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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146315
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241004BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20241004BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 Q
H05K3/00 N
H05K1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059131
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 健央
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351AA03
4E351AA04
4E351AA13
4E351BB03
4E351CC03
4E351CC06
4E351CC07
4E351DD04
4E351DD06
4E351DD10
4E351DD11
4E351DD14
4E351DD17
4E351DD19
4E351DD20
4E351GG03
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC05
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC18
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD33
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH16
5E316JJ13
(57)【要約】
【課題】キャパシタを有する配線基板の信頼性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】下部電極、前記下部電極の上方に配置される誘電体層、及び前記誘電体層の上方に配置される上部電極を含むキャパシタ10と、前記上部電極上にビアボトム部が配置されるビア15とを有する配線基板100において、前記ビア15は、ビア径の最小部が前記ビアボトム部から離れた位置に存在するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極、前記下部電極の上方に配置される誘電体層、及び前記誘電体層の上方に配置される上部電極を含むキャパシタと、前記上部電極上にビアボトム部が配置されるビアとを有する配線基板において、
前記ビアは、ビア径の最小部が前記ビアボトム部から離れた位置に存在するように形成されている、配線基板。
【請求項2】
前記ビアは、
前記ビアボトム部からビアトップ部までの高さをHとし、前記ビアボトム部から前記ビア径の最小部までの高さをh1とした場合、「h1/H」が0.03乃至0.6の範囲内となるように形成されている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ビアは、
前記ビアボトム部の径をdbとし、前記ビア径の最小部の径をd0とした場合、「db/d0」が1.05乃至2.0の範囲内となるように形成されている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記キャパシタは、ガラス材料を用いた基板の上に形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記ビアは、フィルドビアである、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
下部電極、前記下部電極の上方に配置される誘電体層、及び前記誘電体層の上方に配置される上部電極を含むキャパシタと、前記キャパシタ上にビアボトム部が配置されるビアとを有する配線基板を製造する、配線基板の製造方法であって、
前記上部電極となる導電層上に絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記絶縁樹脂層のうち前記ビアを形成する領域に貫通孔を開けることによりビアホールを形成する工程とを含み、
前記ビアホールを形成する工程は、前記ビアのビア径の最小部が前記ビアボトム部から離れた位置に存在するように当該ビアホールを形成することを含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記ビアホールを形成する工程では、
前記貫通孔をレーザ光の照射により加工するレーザ処理と、前記レーザ処理により生じる絶縁樹脂の残渣を除去するデスミア処理とを行い、
前記レーザ処理および前記デスミア処理では、前記ビアのビア径の最小部よりも前記ビアボトム部のビア径の方が大きくなるように前記貫通孔を処理する、
請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記レーザ処理においては、前記ビアのビア径の最小部の開口よりも前記ビアボトム部側の開口の方が大きくなるようにレーザ加工条件を調整する、
請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタを有する配線基板および配線基板の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス材料をコア基板として用いた多層配線基板がインターポーザとして多用されている。多層配線基板においては、受動回路の一部として、基板内部に、誘電体層を下部電極と上部電極とで挟持するMIM(Metal-Insulator-Metal)構造を有するキャパシタが形成されることがある。下部電極、誘電体層、上部電極は、それぞれ、第1導電層、絶縁層、第2導電層により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/244382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のキャパシタにおいては、誘電体層と各電極との間で熱膨張係数に違いがあるため、応力ひずみが発生することがある。この応力ひずみは、キャパシタ上に配置されるビアにも影響し、配線基板の信頼性低下の要因となる。
【0005】
