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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146235
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】空調機
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20241004BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20241004BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25B41/40 Z
F25B7/00 Z
F25B1/00 396E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059016
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 猛
(72)【発明者】
【氏名】吉見 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】堀田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】東 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩彰
(57)【要約】
【課題】可燃性冷媒以外の冷媒回路の接続替えを行う際に、可燃性冷媒の配管に与える影響を軽減する。
【解決手段】空調機は、可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用した空調機であって、可燃性冷媒以外の他の冷媒側の回路に敷設されるサービス時に配管の接続替えを行う部分についてロウ付けの炎が可燃性冷媒回路をあぶらないように構成されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用した空調機であって、
可燃性冷媒以外の他の冷媒側の回路に敷設されるサービス時に配管の接続替えを行う部分についてロウ付けの炎が可燃性冷媒回路をあぶらないように構成されてなる空調機。
【請求項2】
前記可燃性冷媒回路の配管と前記他の冷媒側の回路の前記接続替えを行う部分との距離が50mm以上離れている請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記他の冷媒側の回路に備えられる圧縮機の接続替えを行う部分と前記可燃性冷媒回路との間に保護部材が設置されている請求項1または2に記載の空調機。
【請求項4】
前記他の冷媒側の回路に備えられる圧縮機の接続替えを行う部分と前記可燃性冷媒回路との間に、当該他の冷媒側の回路に備えられる容器または板金が設置されている請求項1または2に記載の空調機。
【請求項5】
前記可燃性冷媒回路と前記他の冷媒側の回路とが別ケーシングに収められている請求項1に記載の空調機。
【請求項6】
前記可燃性冷媒と前記他の冷媒の回路接続には前記他の冷媒側の回路の配管のみが使用される請求項1または5に記載の空調機。
【請求項7】
ロウ付けを要することなく前記他の冷媒側の回路の部品交換が可能な構造を有する請求項1に記載の空調機。
【請求項8】
少なくとも前記接続替えを行う部分には、工具で締め付け可能な継手が使用されている請求項1または7に記載の空調機。
【請求項9】
交換部品として、少なくとも圧縮機、四路切替弁、電動弁を備える請求項1または7に記載の空調機。
【請求項10】
前記可燃性冷媒回路に用いられる配管もしくは防露筒は、前記他の冷媒側の回路に用いられる配管もしくは防露筒と色もしくは形状、材質のいずれかが異なる請求項1に記載の空調機。
【請求項11】
前記可燃性冷媒には炭化水素を使用する請求項1に記載の空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、30℃で1MPa以下の第1冷媒を用いた利用側の冷凍サイクルと、30℃で1.5MPa以上の第2冷媒を用いた熱源側の冷凍サイクルと、を含む二元冷凍サイクルを行うことで暖房運転を行い、第1冷媒を用いた単元冷凍サイクルを行うことで冷房運転を行うことにより、冷房運転および暖房運転を効率よく行う、とする冷凍サイクル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-159196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒回路を利用する空調機等の装置は、その敷設時において、配管の接続替えを行う部分についてロウ付けをするために炎を用いることがある。例えば可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用する二元サイクルを利用する空調機の場合、ロウ付けの際に可燃性冷媒の配管を炎であぶってしまうおそれがある。また、敷設時に可燃性冷媒の配管を誤って切断してしまう等、可燃性冷媒の配管に影響を及ぼすおそれがある。
