(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146250
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
H04R17/00 330J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059034
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬道
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】谷口 眞司
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019EE04
5D019GG06
(57)【要約】
【課題】剥がれ等を抑制できる圧電装置を提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサは、空隙28を有する支持体と、空隙上を覆うように支持体上に設けられた第1中間層と、第1中間層上に設けられた第2中間層と、第2中間層上に設けられた下部電極12と、下部電極上に設けられた圧電層14と、第2中間層とで圧電層を挟む領域の面積が、平面視において空隙の面積より小さく空隙に含まれるように圧電層上に設けられた上部電極16と、を備え、第1中間層は、平面視で見たとき、周縁部において支持体と第2中間層とに挟まれて設けられ、中央部において空隙上を覆うように設けられた膜部15aと、支持体の上面と空隙に面する支持体の側面とが接する箇所を覆うように空隙に面する支持体の側面の上部から膜部の下面まで設けられ、支持体の厚さ方向における厚さが空隙に面する支持体の側面から空隙の内側に向かうにしたがい小さくなる被覆部15bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を有する支持体と、
前記空隙上を覆うように前記支持体上に設けられた第1中間層と、
前記第1中間層上に設けられた第2中間層と、
前記第2中間層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記第2中間層とで前記圧電層を挟む領域の面積が、平面視において前記空隙の面積より小さく前記空隙に含まれるように前記圧電層上に設けられた上部電極と、
を備え、
前記第1中間層は、平面視で見たとき、周縁部において前記支持体と前記第2中間層とに挟まれて設けられ、中央部において前記空隙上を覆うように設けられた膜部と、前記支持体の上面と前記空隙に面する前記支持体の側面とが接する箇所を覆うように前記空隙に面する前記支持体の側面の上部から前記膜部の下面まで設けられ、前記支持体の厚さ方向における厚さが前記空隙に面する前記支持体の側面から前記空隙の内側に向かうにしたがい小さくなる被覆部と、を有する超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記被覆部の前記空隙に露出する面は前記箇所の方に凹むように湾曲する請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
平面視において、前記被覆部は前記領域に重ならない請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記被覆部の主成分は、前記膜部または前記支持体の主成分と同じである請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記支持体はシリコン基板であり、前記第1中間層は酸化シリコン層である請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記被覆部が前記空隙に面する前記支持体の側面に接する前記支持体の厚さ方向における高さは、前記被覆部の前記支持体の厚さ方向に直交する方向における幅の1/10倍以上かつ10倍以下である請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
空隙を有する支持体と、
前記空隙上を覆うように前記支持体上に設けられた第1中間層と、
前記第1中間層上に設けられた第2中間層と、
前記第2中間層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記第2中間層とで前記圧電層を挟む領域の面積が、平面視において前記空隙の面積より小さく前記空隙に含まれるように前記圧電層上に設けられた上部電極と、
を備え、
前記第1中間層は、前記支持体と前記第2中間層に挟まれた厚膜部と、平面視において前記空隙の中央部に設けられ前記厚膜部より薄い薄膜部と、前記厚膜部と前記薄膜部との間に位置し、前記厚膜部から前記薄膜部に向かうにしたがい厚さが徐々に小さくなる遷移部と、を有する超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記遷移部の前記空隙に露出する面は上方に凹むように湾曲する請求項7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
