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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146279
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】表示システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059079
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】森 俊也
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB22
2F129EE21
2F129EE78
2F129EE81
2F129FF15
2F129HH14
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH22
(57)【要約】
【課題】表示画像が指し示す方位の精度を高めることができる表示システムを提供する。
【解決手段】表示システム2は、車両4を目的地に案内するための表示画像12を描画する描画部46と、表示画像12を示す光を車両4のフロントガラス14に投射することにより、フロントガラス14越しに表示画像12を虚像として表示させる表示部6と、車両4の方位を推定する自車方位推定部42とを備える。表示部6は、車両4を目的地に案内するために設定される経路22上の車両4の現在地における経路方位と、推定された車両4の方位との差分角度が閾値未満である場合に、経路22に沿った第1の方位を指し示す表示画像12を虚像として表示させ、差分角度が閾値以上である場合に、第1の方位を補正した第2の方位を指し示す表示画像12を虚像として表示させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、
前記車両を目的地に案内するための表示画像を描画する描画部と、
前記表示画像を示す光を前記車両の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、
前記車両の方位を推定する推定部と、を備え、
前記表示部は、前記車両を前記目的地に案内するために設定される経路上の前記車両の現在地における経路方位と、推定された前記車両の方位との差分角度が閾値未満である場合に、前記経路に沿った第1の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させ、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位を補正した第2の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させる
表示システム。
【請求項2】
前記第2の方位は、前記第1の方位を、前記差分角度から不感帯角度を差し引いた角度だけ補正した方位である
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記不感帯角度は、前記車両が走行している道路の車線数が多いほど、大きくなるように決定される
請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記経路はナビゲーション地図上の経路であり、
前記不感帯角度は、前記ナビゲーション地図の精度が高いほど、小さくなるように決定される
請求項2に記載の表示システム。
【請求項5】
前記描画部は、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位が前記第2の方位に補正される前後で、前記表示画像の表示状態を変更する
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記車両の現在地における前記経路方位は、前記経路上における前記車両の現在地に対応する経路点での接線の方向であり、
前記第1の方位は、前記経路上における前記車両の現在地よりも先にある経路点での接線の方向である
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項7】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムにおける制御方法であって、
(a)前記車両を目的地に案内するための表示画像を描画するステップと、
(b)前記表示画像を示す光を前記車両の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させるステップと、
(c)前記車両の方位を推定するステップと、を含み、
前記(b)において、前記車両を前記目的地に案内するために設定される経路上の前記車両の現在地における経路方位と、推定された前記車両の方位との差分角度が閾値未満である場合に、前記経路に沿った第1の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させ、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位を補正した第2の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させる