本発明は、キャパシタを有する配線基板の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、下部電極、前記下部電極の上方に配置される誘電体層、及び前記誘電体層の上方に配置される上部電極を含むキャパシタと、前記上部電極上にビアボトム部が配置されるビアとを有する配線基板において、前記ビアは、ビア径の最小部が前記ビアボトム部から離れた位置に存在するように形成されている、配線基板が提供される。
【0007】
本発明の他の側面によると、前記ビアは、前記ビアボトム部からビアトップ部までの高さをHとし、前記ビアボトム部から前記ビア径の最小部までの高さをh1とした場合、「h1/H」が0.03乃至0.6の範囲内となるように形成されている、配線基板が提供される。
【0008】
本発明の更なる他の側面によると、前記ビアは、前記ビアボトム部の径をdbとし、前記ビア径の最小部の径をd0とした場合、「db/d0」が1.05乃至2.0の範囲内となるように形成されている、配線基板が提供される。
【0009】
本発明の更なる他の側面によると、前記キャパシタは、ガラス材料を用いた基板の上に形成されている、配線基板が提供される。
【0010】
本発明の更なる他の側面によると、前記ビアは、フィルドビアである、配線基板が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によると、下部電極、前記下部電極の上方に配置される誘電体層、及び前記誘電体層の上方に配置される上部電極を含むキャパシタと、前記キャパシタ上にビアボトム部が配置されるビアとを有する配線基板を製造する、配線基板の製造方法であって、前記上部電極となる導電層上に絶縁樹脂層を形成する工程と、前記絶縁樹脂層のうち前記ビアを形成する領域に貫通孔を開けることによりビアホールを形成する工程とを含み、前記ビアホールを形成する工程は、前記ビアのビア径の最小部が前記ビアボトム部から離れた位置に存在するように当該ビアホールを形成することを含む、配線基板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、前記ビアホールを形成する工程では、前記貫通孔をレーザ光の照射により加工するレーザ処理と、前記レーザ処理により生じる絶縁樹脂の残渣を除去するデスミア処理とを行い、前記レーザ処理および前記デスミア処理では、前記ビアのビア径の最小部よりも前記ビアボトム部のビア径の方が大きくなるように前記貫通孔を処理する、配線基板の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更なる他の側面によると、前記レーザ処理においては、前記ビアのビア径の最小部の開口よりも前記ビアボトム部側の開口の方が大きくなるようにレーザ加工条件を調整する、配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャパシタを有する配線基板の信頼性を向上させる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る配線基板の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を示す断面図である。
図14図14は、図12中に示されるビア15近傍の断面形状を模式的に示す断面図である。
図15図15は、図12に示されるように、図14に示されるものと同一層の配線において、キャパシタ10以外の部分にあるビア15’近傍の断面形状を示す断面図である。
図16図16は、レーザ処理後のビアホール15Hの断面形状およびデスミア処理後のビアホール15Hの断面形状を、従来例、本実施形態の実施例1および実施例2を対比させて示す断面図である。
図17図17は、本発明の実施形態によるビアの断面形状の様々な形態を示す断面図である。
図18図18は、従来技術によるビアの断面形状の様々な形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0017】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0019】
また、以下において、用語「上方」及び「下方」は、層の厚さ方向における位置を表すために使用しており、断面図における上方(Z軸の正方向)及び下方(Z軸の負方向)にそれぞれ対応している。また、用語「上面」及び「下面」は、厚さ方向が縦方向になるように断面が描かれた層の2つの主面のうち、上方に位置した主面及び下方に位置した主面をそれぞれ意味している。また、用語「横方向」は、断面図におけるZ軸に垂直な方向(例えば、X軸の正方向または負方向、Y軸の正方向または負方向など)を意味する。また、用語「平面視」は、上方からつまりZ軸の正方向から負方向に向かって面又は層を視認した場合の形状を意味する。
【0020】
<1>基本構造
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る配線基板の基本構造について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る配線基板の一例を示す断面図である。
【0022】
図1に示す配線基板100は、多層配線基板であって、コア基板としてガラス基板を含んだガラスコア配線基板である。配線基板100は、例えば、図示しないプリント配線基板やシリコンチップ等に接続される。図1の例では、配線基板1は、インターポーザとして使用する配線基板、即ち、ガラスインターポーザである。
【0023】
図1に示すように、配線基板100は、表面が絶縁性を有する基板1と、基板1上に配置される密着層2と、密着層2上に(基板1の上方に)配置される第1シード層3と、第1シード層3上に配置される第1導電層4と、第1導電層4上に配置される下部密着層5と、下部密着層5上に(第1導電層4の上方に)配置される絶縁層6と、絶縁層6上に配置される上部密着層7と、上部密着層7上に(絶縁層6の上方に)配置される第2シード層8と、第2シード層8上に配置される第2導電層9と、導電層群を保護する絶縁樹脂層12と、第2導電層9の上方に配置される、第3シード層13および第3導電層14を有する。
【0024】
このような配線基板100において、第1導電層4は、MIM構造における下部電極となり、絶縁層6は、MIM構造における誘電体層となり、第2導電層9は、MIM構造における上部電極となり、少なくともこれらがMIM構造のキャパシタ(MIMキャパシタ)10を構成している。
【0025】
