(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146277
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】フィラー配列フィルム及びその製造方法並びに接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241004BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20241004BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20241004BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241004BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20241004BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
C08L101/00
H01R11/01 501Z
H01L33/62
C08K3/013
H01L21/60 311Q
H01B5/16
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059074
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一夢
(72)【発明者】
【氏名】野田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】白岩 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
【テーマコード(参考)】
4J002
5F044
5F142
5G307
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC021
4J002BE061
4J002BG021
4J002CD001
4J002CD051
4J002CF001
4J002CH081
4J002CK021
4J002CM041
4J002CP031
4J002DE076
4J002DE136
4J002DE226
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002FD016
4J002GP00
5F044KK02
5F044LL13
5F044QQ00
5F142AA33
5F142BA32
5F142CA11
5F142CB23
5F142CD02
5F142DB17
5F142FA34
5F142GA02
5G307HA02
5G307HB03
5G307HB05
5G307HB06
5G307HC01
5G307HC02
(57)【要約】
【課題】μLEDディスプレイを、異方性導電フィルムとして機能することができるフィラー配列フィルムを用いて作成する際に、作成に必要なフィラー配列フィルムに対し、レーザーリフトオフ法による個片化を不要とし且つ簡便な転写型を用いて形成できる構造を付与する。
【解決手段】フィラー保持用絶縁性樹脂層とフィラーとを有するフィラー配列フィルムは、フィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とが形成されており、凸部に、複数のフィラーからなるフィラー群が少なくとも一つ配置されている。凸部は、規則配列していることが好ましい。フィラー群内において、複数のフィラーが規則配列していることが好ましい。凹部にはフィラーが配置されていないことが好ましい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー保持用絶縁性樹脂層とフィラーとを有するフィラー配列フィルムであって、
フィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とが形成されており、
前記凸部に、複数のフィラーからなるフィラー群が少なくとも一つ配置されているフィラー配列フィルム。
【請求項2】
前記フィラー群を構成する各フィラーが、凸部の表面に、又は凸部を構成するフィラー保持用絶縁性樹脂層に少なくとも一部が埋め込まれた状態で、配置されている請求項1記載のフィラー配列フィルム。
【請求項3】
凸部が規則配列している請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項4】
フィラー群内において、複数のフィラーが規則配列している請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項5】
凹部にはフィラーが配置されていない請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項6】
凹部が貫通している請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項7】
フィラー保持用絶縁性樹脂層の少なくとも片面に、別の絶縁性樹脂層が積層されている請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項8】
凹部が貫通し、貫通した凹部により凸部が他の凸部から切り離されている請求項7記載のフィラー配列フィルム。
【請求項9】
該別の絶縁性樹脂層が、ブラックマトリックス形成用絶縁性樹脂層である請求項7記載のフィラー配列フィルム。
【請求項10】
請求項1記載のフィラー配列フィルムの製造方法であって、以下の工程A~工程C:
(工程A)
剥離処理が施されている剥離フィルム上に、フィラー保持用絶縁性樹脂層を形成する工程;
(工程B)
フィラー保持用絶縁性樹脂層に対し、フィラー配列フィルムの凸部に対応した凹部を有する押し型を当接させて熱プレスを行うことによりフィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とを形成する工程;及び
(工程C)
凸部の天面に、転写用基材の片面に複数のフィラーが配置されたフィラー転写シートのフィラー配置面を対向させ、転写用基材側から押圧することにより、凸部の天面にフィラーを転写する工程;
を有するフィラー配列フィルムの製造方法。
【請求項11】
工程Cに続き、以下の工程D:
(工程D)
凸部の天面に転写された各フィラーをその少なくとも一部が埋め込まれるようにフィラー保持用絶縁性樹脂層に埋め込む工程;
を更に有する請求項10記載のフィラー配列フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記押し型が、凹型単板である請求項10又は11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1記載のフィラー配列フィルムを介して第1物品が第2物品に接続してなる接続構造体。
【請求項14】
第1物品が片面に透明電極が配置された透明ディスプレイ基板であり、第2物品が片面に電極が形成されたμLEDであり、フィラー配列フィルムの凸部に配置されたフィラーが導電粒子であり、フィラー配列フィルム自体が導電フィルムである請求項13記載の接続構造体。
【請求項15】
第1物品と第2物品との間に、請求項1記載のフィラー配列フィルムを挟持させ、圧着することを特徴とする接続構造体の製造方法。
【請求項16】
