(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146244
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】遠心圧縮機及び遠心圧縮機の調整方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F04D29/28 M
F04D29/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059028
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤也
(72)【発明者】
【氏名】森 英文
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 智也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB47
3H130BA74C
3H130CB07
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB02Z
3H130DB04Z
3H130DD01Z
3H130DD09Z
3H130DJ01X
3H130EA01C
3H130EA01D
3H130EA01Z
3H130EB01C
3H130EB01Z
3H130ED03C
3H130ED03D
3H130ED03Z
(57)【要約】
【課題】回転体のバランス調整に伴って生じた切粉がインペラやハウジングの内部におけるインペラの周囲に残留することを抑制する。
【解決手段】遠心圧縮機10は、回転軸41、回転軸41に固定されるとともに燃料電池スタック61に供給される空気を圧縮するために回転軸41と一体的に回転するインペラ42、及び、インペラ42を回転軸41に対して固定するインペラナット172、を有する回転体40と、回転体40を収容するハウジング11と、を有する。インペラ42とインペラナット172との間には、回転軸41が挿通され、回転体40のバランスを調整する筒状の調整部材71が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、
前記回転体を収容するハウジングと、を有し、
前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成されている、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記切欠き、または、前記貫通孔は、前記回転軸の軸線を対称の中心として点対称とならないように前記調整部材に形成されている、請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記回転軸は、前記調整部材が挿通される部分に第1嵌合部を有し、
前記調整部材は、前記回転軸に前記調整部材が挿通された状態で前記第1嵌合部と嵌合することにより、前記回転軸の周方向における前記回転軸に対する前記調整部材のずれを抑制する第2嵌合部を有する、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記調整部材及び前記インペラナットは、前記インペラから露出している、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、
前記回転体を収容するハウジングと、を有する遠心圧縮機において、前記回転体のバランスを調整する遠心圧縮機の調整方法であって、
前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられ、
前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成され、
前記回転体のバランスを計測する計測工程と、
前記計測工程の後に、前記インペラナット及び前記調整部材を前記回転軸から取り外す取り外し工程と、
前記回転軸から取り外された前記調整部材に行われる工程であって、前記計測工程によって計測された前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて、前記調整部材に前記切欠き、または、前記貫通孔を形成する加工を行う加工工程と、
前記加工工程の後に、前記調整部材から切粉を除去する除去工程と、
前記除去工程の後に、前記加工工程によって前記切欠き、または、前記貫通孔が形成された前記調整部材と前記インペラナットとを前記回転軸に取り付ける取り付け工程と、を備えることを特徴とする遠心圧縮機の調整方法。
【請求項7】
回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、
前記回転体を収容するハウジングと、を有する遠心圧縮機において、前記回転体のバランスを調整する遠心圧縮機の調整方法であって、
前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられ、
前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成され、
前記回転体のバランスを計測する計測工程と、
前記計測工程の後に、前記インペラナット及び前記調整部材を前記回転軸から取り外す取り外し工程と、
前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整するために、前記調整部材に予め形成された前記切欠き、または、前記貫通孔の形成態様が互いに異なる複数の前記調整部材から、前記計測工程によって計測された前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて前記調整部材を選択する選択工程と、
前記選択工程によって選択された前記調整部材と前記インペラナットとを前記回転軸に取り付ける取り付け工程と、を備えることを特徴とする遠心圧縮機の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機及び遠心圧縮機の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、例えば、回転軸及びインペラを有する回転体と、回転体を収容するハウジングと、を有する。インペラは、回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために回転軸と一体的に回転する。
【0003】
