、軸方向一方から互いに隣接する1つずつで1つの磁極部31aを構成している。第1可動体40の各磁極部31aは、第2可動体50が伸長状態にあって固定子20と直接的に対向するとき、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0020】
第1可動体40は、自身の内側にケース部材10の支持柱部14を挿入する態様にて組み付けられている。第1可動体40は、支持柱部14の先端部に設けた軸受15にて軸方向に動作可能に支持されている。第1可動体40は、自身の基端部の内周面に規制部材45を有している。規制部材45は、支持柱部14に対して第1可動体40が軸方向の先端方向に伸長する際、支持柱部14に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受15と係止する。規制部材45は、支持柱部14の外周面に当接して軸受として機能させてもよい。第1可動体40の先端部の外周面には、第2可動体50の動作を許容しつつ支持する軸受46が設けられている。
【0021】
(第2可動体50)
第2可動体50は、第1可動体40と径方向に大きさが異なるものの、基本的には略同様の構成をなしている。第2可動体50は、磁性金属材よりなる略円筒状の可動子基部51と、可動子基部51の外周面に設けられる略円環状の5つの磁性凸部52と、同じく可動子基部51の外周面に設けられる略円環状の5つの永久磁石53とを備えている。各磁性凸部52は、可動子基部51の外周面に対して一体に形成、若しくは別体の組み付けにて設けられている。各磁性凸部52と各永久磁石53とは、互いに略同一形状をなしている。各磁性凸部52と各永久磁石53とは、軸方向に交互に互いに接するようにして配置されている。各磁性凸部52と各永久磁石53とは、軸方向一方から互いに隣接する1つずつで1つの磁極部31bを構成している。第2可動体50の各磁極部31bは、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0022】
第2可動体50は、自身の内側に第1可動体40を挿入する態様にて組み付けられている。第2可動体50は、第1可動体40の先端部に設けた軸受46にて軸方向に動作可能に支持されている。第2可動体50は、自身の基端部の内周面に規制部材55を有している。規制部材55は、第1可動体40に対して第2可動体50が軸方向の先端方向に伸長する際、第1可動体40に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受46と係止する。規制部材55は、第1可動体40の外周面に当接して軸受として機能させてもよい。第2可動体50の先端部は、例えば被駆動装置(図示略)と連結される。
【0023】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のリニアモータM1において、モータ制御装置から固定子20の各磁極部21のコイル22に3相電源が供給されると、可動子30との対向面である固定子20の内周面に直動磁界が生じる。可動子30は、固定子20にて生じた直動磁界を受けて、図1に示す最収縮状態と図3に示す最伸長状態との間で軸方向に動作する。
【0024】
可動子30が図1に示す最収縮状態から伸長動作する際、先に固定子20と対向関係にある第2可動体50が、固定子20の直動磁界を受けて第1可動体40に対して軸方向に伸長動作を行う。その際、第1可動体40については、規制部材45等の機能にて支持柱部14に対して保持されている。第2可動体50のみが完全に伸長状態となる可動子30の図2に示す中間状態まで動作すると、第2可動体50の規制部材55が第1可動体40の軸受46と係止し、それ以上の第2可動体50の第1可動体40に対する伸長が規制される。また規制部材55及び軸受46等の機能にて、第2可動体50の第1可動体40に対する伸長状態が保持される。
【0025】
次いで、固定子20の直動磁界により、第1可動体40が支持柱部14に対して軸方向に伸長動作を行う。第1可動体40に対して伸長状態にて保持された第2可動体50は、第1可動体40と一体的となって第1可動体40の伸長動作とともに軸方向の先端方向に動作する。第1可動体40が完全に伸長状態となる可動子30の図3に示す最伸長状態になると、第1可動体40の規制部材45が支持柱部14の軸受15と係止し、それ以上の第1可動体40の支持柱部14に対する伸長が規制される。また規制部材45及び軸受15等の機能にて、第1可動体40の支持柱部14に対する伸長状態が保持される。
【0026】
可動子30が図3に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係にある第1可動体40が、固定子20の直動磁界を受けて支持柱部14に対して軸方向に収縮動作を行う。その際、規制部材45及び軸受15等の機能にて軸受15に対する第1可動体40の保持が解かれて、第1可動体40の軸方向の動作が許容された状態となる。第2可動体50については、第1可動体40に対して伸長状態を保持されたまま、第1可動体40と一体的となって第1可動体40の収縮動作とともに軸方向の基端方向に動作する。第1可動体40が完全に収縮状態となり第2可動体50のみが伸長状態となる可動子30の図2に示す中間状態まで動作すると、規制部材45等の機能にて、第1可動体40は支持柱部14に対して保持される。
【0027】
次いで、固定子20の直動磁界により、第2可動体50が第1可動体40に対して軸方向に収縮動作を行う。その際、規制部材55及び軸受46等の機能にて軸受46に対する第2可動体50の保持が解かれて、第2可動体50の軸方向の動作が許容された状態となる。そして、第2可動体50が完全に収縮状態となる可動子30の図1に示す最収縮状態まで動作すると、規制部材55等の機能にて、第2可動体50は第1可動体40に対して保持される。
【0028】
なお、規制部材45,55が軸受15,46と係止することで各可動体40,50の伸長を規制させたが、各可動体40,50の伸長を規制する他の機構を用いてもよい。また、規制部材45,55が各可動体40,50の所定位置の保持を行ったが、各可動体40,50の所定位置の保持を行う他の機構を用いてもよい。規制及び保持する各機構においては、機械的な機構又は電磁気的な機構を用いて構成してもよい。
【0029】
上記したリニアモータM1の可動子30は、ケース部材10の側壁部11の軸方向長さ内に完全な収容状態をなす最収縮状態と、側壁部11から側壁部11の軸方向長さの2倍程度の突出状態となる最伸長状態との間で直動動作を行う。可動子30は、第1及び第2可動体40,50を用いた順次2段階の直動動作を行うようになっている。リニアモータM1としては、可動子30の最伸長状態において側壁部11の軸方向長さを含めると3倍程度の全長となる。本実施形態のリニアモータM1は、その時々において最収縮状態と最伸長状態との間の直動動作の一部又は全部を被駆動装置に伝達することで被駆動装置の駆動源として機能する。被駆動装置の一例としては、ロボット用アクチュエータの被駆動装置等である。
