(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146308
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、低温押出ラミネート加工用樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
B29C 48/15 20190101AFI20241004BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241004BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20241004BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241004BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20241004BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B29C48/15
B32B27/32 E
B29C48/08
C08J5/18 CES
C08L23/04
C08L23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059120
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】井藤 航太
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好正
(72)【発明者】
【氏名】宇都 雄一
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA19
4F071AA82
4F071AA88
4F071AF19
4F071AF30
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC02
4F100AK03B
4F100AK03G
4F100AK04A
4F100AK06C
4F100AK06J
4F100AK63C
4F100AK63J
4F100AL02C
4F100AL02J
4F100CB00B
4F100CB00G
4F100EH202
4F100EH232
4F100EJ37A
4F100GB15
4F207AA04
4F207AA08
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KB26
4F207KM15
4J002BB03X
4J002BB05W
4J002GF00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温で押出ラミネート加工が可能であり、高いラミネート接着強度を発現する積層体の製造方法、それに用いる低温押出ラミネート加工用樹脂組成物及びそれを用いる押出ラミネート製造方法、更には積層体を提供する。特に、ポリエチレン基材を用いたモノマテリアル包装材に適した積層体を提供する。
【解決手段】特定のMFRと密度を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と特定のMFRと密度を有する分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)とを特定の割合で含むポリエチレン層を低温で押出ラミネート加工してなる層を少なくとも含む積層体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ラミネート加工法によって得られる積層体の製造方法であって、少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、前記ポリエチレン層(III)をラミネート加工するときの樹脂温度がダイリップ内において220℃~280℃であって、前記ポリエチレン層(III)が、以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、ポリエチレン層(III)中に分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれる樹脂組成物からなることを特徴とする積層体の製造方法。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
【請求項2】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【請求項3】
基材層(I)がポリエチレン系樹脂からなる延伸基材であり、接着層(II)がポリオレフィン系接着剤からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
ダイリップ内の樹脂温度が220℃~280℃である低温下で押出ラミネート加工を行う、低温押出ラミネート加工用樹脂組成物であって、以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれることを特徴とする樹脂組成物。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
【請求項5】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の低温押出ラミネート加工用樹脂組成物。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【請求項6】
少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、前記ポリエチレン層(III)が上記請求項4または5の樹脂組成物からなり、当該ポリエチレン層(III)を押出ラミネート加工するときの樹脂温度がダイリップ内において220℃~280℃と低温であることを特徴とする押出ラミネート製造方法。
【請求項7】
少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、基材層(I)がポリエチレン系フィルムからなり、接着層(II)がポリオレフィン系接着剤からなり、ポリエチレン層(III)が以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれることを特徴とする積層体。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
【請求項8】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする請求項7に記載の積層体。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【請求項9】
ポリエチレン層(III)の接着層(II)とは反対側にポリオレフィンフィルム(IV)が隣接して積層された請求項7または8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載の積層体を用いたモノマテリアル包装材。
【請求項11】
請求項9に記載の積層体を用いたモノマテリアル包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法、低温押出ラミネート加工用樹脂組成物及びそれを用いた押出ラミネート製造方法、更には積層体に関する。詳しくは、従来一般的に行われている温度よりも低温、すなわちダイリップ内温度が220℃~280℃という低温でも押出ラミネート加工が可能であり、高いラミネート接着強度を発現する積層体の製造方法、それに用いる樹脂組成物及びそれを用いる低温ラミネート製造方法、更には積層体に関する。また、特にポリエチレン基材を用いたモノマテリアル包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴う自然災害リスクの増大が認識され、モノやサービスなどの生産活動における温室効果ガス削減に対し、益々関心が集まっている。この潮流はプラスチック製品においても同様であり、包装材の生産から廃棄までのライフサイクル全体を通じた二酸化炭素排出量を削減する取り組みが盛んに行われている。また、世界情勢の不安定化によるエネルギー価格の高騰も伴い、包装材生産工程での省エネルギー化が求められている。更には、プラスチック材料をリサイクルすることによって実質的な二酸化炭素排出量を削減する目的から、マテリアルリサイクル可能な包装材も求められている。