第1物品が片面に透明電極が配置された透明ディスプレイ基板であり、第2物品が片面に電極が形成されたμLEDであり、フィラー配列フィルムの凸部に配置されたフィラーが導電粒子であり、フィラー配列フィルム自体が導電フィルムである請求項15記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー配列フィルム及びその製造方法並びに接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ディスプレイとして、自発光型のμLED(Micro light-emitting diode)をディスプレイ用配線基板にマストランスファーさせてマトリックス状に配置したディスプレイが、比較的小型のスマートフォーン用ディスプレイや、比較的大型のTV用ディスプレイ、サイネージ用ディスプレイとして注目されている。μLEDは、通常、片面に一対の電極が配置されているものであるが、微小電子部品であり、電極間スペースが極めて狭いファインピッチとなっている。
【0003】
このような微小のμLEDを配線基板に接続する手法として、ハンダリフロー法や共晶法等の手法ではμLEDの電極レベルのファインピッチに対応が難しく、膨大な数のμLEDを均一且つ確実にマストランスファーすることも難しいため、ファインピッチ及びマストランスファーの双方に対応可能なフィラー配列フィルムの一種である導電フィルムを用いた導電接続方法や異方性導電フィルムを用いた異方性導電接続方法に大きな注目が集まっている。
【0004】
例えば、μLEDに適用可能な異方性導電フィルムとして、絶縁性樹脂シートの全面に、複数の導電粒子からなる導電粒子群を互いに離隔して規則配列させたものや(特許文献1)、いわゆるレーザーリフトオフ法によりマイクロLEDサイズに個片化した異方性導電フィルムとして機能し得るフィラー配列フィルムが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-103476号公報
【特許文献2】特開2022-151822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の異方性導電フィルムの場合、複数の導電粒子からなる導電粒子群をμLEDに対応して配線基板に転写するための転写型を予め作成することが必要となるが、異方性導電フィルムを適用すべきμLEDディスプレイのμLEDの規則配列パターンが変化すると、その都度、新たな転写型を作成する必要がある。しかも、その場合にも、導電粒子群内の複数の導電粒子の規則配列パターンに変動がなくても、転写型に導電粒子群を構成する導電粒子の規則配列パターンを作り込む手間が生ずるという問題があった。また、特許文献2の異方性導電フィルムとして機能し得るフィラー配列フィルムの場合、転写型が必要となることはないものの、レーザーリフトオフ法を実施するために高額なレーザーリフトオフ装置を用意する必要があり、また、ロールツーロールでの加工ができないためタクトタイムが増長しかねず、また、硬化性樹脂から構成した場合には、レーザーの輻射熱による意図しない硬化の発生、個片のエッジ形状のゆがみや個片エッジの欠けの発生が懸念される。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決しようとするものであり、μLEDディスプレイ等の多数の微細な光学素子をディスプレイ基板に配列した画像表示装置を、異方性導電フィルムとして機能することができるフィラー配列フィルムを用いて作成する際に、作成に必要なフィラー配列フィルムに対し、上述したレーザーリフトオフ法に代表される個片化工程を不要とし且つ簡便な転写型を用いて形成できる構造を付与することを目的とする。なお、本発明の課題や構成、効果について、μLEDを例にとり説明するが、光学素子としてμLEDより大きいもの(ミニLED)と判断できるものであっても、本発明は同様の効果を発揮できる。また光学素子以外の微小部品に適用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フィラー保持用絶縁性樹脂層とフィラーとを有するフィラー配列フィルムのフィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とを設け、その凸部に複数のフィラーからなるフィラー群を配置することにより、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、フィラー保持用絶縁性樹脂層とフィラーとを有するフィラー配列フィルムであって、
フィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とが形成されており、
該凸部に、複数のフィラーからなるフィラー群が少なくとも一つ配置されているフィラー配列フィルムを提供する。フィラー群を構成する各フィラーは、凸部の天面に、又は凸部を構成するフィラー保持用絶縁性樹脂層に少なくとも一部が埋め込まれた状態で、配置されることが好ましい。このフィラー配列フィルムにおいて、凸部が規則配列していることが好ましく、フィラー群内において、複数のフィラーが規則配列していることが好ましい。また、凹部にはフィラーが配置されていないことが好ましい。そのような凹部はフィラー保持用絶縁性樹脂層を貫通していてもよい。フィラー保持用絶縁性樹脂層の少なくとも片面に、別の絶縁性樹脂層が積層されていてもよく、その場合、貫通した凹部により、凸部が他の凸部から切り離されてもよい。また、更に別の絶縁性樹脂層が積層されていてもよい。このように積層される別の絶縁性樹脂層として、ブラックマトリックス形成用絶縁性樹脂層を好ましく採用することができる。
【0010】
また、本発明は、上述の本発明のフィラー配列フィルムの製造方法であって、以下の工程A~工程C:
(工程A)
剥離処理が施されている剥離フィルム上に、フィラー保持用絶縁性樹脂層を形成する工程;
(工程B)
フィラー保持用絶縁性樹脂層に対し、フィラー配列フィルムの凸部に対応した凹部を有する押し型を当接させて熱プレスを行うことによりフィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部と凸部とを形成する工程;及び
(工程C)
凸部の天面に、転写用基材の片面に複数のフィラーが配置されたフィラー転写シートのフィラー配置面を対向させ、転写用基材側から押圧することにより、凸部の天面にフィラーを転写する工程;
を有するフィラー配列フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
このフィラー配列フィルムの製造方法では、工程Cに続き、更に、以下の工程D:
(工程D)
凸部の天面に転写された各フィラーをその少なくとも一部が埋め込まれるようにフィラー保持用絶縁性樹脂層に埋め込む工程;
を有することが好ましい。
【0012】
更に、本発明は、第1物品に上述の本発明のフィラー配列フィルムを介して第2物品を接続した接続構造体であって、