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を目的地に案内するための表示画像を、車両のフロントガラス越しに虚像として表示させる表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この表示システムでは、車両の方位として、当該車両を目的地に案内するためのナビゲーション地図上の経路に沿った方位が推定される。また、表示画像は、推定された車両の方位(すなわち、上記経路に沿った方位)を指し示すように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-179445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の表示システムでは、例えば車両が車線変更している途中の状況や、車両がクランク状の道路を走行している状況、車両がカーブの出口付近に差し掛かっている状況等では、表示画像が指し示す方位の精度が低下するという課題が生じる。
【0005】
そこで、本開示は、表示画像が指し示す方位の精度を高めることができる表示システム及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る表示システムは、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、前記車両を目的地に案内するための表示画像を描画する描画部と、前記表示画像を示す光を前記車両の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、前記車両の方位を推定する推定部と、を備え、前記表示部は、前記車両を前記目的地に案内するために設定される経路上の前記車両の現在地における経路方位と、推定された前記車両の方位との差分角度が閾値未満である場合に、前記経路に沿った第1の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させ、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位を補正した第2の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させる。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る表示システム等によれば、表示画像が指し示す方位の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る表示システムを搭載した車両を示す図である。
図2】実施の形態に係る表示システムにより表示画像が表示されるフロントガラスの表示領域を示す図である。
図3】実施の形態に係る表示システムの構成を示す概略図である。
図4】実施の形態に係る表示画像の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る表示システムのコントローラの機能構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係る表示システムのコントローラの動作の流れを示すフローチャートである。
図7図6のフローチャートのステップS104の具体例を説明するための図である。
図8図6のフローチャートのステップS104の具体例を説明するための図である。
図9図6のフローチャートのステップS104の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の第1の態様に係る表示システムは、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、前記車両を目的地に案内するための表示画像を描画する描画部と、前記表示画像を示す光を前記車両の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、前記車両の方位を推定する推定部と、を備え、前記表示部は、前記車両を前記目的地に案内するために設定される経路上の前記車両の現在地における経路方位と、推定された前記車両の方位との差分角度が閾値未満である場合に、前記経路に沿った第1の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させ、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位を補正した第2の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させる。
【0011】
本態様によれば、上記差分角度が閾値未満である場合に、経路に沿った第1の方位を指し示す表示画像を虚像として表示させ、上記差分角度が閾値以上である場合に、第1の方位を補正した第2の方位を指し示す表示画像を虚像として表示させる。これにより、例えば車両が車線変更している途中の状況や、車両がクランク状の道路を走行している状況、車両がカーブの出口付近に差し掛かっている状況等において、表示画像が指し示す方位の精度を高めることができる。
【0012】
例えば、第2の態様に係る表示システムでは、第1の態様において、前記第2の方位は、前記第1の方位を、前記差分角度から不感帯角度を差し引いた角度だけ補正した方位であるように構成してもよい。
【0013】
本態様によれば、不感帯角度を例えば車両の走行状況等に応じて適宜調節することにより、第1の方位を第2の方位に精度良く補正することができる。
【0014】
例えば、第3の態様に係る表示システムでは、第2の態様において、前記不感帯角度は、前記車両が走行している道路の車線数が多いほど、大きくなるように決定されるように構成してもよい。
【0015】
