(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146296
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059103
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
(72)【発明者】
【氏名】林 佐登司
(72)【発明者】
【氏名】一柳 岳也
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039CB02
(57)【要約】
【課題】排水ソケットの屈曲部において汚物を詰まりにくくできる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便鉢部11、トラップ部13及び排水管部14を有する便器本体10と、前記排水管部14に接続される排水ソケット50と、を備え、前記排水ソケット50は、前記排水管部14に接続された状態において上下方向に延びる第1管部52と、第1管部52の下流側に設けられ、水平方向に延びる第2管部54と、を有し、前記排水ソケット50のうち前記第1管部52と前記第2管部54との間の屈曲点61における水平断面の流路面積は、前記トラップ部13への入り口から前記排水管部14の出口までの第1領域における最小の流路面積よりも大きい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部、トラップ部及び排水管部を有する便器本体と、
前記排水管部に接続される排水ソケットと、を備え、
前記排水ソケットは、前記排水管部に接続された状態において上下方向に延びる第1管部と、前記第1管部の下流側に設けられ、水平方向に延びる第2管部と、を有し、
前記排水ソケットのうち前記第1管部と前記第2管部との間の屈曲点における水平断面の流路面積は、前記トラップ部への入り口から前記排水管部の出口までの第1領域における最小の流路面積よりも大きい、水洗式便器。
【請求項2】
前記排水ソケットのうち前記屈曲点における断面であって、前記水平断面に対して45度をなす断面の流路面積は、前記第1領域における最小の流路面積よりも大きい、請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記屈曲点における水平断面の流路面積は、前記排水管部における最小の流路面積よりも大きい、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記トラップ部は、前記トラップ部への入り口から斜め下方に延びた下降流路と、前記下降流路の下流側に連続し、斜め上方に延びた上昇流路と、を有し、
前記屈曲点における水平断面の流路面積は、前記トラップ部への入り口から前記上昇流路の下流端までの第2領域における最小の流路面積よりも大きい、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記便鉢部の溜水部には、便器洗浄中に常に水が溜められ、
前記排水ソケットは前記排水管部に対して一方の側に偏芯しており、前記第1管部のうち前記一方の側と反対側の面の最も前記一方の側に位置する点は、前記排水管部の中心軸よりも前記反対側に位置している、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記第1管部における流路面積は、前記屈曲点における水平断面の流路面積よりも大きい、請求項5に記載の水洗式便器。
【請求項7】
前記第2管部における流路面積は、前記第1領域における最小の流路面積よりも大きい、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項8】
前記排水ソケットの断面の短手方向寸法に対する長手方向寸法の比率を横比としたとき、前記屈曲点における水平断面の横比、前記第1管部と前記第2管部との間に設けられた屈曲管部における断面の横比、及び前記第2管部の断面の横比は、前記第1管部の断面の横比よりも大きい、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項9】
前記トラップ部は、前記トラップ部への入り口から斜め下方に延びた下降流路と、前記下降流路の下流側に連続し、斜め上方に延びた上昇流路と、を有し、前記上昇流路の角度は、前記下降流路の角度よりも大きい、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器本体と、便器本体の排水管部に接続される排水ソケットとを備えた水洗式便器が知られている。例えば下記特許文献1に記載された排水ソケットは、鉛直方向に延びる垂下管と、水平方向に延びるアジャスター管とを有している。