(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146242
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241004BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059026
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕亮
【テーマコード(参考)】
5E348
5H770
【Fターム(参考)】
5E348AA32
5E348CC10
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770KA01W
5H770QA01
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA31
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】ボスの当接面と基板のアースパターンとの当接面積を増加させる。
【解決手段】インバータ30は、金属製のハウジング14と、ハウジング14に収容され、回路パターン34dが形成された基板34と、ハウジング14に収容され、基板34に実装されるYコンデンサ41と、を有する。ハウジング14には、基板34に向けて突出し、金属製の締結部材70によって基板34が固定される円柱状のボス61が形成される。ボス61は、締結部材70が螺合される締結孔61hと、回路パターン34dにおけるハウジング14に接地される第1アースパターン134dが当接する当接面62と、を有する。当接面62は、外周側から締結孔61hに向けて凹む凹形状面64を有する。基板34は、凹形状面64に第1アースパターン134dが当接するように突出する凸形状面75を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のハウジングと、
前記ハウジングに収容され、回路パターンが形成された基板と、
前記ハウジングに収容され、前記基板に実装される電子部品と、を有し、
前記ハウジングには、前記基板に向けて突出し、金属製の締結部材によって前記基板が固定される円柱状のボスが形成され、
前記ボスは、前記締結部材が螺合される締結孔と、前記回路パターンにおける前記ハウジングに接地されるアースパターンが当接する当接面と、を有する電子機器であって、
前記当接面は、外周側から前記締結孔に向けて凹む凹形状面を有し、
前記基板は、前記凹形状面に前記アースパターンが当接するように突出する凸形状面を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記凹形状面は、前記外周側から前記締結孔に向けて湾曲している、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記凹形状面は、前記外周側から前記締結孔に向けて傾斜している、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記当接面は、前記凹形状面を有する外周部と、前記外周部よりも内周側に設けられ、前記締結孔に向けて平面に形成された内周部と、を有し、
前記内周部は、前記基板を介して前記締結部材の頭部と重なる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記基板は、前記凸形状面よりも外周側に設けられたスリットを有し、
前記スリットは、前記回路パターンを避けて形成されており、
前記凸形状面は、前記スリットと前記締結部材が挿入される前記基板の貫通孔との間に延在している、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記外周部の縁は前記基板に向けて尖っている、請求項4に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器としては、例えば、基板と、基板に実装される電子部品と、基板および電子部品を収容する金属製のハウジングと、を備えるものが知られている。基板には回路パターンが形成されている。回路パターンの一部は、ハウジングに接地されることによりアースパターンとして機能する。これにより、基板のアースパターンとハウジングとの間でノイズの伝達を行わせることができる。
【0003】