平面視において、前記遷移部は前記領域に重ならない請求項7または8に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記支持体はシリコン基板であり、前記第1中間層は酸化シリコン層である請求項7または8に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
空隙を有するシリコンからなる支持体と、
前記空隙および前記支持体上に設けられたシリコン酸化膜と、
前記シリコン酸化膜上に設けられたシリコン層と、
前記シリコン層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記圧電層上に設けられた上部電極と、
前記空隙に面する前記支持体の側面と前記空隙に面する前記シリコン酸化膜の面とにより形成される角部を覆い、シリコン、またはシリコンと酸素を含み、前記空隙に面する面は前記角部の方に凹むように湾曲する被覆部と、
を備える超音波トランスデューサ。
【請求項12】
空隙を有するシリコンからなる支持体と、
前記空隙および前記支持体上に設けられたシリコン酸化膜と、
前記シリコン酸化膜上に設けられたシリコン層と、
前記シリコン層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記圧電層上に設けられた上部電極と、
を備え、
前記空隙の上方に位置する前記シリコン酸化膜は、前記支持体上に位置する前記シリコン酸化膜より薄く、
前記空隙に面する前記支持体の側面と前記空隙に面する前記シリコン酸化膜の面とが接する部分から前記空隙の中心方向に前記シリコン酸化膜の厚さが徐々に小さくなる超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電型マイクロマシン超音波トランスデューサ(pMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)が知られている。複数のpMUT素子をアレイ状に配置した超音波トランスデューサが知られている(例えば特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2020/0194658号明細書
【特許文献2】特開2021-150920号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P. Ngoc, et al., Micromachines, vol 9, no.9 p.455 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
pMUTでは、基板に空隙が設けられ、空隙上に圧電層を含む積層膜が設けられる。この空隙上の積層膜がたわみ振動する。このとき、振動領域の周囲の基板と積層膜は固定されており、空隙と基板と積層膜とが接する内壁の角部に応力が集中する。これにより、振動する積層膜にクラックが発生したり、積層膜が基板から剥がれたりすることがある。さらには、基板と積層膜との界面に水分等が侵入することがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、剥がれ等を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空隙を有する支持体と、前記空隙上を覆うように前記支持体上に設けられた第1中間層と、前記第1中間層上に設けられた第2中間層と、前記第2中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記第2中間層とで前記圧電層を挟む領域の面積が、平面視において前記空隙の面積より小さく前記空隙に含まれるように前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、前記第1中間層は、平面視で見たとき、周縁部において前記支持体と前記第2中間層とに挟まれて設けられ、中央部において前記空隙上を覆うように設けられた膜部と、前記支持体の上面と前記空隙に面する前記支持体の側面とが接する箇所を覆うように前記空隙に面する前記支持体の側面の上部から前記膜部の下面まで設けられ、前記支持体の厚さ方向における厚さが前記空隙に面する前記支持体の側面から前記空隙の内側に向かうにしたがい小さくなる被覆部と、を有する超音波トランスデューサである。
【0008】
上記構成において、前記被覆部の前記空隙に露出する面は前記箇所の方に凹むように湾曲する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、平面視において、前記被覆部は前記領域に重ならない構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記被覆部の主成分は、前記膜部または前記支持体の主成分と同じである構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記支持体はシリコン基板であり、前記第1中間層は酸化シリコン層である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記被覆部が前記空隙に面する前記支持体の側面に接する前記支持体の厚さ方向における高さは、前記被覆部の前記支持体の厚さ方向に直交する方向における幅の1/10倍以上かつ10倍以下である構成とすることができる。
【0013】