【0030】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)本実施形態のリニアモータM1の可動子30は、磁極部31a,31bを有する第1及び第2可動体40,50を固定子20に対して軸方向に相対移動可能に組み付け、かつ各可動体40,50自身も互いに軸方向に相対移動可能に組み付けられる。可動子30の伸長動作の際には、先に可動する第2可動体50の移動に伴って次に可動する第1可動体40の磁極部31aが固定子20に対して臨む態様となる。可動子30の収縮動作の際には、先に可動した第1可動体40と固定子20との間に次に可動する第2可動体50が配置されることに伴って先に可動した第1可動体40の磁極部31aが固定子20に対して臨まない態様となる。可動子30は、軸方向の直交方向すなわち径方向に見て各可動体40,50の大きく重なる収縮状態と各可動体40,50の重なりが小さくなる伸長状態との間で直動動作を行い、リニアモータM1の直動推力を得るものである。つまり、本実施形態のリニアモータM1における可動子30の収縮状態では、各可動体40,50の軸方向の重なりが大きいことから、モータM1として直動推力を得る軸方向への小型を図ることができる。
【0031】
(1-2)リニアモータM1は、可動子30の第1及び第2可動体40,50それぞれの所定伸長状態の保持、及び所定伸長状態の保持の解除を行い可動対象の各可動体40,50の移動を許容する保持部を備える。本実施形態の保持部は、各可動体40,50の規制部材45,55と、各可動体40,50を支持する軸受15,46とを含む構成である。保持部を設けることで、各可動体40,50の順次の伸縮動作が適切に行い易くなる。
【0032】
(1-3)本実施形態の保持部としては、各可動体40,50を支持する軸受15,46と、各可動体40,50に設けられて所定伸長状態に到達すると軸受15,46と係止する規制部材45,55とを含む。軸受15,46に2つの機能を持たせているので、部品点数の削減効果が期待できる。
【0033】
(1-4)可動子30は、伸長動作及び収縮動作のいずれにおいても各可動体40,50の1つずつが順次動作する構成である。各可動体40,50を1つずつ順次動作させるリニアモータM1として提供することができる。
【0034】
(1-5)可動子30は、最収縮状態において自身の全体が1つの可動体である本実施形態では第2可動体50の軸方向長さ内に収まる構成である。リニアモータM1を軸方向に小型に構成することができる。
【0035】
(1-6)固定子20及び可動子30は、ともに円筒状に構成される。外形が略円柱状のリニアモータM1として提供することができる。また、決められたモータ体格の中で固定子20と可動子30との間での相互磁気作用の生じる面積を確保し易く、小型で高出力なリニアモータM1として提供することができる。
【0036】
(第2実施形態)
以下、リニアモータの第2実施形態について説明する。
(リニアモータM2、固定子20)
図4及び図5に示すように、本実施形態のリニアモータM2は、上記第1実施形態のリニアモータM1の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、ケース部材10において開口部13のある側壁部11の先端部寄りに配置されている。
【0037】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30が図5に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係となる第1可動体40の磁極部31aと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。図示略とするが、第1可動体40が収縮状態、第2可動体50が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第2可動体50の磁極部31bと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。つまり、本実施形態のリニアモータM2の可動子30は、上記第1実施形態のリニアモータM1よりも第1及び第2可動体40,50のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0038】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(2-1)上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(2-1)本実施形態の固定子20と可動子30とは、その時々で固定子20に対して1つ伸長状態にある第1及び第2可動体40,50の磁極部31a,31bと軸方向の重なり範囲を有する配置関係である。各可動体40,50に対して固定子20の直動磁界を順次供給し易い構造となるため、順次伸縮する可動子30の直動動作をより円滑とすることが期待できる。
【0040】
(第3実施形態)
以下、リニアモータの第3実施形態について説明する。
(リニアモータM3、固定子20)
図6及び図7に示すように、本実施形態のリニアモータM3の固定子20は、上記第1実施形態のリニアモータM1と同様、ケース部材10の底壁部12寄りに配置されている。
【0041】
(可動子30)
本実施形態の可動子30は、上記第1実施形態の第1及び第2可動体40,50に加え、第3可動体60を更に備えている。第3可動体60は、自身の内側に第2可動体50を挿入する態様にて組み付けられている。本実施形態の可動子30は、15個の磁極部31を有している。可動子30の15個の磁極部31は、第1可動体40に5つの磁極部31aを、第2可動体50に5つの磁極部31bを、第3可動体60に5つの磁極部31cをそれぞれ有している。
【0042】
(第3可動体60)
第3可動体60は、第1及び第2可動体40,50と径方向に大きさが異なるものの、基本的には略同様の構成をなしている。第3可動体60は、磁性金属材よりなる略円筒状の可動子基部61と、可動子基部61の外周面に設けられる略円環状の5つの磁性凸部62と、同じく可動子基部61の外周面に設けられる略円環状の5つの永久磁石63とを備えている。各磁性凸部62は、可動子基部61の外周面に対して一体に形成、若しくは別体の組み付けにて設けられている。各磁性凸部62と各永久磁石63とは、互いに略同一形状をなしている。各磁性凸部62と各永久磁石63とは、軸方向に交互に互いに接するようにして配置されている。各磁性凸部62と各永久磁石63とは、軸方向一方から互いに隣接する1つずつで1つの磁極部31cを構成している。第3可動体60の各磁極部31cは、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0043】