特許文献1に記載の電子機器におけるハウジングには、基板に向けて突出する円柱状のボスが形成されている。ボスには、金属製の締結部材によって基板が固定される。このボスは、締結部材が螺合される締結孔と、基板が当接する当接面と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板のアースパターンをハウジングに接地するための締結部材を、特許文献1に記載の電子機器にて採用する場合、ボスの当接面と基板のアースパターンとの当接面積が小さい。そのため、基板のアースパターンとハウジングとの間でのノイズの伝達を好適に行えない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電子機器は、金属製のハウジングと、前記ハウジングに収容され、回路パターンが形成された基板と、前記ハウジングに収容され、前記基板に実装される電子部品と、を有し、前記ハウジングには、前記基板に向けて突出し、金属製の締結部材によって前記基板が固定される円柱状のボスが形成され、前記ボスは、前記締結部材が螺合される締結孔と、前記回路パターンにおける前記ハウジングに接地されるアースパターンが当接する当接面と、を有する電子機器であって、前記当接面は、外周側から前記締結孔に向けて凹む凹形状面を有し、前記基板は、前記凹形状面に前記アースパターンが当接するように突出する凸形状面を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、当接面の全体が平面状に延びている場合と比較して、ボスの径方向の幅を増加させることなく、ボスの当接面と基板のアースパターンとの当接面積を増加させることができる。
【0008】
電子機器において、前記凹形状面は、前記外周側から前記締結孔に向けて湾曲していてもよい。
電子機器において、前記凹形状面は、前記外周側から前記締結孔に向けて傾斜していてもよい。
【0009】
電子機器において、前記当接面は、前記凹形状面を有する外周部と、前記外周部よりも内周側に設けられ、前記締結孔に向けて平面に形成された内周部と、を有し、前記内周部は、前記基板を介して前記締結部材の頭部と重なってもよい。
【0010】
上記構成によれば、基板を、内周部と締結部材の頭部とで挟持することによって、外周部に沿って湾曲させることができる。したがって、基板のアースパターンを当接面に好適に当接させることができる。
【0011】
電子機器において、前記基板は、前記凸形状面よりも外周側に設けられたスリットを有し、前記スリットは、前記回路パターンを避けて形成されており、前記凸形状面は、前記スリットと前記締結部材が挿入される前記基板の貫通孔との間に延在していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、基板が当接面に沿って湾曲する際に、スリットの開口が広がることにより、基板を好適に変形させることができる。スリットは、回路パターンを避けて形成されている。凸形状面は、スリットと貫通孔との間に延在している。したがって、ノイズ等の成分の伝達に支障が生じることを抑制できる。
【0013】
電子機器において、前記外周部の縁は前記基板に向けて尖っていてもよい。
上記構成によれば、基板が当接面に沿って湾曲する際に、外周部の縁を起点として基板が変形することによって、基板を好適に変形させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ボスの当接面と基板のアースパターンとの当接面積を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電子機器としてのインバータが用いられる車両空調装置を示す断面図である。
【
図3】実施形態におけるインバータを示す断面図である。
【
図4】実施形態におけるボスへの締結部材の締結方法を説明するための断面図である。
【
図5】変更例におけるインバータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電子機器をインバータに具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。本実施形態のインバータは、例えば、車両空調装置に用いられる電動圧縮機のモータを駆動させるものである。
【0017】
<車両空調装置>
図1に示すように、車両空調装置10は、電動圧縮機11と、外部冷媒回路12と、を備えている。外部冷媒回路12は、電動圧縮機11に対して流体としての冷媒を供給する。外部冷媒回路12は、例えば、熱交換器及び膨張弁等を有している。車両空調装置10は、電動圧縮機11によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路12によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0018】
車両空調装置10は、空調ECU13を備えている。空調ECU13は、車両空調装置10の全体を制御する。空調ECU13は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されている。そして、空調ECU13は、車内温度やカーエアコンの設定温度等のパラメータに基づいて、電動圧縮機11に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0019】
<電動圧縮機の基本構成>
電動圧縮機11は、ハウジング14を備えている。ハウジング14は、例えば、アルミニウム等の伝熱性を有する金属材料で形成されている。したがって、ハウジング14は、金属製である。ハウジング14は、車両100のボディに接地されている。