本発明は、空隙を有する支持体と、前記空隙上を覆うように前記支持体上に設けられた第1中間層と、前記第1中間層上に設けられた第2中間層と、前記第2中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記第2中間層とで前記圧電層を挟む領域の面積が、平面視において前記空隙の面積より小さく前記空隙に含まれるように前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、前記第1中間層は、前記支持体と前記第2中間層に挟まれた厚膜部と、平面視において前記空隙の中央部に設けられ前記厚膜部より薄い薄膜部と、前記厚膜部と前記薄膜部との間に位置し、前記厚膜部から前記薄膜部に向かうにしたがい厚さが徐々に小さくなる遷移部と、を有する超音波トランスデューサである。
【0014】
上記構成において、前記遷移部の前記空隙に露出する面は上方に凹むように湾曲する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、平面視において、前記遷移部は前記領域に重ならない構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記支持体はシリコン基板であり、前記第1中間層は酸化シリコン層である構成とすることができる。
【0017】
本発明は、空隙を有するシリコンからなる支持体と、前記空隙および前記支持体上に設けられたシリコン酸化膜と、前記シリコン酸化膜上に設けられたシリコン層と、前記シリコン層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、前記空隙に面する前記支持体の側面と前記空隙に面する前記シリコン酸化膜の面とにより形成される角部を覆い、シリコン、またはシリコンと酸素を含み、前記空隙に面する面は前記角部の方に凹むように湾曲する被覆部と、を備える超音波トランスデューサである。
【0018】
本発明は、空隙を有するシリコンからなる支持体と、前記空隙および前記支持体上に設けられたシリコン酸化膜と、前記シリコン酸化膜上に設けられたシリコン層と、前記シリコン層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、前記空隙の上方に位置する前記シリコン酸化膜は、前記支持体上に位置する前記シリコン酸化膜より薄く、前記空隙に面する前記支持体の側面と前記空隙に面する前記シリコン酸化膜の面とが接する部分から前記空隙の中心方向に前記シリコン酸化膜の厚さが徐々に小さくなる超音波トランスデューサである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、剥がれ等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、超音波トランスデューサの動作を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は、比較例1に係る超音波トランスデューサの拡大断面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの拡大断面図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)から
図6(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、シミュレーションにおけるそれぞれ比較例1および実施例1の応力を示す図である。
【
図9】
図9(a)から
図9(c)は、シミュレーションにおける実施例1の幅Wおよび高さHに対する最大の応力を示す図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、シミュレーションにおける実施例1の幅Wおよび高さHに対する最大の応力の等高線を示す図である。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)は、シミュレーションにおける実施例1の変形例1の幅Wおよび高さHに対する最大の応力を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例2に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、実施例2に係る超音波トランスデューサの拡大断面図である。
【
図14】
図14は、実施例2の変形例1に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【
図15】
図15は、実施例3に係る超音波トランスデューサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0022】
図1(a)は、実施例1に係る超音波トランスデューサ100の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
図1(a)では、開口27および空隙28を破線で示し、上部電極16をクロスハッチングで示している。各層の積層方向をZ方向、基板10の平面視における辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0023】
