(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146318
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】セメント系固化材等用混和剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20241004BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20241004BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C04B24/26 D
E02D3/12 102
C04B24/26 B
C04B24/26 H
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059137
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳宙
(72)【発明者】
【氏名】高島 基之
(72)【発明者】
【氏名】大住 学
(72)【発明者】
【氏名】小林 智史
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040AB05
2D040CA01
2D040CA03
2D040CA04
2D040CA05
2D040CA10
2D040CB03
4G112MD01
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112MD06
4G112MD10
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
(57)【要約】
【課題】セメント系固化材等のスラリーが流動性に優れるとともに、該スラリーの固形分が分離沈降しにくく、該スラリーにおいて優れた圧送性を長時間確保することができるセメント系固化材等のスラリーを提供すること。
【解決手段】(A)ポリアミドポリアミン等に由来する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体A、並びに、(B)ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Bであって、前記不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位:前記不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位=1~50質量%:99~50質量%であるポリカルボン酸系重合体Bを含有するセメント系固化材等用混和剤であって、前記重合体Aと重合体BとをA/B=60/40~75/25(質量比)の割合で含有する、セメント系固化材等用混和剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種に由来する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体A、並びに、
(B)ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Bであって、
前記不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位:前記不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位=1~50質量%:99~50質量%である、ポリカルボン酸系重合体B
を含有するセメント系固化材等用混和剤であって、
前記ポリカルボン酸系重合体Aとポリカルボン酸系重合体BとをA/B=60/40~75/25(質量比)の割合で含有する、
セメント系固化材等用混和剤。
【請求項2】
ポリカルボン酸系重合体Aが、さらに、カルボン酸基を有する構造単位と、ポリアルキレングリコール基を有する構造単位を含む、
請求項1に記載のセメント系固化材等用混和剤。
【請求項3】
前記カルボン酸基を有する構造単位が重合性カルボン酸類由来のものであり、該重合性カルボン酸類は、メタクリル酸、アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及び不飽和脂肪酸からなる群から選択される、
請求項2に記載のセメント系固化材等用混和剤。
【請求項4】
ポリカルボン酸系重合体Aが、ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種、カルボン酸基を有する化合物、及び、ポリアルキレングリコール基を有する化合物を単量体成分とし、共重合により得られる重合体である、
請求項2に記載のセメント系固化材等用混和剤。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸系重合体Bが、下記式(I)で表される構造単位、下記式(II)及び、下記式(III)で表される構造単位を含みて構成され、
下記式(II)で表される構造単位の全質量に対して、下記のフマル酸に由来する式(IIa)で表される構造単位の含有割合が50乃至100質量%であり、且つ、
下記式(II)で表される構造単位:下記式(III)で表される構造単位=1~50質量%:99~50質量%である、
請求項1に記載のセメント系固化材等用混和剤。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、Xは-(CH
2)bO-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、bは1乃至20の整数を表す。)
【化2】
(式中、R
5乃至R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
1を表し、但しR
5乃至R
8のうち少なくとも二つは-COOM
1を表し、またR
5乃至R
8のうち二つの基の一部は一緒になって酸無水物を形成することができる。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【化3】
(式中、R
5及びR
6は夫々独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、M
2及びM
3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【化4】
(式中、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、R
11、R
12はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
4、-COOYを表し、但し、R
11及びR
12のうち少なくとも一方は-COOYを表す。M
