(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146264
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241004BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059058
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 浩子
(72)【発明者】
【氏名】永井 智雄
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB372
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB11
4C083BB21
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE05
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】鮮明な凹凸形状、柔らかな触感、しっとりとした使用感といった官能特質において優れた性質を有する固形粉末化粧料を得る。
【解決手段】次の成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を凹凸を有するモールドに充填し、その後溶媒を除去することによって、得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料。
(A)粉末成分
(B)油剤
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(E)水性媒体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を凹凸を有するモールドに充填し、その後溶媒を除去することによって、得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料。
(A)粉末成分
(B)油剤
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(E)水性媒体。
【請求項2】
前記(B)油剤の配合量が5~40質量%である請求項1に記載の固形粉末化粧料
【請求項3】
前記(D)化合物の配合量が0.5~15質量%である請求項1又は請求項2に記載の固形粉末化粧料
【請求項4】
次の成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を凹凸を有するモールドに充填する工程(1)及び、
溶媒を除去する工程(2)を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
(A)粉末成分
(B)油剤
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(E)水性媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ等の固形粉末化粧料においては、商品に高度な意匠性を付与するために、プレス成型する際のプレスヘッドに模様を施しておき、これを化粧品表面に圧着させることにより転写させる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、このような方法では、プレス後に化粧料をプレスヘッドから離型させるために紙や布等のシートを挟み込むことが必要となる。このため、プレスヘッドの模様もこのシートの厚みのために、多少丸みを帯びた不鮮明な形となってしまう。
【0004】
特許文献2では、このような問題を解決するため、模様が施されたモールドを準備し、ここに化粧料基材に溶媒を加えたスラリーを流しいれ、溶媒を除去することで固化させることで模様を直接転写し、製品とする方法が開示されている。このような製造方法においては、スラリーを調製することが必要となるが、スラリーの安定性を高めることが必要であり、この点で特許文献2の発明は不充分であり、製造工程において、スラリーの不安定性に由来する問題を生じないような工夫が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-215582
【特許文献2】特開2011-251956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、鮮明な凹凸形状、柔らかな触感、しっとりとした使用感といった官能特質において優れた性質を有する固形粉末化粧料を得ることを目的とする。さらに、スラリーの長期安定性に優れる化粧料処方とし、これによってスラリーの安定性を改善し、製造方法の調整することなく、良好な性能の固形粉末化粧料を安定して得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を凹凸を有するモールドに注入し、溶媒を除去することによって、得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料である。
(A)粉末成分
(B)油剤
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(E)水性媒体。
【0008】
前記(B)油剤の配合量が5~40質量%であることが好ましい。
【0009】
前記(D)化合物の配合量が0.5~15質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明は、
次の成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を凹凸を有するモールドに充填する工程(1)及び、
溶媒を除去する工程(2)を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法でもある。
(A)粉末成分
(B)油剤
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(E)水性媒体
【発明の効果】
【0011】