また、キャパシタ10の上には、第3導電層14に通じるビア15がある。ビア15は、フィルドビアとして形成されている。ビア15は、キャパシタ10における第2導電層9と第3導電層14との導通を担う。
【0026】
<2>各要素の説明
以降、配線基板100を構成する各要素の材料、形状等について詳細に説明する。
【0027】
<2.1>基板
基板1は、光透過性を有する透明のガラスを材料としたものが望ましい。厚さや線膨張係数が一定範囲内のガラスを採用することにより、基板1の貫通孔形成プロセスの容易性や製造時のハンドリング性、応力ひずみ発生時の安定性を良くすることができる。
【0028】
ガラスの材料、成分またはガラスに含有される各成分の配合比率、ガラスの製造方法は、特に限定されない。
【0029】
例えば、ガラス材料としては、無アルカリガラス、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、感光性ガラス等が挙げられるが、ケイ酸塩を主成分とするいずれのガラス材料を用いてもよい。さらに、その他のいわゆるガラス材料を用いてもよい。ただし、本実施形態の基板1に半導体を実装して用いる場合は、無アルカリガラスを用いるのが望ましい。
【0030】
ガラスの製造方法としては、フロート法、ダウンドロー法、フュージョン法、アップドロー法、ロールアウト法等が挙げられるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0031】
基板1の厚さは1mm以下が望ましいが、ガラスの貫通孔形成プロセスの容易性や製造時のハンドリング性を考慮すると、より好ましくは0.1mm以上、0.8mm以下である。
【0032】
ガラスの線膨張係数は、-1ppm/K以上、15.0ppm/K以下であることが望ましい。その理由として、-1ppm/K以下である場合、ガラス材料自体を選定することが困難となり安価に作製することができず、一方、15.0ppm/K以上である場合、他層との熱膨張係数の差異が大きく信頼性が低下するからである。また、基板1にシリコンチップを実装する場合は、シリコンチップとの接続信頼性が低下する。ガラスの線膨張係数は、より好ましくは0.5ppm/K以上、8.0ppm/K以下、更に好ましくは1.0ppm/K以上、4.0ppm/K以下である。
【0033】
基板1には、予め反射防止膜またはIRカットフィルタ等の機能膜が形成されていてもよい。また、強度付与、帯電防止付与、着色、テクスチャー制御等の機能が付与されてもよい。これら機能膜の例として、強度付与にはハードコート膜、帯電防止付与については、帯電防止膜、着色については、光学フィルタ膜、テクスチャー制御においては、アンチグレア、光散乱膜等が挙げられるが、この限りではない。これら機能膜の形成方法としては、蒸着、スパッタリング法、ウェット方式等の成膜技術が用いられる。
【0034】
<2.2>第1シード層
第1シード層3は、銅層もしくはその他の金属層(シード金属層)を有する。シード金属層は、セミアディティブ工法における配線形成において、電解めっきの給電層として作用する。この第1シード層3は、例えば、スパッタ法、またはCVD法によって形成され、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu3N4、Cu合金単体もしくは複数組み合わせたものが用いられている。第1シード層3の上方には、無電解めっき層(無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき等の層)が形成されてもよい。
【0035】
<2.3>密着層
基板1や絶縁層6の上方にシード層を形成する前に、基板1や絶縁層6の下面や上面に、電気特性、製造の容易性の観点及びコスト面を考慮して、スパッタリング法によって被着されたチタンを密着層として形成することが望ましい。本実施形態では、密着層として、基板1の上面に形成される密着層2のほか、絶縁層6の下面に形成される下部密着層5、及び、絶縁層6の上面に形成される上部密着層7がある。密着層2は、基板1と第1シード層3との密着性を向上させる機能を有し、下部密着層5は、第1導電層4と絶縁層6との密着性を向上させる機能を有し、上部密着層7は、絶縁層6と第2シード層8との密着性を向上させる機能を有する。
【0036】
下部密着層5及び上部密着層7の材料は、例えばTiである。この他、例えばCu、Ni、Al、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、Cu合金単体もしくは複数組み合わせたものを用いてもよい。Tiは、密着性、電気伝導性、製造の容易性の観点及びコスト面から優れている。
【0037】
下部密着層5及び上部密着層7の厚さは、例えば、10nm以上1μm以下であることが望ましい。10nm未満である場合、密着強度が不十分となる虞がある。1μmを超える場合、後述する製造工程において、成膜時間がかかりすぎて量産性に欠けるばかりでなく、不要部分を除去する工程でさらに時間がかかる虞がある。下部密着層5及び上部密着層7の厚さは、より好ましくは10nm以上、500nm以下である。
【0038】
下部密着層5及び上部密着層7は、それぞれ厚さが異なってもよいが、構造上単純になるため同厚であることが望ましい。なお、第1導電層4と絶縁層6との密着が十分である場合は、下部密着層5はなくても構わない。また、絶縁層6と第2シード層8との密着が十分である場合は、上部密着層7はなくても構わない。
【0039】
<2.4>配線
基板1上に形成される密着層2、第1シード層3、及び第1導電層4は、キャパシタ10が形成される以外の基板1上の領域では、回路形成のための配線として用いることができる。例えば、密着層2はチタンからなり、第1シード層3は銅からなる。回路形成のための配線として用いるためには、チタンと銅の合計の膜厚は、セミアディティブ法による微細な配線形成に有利なことから5μm以下とするのが望ましい。5μmより厚い場合、ピッチ30μm以下の微細配線形成は困難である。
【0040】
第1導電層4は、キャパシタ10の下部電極となるほか、回路形成のための配線としても用いることを考慮すれば、電解銅めっきであることが簡便かつ安価であり、電気伝導性が良好であることから望ましい。しかし、電解銅めっきのほか、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等であってもよい。
【0041】
<2.5>絶縁層