超音波トランスデューサ100では、厚みを有し平面形状が矩形の基板10と、基板10上に積層膜18とが設けられている。また基板10は、積層膜18が振動しやすいように、下面から厚さ方向に貫通する開口27を有している。また、製造工程において、空隙28を形成するときの都合から、基板10および開口27上を覆うようにストッパ層15が設けられている。ストッパ層15上に活性層11が設けられている。基板10、ストッパ層15および活性層11は、例えばSOI(Semiconductor On Insulator)基板から作製される。基板10は例えばシリコン基板であり、ストッパ層15は例えば酸化シリコン層であり、活性層11は例えばシリコン層である。基板10は、支持体であり、開口27の周囲でストッパ層15を支持する。ストッパ層15および活性層11はそれぞれ第1中間層および第2中間層とも称する。そして開口27における基板10の内壁とストッパ層15の内壁とが、一部を区画する空隙28が形成される。
【0024】
ストッパ層15は、開口27をエッチングするときのストッパとして機能する。ストッパ層15は、空隙28に面する膜部15aと、膜部15aと開口27の側面との角部を埋めて角部の表面を湾曲面とする被覆部15bを有する。
【0025】
膜部15aは、ほぼ平板状であり、被覆部15bは、開口27における基板10の側面の上部とストッパ層15との境界、つまり平面視で見たときにリング状の膜部15aの外郭の角部を覆う部分である。被覆部15bの空隙28に露出する面62は、角部に向かった凸状の湾曲面を有している。
【0026】
活性層11上に絶縁層13が設けられている。なお、絶縁層13は設けられていなくてもよい。下部電極12が活性層11または絶縁層13の上面の全面に設けられている。圧電層14が下部電極12の上面の全面に設けられている。圧電層14上に上部電極16が設けられている。
【0027】
図1(a)の平面図において、クロスハッチングで示した上部電極16の面積は、空隙28の面積よりも一回り小さく、空隙28に全域が含まれるように設けられている。平面視で見たとき振動領域50外にある、基板10に対応する圧電層14上にパッド24aおよび24bが設けられている。パッド24aは圧電層14まで到達するコンタクト孔22を介し下部電極12に接続されている。パッド受け部16bは、上部電極16と、上部電極16とパッド受け部16bとを接続する配線16aと、一体に設けられている。パッド24bは、パッド受け部16b上に設けられている。パッド24aおよび24bは、ボンディング用の例えば金パッドである。なお、基板10の全域に保護膜(不図示)が設けられていてもよい。
【0028】
ストッパ層15、活性層11、絶縁層13、下部電極12、圧電層14および上部電極16が順に設けられた膜を、積層膜18とする。平面視において、積層膜18が膜部15aと重なる領域は振動領域50である。また平面視において、被覆部15bが設けられた領域は、
図1(a)において上部電極16の外側に示されている2本の破線の間で示す領域54であり、リング状に形成されている。振動領域50における積層膜18はたわみ振動する。領域54における積層膜18も振動するが、領域54における振動の共振周波数は、振動領域50の共振周波数とは異なる。領域54の幅が振動領域50の幅より十分小さければ、領域54における積層膜18の振動はほぼ無視できる。
【0029】
下部電極12と上部電極16とが圧電層14を挟む領域を領域52とする。領域52の全域が、平面視において振動領域50より小さく振動領域50に含まれるように設けられている。
【0030】
以下に、具体的に、各構成の材料などを説明する。
基板10として、例えばシリコン基板等を用いることができる。また、基板10、ストッパ層15および活性層11として、シリコン基板、シリコン酸化膜およびシリコン層が順に設けられたSOI基板を採用してもよい。下部電極12および上部電極16は、例えばルテニウム、モリブデン、金、チタン、白金、アルミニウム、銅、クロム、銀、パラジウムもしくはニッケル等の金属膜から選択された膜、またはこれらの中から複数の膜が選択された積層膜である。例えば、下部電極12は、活性層11側からクロム膜およびルテニウム膜である。上部電極16は、圧電層14側からルテニウム膜およびクロム膜である。
【0031】
圧電層14の材料は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)、BaFeO3(鉄酸バリウム)、BaTiO3(チタン酸バリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、ZnO(酸化亜鉛)またはpVDF(ポリフッ化ビニリデン)である。保護膜の材料は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機絶縁体である。パッド24aおよび24bは、例えば金層、銅層またはアルミニウム層である。
【0032】
基板10の厚さは例えば100μm~500μmであり、ストッパ層15の厚さは例えば0.1μm~3μmであり、活性層11の厚さは例えば1μm~20μmである。下部電極12および上部電極16の厚さは、例えば100nm~300nmである。圧電層14の厚さは、例えば100nm~300nmである。
【0033】