第2物品とフィラー配列フィルムの凸部とが対応(好ましくは一対一で対応)している接続構造体を提供する。この場合、第1物品が片面に透明電極が配置された透明ディスプレイ基板であり、第2物品が片面に電極が形成されたμLEDであり、フィラー配列フィルムの凸部に配置されたフィラーが導電粒子であり、フィラー配列フィルム自体が異方性導電フィルムとして機能することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、第1物品と第2物品との間に、上述の本発明のフィラー配列フィルムを、好ましくは第2物品とフィラー配列フィルムの凸部とが対応(好ましくは一対一で対応)するように、挟持させ、圧着、例えば熱圧着することを特徴とする接続構造体の製造方法を提供する。この場合、第1物品が片面に透明電極が配置された透明ディスプレイ基板であり、第2物品が片面に電極が形成されたμLEDであり、フィラー配列フィルムの凸部に配置されたフィラーが導電粒子であり、フィラー配列フィルム自体が導電フィルムあるいは異方性導電フィルムとして機能することが好ましい。なお、フィラー配列フィルムについて、異方性導電フィルムを例にとり説明する場合があるが、その説明の内容は、導電フィルムを例にとり説明する場合にも適用することができる。また、対象となる第2物品として、μLEDに代えてミニLEDなどの別の微小な発光素子や微小な部品(電子部品)を適用することもできる。第2物品の大きさの一例として、1辺の最大長が200μm以下のものが挙げられる。10~30μm角の手作業が極めて困難な大きさになることもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィラー配列フィルムは、フィラー保持用絶縁性樹脂層とフィラーとを有し、フィラー保持用絶縁性樹脂層の片面にそれぞれ複数の凹部と凸部とを有している。各凸部には、複数のフィラーからなるフィラー群が少なくとも一つ配置されている。この凸部については、フィラー配列フィルムで接続すべきμLED等の微小電子部品と基本的に一対一で対応するように作成することができる。しかも、フィラーが全面に規則配列しているフィラー転写シートから、凸部の天面にのみにフィラーを転写させ、他方、凹部底には、フィラーを配置しないようにすることができる。従って、ファインピッチのμLED等の微小電子部品を配線基板等に異方性導電接続する場合に、ショートを懸念することなく、フィラー配列フィルムの凸部部分を実質的に個片のフィラー配列フィルムとして機能させて異方性導電接続することができる。また、凹部には、薄い絶縁性樹脂層を残存させることができるので、取り扱い中に凸部が脱落し難いという利点もある。
【0015】
また、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法では、フィラー保持用絶縁性樹脂層に対し、フィラー配列フィルムの凸部に対応した凹部を有する押し型を当接させて熱プレスを行うことによりフィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に複数の凸部と凹部とを形成する。このため、押し型により、フィラー配列フィルムの凸部の天面の平面形状と表面積、凸部の断面形状と高さとを比較的容易に形成することができる。しかも、この押し型には、微小なフィラーを規則配列させるための微細な孔を作り込む必要がないことから、押し型を低コストで作成することが可能となっている。また、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法では、押し型により形成した凸部のみに、全面にフィラーが配置されている従来のフィラー転写シートを用いてフィラーを転写することができる。つまり、フィラー配列フィルムのフィラー群の配列が変更された場合であっても、比較的容易に且つ低コストで作成できる押し型を新たに作成すればよいことになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明のフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のフィラー配列フィルムの凸部天面におけるフィラー群の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明のフィラー配列フィルムの凸部天面におけるフィラー群の説明図である。
【
図8】
図8は、本発明のフィラー配列フィルムの別態様の概略断面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明のフィラー配列フィルムの別態様の概略断面図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明のフィラー配列フィルムの別態様の概略断面図である。
【
図9C】
図9Cは、本発明のフィラー配列フィルムの別態様の概略断面図である。
【
図10】
図10は、本発明のフィラー配列フィルムの別態様の概略断面図である。
【
図11】
図11は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図12】
図12は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図13】
図13は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図14】
図14は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図15】
図15は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図16】
図16は、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程説明図である。
【
図17A】
図17Aは、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程A~Cにより得られたフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図17B】
図17Bは、本発明のフィラー配列フィルムの製造方法の工程A~Dにより得られたフィラー配列フィルムの概略断面図である。
【
図18】
図18は、本発明のフィラー配列フィルムの凸部側表面の光学顕微鏡写真である。
【
図19】
図19は、押し型1を用いて作成した異方性導電フィルムの部分拡大写真である。
【
図20】
図20は、押し型2を用いて作成した異方性導電フィルムの部分拡大写真である。
【
図21】
図21は、評価用接続構造体のガラス基板の配線パターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<フィラー配列フィルム>
図1Aに示すように、本発明のフィラー配列フィルム10は、フィラー保持用絶縁性樹脂層1とフィラー2とを有する。フィラー保持用絶縁性樹脂層1の片面には、凹部3と凸部4とが、好ましくはそれぞれ複数個形成されている。凸部4は、フィラー2を保持する部分であり、凸部4には、複数のフィラー2からなるフィラー群20が少なくとも一つ配置されている。
図1Aでは、凸部4の表面にフィラー群20を構成するフィラー2が配置されているが、
図1B~1Dに示すように、フィラー群20を構成する各フィラー2が、凸部4を構成するフィラー保持用絶縁性樹脂層1に少なくとも一部が埋め込まれるように配置されていてもよい。例えば、
図1Bでは、フィラー2のほぼ半分がフィラー保持用絶縁性樹脂層1に埋まっており、
図1Cでは、フィラー2の端部がフィラー保持用絶縁性樹脂層1と面一になるように埋まっており、
図1Dでは、フィラー2がフィラー保持用絶縁性樹脂層1に露出することなく完全に埋まっている。このような本発明のフィラー配列フィルム10の凸部にフィラーを配置する際に、その凹部(非凸状部)の内底面にはフィラーが転写されない。これは、凸部にフィラーを配置するために使用する転写型(特許第6187665号明細書)の開口に収容されたフィラーや、後述する
図16のフィラー転写シートのフィラー配置面に配置されたフィラーが、フィラー転写時にフィラー配列フィルムの凹部底に届かない(もしくは届き難い)ためである。また、他の要因として、フィラー配列フィルムの凹部底の樹脂厚が凸部の樹脂厚よりも非常に薄くなっているため、凹部の粘着力が大きく低下し、フィラーが転写され難くなるためである。このため、各凸部が実質的に個片状のフィラー配列フィルムとして機能している。従って、フィラーが導電粒子である場合には、フィラー配列フィルムは、実質的に個片状の異方性導電フィルムとして機能することができる。
【0019】
なお、フィラー配列フィルムの「配列」には二つの意味がある。一つの意味は、