【0020】
ハウジング14は、吸入ハウジング15と、吐出ハウジング16と、を有している。吸入ハウジング15及び吐出ハウジング16は、互いに組み付けられている。吸入ハウジング15は、板状の端壁15aと、筒状の周壁15bと、を有している。周壁15bは、端壁15aの外周縁から筒状に延びている。吐出ハウジング16は、吸入ハウジング15の開口を塞いだ状態で、吸入ハウジング15に組み付けられている。これにより、ハウジング14内には、内部空間が形成されている。
【0021】
ハウジング14には、吸入口14aおよび吐出口14bが形成されている。吸入口14aは、吸入ハウジング15の周壁15bに形成されている。吸入口14aは、吸入ハウジング15の周壁15bのうち、吐出ハウジング16よりも端壁15aに近い部位に形成されている。吸入口14aには、外部冷媒回路12から冷媒が吸入される。したがって、ハウジング14には、冷媒が吸入される。吐出口14bは、吐出ハウジング16に形成されている。吐出口14bは、冷媒を外部冷媒回路12へ吐出する。
【0022】
電動圧縮機11は、回転軸17と、圧縮部18と、モータ19と、を備えている。回転軸17、圧縮部18、及びモータ19は、ハウジング14内に収容されている。回転軸17は、ハウジング14に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸17は、回転軸17の軸方向が周壁15bの軸方向と一致した状態で、ハウジング14内に配置されている。
【0023】
圧縮部18は、吸入ハウジング15内に収容されている。圧縮部18は、例えば、吸入ハウジング15内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない旋回スクロールとから構成されるスクロール式である。圧縮部18は、吸入ハウジング15内において、吸入口14aよりも吐出口14bに近い位置に配置されている。圧縮部18は、回転軸17に連結されている。圧縮部18は、回転軸17の回転によって駆動して冷媒を圧縮する。
【0024】
モータ19は、吸入ハウジング15内に収容されている。モータ19は、吸入ハウジング15内における圧縮部18と端壁15aとの間に配置されている。モータ19は、ロータ20と、ステータ21と、を有している。ステータ21は、円筒形状のステータコア22と、u相コイル23uと、v相コイル23vと、w相コイル23wと、を有している。
【0025】
u相コイル23u、v相コイル23v、及びw相コイル23wの各々は、ステータコア22に巻きつけられている。u相コイル23u、v相コイル23v、及びw相コイル23wは、例えば、Y結線されている。なお、u相コイル23u、v相コイル23v、及びw相コイル23wの結線態様は、Y結線に限られず、任意であり、例えば、デルタ結線でもよい。
【0026】
ロータ20は、円筒形状である。ロータ20は、回転軸17に固定されている。これにより、回転軸17は、ロータ20と一体回転可能に構成されている。ステータ21は、吸入ハウジング15の周壁15bに固定されている。ロータ20及びステータ21は、回転軸17の径方向に対向している。
【0027】
ロータ20は、u相コイル23u、v相コイル23v、及びw相コイル23wが所定のパターンで通電されることにより回転する。ロータ20の回転に伴い、回転軸17が回転する。これにより、圧縮部18が駆動する。したがって、モータ19は、圧縮部18を駆動する。外部冷媒回路12を流れる冷媒が、吸入口14aからハウジング14内に吸入される。圧縮部18は、ハウジング14内に吸入された冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒は、吐出口14bから外部冷媒回路12へと吐出される。
【0028】
<インバータ>
電動圧縮機11は、インバータ30を備えている。インバータ30は、モータ19を駆動する。ハウジング14は、インバータカバー31と、カバー底壁33と、を有している。インバータ30は、インバータカバー31と、カバー底壁33と、を含む。すなわち、インバータ30は、金属製のハウジング14を有する。カバー底壁33及びインバータカバー31は、例えば、アルミニウム等の金属材料により形成されている。カバー底壁33は、端壁15aに沿って延びる板状である。インバータカバー31は、カバー底壁33及び端壁15aにボルト32を介して取り付けられている。カバー底壁33及びインバータカバー31は、インバータ収容室S1を形成している。
【0029】
電動圧縮機11は、コネクタ27を備えている。コネクタ27は、車両100に搭載された蓄電装置28に電気的に接続されている。コネクタ27は、インバータカバー31に設けられている。コネクタ27は、インバータカバー31から突出している。蓄電装置28は、車両100に搭載された機器に電力を供給する電源である。蓄電装置28は、直流電源である。蓄電装置28は、例えば、二次電池やキャパシタである。
