(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146248
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】モデル作成装置、モデル作成方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20241004BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059032
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高平 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕司
(57)【要約】
【課題】モデルを作成するフェーズごとに、当該モデルの性能を測るための指標を選択できるようにすること。
【解決手段】情報処理に使用されるモデルMを作成するモデル作成装置10は、モデルを複数のフェーズを経て作成するに際し、フェーズごとに選択される指標を用いてモデルの性能を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理に使用されるモデルを作成するモデル作成装置であって、
前記モデルを複数のフェーズを経て作成するに際し、
フェーズごとに選択される指標を用いて前記モデルの性能を評価する
モデル作成装置。
【請求項2】
請求項1記載のモデル作成装置であって、
記憶装置と、前記記憶装置に接続された演算装置とを備え、
前記記憶装置は、
モデル作成のフェーズを示すフェーズ情報と、前記フェーズの遷移を表すフェーズ遷移情報と、前記モデルの性能を測るための指標を示す指標情報と、前記フェーズに応じて前記指標情報の中から選定される指標を示す指標選定情報とを記憶しており、
前記演算装置は、
対象モデルを特定する情報を取得し、
前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第1フェーズを選択し、
前記選択された第1フェーズと前記フェーズ遷移情報とに基づいて、前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第2フェーズを選択し、
前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される所定の指標を決定し、
前記所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する、
モデル作成装置。
【請求項3】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記演算装置は、前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される前記所定の指標を、前記第2フェーズに対応する前記指標選定情報へ変更し、
前記変更された所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する、
モデル作成装置。
【請求項4】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記演算装置は、さらに、
前記所定の指標が設定された目標値となるように前記対象モデルを改善させた改善モデルを作成する、
モデル作成装置。
【請求項5】
請求項4記載のモデル作成装置であって、
前記演算装置は、さらに、
前記改善モデルを出力させる、
モデル作成装置。
【請求項6】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記フェーズ情報は、前記対象モデルについてフィードバックを取得する時間の短縮を目的とするフェーズを含む、
モデル作成装置。
【請求項7】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記フェーズ情報は、所定装置の修理コストの低減を目的とするフェーズを含む、
モデル作成装置。
【請求項8】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記フェーズ情報は、前記対象モデルを運用可能な所定レベルに到達させることを目的とするフェーズを含む、
モデル作成装置。
【請求項9】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記フェーズ情報は、前記対象モデルが運用可能な所定レベルに到達した後で発生した課題を解決することを目的とするフェーズを含む、
モデル作成装置。
【請求項10】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記記憶装置は、さらにシナリオ情報を含んでおり、
前記シナリオ情報は、所定の複数のフェーズ情報を含む、
モデル作成装置。
【請求項11】
請求項2記載のモデル作成装置であって、
前記第2フェーズに属する前記対象モデルには、前記第2フェーズで決定された所定の指標と、前記第1フェーズで使用された指標とがそれぞれ適用される、
モデル作成装置。
【請求項12】
計算機を用いて、情報処理に使用されるモデルを作成するモデル作成方法であって、
前記計算機は、記憶装置と、前記記憶装置に接続された演算装置とを備え、
前記記憶装置は、
モデル作成のフェーズを示すフェーズ情報と、前記フェーズの遷移を表すフェーズ遷移情報と、前記モデルの性能を測るための指標を示す指標情報と、前記フェーズに応じて前記指標情報の中から選定される指標を示す指標選定情報とを記憶しており、
前記演算装置は、
対象モデルを特定する情報を取得し、
前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第1フェーズを選択し、
前記選択された第1フェーズと前記フェーズ遷移情報とに基づいて、前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第2フェーズを選択し、
前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される所定の指標を決定し、
前記所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する、
モデル作成方法。
【請求項13】
計算機を、情報処理に使用されるモデルを作成するモデル作成装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記計算機は、
モデル作成のフェーズを示すフェーズ情報と、前記フェーズの遷移を表すフェーズ遷移情報と、前記モデルの性能を測るための指標を示す指標情報と、前記フェーズに応じて前記指標情報の中から選定される指標を示す指標選定情報とを記憶しており、
前記計算機上に、
対象モデルを特定する情報を取得する対象モデル取得部と、
前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第1フェーズを選択する第1フェーズ選択部と、