垂下管とアジャスター管との間は屈曲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水洗式便器は、排水ソケットの屈曲部において汚物を詰まりにくくしたいという要望があった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、排水ソケットの屈曲部において汚物を詰まりにくくできる水洗式便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水洗式便器は、便鉢部、トラップ部及び排水管部を有する便器本体と、前記排水管部に接続される排水ソケットと、を備え、前記排水ソケットは、前記排水管部に接続された状態において上下方向に延びる第1管部と、前記第1管部の下流側に設けられ、水平方向に延びる第2管部と、を有し、前記排水ソケットのうち前記第1管部と前記第2管部との間の屈曲点における水平断面の流路面積は、前記トラップ部への入り口から前記排水管部の出口までの第1領域における最小の流路面積よりも大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1のA-A位置における便器本体を示す端面図であって、排水ソケットを接続した状態を示す図
【
図3】
図2のB-B位置における便器本体を示す端面図
【
図4】
図2のC-C位置における便器本体を示す端面図
【
図5】
図2のD-D位置における便器本体を示す端面図
【
図7】
図6のE-E位置における排水ソケットを示す端面図
【
図8】
図6のF-F位置における排水ソケットを示す端面図
【
図9】
図6のG-G位置における排水ソケットを示す端面図
【
図10】
図6のH-H位置における排水ソケットを示す端面図
【
図12】
図11のJ-J位置における便器本体を示す端面図であって、排水ソケットを接続した状態を示す図
【
図17】
図16のN-N位置における便器本体を示す端面図であって、排水ソケットを接続した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本実施形態における水洗式便器31は、サイホンジェット式便器である。水洗式便器31は、
図1及び
図2に示すように、便器本体10と、排水ソケット50とを備えている。以下、各構成部材において、水洗式便器31に通常の姿勢で座る人の向きを基準とし、
図1の右側を前側、
図1の左側を後側、
図1の上側を左側、
図1の下側を右側、
図2の上側を上側、
図2の下側を下側として説明する。各図において、X軸の正方向側は前側、X軸の負方向側は後側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は右側、Z軸の負方向側は左側を示す。
【0009】
便器本体10は、
図2に示すように、便鉢部11、トラップ部13、排水管部14及び外周壁部15を有している。
図2には、便器本体10を左右方向中心で鉛直方向に切断した端面を示す。便鉢部11、トラップ部13、排水管部14及び外周壁部15は陶器製であり、一体に形成されている。便器本体10は、いわゆるフチレス便器である。便鉢部11には、洗浄水を吐出する吐水口が2箇所に形成されている。便器本体10のうち、
図2においてトラップ部13の下面18の上端を通る水平面より下側の部分は、溜水部12である。
【0010】
便鉢部11の底部には、トラップ部13への入り口が設けられている。トラップ部13への入り口をトラップ入口16と称する。トラップ入口16は、
図2においてトラップ部13の上面17の前端を含む水平面に形成される開口である。
図3には、トラップ入口16を含む便器本体10の水平端面を示す。
図3の端面においてトラップ入口16の面積は、6400mm
2である。
【0011】
トラップ部13は、
図2に示すように、下降流路19及び上昇流路21を形成している。下降流路19は、トラップ入口16から後方に向けて斜め下方に延びている。上昇流路21は、下降流路19の下流に連続している。上昇流路21は、後方に向けて斜め上方に延びている。下降流路19と上昇流路21との境界部は、緩やかに湾曲している。上昇流路21の下流端22は、
図2においてトラップ部13の下面18の上端を通る鉛直面とする。トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの領域は第2領域である。
【0012】
トラップ部13の内周面は、
図4及び
図5に示すように、全体として方形状をなしている。
図4には、
図2におけるトラップ部13の下端位置を通る便器本体10の鉛直端面を示す。
図5には、上昇流路21の下流端22の近傍における便器本体10の端面を示す。
図4及び
図5に示す端面は、
図2においてトラップ部13の下面18に対して直交する端面である。
図4の端面においてトラップ部13の流路面積は、3900mm
2である。
図5の端面において上昇流路21の流路面積は、3200mm
2である。流路面積は、各端面においてトラップ部13の内周面に囲まれた領域の面積である。第2領域の流路面積は、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22に向かって次第に小さくなっている。
【0013】
排水管部14は、
