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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146309
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/32 103
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059121
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 桂一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 慎治
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK04
4F100AK05
4F100AK06A
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK12
4F100AK22
4F100AK25
4F100AK41B
4F100AK48B
4F100AK62A
4F100AK64A
4F100AK68
4F100AL03
4F100AL03A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA05
4F100CA06
4F100CA07
4F100CA10
4F100CA13
4F100CA17
4F100CA19
4F100CA22
4F100DE01
4F100DG10B
4F100EH17
4F100EH23
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ55
4F100GB15
4F100GB16
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JD01
4F100JD01B
4F100JK01
4F100JK03
4F100JK04
4F100JK06
4F100JL08
4F100JL08A
4F100JL12
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】紙基材又はバリア性紙基材等との良好な接着性を有すると共に、易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性にも優れたラミネート用エチレン樹脂組成物及び積層体を提供。
【解決手段】
(a-1)~(a-3)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体5~90重量%、(B)(b-1)~(b-3)の特性を有するC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体1~50重量%、及び(C)(c-1)~(c-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン5~90重量%を含有する、(d-1)~(d-6)の特性を有する積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含む層、及び基材層(E)を有する積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(a-1)~(a-3)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体5~90重量%、
(B)下記(b-1)~(b-3)の特性を有するC6以上の必須成分を含むエチレン・α-オレフィン共重合体1~50重量%、及び
(C)下記(c-1)~(c-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン5~90重量%
を含有する、下記(d-1)~(d-6)の特性を有する積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含む層、及び
を基材層(E)を有する積層体。
(a-1) メルトフローレートが1~50g/10min
(a-2) 密度が0.870~0.920g/cm
(a-3) プロピレンのモル分率が5~20mol%

(b-1) メルトフローレートが0.1~100g/10min
(b-2) 密度が0.880~0.930 g/cm
(b-3) C6以上のαオレフィンのモル分率が1~10mol%

(c-1) メルトフローレートが0.1~20g/10min
(c-2) 密度が0.915~0.930g/cm

(d-1) エチレンに由来する構成単位を主成分として95~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として1~5mol%を含み、エチレン及びプロピレン以外のC6以上のエチレン-αオレフィンに由来する構成単位を必須の副成分として0.05~0.90mol%含む。(但し、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位、更にエチレン-αオレフィンに由来する構成単位の含量の合計が100mol%を超えない)
(d-2) メルトフローレートが1~100g/10min
(d-3) 密度が0.880~0.930g/cm
(d-4) プロピレンのモル分率(Mp)とC6以上のエチレン-αオレフィンのモル分率(Mh)との比が5~100
(d-5)エチレン・プロピレン共重合体(A)とC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度の関係式が以下を満たす。
・エチレン・プロピレン共重合体(A)の密度・・・ρ(a)
・C6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度・・・ρ(b)
ρ(a)<ρ(b) 関係式(3)
【請求項2】
積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)層中のエチレン・プロピレン共重合体(A)が下記(a-4)~(a-5)の特性を満たす事を特徴とする請求項1に記載の積層体。
(a-4)ビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上であること。
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が式(1)を満たす。(ただし、分岐数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(Y)≧-1157×(X)+1080 (式(1))
【請求項3】
基材層(E)が紙基材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)層中のエチレン・プロピレン共重合体(A)がさらに下記(a-6)の特性を満たす事を特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
(a-6)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が式(2)を満たす。(ただし、分岐数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(Y)≧-1157×(X)+1084 (式(2))
【請求項5】
基材層(E)がバリア性紙基材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
少なくとも基材層(E)と請求項1又は2に記載のラミネート用エチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)を有する積層体。
【請求項7】