【0003】
一般的にポリエチレンを用いた包装材の製造方法として、インフレーション加工、押出ラミネート加工、ドライラミネート加工などがある。この中でも押出ラミネート加工は生産性が高く様々な包装材の製造に用いられているが、ラミネート強度を上げるために高温で樹脂表面を強制的に酸化させる必要があり、樹脂を加熱溶融させるために多くのヒーターエネルギーを必要とする。また、高温で加工することによるフィルム有効幅の縮小(ネックイン)を避けるため、分岐状低密度ポリエチレンが使用されることが多い。
しかしながら、ラミネート加工時のヒーターのエネルギー消費量を低減するために、加工温度を下げると、樹脂表面の酸化が十分に進まず、ラミネート強度が低下し、包装材にしたときにデラミやシール強度不良などの問題が発生する。
また、ポストコンシューマーリサイクル(PCR)やポストインダストリアルリサイクル(PIR)をはじめとするマテリアルリサイクル性の観点から、ポリエチレン基材を用いたモノマテリアル包装材も開発されはじめている。一般的な押出ラミネートにおいて、ポリエチレン基材を用いる場合、加工温度がポリエチレン基材の融点よりも圧倒的に高温となるため、ラミネートした際の、ポリエチレン基材の収縮やたるみ、シワの問題が発生する。
以上より、分岐状低密度ポリエチレンを用いて、ラミネート加工時のヒーターエネルギー消費量を抑制しながら、十分なラミネート強度を有する包装材を提供することは困難であった。また、一般的な高温での押出ラミネート加工においては、ポリエチレン基材を用いたモノマテリアル包装材の提供は困難であった。
【0004】
低温ラミネート加工において、十分なラミネート強度を発現する包装材を提供する方法として、ポリオレフィン系樹脂と分子内不飽和結合を有する化合物を含むポリオレフィン系樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この発明における加工温度領域は280℃程度であり、ヒーターエネルギー消費量の低減という観点では、効果は限定的である。
また、ポリエチレン基材とポリエチレンヒートシールフィルムをポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物からなる接着層を用いて積層させることによるモノマテリアル包装材が提案されている(特許文献2)。しかしながら、接着層を構成する樹脂組成物がウレタン結合によって硬化するため、ポリエチレンとの相溶性が悪くなり、マテリアルリサイクルした際のポリエチレン中での分散性が悪く、光学特性を低下させやすい。また、ポリエチレン基材とヒートシールフィルムそれぞれを積層させる場合、接着強度を保持するために接着層を3μm程度と厚く設ける必要があり、包装材全体に対する接着層成分の比率が高くなるため、より光学特性の低下を起こしやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000―108278号公報
【特許文献2】特開2020―055157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、従来技術が抱える上述の問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、従来の押出ラミネート加工における加工温度よりもさらに低温、具体的にはダイリップ内での樹脂温度が220℃~280℃となる低温下で押出ラミネート加工することにより、製造工程でのヒーター消費電力を抑えつつ、十分なラミネート強度を確保できる樹脂組成物の提供、およびそれを用いた低温ラミネート加工法、積層体の製造方法の提供である。さらには、マテリアルリサイクル性に優れたポリエチレン系モノマテリアル積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<発明1>
押出ラミネート加工法によって得られる積層体の製造方法であって、少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、前記ポリエチレン層(III)をラミネート加工するときの樹脂温度がダイリップ内において220℃~280℃であって、前記ポリエチレン層(III)が、以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、ポリエチレン層(III)中に分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれる樹脂組成物からなることを特徴とする積層体の製造方法。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
<発明2>
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする発明1に記載の積層体の製造方法。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
<発明3>
基材層(I)がポリエチレン系樹脂からなる延伸基材であり、接着層(II)がポリオレフィン系接着剤からなることを特徴とする発明1又は2に記載の積層体の製造方法。
<発明4>
ダイリップ内の樹脂温度が220℃~280℃である低温下で押出ラミネート加工を行う、低温押出ラミネート加工用樹脂組成物であって、以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれることを特徴とする樹脂組成物。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
<発明5>
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の低温押出ラミネート加工用樹脂組成物。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
<発明6>
少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、前記ポリエチレン層(III)が上記発明4または5の樹脂組成物からなり、当該ポリエチレン層(III)を押出ラミネート加工するときの樹脂温度がダイリップ内において220℃~280℃と低温であることを特徴とする押出ラミネート製造方法。
<発明7>
少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層され、基材層(I)がポリエチレン系フィルムからなり、接着層(II)がポリオレフィン系接着剤からなり、ポリエチレン層(III)が以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-2)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれることを特徴とする積層体。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
<発明8>
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たすことを特徴とする発明7に記載の積層体。
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
<発明9>
ポリエチレン層(III)の接着層(II)とは反対側にポリオレフィンフィルム(IV)が隣接して積層された発明7または8に記載の積層体。
<発明10>
発明7又は発明8に記載の積層体を用いたモノマテリアル包装材。
<発明11>
発明9に記載の積層体を用いたモノマテリアル包装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温で押出ラミネート加工することにより、省エネルギー性に優れ、十分なラミネート強度を有する積層体や、それに用いる樹脂組成物を提供できる。さらには、それを用いた低温押出ラミネート加工法、およびマテリアルリサイクル性に優れたポリエチレン系モノマテリアル積層体を提供できる。ポリエチレン基材へのラミネート時に基材の収縮やたるみ、シワの発生を低減するだけでなく、マテリアルリサイクル時の光学特性の低下を抑制する積層体も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層体の製造方法に適した低温押出ラミネート用樹脂組成物およびそれを用いた積層体、積層体の製造方法、包装材について、項目ごとに詳細に説明する。