図2に示すように、略鉛直方向に垂下する排水流路26を形成している。排水流路26の下流端は、排水管部14の出口である。排水管部14の出口を排水出口24と称する。排水出口24は、鉛直下方に開口している。排水出口24は、排水管部14の下端位置の水平面に形成された開口である。トラップ入口16から排水出口24までの領域は第1領域である。
【0014】
排水管部14は、便器本体10の後端部において鉛直方向下向きに突出している。排水管部14の内周面の中心軸(内径の中心軸)28は、便器本体10が床面に設置された状態において床面に垂直である。排水管部14の内周面は、
図3に示すように、円形状をなしている。
【0015】
外周壁部15は、
図1及び
図2に示すように、便鉢部11、トラップ部13及び排水管部14を包囲している。外周壁部15の下端は、水洗式便器31の設置時に床面に接触する。
【0016】
排水ソケット50は、排水管部14に接続される。排水ソケット50が排水管部14に接続された状態を、単に接続状態と称する。排水ソケット50は、接続状態において、便器本体10の排水管部14と、床面に設けられた図示しない排水管とを連結する。排水ソケット50は排水管部14に対して後側に偏芯している。
【0017】
排水ソケット50は、
図6に示すように、便器接続部51と、第1管部52と、屈曲管部53と、第2管部54と、床接続部55と、を有している。
図6は、排水ソケット50の左右方向中心の鉛直断面である。便器接続部51は、排水管部14に接続される。便器接続部51は上下両側に開口している。便器接続部51の内周面は、円筒状をなしている。便器接続部51の内部には、排水管部14が上方から挿入される(
図2参照)。便器接続部51には、パッキン56が装着されている。
【0018】
第1管部52は、便器接続部51の下流側に連続して設けられている。第1管部52は、接続状態において上下方向に延びている。第1管部52は、接続状態において、斜め後方に偏心する曲がり流路を形成する。第1管部52の前面57は、後方に向かって斜め下向きに延びている。第1管部52の前面57は、第1管部52の外の面である。第1管部52の前面57の後端は、排水管部14の中心軸28よりも前側に位置している。第1管部52の後面58は、排水管部14の中心軸28と平行に延びている。第1管部52の後面58は、第1管部52の内の面である。
【0019】
図7には、第1管部52の中間位置の水平断面を示す。第1管部52の前面57は、緩やかに湾曲して左右に延びている。第1管部52の後面58は、円弧状に湾曲している。
図7の断面において、第1管部52の流路面積は、4300mm
2である。第1管部52の流路面積は、第1管部52の水平断面において第1管部52の内周面に囲まれた領域の面積である。第1管部52の流路面積は、後述する屈曲点61の流路面積よりも大きい。
【0020】
図7に示すように、第1管部52の水平断面における短手方向寸法100は、長手方向寸法101よりも大きい。第1管部52の水平断面における短手方向寸法100は、第1管部52の内周面の前後方向における最大寸法であり、X軸に平行な寸法である。第1管部52の水平断面における長手方向寸法101は、第1管部52の内周面の左右方向における最大寸法であり、Z軸に平行な寸法である。
図7の断面において、短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率は、短手方向寸法100:長手方向寸法101=1:1.3である。
【0021】
屈曲管部53は、
図6に示すように、第1管部52と第2管部54との間に設けられている。屈曲管部53は、屈曲面59を有している。屈曲面59は、
図6において、後述する屈曲点61を中心とした円弧状をなしている。屈曲面59の上端は、第1管部52の後面58に連なっている。屈曲面59の下端は、第2管部54の下面63の後端に連なっている。
【0022】
第2管部54は、屈曲管部53の下流側に連続して設けられている。第2管部54は、接続状態において後方から前方へ排水が流れるように水平方向に延びている。第2管部54は、接続状態において、水平な流路を形成する。第2管部54の流路面積は一定である。
【0023】
図8には、第2管部54の中間位置における排水ソケット50の鉛直断面を示す。第2管部54は、左右方向に長い長方形状をなしている。第2管部54の上面62及び下面63は緩やかに湾曲して左右に延びている。第2管部54の上面62及び下面63は、第2管部54の外の面である。第2管部54の流路面積は、4000mm
2である。第2管部54の流路面積は、第2管部54の鉛直断面において第2管部54の内周面に囲まれた領域の面積である。第2管部54の流路面積は、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。
【0024】
図8に示すように、第2管部54の鉛直断面における短手方向寸法100は、長手方向寸法101よりも大きい。第2管部54の鉛直断面における短手方向寸法100は、第2管部54の内周面の上下方向における最大寸法であり、Y軸に平行な寸法である。第2管部54の鉛直断面における長手方向寸法101は、第2管部54の内周面の左右方向における最大寸法であり、Z軸に平行な寸法である。