第3可動体60は、第2可動体50の先端部の外周面に設けた軸受56にて軸方向に動作可能に支持されている。第3可動体60は、自身の基端部の内周面に規制部材65を有している。規制部材65は、第2可動体50に対して第3可動体60が軸方向の先端方向に伸長する際、第2可動体50に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受56と係止する。また規制部材65及び軸受56等の機能にて、第3可動体60の第2可動体50に対する伸長状態の保持及び保持の解除が行われる。規制部材65は、第2可動体50の外周面に当接して軸受として機能させてもよい。第3可動体60の先端部は、被駆動装置(図示略)と連結される。
【0044】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のリニアモータM3においては、第3可動体60の直動動作及び規制部材65の機能が第2可動体50と同様である。可動子30は、第1、第2及び第3可動体40,50,60を用いた順次3段階の直動動作を行うようになっている。リニアモータM3としては、可動子30の最伸長状態においてケース部材10の側壁部11の軸方向長さを含めると4倍程度の全長となる。本実施形態のリニアモータM3は、その時々において最収縮状態と最伸長状態との間の直動動作の一部又は全部を被駆動装置に伝達することで被駆動装置の駆動源として機能する。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(3-1)上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(3-2)3段階で順次伸縮する可動子30を用いることで、直動動作範囲の長いリニアモータM3として提供することができる。
(第4実施形態)
以下、リニアモータの第4実施形態について説明する。
【0047】
(リニアモータM4)
図8及び図9に示すように、本実施形態のリニアモータM4は、上記第3実施形態のリニアモータM3の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、ケース部材10の開口部13寄りに配置されている。本実施形態のリニアモータM4は、上記第2実施形態のリニアモータM2と同様の構成を適用している。
【0048】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30が図9に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係となる第1可動体40の磁極部31aと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。図示略とするが、第1可動体40が収縮状態、第2及び第3可動体50,60が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第2可動体50の磁極部31bと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。さらに、第1及び第2可動体40,50が収縮状態、第3可動体60が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第3可動体60の磁極部31cと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。つまり、本実施形態のリニアモータM4の可動子30は、上記第3実施形態のリニアモータM3よりも第1、第2及び第3可動体40,50,60のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0049】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(4-1)上記第2及び第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第5実施形態)
以下、リニアモータの第5実施形態について説明する。
(リニアモータM5)
図10図11及び図12に示すように、本実施形態のリニアモータM5は、上記第1実施形態のリニアモータM1の固定子20と可動子30との径方向の関係を逆にして構成したものである。第1実施形態のリニアモータM1は、径方向外側に固定子20、径方向内側に可動子30を配置する構成であったが、本実施形態のリニアモータM5は、径方向外側に可動子30、径方向内側に固定子20を配置する構成である。
【0051】
(固定子20)
本実施形態の固定子20は、支持柱部14に固定されている。固定子20は、ケース部材10の底壁部12寄りに配置されている。固定子20の6つの磁極部21は、径方向外側に位置する可動子30の動作のための直動磁界を生じさせる。
【0052】
(可動子30)
本実施形態の可動子30は、固定子20の径方向外側に配置されている。可動子30は、第1可動体40及び第2可動体50を備えている。第1可動体40は、第2可動体50よりも大径に構成されており、第2可動体50を径方向内側に収容可能に構成されている。
【0053】
(第1可動体40)
第1可動体40は、可動子基部41の内周面に磁性凸部42及び永久磁石43をそれぞれ備えている。第1可動体40の5つの磁極部31aは、第2可動体50が伸長状態にあって固定子20と直接的に対向するとき、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0054】
第1可動体40は、ケース部材10の側壁部11の内周面に近接する態様にて組み付けられている。第1可動体40は、側壁部11の先端部に設けた軸受15にて軸方向に動作可能に支持されている。第1可動体40は、自身の基端部の外周面に規制部材45を有している。規制部材45は、側壁部11に対して第1可動体40が軸方向の先端方向に伸長する際、側壁部11に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受15と係止する。規制部材45は、側壁部11の内周面に当接して軸受として機能させてもよい。第1可動体40の先端部の内周面には、第2可動体50の動作を許容しつつ支持する軸受46が設けられている。
【0055】
(第2可動体50)
第2可動体50は、第1可動体40と径方向に大きさが異なるものの、基本的には略同様の構成をなしている。第2可動体50は、可動子基部51の内周面に磁性凸部52及び永久磁石53をそれぞれ備えている。第2可動体50の5つの磁極部31bは、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0056】
第2可動体50は、第1可動体40の内側に挿入される態様にて組み付けられている。第2可動体50は、第1可動体40の先端部に設けた軸受46にて軸方向に動作可能に支持されている。第2可動体50は、自身の基端部の外周面に規制部材55を有している。規制部材55は、第1可動体40に対して第2可動体50が軸方向の先端方向に伸長する際、第1可動体40に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受46と係止する。規制部材55は、第1可動体40の内周面に当接して軸受として機能させてもよい。第2可動体50の先端部は、例えば被駆動装置(図示略)と連結される。