本態様によれば、不感帯角度を、道路の車線数を考慮して決定することができる。
【0016】
例えば、第4の態様に係る表示システムでは、第2の態様において、前記経路はナビゲーション地図上の経路であり、前記不感帯角度は、前記ナビゲーション地図の精度が高いほど、小さくなるように決定されるように構成してもよい。
【0017】
本態様によれば、不感帯角度を、ナビゲーション地図の精度を考慮して決定することができる。
【0018】
例えば、第5の態様に係る表示システムでは、第1の態様~第4の態様のいずれか一態様において、前記描画部は、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位が前記第2の方位に補正される前後で、前記表示画像の表示状態を変更するように構成してもよい。
【0019】
本態様によれば、表示画像の表示状態を変更することにより、運転者に対して、表示画像が指し示す方位が補正されたことを認識させることができる。
【0020】
例えば、第6の態様に係る表示システムでは、第1の態様~第5の態様のいずれか一態様において、前記車両の現在地における前記経路方位は、前記経路上における前記車両の現在地に対応する経路点での接線の方向であり、前記第1の方位は、前記経路上における前記車両の現在地よりも先にある経路点での接線の方向であるように構成してもよい。
【0021】
本態様によれば、表示画像が指し示す方位を容易に制御することができる。
【0022】
また、本開示の第7の態様に係る制御方法は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムにおける制御方法であって、(a)前記車両を目的地に案内するための表示画像を描画するステップと、(b)前記表示画像を示す光を前記車両の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させるステップと、(c)前記車両の方位を推定するステップと、を含み、前記(b)において、前記車両を前記目的地に案内するために設定される経路上の前記車両の現在地における経路方位と、推定された前記車両の方位との差分角度が閾値未満である場合に、前記経路に沿った第1の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させ、前記差分角度が前記閾値以上である場合に、前記第1の方位を補正した第2の方位を指し示す前記表示画像を虚像として表示させる。
【0023】
本態様によれば、上述した第1の態様に係る表示システムと同様に、例えば車両が車線変更している途中の状況や、車両がクランク状の道路を走行している状況、車両がカーブの出口付近に差し掛かっている状況等において、表示画像が指し示す方位の精度を高めることができる。
【0024】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
(実施の形態)
[1.表示システムの概要]
まず、図1図4を参照しながら、実施の形態に係る表示システム2の概要について説明する。図1は、実施の形態に係る表示システム2を搭載した車両4を示す図である。図2は、実施の形態に係る表示システム2により表示画像12が表示されるフロントガラス14の表示領域16を示す図である。図3は、実施の形態に係る表示システム2の構成を示す概略図である。図4は、実施の形態に係る表示画像12の一例を示す図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、実施の形態に係る表示システム2は、自動車等の車両4に搭載されている。図3に示すように、表示システム2は、表示部6と、コントローラ8とを備えている。
【0028】
表示部6は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)であり、車両4のダッシュボード10の内部に配置されている。図1図3に示すように、表示部6では、虚像である表示画像12を表示するための表示光を、例えば車両4のフロントガラス14(表示媒体の一例)における運転席寄りの表示領域16に向けて投射することにより、表示光をフロントガラス14の表示領域16で運転者18に向けて反射させる。これにより、運転者18は、フロントガラス14の表示領域16越しに、虚像である表示画像12をフロントガラス14の前方の景色上に重ね合わせて見ることができる。すなわち、運転者18にとっては、表示画像12は、あたかもフロントガラス14の前方の空間20に表示されているかのように見える。
【0029】
表示画像12は、車両4を目的地に案内するための画像であり、例えば三角形状の矢印を示す画像である。図4の(a)に示すように、車両4が、当該車両4を目的地に案内するためにナビゲーション地図上で設定された経路22(一点鎖線で示す)に沿って走行している場合に、図4の(b)に示すように、表示画像12は、上記経路22に沿った方位を指し示している。運転者18は、表示画像12が指し示す方位を見ることにより、目的地に到着するまでの経路22を把握することができる。なお、説明の都合上、図2では、表示画像12の図示を省略してある。
【0030】
図3に示すように、表示部6は、メインハウジング26と、表示ユニット28と、第1のミラー30と、第2のミラー32とを備えている。
【0031】