4は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表し、Yは炭素原子数1乃至22の炭化水素基又は(AO)c-R
13を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、cはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、R
13は水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表す。)
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤、
セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方、及び
水を含む、
地盤改良用セメント系固化材等スラリー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤と
下記a)~c)のうち少なくとも1種に基づく、
地盤改良用セメント系固化材等スラリー。
a)セメント系固化材、
b)セメント、
c)高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、シリカ粉末、石灰石微粉末、及び石膏からなる群から選択される少なくとも1種の混和材。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤、
セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方を含む、
セメント系固化材等混合物。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の地盤改良用セメント系固化材等スラリーより造成される、地盤改良体。
【請求項10】
請求項6又は請求項7に記載の地盤改良用セメント系固化材等スラリーを用いた地盤改良工法であって、
上記固化材等スラリーを地盤中に注入し、該スラリーとこれを注入した地盤を、撹拌翼による機械撹拌、被圧スラリーによる噴射撹拌、又はそれらを併用して、混合撹拌する工程を含む、地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント系固化材およびセメント(以下、まとめて「セメント系固化材等」と称する)用の混和剤に関し、詳細には、中層改良や深層改良に使用されるセメント系固化材等のスラリーにおいて、前記スラリーが高濃度領域においても優れた流動性、圧送可能な性状(以下、圧送可能性と称す)を実現するとともに、該スラリーの固液分離を抑制できる、セメント系固化材等用の混和剤(以下、「セメント系固化材等用混和剤」と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
水分や有機物等を多量に含む軟弱な地盤(土壌)の改良方法の一つとして、軟弱土にセメント系固化材等の固化材を添加・撹拌することによる、化学的な安定処理が知られている。上記安定処理に用いる固化材のうち、代表的なものとしては、ポルトランドセメント、石灰等のほか、これらを母材としたセメント系固化材および石灰系固化材がある。
レディミクストコンクリート並びにコンクリート製品に用いられるJISに規定されている普通ポルトランドセメント、混合セメント等に配合される材料は、規格に適合する骨材や混練水である。一方、地盤改良に供されるセメント等が混合される対象は、自然対象土や河川水である。混合対象である土(土壌)等には、セメントの固化を阻害する有機物が含まれていたり、表面が負に帯電した細粒分が含まれていたりすることもあり、この場合、固化に必要な液相中のカルシウムイオンが不足することなどにより、セメント成分の水和が阻害される。そこで主に液相中のカルシウムイオンを補い、エトリンガイド等の水和物生成を促進するために、セメントに混和材を添加したり、他の固化助剤を加えたりして製品化したものがセメント系固化材である。
ただ、改良対象土に特に有害な成分が多く含まれていなければ、JIS規定の普通ポルトランドセント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の一般的な分類に含まれるセメントも、地盤改良用に用いられている。
【0003】
セメント系固化材等やその懸濁液の態様であるセメント系固化材等スラリー(以下、単に「固化材等スラリー」、「スラリー」とも称する)を使用した地盤の改良工法は、表層から深度別に表層改良、中層改良、深層改良に大別される。土とセメント系固化材等の撹拌・混合に際し、粉体形態にて撹拌機に供給・地盤に圧送される改良工法もあるが、地盤改良工法の多くは主として液状の形態、すなわち、前述したセメント系固化材等を水に懸濁させたセメント系固化材等スラリーを撹拌機に供給して撹拌・混合を実施する。
【0004】
上記セメント系固化材等スラリーを用いた土との撹拌・混合の手法としては、地盤を削孔しながらもしくは削孔後に、該スラリーと地盤(土)を撹拌翼で混合する機械撹拌工法と、地盤を削孔後もしくは削孔しながら該スラリーを超高圧状態で地盤に噴射し、土中を切削しながら強制撹拌する高圧噴射撹拌工法に大別され、またこれらを組み合わせた高圧噴射機械撹拌工法も実施されている。
中層~深層改良に用いられるセメント系固化材等スラリーには、地上から深度40m程度に位置する撹拌翼先端まで圧送できる流動性を備えることは勿論のこと、高圧噴射撹拌工法では、さらに20MPa以上の超高圧下であっても圧送できる流動性の確保と固液分離抵抗性(スラリー材料の分離抵抗性)が求められる。またセメント系固化材等スラリーと土との撹拌・混合時において、機械撹拌工法にあっては、撹拌・混合のムラと相関があるスラリー添加後の改良土の流動性の確保や、圧縮空気を併用する高圧噴射撹拌工法にあっては、該スラリーと土が混合した後に余剰分として地上に排出される排泥の流動性の確保も重要である。
【0005】
セメント系固化材等スラリーを用いた地盤の改良方法として、特許文献1には、(1)セメント及び/又は高炉スラグを含有する水硬性物質と(2)カルシウムアルミネート類と(3)ポリアルキレンオキサイド及び/又はポリアクリルアミドを含有する水溶性高分子と(4)減水剤を含有する固化材100質量部を送給し、途中で、(5)水70~200質量部を混合して固化材スラリーとし、該固化材スラリーを地盤に散布して、地盤を固化する地盤固結方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、セメント系固化材等を水と練り混ぜることにより水に懸濁させたセメント系固化材等スラリーは、通常、圧送用ポンプ等を用いて地盤中に圧送され、そして地盤に添加されて地盤(土)と混合される。
地盤改良工法において、セメント系固化材等を水に懸濁させたセメント系固化材等スラリーの濃度を高濃度化するほど、より高強度の地盤改良体ができることが知られている。地盤改良体は原地盤とセメント系固化材等が撹拌混合され固まった状態の改良土を指す。たとえば住宅分野などにおいては、建物を支える基礎として、柱状の地盤改良体(改良杭とも称する)を地盤内に造成する。地盤改良体を高強度化することで、改良体の本数を削減でき、より経済的な地盤改良の配置を行える場合がある。