図8の断面において、第2管部54の鉛直断面における短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率は、短手方向寸法100:長手方向寸法101=1:1.6である。
【0025】
床接続部55は、
図6に示すように、第2管部54の下流側に連続して設けられている。床接続部55は、図示しない締結部材によって床面に固定される。
【0026】
排水ソケット50は、第1部材64、第2部材65及び第3部材66によって構成されている。第1部材64は、便器接続部51を有している。第2部材65は、第1管部52、屈曲管部53及び第2管部54を構成している。第3部材66は、第2管部54及び床接続部55を構成している。第1部材64は第2部材65の上端部に接続されている。第2部材65の第2管部54と第3部材66の第2管部54とは径方向に重なって嵌合している。第2部材65の第2管部54は、第3部材66の第2管部54の内側に嵌合している。
【0027】
屈曲点61は、
図6における第1管部52の前面57と、第2管部54の上面62との交点である。屈曲点61は、第1管部52の前面57のうち最も後側に位置する点と一致している。屈曲点61は、第2管部54の上面62の後端と一致している。第2管部54の上面62は、第3部材66の上面である。屈曲点61は、排水管部14の中心軸28よりも前側に位置している。
【0028】
図9には、屈曲点61を含む水平断面を示す。屈曲点61の水平断面において、第1管部52の前面57は左右に直線状に延びている。屈曲点61の水平断面において第1管部52の後面58は円弧状に湾曲している。
図9の断面において、屈曲点61の水平断面の流路面積は、4100mm
2である。屈曲点61の水平断面の流路面積は、屈曲点61の水平断面において第1管部52の内周面に囲まれた領域の面積である。
【0029】
図9に示すように、屈曲点61の水平断面における短手方向寸法100は、長手方向寸法101よりも大きい。屈曲点61の水平断面における短手方向寸法100は、第1管部52の内周面の前後方向における最大寸法であり、X軸に平行な寸法である。屈曲点61の水平断面における長手方向寸法101は、第1管部52の内周面の左右方向における最大寸法であり、Z軸に平行な寸法である。屈曲点61の水平断面における短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率は、短手方向寸法100:長手方向寸法101=1:1.5である。
【0030】
図10には、排水ソケット50のうち屈曲点61における断面であって、屈曲点61の水平断面に対して45度をなす断面を示す。屈曲点61の水平断面に対して45度をなす断面を、屈曲管部53の断面と称する。屈曲管部53の断面において屈曲管部53の内周面は、左右方向に長い形状である。屈曲管部53の断面において、屈曲管部53の内周面の上下両面は、湾曲している。
図10の断面において、屈曲管部53の断面の流路面積は、3600mm
2である。屈曲管部53の断面の流路面積は、屈曲管部53の断面において屈曲管部53の内周面に囲まれた領域の面積である。
【0031】
図10に示すように、屈曲管部53の断面における短手方向寸法100は、長手方向寸法101よりも大きい。屈曲管部53の断面における長手方向寸法101は、屈曲管部53の内周面の左右方向における最大寸法であり、Z軸に平行な寸法である。屈曲管部53の断面における短手方向寸法100は、屈曲管部53の内周面の長手方向に直交する方向の最大寸法である。屈曲管部53の断面における短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率は、短手方向寸法100:長手方向寸法101=1:1.48である。
【0032】
排水ソケット50の断面の短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率を横比としたとき、第2管部54の鉛直断面の横比は、第1管部52の水平断面の横比、及び屈曲管部53の断面の横比よりも大きい。
【0033】
水洗式便器31において、トラップ入口16の面積は、屈曲点61の水平断面の流路面積よりも大きく、屈曲点61の水平断面の流路面積は、第2管部54の流路面積よりも大きく、第2管部54の流路面積は、上昇流路21の流路面積よりも大きい。
【0034】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。水洗式便器31は、便器本体10と、排水ソケット50と、を備えている。便器本体10は、便鉢部11、トラップ部13及び排水管部14を有している。排水ソケット50は、排水管部14に接続される。排水ソケット50は、第1管部52と、第2管部54と、を有している。第1管部52は、接続状態において上下方向に延びている。第2管部54は、第1管部52の下流側に設けられている。第2管部54は、接続状態において水平方向に延びている。排水ソケット50のうち第1管部52と第2管部54との間の屈曲点61における水平断面の流路面積は、トラップ入口16から排水出口24までの第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0035】