メインハウジング26は、箱形状に形成されており、例えばアルミニウム等の金属で形成されている。メインハウジング26は、車両4のダッシュボード10の内部に配置されている。メインハウジング26の内部には、表示ユニット28、第1のミラー30及び第2のミラー32が配置されている。メインハウジング26の上面は、フロントガラス14に対向するように配置されている。メインハウジング26の上面には、開口部34が形成されている。この開口部34は、例えば透明な樹脂で形成された板状のカバー部材36で覆われている。
【0032】
表示ユニット28は、表示画像12を表示するための表示光を、第1のミラー30及び第2のミラー32に向けて投射するためのPGU(Picture Generation Unit)である。表示ユニット28は、表示パネル38と、バックライト40とを有している。表示パネル38は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)であり、前面の表示面に表示画像12を表示する。バックライト40は、表示パネル38の背面に向けて光を照射する。
【0033】
第1のミラー30は、例えば凸面ミラーであり、表示ユニット28からの表示光を第2のミラー32に向けて反射する。第2のミラー32は、例えば凹面ミラーであり、第1のミラー30からの表示光をフロントガラス14の表示領域16に向けて反射する。第2のミラー32からの表示光は、カバー部材36を透過してフロントガラス14の表示領域16で反射した後に、運転者18の目に入射する。
【0034】
コントローラ8は、表示部6により表示される表示画像12を制御する。具体的には、コントローラ8は、表示画像12が指し示すべき方位(以下、「表示方位」という)を算出し、算出した表示方位に基づいて、表示ユニット28の表示パネル38に表示される画像(表示画像12の元になる画像)を描画する。コントローラ8の機能構成については、後述する。
【0035】
[2.コントローラの機能構成]
次に、図4及び図5を参照しながら、コントローラ8の機能構成について説明する。図5は、実施の形態に係る表示システム2のコントローラ8の機能構成を示すブロック図である。
【0036】
図5に示すように、コントローラ8は、機能構成として、自車方位推定部42(推定部の一例)と、算出部44と、描画部46とを備えている。
【0037】
自車方位推定部42は、例えば、(a)車両4に搭載されたナビゲーション装置48からの自車位置情報、(b)車両4に搭載された車両制御装置50からの車速情報、及び、(c)車両4に搭載されたジャイロセンサ52からのセンサ情報を取得する。また、自車方位推定部42は、取得した自車位置情報、車速情報及びセンサ情報に基づいて、車両4の方位を推定し、推定した車両4の方位を示す自車方位情報を算出部44に出力する。ここで、車両4の方位とは、車両4の前進方向の方位を意味する。
【0038】
ナビゲーション装置48は、例えばGPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いた、車両4を目的地に案内するための装置である。ナビゲーション装置48は、車両4の現在地(現在位置)を示す自車位置情報を、自車方位推定部42及び算出部44に出力する。また、ナビゲーション装置48は、ナビゲーション地図上で設定された、車両4の現在地から目的地までの経路22を示す経路情報を、算出部44に出力する。
【0039】
車両制御装置50は、例えば車両4に搭載されたECU(Electronic Control Unit)等であり、車両4の走行速度(車速)を示す車速情報を自車方位推定部42に出力する。
【0040】
ジャイロセンサ52は、車両4のヨー角を示すセンサ情報を自車方位推定部42に出力する。
【0041】
算出部44は、ナビゲーション装置48からの経路情報及び自車位置情報、並びに、自車方位推定部42からの自車方位情報を取得し、取得した経路情報、自車位置情報及び自車方位情報に基づいて、表示画像12の表示方位を算出する。具体的には、算出部44は、経路情報により示される経路22上の車両4の現在地における経路方位(すなわち、図4の(a)に示す、経路22上における車両4の現在地に対応する経路点54での接線56の方向)と、自車方位情報により示される車両4の方位との差分角度θを算出する。そして、算出部44は、算出した差分角度θと閾値θ(例えば、2.0°)との比較に基づいて、表示画像12の表示方位を算出する。
【0042】
算出部44は、差分角度θが閾値θ未満である場合には、表示画像12の表示方位として、経路22に沿った第1の方位を算出する。ここで、第1の方位は、図4の(a)に示すように、経路22上における、車両4の現在地よりも先にある経路点58での接線60の方向である。なお、車両4の現在地から経路点58までの距離は、固定(例えば、数十m)としてもよいし、前方の道路形状(道なりであるか、右左折が必要な交差点であるか等)や車両4の走行状態(車速の大小等)に応じて可変としてもよい。
【0043】
一方、算出部44は、差分角度θが上記閾値θ以上である場合には、表示画像12の表示方位を、第1の方位から第2の方位にヨー角方向に補正する。ここで、第2の方位は、第1の方位を、差分角度θから不感帯角度θ(例えば、2.0°)を差し引いた角度(=θ-θ)だけ補正した方位である。例えば、差分角度θが5.0°、閾値θが2.0°(<θ)、不感帯角度θが2.0°である場合には、第2の方位は、第1の方位を、角度3.0°(=5.0°-2.0°)だけ補正した方位となる。
【0044】