また地盤改良において、セメント系固化材等スラリーは強制的に地盤中で土と混合させるため、圧送した該スラリー体積分の70~80%が盛り上がり土として地盤を隆起させる。この盛り上がり土は、現場内の盛土等に転用できなければ、多くの場合不要な土となり、産業廃棄物として処分される。そのため、該スラリーを高濃度化して、盛り上がり土を低減することが求められている。
このように、セメント系固化材等スラリーの高濃度化は強度面だけでなく、地盤改良現場における施工面からも要求されるようになってきた。
【0008】
さてセメント系固化材等スラリーを練り混ぜた後、時間が経過するにつれて、該スラリーの流動性が変化し、該スラリーの圧送性の低下を引き起こし得、ひいては圧送用ポンプ内で該スラリーが詰まる等の作業性が低下する場合がある。この傾向はセメント系固化材等スラリーが高濃度化することでより顕著となる。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント系固化材等のスラリーが高濃度域でも流動性に優れるとともに、該スラリーの固形分が分離沈降しにくく、該スラリーにおいて優れた圧送性を長時間確保することができるセメント系固化材等のスラリーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討した結果、セメント系固化材等のスラリーに対して、ポリアミドポリアミン由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Aと、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Bとを併用することにより、一般に使われる水セメント系固化材等比(以下W/Cと称す。)である0.8よりもセメント系固化材等の割合が高いW/C比、例えば0.4であるセメント系固化材等スラリーであっても、120分という長期間の経過後においても該スラリーが流動性、圧送性に優れるとともに、該スラリーの固形分が分離沈降しにくく、そして優れた圧送性を長時間確保することができることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、下記[1]~[10]の態様を対象とする。
[1]
(A)ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種に由来する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体A、並びに、
(B)ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Bであって、
前記不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位:前記不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位=1~50質量%:99~50質量%である、ポリカルボン酸系重合体B
を含有するセメント系固化材等用混和剤であって、
前記ポリカルボン酸系重合体Aとポリカルボン酸系重合体BとをA/B=60/40~75/25(質量比)の割合で含有する、
セメント系固化材等用混和剤。
[2]
ポリカルボン酸系重合体Aが、さらに、カルボン酸基を有する構造単位と、ポリアルキレングリコール基を有する構造単位を含む、[1]に記載のセメント系固化材等用混和剤。[3]
前記カルボン酸基を有する構造単位が重合性カルボン酸類由来のものであり、該重合性カルボン酸類は、メタクリル酸、アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及び不飽和脂肪酸からなる群から選択される、[2]に記載のセメント系固化材等用混和剤。
[4]
ポリカルボン酸系重合体Aが、ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種、カルボン酸基を有する化合物、及び、ポリアルキレングリコール基を有する化合物を単量体成分とし、共重合により得られる重合体である、[2]に記載のセメント系固化材等用混和剤。
[5]
前記ポリカルボン酸系重合体Bが、下記式(I)で表される構造単位、下記式(II)及び、下記式(III)で表される構造単位を含みて構成され、
下記式(II)で表される構造単位の全質量に対して、下記のフマル酸に由来する式(IIa)で表される構造単位の含有割合が50乃至100質量%であり、且つ、
下記式(II)で表される構造単位:下記式(III)で表される構造単位=1~50質量%:99~50質量%である、[1]に記載のセメント系固化材等用混和剤。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、Xは-(CH
2)bO-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、bは1乃至20の整数を表す。)
【化2】
(式中、R
5乃至R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
1を表し、但しR
5乃至R
8のうち少なくとも二つは-COOM
1を表し、またR
5乃至R
8のうち二つの基の一部は一緒になって酸無水物を形成することができる。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【化3】
(式中、R
5及びR
6は夫々独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、M
2及びM
3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【化4】
(式中、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、R
11、R
12はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
4、-COOYを表し、但し、R
11及びR
12のうち少なくとも一方は-COOYを表す。M
4は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表し、Yは炭素原子数1乃至22の炭化水素基又は(AO)c-R
13を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、cはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、R
13は水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表す。)