振動領域50および領域52の平面形状は円である。振動領域50の中心55と領域52の中心とは略一致している。振動領域50の直径は、例えば200μm~2000μm、領域52の直径は、振動領域50よりも小さく、例えば100μm~1500μmである。振動領域50および領域52の平面形状および面積は適宜設定できる。例えば平面形状は、略楕円形または略多角形でもよい。
【0034】
続いて、動作を説明する。
図2(a)および
図2(b)は、超音波トランスデューサの動作を示す断面図である。絶縁層13およびストッパ層15の図示を省略している。
【0035】
超音波を送信する場合を例に説明する。
図2(a)および
図2(b)に示すように、下部電極12と上部電極16との間に、交流電圧を加える制御部30が設けられている。この交流電圧が印加されると、
図2(a)と
図2(b)に示す矢印のように、活性層11および圧電層14の伸縮および膨張により、上方向33aおよび下方向33bのように振動領域50は上下振動を繰り返す。
【0036】
図2(a)のように、下部電極12および上部電極16に例えばそれぞれ正および負の電圧が加わる。逆圧電効果により、圧電層14内の面方向に圧電層14が伸びるような歪み31aが生じる。活性層11に加わる応力32aは縮む方向の応力となる。これにより、振動領域50は上方向33a(+Z方向)に反る。
【0037】
図2(b)のように、下部電極12および上部電極16に例えばそれぞれ負および正の電圧が加わる。逆圧電効果により、圧電層14内の面方向に圧電層14が縮むような歪み31bが生じる。活性層11に加わる応力32bは伸びる方向の応力となる。これにより、振動領域50は下方向33b(-Z方向)に反る。
【0038】
交流電圧により、
図2(a)と
図2(b)との状態が繰り返されることにより、振動領域50が上方向33aと下方向33bを交互に繰り返すように振動する。これにより、振動領域50から超音波が放射される。超音波を受信する場合には、外部から振動領域50に超音波を受けると、振動領域50が上方向33aおよび下方向33bに振動する。これにより、振動領域50の活性層11に応力32aおよび32bが加わる。これにより、圧電層14に歪み31aおよび31bが生じる。圧電効果により、下部電極12と上部電極16との間に交流電圧が生成される。この交流電圧(交流信号)を測定することで、超音波を受信できる。
【0039】
図2(a)および
図2(b)のように、振動領域50内の積層膜18がたわみ振動すると、振動領域50の外周に応力が集中する。これにより、基板10とストッパ層15とが剥がれることがある。以下、比較例1を用い説明する。
【0040】
[比較例1]
図3(a)および
図3(b)は、比較例1に係る超音波トランスデューサ110および111の拡大断面図である。
図3(a)および
図3(b)は、開口27と、基板10とストッパ層15とが接する付近を拡大した断面図である。
【0041】
図3(a)に示すように、超音波トランスデューサ110では、ストッパ層15は平板状である。開口27の側面はほぼ垂直である。
図3(a)の構造では、開口27の内側面とストッパ層15の下面とがほぼ直交するリング状の角部がある。このため、振動領域50の積層膜18が振動したときに、基板10の上面と空隙28に面する基板10の側面とが接する角部の箇所60に応力が集中する。さらには、
図2(a)のように振動領域50の積層膜18が撓むと、基板10とストッパ層15との界面61には、ストッパ層15が剥がれるような応力が加わる。これにより、ストッパ層15と基板10の間にクラックが生じることがある。また、箇所60の界面61に水分等が侵入する可能性がある。
【0042】
図3(b)に示すように、超音波トランスデューサ111において、開口27の側面の上部は、上に行くほど開口27の内側に湾曲する湾曲面を有する。また別の表現では、
図3(a)の箇所60(角部)に向かって凸となる湾曲部または鈍角面が設けられ、箇所60への応力集中が緩和される。
【0043】
図3(b)、
図4(a)、
図4(b)、
図7、
図12~
図14の断面図で述べれば、
図3(a)の角部から比較すると、箇所60に相当する部分は角が緩和されている。
図4(a)、
図4(b)および
図7では、角部にシリコンまたはシリコン酸化膜が埋められて、空隙28に露出される被覆部15bの面が湾曲面となる。またはこの面がテーパ面となり、テーパ面と空隙28の側面とのなす角が鈍角となる。
図12~
図14では、空隙28上のストッパ層15が薄くなっている。その結果、箇所60付近のストッパ層15の下面が湾曲となる。または、この面がテーパ面となり、テーパ面と空隙28の側面とのなす角が鈍角となる。これらにより、角部が鋭くなるのを緩和し、応力の集中を抑制している。
【0044】
[実施例1の効果]
図4(a)および
図4(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサ100および101の拡大断面図である。
図4(a)および
図4(b)は、開口27と、基板10とストッパ層15とが接する付近を拡大した断面図である。
【0045】