【0030】
インバータ30は、基板34を有する。基板34は、インバータ収容室S1に収容されている。すなわち、基板34は、ハウジング14に収容されている。基板34は、カバー底壁33に対して回転軸17の軸方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。基板34は、基板34の厚み方向が回転軸17の軸方向に一致した状態でインバータ収容室S1に収容されている。
【0031】
インバータ30は、インバータ回路35と、ノイズ低減部36と、を備えている。インバータ回路35は、直流電力を交流電力に変換する。ノイズ低減部36は、インバータ回路35の入力側に設けられている。ノイズ低減部36は、例えば、インバータ回路35に入力される前の直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させる。インバータ回路35とノイズ低減部36とは、基板34に実装されている。ハウジング14は、インバータ回路35及びノイズ低減部36を収容する。
【0032】
図2に示すように、インバータ回路35は、2本の接続ラインEL1,EL2を備えている。インバータ回路35は、u相コイル23uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2を備えている。インバータ回路35は、v相コイル23vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2を備えている。インバータ回路35は、w相コイル23wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2を備えている。各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、例えば、IGBT等のパワースイッチング素子である。なお、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、それぞれ還流ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2が接続されている。
【0033】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は、直列接続されている。各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の間は、u相コイル23uに接続されている。各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0034】
各v相スイッチング素子Qv1,Qv2は、直列接続されている。各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の間は、v相コイル23vに接続されている。各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0035】
各w相スイッチング素子Qw1,Qw2は、直列接続されている。各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の間は、w相コイル23wに接続されている。各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0036】
インバータ30は、制御部37を備えている。制御部37は、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作を制御する。制御部37は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば、各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0037】
制御部37は、コネクタ27を介して空調ECU13と電気的に接続されている。制御部37は、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部37は、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部37は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部37は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0038】
ノイズ低減部36は、コモンモードチョークコイル38と、ノーマルモードチョークコイル42と、平滑コンデンサ39と、を備えている。平滑コンデンサ39は、コモンモードチョークコイル38及びノーマルモードチョークコイル42と共にローパスフィルタ40を構成する。ローパスフィルタ40は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ40は、回路的にはコネクタ27とインバータ回路35との間に設けられている。コモンモードチョークコイル38及びノーマルモードチョークコイル42の各々は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