上記の遠心圧縮機において、回転体のバランス調整が行われることがある。この調整作業においては、特許文献1に記載の態様のように、計測された回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて回転体の一部を切削することによって、回転体の回転方向に対するアンバランスな位相が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転体のバランス調整において、例えば、遠心圧縮機に取り付けられた状態の回転体を切削すると、回転体の切削に伴って生じた切粉がインペラやハウジングの内部におけるインペラの周囲に残留するおそれがある。こうして残留した切粉を除去すべく、インペラやハウジングの内部におけるインペラの周囲に送風機による風圧を作用させても、インペラやハウジングの内部におけるインペラの周囲に切粉が残るおそれがある。こうして切粉が残留すると、インペラによって圧縮された空気と共に切粉が燃料電池スタックに供給されるおそれがあるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、前記回転体を収容するハウジングと、を有し、前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する遠心圧縮機の調整方法は、回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、前記回転体を収容するハウジングと、を有する遠心圧縮機において、前記回転体のバランスを調整する遠心圧縮機の調整方法であって、前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられ、前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成され、前記回転体のバランスを計測する計測工程と、前記計測工程の後に、前記インペラナット及び前記調整部材を前記回転軸から取り外す取り外し工程と、前記回転軸から取り外された前記調整部材に行われる工程であって、前記計測工程によって計測された前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて、前記調整部材に前記切欠き、または、前記貫通孔を形成する加工を行う加工工程と、前記加工工程の後に、前記調整部材から切粉を除去する除去工程と、前記除去工程の後に、前記加工工程によって前記切欠き、または、前記貫通孔が形成された前記調整部材と前記インペラナットとを前記回転軸に取り付ける取り付け工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する遠心圧縮機の調整方法は、回転軸、前記回転軸に固定されるとともに燃料電池スタックに供給される空気を圧縮するために前記回転軸と一体的に回転するインペラ、及び、前記インペラを前記回転軸に対して固定するインペラナット、を有する回転体と、前記回転体を収容するハウジングと、を有する遠心圧縮機において、前記回転体のバランスを調整する遠心圧縮機の調整方法であって、前記インペラと前記インペラナットとの間には、前記回転軸が挿通され、前記回転体のバランスを調整する筒状の調整部材が設けられ、前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成され、前記回転体のバランスを計測する計測工程と、前記計測工程の後に、前記インペラナット及び前記調整部材を前記回転軸から取り外す取り外し工程と、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整するために、前記調整部材に予め形成された前記切欠き、または、前記貫通孔の形成態様が互いに異なる複数の前記調整部材から、前記計測工程によって計測された前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて前記調整部材を選択する選択工程と、前記選択工程によって選択された前記調整部材と前記インペラナットとを前記回転軸に取り付ける取り付け工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成及び上記の各方法によれば、調整部材をインペラナットと共に回転軸に取り付けることにより、回転体のバランスを調整できる。回転体のバランスを調整するために、遠心圧縮機に取り付けられた状態の回転体に切削を行わなくてもよい。したがって、回転体のバランス調整に伴って生じた切粉がインペラやハウジング内部におけるインペラの周囲に残留することを抑制できる。
【0010】
上記の方法によれば、加工工程は、回転軸から取り外された調整部材に行われる工程である。加工工程において、調整部材に切欠き、または、貫通孔を形成する加工を行う。したがって、遠心圧縮機から取り外された状態の調整部材に切欠きまたは貫通孔の形成を行うことができるため、遠心圧縮機に取り付けられた状態の調整部材に切欠きまたは貫通孔を形成することによるハウジング内への切粉の残留を抑制できる。除去工程において、加工工程の後に、調整部材から切粉を除去する。取り付け工程において、除去工程の後に、切欠き、または、貫通孔が形成された調整部材を回転軸に取り付ける。そのため、加工工程によって生じた切粉が調整部材に付着したとしても、その切粉を除去した調整部材を回転軸に取り付けることができる。したがって、切粉が付着した調整部材をハウジング内に配置させることによるハウジング内への切粉の残留を抑制できる。
【0011】
上記の方法によれば、選択工程においては、切欠きまたは貫通孔の形成態様が互いに異なる複数の調整部材から、計測工程によって計測された回転体の回転方向に対するアンバランスな位相に応じて調整部材を選択する。したがって、回転体のバランスを調整する際に、切欠きまたは貫通孔の形成を行わなくてもよいため、遠心圧縮機に取り付けられた状態の調整部材に切欠きまたは貫通孔を形成することによるハウジングへの切粉の残留を抑制できる。取り付け工程において、選択工程によって選択された調整部材と固定部材とを回転軸に取り付ける。回転体のバランスを調整する際に切欠きまたは貫通孔の形成が行われないため、切粉が付着した調整部材をハウジング内に配置させることによるハウジング内への切粉の残留を抑制できる。
【0012】
遠心圧縮機において、前記調整部材には、前記回転体の回転方向に対するアンバランスな位相を調整する切欠き、または、貫通孔が形成されていてもよい。
遠心圧縮機において、前記切欠き、または、前記貫通孔は、前記回転軸の軸線を対称の中心として点対称とならないように前記調整部材に形成されていてもよい。
【0013】
遠心圧縮機において、前記回転軸は、前記調整部材が挿通される部分に第1嵌合部を有し、前記調整部材は、前記回転軸に前記調整部材が挿通された状態で前記第1嵌合部と嵌合することにより、前記回転軸の周方向における前記回転軸に対する前記調整部材のずれを抑制する第2嵌合部を有してもよい。
【0014】
上記構成によれば、回転軸に調整部材が取り付けられる際に、第1嵌合部と第2嵌合部とが嵌合する。これにより、回転軸の周方向における回転軸に対する調整部材のずれを抑制できる。したがって、調整部材を回転軸に取り付ける際に、回転軸の周方向における切欠きの位置合わせを行いやすいため、回転体のバランス調整をより正確に行える。
【0015】
遠心圧縮機において、前記調整部材及び前記インペラナットは、前記インペラから露出していてもよい。
上記構成によれば、調整部材及びインペラナットがインペラの内部に位置する場合と比較して、回転軸41に対する調整部材及びインペラナットの取り付けを容易に行える。したがって、回転体のバランスの調整作業を簡略化できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、回転体のバランス調整に伴って生じた切粉がインペラやハウジングの内部におけるインペラの周囲に残留することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、遠心圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、遠心圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態における遠心圧縮機の調整方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変更例における遠心圧縮機の調整方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、遠心圧縮機を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池車に搭載されている。遠心圧縮機は、燃料電池スタックに供給される流体としての空気を圧縮する。