前記選択された第1フェーズと前記フェーズ遷移情報とに基づいて、前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第2フェーズを選択する第2フェーズ選択部と、
前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される所定の指標を決定する指標決定部と、
前記決定された所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する性能評価部と、
を実現させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル作成装置、モデル作成方法およびコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)技術の発展に伴い、様々な分野でAIが実用化されている。例えば、産業分野では、機器、設備、車両等のアセットに故障が発生した際に、過去のアセットに関する故障の情報とアセットに施した修理の情報との組を収集した修理履歴情報をモデルに学習させ、保守員に適切な修理方法を推薦するシステム(「リペアリコメンドシステム」と呼ぶ)が提案されている。特許文献1では、修理に必要な部品と装置の状態に関する因果関係とを確率分布で記述したベイジアンネットワークをモデルとして用いることで、リペアリコメンドシステムを実現する。
【0003】
このような潮流の中、モデルを作成するモデル作成者には、リペアリコメンドシステムのユーザが満足する性能のモデルを迅速に作成することが求められる。これに対して、特許文献2では、ある検査指標に定められた要求仕様に基づいて学習モデルを評価することで、現場のユーザが要求仕様を満足する学習モデルを選択できるようにした検査装置及び機械学習方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2021-22205号公報
【特許文献2】特開2022-097381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モデルの性能を評価する際に使用する指標には、一般的に機械学習分野で用いられる「正解率」の他にも多様な指標がある。例えば、リペアリコメンドシステムで用いるベイジアンネットワークでは、正解率に加えて、例えば、リコメンドする修理部品の粒度一致度、リコメンド可能な修理部品の数、修理部品をリコメンドするまでに掛かる装置の状態の入力回数の少なさなどの多様な指標がある。
【0006】
モデル作成者は、ユーザに対してどのくらいの性能のモデルがあれば満足するかの要望を聞き、その要望に合わせた性能のモデルを作成する。しかしながら、ユーザが多様な指標をすべて正確に理解して、モデルの性能に対する要望を一度に明確化することは困難である。したがって、モデル作成者は、ユーザの希望を一度に知ることができず、ユーザが満足するモデルを迅速に作成できない。
【0007】
本発明の目的は、モデルを作成するフェーズごとに、当該モデルの性能を測るための指標を選択できるようにしたモデル作成装置、モデル作成方法およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に係るモデル作成装置は、情報処理に使用されるモデルを作成するモデル作成装置であって、モデルを複数のフェーズを経て作成するに際し、フェーズごとに選択される指標を用いてモデルの性能を評価する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のフェーズを経てモデルを作成する際に、フェーズごとに選択される指標を用いてモデルの性能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】モデル作成装置のハードウェア構成のブロック図。
【
図13】第2フェーズで使用される指標を決定する画面の例。
【
図18】第2実施例に係り、目標値設定を支援するモデル作成装置の説明図。
【
図19】第3実施例に係り、モデルを利用する情報処理システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0012】
以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0013】
同一または同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0014】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0015】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲等は、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲等を表していない場合がある。本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。本明細書で引用した刊行物、特許および特許出願は、そのまま本明細書の説明の一部を構成する。
【0016】
本実施形態では、完成に向けて複数フェーズを経てモデルを作成する場合に、フェーズごとにモデルを評価するための指標を変更し、フェーズごとの指標に基づいてモデルを評価する。
【0017】
本発明では、フェーズごとに優先すべき指標を変えていくことで、多様な指標に対するユーザの理解と性能に対する要望の明確化とを促進し、ユーザが満足する性能のモデルを迅速に作成する方法を提供する。
【0018】
例えば、リペアリコメンドシステムにおいて、初めのフェーズでは、ユーザからいち早くフィードバックを貰うためにリコメンドする修理部品の粒度一致度を優先したモデルを作成し、次のフェーズにて、修理に掛かる工数削減効果を評価するために正解率と入力回数の少なさを優先したモデルに改良する、といった順に進める。これにより、多様な指標に対するユーザの理解と性能に対する要望の明確化とを促進できる。
【0019】
これに対し、特許文献2で述べた従来技術では、特定の評価指標で継続してモデルを評価するだけであり、フェーズごとに指標を変えることはまったく考慮されていない。
【0020】
以下、適宜図面を参照しながら本発明を実施するための代表的な形態を説明する。本実施の形態では、特許文献1に開示されたリペアリコメンドシステムで使用するベイジアンネットワークをフェーズに基づいて作成する装置について詳細に説明する。
【0021】