図1に示すように、凹部3から立ち上がった凸部4自体がランダム配列又は規則配列(例えば、正方格子配列、六方格子配列等であるが、格子配列に限定されるものではない)していることであり、もう一つの意味は、凸部4に配置されたフィラー群20内のフィラー2自体がランダム配列又は規則配列(例えば、正方格子配列、六方格子配列等)していることである。凸部4の配列及びフィラー2の配列は、それぞれ規則配列(特に六方格子配列)していることが、フィラー捕捉性と製造コストの観点から好ましい。
【0020】
(フィラー保持用絶縁性樹脂層1)
本発明のフィラー配列フィルム10を構成するフィラー保持用絶縁性樹脂層1としては、従来の異方性導電フィルムや導電フィルム等におけるフィラーを保持する絶縁性樹脂層と同様の構成とすることができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物から形成することができる。このような熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは、ゴム成分と、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、無機フィラーとを含有するものである。この無機フィラーは、凸部4に配置されるフィラーとは異なるものであり、フィラー保持用絶縁性樹脂層1に均一に分散されるものである。なお、フィラー保持用絶縁性樹脂層1は、必要に応じて、発明の効果を損なわない範囲で公知の他の添加剤を含有することができる。また、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の層厚は、凹部3及び凸部4の形状や表面積等に応じて適宜決めることができるが、フィラーの平均粒子径と同等以上2倍以下であることが好ましい。層厚が厚すぎると、凹部3の底厚が薄くならず、フィラーが配列されてしまう可能性や、凹部3の光透過率が低下することが懸念される。また、フィラー配列フィルムで物品同士を接合した場合に、離隔していた凸部4同士がくっついてしまうことが懸念される。反対に、薄すぎる場合には、凸部4の樹脂量が不足し、意図した形状に形成できないことが懸念される。なお、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の一例として、一般的な異方性導電フィルムのように粘着性を有した接着フィルムや接続フィルムとして機能するものを挙げることができる。
【0021】
*ゴム成分
熱硬化性樹脂組成物が含有するゴム成分は、フィラー保持用絶縁性樹脂層にクッション性(衝撃吸収性)を付与するための成分であり、クッション性の良好なエラストマーであれば特に限定されるものではなく、具体例として、例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)などを挙げることができる。これらの中でも、アクリルゴム、シリコーンゴムから選択される1種以上であることが好ましい。ゴム成分の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0022】
*膜形成樹脂
膜形成樹脂としては、膜形成性の観点から、好ましくは約10000以上80000以下の重量平均分子量のフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を用いることが好ましい。膜形成樹脂の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0023】
*熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができ、特にエポキシ化合物が好ましい。これらの化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーであってもよい。熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。
【0024】
熱硬化性樹脂として使用できるエポキシ化合物としては、分子内に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等であってもよく、ウレタン変性のエポキシ樹脂であっても構わない。これらの中でも、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば三菱ケミカル株式会社製の商品名「YL980」を挙げることができる。熱硬化性樹脂としてエポキシ化合物を使用する場合、エポキシ化合物の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0025】
*熱硬化剤
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂に応じて選択され、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ化合物である場合には、熱アニオン重合開始剤又は熱カチオン重合開始剤を好ましく選択することができ、レーザー光による硬化反応を抑制し、熱により速硬化させることができる熱カチオン重合開始剤をより好ましく選択することができる。熱硬化剤の含有量は、熱硬化剤の種類や熱硬化性樹脂の種類等に応じて決定することができる。熱硬化剤の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0026】
なお、エポキシ化合物に好ましく適用可能な熱カチオン重合開始剤としては、熱によりカチオン重合型化合物をカチオン重合させ得る酸を発生するものであり、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができる。これらの中でも、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。芳香族スルホニウム塩系の重合開始剤の具体例としては、例えば三新化学工業株式会社製の商品名「サンエイドSI-60L」を挙げることができる。このような熱カチオン重合開始剤の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。
【0027】
*無機フィラー
熱硬化性樹脂組成物中の無機フィラーは、フィラー保持用絶縁性樹脂層1のデュロメータA硬度、周波数200Hzにおける貯蔵弾性率、及び硬化後の貯蔵弾性率を調整する目的で用いられるものであり、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、シランカップリング剤、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等を用いることができる。無機フィラーは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0028】
無機フィラーの含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。特に、ゴム成分の含有量が、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対して2質量部以上10質量部以下である場合に、無機フィラーの含有量を8質量部以上12質量部以下とすることにより、所望のデュロメータA硬度、周波数200Hzにおける貯蔵弾性率、及び硬化後の貯蔵弾性率を容易に実現可能となる。
【0029】
(凸部4)
凸部4はフィラー2を保持するものであり、好ましくはその天面又は凸部4を構成するフィラー保持用絶縁性樹脂層1にフィラー2を保持するものである。このような凸部4は、μLEDなどの第2物品を、配線基板などの第1物品に接合する場合に、第2物品に対応した位置に形成されていることが好ましい。この場合、第2物品と凸部4とは1:1で対応することが好ましいが、一つの凸部4が2以上の第2物品に対応してもよい。