本発明の固形粉末化粧料は、製造工程において調整されるスラリーの安定性が優れるものであることから、安定生産を行うことが容易であり、更に、スラリーの状態で組成物保存しても分離等を生じることがない点で、安定した性質の化粧料を得ることができる点で好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の固形粉末化粧料の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の固形粉末化粧料は、凹凸を有するモールド中にスラリーを注入し、溶媒を除去することで製造するものである。これによって、化粧料表面に好適な凹凸形状を設けることができる。このような凹凸形状は、複雑な形状にも対応することができ、これによって好適な美観を有する固形粉末化粧料を得ることができる。
【0014】
このような優れた意匠性を有し、同時に化粧品としての性能にも優れた固形粉末化粧料は、非常に商品価値が高く、好ましいものである。
以下、本発明において使用する各成分について詳述する。
【0015】
(A)粉末成分
本発明において使用する粉末成分は特に限定されるものではなく、化粧品で使用される任意の粉末成分を使用することができる。具体的には例えば、マイカ、タルク、合成金雲母、雲母チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ガラス末、窒化ホウ素、カオリン、セリサイト等の体質顔料、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、グンジョウ、紺青等の無機着色顔料、赤色202号、赤色226号、黄色4号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ等の有機色素顔料、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆シリカフレーク、シリカ被覆アルミニウム等の光輝性着色顔料、シリカ、セルロース、酢酸セルロース、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粒子等、ナイロン末、架橋ポリウレタン、結晶セルロース、シリコーン末、金属石鹸、アミノ酸誘導体等の有機粒子等を含有することができる。
【0016】
本発明の固形粉末化粧料においては、特に、一部又は全部に偏平顔料を使用することが好ましい。このような偏平顔料は、メイクアップ化粧料において良好な化粧効果を得ることができるものであるが、これを多量に配合する固形粉末化粧料とした場合には、スラリーの安定性が低下する場合があった。本発明の固形粉末化粧料は、このような問題を生じることがなく、偏平顔料が多量に含まれた処方であっても、スラリーを安定に得ることができる。
【0017】
ここでの偏平顔料としては、マイカ、タルク、合成金雲母、雲母チタン、板状硫酸バリウム、ガラス末、アルミナフレーク、シリカフレーク等を挙げることができる。
【0018】
更に、これらの偏平顔料の表面に無機成分による表面被覆層を形成したパール顔料も使用することができる。
【0019】
上記粉末成分は、本発明の固形粉末化粧料の全量に対して50~98重量%の割合であることが好ましい。上記下限は、55重量%であることがより好ましく、60重量%であることが更に好ましい。上記上限は、90重量%であることがより好ましく、85重量%であることが更に好ましい。
【0020】
また、粉末成分全量に対して、偏平顔料を50~100重量%の割合で含有するものであってもよい。本発明の固形粉末化粧料は、その製造工程において、安定したスラリーを形成することができるため、スラリー中に安定に分散させることが比較的困難な偏平顔料を多量に顔料するものであっても、好適に分散させることができるものである。
【0021】
(B)油剤
本発明において使用する油剤は、特に限定されず、液状油、半固形油、ワックス等を挙げることができるが、なかでも、液状油であることが好ましい。液状油は、20℃のとき流動性を有するものであることが好ましい。
【0022】
このような液状油としては特に限定されず、流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー等の炭化水素油;オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、アボカド油等の油脂;イソステアリン酸等の高級脂肪酸;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサノイン、乳酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、セスキイソステアリン酸ソルビタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等のエステル油;オクチルドデカノール等の高級アルコール;ジメチコン、揮発性環状シリコーン油、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等のシリコーン系油剤;ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル、フッ素変性シリコーン等のフッ素系油剤等を使用することができる。
【0023】
上記油剤は、本発明の固形粉末化粧料の全量に対して5~40重量%の割合であることが好ましい。上記下限は、7重量%であることがより好ましく、10重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0024】
(C)ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1の多糖類
本発明においては、上記特定の多糖類を含有する。このような多糖類を使用することによって、スラリーを適度に増粘させることができ、適度な粘性を有する状態でモールド中に充填することができる。このため、良好な凹凸形状を形成することができ、更に、モールドから外すときにも凹凸形状が崩れることがない。
【0025】