排水ソケット50のうち屈曲点61における断面であって、水平断面に対して45度をなす断面の流路面積は、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61に沿って屈曲する流路の流路面積が、第1領域における最小の流路面積よりも大きいから、排水ソケット50の屈曲部において汚物等をスムーズに通過させることができる。
【0036】
トラップ部13は、下降流路19と、上昇流路21と、を有している。下降流路19は、トラップ入口16から斜め下方に延びている。上昇流路21は、下降流路19の下流側に連続し、斜め上方に延びている。屈曲点61における水平断面の流路面積は、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの第2領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0037】
第1管部52における流路面積は、屈曲点61における水平断面の流路面積よりも大きい。この構成によれば、偏芯している排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0038】
第2管部54における流路面積は、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、第2管部54において汚物を詰まりにくくできる。
【0039】
排水ソケット50の断面の短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率を横比としたとき、屈曲点61における水平断面の横比、屈曲管部53における断面の横比、及び第2管部54の鉛直断面の横比は、第1管部52の水平断面の横比よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61、屈曲管部53及び第2管部54の断面を、第1管部52の断面よりも横長にすることで、面積を拡大しつつ、サイフォンを起こしやすくできる。
【0040】
<実施形態2>
次に、本開示を具体化した実施形態2に係る水洗式便器41を
図11~
図15によって説明する。本実施形態の水洗式便器41は、サイホン式便器である点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
水洗式便器41は、実施形態1と同様、便器本体10と、排水ソケット50とを備えている。排水ソケット50は、実施形態1と逆向きに接続されている。これによって、排水ソケット50は排水管部14に対して前側に偏芯している。
【0042】
便器本体10は、実施形態1と同様、便鉢部11、トラップ部13、排水管部14及び外周壁部15を有している。
図12には、便器本体10を左右方向中心で鉛直方向に切断した端面を示す。便鉢部11の上端部は、上方に向かって便鉢部11の中心側に突き出るオーバーハング部71を有している。
【0043】
トラップ部13は、実施形態1と同様、下降流路19及び上昇流路21を形成している。トラップ入口16は、
図12においてトラップ部13の上面17の下端と便鉢部11の底面の後端とを含む面に形成される開口である。上昇流路21の下流端22は、実施形態1と同様、
図12においてトラップ部13の下面18の上端を通る鉛直面の位置とする。第2領域は、実施形態1と同様、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの領域である。
【0044】
図13には、トラップ入口16を含むトラップ入口16に平行な便器本体10の端面を示す。
図14には、トラップ部13の上昇流路21の中間位置における便器本体10の端面を示す。
図14に示す端面は、
図12におけるトラップ部13の下面18に対して直交する端面である。
図13の端面においてトラップ入口16の面積は、5600mm
2である。
図14の端面において上昇流路21の流路面積は、2900mm
2である。第2領域の流路面積は、実施形態1と同様、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22に向かって次第に小さくなっている。
【0045】
排水管部14は、実施形態1と同様、略鉛直方向に垂下する排水流路26を形成している。
図15には、排水管部14の下端位置の便器本体10の水平端面を示す。
図15の端面において水平管部の流路面積は、2500mm
2である。第1領域は、実施形態1と同様、トラップ入口16から排水出口24までの領域である。排水ソケット50の第2管部54の流路面積は、排水管部14の流路面積よりも大きい。
【0046】