【0057】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のリニアモータM5において、モータ制御装置(図示略)から固定子20の各磁極部21のコイル22に3相電源が供給されると、可動子30との対向面である固定子20の外周面に直動磁界が生じる。可動子30は、固定子20にて生じた直動磁界を受けて、図10に示す最収縮状態と図12に示す最伸長状態との間で軸方向に動作する。
【0058】
可動子30が図10に示す最収縮状態から伸長動作する際、先に固定子20と対向関係にある第2可動体50が、固定子20の直動磁界を受けて第1可動体40に対して軸方向に伸長動作を行う。その際、第1可動体40については、規制部材45等の機能にて支持柱部14に対して保持されている。第2可動体50のみが完全に伸長状態となる可動子30の図11に示す中間状態まで動作すると、第2可動体50の規制部材55が第1可動体40の軸受46と係止し、それ以上の第2可動体50の第1可動体40に対する伸長が規制される。また規制部材55等の機能にて、第2可動体50の第1可動体40に対する伸長状態が保持される。
【0059】
次いで、固定子20の直動磁界により、第1可動体40がケース部材10の側壁部11に対して軸方向に伸長動作を行う。第1可動体40に対して伸長状態にて保持された第2可動体50は、第1可動体40と一体的となって第1可動体40の伸長動作とともに軸方向の先端方向に動作する。第1可動体40が完全に伸長状態となる可動子30の図12に示す最伸長状態になると、第1可動体40の規制部材45が側壁部11の軸受15と係止し、それ以上の第1可動体40の側壁部11に対する伸長が規制される。また規制部材45等の機能にて、第1可動体40の側壁部11に対する伸長状態が保持される。
【0060】
可動子30が図12に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係にある第1可動体40が、固定子20の直動磁界を受けてケース部材10の側壁部11に対して軸方向に収縮動作を行う。その際、規制部材45等の機能にて軸受15に対する第1可動体40の保持が解かれて、第1可動体40の軸方向の動作が許容された状態となる。第2可動体50については、第1可動体40に対して伸長状態を保持されたまま、第1可動体40と一体的となって第1可動体40の収縮動作とともに軸方向の基端方向に動作する。第1可動体40が完全に収縮状態となり第2可動体50のみが伸長状態となる可動子30の図11に示す中間状態まで動作すると、規制部材45等の機能にて、第1可動体40は側壁部11に対して保持される。
【0061】
次いで、固定子20の直動磁界により、第2可動体50が第1可動体40に対して軸方向に収縮動作を行う。その際、規制部材55等の機能にて軸受46に対する第2可動体50の保持が解かれて、第2可動体50の軸方向の動作が許容された状態となる。そして、第2可動体50が完全に収縮状態となる可動子30の図10に示す最収縮状態まで動作すると、規制部材55等の機能にて、第2可動体50は第1可動体40に対して保持される。本実施形態のリニアモータM5は、上記第1実施形態のリニアモータM1と径方向の関係を逆に構成して、リニアモータM1と同様に2段階で順次伸縮可能な直動動作を得るようにしたものである。
【0062】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(5-1)上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(5-2)固定子20と可動子30との径方向の関係を逆に構成したリニアモータM5として提供することができる。
(第6実施形態)
以下、リニアモータの第6実施形態について説明する。
【0064】
(リニアモータM6、固定子20)
図13及び図14に示すように、本実施形態のリニアモータM6は、上記第5実施形態のリニアモータM5の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、上記第2実施形態のリニアモータM2と同様、ケース部材10の開口部13寄りに配置されている。
【0065】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30が図14に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係となる第1可動体40の磁極部31aと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。図示略とするが、第1可動体40が収縮状態、第2可動体50が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第2可動体50の磁極部31bと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。つまり、本実施形態のリニアモータM6の可動子30は、上記第5実施形態のリニアモータM5よりも第1及び第2可動体40,50のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(6-1)上記第2及び第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(第7実施形態)
以下、リニアモータの第7実施形態について説明する。
(リニアモータM7、固定子20)
図15及び図16に示すように、本実施形態のリニアモータM7の固定子20は、上記第5実施形態のリニアモータM5と同様、ケース部材10の底壁部12寄りに配置されている。
【0068】
(可動子30)
本実施形態の可動子30は、上記第5実施形態の第1及び第2可動体40,50に加え、第3可動体60を更に備えている。第3可動体60は、第2可動体50の内側に挿入される態様にて組み付けられている。
【0069】
(第3可動体60)
第3可動体60は、第1及び第2可動体40,50と径方向に大きさが異なるものの、基本的には略同様の構成をなしている。第3可動体60は、可動子基部61の内周面に磁性凸部62及び永久磁石63をそれぞれ備えている。第3可動体60の5つの磁極部31cは、固定子20の各磁極部21と径方向等に対向して直動磁界を受ける。
【0070】
第3可動体60は、第2可動体50の内側に挿入される態様にて組み付けられている。第3可動体60は、第2可動体50の先端部に設けた軸受56にて軸方向に動作可能に支持されている。第3可動体60は、自身の基端部の外周面に規制部材65を有している。規制部材65は、第2可動体50に対して第3可動体60が軸方向の先端方向に伸長する際、第2可動体50に対する所定以上の伸長を規制すべく軸受56と係止する。規制部材65は、第2可動体50の内周面に当接して軸受として機能させてもよい。第3可動体60の先端部は、被駆動装置(図示略)と連結される。本実施形態のリニアモータM7の可動子30は、第1、第2及び第3可動体40,50,60を用いた順次3段階の直動動作を行うようになっている。本実施形態のリニアモータM7は、同じく3段階の直動動作を行う上記第3実施形態のリニアモータM3と径方向の関係を逆に構成したものである。