【0019】
<遠心圧縮機の基本構成>
図1に示すように、遠心圧縮機10は、ハウジング11を有している。ハウジング11は、金属材料製である。ハウジング11は、例えば、アルミニウム製である。ハウジング11は、モータハウジング12、コンプレッサハウジング13、タービンハウジング14、第1プレート15、第2プレート16、及び第3プレート17を有している。
【0020】
モータハウジング12は、端壁12aと、周壁12bと、を有している。端壁12aは、板状である。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。そして、モータハウジング12及び第1プレート15によってモータ室18が区画されている。したがって、ハウジング11は、モータ室18を有している。
【0021】
第2プレート16は、モータハウジング12の端壁12aの外面に連結されている。第2プレート16は、第2プレート16の厚み方向がモータハウジング12の端壁12aの厚み方向に一致した状態で、モータハウジング12の端壁12aに取り付けられている。
【0022】
遠心圧縮機10は、モータ20を備えている。モータ20は、モータ室18に収容されている。モータハウジング12は、モータ20を取り囲んでいる。
遠心圧縮機10は、第1軸受保持部21を備えている。第1軸受保持部21は、第1プレート15の中央部からモータ室18内に突出している。したがって、第1プレート15は、第1軸受保持部21を有している。第1軸受保持部21は、円筒状である。第1軸受保持部21の内側は、モータ室18内に連通している。
【0023】
第1プレート15は、プレート凹部22を有している。プレート凹部22は、第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面に形成されている。プレート凹部22は、円孔状である。プレート凹部22の底面にはプレート凹部22の内部に開口する開口部が形成されている。この開口を介して、プレート凹部22の内部と第1軸受保持部21の内側とが連通している。プレート凹部22の軸線と第1軸受保持部21の軸線とは一致している。
【0024】
第3プレート17は、第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面に連結されている。第3プレート17は、第3プレート17の厚み方向が第1プレート15の厚み方向に一致した状態で、第1プレート15に取り付けられている。第3プレート17は、第1挿通孔23を有している。第1挿通孔23は、第3プレート17の中央部に形成されている。第1挿通孔23の軸線は、プレート凹部22の軸線、及び第1軸受保持部21の軸線と一致している。そして、プレート凹部22と第3プレート17とによって、収容室24が区画されている。したがって、ハウジング11は、収容室24を区画する。収容室24は、第1軸受保持部21の内側に連通している。また、収容室24は、第1挿通孔23に連通している。したがって、第1軸受保持部21は、収容室24を介して第1挿通孔23に連通している。
【0025】
遠心圧縮機10は、第2軸受保持部25を備えている。第2軸受保持部25は、モータハウジング12の端壁12aの中央部からモータ室18内に突出している。したがって、モータハウジング12は、第2軸受保持部25を有している。第2軸受保持部25は、円筒状である。第2軸受保持部25の内側は、モータ室18内に連通している。
【0026】
ハウジング11は、第2挿通孔26を有している。第2挿通孔26は、モータハウジング12の端壁12aの中央部、及び第2プレート16の中央部を貫通している。第2挿通孔26の軸線は、第2軸受保持部25の軸線と一致している。第2挿通孔26は、第2軸受保持部25の内側に連通している。
【0027】
コンプレッサハウジング13は、空気が吸入される円孔状の吸入口27を有する筒状である。吸入口27の軸線が第1挿通孔23の軸線と一致した状態で、コンプレッサハウジング13は、第3プレート17における第1プレート15とは反対側の端面に連結されている。吸入口27は、コンプレッサハウジング13における第3プレート17とは反対側の端面に開口している。吸入口27には、図示しないエアクリーナによって清浄化された空気が流れる。
【0028】
ハウジング11は、インペラ室28と、吐出室29と、を有する。インペラ室28及び吐出室29は、コンプレッサハウジング13と第3プレート17との間に形成されている。したがって、ハウジング11は、インペラ室28及び吐出室29を区画する。第3プレート17は、インペラ室28と収容室24とを仕切る仕切壁である。インペラ室28は、吸入口27及び第1挿通孔23に連通している。吐出室29は、インペラ室28の周囲で吸入口27の軸線周りに延びている。
【0029】
遠心圧縮機10は、ディフューザ流路30を備えている。ディフューザ流路30は、コンプレッサハウジング13と第3プレート17との間に形成されている。ディフューザ流路30は、インペラ室28と吐出室29とを連通している。
【0030】
遠心圧縮機10は、吐出通路31を有している。吐出通路31の第1端は、吐出室29に連通している。吐出通路31の第2端は、コンプレッサハウジング13の外面に開口している。
【0031】
タービンハウジング14は、空気が吐出される円孔状の吐出口32を有する筒状である。タービンハウジング14は、吐出口32の軸線が、第2挿通孔26の軸線と一致した状態で第2プレート16におけるモータハウジング12とは反対側の端面に連結されている。吐出口32は、タービンハウジング14における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。
【0032】
遠心圧縮機10は、タービン室33、タービンスクロール流路34、及び連通通路35を備えている。タービン室33、タービンスクロール流路34、及び連通通路35は、タービンハウジング14と第2プレート16との間に形成されている。モータハウジング12の端壁12a及び第2プレート16は、タービン室33とモータ室18とを仕切っている。タービン室33は、吐出口32及び第2挿通孔26に連通している。タービンスクロール流路34は、タービン室33の周囲で吐出口32の軸線周りに延びている。連通通路35は、タービン室33とタービンスクロール流路34とを連通している。
【0033】
遠心圧縮機10は、吸入通路36を有している。吸入通路36の第1端は、タービンハウジング14の外面に開口している。吸入通路36の第2端は、タービンスクロール流路34に連通している。
【0034】
遠心圧縮機10は、回転体40を有している。回転体40は、回転軸41、インペラ42、及び、インペラナット172、を有する。本実施形態における回転体40は、タービンホイール43及び支持プレート44を含む。ハウジング11は、回転体40を収容する。
【0035】