【0039】
平滑コンデンサ39は、コモンモードチョークコイル38に対して、インバータ回路35側とコネクタ27側との各々に設けられている。平滑コンデンサ39は、インバータ回路35に対して並列接続されたXコンデンサである。平滑コンデンサ39は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0040】
ノイズ低減部36は、Yコンデンサ41を2つ備えている。2つのYコンデンサ41は、直列接続されている。2つのYコンデンサ41の間は、ハウジング14に接地されている。2つのYコンデンサ41は、コモンモードチョークコイル38に対してインバータ回路35側に設けられている。2つのYコンデンサ41は、コモンモードチョークコイル38及びノーマルモードチョークコイル42に対して直列接続されている。2つのYコンデンサ41は、平滑コンデンサ39に対して並列接続されている。2つのYコンデンサ41は、インバータ回路35と平滑コンデンサ39との間に位置している。
【0041】
本実施形態におけるYコンデンサ41は、電子部品に相当する。そのため、インバータ30は、電子部品としてのYコンデンサ41を有する。電子部品としてのYコンデンサ41は基板34に実装される。電子部品としてのYコンデンサ41は、ハウジング14に収容されている。
【0042】
コモンモードチョークコイル38及びノーマルモードチョークコイル42は、車両100側で発生する高周波ノイズが電動圧縮機11のインバータ回路35に伝わるのを抑制する。コモンモードチョークコイル38は、コモンモードノイズを低減する。ノーマルモードチョークコイル42は、ノーマルモードノイズを低減する。
【0043】
<基板の詳細>
図3に示すように、基板34は、裏面に相当する第1面34aと、第1面34aとは反対側の表面に相当する第2面34bと、を有する。基板34はガラエポ基板(ガラスエポキシ基板)である。第1面34aには、ハウジング14にアースするためのアースパターンとしての第1アースパターン134dが形成されている。第2面34bには、ハウジング14にアースするための第2アースパターン234dが形成されている。なお、基板34の内層にもハウジング14にアースするための内層アースパターン334dが形成されていてもよい。内層アースパターン334dは、例えば、基板34のうち、Yコンデンサ41の実装部分に設けられた第1アースパターン134dと、インバータ回路35の実装部分に設けられた第1アースパターン134dと、を繋いでいる。
【0044】
基板34には、回路パターン34dが形成されている。第1面34aには、第1アースパターン134dを含む回路パターン34dを形成する金属層34cが設けられている。第2面34bには、第2アースパターン234dを含む回路パターン34dを形成する金属層34cが設けられている。回路パターン34dには、インバータ回路35やノイズ低減部36を構成する電子部品やスイッチング素子等が実装される。第1アースパターン134dは、インバータ回路35やノイズ低減部36を構成する電子部品やスイッチング素子等のアースラインに接続されている。第2アースパターン234dは、インバータ回路35やノイズ低減部36を構成する電子部品やスイッチング素子等のアースラインに接続されている。
【0045】
図3に示すように、第1アースパターン134dの一部と第2アースパターン234dの一部とは、互いに基板34の厚み方向において重なっている。第1アースパターン134dは、ハウジング14のカバー底壁33側に配置されている。第2アースパターン234dは、インバータカバー31側に配置されている。第1アースパターン134dと第2アースパターン234dとは、複数のスルーホール43で電気的に接続されている。
【0046】
基板34は、板厚方向に貫通する貫通孔34hを有する。貫通孔34hは、第1面34aと第2面34bとの間で貫通する。貫通孔34hは、例えば、平面視において丸形の丸孔である。貫通孔34hは、第1アースパターン134d及び第2アースパターン234dの各々を貫通する。詳細には、貫通孔34hは、例えば、第1アースパターン134d及び第2アースパターン234dの各々の中央を貫通する。第1面34aにおける貫通孔34hの開口は、ハウジング14のカバー底壁33側に向かって開口している。第2面34bにおける貫通孔34hの開口は、インバータカバー31側に向かって開口している。
【0047】
基板34は、板厚方向に貫通するスリット34sを有する。スリット34sは第1面34a及び第2面34bに開口する。第1面34aにおけるスリット34sの開口は、ハウジング14のカバー底壁33側に向かって開口している。第2面34bにおけるスリット34sの開口は、インバータカバー31側に向かって開口している。