【0071】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(7-1)上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
(7-2)3段階で順次伸縮する可動子30を有するリニアモータM7として提供することができる。リニアモータM7は、上記第3実施形態のリニアモータM3と径方向の関係を逆に構成したものでもある。
【0073】
(第8実施形態)
以下、リニアモータの第8実施形態について説明する。
(リニアモータM8、固定子20)
図17及び図18に示すように、本実施形態のリニアモータM8は、上記第7実施形態のリニアモータM7の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、上記第2実施形態のリニアモータM2と同様、ケース部材10の開口部13寄りに配置されている。
【0074】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30が図18に示す最伸長状態から収縮動作する際、先に固定子20と対向関係となる第1可動体40の磁極部31aと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。図示略とするが、第1可動体40が収縮状態、第2及び第3可動体50,60が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第2可動体50の磁極部31bと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。さらに、第1及び第2可動体40,50が収縮状態、第3可動体60が伸長状態にある可動子30の中間状態においても、次に固定子20と対向関係となる第3可動体60の磁極部31cと軸方向の重なり範囲を予め持たせることが可能である。つまり、本実施形態のリニアモータM8の可動子30は、上記第7実施形態のリニアモータM7よりも第1、第2及び第3可動体40,50,60のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0075】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(8-1)上記第2及び第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第9実施形態)
以下、リニアモータの第9実施形態について説明する。
(リニアモータM9)
図19及び図20に示すように、本実施形態のリニアモータM9は、同じく3段階の直動動作を行う上記第3及び第7実施形態のリニアモータM3,M7と同様な構成をなしている。異なる点としては、本実施形態の固定子20及び可動子30は、円筒状ではなく略板状に構成されている。
【0077】
(固定子20)
本実施形態の固定子20において、コイル22を有する磁極部21は板状に構成されている。固定子20は、ケース部材10の側壁部11の1つの側壁面に固定されている。固定子20は、ケース部材10の底壁部12寄りに配置されている。固定子20等を板状に構成するのに合わせて、本実施形態のケース部材10は例えば四角箱状に構成されている。
【0078】
(可動子30)
可動子30は、第1、第2及び第3可動体40,50,60を用いて3段階で順次伸縮可能な直動動作を行うように構成されている。第1、第2及び第3可動体40,50,60は、それぞれ略板状の可動子基部41,51,61、略板状の磁性凸部42,52,62、略板状の永久磁石43,53,63を用いて構成されている。可動子30は、ケース部材10の側壁部11における固定子20と対向する側壁面に支持されている。
【0079】
本実施形態のリニアモータM9は、第1、第2及び第3可動体40,50,60を用いた順次3段階の直動動作を行う可動子30を有して、全体を略板状に構成したものである。なお本実施形態のリニアモータM9においては細長板状、すなわち棒状に構成したものも含む。
【0080】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(9-1)上記第3及び第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(9-2)全体を略板状に構成したリニアモータM9として提供することができる。
(第10実施形態)
以下、リニアモータの第10実施形態について説明する。
【0082】
(リニアモータM10、固定子20)
図21及び図22に示すように、本実施形態のリニアモータM10は、上記第9実施形態のリニアモータM9の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、上記第2実施形態のリニアモータM2と同様、ケース部材10の開口部13寄りに配置されている。
【0083】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30においても、上記第2実施形態等と同様に、上記第9実施形態のリニアモータM9よりも第1、第2及び第3可動体40,50,60のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0084】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(10-1)上記第2及び第9実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第11実施形態)
以下、リニアモータの第11実施形態について説明する。
(リニアモータM11)
図23及び図24に示すように、本実施形態のリニアモータM11は、同じく3段階の直動動作を行う上記第3実施形態のリニアモータM3の磁気的な関係を逆にして構成したものである。上記第3実施形態のリニアモータM3は、固定子20を電機子として、可動子30を界磁子として構成したが、本実施形態のリニアモータM11は、固定子20を界磁子として、可動子30を電機子として構成するものである。
【0086】
(固定子20)
本実施形態の固定子20は、5つの磁極部21を有している。固定子20は、磁性金属材よりなる略円筒状の固定子基部23と、固定子基部23の内周面に設けられる略円環状の5つの磁性凸部24と、同じく固定子基部23の内周面に設けられる略円環状の5つの永久磁石25とを備えている。各磁性凸部24は、固定子基部23の内周面に対して一体に形成、若しくは別体の組み付けにて設けられている。各磁性凸部24と各永久磁石25とは、互いに略同一形状をなしている。各磁性凸部24と各永久磁石25とは、軸方向に交互に互いに接するようにして配置されている。各磁性凸部24と各永久磁石25とは、軸方向一方から互いに隣接する1つずつで1つの磁極部21を構成している。本実施形態の固定子20は、ケース部材10の底壁部12寄りに配置されている。