実施例の一つを説明する。モデル作成装置1は、モデル作成のフェーズを示すフェーズ情報を管理するフェーズ情報管理部111と、フェーズの遷移を表すフェーズ遷移情報を管理するフェーズ情報管理部112と、モデルの性能を測るための指標を示す情報を管理する指標情報管理部113と、フェーズに基づいて優先すべき指標を選定する優先指標選定情報を管理する優先指標選定情報管理部114と、モデルの作成者が指標を改善したいモデルMを入力するモデル入力部120と、作成者がフェーズ情報に基づいて第1フェーズを選択する第1フェーズ選択部122と、作成者が選択した第1フェーズとフェーズ遷移情報に基づいて第2フェーズを選択する第2フェーズ選択部123と、選択した第2フェーズと優先指標選定情報に基づいて優先すべき指標群を決定する指標決定部124と、性能評価部127にてモデルの評価に使用する指標を、決定した優先すべき指標群に変更する指標変更部125と、作成者が優先すべき指標群に対する目標値を入力する目標値入力部126と、モデルの性能を評価する性能評価部127と、性能を改善したモデルを作成する改善モデル作成部128と、モデルを出力するモデル出力部129とを備える。
【0022】
モデル作成装置1は、第1フェーズ選択部122が、フェーズ情報に基づいて第1フェーズを選択し、第2フェーズ選択部123が、第1フェーズとフェーズ遷移情報に基づいて第2フェーズを選択し、指標決定部124が、第2フェーズと優先指標選定情報に基づいて優先すべき指標群を決定し、指標変更部125が、優先すべき指標群に基づいて、性能評価部127にてモデルの評価に使用する指標を優先すべき指標群に変更し、性能評価部127が、優先すべき指標群とモデルと目標値に基づいて優先すべき指標群の評価値を算出し、改善モデル作成部128が、評価値とモデルに基づいて改善モデルMaを生成することで、フェーズごとの優先すべき指標を改善したモデルを生成する。
【0023】
第1フェーズ選択部122は、例えば、ユーザからいち早くフィードバックを貰うフェーズと、修理に掛かる工数削減効果を評価するフェーズと、実適用可能なモデルに仕立て上げるフェーズと、実運用で発生した課題を解決するフェーズと、既存機器のモデルと類似機器のモデルにおいて共通利用できるモデルを作成するフェーズと、類似機器に対して特化したモデルを作成するフェーズの中から、第1フェーズを選択してもよい。
【0024】
さらに、指標決定部124は、リコメンド結果がユーザの所望する部品の粒度になっているかを表す指標と、リコメンド可能な修理部品の数を表す指標リコメンド結果がどれだけ実際の修理部品と一致しているかの割合を表す指標と、リコメンド結果を出力するまでに掛かる装置の状態の入力回数の少なさを表す指標と、装置の状態の入力順序がベテランが実施する入力順序とどれだけ一致するかを表す指標と、ユーザに提示する質問事項や推薦内容などのテキストが理解しやすいかを表す指標と、選択肢に回答する際の判断基準が明確かを表す指標と、保守手順書等の補足情報の数を表す指標と、リコメンド結果を出力するまでに掛かる処理時間を表す指標と、類似機器のモデルに対して既存製品のモデルの何割を共通利用できるかを表す指標との組み合わせから、優先すべき指標群を決定することもできる。
【0025】
本開示には、以下の観点のモデル作成装置が含まれている。
【0026】
(観点1)記憶装置11と、前記記憶装置に接続された演算装置12とを備え、前記記憶装置は、モデル作成のフェーズを示すフェーズ情報D111と、前記フェーズの遷移を表すフェーズ遷移情報D112と、前記モデルの性能を測るための指標を示す指標情報D113と、前記フェーズに応じて前記指標情報の中から選定される指標を示す指標選定情報D114とを記憶しており、前記演算装置は、対象モデルMを特定する情報を取得し(120)、前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第1フェーズを選択し(122)、前記選択された第1フェーズと前記フェーズ遷移情報とに基づいて、前記フェーズ情報に含まれる少なくとも1つ以上のフェーズの中から第2フェーズを選択し(123)、前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される所定の指標を決定し(124)、前記所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する(127)、モデル作成装置。
【0027】
(観点2)観点1記載のモデル作成装置であって、前記演算装置12は、前記選択された第2フェーズと前記指標選定情報とから、前記第2フェーズに適用される前記所定の指標を、前記第2フェーズに対応する前記指標選定情報へ変更し、前記変更された所定の指標に基づいて、前記特定された対象モデルの性能を評価する、モデル作成装置。
【0028】
(観点3)観点1記載のモデル作成装置であって、前記演算装置12は、さらに、前記所定の指標が設定された目標値(126)となるように前記対象モデルMを改善させた改善モデルMaを作成する、モデル作成装置。
【0029】
(観点4)観点1~3のいずれか1項に記載のモデル作成装置であって、前記演算装置12は、さらに、前記改善モデルを出力させる(129)、モデル作成装置。
【0030】
(観点5)観点1~4のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記フェーズ情報D111は、前記対象モデルについてフィードバックを取得する時間の短縮を目的とするフェーズを含む、モデル作成装置。
【0031】
(観点6)観点1~5のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記フェーズ情報D111は、所定装置の修理コストの低減を目的とするフェーズを含む、モデル作成装置。
【0032】
(観点7)観点1~6のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記フェーズ情報D111は、前記対象モデルを運用可能な所定レベルに到達させることを目的とするフェーズを含む、モデル作成装置。
【0033】
(観点8)観点1~7のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記フェーズ情報D111は、前記対象モデルが運用可能な所定レベルに到達した後で発生した課題を解決することを目的とするフェーズを含む、モデル作成装置。
【0034】
(観点9)観点1~8のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記記憶装置11は、さらにシナリオ情報D110を含んでおり、前記シナリオ情報は、所定の複数のフェーズ情報を含む、モデル作成装置。
【0035】
(観点10)観点1~9のいずれか1つに記載のモデル作成装置であって、前記第2フェーズに属する前記対象モデルには、前記第2フェーズで決定された所定の指標と、前記第1フェーズで使用された指標とがそれぞれ適用される、モデル作成装置。
【実施例0036】
<1.概略>
図1を参照して、モデル作成装置10を用いて、リペアリコメンドシステム20で用いるベイジアンネットワークを作成する処理を説明する。本実施例では、情報処理に使用されるモデルMとして、ベイジアンネットワークを用いるものとするが、これに限らず、例えば、Support Vector Machineや深層学習などの、一般的に用いられる機械学習モデルでもよい。
【0037】