図4(a)に示すように、超音波トランスデューサ100では、ストッパ層15は膜部15aと被覆部15bとを有している。膜部15aは、平面視で見たとき、周縁部において基板10と活性層11とに挟まれて設けられ、中央部において空隙28上を覆うように設けられている。被覆部15bは、箇所60を覆うように空隙28に面する基板10の側面の上部から膜部15aの下面まで設けられている。すなわち、被覆部15bは、空隙28に面する基板10の側面と空隙28に面する膜部15aの面とにより形成される角部を覆う。被覆部15bを設けることで、箇所60に加わる応力が緩和される。ストッパ層15が基板10から剥がれることを抑制できる。また、箇所60から界面61に水分等が侵入することを抑制できる。
【0046】
被覆部15bの基板10の厚さ方向における厚さが空隙28に面する基板10の側面から空隙28の内側に向かうにしたがい小さくなる。これにより、被覆部15b内での応力の集中を抑制できる。より応力の集中を抑制するためには、被覆部15bの空隙28に露出する面62は箇所60の方に凹むように湾曲することが好ましい。
【0047】
図4(b)に示すように、超音波トランスデューサ101では、開口27の側面の上部が上に行くほど開口27の内側に湾曲する場合にも、被覆部15bを設ける。これにより、
図4(a)の場合と同様に、応力を緩和できる。
【0048】
なお、
図4(a)および
図4(b)のいずれにおいても、被覆部15bは、エッチングストッパであるストッパ層15および/または基板10の主成分と同じ主成分を有することが好ましい。主成分が同一であることから、被覆部15bと膜部15aとの密着性、および被覆部15bと基板10との密着性が向上する。例えば、基板10がシリコンからなり、膜部15aがシリコン酸化膜であり、活性層11がシリコンからなる場合に、被覆部15bは、シリコン、またはシリコンと酸素を含む。これにより、被覆部15bと膜部15aとの密着性、および被覆部15bと基板10との密着性が向上する。
【0049】
[実施例1の製造方法]
以下、実施例1の超音波トランスデューサの製造方法を説明する。
図5(a)から
図6(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサ100の製造方法を示す断面図である。
【0050】
図5(a)に示すように、基板10、ストッパ層15および活性層11が積層されたSOI基板上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法または熱酸化法を用い絶縁層13を形成する。
【0051】
続いて、
図5(b)に示すように、絶縁層13上に例えばスパッタリング法を用いて下部電極12を成膜する。続いて、
図5(c)に示すように、下部電極12上に例えばスパッタリング法を用いて圧電層14を成膜する。
【0052】
続いて、
図5(d)に示すように、圧電層14上に例えばスパッタリング法を用い上部電極16を成膜する。例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い上部電極16をパターニングする。これにより、上部電極16が残存した領域が領域52となる。このとき、
図1(a)の配線16aおよびパッド受け部16bも上部電極16と同時に形成する。
【0053】
続いて、
図6(a)に示すように、圧電層14にコンタクト孔22を形成し、下部電極12を露出させる。
【0054】
続いて、
図6(b)に示すように、コンタクト孔22を介し下部電極12と接続するパッド24aを形成する。このとき、
図1(a)のパッド24bもパッド24aと同時に形成する。
【0055】
続いて、
図6(c)に示すように、基板10の下面から例えばDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用い開口27を形成する。ストッパ層15は、エッチングのストッパとして機能する。
【0056】
最後に、
図6(d)に示すように、基板10の下面からイオンミリング法を用い、アルゴン(Ar)等の不活性元素(例えば希ガス元素)のイオンまたは原子をストッパ層15の下面に照射する。これにより、ストッパ層15の下面からスパッタされた原子の一部が開口27の上部に付着する。これにより、被覆部15bが形成される。なお、被覆部15bの形成方法としては、イオンミリング法以外に、例えばCVD法などのプラズマを用いた方法、その他の方法を用いてもよい。
【0057】
このように、被覆部15bを作製すると、被覆部15bの主成分は膜部15aの主成分または/および基板10の主成分と同じである。ここで、主成分とは、主成分以外の元素が意図的または意図せず含まれることを許容する。例えば被覆部15bの主成分は膜部15aの主成分以外にイオンミリングに用いるアルゴン等の不活性元素を含んでもよい。また、被覆部15bは膜部15aに比べ酸素の組成が低くなることもある。例えば、膜部15aが酸化シリコンを主成分とするとき、被覆部15bのシリコンと酸素の合計の濃度は、50原子%以上であり、80原子%以上である。イオンミリングのイオンを照射する角度によっては、被覆部15bは酸素をほとんど含まず、主成分がシリコンとなる場合もある。この場合でも被覆部15bの主成分はシリコンであるため、被覆部15bと基板10との密着性を向上できる。
【0058】
また、
図4(a)および
図4(b)のように、振動領域50におけるストッパ層15の厚さT1は、基板10と活性層11との間に位置するストッパ層15の厚さT2より小さくなる。被覆部15bを作製する観点から、厚さT1は、厚さT2の例えば0.95倍以下であり、0.9倍以下である。