【0087】
(可動子30)
本実施形態の可動子30は、16個の磁極部31を有している。可動子30の16個の磁極部31は、第1可動体40に6つの磁極部31aを、第2可動体50に6つの磁極部31bを、第3可動体60に6つの磁極部31cをそれぞれ有している。第1、第2及び第3可動体40,50,60の各磁極部31a,31b,31cは、それぞれ軸方向に並んで配置されている。各磁極部31a,31b,31cはそれぞれコイル44,54,64を含み、互いに同一構成となっている。各磁極部31a,31b,31cのコイル44,54,64は、一例として、軸方向に向く巻回軸周りで可動子30の周方向に巻回する態様、若しくは径方向に向く巻回軸周りに巻回される同極のコイル部を可動子30の周方向に複数個配置する態様等をなしている。
【0088】
各磁極部31a,31b,31cのコイル44,54,64は、軸方向一方側から順にU相、-W相、V相、-U相、W相、-V相として設定されている。各コイル44,54,64は、モータ制御装置(図示略)からそれぞれ対応する3相電源の供給を受ける。各磁極部31a,31b,31cは、自身のコイル44,54,64への電源供給に基づいて、可動子30自身の動作のための直動磁界を生じさせる。
【0089】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のリニアモータM11において、モータ制御装置から可動子30の各磁極部31に3相電源が供給されると、固定子20との対向面である可動子30の外周面に直動磁界が生じる。本実施形態では、第1、第2及び第3可動体40,50,60の磁極部31a,31b,31cのコイル44,54,64に対して同一制御、又は独立制御が行われる。独立制御とした場合、各可動体40,50,60を互いに独立させた順次動作が行い易い。また、各可動体40,50,60を互いに同調させた動作も行い易い。つまり、可動子30の動作自由度の向上が期待できる。
【0090】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(11-1)上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(11-2)固定子20を界磁子、可動子30を電機子とし磁気的構成を逆に構成したリニアモータM11として提供することができる。
(第12実施形態)
以下、リニアモータの第12実施形態について説明する。
【0092】
(リニアモータM12、固定子20)
図25及び図26に示すように、本実施形態のリニアモータM12は、上記第11実施形態のリニアモータM11の固定子20の位置を変更したものである。本実施形態での固定子20は、上記第2実施形態のリニアモータM2と同様、ケース部材10の開口部13寄りに配置されている。
【0093】
(可動子30と固定子20との位置関係)
本実施形態の可動子30においても、上記第2実施形態等と同様に、上記第11実施形態のリニアモータM11よりも第1、第2及び第3可動体40,50,60のそれぞれに対して固定子20の直動磁界を供給し易い構造が採られている。
【0094】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(12-1)上記第2及び第11実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
(第13実施形態)
以下、リニアモータの第13実施形態について説明する。
(リニアモータM13、可動子30)
図27に示すように、本実施形態のリニアモータM13は、上記第3実施形態のリニアモータM3の可動子30の構成を変更したものである。本実施形態の可動子30は、第1、第2及び第3可動体40,50,60の各磁極部31a,31b,31cを有する外周面を軸方向に対して傾斜させた斜面部40a,50a,60aとして構成されている。各斜面部40a,50a,60aは、各可動体40,50,60がともに伸長状態にあるとき軸方向に連続する態様となり、全体として連続する1つの斜面形状をなす。
【0096】
つまり、各可動体40,50,60がそれぞれ伸長する状態に近づく際、若しくは各可動体40,50,60がそれぞれ伸長した状態にから遠ざかる際において、隣接する各可動体40,50,60の磁極部31a,31b,31cの間での磁界変化が緩やかになる。そのため、隣接する各可動体40,50,60の動作の繋がりの円滑化が期待できる。
【0097】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(13-1)上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(13-2)本実施形態の可動子30は、各可動体40,50,60の固定子20との対向面を斜面部40a,50a,60aとして構成される。可動子30は、最伸長状態において全体が連続する1つの斜面形状となる態様をなしている。隣接する各可動体40,50の磁極部31a,31b,31cの境界付近での磁界変化を緩やかでき、各可動体40,50,60それぞれの動作の繋がりを円滑にすることが期待できる。
【0099】
(第14実施形態)
以下、リニアモータに用いる固定子及び可動子の第14実施形態について説明する。
(固定子20及び可動子30の適用対象)
図28に示すように、本実施形態の固定子20及び可動子30は、上記第1実施形態のリニアモータM1等に用いられる。本実施形態の固定子20及び可動子30の構成を用いれば、固定子20と可動子30との間の磁気伝達時に磁気減速効果が生じる所謂バーニアモータとして構成することができる。バーニアモータは、高推力のモータ出力が得られる。本実施形態の固定子20及び可動子30は、上記第1実施形態のリニアモータM1以外で、リニアモータM2~M10,M13にも適用可能であり、また電機子と界磁子とを入れ替えたリニアモータM11,M12についても適用可能である。
【0100】
(固定子20)
本実施形態の固定子20の各磁極部21は、個々において1つのコイル22の他、一対の磁性板26及び永久磁石27を備えている。コイル22は、軸方向に向く巻回軸周りで固定子20の周方向に巻回する態様をなしている。コイル22の軸方向両端部には、略円環板状の磁性板26がそれぞれ配置されている。各磁性板26は、コイル2にそれぞれ当接している。各磁性板26における可動子30に向けた先端部は、コイル22よりも可動子30に向けて突出する突出部位26aをそれぞれ有している。コイル22を軸方向に挟む対の突出部位26aの軸方向間には、略円環状の永久磁石27が配置されている。永久磁石27の軸方向両端部は、各突出部位26aとそれぞれ当接している。永久磁石27における可動子30との対向面において、軸方向範囲の軸方向中央部に主として磁極が現れる構成となっている。本実施形態の永久磁石27は、軸方向中央部に局部的に磁極が現れる極異方性配向磁石にて構成されている。つまり、本実施形態の固定子20の各磁極部21は、個々において軸方向範囲の全体ではなく軸方向範囲で局所的に可動子30と磁気伝達を行うために突極性を持たせる構成としている。