モデルの作成者U1は、例えば、製品仕様書、保守手順書、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)、FT(Fault Tree)などのアセットに関する設計・保守情報を用いて、初期のベイジアンネットワークを作成する。以降、ベイジアンネットワークをモデルと呼ぶ。
【0038】
図中では、機能ブロックの名称などを簡略化して表示する場合がある。例えば、シナリオ情報管理部は「シナリオ情報」と、フェーズ情報管理部は「フェーズ情報」と、モデル入力部は「モデル入力」と、シナリオ選択部は「シナリオ選択」と、第1フェーズ選択部は「第1フェーズ選択」のように簡略化する。
【0039】
図1に示すモデル利用システム1は、例えば、少なくとも1つの、モデル作成装置10と、リペアリコメンドシステム20と、モデル管理端末30と、ユーザ端末40を備えており、それら各装置10,20,30,40は通信ネットワークCNにより双方向通信可能に接続されている。これら各装置10,20,30,40は、後述のようにコンピュータを用いて構成することができる。リペアリコメンドシステム20は、モデルMを用いて所定の情報処理を実行するアプリケーションシステムの例である。
【0040】
モデル利用システム1では、モデル管理端末30がモデル作成装置10へ適宜情報を与えることにより、性能を評価する指標の異なる複数のフェーズを経て、モデルMが段階的に作成される。
【0041】
モデル管理端末30は、モデルを作成するモデル作成者U1により操作されるコンピュータ端末である。ユーザ端末40は、モデルを用いたアプリケーションシステム(ここではリペアリコメンドシステム20)を使用するユーザU2により操作されるコンピュータ端末である。モデル作成者U1を、作成者U1、管理者U1または第1ユーザU1と呼ぶこともできる。ユーザU2は、例えば、モデル使用者U2または第2ユーザU2と呼ぶこともできる。
【0042】
本実施例では、作成者U1とユーザU2とを区別して説明するが、作成者U1とユーザU2とは同一人物であってもよい。また、作成者U1とユーザU2はそれぞれ複数人でもよい。
【0043】
モデル作成装置10は、管理部11と、モデル作成装置12と含む。管理部11は、「記憶装置」の例である。モデル作成装置12は「演算装置」の例である。管理部11には、後述する所定の情報D110~D114が記憶されている。モデル作成部12は、後述する各機能120~129を備える。
【0044】
管理部11は、例えば、シナリオ情報D110を管理するシナリオ情報管理部110と、フェーズ情報D111を管理するフェーズ情報管理部111と、フェーズ遷移情報D112を管理するフェーズ遷移情報管理部112と、指標情報D113を管理する指標情報管理部113と、優先指標選定情報D114を管理する優先指標選定情報管理部114とを備える。
【0045】
モデル作成部12は、モデルが入力されるモデル入力部120と、シナリオを選択するシナリオ選択部121と、第1フェーズが選択される第1フェーズ選択部122と、第2フェーズが選択される第2フェーズ選択部123と、指標が決定される指標決定部124と、性能を評価するための指標を変更する指標変更部125と、評価の目標値が入力される目標値入力部126と、モデルの性能を評価する性能評価部127と、改善されたモデルを作成する改善モデル作成部128と、モデルを出力するモデル出力部129とを備えている。なお、モデル入力部120は、対象モデルMを取得する「対象モデル取得部」の例である。
【0046】
記憶媒体MMは、コンピュータプログラム(ここではデータが含まれてもよい。)を非一時的に記憶する媒体である。記憶媒体MMは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスクである。記憶媒体MMは、モデル作成装置10に有線または無線で接続することができ、モデル作成装置10との間でコンピュータプログラムを送受信することができる。
【0047】
モデル作成装置10に格納されたコンピュータプログラム(各機能120~129を実現させるコンピュータプログラム)を記憶媒体MMへ転送して記憶し、その記憶媒体MMを図示せぬ他のコンピュータに接続し、記憶媒体MMに記憶されたコンピュータプログラムを他のコンピュータへ転送して記憶させることができる。記憶媒体MMに記憶されたコンピュータプログラムをモデル作成装置10へ転送して記憶させることもできる。さらに、コンピュータプログラムを配信するサーバ(図示せず)とモデル作成装置10とを通信ネットワークCNを介して接続し、サーバからモデル作成装置10へコンピュータプログラムを送信して記憶させることもできる。
【0048】
モデル作成者U1は、作成対象または改善対象のモデル情報をモデル作成部12のモデル入力部120へ入力する。シナリオ選択部121は、シナリオ情報管理部110で管理されるシナリオ情報D110に基づき、モデル作成者U1に対してシナリオ情報の一覧をモデル管理端末30の画面に提示させる。作成者U1は、提示されたシナリオ情報に基づいて、対象モデルに適用するシナリオを1つ選択する。
【0049】
第1フェーズ選択部122は、選択されたシナリオとフェーズ情報管理部111で管理されるフェーズ情報D111とに基づいて、選択されたシナリオに対応するフェーズ情報をモデル管理端末30の画面に表示させる。
【0050】
モデル作成者U1は、端末画面に表示されたフェーズ情報に基づいて、現在のモデル作成のフェーズを1つ選択する。次に、第2フェーズ選択部123は、選択された第1フェーズとフェーズ遷移情報管理部112で管理されるフェーズ遷移情報D112とに基づいて、次のモデル作成フェーズである第2フェーズを選択する。第2フェーズを「対象フェーズ」と、第1フェーズを「対象フェーズの直前に実施された直前フェーズ」と、それぞれ呼ぶこともできる。
【0051】
指標決定部124は、指標情報管理部113で管理される指標情報D113と優先指標選定情報管理部114で管理される優先指標選定情報D114とに基づいて、優先すべき指標(指標群)を選択する。優先すべき指標とは、対象フェーズにおいて対象モデルの性能を評価するために優先的に使用される1つ以上の指標である。
【0052】
目標値入力部126は、作成者U1に対し、選択された優先すべき指標群に対する目標値の入力を要求する、作成者U1は、選択された優先すべき指標群に対する目標値を、目標値入力部126に入力する。目標値は、作成者U1の経験に基づいて入力(設定)されてもよい。目標値入力部126は、管理部11で保存されているモデル作成履歴(不図示)などを統計処理することで基準値を算出し、その基準値を目標値として入力することもできる。
【0053】
指標変更部125は、性能評価部127にてモデルの評価に使用される指標を、優先すべき指標群に変更する。性能評価部127は、優先すべき指標群と対象モデルと目標値とに基づいて、優先すべき指標群の評価値を算出する。優先すべき指標群の評価値のうち1つ以上が目標値を下回っている場合、改善モデル作成部128が実行される。
【0054】