【0030】
凸部4の平面形状と大きさ(面積)とは、接合すべき第2物品もしくはその電極の平面形状と大きさとにほぼ合致させることが好ましい。例えば、第2物品がμLEDである場合、凸部4の平面形状と大きさとは、μLEDの外形もしくはμLED内の一つの電極と略同一とすることが好ましい。例えば、一辺が5μm以上100μm以下であってもよく、一辺が10μm以上30μm以下の矩形であることが好ましい。また、
図1A~1Dでは、凸部4の側面は凹部3から垂直に立ち上がっているが、
図2に示すようなテーパーを有していてもよく、
図3に示すように、階段状になっていてもよい。なお、凸部4の平面形状と大きさ(面積)について、接続対象物である第2物品としてμLEDを例にとり説明したが、ミニLEDなどの比較的大きい物品を接続対象とすることもできる。接続対象物の大きさに合わせて凸部4の大きさを調整すればよい。1辺が100μm以上の外形の部品であっても、発明の効果を損なわなければ接続対象物となる。
【0031】
凸部4の高さt
0(
図1A参照)は、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の厚みに相当し、フィラーの配列の難易度や第2物品を接合する場合の強度等を考慮すると、通常、1μm以上、好ましくは2μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下であり、フィラー2の平均粒子径の1倍以上2倍以下であることが好ましい。凸部4の高さを接続する部品のバンプ高さより大きくし、且つ接続する部品の厚みとバンプ高さの合計よりも小さくすることで、接続する部品がフィラー保持用絶縁性樹脂層1に完全に埋没することなく、部品の周辺部にフィレットを形成することができる。なお、凸部4の平面形状や、大きさ(面積)や高さ、凸面と底面の関係などは、全て揃っていることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
凸部4の個数密度[個/mm2]は、フィラー配列フィルムの使用目的や接合対象物等に応じて最適な個数密度を適宜選択することができる。一般的には、50[個/mm2]以上10000[個/mm2]以下であるが、フィラー配列フィルムを異方性導電フィルムもしくは導電フィルムとして使用し、μLEDの実装に適用する場合には、好ましくは100[個/mm2]以上、より好ましくは300[個/mm2]以上、好ましくは3000[個/mm2]以下、より好ましくは1500[個/mm2]以下である。また、凸部4間の最小距離は、粒子転写工程や、部品実装での離間する個片同士の付着を回避する点から5μm以上であることが好ましい。
【0033】
一つの凸部4に設けられるフィラーの個数は、特に制限はないが、下限は2個以上が好ましく、上限は1500個以下であることが好ましい。微小な外形の部品に設けられた最大2個の電極に捕捉されることを想定すると、このような範囲とすることが好ましい。
【0034】
(凹部3)
凹部3は、凸部4の形成に際し反射的に形成されるものであり、凸部4を隣接する凸部4から離隔させる機能を有する。凹部3の深さt
1及び巾w
1には特に制限はなく、フィラー配列フィルムで接合すべき第2物品の形状や大きさ等を考慮して適宜決定することができる。
図1A~1Dでは、凹部3の内壁は垂直になっており、底は平坦になっているが、それに限定されるものではない。
図4に示すように、上広がりのテーパーを有してもよく、
図5に示すように、階段状になっていてもよい。また、
図4及び
図5の場合、凸部4の側面を
図2または
図3に示したようにしてもよい。
【0035】
また、凹部3の底部の厚みを薄くすると、その部分の光透過性が向上し、凸部4と光学的に識別が容易となり、凸部4を実質的に個片状にフィラー配列フィルム10として取り扱いやすくなる。なお、凸部4がフィラー配列フィルム10から完全に切り離されないようにするかぎり、凹部3の底面の少なくとも一部が貫通していてもよい。凹部3を貫通させて完全に個片化させた凸部4は、フィラー配列フィルム10の一部として取り扱うことができなくなるからである。
【0036】
(フィラー2)
凸部4に配置されるフィラー2としては、公知のフィラー配列フィルムに用いられている各種フィラーを、フィラー配列フィルムの用途(導電フィルム、異方性導電フィルム、接着フィルム、光学フィルム、強磁性フィルム等)に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来たさない絶縁処理が施されていてもよい。上述の用途別に挙げたフィラーは、当該用途に限定されるものではなく、必要に応じて他の用途のフィラー配列フィルムが含有してもよい。また、各用途のフィラー配列フィルムでは、必要に応じて2種以上のフィラーを併用することができる。
【0037】
フィラー2の形状は、フィラー配列フィルムの用途に応じ、球形、楕円球、柱状、針状、それらの組み合わせ等から適宜選択して定められる。フィラー配置の確認が容易になり、均等な状態を維持し易い点から、球形が好ましい。特に、異方性導電フィルムでは、導電粒子が、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方性導電フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0038】
ここで、略真球とは、次式で算出される真球度が70~100であることをいう。
【0039】
【0040】
上記式中、Soはフィラーの平面画像における該フィラーの外接円の面積であり、Siはフィラーの平面画像における該フィラーの内接円の面積である。
【0041】
この算出方法では、フィラーの平面画像をフィラー配列フィルムの面視野および断面で撮り、それぞれの平面画像において任意のフィラー100個以上(好ましくは200個以上)の外接円の面積と内接円の面積を計測し、外接円の面積の平均値と内接円の面積の平均値を求め、上述のSo、Siとすることが好ましい。また、面視野及び断面のいずれにおいても、真球度が上記の範囲内であることが好ましい。面視野および断面の真球度の差は20以内であることが好ましく、より好ましくは10以内である。フィラー配列フィルムの生産時の検査は主に面視野であり、物品に熱圧着した後の詳細な良否判定は面視野と断面の両方で行うため、真球度の差は小さい方が好ましい。なお、この真球度はフィラー単体であるなら、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることもできる。
【0042】
フィラーの粒子径Dは、フィラー配列フィルムの用途に応じて適宜定められる。例えば、異方性導電フィルムでは、配線高さのバラツキに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上、より好ましくは2.5μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは9μm以下である。接続対象物によっては、9μmより大きいものが適する場合もある。
【0043】
なお、フィラー配列フィルム10の凸部4に配置させる前のフィラーの粒子径Dは、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。粒度分布測定装置の一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。一方、フィラー配列フィルムにおけるフィラーの粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、粒子径Dを測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、フィラーの形状が球形でない場合、最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒子径Dとすることができる。