[6]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤、
セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方、及び
水を含む、
地盤改良用セメント系固化材等スラリー。
[7]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤と
下記a)~c)のうち少なくとも1種に基づく、
地盤改良用セメント系固化材等スラリー。
a)セメント系固化材、
b)セメント、
c)高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、シリカ粉末、石灰石微粉末、及び石膏からなる群から選択される少なくとも1種の混和材。
[8]
[1]乃至[5]のうちいずれか一項に記載のセメント系固化材等用混和剤、
セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方を含む、
セメント系固化材等混合物。
[9]
[6]又は[7]に記載の地盤改良用セメント系固化材等スラリーより造成される、地盤改良体。
[10]
[6]又は[7]に記載の地盤改良用セメント系固化材等スラリーを用いた地盤改良工法であって、
上記固化材等スラリーを地盤中に注入し、該スラリーとこれを注入した地盤を、撹拌翼による機械撹拌、被圧スラリーによる噴射撹拌、又はそれらを併用して、混合撹拌する工程を含む、地盤改良工法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、セメント系固化材等のスラリーに対して優れた流動性を付与し、固形分の分離沈降が抑制され、優れた圧送性を120分という長期の経過後においても確保することができるセメント系固化材等用混和剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、セメント系固化材等スラリー(W/C=0.40,0.45)別のP漏斗流下時間を、該スラリー調製直後から調製後60分後の経過時間別に示したものである。
【
図2】
図2は、セメント系固化材等スラリー(W/C=0.8,0.7,0.6,0.4)別の、土量に対して添加した該スラリーの添加量(kg/m
2)に対する一軸圧縮強さ(kN/m
2)を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは、地盤改良の現場において、セメント系固化材等を水に懸濁させたセメント系固化材等スラリーの流動性が時間の経過とともに変化し、また該スラリーの固形分が分離・沈降すること、そのためこれを地盤の中層や深層に圧送する際、圧送ポンプ内等において該スラリーによる閉塞が生じ得るという問題に際し、該スラリーの分散性を維持できる混和剤の構成を検討した。
そして、ポリアミドポリアミン由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Aに加えて、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を含みて構成されるポリカルボン酸系重合体Bとを併用すること、さらにポリカルボン酸系重合体Bにおける構造単位の割合、並びに、重合体Aと重合体Bの配合割合の検討を進めることにより、セメント系固化材等スラリーが高濃度域(固形分濃度が高い領域)であっても経時での安定的な分散性を実現でき、また、固液分離の抵抗性を維持できること、特に120分もの長期間の経過後にもこれら性能を確保できることを見出した。
なお、高有機質土や関東ローム土のように固化しにくい土にて地盤改良体を造成する場合、一般には固化を促進させるべく多量の固化材等を添加することとなる。これは固化材等のスラリー量の増大につながり、すなわち改良土の体積が増え、結果盛り上がり土量が増え、産業廃棄物の増加をもたらし得る。本発明者らが見出した上記ポリカルボン酸系重合体Aとポリカルボン酸系重合体Bを含む混和剤は、これを添加して作成したセメント系固化材等スラリーにおいて、上述したように優れた圧送性及び流動性を高濃度域でも実現でき、これは従来の大量の固化材の使用による固化材等のスラリー量の増大・産業廃棄物の増加という課題の解決をももたらし得る。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
[(A)ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリア
ミンのうち少なくとも1種に由来する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体A]
(A)ポリカルボン酸系重合体Aは、ポリアミドポリアミン、及び、アルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種に由来する構造単位(A-1)を必須として有する重合体であり、その他、後述するカルボン酸基を有する構造単位(A-2)やポリアルキレングリコール基を有する構造単位(A-2)の他、その他構造単位を任意で含む重合体である。
【0016】
<構造単位(A-1)>
上記構造単位(A-1)は、ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種に由来する構造単位であり、該構造単位A-1の由来となる上記化合物について、以降「化合物A-1」と称する。なお本明細書において、ポリアミドポリアミン及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンをまとめて「ポリアミドポリアミン類」とも称する。
【0017】
上記化合物A-1の1種である上記ポリアミドポリアミンはポリアルキレンポリアミンと二塩基酸(類)との反応よりなることが好ましい。
上記ポリアミドポリアミンを構成するポリアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、及びこれら以外の高分子量ポリアルキレンポリアミン混合物等を挙げることができる。
【0018】
また、上記ポリアミドポリアミンを構成する二塩基酸(類)としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フタル酸、アゼライン酸又はセバシン酸等を基本骨格とした二塩基酸、これら二塩基酸の誘導体、例えば二塩基酸無水物(例えば上記二塩基酸の無水物)、二塩基酸エステル(例えば上記二塩基酸のアルキルエステル(上記二塩基酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、モノブチルエステル、モノプロピルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジプロピルエステル等)、又は二塩基酸ハライド(上記二塩基酸の二塩化物、二臭素化物、二ヨウ化物等)等を挙げることができる。