本発明において、ジェランガム、キサンタンガム、グルコマンナン及びカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を選択的に使用する。このような特定の多糖類を使用することで、プランジャーポンプ、一軸偏心ねじポンプ等の充填ポンプを用いても良好に充填可能な適度な粘性を持ったスラリー状組成物が調整できるとともに、媒体除去後には皮膜化して固形粉末化粧料のバインダーとなり衝撃に強い性質を付与する。また、これら多糖類を使用した場合、媒体除去後の固形粉末化粧料の収縮や変形が抑えられる点でも好ましい。
【0026】
上記多糖類は、本発明の固形粉末化粧料の全量に対して0.5~2.0重量%の割合であることが好ましい。上記下限は、0.5重量%であることがより好ましく、0.8重量%であることが更に好ましい。上記上限は、2.0重量%であることがより好ましく、1.0重量%であることが更に好ましい。
【0027】
(D)ジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物
本発明においては、上記(D)に属する化合物を使用する。このような化合物を配合しない場合、本発明の化粧料においては表面が硬く塗布時の粉が取れない。上記(D)に属する化合物の少なくとも1種を配合することで、塗布時に適度な粉が取れる化粧料が得られる。このような化合物は、上記(C)成分の皮膜に対して可塑効果を持っていると推測される。
【0028】
化粧料で使用されるポリオール化合物としては多くの種類のものが知られているが、これらのなかでも、上述した化合物を使用することで、スラリーの安定性が高くなるという点でも好ましいものである。ジグリセリン、ポリグリセリンは、スラリーの粘度が高くなることでスラリーの安定性が高くなり、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤としての性能も有する化合物であることから、これによって、油性成分が乳化され、更に、粉末成分の水への分散性が高まるという点で、スラリーの安定性が得られると推測される。
【0029】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、水性媒体に溶解するものであれば特に限定されるものではないが、HLBが 12~17であることが、安定な水中油型乳化物を調整できる点でより好ましい。
【0030】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販のものを好適に使用することができる。本発明で使用することができる市販のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸ポリグリセリル-4(ラウリン酸ポリグリセリル-6との混合物:Innovacos社製 PolyAquol LW)、ラウリン酸ポリグリセリル-6(日光ケミカルズ社製 NIKKOL Hexaglyn 1-L)、ミリスチン酸ポリグリセリル-6(日光ケミカルズ社製 NIKKOL Hexaglyn 1-M)、ラウリン酸ポリグリセリル-10(日光ケミカルズ社製 NIKKOL Decaglyn 1-L)、ステアリン酸ポリグリセリル-10(日光ケミカルズ社製 NIKKOL Decaglyn 1-SV)等を挙げることができる。
【0031】
上記(D)に該当する化合物は、本発明の固形粉末化粧料の全量に対して2.0~15重量%の割合であることが好ましい。上記下限は、4重量%であることがより好ましい。上記上限は、8重量%であることがより好ましい。
【0032】
(E)水性媒体
本発明の固形粉末化粧料は、上述した(A)~(D)の成分に水性媒体を添加し、スラリーを調製し、これを使用することによって得られた化粧料である。
水性媒体とは、水、水と任意の割合で混合させることができる溶媒、又は、これらの混合物を意味する。水と任意の割合で混合させることができる溶媒としては、揮発性の溶媒であることが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができる。混合溶媒を使用する場合の混合割合は特に限定されず、任意の割合で混合することができる。
【0033】
製造工程において化粧料基剤に加える水性媒体の割合は、化粧料基剤100質量部に対して20~200質量部が好ましく、より好ましくは30~150質量部である。水性媒体の添加量が20質量部未満であると、粉末が充分に水性媒体に濡れず、不均一となり成型性が悪くなることがある。水性媒体の添加量が200質量部を超えると、水性媒体を充分に揮散させるために要する時間が長くなり生産効率が低下する傾向にある。
【0034】
本発明のメイクアップ化粧料では、更に、化粧料において一般に用いられるその他の成分、例えば、多価アルコールのような水性成分、界面活性剤、薬効成分、着香剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、懸濁剤、安定化剤、湿潤剤、抗酸化剤、pH調整剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤等を配合するものであってもよい。これらの成分の添加時期は特に限定されない。
【0035】
本発明の固形粉末化粧料は、上記(A)~(D)及び水性媒体を含有するスラリー状組成物を調製し、これを凹凸形状を有するモールドに充填し、次いで水性媒体を除去して固化する方法が好適である。このような方法を採用することで、良好な凹凸形状を安定して形成することができ、優れた性能を有する固形粉末化粧料とすることができる。
【0036】
上記方法は、より具体的には例えば、以下のようにして行うことができる。なお、以下の製造方法も発明の一つである。
まず、上記(A)~(D)を含有する化粧料原料を常法によって均一に混合して化粧料基剤を調整する。次いで、この化粧料基剤を水性媒体と混合してスラリー状組成物とする。次いで、このスラリー状組成物をモールドに充填する。モールドは例えば、シリコーン樹脂、エラストマー樹脂等からなるものが好ましく、製造する化粧品に対応した形状を有する凹凸を底面に有するものを使用することができる。
【0037】