【0044】
本発明では、フィラー配列フィルムにおけるフィラーの粒子径Dのバラツキを、CV値(標準偏差/平均)20%以下とする。CV値を20%以下とすることにより、フィラー配列フィルムの物品への圧着時にフィラー配列フィルムが均等に押圧され易くなり、特にフィラーが配列している場合には押圧力が局所的に集中することを防止でき、接続の安定性に寄与できる。また接続後に圧痕による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、フィラー配列フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合に、異方性導電フィルムと電子部品の異方性導電接続後の検査において、端子サイズが大きいもの(FOGなど)でも、小さいもの(COGなど)でも圧痕による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性導電接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0045】
ここで、粒子径のバラツキは画像型粒度分析装置などにより算出することができる。フィラー配列フィルムに含有されていない、フィラー配列フィルムの原料粒子としてのフィラーの粒子径も上述の湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。この場合、フィラー個数は1000個以上、好ましくは3000個以上、より好ましくは5000個以上を測定すれば正確にフィラー単体の粒子径のバラツキを把握することができる。フィラーがフィラー配列フィルムに配置されている場合は、上記真球度と同様に平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0046】
(フィラー群20)
フィラー群20は、フィラー配列フィルム10を介して第1物品に第2物品を接合する際に、フィラーの捕捉性を高めるために凸部4に配置された複数のフィラーから構成する。本発明においては、前述したように、凸部4には、複数のフィラー2からなるフィラー群20が少なくとも一つ配置されている。従って、複数のフィラー群20が一つの凸部に配置されていてもよい。その場合、
図6(一つの凸部を平面視した図)に示す様に、一つの凸部4において隣り合うフィラー群同士(20aと20b)は、完全に離隔していることが好ましいが、
図7に示す様に、一部のフィラー2aが共通するように離隔していてもよい。特に、
図6のように、フィラー群が完全に離隔している場合、例えば、μLEDをフィラー配列フィルムで接続する際に、離隔しているフィラー群20a及び20bをμLEDのアノード電極及びカソード電極のそれぞれに対応させることにより、それらの間にショートが発生しないようにすることができる。また、フィラー群20内のフィラー2は、既に述べたように、ランダム配列でもよいが、規則配列(例えば、正方格子配列、六方格子配列等であるが、格子配列に限定されるものではない)していることが、フィラー捕捉性と製造コストの観点から好ましい。なお、一つの凸部4に設けられるフィラー群は離間して複数のフィラー群が存在する態様も含む。フィラー群20を凸部4に配置させる際、予め対象物に合わせて(例えば、電極上のみに配置する)複数のフィラー群になるように設計してもよいためである。フィラー群の外周や外縁と、凸部4の少なくとも天面の外形が同じになっていることは、本発明の好ましい特徴の一つになる。
【0047】
本発明では凸部が孤立して離間しており、その1つの凸部にフィラーが複数配置されている。1つの凸部に1つのフィラーを配置すると、1つ1つのフィラーの固定には有効ではあるが、実用の観点からそのような凸部を複数密集させなければならないため、フィラーを樹脂に押し込むために推力を増大させる必要があり、フィラーを保持する樹脂が高粘度であると更にその傾向が高まる。そのため低粘度の樹脂設計が必要となるが、低粘度であるとフィラーを転写型からバランス良く離型させ難くなり、樹脂設計が難しくなる。一方、1つの凸部に複数のフィラーを配置する本発明の場合、1つの凸部に1つのフィラーを配置する場合と比べて、相対的にフィラー量に対して樹脂の量が少なくなるため、押し込み時に過大な推力は特段必要とならない。つまり凸部の設計条件によって樹脂流動や樹脂充填などの条件を調整できるメリットがあり、樹脂設計の自由度が高くなる点は本発明の大きな特徴ともいえる。例えば、1つもしくは2つの凸部で2つの電極間に跨るように設計することで、凸部の大きさや凸部に設けられるフィラーの面積を、電極の面積や電極間距離といった設計条件に合わせて調整することで、接続条件を安定させることになり、生産性に大きく寄与することができる。例えば、μLED素子全体の寸法が30×60μmであり、1つの電極寸法が20×20μm(面積:400μm2)であり、2つの凸部で2つの電極を接続することを想定した場合、凸部の仕様について、電極にフィラーが保持されれば特に限定されるものではないが、凸部の寸法は20×20μm以上であることが好ましく、1つの凸部上に3個以上フィラーがあることが好ましい。1つの凸部で2つの電極を接続する場合は、凸部の寸法は30×60μm以上であることが好ましく、10個以上フィラーがあることが好ましい。微小な部品の接続において、推力などの押圧装置側の制約を減少させることになり、本発明の顕著な効果と言える。
【0048】
フィラー群20におけるフィラーの個数密度は特に制限はなく、フィラー配列フィルムの使用目的や接続対象の外形の大きさや電極レイアウト、ファインピッチ化の程度に応じて適宜決定されるが、孤立化している状態の凸部4における単位面積[mm2]あたり(凸部のみをつなぎ合わせた面積、と考えてもよい)、下限については好ましくは100個以上、より好ましくは1000個以上、更に好ましくは10000個以上、上限については好ましくは300000個以下、より好ましくは200000個以下、更に好ましくは100000個以下である。
【0049】
<フィラー配列フィルムの変形態様>
本発明のフィラー配列フィルムは、フィラー保持用絶縁性樹脂層の少なくとも片面に、別の絶縁性樹脂層を積層することができる。例えば、
図8に示すように、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の凸部4側に別の絶縁性樹脂層5を設けてもよく、
図9Aに示すように、凸部4の反対面に別の絶縁性樹脂層6を設けてもよい。この場合、
図9Bに示すように、凹部3を絶縁性樹脂層6まで貫通させてもよく、
図9Cに示すように、貫通した凹部3により凸部4を他の凸部から切り離し独立させてもよい。なお、
図9Bの場合、絶縁性樹脂層6が設けられていなくても、貫通していない凹部3が存在するので、貫通した凹部3を貫通したままに維持することができる。また、
図10に示すように、絶縁性樹脂層5,6を両面に設けてもよい。別の絶縁性樹脂層5、6は、フィラー保持用絶縁性樹脂層1で説明しているものと略同じものと考えてよい。
【0050】
このような別の絶縁性樹脂層5、絶縁性樹脂層6は、フィラー保持用絶縁性樹脂層1と同様の組成から形成することができる。目的に合わせて組成を変更、調整してもよい。これらの層を含むフィラー配列フィルムの全樹脂厚は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは8μm以下である。
【0051】
また、別の絶縁性樹脂層5、6は、ブラック顔料を含有していれば、ブラックマトリックス形成用絶縁性樹脂層として機能することができる。例えば、
図11に示すように、第1物品である配線基板100と第2物品であるμLED200との間に、