上記ポリアミドポリアミンを構成する該ポリアルキレンポリアミンと該二塩基酸(類)の反応モル比は2:1~21:20の範囲であるものが好ましい。この範囲のモル比を超えて反応させると、ポリアミドポリアミンが高分子量となり、高粘度となるばかりか凝集性が出て分散性を低下させるため好ましくない。
【0019】
また、上記化合物A-1には、アルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミン(アルキレンオキサイド付加物)も含まれる。この種の化合物A-1におけるポリアミドポリアミンとしては、上述のポリアミドポリアミンと同種のものが使用され得る。
上記アルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンに用いるアルキレンオキサイドは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドである。なお、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドである。これらアルキレンオキサイドは1種類のみを用いても、2種以上を併用してもよく、2種以上のアルキレンオキサイドを付加する場合、付加形態はブロック、ランダム何れの形態であってもよい。
上記アルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンは、前記ポリアミドポリアミンに直接アルキレンオキサイドを付加し得る方法と、水溶液中で得る方法の何れによっても得られる。
また、上記アルキレンオキサイドの付加量は上記ポリアミドポリアミンのアミノ残基(アミノ基、イミノ基、アミド基)1当量に対し0~10モル程度、例えば0.1~8モル程度が好ましい。
ポリアミドポリアミンへのアルキレンオキサイドの付加量が10モルを越えると化合物Aの分子量が大きくなるためにカチオン当量が低下し、固形分の分離沈降抑制効果といった本発明のセメント系固化材等用混和剤におけるポリカルボン酸系重合体Aとしての十分な効果が得られない。
【0020】
なお、上記化合物A-1には、上記ポリアミドポリアミンと上記アルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンの混合物も含まれる。
【0021】
<構造単位(A-2):カルボン酸基を有する構造単位>
ポリカルボン酸系重合体Aは、カルボン酸基を有する構造単位(A-2)を含んでいてもよい。
上記構造単位(A-2)は重合性カルボン酸類由来のものである。重合性カルボン酸類とは、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及び不飽和脂肪酸並びにそれらの酸無水物、例えば無水マレイン酸を表す。このうち、特にメタクリル酸類が好ましい。
なお、該構造単位(A-2)の由来となる重合性カルボン酸類について、以降「化合物A-2」と称する。
【0022】
<構造単位(A-3):ポリアルキレングリコール基を有する構造単位>
ポリカルボン酸系重合体Aは、ポリアルキレングリコール基を有する構造単位(A-3)を含んでいてもよい。
上記構造単位(A-3)は水溶性ポリアルキレングリコール由来のものである。該水溶性ポリアルキレングリコールとは、具体的には、ポリエチレングリコール単位を主成分とする基を有し、分子量が200~10,000の範囲にあり、且つ、ポリエチレングリコール単位が全ポリアルキレングリコール基質量のうち80%以上であるものをいう。
なお、該構造単位(A-3)の由来となる水溶性ポリアルキレングリコールについて、以降「化合物A-3」と称する。
【0023】
<その他含有可能な構造単位>
上記構造単位(A-1)、(A-2)、及び(A-3)以外で、上記ポリカルボン酸系重合体Aに含み得る構造単位として、以下の公知の単量体由来のものを挙げることができる;(1)(非)水系単量体類:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンなど;(2)アニオン系単量体類:ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、メタクリル酸リン酸エステルなど;(3)アミド系単量体類:アクリルアミド、アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物など、(4)ポリアルキレングリコール系単量体類:アリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコールの無水マレイン酸とのエステルなど。
なお、ポリカルボン酸系重合体Aにおける上記その他含有可能な構造単位の由来となる上記単量体について、以降「その他含有可能な化合物A」と称する。
【0024】
<ポリカルボン酸系重合体A>
上記ポリカルボン酸系重合体Aの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で5,000乃至100,000の範囲にあることが、良好なスラリー流動性の確保の観点から好ましい。
また、上記ポリカルボン酸系重合体Aは、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルキルアミン、有機アミン類などの中和剤によって、予め部分中和、或いは完全中和された形態として、本発明のセメント系固化材等用混和剤に含有されることが好ましい。
【0025】
<各構造単位の構成割合>
上記ポリカルボン酸系重合体Aが構造単位(A-1)に加えて構造単位(A-2)、構造単位(A-3)を含むとき、前記ポリカルボン酸系重合体Aにおける構造単位(A-1):構造単位(A-2):構造単位(A-3)の構成割合は、例えば5~30質量部:5~30質量部:40~90質量部の範囲であり、合計が100質量部となるように適宜選択される。なお、その他含有可能な構造単位を更に含む場合、その構成割合は、上記ポリカルボン酸系重合体Aの全質量の10質量%以下であることが望ましい。
上記ポリカルボン酸系重合体Aにおける各構造単位の共重合割合を上記の範囲とすることで、優れたスラリー流動性と、固形分の分離沈降抑制との両立という本発明のセメント系固化材等用混和剤におけるポリカルボン酸系重合体Aによる効果を好ましく得ることができる。
【0026】
上述の構造単位(A-1)乃至構造単位(A-3)の構成割合(共重合割合)は、前記ポリカルボン酸系重合体Aを共重合によって得る前の単量体成分(化合物A-1~A-3、その他単量体)における配合量を基準として定められるものである。
上記構造単位(A-1)乃至構造単位(A-3)はそれぞれ、ポリアミドポリアミン、及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンのうち少なくとも1種(化合物A-1)、カルボン酸基を有する化合物(化合物A-2)、ポリアルキレングリコール基を有する化合物(化合物A-3)を共重合させることによって、前記ポリカルボン酸系重合体A中に構成されるものとなる。したがって、上記構造単位(A-1)、(A-2)、(A-3)の構成割合とは、上記化合物A-1、A-2、A-3の配合割合に相当するものである。