【0048】
スリット34sは、基板34のうち、貫通孔34hと電子部品としてのYコンデンサ41の実装部分との間の部分以外に形成されている。詳細には、平面視において、スリット34sは、例えば、貫通孔34hに沿って半円状に延びている。スリット34sは、回路パターン34dを避けて形成されている。スリット34sは、第1アースパターン134d、及び、Yコンデンサ41の実装部分と第1アースパターン134dを繋ぐ回路パターン34dを避けて第1面34aに開口している。スリット34sは、第2アースパターン234dを避けて第2面34bに開口している。すなわち、基板34における貫通孔34hの周囲のうち、スリット34sが形成されない部分と基板34へのYコンデンサ41の実装部分とは、第1面34aに沿って延びる仮想的な直線で結ばれる位置関係となっている。
【0049】
<ボス>
ハウジング14には、ボス61が形成されている。ボス61は、基板34に向けて突出する。詳細には、ボス61は、ハウジング14のカバー底壁33から第1面34aに向けて延びている。ボス61は、円柱状である。ハウジング14のカバー底壁33からのボス61の突出方向は、基板34の板厚方向と同じ方向である。ボス61は、平面視で基板34のスリット34sと重ならない位置に設けられている。ボス61は、スリット34sの近傍に設けられている。ボス61は、スルーホール43と対向している。
【0050】
ボス61は、第1面34aと当接する当接面62を有する。ボス61のハウジング14のカバー底壁33側の端部を基端とすると、当接面62はボス61の突出方向に対して基端とは反対側のボス61の先端に位置する。当接面62は、平面視で円形状である。
【0051】
ボス61は、締結孔61hを有する。締結孔61hは、当接面62に開口する。詳細には、締結孔61hは、平面視で当接面62の中央に開口している。締結孔61hは、当接面62からハウジング14側へと延びている。締結孔61hは、当接面62からハウジング14側のカバー底壁33へと延びている。締結孔61hは、ボス61の内部において、雌ねじが形成された円筒状の区画面によって区画形成されている。締結孔61hは、スルーホール43と対向していない。
【0052】
当接面62は、締結孔61hの開口よりも外周側に外周部62aを有する。外周部62aは、外周側から締結孔61hに向けて凹む凹形状面64を有する。言い換えると、当接面62は凹形状面64を有する。当接面62は、締結孔61hの開口と外周部62aとの間に内周部62bを有する。内周部62bは、外周部62aよりも当接面62の内周側に設けられている。内周部62bは、外周部62aよりもハウジング14のカバー底壁33側に向けて凹んでいる。外周部62aは、内周部62bに近づくほどハウジング14のカバー底壁33に近づくように湾曲している。これにより、凹形状面64は、外周側から締結孔61hに向けて湾曲している。平面視で、外周部62aは、円環状をなす。側面視で、外周部62aの縁63は、基板34の第1面34aに向けて尖っている。平面視で、外周部62aの縁63は、円環状をなす。
【0053】
内周部62bは、ボス61の突出方向に対して直交する方向に延びる平面状をなす。内周部62bは、平面視で、円環状である。側面視で、内周部62bは平面状である。内周部62bは、締結孔61hに向けて平面に形成されている。
【0054】
<締結部材>
インバータ30は、金属製の締結部材70を備える。締結部材70は、基板34をハウジング14に固定する。締結部材70は、第1アースパターン134dを当接面62に当接させ、ハウジング14に接地させる。言い換えると、当接面62には、回路パターン34dにおけるハウジング14に接地されるアースパターンである第1アースパターン134dが当接する。締結部材70は、第2アースパターン234dを当接面62に当接させず、ハウジング14に接地させる。第2アースパターン234dは、スルーホール43を介して、ハウジング14に接地される。締結部材70は、頭部71と、頭部71から延びるねじ部72と、を有する。頭部71は、例えば、円形の平板状である。ねじ部72は、例えば円柱状である。ねじ部72の外周面には、雄ねじが形成されている。ねじ部72は、第2面34bにおける貫通孔34hの開口側から貫通孔34hに挿入されている。これにより、貫通孔34hには、締結部材70が挿入される。頭部71は第2アースパターン234dに接する。頭部71からねじ部72の延びる方向は、基板34の板厚方向と同じ方向である。ねじ部72は、締結孔61hに螺合されている。すなわち、締結孔61hには締結部材70が螺合される。これにより、締結部材70はボス61に固定されている。締結部材70によって基板34がボス61に固定される。ボス61への締結部材70の固定によって、基板34はハウジング14に締結される。したがって、締結部材70は、基板34をハウジング14に固定する。そして、締結部材70は、第1アースパターン134dを当接面62に当接させ、ハウジング14に接地させる。また、締結部材70は、第2アースパターン234dを当接面62に当接させず、ハウジング14に接地させる。換言すると、第2アースパターン234dは、締結部材70を介してハウジング14に接地される。