【0010】
1.積層体の基本構成
本願発明の積層体は、少なくとも、基材層(I)/接着層(II)/ポリエチレン層(III)がこの順番に隣接して積層された積層構成を有し、さらに、該ポリエチレン層(III)が、押出ラミネート加工法によって得られる積層体である(以下「本発明の積層体」とも言う)。基材層(I)、接着層(II)、ポリエチレン層(III)の詳細については後述する。
さらに好ましくは、該基材層(I)がポリエチレン樹脂からなる基材(ポリエチレンフィルム)、特に好ましくはポリエチレン延伸基材であり、さらには接着層(II)がポリエチレン系接着剤からなる積層体であることを一つの好ましい特徴とする。すべての層がポリエチレンからなる、モノマテリアル材であることで、マテリアルリサイクル性に優れた積層体となる。
積層体の更に好ましい態様として、ポリエチレン層(III)の接着層(II)とは反対側に、ポリオレフィンフィルム(IV)が隣接して積層された積層体が挙げられる。
【0011】
1.1 基材層(I)
本願発明の基材層(I)としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の単層フィルムまたはこれらの同種若しくは異種材料からなる積層フィルムが例示できる。これらの延伸フィルムが挙げられる。ここで、基材層(I)に含まれるポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂の量は、例えば50重量%~100重量%である。その他の樹脂と組み合わせてもよい。
【0012】
1.2.ポリエチレン基材フィルム
特に本願発明の積層体は、ポリエチレン樹脂からなる基材(ポリエチレン系フィルム)であることが好ましく、さらに、ポリエチレン樹脂からなる延伸基材であることが好ましい。ポリエチレン樹脂からなる基材やポリエチレン樹脂の延伸基材は、昨今のモノマテリアルリサイクル性の包装材の開発において、すべてをポリエチレン系の樹脂材で構成したモノマテリアル積層体において必要とされている。しかしながら、一般的な高温での押出ラミネート加工においては、ポリエチレン基材の融点が低いため、ポリエチレン基材を用いたモノマテリアル包装材の提供は困難であった。しかし、本発明において、低温押出ラミネート加工が可能な樹脂組成物との組み合わせにより十分な効果を発揮することができる。
【0013】
ポリエチレン樹脂からなる基材フィルムとしては、未延伸基材フィルム、延伸基材フィルム又は電子線架橋フィルムなどを用いることができるが、好ましくは未延伸基材フィルム、延伸基材フィルムが用いられる。
【0014】
未延伸基材フィルムとは、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形またはTダイ成形にて得られるフィルムを意味する。延伸基材フィルムとは、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形またはTダイ成形にて得られたフィルムを、延伸して得られるフィルムのことを意味する。
【0015】
・使用するポリエチレン樹脂組成物
ポリエチレン基材フィルムに使用されるポリエチレン樹脂組成物は特に限定されないが、エチレンを単独重合、もしくはエチレンとα―オレフィンを共重合させたバージン樹脂でも、使用済みのポリエチレンを主成分とする製品をメカニカルリサイクルして得られるリサイクル樹脂でも、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したエチレン系重合体であってもよい。分類としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、これらを混合したポリエチレン基材フィルム用樹脂組成物であってもよい。
【0016】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0017】
・未延伸ポリエチレン基材フィルム
未延伸ポリエチレン基材フィルムの製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法またはカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形またはTダイ成形法が好ましい。また単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。
また未延伸ポリエチレン基材フィルムの製造条件は特に限定されるものではないが、フィルムの厚みは5μm~100μが好ましい。より好ましくは10μm~90μmであり、さらに好ましくは15μm~80μmである。
【0018】
・延伸ポリエチレン基材フィルム
延伸ポリエチレン基材フィルムは原反を延伸することで得られる。原反の製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法またはカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形またはTダイ成形法が好ましい。また単一のポリエチレン樹脂組成物を用いた単層フィルムであってもよいし、複数のポリエチレン樹脂組成物を用いた多層フィルムであってもよい。
また原反の製造条件は特に限定されるものではないが、原反フィルムの厚みは20μm~200μmが好ましい。より好ましくは30μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~200μmである。
・延伸ポリエチレン基材フィルムの延伸方法
延伸ポリエチレン基材フィルムとしては1軸延伸フィルムであっても、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸方法は縦1軸延伸、横1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれかが使用可能である。
【0019】
・多層延伸フィルム
ポリエチレン樹脂組成物から構成される延伸基材フィルムは、複数のフィルムを積層させた多層延伸フィルムであってもよい。
使用できる樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)が挙げられる。また、積層の方法は共押成形によって得られる共押フィルムを、更に延伸してもよいし、接着剤を使用してフィルム同士を接着したものであってもよい。
【0020】
積層体を構成する基材層として利用可能なポリエチレンの延伸フィルムの製造方法については、例えば特開2022-155350号公報、特開2022-039843号公報などに記載されている。その他公知のポリエチレンのフィルム、又はその延伸フィルムを用いることができる。
基材層には、印刷、蒸着、各種コーティング等が施されていてもよい。
【0021】
1.2 接着層(II)
本願発明の接着層(II)を構成するものとしては、接着剤を使用することができる。使用する接着剤は少なくとも1つの樹脂組成物を含むが、特に制限はない。使用できる接着剤は例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系がある。また、近年開発されたポリオレフィン系がある。また、上記いずれかの樹脂組成物を含む接着剤は、特に制限はないが必要に応じて1液型、2液型、ホットメルト型を使用することができる。
特に、近年開発ニーズが高まっている、すべてがポリエチレン樹脂から構成される、モノマテリアルの包装材においては、ポリオレフィン系接着剤を用いて使うことが好ましい。
ポリオレフィン系接着剤としては、例えば特許3759160号公報に記載のような、ポリオレフィン樹脂水性分散液型の接着剤を用いることができる。
【0022】
1.3 ポリエチレン層(III)
ポリエチレン層(III)は押出ラミネート加工により設ける層であり、本発明の好ましい態様としては、220℃~280℃といった、一般的な押出ラミネート加工では実施されない領域の低温下においてラミネート加工されて設けられる層である。この層を構成する樹脂組成物の特徴については後述する。
【0023】
1.4 ポリオレフィンフィルム(IV)
本願の積層体において、好ましくは、ポリオレフィンフィルム(IV)を、ポリエチレン層(III)の上に、さらに積層することが可能となる。