このようなモールドにスラリー状組成物を流し込み、その後水性媒体を除去することで固形化するものである。水の除去は常法、例えば、自然乾燥、加温乾燥、温風乾燥、真空吸引等によって行われる。
【0038】
このような化粧料は、その後、モールドから外して、容器上に載置するなどして最終製品の形態とすることができる。
このような製造方法を示す模式図を
図1に示した。本発明の固形粉末化粧料は、まず、凹凸を有するモールド中にスラリー状組成物を流し込み、溶媒を除去して固化させた後で、モールドから取り外す。これによって、モールドが有する凹凸形状が転写されて、表面に凹凸を有する意匠性に優れた固形粉末化粧料とすることができる。
【実施例0039】
以下に、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、単位の記載のない配合量はすべて質量%を表す。
【0040】
(製造実施例)
本発明の化粧料の製造にあたり、充填用スラリー状組成物を下記の手順で調整した。
製造実施例
(i)多糖類水溶液の調整
実施例、比較例に示した重量割合にて、多糖類(C成分)に水性媒体を加えてディスパ-分散し、多糖類水溶液を調整した。
(ii)油剤混合液の調整
油剤(B成分)とジグリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(D成分)をディスパ-で混合後、(i)を加え、さらにディスパ-にて分散混合し油剤混合液を調整した。
(iii)充填用スラリーの調整
上記(ii)の油剤混合液をディスパ-にて攪拌しながら粉末成分(A成分)を徐々に加えながら攪拌混合した後、自転公転ミキサー、真空脱泡装置など公地の脱泡装置にて脱泡し、充填用スラリー組成物とした。
【0041】
(評価方法)
得られた化粧料を以下の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
(1)モールドからの離型性
直径53mm、深さ5mm円柱形の充填部分を持つシリコン製モールドにスラリーを12g充填し、40℃で24時間乾燥後、化粧料を取り出した後のモールドに付着した化粧料の量を測定し、離型性を評価した。
<評価基準>
〇:0.05g未満の中身が付着している
△:0.05g以上0.1g未満の中身が付着している
(2)成型性
40℃、24時間乾燥後、モールドから取り出した乾燥成形物の状態を目視で評価した。
<評価基準>
○:収縮、湾曲などの変形がなく、型どおりの成形物
△:やや変形した成形物
×:ひどく変形した成形物
(3)使用感
パネラー20名に実施例及び比較例の化粧料を使用してもらい、ブラシで肌に塗布した際の使用感(粉の取れる量、肌上の滑らかな伸び広がり方)について各自が以下の評価基準に従って5 段階評価し、化粧料毎に評点を付し、さらに全パネラーの評点の平均点を以下の4 段階の判定基準に従って判定した。
<評価基準>
評価結果 : 評点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
<判定基準>
評点の平均点 : 判定
4 . 5 以上 : ◎
3 . 5 以上~ 4 . 5 未満 : ○
1 . 5 以上~ 3 . 5 未満 : △
1 . 5 未満 : ×
(4)耐衝撃性
実施例及び比較例の化粧料を化粧料容器と接着するために乾燥成型物底面に設置されたプラスチック製メッシュを介して、ホットメルトにて乾燥成型物を化粧料容器内に装填した。この状態で40cmの高さから塩ビ板上に正立方向で自由落下させ、落下後の中身状態を目視にて以下の基準に従って評価した。
<評価基準>
内容 : 評点
15回落下しても割れなかった : 4点
10回以上15回未満の落下で割れが発生した : 3点
5回以上10回未満の落下で割れが発生した : 2点
5回未満の落下で割れが発生した : 1点
<判定基準>
n=5の評点の平均点 : 判定
3.5以上 : ◎
3.0以上~3.5未満 : ○
2.0以上~3.0未満 : △
2.0未満 : ×
(5)スラリーの安定性
目盛り付きのポリプロピレン製遠沈管(内径15.2mm高さ121mm、容量15ml)にスラリーを5ml入れ、3000rpm、5分間遠心分離した。スラリーから離液した水の量により、スラリー安定性を評価した。
<評価基準>
〇 : 離液が認められない
△ : 0.5ml未満の離液が認められる
× : 0.5ml以上の離液が認められる
【0042】
【0043】
【0044】
なお、表1及び表2の中の各成分は、以下のものを使用した。
*1 PDM-40L(トピー工業社製)
*2 Gemtone Tan Opal(BASF社製)
*3 Ronastar Red Lights(Merck社製)
*4 マイクログラス メタシャイン MT1080TY(日本板硝子社製)
*5 セリサイト FSE(三信鉱工社製)
*6 コスモール222(日清オイリオ社製)
*7 サラコス913(日清オイリオ社製)
*8 O.D.O(日清オイリオ社製)
*9 シリコーンKF-96A-20cs(信越化学工業社製)
*10 ノムコートW(日清オイリオ社製)
*11 KELCOGEL CG-LA(CP Kelco Inc.製)
*12 KELTROL CG LAX-T(CP Kelco Inc.製)
*13 レオレックスOne(清水化学社製)
*14 GENUVISCO type PJ-JPE(CP Kelco Inc.製)
*15 YODOSOL GH256F(Nouryon社製)
*16 ゴーセノール EG-40C(三菱ケミカル社製)
*17 ジグリセリン801(坂本薬品工業社製)
*18 PGL-S(坂本薬品工業社製)
*19 PolyAquol LW(Innovacos社製)
*20 NIKKOL Decaglyn 1-L(日光ケミカルズ社製)
*21 NIKKOL Decaglyn 1-SV(日光ケミカルズ社製)
*22 RG・コ・P(日油社製)
*23 SPAN 120(Croda社製)
*24 ノニオン LT-20(日油社製)
【0045】
表1及び表2の結果から、本発明の固形粉末化粧料は、製造工程において調製されるスラリーの安定性に優れる。さらに、得られた化粧料は、使用感、耐衝撃性において優れた性能を有する。