本開示は、可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用した空調機において可燃性冷媒以外の他の冷媒側の回路の接続替えを行う際に、可燃性冷媒の配管に与える影響を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の空調機は、可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用した空調機であって、可燃性冷媒以外の他の冷媒側の回路に敷設されるサービス時に配管の接続替えを行う部分についてロウ付けの炎が可燃性冷媒回路をあぶらないように構成されてなる。この場合、可燃性冷媒以外の冷媒回路の接続替えを行う際に、可燃性冷媒の配管に与える影響を軽減することができる。
ここで、本開示の空調機は、前記可燃性冷媒回路の配管と前記他の冷媒側の回路の前記接続替えを行う部分との距離が50mm以上離れている。この場合、他の冷媒側の回路の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎が可燃性冷媒回路の配管をあぶることを防ぐことができる。
また、本開示の空調機は、前記他の冷媒側の回路に備えられる圧縮機の接続替えを行う部分と前記可燃性冷媒回路との間に保護部材が設置されている。この場合、可燃性冷媒回路の配管を他の冷媒側の回路の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
また、本開示の空調機は、前記他の冷媒側の回路に備えられる圧縮機の接続替えを行う部分と前記可燃性冷媒回路との間に、当該他の冷媒側の回路に備えられる容器または板金が設置されている。この場合、他の冷媒側の回路の構成要素を利用して、可燃性冷媒回路の配管を他の冷媒側の回路の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
また、本開示の空調機は、前記可燃性冷媒回路と前記他の冷媒側の回路とが別ケーシングに収められている。この場合、可燃性冷媒以外の冷媒回路の接続替えを行う際に、可燃性冷媒回路の配管に与える影響を遮断することができる。
また、本開示の空調機は、前記可燃性冷媒と前記他の冷媒の回路接続には前記他の冷媒側の回路の配管のみが使用される。この場合、可燃性冷媒と他の冷媒の回路接続部分が、他の冷媒側の回路の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から影響を受けることを防ぐことができる。
また、本開示の空調機は、ロウ付けを要することなく前記他の冷媒側の回路の部品交換が可能な構造を有する。この場合、ロウ付けの炎が可燃性冷媒回路の配管をあぶらない構成を実現することができる。
また、本開示の空調機は、少なくとも前記接続替えを行う部分には、工具で締め付け可能な継手が使用されている。この場合、ロウ付けを要することなく他の冷媒側の回路の配管の接続替えを行うことができる。
また、本開示の空調機は、交換部品として、少なくとも圧縮機、四路切替弁、電動弁を備える。この場合、圧縮機、四路切替弁、電動弁の交換に際し、可燃性冷媒以外の冷媒回路の接続替えを行う際に、可燃性冷媒の配管に与える影響を軽減することができる。
ここで、本開示の空調機は、前記可燃性冷媒回路に用いられる配管もしくは防露筒は、前記他の冷媒側の回路に用いられる配管もしくは防露筒と色もしくは形状、材質のいずれかが異なる。この場合、可燃性冷媒回路に用いられる配管もしくは防露筒と他の冷媒側の回路に用いられる配管もしくは防露筒との取り違えを防止することができる。
また、本開示の空調機は、前記可燃性冷媒には炭化水素を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施の形態に係る空調機の構成例を示す回路図である。
図2】第1冷媒回路の接続替えポイントと第2冷媒回路の配管との間に設置される保護部材の設置例を示す図である。
図3】第1冷媒回路に備えられる容器を第1冷媒回路において配管の接続替えを行う部分と第2冷媒回路の配管との間に設置する場合の設置例を示す図である。
図4】第1冷媒回路と第2冷媒回路とが別ケーシングに収められる場合の室外機の構成例を示す図である。
図5】第1冷媒回路と第2冷媒回路とが別ケーシングに収められる場合の室外機の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<空調機の構成>
図1は、本実施の形態に係る空調機の構成例を示す回路図である。
本実施の形態に係る空調機1は、室内機10と室外機20とを備える。
室内機10は、例えば室内熱交換器11を備える。室内熱交換器11は、暖房運転時には凝縮器として、冷房運転時には蒸発器として機能する。室内機10は、室内ファン(不図示)を備える構成としても良い。
なお、図1において、空調機1は1つの室内機10を備えているが、この構成に限定されない。例えば、空調機1は複数の室内機10を備える構成としても良い。この場合、冷媒配管は各室内機10へと分岐する。
室内機10と室外機20とは、液閉鎖弁37、ガス閉鎖弁38をそれぞれ有する配管によって互いに接続される。複数の室内機10を備える場合、冷媒配管は各室内機10へと分岐し、室外機20に対し複数の室内機10が接続される。
【0008】