【0027】
以下に一例として上記ポリカルボン酸系重合体Aの製造方法を示す。
まず、前記構造単位(A-1)の由来となる前記化合物A-1、すなわち上記(アルキレンオキサイドを付加した)ポリアミドポリアミンは、従来公知の方法(上述参照)で製造することができる。
そして該化合物A-1、そして所望により前記構造単位(A-2)の由来となる前記化合物A-2(カルボン酸基を有する化合物)、前記構造単位(A-3)の由来となる前記化合物A-3(水溶性ポリアルキレングリコール)、並びに所望によりその他含有可能な化合物Aを(共)重合させることにより、該ポリカルボン酸系重合体Aを得ることができる。
【0028】
[(B)ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位を有するポリカルボン酸系重合体B]
(B)ポリカルボン酸系重合体Bは、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位(B-1)、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位(B-2)、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位(B-3)を必須として有する重合体である。
【0029】
<構造単位(B-1)>
上記構造単位(B-1)は、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体由来の構造単位である。該構造単位(B-1)は、好ましくは下記式(I)で表される。
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、Xは-(CH
2)bO-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、bは1乃至20の整数を表す。)
【0030】
また上記式において、AOは炭素原子数2であるエチレンオキサイド、又は二種以上のアルキレンオキサイドから構成されることが好ましく、この場合ブロック付加又はランダム付加の何れでもよい。
二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合、aで表されるアルキレンオキサイド平均付加モル数において、炭素原子数3又は4のアルキレンオキサイドが0.1~30mol%未満を占めることが好ましい。特に、炭素原子数3又は4のアルキレンオキサイドのうち、0.1~20mol%未満をアルキレンオキサイド鎖の末端側(R4との結合位)に配置することが、減水性、スラリー流動性、長時間のスラリー圧送性(圧送可能性)、改良土の粘性改善、及びこれら性能の保持性等の性能面を改良する点から望ましい。
【0031】
さらに、上記式において、R4は特に水素原子、炭素原子数1乃至6の炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等)であることが好ましい。
【0032】
上記構造単位(B-1)は、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系化合物由来の構造単位であり例えば以下の化合物に由来する構造単位である;ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル、メトキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルなどの(アルコキシ)ポリアルキレングリコールと炭素原子数3~8のアルケニルエーテルより形成されるアルケニルエーテル類、不飽和脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物である不飽和脂肪族エーテル類等。具体的には3-メチル-3-ブテン-1-オールのアルキレンオキサイド付加物や、2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)のアルキレンオキサイド付加物やそのエーテル等を挙げることができる。これらのうち、最も好ましい化合物の具体例は、3-メチル-3-ブテン-1-オールのアルキレンオキサイド付加物である。なお、本明細書において、ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系化合物を「反応性アルコール誘導体」とも称する。
上記構造単位(B-1)はこれら化合物のうち単独あるいは複数の組合せに由来する構造単位であってよい。
【0033】
<構造単位(B-2)>
上記構造単位(B-2)は、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位である。該構造単位(B-2)は、好ましくは下記式(II)で表される。
【化6】
(式中、R
5乃至R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
1を表し、但しR
5乃至R
8のうち少なくとも二つは-COOM
1を表し、またR
5乃至R
8のうち二つの基の一部は一緒になって酸無水物を形成することができる。M
1は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【0034】
上記式(II)で表される構造単位(B-1)は、不飽和ジカルボン酸化合物由来の構
造単位であり、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などに由来する構造単位である。好ましい態様において、上記式(II)で表される構造単位(B-1)は、少なくともその一部に、下記式(IIa)で表されるフマル酸に由来する構造単位(B-1a)を含む。
【化7】
(式中、R
5及びR
6は夫々独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、M
2及びM
3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表す。)
【0035】
上記式(II)で表される構造単位(B-1)並びに、式(IIa)で表されるフマル酸に由来する構造単位(B-1a)において、カルボン酸に由来する部分構造(-COOM1、-COOM2、-COOM3)はカルボキシ基(-COOH:酸の形態)又はカルボキシ基の塩(中和された形態)の何れの形態であってもこれら形態が混在していてもよいが、部分中和又は完全中和された形態が製品形態として好ましい。
【0036】