前記積層体が押出コーティング法により形成されていることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用エチレン樹脂組成物を含有する積層体に関し、詳しくは、紙、及びバリア性紙基材に積層するためのラミネート用ポリエチレン樹脂組成物を含有する積層体であって、基材等との良好な接着性、更には易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性に優れた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に環境問題に対する取り組みが広がっており、中でもプラスチックを使用した飲食物、調味料、薬品等に用いる包装・容器の減容化の取り組みが進められている。プラスチック使用量削減の取り組みの一つとして、燃やしやすい素材であり焼却時の燃焼カロリーが低い包装・容器として、紙の活用が検討されている。紙自体にシール性能は無く、紙のみを包装材料として使用することは困難であるため、一般的には、紙にシール性能などを付与した、紙とプラスチックとの積層材料が使用されている。これら包装・容器は、内容物の保護性能、使用時の利便性という観点から、耐ピンホール性に優れ尚且つ開封が容易であることが望まれている。
従来の包装・容器に用いられている積層体は、ヒートシール性、防湿性などを有する容器として必要な特性付与の観点から、紙、二軸延伸したポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等を基材とし、これらの基材にヒートシール層樹脂として高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等からなるポリエチレン系樹脂を積層したものが用いられていた。
近年、これら積層体のヒートシール強度、低温ヒートシール性、ホットタック性、耐衝撃性、耐ピンホール性等を向上させるため直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、特にメタロセン触媒で重合されたLLDPEの使用が提案されてきている。
【0003】
メタロセン触媒で重合されたLLDPEは、低温でヒートシールが可能であり、シール強度が強く、ホットタック強度が強い特徴を有し、軟包装、液体紙容器などのシーラントとして広く使用されてきている。しかしながら、紙カップ、紙容器など打抜き工程がある用途では、打抜き性が悪く、打抜けない、樹脂層が伸びてしまうため見かけが悪くなる等の問題を有している。また、紙結束、易引裂き性包装用途では、引裂き性が悪いため、開封に力を要する、樹脂層が伸びる等の問題を有している。更に、液体紙容器等のストローホールがある容器については、ストローの貫通性が悪い等の問題を有している。
かかる問題を解決する試みは多くなされており、例えば、メタロセン触媒で重合されたLLDPEとチーグラー触媒で重合されたLLDPEの積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、この積層体は、チーグラー触媒により重合されたLLDPEにより引裂き性は、多少は改善されるものの、依然としてメタロセン触媒で重合されたLLDPE層の伸びは解消できず、望ましい方法とはいえない。
さらに、メタロセン触媒で重合されたLLDPEに特定のスウェル比を有するLDPEを配合する発明が開示されている(例えば、特許文献2参照。)が、ヒートシール強度と引裂きバランスでは満足といえるものではない。また、エチレンとプロピレンと1-ヘキセン又は1-オクテンを必須とするエチレン三元系共重合体とLDPEを配合する発明も開示されている(特許文献3参照)が、易引裂き性と耐ピンホール性の両方に優れた開示はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-24539号公報
【特許文献2】特開2000-212339号公報
【特許文献3】特開2006-82547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、紙基材又はバリア性紙基材等との良好な接着性を有すると共に、易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性にも優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン・プロピレン共重合体と、必須成分である特定のエチレン・α-オレフィン共重合体、更に特定の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂組成物の層と基材層を有する積層体は、低温ヒートシール性に優れ、耐ピンホール性を有すると共に、易引裂き性にも優れ、いずれの性能も両立する内容物の保護性能と易取り扱い性に優れた積層体になることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、(A)下記(a-1)~(a-3)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体5~90重量%、(B)下記(b-1)~(b-3)の特性を有するC6以上の必須成分を含むエチレン・α-オレフィン共重合体1~50重量%、及び(C)下記(c-1)~(c-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン5~90重量%を含有する、下記(d-1)~(d-6)の特性を有する積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層、及び基材層(E)を有する積層体。
(a-1) メルトフローレートが1~50g/10min
(a-2) 密度が0.870~0.920g/cm
(a-3) プロピレンのモル分率が5~20mol%

(b-1) メルトフローレートが0.1~100g/10min
(b-2) 密度が0.880~0.930g/cm
(b-3) C6以上のαオレフィンのモル分率が1~10mol%

(c-1) メルトフローレートが0.1~20g/10min
(c-2) 密度が0.915~0.930g/cm

(d-1) エチレンに由来する構成単位を主成分として95~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として1~5mol%を含み、エチレン及びプロピレン以外のC6以上のエチレン-αオレフィンに由来する構成単位を必須の副成分として0.05~0.90mol%含む。(但し、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位、更にエチレン-αオレフィンに由来する構成単位の含量の合計が100mol%を超えない)
(d-2) メルトフローレートが1~100g/10min
(d-3) 密度が0.880~0.930 g/cm
(d-4) プロピレンのモル分率(Mp)とC6以上のエチレン-αオレフィンのモル分率(Mh)との比が5~100
(d-5)エチレン・プロピレン共重合体(A)とC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度の関係式が以下を満たす。
・エチレン・プロピレン共重合体(A)の密度・・・ρ(a)
・C6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度・・・ρ(b)
ρ(a)<ρ(b) 関係式(3)
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)層中のエチレン・プロピレン共重合体(A)が下記(a-4)~(a-5)の特性を満たす事を特徴とする積層体。
(a-4)ビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上であること。
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が式(1)を満たす。(ただし、分岐数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(Y)≧-1157×(X)+1080 (式1)
【0009】
第3の発明によれば、第1又は、第2の発明において基材層(E)が紙基材であることを特徴とする積層体。
【0010】
また第4の発明は、第1又は、第2の発明において積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)層中のエチレン・プロピレン共重合体(A)がさらに下記(a-6)の特性を満たす事を特徴とする積層体。