図8のフィラー配列フィルム10を挟持させてヒートツールHで熱圧着すると、
図12に示すように、μLED200の側面にブラックマトリックス形成用絶縁性樹脂層からフィレットFが形成され、このフィレットFをブラックマトリックスとして機能させることができる。
【0052】
ブラック顔料としては、カーボンブラックやチタンブラック等の公知のブラック顔料を使用することができる。中でも、不純物イオンの含有量が極めて低く、しかもそれ自体が絶縁性であるチタンブラックを好ましく使用することができる。ブラック顔料としてチタンブラックを使用した場合、ブラックマトリックス用黒色樹脂組成物中のチタンブラック含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。これらのブラック顔料の平均粒子径は、10~100nmである。このブラック顔料は導電粒子の平均粒子径より小さいことが望ましい。
【0053】
<フィラー配列フィルムの製造方法>
本発明のフィラー配列フィルムは、以下の工程A~工程Cを含む製造方法により製造することができる。この製造方法は、工程Cに続き工程Dを有することが好ましい。
【0054】
(工程A)
工程Aは、
図13に示すように、剥離処理が施されている剥離フィルム(PET)30上に、フィラー保持用絶縁性樹脂層1を形成する工程である。フィラー保持用絶縁性樹脂層の形成は、常法により行うことができ、例えば、フィラー保持用絶縁性樹脂組成物を剥離フィルムに塗布し、成膜することにより行うことができる。
【0055】
(工程B)
工程Bは、
図14に示すように、工程Aで得られたフィラー保持用絶縁性樹脂層1に対し、フィラー配列フィルムの凸部に対応した凹部7を有する押し型8を当接させて熱プレスを行うことにより、フィラー保持用絶縁性樹脂層の片面に凹部3と凸部4とを形成する工程である(
図15参照)。当接の際、剥離フィルムを介在させてもよい。押し型8としては、凹部を有する金属製もしくは樹脂製の一枚の単板が好ましいが、凹部を有するロールでもよい。凹部を有するフィルムでもよい。熱プレスの手法としても、一般的なヒートツール、真空ラミネータ等を使用することができる。また、凹部7の形状や深さ、ピッチなどは、フィラー配列フィルムの凸部の形状、高さ、ピッチ(換言すれば、接続すべき第2物品の形状、厚み、ピッチ、表面積等)に応じて適宜決定することができる。例えば、第2物品としてμLEDを選択した場合、凹部の深さは、浅すぎるとフィラーを配列させることが難しくなり、深すぎるとμLEDが樹脂に埋もれてしまうことが懸念されるので、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0056】
(工程C)
工程Cは、
図16に示すように、転写用基材40の片面に複数のフィラー2が配置されたフィラー転写シート41のフィラー配置面を、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の凸部4の天面に対向させ、転写用基材40側から押圧することにより、凸部4の天面に複数のフィラー2を転写する工程である。転写後にはフィラー転写シート41を引き剥がし取り除くことにより、
図17Aに示すような構造の、剥離フィルム30に積層されたフィラー配列フィルム10が得られる。フィラー配列フィルム10を凸部側から撮影した光学顕微鏡写真の一例を
図18に示す。凸部4の表面には、フィラー2が六方格子状に配列し、凹部3にはフィラーが存在しないことが見て取れる。なお、
図16では、フィラー2は、フィラー転写シート41の粘着性の転写用基材40の表面に保持されているが、転写用基材40として、フィラーを収容する凹部を有する転写型を使用してもよい。
【0057】
(工程D)
本発明のフィラー配列フィルムの製造方法では、工程Cに続き、凸部4の天面に転写されたフィラー2を、剥離フィルム(PET)を介して熱プレス等の公知の加熱押圧手法により、フィラー保持用絶縁性樹脂層1に埋め込むことが好ましい。これにより
図17Bに示すようなフィラー配列フィルム10が得られる。別の絶縁性樹脂層の積層についての詳細な説明は割愛するが、予め積層したものを準備していてもよく、工程Dの後に積層してもよい。
【0058】
以上説明したように、フィラー配列フィルムの製造方法では、工程Bで押し型を使用することを1つの特徴としている。このような押し型を使用することにより、フィラー配列フィルムの意図した位置に形成した凸部にのみにフィラーを配列させた、個片として機能することができるフィラー配列フィルムを得ることができる。しかも、フィラー配列フィルムの凸部に少なくとも1つ以上のフィラーを配置することができ、しかもフィルム全体に対して所期の位置に凸部と凹部とを配置することができる。また、凹部はフィルム厚が薄くなっているため、透光性や視認性に優れている。また、フィラーが存在しない凹部が存在することにより、フィラー配列フィルムを異方性導電フィルムとして利用した場合にショートの発生リスクを大きく軽減することができる。また、フィラー配列フィルムを単体の樹脂フィルムから構成することができ、更に、他の樹脂層を積層することもできるので、設計の自由度が高まるというメリットもある。
【0059】
なお、フィラー転写シート41は、転写用基材40の片面にフィラー2を配置したものであるが、フィラー保持用絶縁性樹脂層1の凹部3にはフィラーが転写されないことから、フィラー転写シート41の全面にフィラーをランダムまたは規則的、好ましくは六方格子状に配置させることができ、フィラー転写シート41の作成が容易となる。また、フィラー転写シート41におけるフィラーの個数密度は、フィラー配列フィルムのフィラー群におけるフィラーの個数密度と同じになる。
【0060】
<接続構造体及びその製造方法>
本発明のフィラー配列フィルムは、配線基板等の比較的大きい第1物品に、複数の第2物品がフィラー配列フィルムを介して接続されている接続構造体の当該フィラー配列フィルムに好ましく適用でき、また、第1物品と第2物品との間に、フィラー配列フィルムを、好ましくは第2物品とフィラー配列フィルムの凸部とが対応するように挟持させ、圧着(例えば熱圧着)することを特徴とする接続構造体の製造方法における当該フィラー配列フィルムに好ましく適用できる。これらの場合、第2物品とフィラー配列フィルムの凸部とが複数対一又は一対複数となるように対応していてもよいが、設計のし易さや、位置精度等の観点から、一対一で対応していることが好ましい。また、第1物品と第2物品が、対向して導通できるように電極を備えていることが好ましい。対抗する電極を備えた第1物品と第2物品間に挟持して、導電接続や異方性導電接続に用いることもできる。特に、本発明の接続構造体は、第1物品が片面に透明電極が配置された透明ディスプレイ基板であり、第2物品が片面に電極が形成されたμLEDであり、フィラー配列フィルムの凸部に配置されたフィラーが導電粒子であり、フィラー配列フィルム自体が導電フィルムとして機能している場合の接続構造体の製造に好ましく適用できる。従って、このような接続構造体自体だけでなくその製造方法自体も本発明の変形態様である。なお、導電フィルムに代えて異方性導電フィルムを使用することもできる。
【0061】
(接続構造体としてのμLEDディスプレイ)
本発明のフィラー配列フィルムを用いてμLEDディスプレイを製造する場合、換言すれば、複数のμLEDがウエハ上で規則的に配列した状態でμLEDの電極と、基板の電極とを接続する場合、まず、基板の電極上にフィラー配列フィルムを位置合わせして貼着し、そのフィラー配列フィルムと、ウエハ上に配列したμLEDとを位置合わせして貼り合わせ、加熱加圧してμLEDの電極と基板の電極とを接続する。この場合、2段階方式で加熱加圧することにより接続してもよい(特開2019-216097号公報)。また、導電粒子がハンダ粒子等である場合に、リフローにより接続してもよい。接続構造体についてμLEDディスプレイを例にとり説明したが、本発明の接続構造体はより大きい発光素子を用いたディスプレイにも適用できる。