室外機20は、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とを備える。第1冷媒回路21は、液閉鎖弁37、ガス閉鎖弁38をそれぞれ有する配管によって室内機10に接続される。第1冷媒回路21は可燃性冷媒以外の他の冷媒が充填され、第2冷媒回路22は可燃性冷媒が充填される。
第1冷媒回路21は、例えば可燃性冷媒以外の他の冷媒として、二酸化炭素が充填される。第2冷媒回路22は、例えば可燃性冷媒としてプロパンが充填される。なお、充填される冷媒は上記したものに限定されず、例えば可燃性冷媒は他の炭化水素であっても良い。
第2冷媒回路22は、第1冷媒回路21の能力を高めるアシスト回路として機能する。
【0009】
第1冷媒回路21は、第1圧縮機31と、第1サブアキュムレータ32と、四路切換弁33と、第1室外熱交換器34と、カスケード熱交換器35と、第1電動弁36と、液閉鎖弁37と、室内熱交換器11と、ガス閉鎖弁38と、低圧レシーバ39とが順に接続されて構成される。
第2冷媒回路22は、第2圧縮機41と、第2サブアキュムレータ42と、第2室外熱交換器43と、第2電動弁44とが順に接続されて構成される。
なお、第1冷媒回路21および第2冷媒回路22は、上記した構成に限定されない。例えば、第1冷媒回路21および第2冷媒回路22は、フィルターやヒートシンク、オイルセパレータ等を備える構成としても良い。また、圧力センサや保護用検出器である高圧圧力開閉器などを備える構成としても良い。
【0010】
第1圧縮機31は、その吐出側が四路切換弁33の第1ポート(P1)に接続され、その吸入側は第1サブアキュムレータ32に接続される。第1サブアキュムレータ32は、冷媒を気体と液体とに分離させ、気体の冷媒のみを第1圧縮機31に吸入させる。第1圧縮機31は、吸入した気体冷媒を圧縮し、吐出側から吐出する。
【0011】
四路切換弁33は、第1ポート(P1)と、第2ポート(P2)と、第3ポート(P3)と、第4ポート(P4)とを備え、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態とを切り替えることができる。
四路切換弁33は、冷房運転時には第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態であり、暖房運転時には第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態へと切り替わる。
【0012】
第1室外熱交換器34は、冷媒と外気との間で熱交換を行う。第1室外熱交換器34は、暖房運転時には蒸発器として、冷房運転時には凝縮器として機能する。第1室外熱交換器34は、室外ファン51(図2参照)を備える構成としても良い。
カスケード熱交換器35は、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22との間で熱交換を行う。カスケード熱交換器35は、例えば直径の異なる2つの配管を内側と外側の二重に組み合わせた二重管熱交換器である。また、カスケード熱交換器35は、プレート熱交換器等、他の形式の熱交換器であっても良い。
【0013】
第1電動弁36は、開度可変に構成されており、第1冷媒回路21内を循環する冷媒の圧力を下げ、冷媒を膨張させる機能を有する。
液閉鎖弁37およびガス閉鎖弁38は、室内の配管と室外の配管とをつなぐ働きを有する。
低圧レシーバ39は、気体と液体とに分離した冷媒のうち、液冷媒を溜める働きを有する。
【0014】
第2圧縮機41、第2サブアキュムレータ42、第2室外熱交換器43、第2電動弁44は、それぞれ第1圧縮機31、第1サブアキュムレータ32、第1室外熱交換器34、第1電動弁36と同様の働きを、第2冷媒回路において有する。
【0015】
第1冷媒回路21および第2冷媒回路22における冷媒の流れについて、冷房運転時における例を説明する。四路切換弁33は、冷房運転時には第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態である。
【0016】
第1冷媒回路21において、冷媒は、まず第1圧縮機31により圧縮される。圧縮された冷媒は四路切換弁33を通り、第1室外熱交換器34に入る。第1室外熱交換器34は、冷房運転時には凝縮器として機能する。第1室外熱交換器34から出た冷媒はカスケード熱交換器35に入る。冷房運転時には、カスケード熱交換器35は、第1冷媒回路21における凝縮器として機能する。カスケード熱交換器35から出た冷媒は、第1電動弁36を通る際に減圧され、液閉鎖弁37を通って室内熱交換器11に入る。室内熱交換器11は、冷房運転時には蒸発器として機能する。室内熱交換器11から出た冷媒は、ガス閉鎖弁38、四路切換弁33、低圧レシーバ39、第1サブアキュムレータ32を通り、再び第1圧縮機31に入る。
【0017】
次に、第2冷媒回路22における冷媒の流れについて説明する。第2冷媒回路22において、冷媒は、まず第2圧縮機41により圧縮される。圧縮された冷媒は第2室外熱交換器43に入る。第2室外熱交換器43は、冷房運転時には凝縮器として機能する。第2室外熱交換器43から出た冷媒は、第2電動弁44を通る際に減圧され、カスケード熱交換器35に入る。冷房運転時には、カスケード熱交換器35は、第2冷媒回路22における蒸発器として機能する。カスケード熱交換器35から出た冷媒は、第2サブアキュムレータ42を通り、再び第2圧縮機41に入る。