(a-6)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が式(2)を満たす。(ただし、分岐数はNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(Y)≧-1157×(X)+1084 (式2)
【0011】
第5の発明は、第1又は、第2の発明において基材層(E)がバリア性紙基材であることを特徴とする積層体。
【0012】
第6の発明は、少なくとも基材層(E)と第1又は第2の発明のいずれかに記載のラミネート用エチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)を有する積層体にある。
【0013】
第7の発明は、前記積層体が押出コーティング法により形成されていることを特徴とする第6発明に記載の積層体にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラミネート用樹脂組成物を含有する積層体は低温ヒートシール性に優れ、耐ピンホール性を有すると共に、易引裂き性にも優れ、いずれの性能も両立する内容物の保護性能と易取り扱い性に優れた積層体である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特定のエチレン・プロピレン共重合体と、必須成分である特定のエチレンα-オレフィン共重合体、更に特定の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂組成物の層と接する面が紙、又はバリア性紙基材である基材層とを有する積層体に関わるものである。以下、本発明において用いられる各成分及び、それらを用いた押出ラミネート用積層体等について詳細に説明する。
【0016】
1.積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)
(1)エチレン・プロピレン共重合体(A)
本発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)は、下記の特性(a-1)~(a-3)をすべて満たし、必要に応じてさらに、(a-4)及び(a-5)、更には(a-6)の特性を有することを特徴とする。
なお、エチレンとプロピレンを構成成分とする共重合体としては、いわゆるエチレンプロピレンゴム(EPM)と呼ばれる、プロピレン成分を20mol%より多く含み、密度も0.870g/cm以下の溶液重合法により得られるゴム状重合体が、エラストマーの分野において用いられているが、本願発明のエチレン・プロピレン共重合体(A)は、これらエチレンプロピレンゴムとは、密度範囲も、含まれるエチレンやプロピレンの量が異なり、物性等も全く異なる重合体である。
また、プロピレン重合体において、製造過程でエチレン成分を若干量含むプロピレンエチレン共重合体も知られているが、これらもそのプロピレン含有量等の点で大きく異なり、物性等もまったく異なる重合体である。
また、いわゆる通常の直鎖状の分子構造を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(LLDPE)は主にフィルム用途として開発されているために、通常、高強度の共重合体を得るためのC4やC6といったC4以上のα-オレフィンを主のコモノマー成分とするのが常であり、低強度となるC3コモノマーを主の副成分として用いたエチレンとプロピレンからなる共重合体であって、密度が0.87g/cm以上の共重合体は、今まで殆ど注目されていなかった。
今般、新たに、かかる密度領域の、C3コモノマーを主の副成分として用いてエチレン・プロピレン共重合体を試作すると共に、種々検討したところ、特に(a-1)~(a-3)といった新たな領域の物性を有するエチレン・プロピレン共重合体(A)を用いたラミネート用樹脂組成物において、本願発明の効果が得られることを見出した。
【0017】
(a-1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~50g/10分であり、好ましくは1~40g/10分であり、より好ましくは3~30g/10分である。MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが50g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。エチレン・プロピレン共重合体のMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がある。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18 N荷重)に準拠して測定する値である。
【0018】
(a-2)密度
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)の密度は、0.870~0.920g /cmであり、好ましくは0.880~0.919g/cmであり、より好ましくは0.885~0.918g/cmである。密度が0.870g/cm未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.920g/cmを超えると、接着性が不良となるので好ましくない。ポリマーの密度を調節するには、例えばコモノマー含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・プロピレン共重合体の密度は、JIS -K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する( 測定温度23℃)。
【0019】
(a-3)成分(A)のモノマー構成
本発明に用いられるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、プロピレンのモル分率が5~20mol%である。
より具体的には、エチレン・プロピレン共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として80~95mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として5~20mol%含むことを特徴とする、エチレン・プロピレン共重合体であり、具体例としては触媒重合法により重合してなる共重合体であって、実質的に直鎖状にランダムに重合してなる共重合体で、エチレンとプロピレンのランダム共重合体である。好ましくは、エチレンに由来する構成単位のモル分率が82~94mol%、プロピレンに由来する構成単位のモル分率が6~18mol%、更に好ましくはエチレンに由来する構成単位のモル分率が85~92mol%、プロピレンに由来する構成単位のモル分率が8~15mol%である。ここで、エチレン含有量等のモノマー量は、13C-NMRにより、後述する実施例の欄に記載の条件で測定し、算出した値である。
なお、本発明に用いられるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、その他のα-オレフィン、特に炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成 単位及び他のモノマー成分を全く含まない構成が好ましい。
また、エチレン・プロピレン共重合体(A)は、(a-1)~(a-3)、更に好ましくは(a-4)、(a-5)及び(a-6)を充足する範囲で、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
プロピレンを副成分として必須コモノマーとし、特に、後に記載するメタロセン触媒を用いた高圧イオン重合法を採用した場合、特異的にビニル、ビニリデンの合計数が多いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることが可能となる。1-ヘキセン、1-オクテンといったα-オレフィンをコモノマー主成分として重合した場合、この効果は得られにくい。
【0020】
(a-4)ビニル、ビニリデンの合計数