【0062】
なお、本発明のフィラー配列フィルムは、実質的に個片形状となっているが、全体のフィルムから凸部部分を完全に個片化したフィラー配列フィルムとして使用することもできる。その場合、個片化フィラー配列フィルムの仮貼りは、スタンプ材やレーザーを用いた手法(レーザーリフトオフ法)といった公知の手法やそれを応用した手法を用いることができ(例えば、特開平9-124020号公報、特開2011-76808号公報、特許6636017号公報、特許6187665号公報等に記載の方法)、発明の効果が発揮できる手法であれば特に限定はされない。フィラー転写シートの作成、μLEDの基板上への搭載の場合も、同様に、スタンプ材やレーザーを用いた手法(レーザーリフトオフ法)といった公知の手法やそれを応用した手法を用いることができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、実施例及び比較例においては、フィラー配列フィルムの具体的態様である異方性導電フィルムを作成した。
【0064】
参考例1<異方性導電フィルムの導電粒子保持用絶縁性樹脂層の形成>
表1に示す配合の組成物(単位:質量部)を均一に混合し、得られた混合物を剥離処理が施されている50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、表1の層厚となるように塗布し、60℃・3minという条件で乾燥することにより、導電粒子保持用絶縁性樹脂層として接着フィルムを得た。
【0065】
【0066】
参考例2<実施例及び比較例で用いた押し型>
異方性導電フィルムでμLEDを基板に実装することを想定したときに、異方性導電フィルムの導電粒子保持用絶縁性樹脂層に凸部を形成するための押し型として、以下のステンレス製の押し型1と押し型2とを用意した。押し型1は、一つの凹で一つのμLEDに対応させる場合に使用し、押し型2は、二つの凹で一つのμLEDに対応させる場合に使用する。
【0067】
*押し型1:
凹サイズ:縦40μm×横60μm×深4μm、凹ピッチ:縦・横共に30μm;
図19に押し型1を用いて作成した異方性導電フィルムの部分拡大図を示す。この図は、凸部4の天面にのみ導電粒子2が配置されていることを示している。また。点線は、実装されるμLEDの外形を表しており、凸部4とμLEDとは一対一で対応することを示している。
【0068】
*押し型2:
凹サイズ:縦40μm×横20μm×深4μm、対となる凹間スペース20μm、凹ピッチ:縦・横共に30μm;
図20に押し型2を用いて作成した異方性導電フィルムの部分拡大図を示す。この図は、凸部4の天面にのみ導電粒子2が配置されていることを示している。また。点線は、実装されるμLEDの外形を表しており、凸部4とμLEDとは二対一で対応することを示している。
【0069】
参考例3<導電粒子転写シートの作成>
フィルム全面に表2の平均粒子径の導電粒子(ミクロパールAUシリーズ、積水化学工業(株))を、表2の個数密度となるように、特許第6187665号の段落0111-0112及び
図1Aに記載の導電粒子規則配列処理に従って導電粒子転写シートを作成した。
【0070】
実施例1-7、比較例1-4
<異方性導電フィルムの形成>
実施例及び比較例で用いる異方性導電フィルムを表2に従って作成した。即ち、参考例1で作成した導電粒子保持用絶縁性樹脂層に、実施例の場合は押し型1又は押し型2を載置し、真空ラミネータを用いて型押しすることにより、押し型の凹部と非凹部とに対応して導電粒子保持用絶縁性樹脂層に凸部と凹部とを作成した。次に、導電粒子保持用絶縁性樹脂層の凸部形成面に、参考例3の導電粒子転写シートの導電粒子配列面を重ね合わせ、ヒートツールで加熱加圧することにより、凸部だけに導電粒子を転写することにより、異方性導電フィルムを得た。
【0071】
実施例1-7の導電粒子面密度は、フィルムの凸部における面密度であり、比較例1-4の導電粒子面密度はフィルム全面における面密度である。
【0072】
<導通抵抗・絶縁性評価用接続構造体の作成>
ガラス基板のCr/Au層を、
図21に示すように、実施例のフィラー配列フィルムの凸部パターンに合致するようにパターニングを行った。得られたガラス基板のCr/Auパターンに実施例及び比較例の異方性導電フィルムをアライメントして貼り付け、μLEDに模した1.5cm角のICチップを載せ、150℃、10Pa、30秒という条件で熱圧着することにより導通抵抗・絶縁性評価用接続構造体を得た。
【0073】
<可視光透過率評価用接続構造体の作成>
30μm×50μmサイズのICチップを、可視光透過率測定用のμLEDとして用意した。このICチップを、1.5cm角の範囲に並べ、同様に熱圧着することにより可視光透過率評価用接続構造体を得た。
【0074】
<導通抵抗評価>
導通抵抗・絶縁性評価用接続構造体の導通抵抗を常法により測定し、以下の基準に従って評価し、評価結果を表2に示す。実用上、A評価又はB評価であることが望まれる。
【0075】
(導通抵抗評価基準)
ランク: 基準
A:30Ω以下
B:30Ω超え100Ω以下
C:100Ω超え300Ω以下
D:300Ω超え
【0076】
<絶縁性評価>
導通抵抗・絶縁性評価用接続構造体の絶縁性について、間隔が5μmの電極間を100箇所選択し、それぞれの抵抗値を常法により測定し、ショートの発生箇所数を調べ、以下の基準に従って評価した。評価結果を表2に示す。実用上、A評価、B評価又はC評価であることが望まれる。なお、抵抗が107Ω以下の場合をショートとして判定した。
【0077】
(絶縁性評価基準)
ランク: 基準
A:ショート発生箇所が0ヶ所(ショートなし)
B:ショート発生箇所が1ヶ所
C:ショート発生箇所が2ヶ所
D:ショート発生箇所が3ヶ所以上
【0078】
<光透過性評価>
光透過性評価用接続構造体の400~700nmの可視光に対する平均光透過率を、市販の光透過率測定装置で測定し、以下の基準に従って評価した。評価結果を表2に示す。実用上、A評価、B評価又はC評価であることが望まれる。
【0079】
(光透過性評価基準)
ランク: 基準
A:可視光透過率が50%以上
B:可視光透過率が35%以上50%未満
C:可視光透過率が20%以上35%未満
D:可視光透過率が20%未満
【0080】
【0081】
表2の結果から、異方性導電フィルムの導電粒子保持用絶縁性樹脂層に押し型で作成した凸部のみに導電粒子を配列させた実施例1-7の異方性導電フィルムは、凸部部分を実質的に個片の異方性導電フィルムとして機能させることができ、導通抵抗、絶縁性、可視光透過率について、いずれも実用上問題のない結果を示した。
【0082】
なお、比較例1~4の異方性導電フィルムの場合、フィルム全面に導電粒子が配置されているため、可視光透過率に問題が生じていた。
本発明のフィラー配列フィルムによれば、ファインピッチのμLED等の微小電子部品を配線基板等に異方性導電接続する場合に、ショートを懸念することなく、フィラー配列フィルムの凸部部分を実質的に個片のフィラー配列フィルムとして機能させて異方性導電接続することができ、しかも、本発明のフィラー配列フィルムは、簡便な転写型を用いて形成できる構造となっている。よって、本発明のフィラー配列フィルムは、レーザーリフトオフ法による個片化に匹敵する構造が作り込まれたものであり、μLEDディスプレイの製造に有用である。
なお、本発明のフィラー配列フィルムについて、異方性導電フィルム及びこれを利用した異方性導電接続方法を例に取り説明したが、その説明の内容を、本発明の効果を損なわない限り、導電フィルム及びこれを利用した導電接続方法を例に取り説明する場合にも適用することができる。