【0018】
本実施の形態に係る第2冷媒回路22の機能について説明する。
空調機1が第2冷媒回路22およびカスケード熱交換器35を備えない場合、第1冷媒回路21は単元回路として働く。この場合、第1冷媒回路21を流れる冷媒は第1圧縮機31により圧縮され、第1室外熱交換器34により凝縮され、第1電動弁36により減圧され、室内熱交換器11により蒸発される。単元回路においては、第1室外熱交換器34における放熱により比エンタルピーが減少し、第1室外熱交換器34における吸熱および第1圧縮機31における圧縮により比エンタルピーが増加する。第1室外熱交換器34における吸熱により増加する比エンタルピーが冷凍サイクルにおける冷凍効果であり、冷凍効果を高くするほど空調機1の冷房能力を高めることができる。
【0019】
これに対し、本実施の形態に係る空調機1は第2冷媒回路22およびカスケード熱交換器35を備える2元回路を有する。冷房運転時には、カスケード熱交換器35は、第1冷媒回路21における凝縮器としての機能と、第2冷媒回路22における蒸発器としての機能とを有する。この場合、第1冷媒回路21を流れる冷媒は第1圧縮機31により圧縮され、第1室外熱交換器34により凝縮され、カスケード熱交換器35により凝縮され、第1電動弁36により減圧され、室内熱交換器11により蒸発される。
【0020】
本実施の形態に係る空調機1においては、第1室外熱交換器34およびカスケード熱交換器35における放熱により比エンタルピーが減少し、第1室外熱交換器34における吸熱および第1圧縮機31における圧縮により比エンタルピーが増加する。第1冷媒回路21を流れる冷媒は第1室外熱交換器34において冷却され、カスケード熱交換器35においてさらに冷却される。これにより、単元回路の場合に比して比エンタルピーをより稼ぐことができ、冷凍効果を高めることができる。
このように、第2冷媒回路22は第1冷媒回路21のアシスト回路として働き、空調機1の冷房能力を高める。
【0021】
次に、暖房運転時における第1冷媒回路21および第2冷媒回路22における冷媒の流れについて説明する。四路切換弁33は、暖房運転時には第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態である。
【0022】
第1冷媒回路21において、冷媒は、まず第1圧縮機31により圧縮される。圧縮された冷媒は四路切換弁33、ガス閉鎖弁38を通り、室内熱交換器11に入る。室内熱交換器11は、暖房運転時には凝縮器として機能する。室内熱交換器11から出た冷媒は、液閉鎖弁37を通って室外機20に入り、第1電動弁36を通る際に減圧される。減圧された冷媒はカスケード熱交換器35を通り、第1室外熱交換器34に入る。第1室外熱交換器34は、暖房運転時には蒸発器として機能する。第1室外熱交換器34から出た冷媒は、四路切換弁33、低圧レシーバ39、第1サブアキュムレータ32を通り、再び第1圧縮機31に入る。
なお、暖房運転時においてもカスケード熱交換器35による熱交換が行われる構成としても良い。この場合、カスケード熱交換器35は第1冷媒回路21における蒸発器として機能する。
【0023】
<室外機の構造>
本実施の形態において、第2冷媒回路22には可燃性冷媒が、第1冷媒回路21には可燃性冷媒以外の他の冷媒が充填される。そのため、本実施の形態に係る室外機20において、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とは、第1冷媒回路21に敷設されるサービス時に配管の接続替えを行う部分(以下、接続替えポイントと呼ぶことがある)についてロウ付け作業を行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶらないように構成される。
【0024】
ロウ付け作業とは炎を用いて配管同士を接続する作業である。例えば冷媒配管を分岐する場合や構成部品の交換を行う場合にロウ付け作業が実施される。この場合に、ロウ付け作業を行う際に使用する炎が、可燃性冷媒の充填された第2冷媒回路22の配管をあぶることを防ぐ必要がある。
ロウ付け作業を行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶらないように構成することで、第1冷媒回路21の接続替えを行う際に、第2冷媒回路22の配管に与える影響を軽減することができる。このことにより、例えば第1冷媒回路21に二酸化炭素、第2冷媒回路22にプロパンを充填した二元冷凍サイクルを用いた効率的な運転が可能となる。
【0025】
第2冷媒回路22の配管をあぶらないように構成とは、第1冷媒回路21の接続替えポイントに対し炎を使用した場合に、第2冷媒回路22に影響を与えないように構成することである。
配管の接続替えを行う部分とは、例えば部品の交換を行う部分や配管をつなぎ直す部分等である。交換する部品としては、例えば圧縮機、四路切換弁、電動弁等の機能部品がある。
本実施の形態に係る室外機20の構造について以下に説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
第1の実施形態において、第2冷媒回路22の配管は、第1冷媒回路21の接続替えポイントと予め定められた距離以上離れるように構成される。予め定められた距離とは、第1冷媒回路21において接続替えポイントに用いるロウ付けの炎が、第2冷媒回路22をあぶることが無い距離である。