キャパシタ10の誘電体層となる絶縁層6は、絶縁性、比誘電率の観点からアルミナ、シリカ、シリコンナイトライド、タンタルオキサイド、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムから選択することができる。
【0042】
絶縁層6の厚さは、10nm以上5μm以下であることが望ましい。絶縁層6の厚さが、10nm以下である場合、絶縁性を保つことができずにキャパシタ10としての機能が発現しない。絶縁層6の厚さが、5μm以上の場合、成膜時間がかかりすぎて量産性に欠けるばかりでなく、不要部分を除去する工程でさらに時間がかかってしまう。より好ましくは50nm以上、1μm以下である。
【0043】
<2.6>第2シード層
第2シード層8は、第2導電層9をセミアディティブ法で形成するための給電層である。第2シード層8は、例えばCu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、Cu合金単体もしくは複数組み合わせたものが用いられる。後のエッチング除去を簡便とするためは、銅であることが望ましい。
【0044】
第2シード層8の厚さは、50nm以上、5μm以下であることが望ましい。第2シード層8の厚さが、50nm未満である場合、続く電解めっき工程において通電不良が発生する可能性がある。第2シード層8の厚さが、5μmを超えると、エッチング除去に時間がかかってしまう。第2シード層8の厚さは、より好ましくは100nm以上500nm以下である。
【0045】
<2.7>第2導電層
キャパシタ10の上部電極となる第2導電層9は、電解めっき層である。第2導電層9は、電解銅めっきであることが簡便で安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。しかし、電解銅めっきの他、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等であってもよい。
【0046】
第2導電層9の厚さ(電解銅めっきの厚さ)は3μm以上、30μm以下であることが望ましい。3μm未満の場合、第2導電層9を形成した後のエッチング処理によっては回路が消失してしまう虞がある。さらに回路の接続信頼性、電気伝導性が低下する可能性がある。電解銅めっき厚が30μmを超えると、30μm厚以上のレジスト層を形成する必要があり、製造コストがかかる。さらにはレジスト解像性が低下することから、ピッチ30μm以下の微細な配線形成が困難となってしまう。より好ましくは5μm以上、25μm以下であることが望ましい。さらに好ましくは7μm以上、20μm以下である。
【0047】
<2.8>絶縁樹脂層
絶縁樹脂層12は、熱硬化性樹脂にフィラーが充填されたものが主に使用される。エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂の少なくとも一種類以上を含み、シリカ、酸化チタン、ウレタン等のフィラーを含む材料であり、液状、もしくはフィルム状の材料であることが望ましい。液状樹脂の場合は、スピンコート法、フィルム状樹脂の場合は、真空ラミネータを用いて、真空下で加熱・加圧を行って形成することができる。絶縁樹脂層12の材料は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0048】
<2.9>第3シード層
第3シード層13は、第2シード層8と同様なものを用いて形成される。
【0049】
<2.10>第3導電層
第3導電層14は、第2導電層9と同様なものを用いて形成される。
【0050】
<3>配線基板の製造工程
図2乃至図12は、配線基板100の製造工程の一例を示す断面図である。図13は、図2乃至図12に示される製造工程を経て多層配線基板として形成される配線基板100の一例を示す断面図である。
【0051】
以下、図2乃至図13を参照して、配線基板100の製造方法の一例を説明する。
【0052】
<3.1>工程1
最初に、基板1として、図2乃至図12には図示されていないが、基板1の上側表面から下側表面に貫通する貫通孔を有するものが用意される。なお、配線基板100が多層配線基板として完成する際には、図13に示すように、基板1の貫通孔16は、絶縁樹脂層12が充填された状態となる。貫通孔の断面形状や径は、例えば貫通孔のトップ径及びボトム径よりも中央部の径が狭くなるような形状でもよく、また、トップ径に対しボトム径が小さい形状でもよい。更に、貫通孔のトップ径とボトム径よりも中央部の径が広くなるような形状でもよい。
【0053】
<3.2>工程2
次に、図2に示すように、密着層2及び第1シード層3を、基板1の表面上に形成するとともに、図2乃至図12には図示されていないが、基板1の貫通孔内の内面にも形成する。なお、着層2及び第1シード層3は、配線基板100が多層配線基板として完成する際には、図13に示されるように基板1の上面、下面、及び貫通孔内の内面に形成された状態となる。密着層2及び第1シード層3は、セミアディティブ工法における配線形成工程において、電解めっきの給電層として作用する。
【0054】
密着層2及び第1シード層3の形成工程では、基板1に密着層2としてチタン層をスパッタリング法により形成し、その後に、第1シード層3として銅層をスパッタリング法により形成し、更にその後に、無電解めっきにより、金属層を付加形成することが望ましい。
【0055】
チタン層、銅層をスパッタリング法のみで形成すると、貫通孔の内壁に金属皮膜が均一に形成することができない場合がある。このため、無電解めっき法によって金属層を増強することが望ましい。無電解めっき層は無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが挙げられるが、ガラスあるいはチタン層、銅層との密着性が良いことから無電解ニッケルめっきが望ましい。
【0056】
ニッケルめっき層が厚過ぎると、微細な配線形成が困難となる場合がある。また、膜応力増加によって、密着性が低下する場合もある。そのため、無電解ニッケルめっき厚は1μm以下が望ましい。また、より好ましくは、0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下である。
【0057】
また、無電解ニッケルめっき皮膜には還元剤に由来する共析物であるリンや、無電解ニッケルめっき液中に含まれる硫黄や鉛やビスマス等が含まれていてもよい。
【0058】
以上の工程を経て、貫通孔が形成されたガラス基板上にシード金属層が形成された基板が得られる。
【0059】
<3.3>工程3