回転軸41は、モータハウジング12の軸線に沿って延びた状態で、モータ室18を横切っている。回転軸41の軸方向を軸方向Xという。軸方向Xは、モータハウジング12の軸方向に一致している。回転軸41の端部としての第1端部41aは、モータ室18から第1軸受保持部21の内側、収容室24、及び第1挿通孔23を通過して、インペラ室28内に突出している。したがって、インペラ室28は、回転軸41を収容する。軸方向Xにおける第1端部41aとは反対側の回転軸41の端部である第2端部41bは、モータ室18から第2軸受保持部25の内側及び第2挿通孔26を通過して、タービン室33内に突出している。
【0036】
インペラ42は、回転軸41に固定される。詳細には、インペラ42は、回転軸41の外面に固定されている。回転軸41の第1端部41aは、インペラ42の内部からインペラ42の外部に突出している。インペラ42は、インペラ室28に収容されている。したがって、インペラ室28は、インペラ42を収容する。インペラ42は、インペラ室28に吸入された空気を圧縮するために回転軸41と一体的に回転する。
【0037】
図2に示すように、インペラ42は、背面42aから先端に向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ42の背面42aは、第3プレート17と対向している。インペラ42の回転軸線は、回転軸41の軸線でもある。回転軸41の軸線は、回転体40の回転軸線である。
【0038】
図1に示すように、タービンホイール43は、回転軸41に固定される。詳細には、タービンホイール43は、回転軸41の外面に固定されている。タービンホイール43は、タービン室33に収容されている。タービンホイール43は、回転軸41と一体的に回転する。
【0039】
図3に示すように、タービンホイール43は、背面43aから先端に向かうに従って徐々に縮径した筒状である。タービンホイール43の背面43aは、第2プレート16と対向している。タービンホイール43の回転軸線は、回転軸41の軸線でもある。回転軸41の軸線は、回転体40の回転軸線である。
【0040】
図1に示すように、支持プレート44は、円環状である。支持プレート44は、回転軸41の外面から収容室24内に突出している。したがって、収容室24は、支持プレート44を収容している。支持プレート44は、回転軸41の外面から回転軸41の径方向外側へ環状に突出した状態で、回転軸41に固定されている。支持プレート44は、回転軸41と一体的に回転する。
【0041】
モータ20は、筒状のモータロータ47と、筒状のモータステータ48と、を有している。モータ室18は、モータ20を収容する。モータロータ47は、回転軸41に固定されている。モータステータ48は、ハウジング11に固定されている。モータロータ47は、モータステータ48の径方向内側に配置されている。モータロータ47は、回転軸41と一体的に回転する。モータロータ47は、回転軸41に固定された円筒状のロータコア49と、ロータコア49に設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。モータステータ48は、モータロータ47を取り囲んでいる。モータステータ48は、円筒状のステータコア50と、モータコイル51と、を有している。ステータコア50は、モータハウジング12の内面に固定されている。モータコイル51は、ステータコア50に巻回されている。
【0042】
回転軸41は、図示しないバッテリからモータコイル51に電流が流れることによって、モータロータ47と一体的に回転する。したがって、モータ20は、回転軸41を回転させる。モータ20は、軸方向Xにおけるインペラ42とタービンホイール43との間に配置されている。
【0043】
遠心圧縮機10は、第1ラジアル軸受52を備えている。第1ラジアル軸受52は円筒状である。第1ラジアル軸受52は、第1軸受保持部21に保持されている。第1ラジアル軸受52は、回転軸41のうち、モータ20よりも回転軸41の第1端部41a寄りに位置する部位を回転可能に支持する。
【0044】
遠心圧縮機10は、第2ラジアル軸受53を備えている。第2ラジアル軸受53は円筒状である。第2ラジアル軸受53は、第2軸受保持部25に保持されている。第2ラジアル軸受53は、回転軸41のうち、モータ20よりも回転軸41の第2端部41b寄りに位置する部位を回転可能に支持する。
【0045】
第1ラジアル軸受52及び第2ラジアル軸受53は、軸方向Xにおけるモータ20の両側の位置にて回転軸41をラジアル方向で回転可能に支持する。なお、「ラジアル方向」は軸方向Xに対して直交する方向である。
【0046】
遠心圧縮機10は、スラスト軸受54を備えている。スラスト軸受54は、収容室24に収容されている。したがって、収容室24は、スラスト軸受54を収容する。スラスト軸受54は、支持プレート44をスラスト方向で回転可能に支持する。したがって、スラスト軸受54は、支持プレート44を介して回転軸41をスラスト方向で支持する。なお、「スラスト方向」は軸方向Xである。
【0047】
スラスト軸受54は、第1スラスト軸受部54aと、第2スラスト軸受部54bと、を有している。第1スラスト軸受部54aは、支持プレート44と第3プレート17との間に配置されている。第2スラスト軸受部54bは、支持プレート44と第1プレート15との間に配置されている。
【0048】
遠心圧縮機10は、導入通路58を備えている。導入通路58は、第1プレート15に形成されている。導入通路58の第1端は、第1プレート15の外面に開口している。導入通路58の第2端は、収容室24に連通している。
【0049】
遠心圧縮機10は、排出通路59を備えている。排出通路59は、モータハウジング12の端壁12aに形成されている。排出通路59の第1端は、第2挿通孔26に連通している。排出通路59の第2端は、モータハウジング12の端壁12aの外面に開口している。したがって、排出通路59は、ハウジング11の外部に連通している。
【0050】
<燃料電池システム>
上記構成の遠心圧縮機10は、燃料電池車に搭載された燃料電池システム60の一部を構成している。燃料電池システム60は、遠心圧縮機10の他に、燃料電池スタック61と、供給流路62と、排出流路63と、分岐流路64と、インタークーラ65と、を備えている。燃料電池スタック61は、図示しない複数の電池セルから構成されている。
【0051】
供給流路62は、吐出通路31と燃料電池スタック61とを接続する。供給流路62と吐出室29とは、吐出通路31を介して互いに連通している。したがって、吐出室29には、供給流路62が接続されている。
【0052】
排出流路63は、燃料電池スタック61と吸入通路36とを接続する。分岐流路64は、供給流路62の途中から分岐されている。分岐流路64の第1端は、供給流路62に接続されている。分岐流路64の第2端は、導入通路58の第1端に接続されている。インタークーラ65は、分岐流路64の途中に設けられている。インタークーラ65は、分岐流路64を流れる空気を冷却する。
【0053】
インペラ42が回転すると、吸入口27からインペラ室28に空気が吸入される。インペラ室28に吸入された空気は、インペラ42の回転によって加速されながら、ディフューザ流路30に送り込まれて、ディフューザ流路30を通過することにより昇圧される。そして、ディフューザ流路30を通過した空気は、吐出室29に吐出される。したがって、吐出室29には、インペラ42によって圧縮された空気がインペラ室28から吐出される。
【0054】