なお、算出部44は、不感帯角度θを、例えば車両4が走行している道路の車線数が多いほど大きくなるように決定する。これは、道路の車線数が多いほど、経路点のばらつきが大きくなり、経路方位誤差(実際の道路の方位と、後述する経路方位との差)が大きくなる傾向にあるためである。また、カーブ、分岐及び合流地点においても経路点のばらつきが大きくなる傾向にあるため、カーブ、分岐及び合流地点では不感帯角度θを大きくなるように決定してもよい。あるいは、算出部44は、不感帯角度θを、例えばナビゲーション装置48に記憶されているナビゲーション地図の精度が高いほど、小さくなるように決定してもよい。
【0045】
描画部46は、算出部44の算出結果に基づいて、表示ユニット28の表示パネル38に表示すべき表示画像12を描画する。描画部46は、描画した表示画像12を示す画像情報を、表示パネル38に出力する。これにより、表示パネル38には、描画部46からの画像情報により示される表示画像12が表示される。
【0046】
[3.コントローラの動作]
次に、図4及び図6を参照しながら、コントローラ8の動作について説明する。図6は、実施の形態に係る表示システム2のコントローラ8の動作の流れを示すフローチャートである。
【0047】
なお、図6のフローチャートの開始時において、例えば図4の(a)に示すように車両4が経路22に沿って直進していることにより、上述した差分角度θが閾値θ未満であるものとする。
【0048】
図6に示すように、まず、自車方位推定部42は、ナビゲーション装置48からの自車位置情報、車両制御装置50からの車速情報、及び、ジャイロセンサ52からのセンサ情報に基づいて、車両4の方位を推定する(S101)。
【0049】
次いで、算出部44は、ナビゲーション装置48からの経路情報及び自車位置情報、並びに、自車方位推定部42からの自車方位情報に基づいて、差分角度θが閾値θ未満であると算出することにより、表示画像12の表示方位を第1の方位と算出する(S102)。これにより、表示部6は、図4の(b)に示すように、第1の方位を指し示す表示画像12を、虚像として表示させる。
【0050】
次いで、算出部44は、差分角度θが閾値θ以上となったか否かを判定する。差分角度θが閾値θ未満のままである場合には(S103でNO)、算出部44は、表示画像12の表示方位を第1の方位から補正しない。その後、図6のフローチャートの処理を終了する。
【0051】
一方、差分角度θが閾値θ以上となった場合には(S103でYES)、算出部44は、表示画像12の表示方位を第1の方位から第2の方位に補正する(S104)。これにより、表示部6は、第2の方位を指し示す表示画像12を、虚像として表示させる。その後、図6のフローチャートの処理を終了する。
【0052】
ここで、図7図9を参照しながら、図6のフローチャートのステップS104の具体例について説明する。図7図9は、図6のフローチャートのステップS104の具体例を説明するための図である。
【0053】
図7の(a)に示す例では、車両4は、車線62を直進している状態から、当該車線62の左側に隣接する車線64へ車線変更している途中である。この時、車両4の左右の前輪が左に転舵することに伴い、車両4の方位は、車線62上に設定された経路22に沿った方位から、経路22に対して傾斜した方位へと変化する。
【0054】
算出部44は、経路情報により示される経路22上の車両4の現在地における経路方位(図7の(a)に示す、経路22上における車両4の現在地に対応する経路点54での接線56の方向)と、自車方位情報により示される車両4の方位(図7の(a)において矢印66で示す方向)との差分角度θを算出する。算出した差分角度θが閾値θ以上となった場合には、図7の(b)に示すように、算出部44は、表示画像12の表示方位を、第1の方位から第2の方位に角度θ-θだけ補正する。第2の方位は、第1の方位を、角度θ-θだけ補正した方位である。これにより、表示画像12の表示方位を、経路22に沿った方位に近付く方向(ヨー角方向)に補正することができる。
【0055】
また、図8の(a)に示す例では、車両4は、クランク68を走行している。クランク68は、2つの直角の狭いカーブが繋がった、クランク状の道路である。この時、車両4の左右の前輪が左に転舵することに伴い、車両4の方位は、クランク68上に設定された経路22に沿った方位から、経路22に対して傾斜した方位へと変化する。
【0056】
算出部44は、経路情報により示される経路22上の車両4の現在地における経路方位(図8の(a)に示す、経路22上における車両4の現在地に対応する経路点54での接線56の方向)と、自車方位情報により示される車両4の方位(図8の(a)において矢印66で示す方向)との差分角度θを算出する。算出した差分角度θが閾値θ以上となった場合には、図8の(b)に示すように、算出部44は、表示画像12の表示方位を、第1の方位から第2の方位に角度θ-θだけ補正する。第2の方位は、第1の方位を、角度θ-θだけ補正した方位である。これにより、表示画像12の表示方位を、経路22に沿った方位に近付く方向(ヨー角方向)に補正することができる。
【0057】
また、図9の(a)に示す例では、車両4は、左に大きく曲がったカーブ70の途中を走行しており、カーブ70の出口付近に差し掛かろうとしている。この時、車両4の左右の前輪が左に転舵することに伴い、車両4の方位は、カーブ70上に設定された経路22に沿った方位から、経路22に対して傾斜した方位へと変化する。
【0058】