外周壁部15の後壁には開口部72が形成されている。開口部72は、排水管部14及び排水ソケット50を後方に開放している。
【0047】
水洗式便器41において、トラップ入口16の面積は、屈曲点61の水平断面の流路面積よりも大きく、屈曲点61の水平断面の流路面積は、第2管部54の流路面積よりも大きく、第2管部54の流路面積は、上昇流路21の流路面積よりも大きく、上昇流路21の流路面積は、排水管部14の流路面積よりも大きい。
【0048】
以上のように本実施形態においては、実施形態1と同様、排水ソケット50のうち第1管部52と第2管部54との屈曲点61における水平断面の流路面積は、トラップ入口16から排水出口24までの第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0049】
排水ソケット50のうち屈曲点61における断面であって、水平断面に対して45度をなす断面の流路面積は、実施形態1と同様、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61に沿って屈曲する流路の流路面積が、第1領域における最小の流路面積よりも大きいから、排水ソケット50の屈曲部において汚物等をスムーズに通過させることができる。
【0050】
屈曲点における水平断面の流路面積は、排水管部14における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0051】
屈曲点61における水平断面の流路面積は、実施形態1と同様、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの第2領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0052】
第2管部54における流路面積は、実施形態1と同様、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、第2管部54において汚物を詰まりにくくできる。
【0053】
排水ソケット50の断面の短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率を横比としたとき、実施形態1と同様、屈曲点61における水平断面の横比、屈曲管部53における断面の横比、及び第2管部54の鉛直断面の横比は、第1管部52の水平断面の横比よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61、屈曲管部53及び第2管部54の断面を、第1管部52の断面よりも横長にすることで、面積を拡大しつつ、サイフォンを起こしやすくできる。
【0054】
<実施形態3>
次に、本開示を具体化した実施形態3に係る水洗式便器91を
図16~
図22によって説明する。本実施形態の水洗式便器91は、洗い落とし式便器である点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
水洗式便器91は、実施形態1と同様、便器本体10と、排水ソケット50とを備えている。便器本体10は、実施形態1と同様、便鉢部11、トラップ部13、排水管部14及び外周壁部15を有している。
図17には、便器本体10を左右方向中心で鉛直方向に切断した端面を示す。便鉢部11の上端部は、上方に向かって便鉢部11の中心側に突き出るオーバーハング部71を有している。溜水部12には、便器洗浄中に常に水が溜められる。
【0056】
トラップ部13は、実施形態1と同様、下降流路19及び上昇流路21を形成している。溜水部12の後面の前端には凸部81が形成されている。トラップ入口16は、
図17において溜水部12の凸部81の前端を含む水平面に形成される開口である。トラップ部13の下面18の曲率半径の最も小さい部分は、トラップ部13の最下端にある。
【0057】
上昇流路21の下流端22は、実施形態1と同様、トラップ部13の下面18の上端を通る鉛直面の位置とする。第2領域は、実施形態1と同様、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの領域である。
【0058】
図18には、
図17におけるトラップ部13の下面18の下端を含む便器本体10の端面を示す。
図19には、上昇流路21の下流端22における便器本体10の端面を示す。
図20には、上昇流路21の中間位置における便器本体10の端面を示す。
図18、19、20に示す端面は、
図17におけるトラップ部13の下面18に対して直交する端面である。
図18の端面においてトラップ部13の流路面積は、3950mm
2である。
図19の端面において上昇流路21の流路面積は、3900mm
2である。
図20の端面において流路面積は、5600mm
2である。
【0059】
図17に示すように、上昇流路21の角度α1は、下降流路19の角度α2よりも大きい。上昇流路21の角度α1は、直線82とX軸とのなす角度である。直線82は、点84と点85とを結ぶ線である。点84は、