改善モデル作成部128は、目標値に達していない指標に対する改善手法を対象モデルMに対して実行し、改善モデルMaを作成する。性能評価部127は、改善モデルMaに対して再び性能を評価する。
【0055】
モデルの改善と再評価とが繰り返されて、優先すべき指標群の評価値が全て目標値を上回ると、モデル出力部129が実行される。モデル出力部129は、改善モデルMaをモデル管理端末30へ送信する。以上の手順により、フェーズごとに優先すべき指標を変更して、改善モデルを作成できる。
【0056】
次に、多様な指標に対するユーザU2の理解とユーザU2の性能に対する要望とを明確化する方法を説明する。
【0057】
作成者U1は、リペアリコメンドシステム20に対象モデルを登録する。作成者U1は、第2フェーズと当該第2フェーズで優先すべき指標群の内容とを、ユーザU2に説明する。作成者U1は、ユーザU2と対面(実際の対面またはオンラインでの対面)で説明することもできるし、電子メールまたはチャットなどのテキスト、電話などで説明することもできる。
【0058】
ユーザU2は、リペアリコメンドシステム20を利用し、優先すべき指標群のうちどの指標をどの程度改善すべきか作成者U1へ伝える。改善すべき指標がユーザU2から伝えられると、作成者U1は、再びモデル作成装置10を利用し、改善モデルを作成する。このとき、未だ第2フェーズは完了していないと見なし、前回と同じシナリオと第1フェーズとが選択される。ユーザU2から作成者U1への改善希望点の通知は、対面、テキスト、電話などを用いて行うことができる。
【0059】
ユーザU2からの改善希望点がない場合、作成者U1は、前回の第2フェーズを新たな第1フェーズとして選択し、モデル作成装置10を利用する。これを全てのフェーズが完了するまで繰り返すことで、多様な指標に対するユーザの理解と性能に対する要望の明確化とを促進し、ユーザが満足する性能のモデルを迅速に作成できる。
【0060】
つまり、本実施例では、複数フェーズを経て作成されるモデルについて、フェーズを変えるたびに優先すべき指標を選択し直して評価することにより、ユーザU2の理解を深めながら(ユーザU2を教育しながら)、ユーザU2の望むモデルを作成する。
<2.システム構成>
<2-1.機能ブロック>
情報処理に用いるモデルを利用するシステム1の構成を説明する。これらの構成要素は、有線または無線による通信ネットワークCNで相互に接続されている。通信ネットワークCNは、公衆回線、専用回線、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等で構成される。なお、図に示す構成要素の数は一例であって、増減してもよい。例えば、分散処理のために、複数のモデル作成装置10を連携させてもよい。
【0061】
モデル作成装置10について説明する。上述の通り、モデル作成装置10は、「記憶装置」としての管理部11と、「演算装置」としてのモデル作成部12とを備える。
【0062】
管理部11は、シナリオ情報管理部110と、フェーズ情報管理部111と、フェーズ遷移情報管理部112と、指標情報管理部113と、優先指標選定情報管理部114とを備える。
【0063】
モデル作成部12は、モデル入力部120と、シナリオ選択部121と、第1フェーズ選択部122と、第2フェーズ選択部123と、指標決定部124と、指標変更部125と、目標値入力部1026と、性能評価部127と、改善モデル作成部128と、モデル出力部129とを備える。
<2-2.機能およびハードウェア>
図2は、モデル作成装置10のハードウェア構成の一例を示している。
図1と
図2とを参照して、機能とハードウェアとの対応を説明する。
図1は、モデル作成装置10が備える機能構成の一例を示している。モデル作成装置10のハードウェアは、例えばサーバコンピュータのようなコンピュータで構成される。
【0064】
図1に示すモデル作成装置10が備える管理部11とモデル作成部12は、
図2に示すCPU(Central Processing Unit)100と、ROM(Read Only Memory)101と、RAM(Random Access Memory)102と、外部記憶装置103と、通信I/F(Interface)104と、マウスまたはキーボード等に代表される外部入力装置105と、ディスプレイ等に代表される外部出力装置106とを備える。
【0065】
CPU100が、ROM101または外部記憶装置103に格納されたコンピュータプログラムをRAM102に読み込み、通信I/F104、外部入力装置105、外部出力装置106を制御することで、各種機能が実現される。
【0066】
本実施形態では、コンピュータにおける計算、制御等の機能は、ROM101、外部記憶装置103等の記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがCPU100等のプロセッサによって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。コンピュータ等が実行するプログラム、その機能、またはその機能を実現する手段を、「機能」、「手段」、「部」、「ユニット」、「モジュール」、「モデル」等と呼ぶ場合がある。
【0067】
モデル作成装置10の全ての構成が単体のコンピュータ上に実現されてもよいし、モデル作成装置10の任意の構成が他のコンピュータ上で実現されて互いに連携してもよい。ソフトウェアで構成される機能と同等の機能は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路(ハードウェア)でも実現できる。さらに、プロセッサは、CPUに限らず、GPU(Graphics Processing Unit)などでもよい。
【0068】
モデル作成装置10を構築するコンピュータは、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、眼鏡型コンピュータ、ゴーグル型コンピュータ、腕時計型コンピュータ、腕輪型コンピュータであってもよい。ユーザインターフェース装置として、例えば、AR(Augmented Reality:拡張現実)、VR(Virtual Reality)を用いることもできる。
<2-3.データ構造>
<2-3-1.シナリオ情報>
図3を用いて、シナリオ情報管理部110が管理するシナリオ情報D110について説明する。シナリオ情報D110は、どのようにモデルを構築していくかの情報であるシナリオを一覧形式で示す。シナリオ情報D110は、例えば、シナリオ名を示すシナリオ名D1101と、シナリオの説明を示すシナリオ説明D1102とを備える。
【0069】
本実施例では、複数のシナリオを用意している。複数のシナリオとは、例えば、新規機器に対する新しいモデルを作成するシナリオである「新規機種に対するモデル作成」と、既存機器のモデルを再利用して類似機器に対するモデルを作成するシナリオである「類似機器に対するモデル作成」である。これら以外に、試験的なモデルを作成するシナリオ、経験の浅いユーザ向けのモデルを作成するシナリオなどの他のシナリオでもよい。上記項目の一部の項目を備えてもよい。