第1の実施形態において、第2冷媒回路22の配管は、第1冷媒回路21の接続替えポイントとの距離が50mm以上離れるように構成される。第2冷媒回路22の配管が第1冷媒回路21の接続替えポイントから50mm以上離れる構成とした場合、ロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶる危険性を抑制できる。この50mmは、バーナの先端が入り込むことが可能であり、かつ、ロウ付けの際のバーナからの炎が第2冷媒回路22の配管に届かない範囲として発明者等が実験を重ね、鋭意検討して得られた値である。実験の結果では、40mmでは炎の大きさによっては第2冷媒回路22の配管に届く場合があり、本実施の形態では、余裕を見て、その好ましい値として50mmという値を選定している。
【0027】
第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部分と第2冷媒回路22の配管とを50mm以上離して構成するには、例えば第1冷媒回路21の接続替えポイントを予め定められた範囲に集め、この範囲から離れた位置を通るように第2冷媒回路22の配管を設置する。例えば室外機20の手前側に第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部品等を設置し、50mm以上距離をあけた奥側に第2冷媒回路22の配管を設置する。
また、カスケード熱交換器35は、例えば配管距離が50mm以上となるプレート熱交換器を使用することで、第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管とを50mm以上離して構成することができる。
【0028】
なお、第1の実施形態に係る室外機の構造は、上記したものに限定されず、第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部分と第2冷媒回路22の配管とが50mm以上離れる構造であれば良い。
第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管とを50mm以上離して構成することにより、第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶることを防ぐことができる。また、誤って第2冷媒回路22の配管を切断する危険性を低減することができる。
【0029】
<第2の実施形態>
第2の実施形態においては、第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に保護部材53が設置される。保護部材53は、例えば薄く形成した金属の板等である。第2の実施形態において、保護部材53は、第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶらないように設置される。例えば、保護部材53は第2冷媒回路22の配管を囲うように設置される。
【0030】
第2の実施形態に係る保護部材53の設置について、図2を用いて説明する。図2は、第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に設置される保護部材53の設置例を示す図である。以下において、室外機20の図2における上側を「室外機20の奥側」とし、図2における下側を「室外機20の手前側」とする。
図2に示す例においては、第1冷媒回路21および第2冷媒回路22の構成要素のうち一部を省略して示している。室外機20は室外ファン51を備える。
【0031】
図2において、第2冷媒回路22の配管52は室外機20の奥側を通るように設置され、室外機20の手前側に第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部品等が設置される。配管の接続替えを行う部品とは、例えば第1圧縮機31や四路切換弁33、第1電動弁36等である。そして第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に保護部材53が設置される。
【0032】
図2に示す第2冷媒回路22の配管52は、例えば第2圧縮機41と第2室外熱交換器43とをつなぐ配管である。また例えば配管52は、第2室外熱交換器43と第2電動弁44とをつなぐ配管である。また配管52は一本に限られず、複数の配管が室外機20の奥側を通るように設置される。
また、図2に示す保護部材53の設置位置は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、保護部材53は、第1冷媒回路21の接続替えポイントを囲うように設置されても良い。
この構成により、第2冷媒回路22の配管を第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
【0033】
また、保護部材53の代わりに、第1冷媒回路21に備えられる容器または板金を第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に設置する構成としても良い。第1冷媒回路21に備えられる容器を保護部材53の代わりに使用する例について図3を用いて説明する。図3は、第1冷媒回路21に備えられる容器を第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部分と第2冷媒回路22の配管との間に設置する場合の設置例を示す図である。