図17においてトラップ部13の下面18の下端を通る鉛直な線のうちトラップ部13の上面17と下面18との中心点である。点85は、上昇流路21の下流端22におけるトラップ部13の上面17と下面18との中心点である。下降流路19の角度α2は、直線83とX軸とのなす角度である。直線83は、
図17においてトラップ入口16の前後方向の中心点と点84とを結ぶ線である。上昇流路21の角度α1と下降流路19の角度α2との差は5度以上あると良い。具体的には、上昇流路の角度α1は45度であり、下降流路19の角度α2は40度である。
【0060】
排水管部14は、実施形態1と同様、略鉛直方向に垂下する排水流路26を形成している。
図21には、排水管部14の下端位置における排水管部14の水平端面を示す。
図21の端面において排水管部14の流路面積は、3500mm
2である。排水ソケット50の第2管部54の流路面積は、排水管部14の流路面積よりも大きい。
【0061】
排水ソケット50は、実施形態1と同様、便器接続部51と、第1管部52と、屈曲管部53と、第2管部54と、床接続部55と、を有している。第2管部54は、実施形態1と比べて水平方向に長く延びている。排水ソケット50は、実施形態1と同様、排水管部14に対して後側に偏芯している。第2管部54は、床面の排水管部の位置によってカットし、床接続部55の位置を調整できる。
【0062】
排水ソケット50の断面形状は、実施形態1と同じである。具体的には、
図22のT-T位置における断面図は、
図7に示される。
図22のU-U位置における断面図は、
図8に示される。
図22のV-V位置における断面図は、
図9に示される。
図22のW-W位置における断面図は、
図10に示される。
【0063】
水洗式便器91において、屈曲点61の水平断面の流路面積は、第2管部54の流路面積よりも大きく、第2管部54の流路面積は、上昇流路21の流路面積よりも大きく、上昇流路21の流路面積は、排水管部14の流路面積よりも大きい。
【0064】
以上のように本実施形態においては、実施形態1と同様、排水ソケット50のうち第1管部52と第2管部54との屈曲点61における水平断面の流路面積は、トラップ入口16から排水出口24までの第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0065】
排水ソケット50のうち屈曲点61における断面であって、水平断面に対して45度をなす断面の流路面積は、実施形態1と同様、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61に沿って屈曲する流路の流路面積が、第1領域における最小の流路面積よりも大きいから、排水ソケット50の屈曲部において汚物等をスムーズに通過させることができる。
【0066】
屈曲点における水平断面の流路面積は、排水管部14における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0067】
溜水部12には、便器洗浄中に常に水が溜められる。排水ソケット50は排水管部14に対して後側に偏芯している。第1管部52の前面57の最も後側に位置する点は、排水管部14の中心軸28よりも前側に位置している。この構成によれば、排水ソケット50においてサイホンがおきにくいから、洗い落とし便器において水の落差による流水作用を、排水ソケット50が邪魔しないようにできる。
【0068】
屈曲点61における水平断面の流路面積は、実施形態1と同様、トラップ入口16から上昇流路21の下流端22までの第2領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、排水ソケット50の屈曲部において汚物を詰まりにくくできる。
【0069】
第2管部54における流路面積は、実施形態1と同様、第1領域における最小の流路面積よりも大きい。この構成によれば、第2管部54において汚物を詰まりにくくできる。
【0070】
排水ソケット50の断面の短手方向寸法100に対する長手方向寸法101の比率を横比としたとき、実施形態1と同様、屈曲点61における水平断面の横比、屈曲管部53における断面の横比、及び第2管部54の鉛直断面の横比は、第1管部52の水平断面の横比よりも大きい。この構成によれば、屈曲点61、屈曲管部53及び第2管部54の断面を、第1管部52の断面よりも横長にすることで、面積を拡大しつつ、サイフォンを起こしやすくできる。
【0071】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0072】
(1)上記実施形態では、便器本体10及び排水ソケット50の流路面積について具体的な数値を例示したが、流路面積の数値はこれに限られない。
【符号の説明】
【0073】
10…便器本体、11…便鉢部、12…溜水部、13…トラップ部、14…排水管部、16…トラップ入口(トラップ部への入り口)、19…下降流路、21…上昇流路、24…排水出口(排水管部の出口)、28…排水管部の中心軸、31,41,91…水洗式便器、50…排水ソケット、52…第1管部、54…第2管部、61…屈曲点