<2-3-2.フェーズ情報>
図4を用いて、フェーズ情報管理部111が管理するフェーズ情報D111について説明する。フェーズ情報D111は、シナリオ名ごとに、モデル作成におけるフェーズ一覧を示す。フェーズ情報D111は、例えば、フェーズの名前を示すフェーズ名D1111と、フェーズがどのシナリオに属するか示すシナリオ名D1112と、フェーズの説明を示すフェーズ説明D1113とを備える。
【0070】
本実施例では、シナリオ名からフェーズ名の一覧を選択する。選択されたシナリオ名が「新規機器に対するモデル作成」の場合、ユーザからいち早くフィードバックを貰うフェーズである「立ち上げ」と、修理に掛かる工数削減効果を評価するフェーズである「トライアル」と、実適用可能なモデルに仕立て上げるフェーズである「実適用」と、実運用で発生した課題を解決するフェーズである「保守」が選択される。
【0071】
「立ち上げ」フェーズは、「対象モデルについてフィードバックを取得する時間の短縮を目的とするフェーズ」の例である。「トライアル」フェーズは、「所定装置の修理コストの低減を目的とするフェーズ」の例である。「実適用」フェーズは、「対象モデルを運用可能な所定レベルに到達させることを目的とするフェーズ」の例である。「保守」フェーズは、「対象モデルが運用可能な所定レベルに到達した後で発生した課題を解決することを目的とするフェーズ」の例である。
【0072】
他方、選択されたシナリオ名が「類似機器に対するモデル作成」の場合、既存機器のモデルと類似機器のモデルとの両方に共通利用できるモデルを作成するフェーズである「共通化」と、類似機器に対して特化したモデルを作成するフェーズである「特化」とを選択する。なお、上述した各シナリオでは、上述したフェーズ以外の他のフェーズを備えてもよい。上述したフェーズの一部のフェーズだけを備えたシナリオが存在してもよい。
<2-3-3.フェーズ遷移情報>
図5を用いて、フェーズ遷移情報管理部112が管理するフェーズ遷移情報D112について説明する。フェーズ遷移情報D112は、フェーズがどのように遷移するかを示す。フェーズ遷移情報D112は、第1フェーズを特定する第1フェーズD1121と、第2フェーズを特定する第2フェーズD1122とを備える。
【0073】
本実施例では、第1フェーズから第2フェーズを選択する。なお、第1フェーズと第2フェーズの遷移には、木構造のように、他の階層構造にしてもよい。
<2-3-4.指標情報>
図6を用いて、指標情報管理部113が管理する指標情報D113を説明する。指標情報D113は、モデルの性能を測定する指標の一覧である。指標情報D113は、指標の名前を示す指標名D1131と、指標の説明を示す指標説明D1132を含む。なお、本実施例では、リペアリコメンドシステム20のベイジアンネットワークで用いられる指標を例上げて説明するが、例えば、適合率、再現率、F値などの、機会学習モデルの評価で用いられる他の指標を使用してもよいし、上記項目の一部の項目を備えてもよい。
<2-3-5.優先指標選定情報>
図7を用いて、優先指標選定情報管理部114が管理する優先指標選定情報D114について説明する。優先指標選定情報D114は、フェーズに基づいてどの指標を優先すべきかを記載する。優先指標選定情報D114は、例えば、指標名一覧D1141と、フェーズ名一覧D1142と、記入欄D1143とを備える。
図7では、一か所にのみ符号D1143を付しているが、各四角形の欄が記入欄D1143である。
【0074】
指標名一覧D1141には、指標情報D113の指標名D1131で示された指標の一覧が記載される。フェーズ名一覧D1142には、フェーズ情報D111のフェーズ名D1111で示されたフェーズ一覧が記載される。記入欄D1143には、対応するフェーズごとに指標を優先すべきか否かの印が記載される。図中では、丸印の付された指標が、そのフェーズで選択されることを示す。
【0075】
本実施例では、「立ち上げ」フェーズの場合、ユーザからいち早くフィードバックを貰うために、リペアリコメンドシステム20のアウトプットである「修理部品の粒度一致度」を優先するとして、印をつける。
【0076】
「トライアル」フェーズの場合、「立ち上げ」フェーズで印の付された指標に加えて、修理に掛かる工数削減効果を評価するために、モデルの効果に関する「正解率」、「入力回数の少なさ」に、優先する指標として印がつけられる。
【0077】
「実適用」フェーズの場合、「トライアル」フェーズで印をつけた指標に加えて、実適用可能なモデルに仕立て上げるために、モデルの適用範囲と使用性に関する「修理部品の種類数」、「記載内容の理解しやすさ」、「処理時間」に対して、優先する指標として印がつけられる。
【0078】
「保守」フェーズの場合、「実適用」フェーズで印をつけたものに加えて、実適用で発生した課題を解決するために、「ベテラン一致度」、「判断基準明確性」、「補足情報の付与数」に印がつけられる。すなわち、「保守」フェーズでは、全ての指標に印がつけられる。「ベテラン一致度」とは、モデルの出力する回答とベテランユーザの回答とが一致する割合である。「判断基準明確性」とは、モデルの判断基準の明確性を示す。「補足情報の付与数」とは、付与される補足情報の数である。
【0079】
「共通化」フェーズの場合、既存機器のモデルと類似機器のモデルとの両方に共通利用できるモデルを作成するために、「共通率」が優先する指標として選択され、印がつけられる。
【0080】
「特化」フェーズの場合、類似機器に対して特化したモデルを作成するために、類似機器に対するモデルの適用範囲に関する「修理部品の一致度」、「修理部品の種類数」が優先する指標であるとして印がつけられる。
【0081】
なお、本実施例では、優先する場合は丸印をつけ、優先しない場合は空欄としているが、丸印以外の他の記号を用いてもよい。記号に代えて、指標の重要度または影響を及ぼす度合いを表す数値を用いてもよい。
<4.処理フロー>
図8のフローチャートを用いて、モデル作成装置10を用いてモデルを作成する処理を説明する。
【0082】
モデル入力部120は、作成者U1から管理端末30を介してモデル情報を受け付ける(S101)。本実施例では、モデル情報は、特許文献1に開示されたベイジアンネットワークのノード情報および確率分布情報である。ただし、ベイジアンネットワークのモデル情報に限らず、例えば、一般的な機械学習モデルの重み情報でもよいし、エキスパートシステムで用いられるフローチャートなどでもよい。
【0083】
シナリオ選択部121は、シナリオ情報D110に基づいて、作成者U1から管理端末30を介してシナリオ名を1つ受け付ける(S102)。シナリオ名は、シナリオ情報D110のシナリオ名D1101に含まれる値である。
【0084】
第1フェーズ選択部122は、シナリオ名とフェーズ情報D111とに基づいて、作成者U1から管理端末30を介して第1フェーズを受け付ける(S103)。第1フェーズは、フェーズ情報D111においてステップS102で受け付けたシナリオ名に対応するフェーズ名D1111に含まれる値もしくは初回のモデル作成を表す「-」である。例えば、シナリオ名が「新規機器に対するモデル作成」であれば、「-」、「立ち上げ」、「トライアル」、「実適用」、「保守」の中から第1フェーズが選択される。