【0034】
図3においては、図2に示す例と同様に第2冷媒回路22の配管52は室外機20の奥側を通るように設置され、室外機20の手前側に第1冷媒回路21において配管の接続替えを行う部品等が設置される。そして第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に、第1冷媒回路21に備えられる低圧レシーバ39が設置される。
なお、第1冷媒回路21の接続替えポイントと第2冷媒回路22の配管との間に設置される第1冷媒回路21に備えられる容器は低圧レシーバ39に限定されない。例えば、圧縮機等の交換が行われる機能部品でなければ良い。
この構成により、保護部材を新たに設置することなく、第2冷媒回路22の配管を第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
【0035】
<第3の実施形態>
第3の実施形態においては、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とが別ケーシングに収められる。第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とを別ケーシングに収めることにより、第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶることを防ぐことができる。
また、この際に第1冷媒回路21と第2冷媒回路22との接続には第1冷媒回路21の配管のみが使用される。より詳しくは、第1冷媒回路21の配管を第2冷媒回路のケーシングにつなぎこむことで、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とが接続される。
【0036】
第3の実施形態に係る室外機20の構成例について、図4および図5を用いて説明する。図4は、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とが別ケーシングに収められる場合の室外機20の構成例を示す図である。図5は、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22とが別ケーシングに収められる場合の室外機20の構造例を示す図である。
【0037】
第3の実施形態に係る室外機20は、第1室外機61と、第2室外機62とを備える。第1室外機61と第2室外機62とは、それぞれ第1室外ファン63、第2室外ファン64を備える。第1室外機61はその内側に第1冷媒回路21を有し、第2室外機62はその内側に第2冷媒回路22を有する。第1冷媒回路21は、液閉鎖弁37、ガス閉鎖弁38をそれぞれ有する配管によって室内機10(図1参照)に接続される。
【0038】
第1冷媒回路21および第2冷媒回路22の構成要素は、第1冷媒回路21および第2冷媒回路22が同一のケーシングに収められる場合と同じである。第1室外機61および第2室外機62は、各ケーシング内においてそれぞれ第1冷媒回路21および第2冷媒回路22の構成要素を備える。
【0039】
第3の実施形態において、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22との接続部分であるカスケード熱交換器35は、第2室外機62の内側に設置される。第1冷媒回路21の配管はその一部が第2室外機62につなぎこまれ、カスケード熱交換器35に接続される。より詳しくは、第1冷媒回路21において、第1室外熱交換器34と第1電動弁36との間の配管が第1室外機61から外に出て第2室外機62につなぎこまれる。そして第2室外機62の内側でカスケード熱交換器35に接続される。
【0040】
第3の実施形態においては、可燃性冷媒以外の他の冷媒が充填された第1冷媒回路21と、可燃性冷媒が充填された第2冷媒回路22とが別ケーシングに収められる。また、第1冷媒回路21と第2冷媒回路22との接続には可燃性冷媒以外の他の冷媒が充填された第1冷媒回路21の配管のみが使用される。
この構成により、第1冷媒回路21の接続替えポイントについてロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶることを防ぐことができる。
【0041】
<第4の実施形態>
第4の実施形態において、第1冷媒回路21の配管は、ロウ付けを要することなく部品交換が可能な構造を有する。ロウ付けを要することなく部品交換が可能な構造とは、例えば冷媒配管用の継手を使用することにより部品交換が可能な構造である。
第4の実施形態においては、第1冷媒回路21の配管がロウ付けを要することなく部品交換が可能な構造を有することにより、炎の使用自体を無くすことができる。この構成により、ロウ付け作業自体を無くし、ロウ付けの炎が第2冷媒回路22の配管をあぶらない構成を実現することができる。
【0042】
例えば、第4の実施形態に係る第1冷媒回路21の配管は、少なくとも前記接続替えを行う部分には、工具で締め付け可能な継手が使用される。工具とは例えばモンキー・スパナなどであり、第4の実施形態に係る第1冷媒回路21は、このような工具の使用により部品交換を行うことが可能である。継手を使用する場合、配管を継手により接続し、モンキー・スパナなどの工具により締め付けることにより接続替えや部品交換を実施することができる。