エチレンとα-オレフィンの1種以上を共重合してなる共重合体においては、積極的なジエンモノマーの添加を行わない場合でも、製造過程のメカニズムの違いに起因して、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シス-ビニレン、トランス-ビニレン、三置換オレフィン)を生じる場合があり、その量や種類も様々である。従来、太陽電池封止材として良好な架橋特性を得るためには、エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる二重結合数が多いと架橋特性が良好であることは知られていたが、積層用樹脂組成物分野においては、二重結合の量や種類による違いについては検討されていなかった。
本発明では、エチレン・プロピレン共重合体に含まれる種々の二重結合のうち、特にビニルとビニリデンが接着強度と易引裂き特性の両立において重要であることを見出し、かつ、ビニルとビニリデンの合計数が、通常得られる共重合よりも多いエチレン・プロピレン共重合体を製造し、積層用樹脂組成物用のエチレン・プロピレン共重合体として用いることによって、本発明の効果を達成することを見出し、完成したものである。
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの合計量、即ち、ビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.35個以上であり(単位を「個/total 1000C」と表現する場合もある)、好ましくは0.40~5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.45~4.5(個/total 1000C)であり、さらに好ましくは0.50~4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、接着強度に優れた積層用ポリエチレン樹脂組成物となり、0.35個未満であると、接着強度が十分なものとならない。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマーの種類を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、1H-NMRスペクトルの特性ピークの積算強度を用いて算出した値であり、後述の実施例の欄に記載の条件で測定し、算出した値である。また、ビニルおよびビニリデンの個数はコモノマー種、コモノマー量、重合温度等の製 造条件により、調整することができる。更に本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体(A)中のビニルの個数は、0.2(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。また、本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体(A)中のビニリデンの個数は、0.12(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
【0021】
(a-5)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、コモノマーによる分岐数(Y )と密度(X)が下記(式1)を満たすことが好ましい。
(Y)≧-1157×(X)+1080 (式1)
密度と分岐数が上記(式1)の関係を満たすと、コモノマーによる分岐数が十分に確保され、易引裂き性に優れ、接着強度に優れた積層用ポリエチレン樹脂組成物となる。 なお、コモノマーによる分岐数(Y)は、ポリマー中に含まれる三級炭素の量を示し、13C-NMRにより、後述の実施例の欄に記載した条件で測定した、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりのメチル分岐個数とブチル分岐個数を足した値である。また、密度(X)は、エチレン・プロピレン共重合体(A)の密度であり、上記の通り 測定される。密度と分岐数の関係は、共重合するコモノマーの種類と比率により調整することができる。
【0022】
(a-6)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(A)は、コモノマーによる分岐数(Y )と密度(X)が下記(式2)を満たすことが好ましい。
(Y)≧-1157×(X)+1084 (式2)
なお、(式2)中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)は、(式1)に記載の通りである。密度と分岐数が上記(式2)の関係を満たすと、モノマーによる分岐数が十分に確保され、易引裂き性に優れ、接着強度に優れた積層用ポリエチレン樹脂組成物となる。密度と分岐数の関係は、共重合するコモノマーの種類と比率により調整することができる。
【0023】
成分(A)の重合触媒及び重合方法
本発明で使用されるエチレン・プロピレン共重合体(A)の製造に用いられる触媒としては、特に限定されないが、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、特に限定されず、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等を用いることができるが、本発明に係る二重結合を調整したエチレン・プロピレン共重合体(A)を得るためには150~330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧 イオン重合法を利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三 上尚孝 編著、2001年)。
【0024】
(2)C6以上の必須成分を含むエチレン・α-オレフィン共重合体(B)
本発明のC6以上の必須成分を含むエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα-オレフィンのランダム共重合体であり、下記の特性(b-1)~(b-3)を有することを特徴とする。
【0025】
(b-1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、0.1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは1~50g/10分である。MFRが0.1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。エチレン・プロピレン共重合体のMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がある。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18 N荷重)に準拠して測定する値である。
【0026】
(b-2)密度
本発明に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度は、0.880~0.930g/cmであり、好ましくは0.885~0.920g/cmであり、より好ましくは0.890~0.919g/cmである。密度が0.880g/cm未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.930g/cmを超えると、接着性が不良となるので好ましくない。ポリマーの密度を調節するには、例えばα-オレフィン含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0027】
(b-3)成分(B)のモノマー構成
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、C6以上のαオレフィンのモル分率が1~10mol%である。