【0085】
第2フェーズ選択部123は、第1フェーズとフェーズ遷移情報D112とに基づいて、第2フェーズを選択する(S104)。例えば、第1フェーズが「立ち上げ」であれば、「トライアル」を第2フェーズとして選択する。
【0086】
指標決定部124は、第2フェーズと優先指標選定情報1D4とに基づいて、優先すべき指標群を決定する(S105)。例えば、第2フェーズが「トライアル」であれば、優先指標選定情報1D4の「トライアル」列に対応する「修理部品の一致度」、「正解率」、「入力回数の少なさ」が優先すべき指標群として選択される。
【0087】
指標変更部125は、性能評価部127でモデルの評価に使用する指標群を、ステップS105で決定された優先すべき指標群に変更する(S106)。
【0088】
目標値入力部1026は、作成者U1から管理端末30を介して、優先すべき指標群に対する目標値を受け付ける(S107)。例えば、「修理部品の一致度」に対して「0.8」、「正解率」に対して「0.8」、「入力回数の少なさ」に対して「0.5」を受け付ける。
【0089】
性能評価部127は、ステップS106で変更された、優先すべき指標群に基づいてモデルの評価値を算出する(S108)。例えば、指標「修理部品の一致度」に対しては、モデルがリコメンドする部品の粒度と予め設定したユーザの所望する部品の粒度が一致している割合を算出する。指標「正解率」に対しては、予め設定した装置の状態群と修理部品とのペアの集合であるテストデータセット用いて、テストデータセットの装置の状態群に基づいてモデルがリコメンドした修理部品とテストデータセットの修理部品とが一致する割合を算出する。指標「入力回数の少なさ」に対しては、テストデータセットの装置の状態群の一部を入力しなくとも正解率の評価値を維持できる場合において、何割を入力しなくてもよいか最大値を算出する。ここでは、例えば「修理部品の一致度」の評価値は「0.9」、「正解率」の評価値は「0.7」、「入力回数の少なさ」の評価値は「0.4」とする。
【0090】
性能評価部127は、優先すべき指標群の目標値と優先すべき指標群の評価値とを比較し、全ての評価値が目標値に達しているか判断する(S109)。
【0091】
優先すべき指標群の評価値のうち1つでも目標値に達していない指標がある場合(S109:NO)、改善モデル作成部128は、目標値を上回っていない指標に対する改善手法を実行し、改善モデルを作成する(S110)。
【0092】
前述の例では、「正解率」の評価値と「入力回数の少なさ」の評価値が目標値に達していないため、これら指標を改善するための性能改善手法が実行される。性能改善手法は、例えば、「正解率」の評価値と「入力回数の少なさ」の評価値とを改善するように、モデルの確率分布をGridSearchにより探索し、改善モデルを作成する。性能改善手法は、新しく装置の状態群と修理部品とのペアを集めた訓練データセットを用いてモデルを学習させる手法などでもよい。改善モデルの作成後、ステップS108へ戻る。
【0093】
全ての優先すべき指標群の評価値が目標値に達すると(S109:YES)、そのモデル(改善モデル)は管理端末30へ出力される(S111)。作成者U1は、管理端末30が受信したモデルを確認し、リペアリコメンドシステム20に登録する。
【0094】
以上のように、モデル作成装置10は、フェーズごとに優先すべき指標を変化させながら、各フェーズに適した改善モデルを作成する。作成者U1は、改善モデルをリペアリコメンドシステム20に登録して運用を開始させることにより、多様な指標に対するユーザの理解を促進させると共に、性能に対するユーザの要望を明確化させる。
【0095】
作成者U1は、第2フェーズと優先すべき指標群の内容とをユーザU2に説明する。ユーザU2は、リペアリコメンドシステム20を利用し、優先すべき指標群のうちどの指標をどの程度改善すべきか、作成者U1に伝える。
【0096】
改善すべき指標がある場合、作成者U1は、再びモデル作成装置10を利用し、改善モデルを作成する。このとき、まだ第2フェーズは完了していないと見なし、前回と同じシナリオと第1フェーズを選択する。
【0097】
改善すべき指標がない場合、前回の第2フェーズを新たな第1フェーズとして選択し、モデル作成装置10を利用する。これを全てのフェーズが完了するまで繰り返すことで、モデル作成装置10は、多様な指標に対するユーザの理解と性能に対するユーザの要望の明確化とを促進し、ユーザが満足する性能のモデルを迅速に作成することができる。
<5.ユーザインターフェース>
以下、モデル作成装置10から外部出力装置106に表示させるGUI(Graphical User Interface)の例を説明する。作成者U1は、モニタディスプレイに表示されるGUIを通じて、モデル作成装置10との間で情報を交換することができる。
【0098】
図9は、モデル入力部120へモデルを入力するために使用されるモデル入力画面G1の例である。モデル入力画面G1は、例えば、モデル情報ファイル送信フォームGP11と、確定ボタンGP12とを備える。モデル情報ファイル送信フォームGP11は、モデル情報のファイルを指定する。モデル情報ファイル送信フォームGP11で指定されるファイルは、例えば、ベイジアンネットワークにおける、故障原因情報と調査項目情報と故障原因と調査項目の因果関係情報と確率分布情報を記載した、CSV(Comma Separated Value)形式のファイルである。
【0099】
Support Vector Machineや深層学習などの、一般的に用いられる機械学習モデルの重みを記載したファイルをフォームGP11で指定してもよい。作成者U1は、確定ボタンGP12を押すことで、フォームGP11で指定されたモデル情報を、性能評価部127および改善モデル作成部128へ送信する。
【0100】
図10は、シナリオ選択部121がシナリオを選択するために使用されるシナリオ選択画面G2の例である。シナリオ選択画面G2は、例えば、シナリオ名を表示する領域GP21と、シナリオの説明を表示する領域GP22と、選択ラジオボタンGP23と、確定ボタンGP24を備える。
【0101】
シナリオ名を表示する領域GP21には、シナリオ情報D110のシナリオ名D1101が表示される。シナリオの説明を表示する領域GP22には、シナリオ情報D110のシナリオ説明D1102が表示される。作成者U1は、選択ラジオボタンGP23を用いてシナリオを1つ選択する。シナリオを選択した後、作成者U1は、確定ボタンGP24を押すことで、選択されたシナリオ名を第1フェーズ選択部122へ送信する。
【0102】
図11は、第1フェーズ選択部122により第1フェーズを選択する画面G3の例である。第1フェーズ選択画面G3は、例えば、フェーズ名を表示する領域GP31と、フェーズの説明を表示する領域GP32と、選択ラジオボタンGP33と、確定ボタンGP34とを備える。
【0103】