なお、第4の実施形態に係る第1冷媒回路21の配管に使用される継手は、上記したものに限定されない。例えば使用される継手は、ねじ込み式の継手やワンタッチ式の継手であっても良い。
【0043】
また、上記した第1から第4の各実施形態において、第2冷媒回路22に用いられる配管もしくは防露筒は、第1冷媒回路21に用いられる配管もしくは防露筒と色もしくは形状、材質のいずれかが異なる構成としても良い。
この構成により、可燃性冷媒回路に用いられる配管もしくは防露筒と他の冷媒側の回路に用いられる配管もしくは防露筒との取り違えを防止することができる。また、可燃性冷媒回路に用いられる配管もしくは防露筒を、他の冷媒側の回路に用いられる配管もしくは防露筒と誤って接続することを防止することができる。
【0044】
<効果>
本開示の空調機1は、可燃性冷媒と可燃性冷媒以外の他の冷媒とを利用した空調機であって、第1冷媒回路21に敷設されるサービス時に配管の接続替えを行う部分についてロウ付けの炎が第2冷媒回路22をあぶらないように構成されてなる。この場合、第1冷媒回路21の接続替えを行う際に、第2冷媒回路22の配管に与える影響を軽減することができる。
ここで、本開示の空調機1は、前記第2冷媒回路22の配管と前記第1冷媒回路21の前記接続替えを行う部分との距離が50mm以上離れている。この場合、第1冷媒回路21の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎が第2冷媒回路22の配管をあぶることを防ぐことができる。
また、本開示の空調機1は、前記第1冷媒回路21に備えられる第1圧縮機31の接続替えを行う部分と前記第2冷媒回路22との間に保護部材53が設置されている。この場合、第2冷媒回路22の配管を第1冷媒回路21の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
また、本開示の空調機1は、前記第1冷媒回路21に備えられる第1圧縮機31の接続替えを行う部分と前記第2冷媒回路22との間に、当該第1冷媒回路21に備えられる容器または板金が設置されている。この場合、第1冷媒回路21の構成要素を利用して、第2冷媒回路22の配管を第1冷媒回路21の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から保護することができる。
また、本開示の空調機1は、前記第2冷媒回路22と前記第1冷媒回路21とが別ケーシングに収められている。この場合、第1冷媒回路21の接続替えを行う際に、第2冷媒回路22の配管に与える影響を遮断することができる。
また、本開示の空調機1は、前記可燃性冷媒と前記他の冷媒の回路接続には前記第1冷媒回路21の配管のみが使用される。この場合、可燃性冷媒と他の冷媒の回路接続部分が、第1冷媒回路21の配管の接続替えを行う部分についてロウ付けを行う際に使用する炎から影響を受けることを防ぐことができる。
また、本開示の空調機1は、ロウ付けを要することなく前記第1冷媒回路21の部品交換が可能な構造を有する。この場合、ロウ付けの炎が第2冷媒回路22の配管をあぶらない構成を実現することができる。
また、本開示の空調機1は、少なくとも前記接続替えを行う部分には、工具で締め付け可能な継手が使用されている。この場合、ロウ付けを要することなく第1冷媒回路21の配管の接続替えを行うことができる。
また、本開示の空調機1は、交換部品として、少なくとも圧縮機、四路切替弁、電動弁を備える。この場合、圧縮機、四路切替弁、電動弁の交換に際し、第1冷媒回路21の接続替えを行う際に、第2冷媒回路22の配管に与える影響を軽減することができる。
ここで、本開示の空調機1は、前記第2冷媒回路22に用いられる配管もしくは防露筒は、前記第1冷媒回路21に用いられる配管もしくは防露筒と色もしくは形状、材質のいずれかが異なる。この場合、第2冷媒回路22に用いられる配管もしくは防露筒と第1冷媒回路21に用いられる配管もしくは防露筒との取り違えを防止することができる。
また、本開示の空調機1は、前記可燃性冷媒には炭化水素を使用する。
【0045】
以上、実施の形態について説明したが、本開示の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施の形態を2つ以上組み合わせたものや、上記の実施の形態に種々の変更または改良を加えたものも、本開示の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1…空調機、10…室内機、11…室内熱交換器、20…室外機、21…第1冷媒回路、22…第2冷媒回路、31…第1圧縮機、32…第1サブアキュムレータ、33…四路切換弁、34…第1室外熱交換器、35…カスケード熱交換器、36…第1電動弁、37…液閉鎖弁、38…ガス閉鎖弁、39…低圧レシーバ、41…第2圧縮機、42…第2サブアキュムレータ、43…第2室外熱交換器、44…第2電動弁、51…室外ファン、52…配管、53…保護部材、61…第1室外機、62…第2室外機、63…第1室外ファン、64…第2室外ファン
図1
図2
図3
図4
図5