より具体的には、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として90.0~99.0mol%、αオレフィンに由来する構成単位を副成分として1.0~10.0mol%含むことを特徴とするエチレン-αオレフィンのランダム共重合体である。好ましくは、エチレンに由来する構成単位が90.5~98.5mol%、α-オレフィンに由来する構成単位が1.5~9.5mol%、更に好ましくはエチレンに由来する構成単位が91.0~98.0mol%、αオレフィンに由来する構成単位が2.0~9.0mol%である。コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、好ましくは炭素数6~12のα-オレフィンである。具体的には、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等を挙げることができる。
【0028】
成分(B)の重合触媒及び重合方法
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、チーグラー触媒又はメタロセン触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法としては、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等が挙げられる。
【0029】
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、特表平7-508545号
公報に記載されたものと同様の触媒、すなわち例えば、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0mモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等モル加え、トルエンで10リットルに希釈した触媒溶液などが好ましく使用できる。市販品としては、日本ポリエチレン社製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、プライムポリマー社製のエボリューシリーズ、住友化学社製のエクセレンGMHシリーズ、エクセレンFXシリーズが挙げられる。
【0030】
(3)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)
本発明の積層用ポリエチレン樹脂組成物に用いる高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン(C)(高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)とも言う)は、次の(c-1)~(c-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは長鎖分岐状低密度ポリエチレンである。
【0031】
(c-1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明に用いる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)のメルトフローレート(MFR)は、0.1~20g/10分であり、好ましくは0.5~15g/10分であり、より好ましくは1~15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では延展性が不十分となり高速成形時に膜切れを生じる。一方、MFRが20g/10分を超えると 溶融膜が不安定となる。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18 N荷重)に準拠して測定する値である。
【0032】
(c-2)密度
本発明に用いる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)の密度は、0.915~0.930g/cmであり、好ましくは0.916~0.926g/cmであり、より好ましくは0.917~0.925g/cmである。密度が0.915g/cm未満ではベタツキが多くなる。一方、0.930g/cmを超えると接着性が不良となる。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場 合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0033】
本発明で使用する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)の製造は、一般に槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力1000~3000kg/cm、重合温度150~300℃の条件下でエチレンを重合することによって行われる。分子量調節剤として水素やメタン、エタンなどの炭化水素を用いることによってメルトフローレートを調節することができる。
【0034】
(4)成分(A)、成分(B)、成分(C)の組成割合
本発明で用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)がエチレン・プロピレン共重合体(A)に加えてC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)、更に高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)を含有する場合において、エチレン・プロピレン共重合体(A)とC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)、更に高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)との比率は、(A):(B):(C)が、5~90重量%:1~50重量%:5~90重量%であり、好ましくは5~80重量%:1~40重量%:10~90重量%であり、より好ましくは5~70重量%:1~30重量%:20~90重量%である。エチレン・プロピレン共重合体(A)が多すぎると、溶融膜が不安定になるおそれがあり、またC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)が多すぎる場合は、易引裂き性が低下するおそれがある。さらに高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)が多いと接着性が低下するおそれがある。
【0035】
(5)積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)の特性
(d-1)モノマー構成
本発明に用いられる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として95.0~98.0mol%、プロピレンに由来する副成分として1.0~5.0mol%、αオレフィンに由来する構成単位を副成分として0.05~0.90mol%含むことを特徴とし、好ましくは、エチレンに由来する構成単位が95.0~97.5mol%、プロピレンに由来する副成分として1.5~5.0mol%、αオレフィンに由来する構成単位を副成分として0.05~0.80mol%、より好ましくはエチレンに由来する構成単位が95.0~97.0mol%、プロピレンに由来する副成分として2.0~5.0mol%、αオレフィンに由来する構成単位を副成分が0.05~0.70mol%である。エチレンに由来する主成分が多い場合、低温ヒートシール性が低下するおそれがあり、プロピレンに由来する副成分が多すぎると、耐ピンホール性が低下するおそれがある。さらにαオレフィンに由来する副成分が多すぎる場合は易引裂き性が低下するおそれがある。
【0036】
(d-2)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明に用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは2~70g/10分である。
MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が 不安定になるので好ましくない。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18 N荷重)に準拠して測定する値である。
【0037】
(d-3)密度