ポリオレフィンフィルム(IV)を用いて、サンドイッチラミネートをすると、ポリエチレン層(III)の接着強度が著しく向上していることが確認できる。これは、ラミネート部においてポリエチレン層(III)と冷却ロールの間にポリオレフィンフィルム(IV)を介することで、ポリエチレン層(III)が保温され、冷却固化速度が低下することによって、溶融状態での接着層(II)との接触時間が長くなることによる界面相互作用の向上が寄与していると考えられる。
ポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを主成分とした未延伸又は一軸又は二軸の延伸フィルムが挙げられる。
【0024】
2.ポリエチレン層(III)を構成する低温押出ラミネート用ポリエチレン樹脂組成物
ポリエチレン層(III)を構成する本発明のポリエチレン樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、以下(a-1)~(a-2)を満たす直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と以下(b-1)~(b-3)を満たす分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)を少なくとも含み、ポリエチレン層(III)中に分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれる樹脂組成物からなることを特徴とする。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
(a-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(a-2)密度が0.918g/cm3未満
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
(b-2)密度が0.915~0.925g/cm3
【0025】
2.1 直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)とはエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、通常触媒重合法により得られる。これらのエチレン・α-オレフィン共重合体のコモノマーとして用いられるα-オレフィンは、炭素数3~20、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンである。α-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、具体例には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。
コモノマーとして用いられるα-オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を同時に用いていてもよい。例えば、ターポリマーのようにα-オレフィンを2種類以上用いた多元系共重合体も用いることができる。具体例としては、エチレン・プロピレン・1-ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン3元共重合体等が挙げられる。
【0026】
これらのエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするものが好ましく、例えば、エチレン含有量が50~99重量%、より好ましくは60~97重量%、さらに好ましくは70~95重量%の範囲から選択される。また、α-オレフィン含有量は、好ましくは1~50重量%、より好ましくは3~40重量%、さらに好ましくは5~30重量%の範囲から選択される。
なお、エチレン含有量は、13C-NMRスペクトル分析により測定される値であり、オルトジクロロベンゼンに溶解した試料(濃度:300mg/2mL)の、ヘキサメチルジシロキサンを標準物質として、温度120℃、周波数100MHz、スペクトル幅20000Hz、パルス繰り返し時間10秒、フリップ角40度の条件で測定される。
上記エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法としては、後述する特性の物性を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物が得られれば、特に限定されず、チーグラー触媒、メタロセン触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。中でも、メタロセン触媒により製造されたメタロセン触媒特有の物性を有するメタロセン触媒系エチレン・α-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、市販されているものの中からも適宜選択することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製「アフィニティー」、日本ポリエチレン社製「カーネル」「ハーモレックス」等が挙げられる。
【0027】
(a-1)MFR
本発明に用いる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)は、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは3~70g/10分である。MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。
【0028】
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がとられる。エチレン・プロピレン共重合体のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0029】
(a-2)密度
本発明に用いる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)は、密度が0.918g/cm3未満であることを必要とし、好ましくは、密度が0.85~0.918g/cm3であり、好ましくは0.87~0.916g/cm3であり、より好ましくは0.88~0.915g/cm3である。密度が0.85g/cm3未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.918g/cm3を超えると、接着性が不良となるので好ましくない。
【0030】
ポリマーの密度を調節するには、例えばコモノマー含有量、重合温度、触媒量など適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・プロピレン共重合体の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
また、上記共重合体組成物は、3種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体を使用することができる。
【0031】
2.2 好適な直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(A)(エチレン・プロピレン共重合体)
さらに、好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)がさらに以下の(a-3)~(a-4)を満たす特殊な直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(A)であることが挙げられる。(以下、「エチレン・プロピレン共重合体(A)」とも称する。)
(a-3)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として4mol%以下含んでいてもよい。(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(a-4)エチレン系共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
また、さらに下記(a-7)の条件を満たすことが好ましい。
(a-7)当該樹脂組成物中の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)が1~90重量%