続いて、図2に示すように、第1シード層3の上方にレジスト11によるパターンを形成する。レジスト11によるパターンの形成工程では、まず、第1シード層3上の全面にレジスト11の層を形成する。採用するレジストは、ネガ型ドライフィルムレジスト、ネガ型液状レジスト、ポジ型液状レジストが挙げられるが、レジスト層の形成が簡便でかつ安価であるためネガ型フォトレジストであることが望ましい。
【0060】
<3.4>工程4
続いて、フォトレジスト層に所望の導体回路層を形成するためのパターンをフォトリソグラフィー法によって形成する。すなわち、レジスト11のパターンは後の導体回路層が形成される部分が露出するように位置合わせを行い、露光、現像処理することによってパターニングを実現する。レジスト層の厚みは、導体回路層の厚みにも依存するが、好ましくは5μm以上、25μm以下である。5μmより薄い場合、導体回路層となる電解めっき層を5μm以上に増膜できなくなり、回路の接続信頼性が低下する可能性がある。25μmより厚くなる場合、ピッチ30μm以下の微細配線を形成することが困難となる。これによって、フォトレジストパターンが形成された基板が得られる。
【0061】
<3.5>工程5
続いて、図3に示すように、第1シード層3に給電し、メッキ液に浸漬することによって、フォトレジストパターンが形成されていない第1シード層3の上面に、後に導体回路層となる第1導電層4である電解めっき層を形成する。
【0062】
<3.6>工程6
続いて、不要となったフォトレジストパターンを除去し、図4に示すように、第1導電層4及び第1シード層3を露出させる。なお、レジスト11の除去方法は、何ら特定の方法に限定されるものではないが、例えば、アルカリ水溶液によって剥離除去することができる。
【0063】
<3.7>工程7
続いて、図5に示すように、下部電極となる第1導電層4上の全面に渡り、下部密着層5、絶縁層6、上部密着層7、及び、第2シード層8を順次堆積形成する。当該層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザブレーション法、CVD法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
絶縁層6の下層にある下部密着層5は、絶縁層6と第1導電層4との密着性を向上させる機能を有する。しかし、絶縁層6と第1導電層4との密着性が十分である場合は、下部密着層5は無くても構わない。
【0065】
本実施形態においては、第1導電層4の形成後に、第1シード層3をエッチングすることなく、下部密着層5、絶縁層6、上部密着層7、及び、第2シード層8を形成している。このため、第2シード層8を形成する際に、第2シード層8の付きまわり性の異常を抑制することができる。その結果、第2導電層についても安定して形成することができる。
【0066】
なお、第2シード層8は第2導電層9をセミアディティブ法で形成するための給電層として機能する。
【0067】
<3.8>工程8
続いて、図6に示すように、第2シード層8の上面にレジスト11のパターンを、第2導電層9を形成する箇所以外の領域に形成する。レジスト11のパターンの形成は、前述したフォトレジストパターンと同じ方法で行うことができる。この場合、レジスト11のパターンの開口領域は、下部電極となる第1導電層4の領域の内側に収まるように形成し、積層方向における平面視においても、キャパシタ10の外部への接続線の部分を除き、第1導電層4の内側に収まるように形成する。
【0068】
<3.9>工程9
続いて、第2シード層8に給電し、電解めっき法によって、上部電極となる第2導電層9を形成する。
【0069】
<3.10>工程10
続いて、図7に示すように、レジスト11のパターンを除去する。フォトレジストパターンは、アルカリ水溶液で除去剥離することができる。
【0070】
<3.11>工程11
続いて、第2シード層8、上部密着層7、絶縁層6、及び下部密着層5をエッチングにて除去する。その際は、第2導電層9をマスクとして、第2シード層8および上部密着層7の不要部分が除去されてもよい。このようにすると、MIMキャパシタデバイスの外表面における絶縁層の面積が大きくなり、上部電極-下部電極間の側面からの電流のリークを抑制することができる。
【0071】
<3.12>工程12
続いて、図8に示すように、再度レジスト11のパターンを第1導電層4も取り囲むように形成する。つまり、レジスト11のパターンが、少なくとも1つの横方向(例えば、X軸の正方向または負方向)において、第1導電層4の幅aよりも大きい幅bを有するエッチングマスクとなるように、レジスト11のパターンを形成する。
【0072】
すなわち、第1導電層4よりも幅の大きなエッチングマスクの幅は、第1シード層3の幅に相当する幅となる。この場合、フォトレジストパターンの非開口領域は第1導電層4の領域の外側となるように形成し、積層方向における平面視においても、キャパシタ10の外部への接続線の部分を除き、第1導電層4の領域の外側となるように形成する。
【0073】
<3.13>工程13
続いて、第1シード層3の露出した部分を除去する。
【0074】
なお、無電解Ni層、銅層、チタン層に対しては、順次化学エッチングにより除去する方法を用いることができる。エッチング液の種類は除去する金属種により適宜選択され、除去方法は、本実施形態に記載された方法に限定されるものではない。
【0075】
<3.14>工程14
続いて、レジスト11のパターンを除去すると、図9に示すようにキャパシタが形成された配線基板を得ることができる。フォトレジストパターンは、アルカリ水溶液で除去剥離することができる。
【0076】
<3.15>工程15
その後、図10に示すように、工程14で形成された配線基板上に絶縁樹脂層12を形成する。絶縁樹脂層12は、真空ラミネート、ロールラミネートなどの方法を用いて形成することができる。また、絶縁樹脂層12のラミネート後に加熱、UV照射などを行い、絶縁樹脂層12を半硬化させてもよい。更には、信頼性試験での耐性向上のため、後述するビア等を形成した後の最終工程等で、本硬化を行ってもよい。
【0077】
<3.16>工程16
その後、図11に示すように、X部の領域において、キャパシタと上側の配線との導通を担うビアを形成するため、ビアホール15Hを形成する。具体的には、絶縁樹脂層12のうちビアを形成する領域に貫通孔を開けることによりビアホール15Hを形成する。
【0078】