吐出室29に吐出された空気は、吐出通路31に吐出される。吐出通路31に吐出された空気は、供給流路62を介して燃料電池スタック61に供給される。したがって、供給流路62は、燃料電池スタック61に空気を供給するものである。インペラ42は、燃料電池スタック61に供給される空気を圧縮するために回転軸41と一体的に回転する。燃料電池スタック61に供給された空気に含まれる酸素は、燃料電池スタック61の発電に寄与する。その後、燃料電池スタック61を通過する空気は、燃料電池スタック61の排気として排出流路63へ排出される。
【0055】
燃料電池スタック61の排気は、排出流路63及び吸入通路36を介してタービンスクロール流路34に吸入される。タービンスクロール流路34に吸入される燃料電池スタック61の排気は、連通通路35を通じてタービン室33に導入される。タービンホイール43は、タービン室33に導入された燃料電池スタック61の排気により回転する。回転軸41は、モータ20の駆動による回転に加え、燃料電池スタック61の排気により回転するタービンホイール43の回転によっても回転する。そして、燃料電池スタック61の排気によるタービンホイール43の回転により回転軸41の回転が補助される。タービン室33を通過した排気は、吐出口32から外部へ吐出される。
【0056】
供給流路62を流れる空気の一部は、分岐流路64に流れ込む。分岐流路64を流れる空気は、インタークーラ65によって冷却される。これにより、インタークーラ65を通過した空気は、吐出室29に吐出された空気の温度よりも低い温度となる。そして、インタークーラ65によって冷却された空気は、導入通路58、収容室24、及び第1軸受保持部21の内側を通過してモータ室18内へ導入される。したがって、導入通路58は、インペラ42によって圧縮された空気の一部を、吐出室29に吐出された空気の温度よりも低い温度の状態でモータ室18内へ導入する。そして、モータ室18内の空気は、第2軸受保持部25の内側、第2挿通孔26、及び排出通路59を介してハウジング11の外部へ排出される。
【0057】
<回転軸の詳細>
図2及び
図3に示すように、回転軸41は、大径部41cと小径部41dとを含む。大径部41cと小径部41dとは軸方向Xにおいて互いに隣り合っている。小径部41dは、大径部41cよりも径方向における寸法が小さい。回転軸41の第1端部41aと第2端部41bとが小径部41dとなっている。回転軸41のうち、第1端部41aにおける小径部41dよりも第2端部41b側の部分と、第2端部41bにおける小径部41dよりも第1端部41a側の部分と、が大径部41cとなっている。
【0058】
第1端部41aに位置する小径部41dと、この小径部41dと隣り合う大径部41cと、はインペラ室28に位置する。第2端部41bに位置する小径部41dと、この小径部41dと隣り合う大径部41cと、はタービン室33に位置する。
【0059】
小径部41dは、軸方向Xに延びる円柱状である。小径部41dの外面には雄ねじ41eが形成されている。大径部41cのうち、軸方向Xにおいて小径部41d側に位置する部分を第1軸部141cといい、その他の部分を第2軸部241cという。第1軸部141cは多角形柱状である。本実施形態における第1軸部141cは六角形柱状である。すなわち、第1軸部141cの外周面141dは六角形筒状である。第2軸部241cは軸方向Xに延びる円柱状である。
【0060】
<インペラの詳細>
図2に示すように、本実施形態におけるインペラ42は、インペラ42の内部に大径部41cが挿入された状態で、大径部41cに取り付けられている。第2軸部241cは、インペラ42の内部に挿入されている。第1端部41aにおける小径部41dと、この小径部41dに隣り合う第1軸部141cと、がインペラ42の内部から露出している。
【0061】
<タービンホイールの詳細>
図3に示すように、タービンホイール43は凹部43hを有する。凹部43hは、タービンホイール43の軸方向Xにおける両端部のうち、第2端部41b側の端部に形成されている。凹部43hは、タービン室33に開口している。これにより、凹部43hの内部とタービン室33とは互いに連通している。
【0062】
本実施形態におけるタービンホイール43は、タービンホイール43の内部に大径部41cが挿入された状態で、大径部41cに取り付けられている。第2端部41bにおける小径部41dと、この小径部41dに隣り合う大径部41cと、がタービンホイール43の内部に位置している。この大径部41cのうち、第2端部41bにおける小径部41dと、この小径部41dと隣り合う第1軸部141cと、はタービンホイール43の凹部43h内に位置する。
【0063】
<調整部材>
図2に示すように、遠心圧縮機10は調整部材71を備える。調整部材71は、例えば金属製である。調整部材71は、回転体40のバランスを調整するものである。調整部材71は、軸方向Xにおけるインペラ42と回転軸41の端部としての第1端部41aとの間に設けられている。調整部材71は筒状である。調整部材71には、インペラ室28内において回転軸41が挿通されている。詳細には、調整部材71は、大径部41cの第1軸部141cに挿通されている。第1軸部141cは、インペラ42から露出している。そのため、調整部材71はインペラ42から露出している。調整部材71は、回転軸41と一体的に回転する。そのため、回転体40は調整部材71を含む。
【0064】
図4に示すように、調整部材71の外周面71aは、軸方向Xに延びる円筒状をなす。調整部材71には切欠き71hが形成されている。切欠き71hは、回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相を調整するものである。切欠き71hは、例えば、調整部材71の外周面71aにおいて、調整部材71の外部に向けて開口する凹状をなす。切欠き71hは、軸方向Xにおける調整部材71の両端部の間で延びている。
【0065】
図4に示す例では、調整部材71のうち、回転軸41の周方向における1箇所に切欠き71hが形成されている。これにより、切欠き71hは、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように調整部材71に形成されている。なお、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように切欠き71hが調整部材71に形成されていれば、調整部材71における切欠き71hの形成位置と形成数は適宜変更可能である。
【0066】
調整部材71の内周面71bは、多角形筒状である。本実施形態における調整部材71の内周面71bは、六角形筒状である。軸方向Xからみて、調整部材71の内周面71bと第1軸部141cの外周面141dとは同じ形状である。回転軸41の周方向において、調整部材71の内周面71bの全体と第1軸部141cの外周面141dの全体とが互いに接している。これにより、調整部材71の内周面71bは、回転軸41に調整部材71が挿通された状態で第1軸部141cの外周面141dと嵌合することにより、回転軸41の周方向における回転軸41に対する調整部材71のずれを抑制する。したがって、本実施形態における第1軸部141cの外周面141dは、第1嵌合部として機能する。本実施形態における調整部材71の内周面71bは、第2嵌合部として機能する。すなわち、回転軸41は、調整部材71が挿通される部分としての第1軸部141cに第1嵌合部としての外周面141dを有する。調整部材71は、第2嵌合部としての内周面71bを有する。
【0067】