本発明に用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)の密度は、0.88~0.93g/cmであり、好ましくは0.885~0.925g/cmであり、より好ましくは0.890~0.920g/cmである。密度が0.88g/cm未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.93g/cmを超えると、接着性が不良となるので好ましくない。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0038】
(d-4)プロピレンのモル分率とC6以上のエチレン-αオレフィンのモル分率の比
本発明に用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)のプロピレンのモル分率(Mp)とエチレン-αオレフィンのモル分率(Mh)との比(Mp/Mh)は、5~100であり、好ましくは5~60であり、より好ましくは5~40である。Mp/Mhが5.0未満であると、易引裂き性に劣り開封性が悪化するので好ましくない。
【0039】
(d-5)エチレン・プロピレン共重合体(A)とエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度の関係
本発明に用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)中のエチレン・プロピレン共重合体(A)とC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度が下記の関係式(3)を満たすことが好ましい。
・エチレン・プロピレン共重合体(A)の密度・・・ρ(a)
・C6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度・・・ρ(b)
ρ(a)<ρ(b) 関係式(3)
積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)中のエチレン・プロピレン共重合体(A)とC6以上の必須成分を含むエチレン-αオレフィン共重合体(B)の密度が関係式(3)を満たすと、易引裂き性に優れ、接着強度に優れた積層用ポリエチレン樹脂組成物となる。
【0040】
(6)その他の成分
本発明で用いる積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)又はそれを含有する層には、必要に応じて、ポリエチレン系樹脂に通常使用されるフェノール系、りん系等の酸化防 止剤、金属石鹸等の安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、有機系または無機系の着色剤等の顔料、不飽和脂肪酸エステル等の防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤などの添加剤を配合しても良い。また、ポリエチレン樹脂組成物層の特性を損ねない範囲で、LDPE、C4-LLDPE、HAO-LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリ ル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA、EMA、EMMA等)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの接着性樹脂 、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン樹脂等、他の熱可塑性樹脂を配合しても構わない 。
また、本発明の積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)は架橋剤を含有しないことが好ましい。
【0041】
2.基材層(E)
本発明において用いられる基材層(E)は、少なくともラミネート用エチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)と接する面が紙、またはポリプロピレン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のフィルムまたはこれらの同種 若しくは異種材料からなる積層フィルムが例示できる。前記フィルムは延伸フィルムであることが好ましい。また、クラフト紙などの紙、アルミ、銅などの金属の箔、金属または 無機物、有機物を蒸着したプラスチック製フィルム等の単層基材またはバリア性コーティングを施した紙等の積層基材が挙げられる。バリア性コーティングを施した紙基材の市販品としては、日本製紙社製のシールドプラス、王子エフテックス社製のシルビオバリア、宇津商事社プロテゴ、日本紙パルプ商事社 ハンソルEB、三菱製紙社製バリコート等があげられ、水蒸気透過度、酸素透過度等のバリア性や保香性を向上させた基材等が例示される。
【0042】
3.積層体
本発明の積層体は、少なくとも基材層(E)と上述した本発明の積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)を有する積層体である。基材層(E)の少なくとも一方の面に、本発明の積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)が形成されている。積層体の構成についての制約はないが、例えば、下記のような構成を含む積層体が例示される。基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)、積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)、基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/基材層(E)、基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)、基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/基材層(E)、他樹脂層/基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)、基材層(E)/積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)/他樹脂層
ここで、他樹脂層としては、本発明の積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)とは異なる樹脂層であり、例としてLDPE、C4-LLDPE、HAO-LL DPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(E AA)、エチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA、EMA、EMMA等)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの接着性樹脂、ポリプロピレン 系樹脂、ポリスチレン樹脂等、他の熱可塑性樹脂が挙げられる。他樹脂層として、上述した高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(C)を含有する層を用いることが好ましい。
積層体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、基材層に、ポリエチレン樹脂組成物を溶融押出しし積層するいわゆる押出しコーティング法が好ましい。また、上記 押出しコーティングは単層、サンドイッチラミネート、共押出ラミネート、タンデムラミネート等の方法により一層以上積層されることが好ましい。ポリエチレン樹脂組成物層は、接着層として使用できるうえ、表層のシーラントとしても使用することができる。本発明によれば、基材との接着が良好であるため、高速成形が可能となる。
【0043】
また、基材層との接着性を確保する方法としては特に限定されないが、例えば、基材の表面へ表面処理、必要に応じて、アンカーコート処理することが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理法、オゾン処理法、フレーム処理法、低温プラズマ処理法等の各種処理法が挙げられる。また溶融樹脂へオゾンを吹きかける方法も挙げられる。