ビアホール15Hの形成のためには、その貫通孔をレーザ光の照射により加工するレーザ処理を行う。レーザ処理には、例えば、炭酸ガスレーザ、UV-YAGレーザといったパルスレーザを用いることが望ましく、パルス幅がμsオーダーのレーザが適している。レーザの波長、出力、パルス幅、ショット数、スポット径などを調整することで、ビアホール15Hの形状を調整するようにしてもよい。レーザ処理の詳細については後で説明する。
【0079】
<3.17>工程17
次に、レーザ処理により生じる絶縁樹脂の残渣を除去するデスミア処理を行う。デスミア処理には、過マンガン酸等を用いたウェット処理を適用してもよいし、プラズマなどを用いたドライ処理を適用してもよい。デスミア処理の詳細については後で説明する。
【0080】
<3.18>工程18
その後、図12に示すように、第3シード層13を形成する。上記層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザブレーション法、CVD法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第3シード層13の密着改善のために、密着層を追加することも可能である。
【0081】
さらに、第3シード層13を給電層として用い、セミアディティブ法などで、ビア15を含む第3導電層14を形成する。手順としては、レジスト11にて、所望のパターンを形成し、その後、電解めっき層にて、レジスト11以外の場所に第3導電層14を形成する。
【0082】
<3.19>工程19
その後、図13に示すように、積層導体回路層と絶縁樹脂層12を繰り返して形成することによって多層配線基板として配線基板100を形成する。配線基板上の導体回路や積層構造は、セミアディティブ法あるいはサブトラクティブ法を用いて形成することができる。
【0083】
多層配線基板には、工程1乃至18を経て形成されるキャパシタ10やビア15のみならず、キャパシタ10のない箇所に配置されるビア15’なども存在する。これについては後で説明する。
【0084】
また、多層配線基板を形成した後に、外部接続端子を形成してもよいし、さらに、外部接続端子にはんだボールを形成してもよい。また、多層配線基板は、片面にのみ積層導体回路層、外部接続端子、はんだボールがあってもよいし、両面に同じものがあってもよい。さらに半導体チップ、チップ部品を搭載してもよい。
【0085】
<4>ビアの形状・寸法
図14は、図12中に示されるビア15近傍の断面形状を模式的に示す断面図である。なお、図14では、導体と絶縁樹脂との線膨張係数差による応力を理解しやすくするため、前述した第3シード層13と第3導電層14とをまとめて、第3導電層14として表現している。
【0086】
一方、図15は、図12に示されるように、図14に示されるものと同一層の配線において、キャパシタ10以外の部分にあるビア15’近傍の断面形状を示す断面図である。図15に示すビア15’の下側にはキャパシタ10が存在しないため、第1導電層4がパッド部となっている。
【0087】
これに対し、図14に示されるビア15の下側には、前述したようにキャパシタ10があり、MIM部を形成するために第1導電層(下部電極)4、絶縁層(誘電体層)6、および第2導電層(上部電極)9が存在する。2つの導電層(配線層)があることから、キャパシタ10が存在する箇所は他の箇所よりも導電層の総厚(第1導電層4の厚み+第2導電層9の厚み)が大きく、応力差が他の箇所よりも大きい。このことは、キャパシタ10上に配置されるビア15との配線にも影響し、何ら対策をとらないと配線基板100の信頼性が低下する可能性がある。本実施形態ではこのような問題を解決する。
【0088】
一般にビアは、ボトム部(ビアボトム部)15Bからトップ部(ビアトップ部)15Tまで、Z軸方向の位置によって径(ビア径)が変化するものもあれば、変化しないものもある。ビア径がZ軸方向の位置によって変化しないものは、ビアは円柱形を成し、その縦断面形状は長方形となる。一方、ビア径がZ軸方向の位置によって変化する場合、ビアの縦断面形状には様々なものがあり、ビア径が最小となる部分(ビア径の最小部)15Mも様々となる。図14は、そのような各種の縦断面形状のうちの一例を示すものである。
【0089】
図14中、「H」はビアボトム部15Bからビアトップ部15Tまでの高さ(ビア高さ)を表し、「h1」はビアボトム部15Bからビア径の最小部15Mまでの高さ(ビア最小径高さ)を表す。「dt」はビアトップ部15Tの径(ビアトップ径)を表し、「db」はビアボトム部15Bの径(ビアボトム径)を表し、「d0」はビア径の最小部15Mの径(ビア最小径)を表す。「d1」はビア径の最小部15Mに対するビアボトム部15Bの水平方向の広がり幅(ビア広がり幅)、具体的には、ビアボトム径dbとビア最小径d0との差の半分を表し、「(db-d0)/2」により求められる。
【0090】
本実施形態に係るビア15は、ビア径の最小部15Mがビアボトム部15Bから離れた位置に存在するように構成される。ビア径の最小部15Mは、ビアボトム部15Bには存在しない。図14の例では、ビア径の最小部15Mは、ビアボトム部15Bからビアトップ部15Tまでの間の途中に存在している。ただし、この例に限らず、ビア径の最小部15Mは、ビアトップ部15Tに存在していてもよい。すなわち、ビア最小径高さh1は、ゼロを超える値とし、ビア高さHを上限とする。
【0091】
このように、本実施形態においては、ビア15は、ビア径の最小部15Mがビアボトム部15Bから離れているため、キャパシタ10における層間の熱膨張係数の違いによって発生する応力ひずみによる影響が小さく、ビアボトム部15Bにおけるビア15と第2導電層(上部電極)9との断線が抑制される。
【0092】
ビアボトム部15Bは、熱衝撃試験において、絶縁樹脂層12とビア15の導体との線膨張係数の差から、もっとも応力が掛かりやすい箇所であることが確認された。もし、ビア径の最小部15Mがビアボトム部15Bに存在すれば、より応力が集中する。本実施形態によれば、そのような応力集中が抑制される。
【0093】
ビア最小径高さh1の望ましい値について検証を行った結果、h1は、1μm以上が好適であり、5μm以上がより好適であることが確認された。すなわち、h1を、1μm以上とすることにより、ビアボトム部15Bでの応力集中が抑制されることが確認された。
【0094】
さらに、ビア高さHに対するビア最小径高さh1の比である最小径高さ比率Hp(=h1/H)の望ましい値について検証を行った結果、Hpは、0.03乃至0.6の範囲内とすることが好適であり、0.06乃至0.4の範囲内とすることがより好適であることが確認された。Hpが0.03未満の場合は、ビア径の最小部15Mをビアボトム部15Bから離した効果が小さくなり、断線が起こる可能性が高くなってしまう。一方、Hpが0.6より大きい場合には、ビアホール形成時のレーザ加工条件(出力、パルス幅、ショット数、スポット径など)が強くなりすぎて、ビアボトム部15B近傍の配線に熱ダメージを与えてしまう。Hpを0.03乃至0.6の範囲内とすることにより、そのような問題の発生を抑えることができる。