フェーズ名を表示する領域GP31は、フェーズ情報D111においてステップS102で受け付けたシナリオ名に対応するフェーズ名D1111に含まれる値もしくは初回のモデル作成を表す「-」を表示する。
【0104】
フェーズの説明を表示する領域GP32は、フェーズ情報D111においてステップS102で受け付けたシナリオ名に対応するフェーズ説明1D202に含まれる値もしくは初回のモデル作成の説明を表す「既に完了したフェーズが無い場合に選択してください」を表示する。
【0105】
作成者U1は、第1フェーズを選択ラジオボタンGP33を用いて選択する。作成者U1は、確定ボタンGP34を押すことで、第1フェーズを第2フェーズ選択部123へ送信する。
【0106】
図12は、第2フェーズ選択部123が第2フェーズを選択するために使用される画面G4を説明する。
【0107】
第2フェーズ選択画面G4は、例えば、第2フェーズであることを表示する領域GP41と、フェーズ名を表示する領域GP42と、フェーズの説明を表示する領域GP42と、選択ラジオボタンGP43と、確定ボタンGP44とを備える。
【0108】
第2フェーズ表示領域GP41は、フェーズ遷移情報D112と第1フェーズとに基づいて選択された第2フェーズの名前を表示する。フェーズ名を表示する領域GP41は、フェーズ遷移情報D112と第1フェーズとに基づいて、第1フェーズから遷移可能なフェーズ名を表示する。フェーズの説明を表示する領域GP42は、第1フェーズから遷移可能なフェーズの説明を表示する。選択ラジオボタンGP43は、第1フェーズから直接遷移可能なフェーズを選択するための選択部である。作成者U1は、ラジオボタンGP43を操作することで、選択される第2フェーズを変更できる。作成者U1は、確定ボタンGP44を押すことで、選択された第2フェーズを指標決定部124へ送信する。
【0109】
図13は、指標決定部124で指標を決定するために使用される画面G5の例である。指標決定画面G5は、例えば、第2フェーズであることを表示する領域GP51と、指標名を表示する領域GP52と、指標の説明を表示する領域GP53と、選択チェックボックスGP54と、確定ボタンGP55とを備える。
【0110】
第2フェーズであることを表示する領域GP51は、第2フェーズ選択部123にて選択された第2フェーズを表示する。指標名を表示する領域GP52には、指標情報D113の指標名D1131が表示される。指標の説明を表示する領域GP53には、指標情報D113の指標説明D1132が表示される。選択チェックボックスGP54では、ステップS105で決定された優先すべき指標をチェックしておく。作成者U1は、選択チェックボックスGP54のチェック先を変えることで、優先すべき指標を変更できる。作成者U1は、確定ボタンGP55を押すことで、優先すべき指標を指標変更部125へ送信する。
【0111】
図14は、目標値入力部1026へ目標値を入力するために使用される画面G6の例である。
【0112】
目標値入力画面G6は、例えば、優先して適用される指標を表示する領域GP6と、目標値を入力するボックスGP62と、確定ボタンGP63とを備える。優先指標を表示する領域GP6には、指標変更部125から送信された優先すべき指標が表示される。作成者U1は、目標値入力ボックスGP62に対して、優先すべき指標ごとの目標値を数値で入力する。作成者U1は、確定ボタンGP63を押すことで、優先すべき指標群と目標値を性能評価部127へ送信する。
【0113】
図15,
図16は、性能評価部127がモデルの性能を評価する際に使用する画面G7,G7Aの例である。
【0114】
モデルの性能を評価する画面G7は、ステップS109にて優先すべき指標群の評価値のうち1つ以上が目標値に達していないと判定された場合に使用される。
図16に示す性能評価画面GP7は、全ての優先すべき指標群の評価値が目標値に達していると判定された場合に使用される。
【0115】
性能評価画面G7は、例えば、優先指標を表示する領域GP71と、評価値を表示する領域GP72と、目標値を表示する領域GP73と、指標の改善を促すメッセージを表示する領域GP74と、改善モデルの作成を指示するボタンGP75とを備える。
【0116】
優先指標を表示する領域GP71には、指標変更部125から送信された優先すべき指標群が表示される。評価値を表示する領域GP72には、ステップS108にて算出された、モデルの評価値が表示される。
【0117】
目標値を表示する領域GP73には、指標変更部125から送信された優先すべき指標群に対する目標値が表示される。指標の改善を促すメッセージを表示する領域GP74には、評価値が目標値に達していない優先すべき指標群に関して、改善モデルを作成することを推薦するメッセージが表示される。作成者U1は、改善モデル作成ボタンGP75を押すことで、改善モデル作成部128に対してモデルの改善を指示する。
【0118】
図16に示す性能評価画面1G7Aは、優先指標を表示する領域GP71と、評価値を表示する領域GP72と、目標値を表示する領域GP73と、モデルを出力する旨のメッセージを表示する領域GP74と、確定ボタンGP75とを備える。
【0119】
優先指標を表示する領域GP71には、指標変更部125から送信された優先すべき指標群が表示される。評価値を表示する領域GP72には、ステップS108にて算出されたモデルの評価値が表示される。目標値を表示する領域GP73には、指標変更部125から送信された優先すべき指標群に対する目標値が表示される。モデルを出力する旨のメッセージを表示する領域GP74には、改善モデルの出力を促すメッセージが表示される。作成者U1は、確定ボタンGP75を押すことで、モデル出力部129からモデル(改善されたモデル)を出力させる。
【0120】
図17を用いて、モデル出力部129のモデル出力画面G8を説明する。モデル出力画面G8は、例えば、改善モデルを出力させるボタンGP81を備える。作成者U1は、ボタンGP81を押すことで、モデル作成装置10から改善モデルを出力させ、その改善モデルを管理端末30で受信することができる。
【0121】
以上に説明したように、本実施例によれば、フェーズごとに優先すべき指標を改善した改善モデルを作成することができる。本実施例のモデル作成装置10を利用することで、作成者U1は、多様な指標に対するユーザの理解と性能に対する要望の明確化とを促進し、ユーザが満足する性能のモデルを迅速に作成できる。作成者U1は、ユーザU2を教育しながら、モデルを段階的に作成することができる。すなわち、作成者U1は、フェーズごとに、ユーザの成長に合わせてモデルを改善することができる。
目標値設定支援部130は、例えば、モデルの作成履歴から算出される目安を目標値V1~V22として設定してもよいし、図示せぬ機械学習モデルにより提案された値を目標値V1~V22として設定してもよい。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、優先すべき各指標の目標値の設定を支援できるため、作成者U1にとっての利便性が向上する。