【0055】
内周部62bは、平面視で、基板34を介して締結部材70の頭部71と重なる。内周部62bは、頭部71と平行に延びる。換言すると、頭部71が基板34と重なる面は平面状である。平面視で、頭部71は内周部62bの全体と重なっている。平面視で、頭部71は内周部62bの一部のみと重なってもよい。
【0056】
<当接面への基板の当接>
締結部材70によってハウジング14に固定された基板34は変形し、当接面62に沿って延びている。詳細には、基板34は、外周部62aに沿って湾曲した状態で、外周部62aに接している。すなわち、基板34は、凹形状面64に第1アースパターン134dが当接するように突出する凸形状面75を有する。凸形状面75は、スリット34sと貫通孔34hとの間で変形し、当接面62に沿って延びている。また、基板34は、内周部62bに沿って平板状に延びた状態で、内周部62bに接している。こうして、基板34は、ボス61の当接面62に接した状態でハウジング14に固定される。なお、基板34のうち、ボス61の当接面62に接する部分は、基板34の第1面34aの第1アースパターン134dである。また、基板34のうち、頭部71に接する部分は、基板34の第2面34bの第2アースパターン234dである。当接面62の全体が第1アースパターン134dと接するように、第1アースパターン134dの大きさが設定されている。第2アースパターン234dの全体が頭部71と接するように、第2アースパターン234dの大きさが設定されている。
【0057】
スリット34sは、基板34の貫通孔34hよりも外周側に設けられている。スリット34sは、基板34のうち、当接面62と当接する部位よりも外周側に設けられている。すなわち、スリット34sは、凸形状面75よりも外周側に設けられている。凸形状面75は、スリット34sと貫通孔34hとの間に延在している。スリット34sは、基板34のYコンデンサ41の実装部分よりも内周側に設けられている。スリット34sは、平面視で、貫通孔34hを間に挟んでYコンデンサ41の実装部分とは反対側に設けられている。
【0058】
このように、締結部材70がボス61に締結されることによって、基板34が変形して当接面62に接し、基板34がハウジング14に固定される。したがって、第1アースパターン134dが変形してハウジング14に接地される。また、第2アースパターン234dが変形して、締結部材70を介してハウジング14に接地される。第1アースパターン134dのノイズは、ハウジング14に伝達された後、ハウジング14から車両100のボディに伝達される。第2アースパターン234dのノイズは、締結部材70を介してハウジング14に伝達された後、ハウジング14から車両100のボディに伝達される。
【0059】
[実施形態の作用]
実施形態の作用について、ボス61への締結部材70の締結方法と共に以下に説明する。
【0060】
図4に示すように、貫通孔34hに挿入されたねじ部72がボス61の締結孔61hに螺合される。このとき、ねじ部72が締結孔61hに螺合される途中では、基板34は当接面62に沿って変形していない。そのため、基板34は、ボス61上で平板状に延びた状態となっている。基板34の第1面34aは、例えば、ボス61の外周部62aの縁63に接した状態となっている。
【0061】
図3に示すように、締結孔61hへのねじ部72の螺合が進むと、頭部71によって基板34が当接面62に向けて押されることにより、基板34は当接面62に沿うように変形する。基板34は、外周部62aに沿って湾曲するとともに、外周部62aに接するようになる。基板34のうち、貫通孔34hの周囲の部分は、頭部71とボス61の内周部62bとで挟持された状態となる。これにより、基板34のうちで貫通孔34hの周囲の部分は、内周部62bに沿って平板状に延びた状態となるとともに、内周部62bに接するようになる。こうして、基板34は、ボス61の当接面62に接した状態となる。
【0062】
[実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)当接面62は、外周側から締結孔61hに向けて凹む凹形状面64を有する。当接面62は、内周部62bが外周部62aよりもハウジング14のカバー底壁33側に向けて凹んでいる。外周部62aは、内周部62bに近づくほどハウジング14のカバー底壁33に近づくように湾曲している。内周部62bは、ボス61の突出方向に対して直交する方向に延びる平面状をなす。一方、締結部材70によってハウジング14に固定された基板34は、当接面62に沿って延びている。基板34は、凹形状面64に第1アースパターン134dが当接するように突出する凸形状面75を有する。基板34の第1アースパターン134dは、外周部62aに沿って湾曲した状態で、外周部62aに接している。基板34の第1アースパターン134dは、内周部62bに沿って平板状に延びた状態で、内周部62bに接している。そのため、当接面62の全体が平面状に延びている場合と比較して、ボス61の径方向の幅を増加させることなく、ボス61の当接面62と基板34の第1アースパターン134dとの当接面積を増加させることができる。