【0095】
また、ビア広がり幅d1の望ましい値について検証を行った結果、d1は、1μm以上が好適であり、5μm以上がより好適であることが確認された。すなわち、ビアボトム径dbを、ビア最小径d0よりも一定以上大きくすることにより、ビアの接続信頼性が向上することが確認された。
【0096】
さらに、ビア最小径d0に対するビアボトム径dbの比であるビアボトム比率Br(=db/d0)の望ましい値について検証を行った結果、Brは、1.05乃至2.0の範囲内とすることが好適であり、1.1乃至1.6の範囲内とすることがより好適であることがわかった。Brが1.05未満の場合は、dbを大きくした効果が小さくなり、応力集中の抑制効果が小さくなってしまう。一方で、Brが2.0を超える場合は、ビアホール形成時のレーザ加工条件(出力、パルス幅、ショット数、スポット径など)が強くなりすぎて、ビアボトム部15B近傍の配線に熱ダメージを与えてしまう。Brを1.05乃至2.0の範囲内とすることにより、そのような問題の発生を抑えることができる。
【0097】
<5>レーザ処理およびデスミア処理の詳細
前述の<3.16>の工程16で示したレーザ処理、および前述の<3.17>の工程17で示したデスミア処理のそれぞれの詳細について説明する。
【0098】
<5.1>レーザ処理およびデスミア処理の条件
レーザ処理およびとデスミア処理では、ビア径の最小部15Mよりもビアボトム部15Bのビア径の方が大きくなるように上述の貫通孔を処理する。そのためには、レーザ処理において、ビア径の最小部15Mの開口よりもビアボトム部15B側の開口の方が大きくなるようにレーザ加工条件(例えば、出力、パルス幅、ショット数、スポット径など)を調整しながらレーザ光の照射を行うことが望ましい。その場合、ビア径の最小部15Mの開口のためのレーザ加工条件よりも、ビアボトム部15B側の開口のためのレーザ加工条件の方を強めに設定する。
【0099】
また、ビアボトム部15B近傍の開口を大きくするに際し、その箇所に対するレーザ加工条件(例えば、出力、パルス幅、ショット数、スポット径など)を、MIM部が無い箇所に対するレーザ加工条件よりも強めに設定することが望ましい。
【0100】
パルス幅については、絶縁樹脂層12の材質にもよるが、マイクロ秒オーダーが良好である。また、レーザのスポット径については、10乃至100μmが好適である。ショット数については、数10乃至100ショットが良好である。
【0101】
ビアホール15Hの形状の調整のためには、予め絶縁樹脂層12の組成や、添加剤、フィラー等を調整してもよい。また、絶縁樹脂層12の硬化条件、例えばラミネート温度、キュア温度、キュア時間などを調整してもよい。
【0102】
下地の導電層(配線層)の厚さ、パターン幅などによっても、レーザ加工時の伝熱条件が異なるため、それらを予め調整することで、ビアホール15Hの形状を調整してもよい。
【0103】
レーザ処理後は、レーザ加工により生じた絶縁樹脂の残渣を除去するデスミア処理を行うが、デスミア処理には、前述したように、過マンガン酸等を用いたウェット処理を適用してもよいし、プラズマなどを用いたドライ処理を適用してもよい。例えばウェット処理の場合、デスミア液の組成、温度、処理時間などを調整することにより、ビア形状を調整してもよい。
【0104】
<5.2>レーザ処理後の形状、デスミア処理後の形状
図16に、レーザ処理後のビアホール15Hの断面形状およびデスミア処理後のビアホール15Hの断面形状を、従来例、本実施形態の実施例1および実施例2を対比させて示す。実施例1と実施例2とでは、レーザ加工条件(パルス幅、ショット数など)を変えている。なお、実施例1および実施例2における詳細な各種の条件については後で説明する。
【0105】
図16(a)は、従来例による断面形状を示すものである。ビアホール15Hの形成のため、レーザ処理によって、MIM部における第2導電層(上部電極)9上の絶縁樹脂層12の一部が加工される。その後、デスミア処理によって、絶縁樹脂の残渣が除去される。その際に、レーザ処理によって樹脂の架橋が切れて低分子化した部分なども除去され、レーザ処理時よりも一回り大きいビアホールが形成される。
【0106】
図16(b)は、本実施形態の実施例1による断面形状を示すものである。前述の<5.1>で示した手法でレーザ処理を行うことで、特にビアボトム部近傍において絶縁樹脂を低分子化させる領域を大きくする。その後、デスミア処理を行うと、従来例よりもデスミア処理後のビアホール15Hのビアボトム部近傍の領域が広がり、ビアボトム径が大きくなる。
【0107】
図16(c)は、本実施形態の実施例2による断面形状を示すものである。実施例2では、実施例1と同様の手法でレーザ処理とデスミア処理を行うが、実施例1よりもレーザ加工条件を強化することにより、ビアホール15Hのビアボトム部近傍の領域が実施例1よりも広がり、ビアボトム径がより大きくなる。
【0108】
<6>ビア形状の具体例
図17(a)乃至(f)に、本実施形態によるビア15の断面形状の様々な形態を示す。
【0109】
図17(a)乃至(f)の例では、いずれのビア15にも、ゼロを超えるh1,d1が存在する。すなわち、いずれのビア15も、ビア径の最小部がビアボトム部15Bから離れており、ビア最小径よりもビアボトム径が大きいといえる。このようにビア15を形成することにより、ビアボトム部15Bでの応力集中を抑制することができ、ビアボトム部15Bでの導体の破断を防ぐことができる。
【0110】
一方、図18(a)乃至(e)に、従来技術によるビア15の断面形状の様々な形態を示す。
【0111】
図18(a)乃至(e)の例では、いずれのビア15にも、ゼロを超えるh1,d1が存在しない。いずれのビア15も、ビア径の最小部がビアボトム部15Bに存在し、ビアボトム径がビア最小径となっている。このようにビア15を形成すると、ビアボトム部15Bへ応力が集中し、ビアボトム部15Bにおいて導体が破断しやすくなる。
【0112】
<7>実施例1、実施例2、比較例1
以降、本実施形態の実施例1、実施例2、比較例1のそれぞれについて説明する。
【0113】
<7.1>実施例1
本実施形態の実施例1を以下に示す。
【0114】