(ただし、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)及び分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)以外のその他成分を含む場合は各成分の重量%の合計が100重量%を超えない)
【0032】
なお、エチレンとプロピレンを構成成分とする共重合体としては、いわゆるエチレンプロピレンゴム(EPM)と呼ばれる、プロピレン成分を20mol%より多く含み、密度も0.870g/cm3以下の溶液重合法により得られるゴム状重合体が、エラストマーの分野において用いられているが、本願発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)は、これらエチレンプロピレンゴムとは、密度範囲も、含まれるエチレンやプロピレンの量が異なり、物性等も全く異なる重合体である。
【0033】
また、プロピレン重合体において、製造過程でエチレン成分を若干量含むプロピレンエチレン共重合体も知られているが、これらもそのプロピレン含有量等の点で大きく異なり、物性等もまったく異なる重合体である。
【0034】
また、いわゆる通常の直鎖状の分子構造を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(LLDPE)においてはフィルム用途に開発されることが多いため、通常、高強度の共重合体を得るために、C4やC6といったC4以上のα-オレフィンを主のコモノマー成分とするのが常である。比較的低強度となるC3コモノマーを主のコモノマー成分として用いたエチレンとプロピレンからなる共重合体であって、密度が0.87g/cm3を超える共重合体は、今まで殆ど市販されていなかった。
【0035】
今般、新たに、かかる密度領域の、C3コモノマーを主の副成分として用いてエチレン・プロピレン共重合体を、特に好ましくは高温で重合可能な高圧イオン重合法プロセスにより試作し、種々検討したところ、特に(a-1)~(a-4)といった新たな領域の物性を有するエチレン・プロピレン共重合体を用いたポリエチレン樹脂組成物を含む積層体において、本願発明の効果が特に好ましいことを見出した。
【0036】
(i)エチレン・プロピレン共重合体(A)の特性
(a-3)モノマー構成
本発明に用いられるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として2~20mol%含むことを特徴とする、エチレン・プロピレン共重合体であり、具体例としては触媒重合法により重合してなる共重合体であって、実質的に直鎖状にランダムに重合してなる共重合体である。具体的には、エチレンとプロピレンのランダム共重合体である。好ましくは、エチレンに由来する構成単位の含有量が80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位の含有量が2~20mol%、更に好ましくはエチレンに由来する構成単位の含有量が85~95mol%、プロピレンに由来する構成単位の含有量が5~15mol%である。ここで、エチレン含有量等のモノマー量は、13C-NMRにより、後述する実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
【0037】
なお、その他のα-オレフィン、特に炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位および他のモノマー成分を全く含まない構成が好ましいが、実質的に微量でかかる構成を含んでいてもよい。本明細書においては、エチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンを第3のα-オレフィンという。本発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)は、エチレンおよびプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として、例えば4mol%以下、好ましくは2mol%以下、更に好ましくは1.5mol%以下、一層好ましくは1mol%以下、最も好ましくは0.5mol%以下含んでいてもよい。ここで、本発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない。また、この場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、第3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量より高いことが好ましい。また、本発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、1種または2種以上の第3のα-オレフィンを使用することができる。
【0038】
また、エチレン・プロピレン共重合体(A)は、(a-1)~(a-4)を充足する範囲で、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0039】
プロピレンを副成分として必須コモノマーとし、特に、後に記載するメタロセン触媒を用いた高圧イオン重合法を採用した場合、特異的にビニル、ビニリデンの合計数が多いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることが可能となる。1-ヘキセン、1-オクテンといったα-オレフィンをコモノマー主成分として重合した場合、この効果は得られにくい。
【0040】
(a-1)MFR
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは3~70g/10分である。MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。
【0041】
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がとられる。エチレン・プロピレン共重合体のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0042】
(a-2)密度
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、密度が0.918g/cm3未満であり、好ましくは0.85~0.918g/cm3未満であり、さらに好ましくは0.87~0.916g/cm3であり、より好ましくは0.88~0.915g/cm3である。密度が0.85g/cm3未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.918g/cm3を超えると、接着性が不良となるので好ましくない。
【0043】
ポリマーの密度を調節するには、例えばコモノマー含有量、重合温度、触媒量など適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・プロピレン共重合体の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0044】
(a-4)ビニル、ビニリデンの合計数
エチレンとα-オレフィンの1種以上を共重合してなる共重合体においては、積極的なジエンモノマーの添加を行わない場合でも、製造過程のメカニズムの違いに起因して、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シスービニレン、トランス-ビニレン、三置換オレフィン)を生じる場合があり、その量や種類も様々である。
本発明では、エチレン・プロピレン共重合体に含まれる種々の二重結合のうち、特にビニルとビニリデンが接着強度において重要であることを見出し、かつ、ビニルとビニリデンの合計数が、通常のエチレン・α-オレフィン共重合体よりも多いエチレン・プロピレン共重合体を含む樹脂組成物が、低温ラミネート積層用の樹脂組成物として特に好適に本発明の効果を達成することを見出し、完成したものである。
【0045】