【0044】
本発明の積層体は、上記の積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)を有するものであり、基材等との接着強度に優れる上に、易引裂き性、耐ピンホール性が良好であり、内容物の保護性能と易取扱い性の両方に優れた積層体である。
【0045】
本発明の積層体は、基材等との接着強度に優れる上に、易引裂き性等の易開封性に優れているので、特に、易引裂包装袋用フィルム、食品包装用フィルム、液体紙容器、紙結束、紙カップ、紙トレー等として好適に用いることができる。
【実施例0046】
以下に実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いられる測定方法及び用いた樹脂は次の通りである。
【0047】
1.測定方法
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・プロピレン共重合体又はエチレン・α-オレフィン共重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、ポリエチレン樹脂組成物のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:エチレン・プロピレン共重合体又はエチレン・α-オレフィン共重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、ポリエチレン樹脂組成物の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
【0048】
(3)モノマー量、分岐数、二重結合数:
<試料調製と測定条件> 試料200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解した。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)の AV400M型NMR装置を用いて行った。
13C-NMR測定条件は、試料の温度を120℃、パルス角を90°、パルス間隔を20秒、積算回数を128回とし、ブロードバンドデカップリング法で測定を実施した。1H-NMRの測定条件は、試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をした。
<算出法>
(i)モノマー量、コモノマーによる分岐数 13C-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式からプロピレン、 ヘキセン、及びエチレン量を求めた。
C3(mol%)=I(P)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
C6(mol%)=I(H)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
C2(mol%)=I(E)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
ここで、I(P)、I(H)、I(H)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(P)=0.5×(I37.69~37.20 +I37.90~37.69 +I37.97~37.90 +I43.90~42.68) +I46.60~45.39
I(H)=0.5×(I34.56~34.22+I34.94~34.86 +I43.60~42.68)+0.5×(I34.86~34.70 -I35.80~35.68) +I40.10~39.96 +I40.80~40.70
I(E)={0.5×(I34.94~34.86 +I37.90~37.6937.97~37.90 +I34.56~34.22 +I37. 69~37.20 )+0.5×(I34.86~34.70-I35.80~35.68) +I24.90~24.70 +I24.70~24. 52 +I24.52~24.32 +I27.28~26.83 +I27.50~27.28 +I31.50~28.50 -I(H) } /2
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI37.69~37.20は37.69ppmと37.20ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
また、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数は、以下の式より求めた。 メチル分岐個数(個/total 1000C)
=C3(mol%)×1000/{C3(mol%)×3+C6(mol%)×6+C2(mol%)×2}
ブチル分岐個数(個/total 1000C)
=C6(mol%)×1000/{C3(mol%)×3+C6(mol%)×6+C2(mol%)×2}
【0049】
(ii)二重結合数
主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの不飽和結合量は1H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求めた。
ビニリデン個数(個/total 1000C)=Ivd×1000/Itotal
ビニル個数(個/total 1000C)=Ivi×1000/Itotal
三置換オレフィン個数(個/total 1000C)=Itri×1000/Itotal
ビニレン個数(個/total 1000C)=Ivnl×1000/Itotal
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。
ここで、Ivd、Ivi、Itri、Ivnl、Itotalはそれぞれ、以下の式で示される量である。
Ivd=(I4.88~4.44)/2
Ivni=(I5.52~5.30)/2
Ivi=(I5.05~4.88+I5.85~5.70)/3
Itri=I5.30~5.05Itotal=(I0.00~5.85)/2
ただし、例えばI5.52~5.30は5.52ppmと5.30ppmの間に検出したプロトンシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmとして設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0050】
(4)溶融膜安定性:
押出機90mmφ、Tダイス560mm幅、リップ幅0.8mm、エアーギャップ11 5mm、成形温度325℃、引取速度100m/minにて溶融膜の安定性を目視にて観察した。溶融膜が安定して、加工できる場合を「○」とし、溶融膜が不安定で、均一な厚みに加工できない場合を「×」とした。
【0051】
(5)ヒートシール強度(N/15mm)
直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーターから樹脂温度325℃でポリエチレン樹脂組成物(D)をTダイより押し出し、繰出し機から、バリア性紙基材の一種であるシルビオバルアUB未晒し(王子エフテックス社製坪量65g/m)を繰り出して基材とし、バリアコート面にコロナ処理30W・min/mをかけながら引取速度100m/min、厚み30μmの条件にて押出ラミネート加工を実施し、バリア性紙基材層(E)と積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)からなる積層体が得られた。
得られた積層体をMDに15mm幅で切断し、シーラント面同士を合わせ、テスター産業製熱盤式ヒートシーラーの下部シールバー30℃で一定とし、シール圧力2Mpa、シール時間1秒の条件で上部シールバーを90℃~140℃を10℃刻みでヒートシールし、一つの温度に付き7本のサンプルを得た。得られたサンプルを東洋精機製引張試験機にて引張速度300mm/分の速度でヒートシール部の180度剥離強度を測定した。測定値からヒートシール温度(℃)と強度(N)のヒートシールカーブを作成し、下記判定基準に従いヒートシール強度を評価した。