図3に示すように、調整部材71は、軸方向Xにおけるインペラ42と回転軸41の第1端部41aとの間に加えて、軸方向Xにおけるタービンホイール43と回転軸41の第2端部41bとの間にも設けられている。こうして軸方向Xにおけるタービンホイール43と回転軸41の第2端部41bとの間に設けられる調整部材71を、以下ではタービンホイール43側の調整部材71ともいう。軸方向Xにおけるインペラ42と回転軸41の第1端部41aとの間に設けられる調整部材71を、以下ではインペラ42側の調整部材71ともいう。
【0068】
タービンホイール43側の調整部材71は、タービンホイール43の凹部43h内に設けられている。タービンホイール43側の調整部材71は、インペラ42側の調整部材71と同様に、回転軸41が挿通されている筒状をなす。
【0069】
タービンホイール43側の調整部材71の外周面71aには、インペラ42側の調整部材71と同様に、切欠き71hが設けられている。なお、タービンホイール43側の調整部材71に形成される切欠き71hは、インペラ42側の調整部材71に形成される切欠き71hと、形成位置及び形成数が同じであってもよいし異なっていてもよい。要するに、タービンホイール43側の調整部材71に形成される切欠き71hも、インペラ42側の調整部材71に形成される切欠き71hと同様に、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように調整部材71に形成されたものであればよい。
【0070】
切欠き71h以外において、タービンホイール43側の調整部材71はインペラ42側の調整部材71と同様の形状をなす。すなわち、タービンホイール43側の調整部材71の内周面71bは、インペラ42側の調整部材71の内周面71bと同様の形状である。軸方向Xからみて、タービンホイール43側の調整部材71の内周面71bと、この調整部材71が挿通される第1軸部141cの外周面141dと、は同じ形状である。回転軸41の周方向において、タービンホイール43側の調整部材71の内周面71bの全体と、この調整部材71が挿通される第1軸部141cの外周面141dの全体と、が互いに接している。これにより、タービンホイール43側の調整部材71の内周面71bは、回転軸41に調整部材71が挿通された状態で第1軸部141cの外周面141dと嵌合する。そのため、タービンホイール43側の調整部材71について、回転軸41の周方向における回転軸41に対するずれが抑制される。
【0071】
<インペラナット及びタービンナット>
図2に示すように、インペラナット172は、例えば金属製である。インペラナット172は、軸方向Xにおける調整部材71と回転軸41の端部としての第1端部41aとの間に設けられている。これにより、インペラ42とインペラナット172との間には、調整部材71が設けられている。インペラナット172によって、軸方向Xにおいて調整部材71がインペラ42に押し付けられる。これにより、インペラナット172と調整部材71とは、軸方向Xにおいて互いに接触している。調整部材71とインペラ42とは、軸方向Xにおいて互いに接触している。
【0072】
インペラナット172の内径は、小径部41dの外径と同じ大きさである。例えば、軸方向Xにおけるインペラナット172の寸法は、軸方向Xにおける小径部41dの寸法と同じ大きさである。インペラナット172の内面には雌ねじ72eが形成されている。インペラナット172の雌ねじ72eは、小径部41dの雄ねじ41eに螺合している。これにより、インペラナット172は、小径部41dに固定されている。インペラナット172は、インペラ42を回転軸41に対して固定する。インペラナット172は、回転軸41と一体的に回転する。
【0073】
インペラナット172は、軸方向Xにおけるインペラ42との間に調整部材71を固定する。小径部41dはインペラ42から露出している。そのため、インペラナット172は、インペラ42から露出している。
【0074】
図3に示すように、回転体40はタービンナット272を含む。タービンナット272は、軸方向Xにおけるタービンホイール43側の調整部材71と第2端部41bとの間に設けられている。このタービンナット272は、タービンホイール43の凹部43h内に設けられている。タービンナット272によって、軸方向Xにおいてタービンホイール43側の調整部材71がタービンホイール43に押し付けられる。これにより、タービンナット272とタービンホイール43側の調整部材71とは、軸方向Xにおいて互いに接触している。タービンホイール43側の調整部材71とタービンホイール43とは、軸方向Xにおいて互いに接触している。
【0075】
タービンナット272は、インペラナット172と同様の形状である。軸方向Xにおけるタービンホイール43側の調整部材71と第2端部41bとの間に設けられるタービンナット272の内面にも雌ねじ72eが形成されている。タービンナット272の雌ねじ72eは、小径部41dの雄ねじ41eに螺合している。これにより、タービンナット272は、タービンホイール43を回転軸41に対して固定する。タービンナット272は、軸方向Xにおけるタービンホイール43との間に調整部材71を固定する。
【0076】
<遠心圧縮機の調整方法>
図2及び
図5に示すように、本実施形態における遠心圧縮機10においては、回転体40のバランスを調整する遠心圧縮機10の調整方法が行われる。本実施形態における遠心圧縮機10の調整方法は、計測工程と、取り外し工程と、加工工程と、除去工程と、取り付け工程と、を備える。遠心圧縮機10の調整方法においては、計測工程、取り外し工程、加工工程、除去工程、及び取り付け工程の順で各工程が行われる。こうした遠心圧縮機10の調整方法によって、インペラ42側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整を行う。
【0077】
以下では、インペラ42側の調整部材71を用いた回転体40のバランス調整時に行われる遠心圧縮機10の調整方法を説明する。なお、この調整方法と同様の方法によって、タービンホイール43側の調整部材71を用いた回転体40のバランス調整も行われる。以下の各工程に関する説明において、コンプレッサハウジング13、第3プレート17、インペラ42、インペラ室28の各々を、タービンハウジング14、第2プレート16、タービンホイール43、タービン室33に読み替えることができる。さらに、以下の各工程に関する説明において、インペラナット172をタービンナット272に読み替えることができる。こうして読み替えることにより、以下の各工程に関する説明は、タービンホイール43側の調整部材71を用いた遠心圧縮機10の調整方法の説明となる。
【0078】
遠心圧縮機10の調整方法における各工程について以下に説明する。
<計測工程>
計測工程は、例えば、コンプレッサハウジング13が第3プレート17に取り付けられない状態で行われる。これにより、インペラ42及び回転軸41の第1端部41aがハウジング11から露出した状態で計測工程は行われる。また、計測工程は、回転軸41にインペラナット172及び調整部材71が取り付けられた状態で行われる。ただし、計測工程が行われる際の調整部材71には切欠き71hが形成されていない。例えば、計測工程が行われるときの調整部材71は、軸方向Xに延びる円筒状である。
【0079】
計測工程は、回転体40のバランスを計測する工程である。詳細には、計測工程においては、例えば、遠心圧縮機10の駆動時の回転数で回転軸41を回転させる。回転軸41を回転させた状態で、不図示の測定装置を用いてハウジング11表面から回転体40のバランスに係る各種数値を計測する。この各種数値としては、例えば、回転体40の振動や回転体40の回転位相が挙げられる。計測が終了したら、回転軸41の回転を停止させる。