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの合計量、即ち、ビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.35(個/total 1000C)以上であり、好ましくは0.40~5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.45~4.5(個/total 1000C)であり、更に好ましくは0.50~4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、接着強度に優れた樹脂組成物となり、0.35個未満であると、接着強度が十分になりにくい。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマー種、コモノマー量を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。
なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、1H-NMRスペクトルの特性ピークの積算強度を用いて算出した値であり、後述の実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
更に本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体(A)中のビニルの個数は、0.2(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
また、本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体中のビニリデンの個数は、0.12(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
【0046】
(a-5)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1):(Y)≧ -1157×(X)+1080
密度と分岐数が上記式(1)の関係を満たすと、コモノマーによる分岐数が十分に確保され、接着強度に優れた樹脂組成物となる。
ここで、コモノマーによる分岐数(Y)は、エチレン・プロピレン共重合体(A)をNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数(個/total 1000C)である。
また、密度(X)は、エチレン・プロピレン共重合体(A)の密度であり、上記の通り測定される。
なお、コモノマーによる分岐数(Y)は、ポリマー中に含まれる三級炭素の量を示し、NMRで測定した、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、例えばE. W. Hansen, R. Blom, and O. M. Bade, Polymer, 36巻 4295頁(1997年)を参考に13C-NMRスペクトルから算出することができる。
密度と分岐数の関係は、共重合するコモノマーの種類と比率、重合温度等の重合条件により調整することができる。
【0047】
(a-6)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が、下記式(2)を満たすことがより好ましい。
式(2):(Y)≧ -1157×(X)+1084
密度と分岐数が上記式(2)の関係を満たすと、コモノマーによる分岐数が十分に確保され、接着強度に優れた樹脂組成物となる。
ここで、コモノマーによる分岐数(Y)は、エチレン・プロピレン共重合体(A)をNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数(個/total 1000C)である。
【0048】
(ii)エチレン・プロピレン共重合体(A)の重合触媒および重合方法
本発明で使用されるエチレン・プロピレン共重合体(A)の製造に用いられる触媒としては、特に限定されないが、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、特に限定されず、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等を用いることができるが、本発明に係る二重結合を調整したエチレン・プロピレン共重合体(A)を得るためには150~330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧イオン重合法を利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三上尚孝 編著、2001年)。
【0049】
(iii)エチレン・プロピレン共重合体(A)の量
当該樹脂組成物中のエチレン・プロピレン共重合体(A)が1~90重量%(ただし、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)及び分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)以外のその他成分を含む場合は各成分の重量%の合計が100重量%を超えない)であることが好ましい。さらに好ましくは、20~80重量%である。80重量%を上回ると加工性が低下する懸念がり、20重量%を下回ると、十分な接着強度が発現しない。
【0050】
2.3 分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)とは、エチレンを高圧ラジカル重合法により得ることができ、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(HPLD)とも呼称される。HPLDの分子構造は多分岐であり、溶融弾性が高く、特に押出ラミネート加工時のネックインの改良に多く用いられる。HPLDの物性としては特に規定されないが、MFRが1~100g/10min、密度が0.915~0.925g/cm3のものが好ましい。MFR及び密度が上記範囲であることにより、加工時のネックイン、延展性のバランスが向上する。エチレン・α-オレフィン共重合体組成物中のHPLDの添加量は5~30重量%であることが好ましい。これよりもHPLDの添加量が多いと低温シール性やホットタック性が悪くなりやすい。
【0051】
(b-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10min
本発明に用いる分岐状(高圧ラジカル重合法)低密度ポリエチレン(b)のメルトフローレート(MFR)は、1~100g/10分、好ましくは、1~50g/10分であり、より好ましくは1~30g/10分である。MFRが1g/10分未満では延展性が不十分となり高速成形時に膜切れを生じる。一方、MFRが100g/10分を超えると溶融膜が不安定となる。
ここで、MFRは、JIS-K7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0052】
(b-2)密度
本発明に用いる分岐状低密度ポリエチレン(b)の密度は、0.915~0.925g/cm3であり、好ましくは0.916~0.925g/cm3であり、より好ましくは0.917~0.925g/cm3である。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(23℃)。
【0053】
本発明で使用する分岐状低密度ポリエチレン(b)の製造は、一般に槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力1000~3000kg/cm2、重合温度150~300℃の条件下でエチレンを重合することによって行われる。分子量調節剤として水素やメタン、エタンなどの炭化水素を用いることによってメルトフローレートを調節することができる。
【0054】
(3)成分(a)と成分(b)の組成割合
本発明で用いる低温押出ラミネート加工用樹脂組成物において、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が1~85重量%含まれる。より具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)と分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)との比率は、(a):(b)が、15~99重量%:1~85重量%であり、好ましくは20~95重量%:5~80重量%であり、より好ましくは30~95重量%:5~70重量%である。更に好ましくは40~95重量%:5~60重量%であり、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(a)が多すぎると、溶融膜の安定性が悪く、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(b)が多いと接着強度が低下する。