〇:ヒートシール強度4Nに到達した温度が110℃以下
×:ヒートシール強度4Nに到達した温度が110℃以上
【0052】
(6)トラウザー引裂き強度
JIS-K7128-1に準拠して、200mm/minの引取速度でサンプルの引取方向と垂直方向(MD)を測定し、引裂き荷重の平均を求めた。(単位:N)引裂き荷重が1.0未満の場合を○、1.0以上の場合を×とした。サンプルは、実施例記載の膜厚30μmをバリア性紙基材に積層した積層体を用いた。
【0053】
(7)耐ピンホール性
テスター産業株式会社製ゲルボフレックステスト装置を用い、23℃にて繰返し回数100回後のピンホールを計測した。実施例記載の膜厚30μmをバリア性紙基材に積層した積層体を用い、巾20cm×長さ30cmの大きさとし積層体の長手方向(MD)と巾方向(TD)に対して各3回の測定を行い、ストローク負荷後、試薬(塩基性染料1%と界面活性剤1%を含む着色界面活性剤水溶液)を筆によりシーラント層側塗付し、試薬の透過の有無により汚染箇所数を調べ、計6回の測定の平均値を求めた。耐ピンホール性については、次の基準で判断した。
○:汚染点が26個未満
×:汚染点が26個以上
【0054】
2.樹脂材料
(1)エチレン・プロピレン共重合体(A)及びエチレン・α-オレフィン共重合体(B)
下記の製造方法により得られた(PE-1)~(PE-3)を成分(A)のエチレン・プロピレン共重合体及びエチレン・α-オレフィン共重合体として用いた。その物性値を表1に示す。
【0055】
(PE-1)~(PE-3)の製造方法(i)触媒の調製
特開平10-218921号公報に記載された方法で調製した錯体「rac-ジメチルシリレンビスインデニルハフニウムジメチル」0.05モルに、等モルの「N,Nジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」を加え、トルエンで50リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
【0056】
(ii)重合方法
内容積5.0リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を80MPaに保ち、エチレン、プロピレン、1-ヘキセンを適宜調整しながら、40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記「(i)触媒の調整」の項に記載の触媒溶液を連続的に供給し、重合温度は150~250℃の範囲内で適宜調整することでエチレン・α-オレフィン共重合体を得た。
得られたエチレン・プロピレン共重合体及びエチレン・α-オレフィン共重合体の物性値は表1に示す。
【0057】
(2)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン
表1に示す物性値を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(PE-4)~(PE-8)を用いた。
【0058】
(実施例1)
エチレン・プロピレン共重合体(A)として(PE-1)を28.3重量%と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)(PE-2)を3.4重量%、さらに高圧法低密度ポリエチレン(C)として、MFRが13g/10分、密度が0.918g/cmの高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-4)68.3重量%からなるポリエチレン樹脂組成物(D)を40mm単軸押出機で造粒しポリエチレン系組成物のペレットを得た。
上記で得られたペレットを用い、直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーターから樹脂温度325℃でポリエチレン樹脂組成物(D)をTダイより押し出し、繰出し機から、バリア性紙基材の一種であるシルビオバルアUB未晒し(王子エフテックス社製坪量65g/m)を繰り出して基材とし、バリアコート面にコロナ処理30W・min/m2をかけながら引取速度100m/min、厚み30μmの条件にて押出ラミネート加工を実施した。
得られたバリア性紙基材層(E)と積層用ポリエチレン樹脂組成物(D)を含有する層(F)からなる積層体で、各評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性すべてにおいて良好であった。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)(PE-2)の配合比率を5.9重量%、高圧法低密度ポリエチレン(C)(PE-4)の配合比率を65.8重量%に変更した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性すべてにおいて良好であった。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体(A)(PE-1)の配合比率を26.1重量%、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)(PE-2)の配合比率を5.0重量%、MFRが10g/10分、密度が0.918g/cmの高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-5)の配合比率を68.9重量%に変更した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、易引裂き性、耐ピンホール性、低温シール性すべてにおいて良好であった。
【0061】
(比較例1)
実施例1においてエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いずに、エチレン・プロピレン共重合体(A)(PE-1)の配合比率を20.0重量%、MFRが8.0g/10分、密度が0.919g/cmの高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-6)の配合比率を80.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、易引裂き性、低温シール性は良好であったが、耐ピンホール性が不十分であった。
【0062】
(比較例2)
実施例1においてエチレン・プロピレン共重合体(A)及びエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いずに、MFRが7.0g/10分、密度が0.918g/cmの高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-7)のみを用いた積層体で評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、易引裂き性、は良好であったが、低温シール性、耐ピンホール性が不十分であった。
【0063】
(比較例3)
実施例1においてエチレン・プロピレン共重合体(A)及びエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いずに、MFRが27g/10分、密度が0.908g/cmのエチレン、プロピレン及び1-ヘキセンのエチレン系三元共重合体(PE-3)の配合比率67.0重量%とMFRが4.0g/10分、密度が0.918g/cm3の高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-8)の配合比率33.0重量%からなるポリエチレン樹脂組成物(D)のポリエチレン系組成物のペレットとした以外は、実施例1と同様に評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。溶融膜安定性、耐ピンホール性、低温シール性は良好であったが、易引裂き性が不十分であった。
【0064】
【表1】
【0065】
[産業上の利用可能性]
本発明の積層体は、易引裂き包装用紙容器、バリア性包装用紙容器、紙結束、紙カップ、紙トレー等として用いることができる。