【0080】
<取り外し工程>
取り外し工程は、計測工程の後に、インペラナット172及び調整部材71を回転軸41から取り外す工程である。取り外し工程においては、まず回転軸41からインペラナット172が取り外された後、回転軸41から調整部材71が取り外される。回転軸41から取り外された調整部材71は、ハウジング11の外部であってインペラ42及びハウジング11から離れた場所まで運ばれる。調整部材71は、例えば、加工工程を行うための装置が載置された場所まで運ばれる。
【0081】
<加工工程>
加工工程は、回転軸41から取り外された調整部材71に行われる工程である。加工工程においては、切削を行う装置を用いて調整部材71に対して切欠き71hが形成される。加工工程においては、計測工程によって計測された回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて、調整部材71に切欠き71hを形成する加工を行う。詳細には、計測工程によって計測された回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて、調整部材71への切欠き71hの形成数や形成位置が選択される。選択された形成数及び形成位置で調整部材71に切欠き71hが形成される。こうした切欠き71hは、計測工程にて計測された回転体40のバランスを整えるために形成されるため、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように調整部材71に形成されたものとなる。加工工程においては、調整部材71への切欠き71hの形成に伴って切粉が生じる。切粉は、例えば、金属部材に切削を行うことにより発生する金属の切りくずである。加工工程の終了時点にて、生じた切粉の一部が調整部材71に付着している場合がある。
【0082】
<除去工程>
除去工程は、加工工程の後に、調整部材71から切粉を除去する工程である。除去工程においては、液体を用いて調整部材71を洗浄することにより、調整部材71から切粉を洗い流すことで調整部材71から切粉を除去する。なお、除去工程における切粉の除去手段は、洗浄に限らない。例えば、除去工程においては、送風機によって調整部材71に風を当てることにより、調整部材71から切粉を吹き飛ばすことで調整部材71から切粉を除去してもよい。
【0083】
<取り付け工程>
取り付け工程は、除去工程の後に、加工工程によって切欠き71hが形成された調整部材71とインペラナット172とを回転軸41に取り付ける工程である。取り付け工程においては、まず、切欠き71hが形成された調整部材71が回転軸41に取り付けられる。この時点では、調整部材71は回転軸41に対して軸方向Xに変位可能な状態である。さらに、回転軸41にインペラナット172が取り付けられる。回転軸41へのインペラナット172の取り付けに伴って、軸方向Xにおいて調整部材71がインペラ42に押し付けられる。これにより、軸方向Xにおけるインペラナット172とインペラ42との間に、切欠き71hが形成された調整部材71が固定される。
【0084】
取り付け工程の後、再び計測工程を行うことにより回転体40のバランスを計測してもよい。取り付け工程の後、コンプレッサハウジング13が第3プレート17に取り付けられることにより、インペラ室28が封止される。こうして遠心圧縮機10の調整方法が完了する。
【0085】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態によれば以下の作用効果を得ることができる。
(1-1)インペラ42とインペラナット172との間には、回転軸41が挿通され、回転体40のバランスを調整する筒状の調整部材71が設けられている。そのため、調整部材71をインペラナット172と共に回転軸41に取り付けることにより、回転体40のバランスを調整できる。回転体40のバランスを調整するために、遠心圧縮機10に取り付けられた状態の回転体40に切削を行わなくてもよい。したがって、回転体40のバランス調整に伴って生じた切粉がインペラ42やハウジング11内部におけるインペラ42の周囲に残留することを抑制できる。
【0086】
(1-2)回転軸41は、調整部材71が挿通される部分に第1嵌合部としての第1軸部141cの外周面141dを有する。調整部材71は、回転軸41に調整部材71が挿通された状態で第1軸部141cの外周面141dと嵌合することにより、回転軸41の周方向における回転軸41に対する調整部材71のずれを抑制する第2嵌合部としての内周面71bを有する。そのため、回転軸41に調整部材71が取り付けられる際に、第1嵌合部としての第1軸部141cの外周面141dと第2嵌合部としての調整部材71の内周面71bとが嵌合する。これにより、回転軸41の周方向における回転軸41に対する調整部材71のずれを抑制できる。したがって、調整部材71を回転軸41に取り付ける際に、回転軸41の周方向における切欠き71hの位置合わせを行いやすいため、回転体40のバランス調整をより正確に行える。
【0087】
(1-3)調整部材71及びインペラナット172は、インペラ42から露出している。そのため、調整部材71及びインペラナット172がインペラ42の内部に位置する場合と比較して、回転軸41に対する調整部材71及びインペラナット172の取り付けを容易に行える。したがって、回転体40のバランスの調整作業を簡略化できる。
【0088】
(1-4)遠心圧縮機10の調整方法は、計測工程と、取り外し工程と、加工工程と、除去工程と、取り付け工程と、を備える。加工工程は、回転軸41から取り外された調整部材71に行われる工程である。加工工程において、調整部材71に切欠き71hを形成する加工を行う。したがって、遠心圧縮機10から取り外された状態の調整部材71に切欠き71hの形成を行うことができるため、遠心圧縮機10に取り付けられた状態の調整部材71に切欠き71hを形成することによるハウジング11内への切粉の残留を抑制できる。除去工程において、加工工程の後に、調整部材71から切粉を除去する。取り付け工程において、除去工程の後に、切欠き71hが形成された調整部材71を回転軸41に取り付ける。そのため、加工工程によって生じた切粉が調整部材71に付着したとしても、その切粉を除去した調整部材71を回転軸41に取り付けることができる。したがって、切粉が付着した調整部材71をハウジング11内に配置させることによるハウジング11内への切粉の残留を抑制できる。
【0089】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0090】
○
図6に示すように、遠心圧縮機10の調整方法を上記実施形態とは異ならせてもよい。