【0101】
(可動子30)
本実施形態の可動子30は、磁性金属材よりなる可動子基部32と、可動子基部32に一体的に設けられる磁性凸部33と、磁性凸部33と隣接して設けられる永久磁石34とを備えている。磁性凸部33と永久磁石34とは、隣接する1つずつで1つの磁極部31xを構成している。磁極部31xは、上記第1実施形態の磁極部31a,31b等と同様な構成であるが他の実施形態にも適用可能なため、異なる符号を付して説明する。永久磁石34における固定子20との対向面において、軸方向範囲の軸方向中央部に主として磁極が現れる構成となっている。本実施形態の永久磁石34は、軸方向中央部に局部的に磁極が現れる極異方性配向磁石にて構成されている。つまり、本実施形態の可動子30の各磁極部31xは、個々において軸方向範囲の全体ではなく軸方向範囲で局所的に固定子20と磁気伝達を行うために突極性を持たせる構成としている。
【0102】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の固定子20及び可動子30においては、上記したが固定子20の6つ分の磁極部21と可動子30の5つ分の磁極部31とが同等の軸方向長さの設定となっている。固定子20及び可動子30の各磁極部21,31xでは、それぞれ1つの磁極部21,31xの軸方向長さよりも小さいピッチで点在する突極としての機能を持たせたものとなっている。本実施形態の固定子20及び可動子30を用いてなるリニアバーニアモータでは、軸方向一方への可動子30の磁極部31xの1つ分の移動に対し、エアギャップの磁束密度分布は軸方向他方に固定子20の磁極部21の6つ分(この場合1ブロック分)移動する。固定子20の6つの磁極部21と可動子30の5つの磁極部31xとが同等長さに設定されていることから、固定子20の各コイル22への通電時の1周期変化による可動子30の動作は磁極部31xの1つ分である。つまり、可動子30の動作は1/5に減速した動作となる。このように固定子20から可動子30への磁気伝達時の磁気減速効果を得る構成としたことで、高推力のモータ出力が得られるものとなっている。
【0103】
本実施形態の突極性を有する固定子20及び可動子30は一例であり、下記のように適宜変更して構成することもできる。
図29に示す固定子20は、極異方性配向の永久磁石27と同等の機能を有するハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石28を用いている。永久磁石28は、個々の直線配向の磁石体28aを複数個組み合わせて構成したものである。可動子30についても、極異方性配向の永久磁石34と同等の機能を有するハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石35を用いている。永久磁石35は、個々の直線配向の磁石体35aを複数個組み合わせて構成したものである。
【0104】
図30に示す固定子20は、極異方性配向の永久磁石27と同等の機能を有する磁石体29a及び磁性体29bの混成部材29を用いている。混成部材29は、個々の直線配向で軸方向に逆向きの一対の磁石体29a間に磁性体29bを軸方向に挟んで構成したものである。可動子30については、極異方性配向の永久磁石34を用いている。磁石体29a及び磁性体29bよりなる混成部材29については、可動子30に設けてもよい。
【0105】
図31及び図32に示す可動子30は、直線配向で軸方向に逆向きの一対の磁石体36aを組み合わせた永久磁石36を用いている。図31の態様は、極異方性配向の永久磁石27を用いる固定子20との組み合わせである。図32の態様は、磁石体29a及び磁性体29bの混成部材29を用いる固定子20との組み合わせである。図31及び図32に示す可動子30は永久磁石36にて突極性を持たないが、突極性を有する固定子20の磁界を受けて磁性凸部33が成り行きで機能する構成である。
【0106】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(14-1)本実施形態の固定子20の磁極部21及び可動子30の磁極部31xは、それぞれ各磁極部21,31xの1つ分の軸方向長さよりも小さいピッチで点在する突極が生じるような突極性を有して構成される。つまり、磁極部21と磁極部31xとの間の磁気伝達時に磁気減速効果が得られ、高推力なリニアバーニアモータとして提供することができる。
【0107】
(14-2)突極性を有する固定子21の磁極部21は、それぞれ極異方性配向磁石よりなる永久磁石27、ハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石28、一対の磁石体29aの間に磁性体29bを挟む混成部材29を用いて構成可能である。突極性を有する可動子30の磁極部31xについても、それぞれ極異方性配向磁石よりなる永久磁石34、ハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石35を用いて構成可能である。突極性を有する各磁極部21,31xを簡易に構成することができる。
【0108】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0109】
・固定子20及び可動子30を電機子とした場合の磁極数を6極、固定子20及び可動子30を界磁子とした場合の磁極数を5極としたが、磁極数は一例であり、適宜変更してもよい。
【0110】
・可動子30の最収縮状態において、例えば図1に示す第1実施形態等では1つの可動体50の軸方向長さ内に収まるように可動子30が構成されたが、1つの可動体50に完全に収まる態様でなくてもよい。各可動体40,50の収縮状態において互いに全部又は一部が重なり、伸長状態で互いの重なりが収縮状態よりも小さくなればよい。
【0111】
・可動子30の各可動体40,50,60を1つずつ順次動作する構成としていたが、隣接する各可動体40,50,60の動作を一部重ねた動作としてもよい。各可動体40,50,60の動作に同時となる部分があってもよい。
【0112】
・固定子20に対して可動子30を軸方向一方に動作させたが、可動子30を軸方向両方に動作させる構成としてもよい。
・界磁子の構成について、例えば図1に示す第1実施形態等では界磁子である可動子30の各磁極部31a,31bを磁性凸部42及び永久磁石43をともに用いて構成したが、磁性凸部のみを用いて構成してもよく、永久磁石のみを用いて構成してもよい。また、磁性凸部は凸形状に限らず、磁性極部として機能すればよい。
【0113】
・上記の他、電機子及び界磁子を構成する固定子20及び可動子30、各磁極部21,31a,31b,31c,31x、更にはケース部材10それぞれ個々の構成を適宜変更してもよい。