算出部44は、経路情報により示される経路22上の車両4の現在地における経路方位(図9の(a)に示す、経路22上における車両4の現在地に対応する経路点54での接線56の方向)と、自車方位情報により示される車両4の方位(図9の(a)において矢印66で示す方向)との差分角度θを算出する。算出した差分角度θが閾値θ以上となった場合には、図9の(b)に示すように、算出部44は、表示画像12の表示方位を、第1の方位から第2の方位に角度θ-θだけ補正する。第2の方位は、第1の方位を、角度θ-θだけ補正した方位である。これにより、ナビゲーション装置48から取得した自車位置情報に誤差があり、実際の車両4の現在地がカーブ70の途中にあるのにも関わらず、自車位置情報により示される経路22上の車両4の現在地がカーブ70の出口付近にある場合においても、表示画像12の表示方位を、経路22に沿った方位に近付く方向(ヨー角方向)に補正することができる。
【0059】
なお、描画部46は、差分角度θが閾値θ以上である場合に、第1の方位が第2の方位に補正される前後で、表示画像12の表示状態として、例えば表示画像12の表示位置、向き、色、濃さ、形状及び点灯状態等の少なくとも一つを変更してもよい。例えば、描画部46は、第1の方位が第2の方位に補正される前後で、表示画像12の色を緑色から黄色に変更してもよいし、表示画像12の点灯状態を点灯から点滅に変更してもよい。また例えば、描画部46は、車両4が走行している道路の方向に応じて、表示領域16における表示画像12の左右の表示位置を変更してもよい。あるいは、描画部46は、表示画像12を大きくロールさせながら、第1の方位を第2の方位に補正してもよいし、表示画像12の水平表示位置を第1の方位から第2の方位に補正する方向と同一方向にずらしてもよい。
【0060】
[4.効果]
背景技術で説明した従来の表示システムでは、例えば車両4が車線変更している途中の状況や、車両4がクランク68を走行している状況、車両4がカーブ70の出口付近に差し掛かっている状況等では、表示画像12の表示方位は、経路22に沿った方位からずれてしまうという問題が生じる。
【0061】
これに対して、本実施の形態では、差分角度θが閾値θ未満である場合に、経路22に沿った第1の方位を指し示す表示画像12を虚像として表示させ、上記差分角度θが閾値θ以上である場合に、第1の方位を補正した第2の方位を指し示す表示画像12を虚像として表示させる。
【0062】
これにより、例えば車両4が車線変更している途中の状況や、車両4がクランク68を走行している状況、車両4がカーブ70の出口付近に差し掛かっている状況等において、表示画像12の表示方位を、経路22に沿った方位に近付く方向に補正することができる。その結果、表示画像12の表示方位の精度を高めることができる。
【0063】
また、不感帯角度θを設けることにより、経路方位誤差、又は、自車方位誤差(実際の車両4の方位と、自車方位情報により示される車両4の方位との差)に伴う過度の補正(すなわち、表示画像12のふらつき)を抑制することができる。
【0064】
(他の変形例)
以上、一つ又は複数の態様に係る表示システムについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を上記実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、表示部6からの表示光をフロントガラス14の表示領域16で反射させたが、これに限定されず、表示部6からの表示光をコンバイナ(表示媒体の一例)で反射させるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、ヘッドアップディスプレイを表示部6で構成したが、自車方位推定部42、算出部44及び描画部46のうち少なくとも一つもヘッドアップディスプレイの一部として構成してもよい。
【0067】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したコンピュータプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態に係るコントローラ8の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0069】
上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしても良い。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0070】
本開示は、上記第8の態様に係る制御方法であるとしても良い。また、この制御方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムを含むデジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしても良い。また、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、例えば車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
2 表示システム
4 車両
6 表示部
8 コントローラ
10 ダッシュボード
12 表示画像
14 フロントガラス
16 表示領域
18 運転者
20 空間
22 経路
26 メインハウジング
28 表示ユニット
30 第1のミラー
32 第2のミラー
34 開口部
36 カバー部材
38 表示パネル
40 バックライト
42 自車方位推定部
44 算出部
46 描画部
48 ナビゲーション装置
50 車両制御装置
52 ジャイロセンサ
54,58 経路点
56,60 接線
62,64 車線
66 矢印
68 クランク
70 カーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9