図6に示す遠心圧縮機10の調整方法においては、加工工程及び除去工程にかえて選択工程を行う。すなわち、この場合の遠心圧縮機10の調整方法は、計測工程と、取り外し工程と、選択工程と、取り付け工程と、を備える。遠心圧縮機10の調整方法においては、計測工程、取り外し工程、選択工程、及び取り付け工程の順で各工程が行われる。こうした遠心圧縮機10の調整方法によって、インペラ42側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整を行う。計測工程と取り外し工程とは、上記実施形態と同様に行われる。選択工程においては、複数の調整部材71から、計測工程によって計測された回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて調整部材71を選択する。複数の調整部材71は、回転体40のバランス調整に際して予め用意されたものである。複数の調整部材71は、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように外周面71aに切欠き71hが形成されている。複数の調整部材71は、回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相を調整するために、調整部材71に予め形成された切欠き71hの形成態様が互いに異なる。取り付け工程においては、選択工程によって選択された調整部材71とインペラナット172とを回転軸41に取り付ける。これにより、軸方向Xにおけるインペラナット172とインペラ42との間に、切欠き71hが形成された調整部材71が固定される。
【0091】
この変更例によれば、上記実施形態の(1-4)の効果にかえて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)遠心圧縮機10の調整方法は、計測工程と、取り外し工程と、選択工程と、取り付け工程と、を備える。選択工程においては、切欠き71hの形成態様が互いに異なる複数の調整部材71から、計測工程によって計測された回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて調整部材71を選択する。したがって、回転体40のバランスを調整する際に、切欠き71hの形成を行わなくてもよいため、遠心圧縮機10に取り付けられた状態の調整部材71に切欠き71hを形成することによるハウジング11内への切粉の残留を抑制できる。取り付け工程において、選択工程によって選択された調整部材71とインペラナット172とを回転軸41に取り付ける。回転体40のバランスを調整する際に切欠き71hの形成が行われないため、切粉が付着した調整部材71をハウジング11内に配置させることによるハウジング11内への切粉の残留を抑制できる。
【0092】
○
図4に示すように、切欠き71hにかえて、回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相を調整する貫通孔71gが調整部材71に形成されていてもよい。この場合の貫通孔71gは、例えば、調整部材71の外周面71aと内周面71bとの間に形成されている。貫通孔71gは、例えば、調整部材71を軸方向Xに貫通する。調整部材71における貫通孔71gの形成位置と形成数は適宜変更可能である。貫通孔71gは、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならないように調整部材71に形成されていてもよい。加工工程が行われる場合、加工工程においては、計測工程によって計測された回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて、調整部材71に貫通孔71gを形成する加工を行う。取り付け工程においては、加工工程によって貫通孔71gが形成された調整部材71とインペラナット172とを回転軸41に取り付ける。
【0093】
○ インペラ42側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整と、タービンホイール43側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整と、は互いに異なる調整方法によって行われてもよい。この場合、インペラ42側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整と、タービンホイール43側の調整部材71を用いた回転体40のバランスの調整と、の一方が
図5に示す調整方法を用いて行われ、他方が
図6に示す調整方法を用いて行われる。
【0094】
○ タービンホイール43側の調整部材71と、この調整部材71を固定するタービンナット272と、はタービンホイール43から露出していてもよい。この場合のタービンホイール43からは、例えば凹部43hの形成が省略される。この場合の回転軸41の第2端部41bはタービンホイール43から露出している。こうした回転軸41に調整部材71及びタービンナット272が取り付けられることにより、タービンホイール43側の調整部材71と、この調整部材71を固定するタービンナット272と、がタービンホイール43から露出する。
【0095】
○ 調整部材71及びインペラナット172は、インペラ42から露出していなくてもよい。この場合のインペラ42は、実施形態でのタービンホイール43と同様に、凹部43hが形成される。インペラ42の凹部43hの内部に、回転軸41の第1端部41a、調整部材71、及びインペラナット172が位置する。これにより、調整部材71及びインペラナット172が、インペラ42から露出しない態様となる。
【0096】
○ 回転軸41のうちで第1嵌合部として機能する第1軸部141cの外周面141dは、六角形筒状以外の多角形筒状であってもよい。この場合、調整部材71のうちで第2嵌合部として機能する内周面71bは、第1軸部141cの外周面141dと同じ形状の多角形筒状であればよい。また、第1軸部141cの外周面141dと、調整部材71の内周面71bと、の一方に凹部が形成され、この凹部に嵌合可能な凸部が他方に形成されてもいてもよい。要するに、第1嵌合部として機能する第1軸部141cの外周面141dと、第2嵌合部として機能する調整部材71の内周面71bと、はこれらが互いに嵌合できれば形状の変更が可能である。こうした嵌合によって、回転軸41の周方向における回転軸41に対する調整部材71のずれを抑制できる。
【0097】
○ 回転軸41から第1嵌合部を省略するとともに、調整部材71から第2嵌合部を省略してもよい。
○ 回転軸41における大径部41cと小径部41dとの区別をなくしてもよい。この場合、例えば、回転軸41における調整部材71の取り付け箇所とインペラナット172の取り付け箇所とで径方向における寸法が同じであってもよい。
【0098】
○ 調整部材71に切欠き71hが形成される場合、切欠き71hは、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称となるように調整部材71に形成されていてもよい。調整部材71に貫通孔71gが形成される場合、貫通孔71gは、回転軸41の軸線Lを対称の中心として点対称とならなるように調整部材71に形成されていてもよい。この場合の切欠き71h及び貫通孔71gは、例えば、回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて、調整部材71に形成される切欠き71h及び貫通孔71gの形状を異ならせる。これにより、調整部材71によって回転体40のバランスが調整される。
【0099】
○ 切欠き71h及び貫通孔71gのいずれとも、調整部材71に形成されなくてもよい。この場合、例えば、回転体40の回転方向Dに対するアンバランスな位相に応じて、調整部材71の形状を異ならせることにより、調整部材71によって回転体40のバランスを調整できる。
【符号の説明】
【0100】
D…回転方向、L…軸線、10…遠心圧縮機、11…ハウジング、40…回転体、41…回転軸、42…インペラ、61…燃料電池スタック、71…調整部材、71b…(第2嵌合部としての)内周面、71g…貫通孔、71h…切欠き、141d…(第1嵌合部としての)外周面、172…インペラナット。