【0114】
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[1]
複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、
複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、
前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、
前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、
前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、
前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する2つ以上の複数の可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記複数の可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記複数の可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記複数の可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている、
リニアモータ。
【0115】
[2]
前記可動子は、伸長動作の際には、先に可動する前記可動体の移動に伴って次に可動する前記可動体の前記可動子磁極部が前記固定子に対して臨む態様となり、収縮動作の際には、先に可動した前記可動体と前記固定子との間に次に可動する前記可動体が配置されることに伴って先に可動した前記可動体の前記可動子磁極部が前記固定子に対して臨まない態様となるように構成されている、
上記[1]に記載のリニアモータ。
【0116】
[3]
前記可動子の前記複数の可動体それぞれの前記伸長状態の保持、及び前記伸長状態の保持の解除を行い可動対象の前記可動体の移動を許容する保持部(45,55,65,15,46,56)を更に備えている、
上記[1]又は[2]に記載のリニアモータ。
【0117】
[4]
前記保持部は、前記可動体を支持する軸受(15,46,56)と、前記可動体に設けられて前記伸長状態に到達すると前記軸受と係止する規制部材(45,55,65)と、を含んで構成されている、
上記[3]に記載のリニアモータ。
【0118】
[5]
前記可動子は、前記複数の可動体の1つずつが順次動作するように構成されている、
上記[1]から[4]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0119】
[6]
前記可動子は、最収縮状態において自身の全体が1つの前記可動体の軸方向長さ内に収まるように構成されている、
上記[1]から[5]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0120】
[7]
前記固定子と前記可動子とは、前記複数の前記可動体のうち、前記固定子に対して1つ伸長状態にある前記可動体の前記可動子磁極部と前記軸方向の重なり範囲を有する配置関係となるように構成されている、
上記[1]から[6]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0121】
[8]
前記可動子は、最伸長状態において全体が連続する1つの斜面形状となるように、前記複数の可動体の前記固定子との対向面が斜面部(40a,50a,60a)として構成されている、
上記[1]から[7]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0122】
[9]
前記固定子及び前記可動子は、ともに円筒状に構成されており、
前記固定子が径方向外側にかつ前記可動子が径方向内側に配置、若しくは、
前記固定子が径方向内側にかつ前記可動子が径方向外側に配置されて構成されている、
上記[1]から[8]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0123】
[10]
前記固定子の前記固定子磁極部及び前記可動子の前記可動子磁極部の少なくとも一方において、1つの前記固定子磁極部又は前記可動子磁極部の軸方向長さよりも小さいピッチで点在する突極が生じるような突極性を有して構成され、前記固定子磁極部と前記可動子磁極部との間の磁気伝達時に磁気減速効果が得られるバーニアモータとして構成されている、
上記[1]から[9]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【0124】
[11]
前記突極性を有する前記固定子磁極部又は前記可動子磁極部は、極異方性配向磁石よりなる永久磁石(27,34)、又はハルバッハ配列磁石よりなる永久磁石(28,35)、若しくは一対の磁石体(29a)の間に磁性体(29b)を挟む混成部材(29)を含んで構成されている、
上記[10]に記載のリニアモータ。
【0125】
[12]
複数の固定子磁極部(21)が直線状に配置されてなる固定子(20)と、
複数の可動子磁極部(31,31a,31b,31c,31x)が直線状に配置されてなる可動子(30)と、を備え、
前記固定子磁極部はコイル(22)を含み前記固定子が電機子として構成されるとともに、前記可動子磁極部は磁性極部(42,52,62)又は永久磁石(43,53,63)を含み前記可動子が界磁子として構成される、若しくは、
前記固定子磁極部は磁性極部(24)又は永久磁石(25)を含み前記固定子が界磁子として構成されるとともに、前記可動子磁極部はコイル(44,54,64)を含み前記可動子が電機子として構成されており、
前記コイルへの通電に基づく前記固定子磁極部及び前記可動子磁極部の相互磁気作用により、前記固定子に対する前記可動子の直動動作にて軸(L1)方向の直動推力を得るリニアモータ(M1~M13)であって、
前記可動子は、それぞれ前記可動子磁極部を有する第1及び第2可動体(40,50,60)を、前記固定子に対して前記軸方向に相対移動可能に、かつ前記第1及び第2可動体自身も互いに前記軸方向に相対移動可能に組み付けられて、前記軸方向の直交方向に見て前記第1及び第2可動体の重なる収縮状態と、前記軸方向に動作して前記第1及び第2可動体の重なりが前記収縮状態よりも小さくなる伸長状態との間で動作を行うように構成されている、
リニアモータ。
【符号の説明】
【0126】
M1~M13 リニアモータ、L1 軸、20 固定子、21 固定子磁極部(磁極部)、22 コイル、24 磁性凸部(磁性極部)、25 永久磁石、30 可動子、31,31a,31b,31c,31x 可動子磁極部(磁極部)、40,50,60 第1~第3可動体(可動体)、42,52,62 磁性凸部(磁性極部)、43,53,63 永久磁石、44,54,64 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32