【0063】
(2)内周部62bは、平面視で、基板34を介して頭部71と重なる。また、外周部62aは、平面視で、基板34を介して頭部71と重ならない。そのため、基板34を、内周部62bと頭部71とで挟持することによって、外周部62aに沿って湾曲させることができる。したがって、基板34の第1アースパターン134dを当接面62に好適に当接させることができる。
【0064】
(3)基板34は、板厚方向に貫通するスリット34sを有する。スリット34sは、外周部62aの近傍に設けられる。このため、基板34が当接面62に沿って湾曲する際に、スリット34sの開口が広がることにより、基板34を好適に変形させることができる。スリット34sは、第1アースパターン134d、及び、Yコンデンサ41の実装部分と第1アースパターン134dを繋ぐ回路パターン34dを避けて第1面34aに開口している。スリット34sは、第2アースパターン234dを避けて第2面34bに開口している。したがって、ノイズ等の成分の伝達に支障が生じることを抑制できる。
【0065】
(4)外周部62aの縁63は、基板34の第1面34aに向けて尖っているため、基板34が当接面62に沿って湾曲する際に、外周部62aの縁63を起点として基板34が変形することによって、基板34を好適に変形させることができる。
【0066】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0067】
○
図5に示すように、外周部62aは、側面視で湾曲する形状ではなく傾斜するテーパ形状であってもよい。要するに、凹形状面64は、外周側から締結孔61hに向けて傾斜していてもよい。この場合、平面視では、外周部62aは、円環状をなす。
【0068】
○ 外周部62aの縁63の全周ではなく、一部だけが第1面34aに向けて尖っていてもよい。この場合、外周部62aの縁63のうち、尖っていない部分は、例えばボス61の突出方向に対して直交する方向に延びる平面状であってもよい。
【0069】
○ 外周部62aの縁63の全周が尖っておらず、外周部62aの縁63の全周が面取りされていてもよい。
○ スリット34sは、基板34を貫通するものでなくてもよい。要するに、スリット34sは、基板34の第1面34a及び第2面34bのどちらか一方に開口すればよい。
【0070】
○ 基板34へのスリット34sの形成を省略してもよい。
○ 基板34は、ガラエポ基板ではなく、金属ベース基板であってもよい。
○ 内周部62bが外周部62aから連続して湾曲していてもよい。また、内周部62bが外周部62aから連続して傾斜していてもよい。この場合の当接面62は、例えば、締結孔61hの開口縁に近づくほどハウジング14のカバー底壁33に近づくように凹む形状をなす。
【0071】
○ ハウジング14は、基板34を収容する部分と、圧縮部18とモータ19とを収容する部分とが一体となるように構成されているが、それぞれ別体となるようにハウジングを別途追加してもよい。
【0072】
○ ボス61の当接面62に基板34を当接させることによって、ノイズではなく、静電気を伝達させてもよい。
○ 基板34の貫通孔34hを区画する周面には、第1面34aと第2面34bとを電気的に接続する金属膜が施されていてもよい。
【0073】
○ 基板34の第1アースパターン134dは、外周部62aに当接し、内周部62bには当接していなくてもよい。この場合、外周部62aの面積が内周部62bの面積よりも大きい。また、基板34の第1アースパターン134dと外周部62aとの当接面積は、当接面62の全体が平面状に延びている場合における基板34の第1アースパターン134dと当接面62との当接面積よりも大きい。
【0074】
○ 圧縮部18は、スクロール式に限らない。例えば、圧縮部18は、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 電子機器は、車両空調装置10に用いられていたが、これに限らない。例えば、電子機器は、燃料電池車に搭載されていてもよい。電子機器を備える電動圧縮機11は、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部18により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
14…ハウジング、30…電子機器としてのインバータ、34…基板、34d…回路パターン、34h…貫通孔、34s…スリット、41…電子部品としてのYコンデンサ、61…ボス、61h…締結孔、62…当接面、62a…外周部、62b…内周部、63…縁、64…凹形状面、70…締結部材、71…頭部、75…凸形状面、134d…アースパターンとしての第1アースパターン。