図6(d)において、ストッパ層15を残存させる観点から、厚さT1は、例えば厚さT2の0.2倍以上であり、0.5倍以上である。
【0059】
[実施例1の変形例1]
図7は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサ102の断面図である。
【0060】
超音波トランスデューサ102では、被覆部15bの厚さは、開口27の側面から開口27の内側に向けて直線的に小さくなる。すなわち、被覆部15bの空隙28に露出する面62は直線状である。別の表現を用い、
図7を参照して説明すれば、空隙28に面する被覆部15bの面と空隙28に面する基板10の側面とは鈍角を構成する。また空隙28に面する被覆部15bの面と空隙28に面する膜部15aの面とは鈍角を構成している。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0061】
超音波トランスデューサ102の被覆部15bは、
図6(d)において、アルゴン等の不活性元素のイオンまたは原子の照射を、Z方向から傾けて行うことで形成できる。つまり開口27からストッパ層15に向かってイオンまたは原子を照射するときに、イオンまたは原子の飛来する方向が、平面に対し垂直な方向(すなわちZ方向)であれば、主にストッパ層15の材料(例えばシリコンと酸素)が被覆部15bの材料となる。また、イオンまたは原子の飛来する方向を平面に対し垂直な方向から傾ければ、基板10の材料(例えばシリコン)またはストッパ層15の材料(シリコンと酸素)が被覆部15bの材料となる。このように、被覆部15bに、基板10とストッパ層15の両方の材料が混ざっていると、被覆部15bと基板10との密着性、膜部15aと被覆部15bとの密着性の両方が向上する。
【0062】
[シミュレーション]
比較例1、実施例1およびその変形例1において、開口の外周付近の応力をシミュレーションした。シミュレーションには、中心55を中心とする円対称とする2次元の有限要素法を用いた。シミュレーション条件は以下である。
基板10:シリコン
ストッパ層15:厚さが0.5μmの酸化シリコン層
活性層11:厚さが3μmのシリコン層
絶縁層13:なし
下部電極12:活性層11側から厚さが20nmのクロム膜および厚さが100nmのルテニウム膜
圧電層14:厚さが1μmの窒化アルミニウム層
上部電極16:圧電層14側から厚さが100nmのルテニウム膜および厚さが20nmのクロム膜
開口27の直径:1380μm
上部電極16の直径:966μm
下部電極12と上部電極16との間に1Vの直流電圧を印加したときの応力を算出した。面62が湾曲する場合、湾曲をベジエ曲線とし、COMSOL社製のシミュレータにおいてweightを1/√2とした。
【0063】
図8(a)および
図8(b)は、シミュレーションにおけるそれぞれ比較例1および実施例1の応力を示す図である。
図8(a)および
図8(b)は、開口27の外周付近を拡大している。横軸は中心55を0としたときのX座標を表し、縦軸は基板10とストッパ層15との界面を0としたときのZ座標を表す。基板10およびストッパ層15内の応力を白黒で表し、濃くなると応力が大きくなることを示している。
【0064】
図8(a)のように、比較例1では、基板10の上面と開口27の側面とが接する箇所60に応力が集中している。最大の応力は1.61MPaである。
図8(b)のように、実施例1では、応力がほぼ均一であり応力は、0.04MPa以下である。被覆部15bの高さおよび幅をそれぞれWおよびHとする(高さWと幅Hとの位置関係は、
図8(b)を参照)。
【0065】
図9(a)から
図9(c)は、シミュレーションにおける実施例1の幅Wおよび高さHに対する応力を示す図である。縦軸の応力は、
図8(a)および
図8(b)のような断面視において最大の応力である。
図9(a)から
図9(c)内の黒丸ドットはシミュレーションした点を示し、実線は黒丸ドットをつなぐ線である。
図9(a)は、被覆部15bの幅Wを1μmとし、高さHを変えたときの応力を示す図である。Hが0.3μmのとき、応力は約0.2MPaであり、高さHが大きくなると応力が小さくなる。H=3μmのとき、応力は約0.12MPaである。高さHがさらに大きくなると応力は大きくなりH=25μmのとき、応力は約0.25MPaである。
【0066】
図9(b)は、被覆部15bの高さHを1μmとし、幅Wを変えたときの応力を示す図であるWが0.3μmのとき、応力は約0.22MPaであり、幅Wが大きくなると応力が小さくなる。W=2μmのとき、応力は約0.125MPaである。幅Wがさらに大きくなると応力は大きくなりW=25μmのとき、応力は約0.22MPaである。
【0067】
図9(c)は、被覆部15bの幅Wおよび高さHを、長さL=W=Hとし、長さLを変えたときの応力を示す図である。L=H=W=2μmのとき、応力は約0.1MPaであり、幅Wおよび高さHが大きくなると応力が小さくなる。L=W=H=10μmのとき、応力は約0.05MPaである。幅Wおよび高さHがさらに大きくなると応力は大きくなりL=W=H=25μmのとき、応力は約0.07MPaである。
【0068】
図10(a)および
図10(b)は、シミュレーションにおける実施例1の幅Wおよび高さHに対する最大の応力の等高線を示す図である。