式(IIa)で表されるフマル酸に由来する構造単位(B-1a)が含まれる場合、その含有割合は、上記式(II)で表される構造単位(B-1)の全質量に対して50乃至100質量%、好ましくは60乃至100質量%、より好ましくは70乃至100質量%であることが、本発明のセメント系固化材等用混和剤におけるポリカルボン酸系重合体Bによる効果(スラリー流動性、長時間のスラリー圧送性(圧送可能性)等)の面で好ましい。
【0037】
<構造単位(B-3)>
上記構造単位(B-3)は、不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位である。該構造単位(B-3)は、好ましくは下記式(III)で表される
【化8】
(式中、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、R
11、R
12はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-COOM
4、-COOYを表し、但し、R
11及びR
12のうち少なくとも一方は-COOYを表す。M
4は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンを表し、Yは炭素原子数1乃至22の炭化水素基又は-(AO)c-R
13を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、cはアルキレンオキサイドの平均付加モル数で1乃至200の数を表し、R
13は水素原子又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表す。)
【0038】
上記式(III)で表される構造単位(B-3)において、R11又はR12としてカルボン酸に由来する部分構造(-COOM4)が含まれる場合、該構造はカルボキシ基(-COOH:酸の形態)又はカルボキシ基の塩(中和された形態)の何れの形態であってもこれら形態が混在していてもよいが、部分中和又は完全中和された形態が製品形態として好ましい。
【0039】
また、上記式(III)で表される構造単位(B-3)において、R11及びR12のうち少なくとも一方として定義される-COOY(エステル部分)のYに関して、具体的にはYは炭素原子数1乃至22の部分エステル又は全エステル、ポリアルキレンオキサイド付加物の部分エステル又は全エステル、アルコキシポリアルキレングリコールの部分エステル又は全エステルなどが挙げられる。アルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
【0040】
上記式(III)で表される構造単位(B-3)は、具体的には、不飽和カルボン酸エステル化合物由来の構造単位であり、メトキシポリエチレングリコールモノフマレート、メトキシポリプロピレングリコールモノフマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノフマレート、メトキシポリエチレングリコールジフマレート、メトキシポリプロピレングリコールジフマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールジフマレート、メトキシポリエチレングリコールモノマレート、メトキシポリプロピレングリコールモノマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノマレート、メトキシポリエチレングリコールジマレート、メトキシポリプロピレングリコールジマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールジマレートの不飽和ジカルボン酸エステル化合物、そして、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノメタクリレート等の不飽和モノカルボン酸エステル化合物などに由来する構造単位である。
上記式(III)で表される構造単位(B-3)の中でも、特にフマル酸エステル化合物に由来する構造単位、具体的には、メトキシポリエチレングリコールモノフマレート、メトキシポリプロピレングリコールモノフマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノフマレート、メトキシポリエチレングリコールジフマレート、メトキシポリプロピレングリコールジフマレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールジフマレートに由来する構造単位を用いることが、本発明のセメント系固化材等用混和剤におけるポリカルボン酸系重合体Bによる効果(スラリー流動性、長時間のスラリー圧送性(圧送可能性)等)の面で好ましい。
【0041】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位(B-2)と上記不飽和カルボン酸エステル系単量体由来の構造単位(B-3)は、1~50質量%:99~50質量%とすることができる。
すなわち、上記式(II)で表される構造単位(B-2)と上記式(III)で表される構造単位(B-3)は、構造単位(B-2):構造単位(B-3)=1~50質量%:99~50質量%であり、好ましくは同=1~40質量%:99~60質量%、より好ましくは同=1~30質量%:99~70質量%、例えば10~20質量%:90~80質量%とすることができる。
不飽和カルボン酸エステルに由来する構造単位(B-3)が上記数値範囲より小さい場合、本発明のセメント系固化材等用混和剤におけるポリカルボン酸系重合体Bによる効果(スラリー流動性、長時間のスラリー圧送性(圧送可能性)等)が得られない場合がある。
【0042】
<その他含有可能な構造単位(B-4)>
上述の構造単位(B-1)、(B-2)、(B-3)以外で、上記ポリカルボン酸系重合体Bに含み得る構造単位として、以下公知の単量体由来の構造単位(B-4)を挙げることができる。すなわち、上記その他含有可能な構造単位(B-4)の由来となる化合物
としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートや、ビニルスルホン酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、そして、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコールアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシプロピレングリコールアシッドホスフェート等のリン酸基を有する不飽和単量体等の、慣用のポリカルボン酸系セメント分散剤用の単量体として例示される化合物であり、上記構造単位(B-1)~(B-3)と重合体を形成可能な化合物であればその種類は特に限定されない。特に上記ポリカルボン酸系重合体Bにスランプ保持性を付与すべくアルカリ加水分解性の化合物に由来する構造単位を組み込むことは、特許第3780465号公報等との組合せで容易に想到できる手段の一つである。