【0055】
3.低温押出ラミネート加工方法
積層体の製造方法としては、特に限定されないが、少なくとも、基材層に、ポリエチレン樹脂組成物を溶融押出しして積層する、いわゆる押出ラミネート加工法を用いることを一つの特徴とする。また、上記押出ラミネート層は単層、サンドイッチラミネート、共押出ラミネート、タンデムラミネート等の方法により一層以上積層されることが好ましい。
また、基材層との接着性を確保する方法としては特に限定されないが、例えば、基材の表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理法、オゾン処理法、フレーム処理法、低温プラズマ処理法等の各種処理法が挙げられる。また、溶融樹脂へオゾンを吹きかける方法も挙げられる。なお、他基材層を備える場合は、必要に応じて、アンカーコート処理することが好ましい。
【0056】
従来の押出ラミネート加工における加工温度よりもさらに低温、具体的にはダイリップ内での樹脂温度が220℃~280℃となる低温下で押出ラミネート加工することにより、製造工程でのヒーター消費電力を抑えつつ、十分なラミネート強度を確保できる。また、基材として、ポリエチレン樹脂基材を用いた場合でも、基材に対して十分なラミネート強度を有する積層体を得ることができる。
【0057】
4.モノマテリアル包装材
本発明のもう1つの態様は、本発明の積層体を用いたモノマテリアル包装材である。
また、本発明のもう1つの態様は、ポリエチレン層(III)の接着層(II)とは反対側にポリオレフィンフィルム(IV)が隣接して積層された本発明の積層体を用いたモノマテリアル包装材である。
以下これらをまとめて本発明のモノマテリアル包装材とも言う。
【0058】
本発明のモノマテリアル包装材の用途としては、食品、薬品、医療器具、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋等があげられる。
【実施例0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した測定法、評価方法及び樹脂材料は以下の通りである。
【0060】
[測定方法]
MFR:JIS K6922-2(190℃、21.18N荷重)に準拠して行った。
密度:JIS K6922-2(23℃)に準拠して行った。
コモノマー量、コモノマーによる分岐数および二重結合数:
コモノマー量およびコモノマーによる分岐数(Y)は、13C-NMRにより、二重結合数(ビニル、ビニリデン)は、1H-NMRにより、次の条件で測定し、主鎖および側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置:ブルカー・バイオスピン(株)AVANCE III cryo-400MHz
溶媒:o-ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン=8/2混合溶液
<試料量>
試料460mg/溶媒2.3ml
<13C-NMR>
・1Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
<1H-NMR>
・積算回数:1400scan
・フリップ角:1.03°
・AQ(取り込み時間)=1.8s D1(待ち時間)=0.01s
接着強度:得られた積層体を、流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、基材層(I)とポリエチレン層(III)との層間の界面で剥離し、被検体数5、剥離速度300mm/分、T剥離試験での剥離強度をもって接着強度とした。
再混錬フィルムのヘーズ:
[プレス成形]
得られた積層体を以下の通りプレス成形したのち、細かく裁断しペレット状のサンプル片を得た。
【0061】
プレス成形機:100tプレス
プレス温度:180℃
冷却温度:30℃
プレス時間:余熱2min、加圧2min、冷却3min
スペーサー:縦20cm×横20cm×厚み1mm
[再混錬]
上述の方法で得られたペレット状のサンプル片を用いて、以下の通り再混錬し、フィルムを得た。
【0062】
混錬装置:小型混錬機Xplore MC15(DSM社製)
設定温度:200℃
スクリュー回転数:50rpm
混錬時間:1min
[フィルム成形]
上記の混錬装置のバレル排出口にTダイユニットを取り付け、所定時間混錬したのち、以下の条件でTダイフィルムを得た。
【0063】
設定温度:200℃
スクリュー回転数:10rpm
チルロール速度:1m/min
フィルム厚み:50μm
[ヘーズ測定]
上記手法にて得られたTダイフィルムをJIS K7136(A法)に準拠して行った。
【0064】
測定機器:ヘーズメーターHM-150(村上色彩技術研究所製)
【0065】
[材料]
基材層(I)
・東洋紡社製 東洋紡エステルフィルムT4102(厚さ12μm)
・三井化学東セロ社製 エルスマートC-1(30μm)
接着層(II)
・三井化学社製 タケラックA-3210、タケネートA-3075
(ポリウレタン系接着剤)
・ユニチカ社製 アローベースSB-5230N
(変性ポリオレフィン樹脂エマルジョン)
ポリエチレン層(III)
【0066】
・直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(以下、LLDPE)(a)
LLDPE(a-1):エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、MFR16g/10min、密度0.919g/cm3)
LLDPE(a-2):エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、MFR16g/10min、密度0.898g/cm3)
LLDPE(a-3):エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、MFR30g/10min、密度0.880g/cm3)
LLDPE(a-4):エチレン・プロピレン共重合体(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、MFR20g/10min、密度0.887g/cm3)
LLDPE(a-5):エチレン・プロピレン共重合体(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、MFR11g/10min、密度0.913g/cm3)
【0067】
・分岐状低密度ポリエチレン系樹脂(以下、LDPE)(b)
LDPE(b-1):分岐状低密度ポリエチレン(MFR20g/10min、密度0.917g/cm3)
LDPE(b-2):分岐状低密度ポリエチレン(MFR4g/10min、密度0.918g/cm3)
【0068】
【0069】
4.ポリオレフィンフィルム(IV)
・フタムラ化学社製 LL-XMTN(30μm)
【0070】
[実施例1]
[樹脂組成物:PE1]
LLDPEとして、(a-2):80wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE1)を得た。
[評価用積層体フィルムの作製]
押出ラミネート装置を用いて、幅500mm、厚み12μmのエステルフィルムT4102を基材層(I)として、その上に、アローベースSB-5230Nとメタノールを重量比1対2.3で希釈した溶液を接着層(II)としてボウズロールにて塗工し、100℃の乾燥炉を通過させた。ラミネート部ではオゾンを1.5 NL/min(濃度15 g/m3)で吹きつけを行いながら 、樹脂組成物PE1を引取速度100m/min、被服厚み30μmで溶融押出しラミネート加工を行い、ポリエチレン層(III)を積層した。押出ラミネート装置は、口径90mmΦの押出機に装着したTダイから押し出される樹脂の温度が250℃になるように設定し、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mmで引き取り加工速度が100m/minの場合に被覆厚みが30μmになるように押出量を調整した。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0071】