実施例1では、図13に示す1-2-1構造のキャパシタ10を有する配線基板を作製した。
【0115】
具体的には、基材には厚さ150μm、サイズ320mm×400mmの無アルカリガラスを用い、TGV(スルーガラスビア)で表裏面を導通した。密着層2、下部密着層5、上部密着層7にはTiを用い、膜厚を40nmとした。第1シード層3、第2シード層8、第3シード層13にはCuを用い、膜厚を100nmとした。第1導電層4、第2導電層9、第3導電層14にはCuを用い、膜厚をそれぞれ10μm、5μm、10μmとした。絶縁樹脂層12には、膜厚30μmのシート状のエポキシ樹脂を用いた。シート状エポキシ樹脂を100℃の条件でラミネートし、プリキュアとして180℃で1時間の硬化を行った。絶縁樹脂層12には、シリコンナイトライドを用い、膜厚を500nmとした。MIM部の電極面積は、下部電極を20000μmとし、上部電極を10000μmとした。
【0116】
ビア15については、UV-YAGレーザにて、パルス幅100us、ショット数60ショットにて、ビアトップ径dtを40μm狙いでビアホール15H形成した。レーザ処理にてビアホール形成後、過マンガン酸系のデスミア液にて、75℃で40分のデスミア処理を行い、その後、無電Cuめっき、電解めっきを行いビアホール15Hにフィルドビアであるビア15を形成した。その際のビア寸法は、ビアトップ径dtが40μm、最小径d0が32μm、ビアボトム径dbが36μm、ビア高さHが27μm、ビア最小径高さh1が5μmであった。また、配線形成後に絶縁樹脂層12のフルキュアを200℃で1時間行った。
【0117】
作製した配線基板に対し後述する条件で温度サイクル試験(TCT試験)を行った。また、TCT試験に投入したものと同ロットのピースを断面観察したところ、ビア15は基本的に図16(b)に示す形状であり、ビアボトム部15Bの上方に最小径部が存在するものであった。
【0118】
<7.2>実施例2
本実施形態の実施例2を以下に示す。
【0119】
実施例2では、MIM部の上部のビア形成においてレーザ加工条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0120】
具体的には、UV-YAGレーザにて、パルス幅を80μm、ショット数を120として、ビアトップ径dtを40μm狙いで加工を行った。その際のビア寸法は、ビアトップ径dtが41μm、最小径d0が35μm、ビアボトム径dbが43μm、ビア高さHが27μm、ビア最小径高さh1が7μmであった。
【0121】
実施例1と同様に、TCT試験に投入したものと同ロットのピースを断面観察したところ、ビア15は基本的に図16(c)に示す形状であり、ビアボトム部15Bの上方に最小径部が存在するものであった。
【0122】
<7.3>比較例1
本実施形態の比較例1を以下に示す。
【0123】
比較例1では、MIM部の上部のビア形成においてレーザ加工条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0124】
具体的には、UV-YAGレーザにて、ショット数を40として、ビアトップ径dtを40μm狙いで加工を行った。その際のビア寸法は、ビアトップ径dtが40μm、ビア径の最小部はビアボトム部にあるためビアボトム径dbが最小径d0となり、ビアボトム径dbが29μm、ビア高さHが27μm、ビア最小径高さh1が無しであった。
【0125】
実施例1と同様に、TCT試験に投入したものと同ロットのピースを断面観察したところ、キャパシタ10のビアは基本的に図16(a)に示す、ビアボトム部に最小径部が存在する形状であった。
【0126】
<7.4>試験の条件
多層配線基板における貫通電極の接続信頼性の判断基準として、TCT試験が一般的に用いられる。TCT試験においては、多層配線基板を高温、低温の環境下に繰り返し置くことで、熱膨張係数の違いによって、多層配線基板の各層に応力を発生させ、特にビアでの応力による配線の断裂の発生傾向を検証することが可能となる。
【0127】
具体的には、図13に示す配線基板100のMIM部を経由する配線においてMIM部の容量を測定した。TCT試験前後でのMIM容量の変化により、MIM近傍の配線(特にビアボトム部)でのオープン(配線破断)を検証した。
【0128】
TCT試験の条件は、-55℃乃至125℃、500サイクル、投入ピース数各500個とした。配線幅は140μm、バット径はφ100μmとした(MIM部以外のビアは上記のパッド上に形成した)。
【0129】
判定では、初期の容量からの変化率が±10以内である場合を○とし、10%を超えたものを×(NG)として判定を行った(MIM部のビアにオープン等が発生した場合にはMIM容量が大きく変化するため)。
【0130】
<7.5>検証の結果
下記の表に、実施例1、実施例2、比較例1のそれぞれについて検証した結果をまとめたものを示す。
【0131】
【表1】
【0132】
特に、比較例1では、500サイクルのTCT試験後でNGが23%発生したが、実施例1、実施例2ではNGは発生しなかった。以上の結果より、実施例1、実施例2のように処理することで、熱衝撃試験においてキャパシタ10上のビア15の断線の抑制に効果があることが確認された。この検証結果により、信頼性の高い配線基板100を作製できることが判った。
【0133】
<8>まとめ
以上詳述したように、実施の形態によれば、ビア15は、ビア径の最小部15Mがビアボトム部15Bから離れているため、キャパシタ10における層間の熱膨張係数の違いによって発生する応力ひずみによる影響が小さく、ビアボトム部15Bにおけるビア15と第2導電層(上部電極)9との断線が抑制される。したがって、キャパシタ10を有する配線基板100の信頼性を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0134】
1…基板、2…密着層、3…第1シード層、4…第1導電層(下部電極)、5…下部密着層、6…絶縁層(誘電体層)、7…上部密着層、8…第2シード層、9…第2導電層(上部電極)、10…キャパシタ、11…レジスト、12…絶縁樹脂層、13…第3シード層、14…第3導電層、15…ビア、15B…ビアボトム部、15T…ビアトップ部、15H…ビアホール、15M…ビア径の最小部、16…貫通孔、dt…ビアトップ径、db…ビアボトム径、d0…ビア最小径、d1…ビア広がり幅、H…ビア高さ、h1…ビア最小径高さ。
図1
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