図10(a)は、横軸が幅Wであり、縦軸が幅Hである。
図10(b)は、
図10(a)の太破線の範囲の拡大図である。
図10(a)および
図10(b)内の黒丸ドットは、
図9(a)から
図9(c)においてシミュレーションした点を示す。
【0069】
図10(a)および
図10(b)に示すように、幅Wと高さHとをほぼ同じとすると、応力が小さくなる。幅Wおよび高さHが小さくなると応力は大きくなる。
図9(a)から
図10(b)より、幅Wに対する高さHの比H/Wは、1/10倍以上かつ10倍以下が好ましく、1/5倍以上かつ5倍以下がより好ましく、1/2倍以上かつ2倍以下がさらに好ましい。幅Wは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。高さHは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。
【0070】
図11(a)から
図11(c)は、シミュレーションにおける実施例1の変形例1の幅Wおよび高さHに対する最大の応力を示す図である。
図11(a)は、被覆部15bの幅Wを1μmとし、高さHを変えたときの応力を示す図である。Hが0.3μmのとき、応力は約0.6MPaであり、高さHが大きくなると応力が小さくなる。H=1μmのとき、応力は約0.33MPaである。高さHがさらに大きくなると応力は大きくなりH=10μmのとき、応力は約0.7MPaである。
【0071】
図11(b)は、被覆部15bの高さHを1μmとし、幅Wを変えたときの応力を示す図である。Wが0.3μmのとき、応力は約0.68MPaであり、幅Wが大きくなると応力が小さくなる。W=1μmのとき、応力は約0.34MPaである。幅Wがさらに大きくなると応力は大きくなりW=10μmのとき、応力は約0.68MPaである。
【0072】
図11(c)は、被覆部15bの幅Wおよび高さHを、長さL=W=Hとし、長さLを変えたときの応力を示す図である。幅Wおよび高さHが変わっても、応力は0.30MPa~0.35MPaであり、ほぼ一定である。
【0073】
図11(a)から
図11(c)の実施例1の変形例1ように、被覆部15bの面62を直線にした場合、
図9(a)から
図9(c)の実施例1に比べると、最大の応力は大きくなるものの、
図8(a)の比較例1における最大の応力よりは小さい。このように、実施例1およびその変形例1では、比較例1に比べ応力緩和の効果がある。実施例1における、応力はW=H付近が最も小さくなる傾向は、実施例1の変形例1でも同様である。
【0074】
以上のシミュレーション結果から、被覆部15bが開口27の側面に接する高さHは、被覆部15bの幅の1/10倍以上かつ10倍以下であることが好ましく、被覆部15bの高さHは1μm以上であり、被覆部15bの幅Wは1μm以上であることが好ましい。
【0075】
幅Wが大きすぎると、被覆部15bにより振動領域50の振動を阻害する。この観点から、平面視において、被覆部15bは領域52に重ならないことが好ましい。被覆部15bの幅Wは振動領域50の幅の1/20倍以下が好ましく1/100倍以下がより好ましい。
超音波トランスデューサ104では、基板10側の開口27の側面にストッパ層15は設けられていない。ストッパ層15は、ストッパ層15の一部がエッチングされ、薄膜部15c、遷移部15dおよび厚膜部15eを有している。厚膜部15eは基板10と活性層11とに挟まれるように設けられている。薄膜部15cは、平面視において、開口27の中央部に設けられている。遷移部15dは、厚膜部15eと薄膜部15cとの間に位置し、平面視において空隙28の周縁に位置する。薄膜部15cの厚さT1は厚膜部15eの厚さT2より小さい。薄膜部15cの厚さはほぼ均一であり、厚膜部15eの厚さはほぼ均一である。遷移部15dの厚さは、厚膜部15eから薄膜部15cに向かい徐々に小さくなる。遷移部15dの空隙28に露出する面62は湾曲する。平面視における薄膜部15cの領域は振動領域50である。平面視における遷移部15dの領域は領域54である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
応力を緩和する構造については、シミュレーションの結果を援用できる。よって、遷移部15dの高さHは、遷移部15dの幅Wの1/10倍以上かつ10倍以下が好ましく、1/5倍以上かつ5倍以下がより好ましく、1/2倍以上かつ2倍以下がさらに好ましい。幅Wは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。高さHは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。
幅Wが大きすぎると、遷移部15dにより振動領域50の振動を阻害する。この観点から、平面視において、遷移部15dは領域52に重ならないことが好ましい。遷移部15dの幅Wは振動領域50の幅の1/20倍以下が好ましく1/100倍以下がより好ましい。
超音波トランスデューサ106では、遷移部15dの厚さは、開口27の側面から開口27の内側に向けて直線的に小さくなる。すなわち、遷移部15dの空隙28に露出する面62は直線状である。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。