[実施例2、5~9]
下記の方法により得られた樹脂組成物(PE2~PE7)をポリエチレン層(III)に用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。いずれも押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0072】
[樹脂組成物:PE2]
LLDPEとして、(a-3):80wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE2)を得た。
[樹脂組成物:PE3]
LLDPEとして、(a-4):80wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE3)を得た。
[樹脂組成物:PE4]
LLDPEとして、(a-5):80wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE4)を得た。
[樹脂組成物:PE5]
LLDPEとして、(a-2):20wt%、(a-4):60wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE5)を得た。
[樹脂組成物:PE6]
LLDPEとして、(a-2):30wt%、(a-4):50wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE6)を得た。
[樹脂組成物:PE7]
LLDPEとして、(a-2):40wt%、(a-4):40wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE7)を得た。
【0073】
[実施例3]
上記の方法により得られた樹脂組成物(PE3)をポリエチレン層(III)に用いた。
[評価用積層体フィルムの作製]
押出ラミネート装置を用いて、幅500mm、厚み30μmのエルスマートC-1を基材層(I)として、その上に、タケラックA3210とタケネートA3075とNC401溶剤を重量比で3対1対28で希釈した溶液を接着層(II)としてボウズロールにて塗工し、80℃の乾燥炉を通過させた。ラミネート部ではオゾンを1.5 NL/min(濃度15 g/m3)で吹きつけを行いながら 、樹脂組成物PE3を引取速度100m/min、被服厚み30μmで溶融押出しラミネート加工を行い、更に30μmのLL-XMTNフィルムをサンドイッチラミネートして、ポリエチレン層(III)及びポリオレフィンフィルム(IV)を積層した。押出ラミネート装置は、口径90mmΦの押出機に装着したTダイから押し出される樹脂の温度が250℃になるように設定し、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mmで引き取り加工速度が100m/minの場合に被覆厚みが30μmになるように押出量を調整した。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0074】
[実施例4]
上記の方法により得られた樹脂組成物(PE4)をポリエチレン層(III)に用い、30μmのLL-XMTNフィルムをサンドイッチラミネートした以外は、実施例1と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0075】
[実施例10]
接着層(II)にアローベースSB-5230Nとメタノールを重量比1対2.3で希釈した溶液を用い、乾燥炉を100℃とした以外は、実施例3と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0076】
[比較例1]
[樹脂組成物:PE8]
LDPEとして(b-1)を単独で用いた。
[評価用積層体フィルムの作製]
押出ラミネート装置を用いて、幅500mm、厚み12μmのエステルフィルムT4102を基材層(I)として、その上に、アローベースSB-5230Nとメタノールを重量比1対2.3で希釈した溶液を接着層(II)としてボウズロールにて塗工し、100℃の乾燥炉を通過させた。ラミネート部ではオゾンを1.5 NL/min(濃度15 g/m3)で吹きつけを行いながら 、樹脂組成物PE8を引取速度100m/min、被服厚み30μmで溶融押出しラミネート加工を行い、ポリエチレン層(III)を積層した。押出ラミネート装置は、口径90mmΦの押出機に装着したTダイから押し出される樹脂の温度が250℃になるように設定し、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mmで引き取り加工速度が100m/minの場合に被覆厚みが30μmになるように押出量を調整した。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0077】
[比較例2]
30μmのLL-XMTNフィルムをサンドイッチラミネートした以外は、比較例1と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0078】
[比較例3]
[樹脂組成物:PE9]
LLDPEとして、(a-1):80wt%、LDPEとして(b-2):20wt%を用いた。これらの樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、樹脂組成物(PE9)を得た。
[評価用積層体フィルムの作製]
上記の方法により得られた樹脂組成物(PE9)をポリエチレン層(III)に用いた以外は、比較例1と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0079】
[比較例4]
上記の方法により得られた樹脂組成物(PE9)をポリエチレン層(III)に用い、30μmのLL-XMTNフィルムをサンドイッチラミネートした以外は、比較例1と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0080】
[比較例5]
上記の方法により得られた樹脂組成物(PE9)をポリエチレン層(III)に用い、30μmのエルスマートC-1を基材層(I)に用い、30μmのLL-XMTNフィルムをサンドイッチラミネートした以外は、比較例1と同様に積層体フィルムを得た。押出ラミネート加工は特に問題なく加工できた。得られた積層体フィルムの評価結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
比較例1~5については、250℃でのラミネート加工において、PETとポリエチレン系延伸基材のいずれに対しても、1N/15mm以下と十分な接着強度は得られていない。一方で、実施例1~10においては、250℃でのラミネート加工において、PETとポリエチレン系延伸基材のいずれに対しても、高い接着強度が得られている。
さらに、サンドイッチラミネートによるポリオレフィンフィルム(IV)の有無による接着強度への影響に着目すると、比較例1と2、及び比較例3と4を比較すると、その効果は限定的である。一方で、実施例4と5を比較すると、ポリオレフィンフィルム(IV)をサンドイッチラミネートすると、接着強度が著しく向上していることが確認できる。これは、ラミネート部においてポリエチレン層(III)と冷却ロールの間にポリオレフィンフィルム(IV)を介することで、ポリエチレン層(III)が保温され、冷却固化速度が低下することによって、溶融状態での接着層(II)との接触時間が長くなることによる界面相互作用の向上が寄与していると考えられる。実施例及び比較例からもわかるように、ポリエチレン層(III)の樹脂組成物が、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂単独である場合や、密度0.918g/cm3以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と分岐状低密度ポリエチレン系樹脂の混合物から構成される場合においては、この特異的な効果は発現しないため、本発明によって得られる樹脂組成物の特長的な性能であると考えられる。
また実施例3と実施例10を比較すると、ポリオレフィン系接着剤を用いたほうが、再混錬フィルムのヘーズが低くなっていることから、マテリアルリサイクルを想定したモノマテリアル包材に対してはポリオレフィン系接着剤が好適であると考えられる。