なお、ポリカルボン酸系重合体Bにおける上記その他含有可能な構造単位(B-4)の由来となる上記単量体について、以降「化合物B-4」と称する。
【0043】
<ポリカルボン酸系重合体B>
上記ポリカルボン酸系重合体Bの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で10,000乃至500,000の範囲にあることが、良好なスラリー流動性と長時間のスラリー圧送性(圧送可能性)などの所望の効果を得る観点から好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が10,000乃至100,000の範囲であることが、更に減水性を発現するため望ましい。
なお後述するように、ポリカルボン酸系重合体Bの製造過程における水溶液重合においてラジカル重合開始剤等の種類及び/又は使用量を調整することにより、分子量を制御することが可能であるが、連鎖移動剤等を併用すれば分子量分布の制御を行うことも可能である。
【0044】
<各構造単位の構成割合>
上記ポリカルボン酸系重合体Bにおける構造単位(B-1)、構造単位(B-2)及び構造単位(B-3)の構成割合は、例えば構造単位(B-1):構造単位(B-2):構造単位(B-3)=90乃至50質量%:1乃至10質量%:1乃至40質量%の範囲、また例えば構造単位(B-1):構造単位(B-2):構造単位(B-3)=85乃至50質量%:2乃至8質量%:10乃至40質量%の範囲とすることができる。
なお、構造単位(B-1)乃至構造単位(B-3)の合計は何れも100質量%である。
さらにまた上記ポリカルボン酸系重合体Bが構造単位(B-4)をさらに含む場合、その構成割合は、前記構造単位(B-1)乃至(B-3)の合計:構造単位(B-4)=100乃至70質量%:0乃至30質量%の範囲(但し合計100質量%)にあることが好ましい。
なお上記のいずれの構成割合においても、構造単位(B-2):構造単位(B-3)=1~50質量%:99~50質量%を満たしていることが、本発明の好適な実施のためには望ましい。
【0045】
<各構造単位及びポリカルボン酸系重合体Bの製造方法>
ポリカルボン酸系重合体Bを得るにあたり、構造単位(B-1)の由来となるポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系化合物の製造方法、及びポリカルボン酸系重合体Bを得る重合方法は特に限定されない。
ただし、上記ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系化合物製造時のアルキレンオキサイド付加反応においては、重合活性基(不飽和基)がその重合活性を失わない、重合活性基の位置を転移させない、及び、副生するジオール分を低減することなどに留意して製造される必要がある。なお、これら重合活性基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド付加物は、製造後に精製過程の有無に係わらず重合用原料とし使用することができる。
ポリカルボン酸系重合体Bの製造方法に於いては、溶剤重合、水溶液重合、連続式、バッチ式の何れの方法においても同様の重合物を得ることができるが、共重合に供する化合物の溶解性に留意する必要があることから、一般的に水溶液重合で行われることが多い。
【0046】
[セメント系固化材等用混和剤]
本発明のセメント系固化材等用混和剤は、上記(A)ポリカルボン酸系重合体Aと上記(B)ポリカルボン酸系重合体Bを含有し、ポリカルボン酸系重合体A/ポリカルボン酸系重合体B=60/40~75/25(質量比)の割合で含有する。本割合で含有することにより、当該混和剤を添加し製造したセメント系固化材等スラリーにおいて、良好なスラリー流動性を実現し、またスラリー固形分の分離沈降抑制効果を得ることができる。
【0047】
なお本発明において、「重合体」とは、重合体そのもののみでもよく、或いは、各々の重合工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含して広義に重合体としてもよい。
また、セメント系固化材等用混和剤において、前述の構造単位(A-1)の由来元である化合物A-1:ポリアミドポリアミン及びアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミン(ポリアミドポリアミン類)を別に配合してもよい。
なおまた、本発明のセメント系固化材等用混和剤は、上述のポリカルボン酸系重合体A及びB以外に、後述する公知公用の混和剤を配合した形態、又は、後述するセメント系固化材等スラリー製造時に上述のポリカルボン酸系重合体A及びBと後述する公知公用の混和剤が別々に添加され最終的にスラリー中で混合される形態の何れをも含むものとすることができる。
【0048】
[セメント系固化材等スラリー、セメント系固化材等混合物]
本発明に係るセメント系固化材等用混和剤は、セメント系固化材等に添加して用いることができる。本発明は、前記セメント系固化材等用混和剤と、セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方と、水とを含むセメント系固化材等スラリーも対象とする。
前記セメント系固化材等スラリーは任意にその他のセメント系固化材等用の混和剤や混和材を含んでいてもよい。
また、セメント系固化材等スラリーは下記a)~c)、すなわち、地盤改良工事において固化材等として使用されるa)セメント系固化材、b)セメント[JIS規定の普通ポルトランドセント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の一般的な分類に含まれるセメント、例えばJIS R 5210~5214等に規定されるセメントやその他の特殊セメント(2,3成分低熱セメント、油井セメント、超微粒子セメント、JIS規格外混合セメント)]、そしてc)高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、シリカ粉末、石灰石微粉末、及び石膏からなる群から選択される少なくとも1種の混和材のうちの、少なくとも1種に基づくものとすることができる。
なおまた本発明は、上記セメント系固化材等用混和剤と、セメント系固化材及びセメントのうちの一方又は双方とを含む、セメント系固化材等混合物を対象とする。前記セメント系固化材等混合物は、任意にその他のセメント系固化材等用の混和剤や混和材を含んでいてもよい。
上記セメント系固化材等スラリーやセメント系固化材等混合物は、地盤改良用に好適に用いることができる。
【0049】
本発明に係るセメント系固化材等スラリーは、該スラリーの固形分(100質量%)に対して、前記セメント系固化材等用混和剤を0.01~5質量%にて含むことが好ましい。このような割合で含むことで、セメント系固化材等スラリーを流動性により優れたものとすることができ、該スラリーの固形分が分離沈降しにくく、優れた圧送性を長時間保持することができる。
また例えばセメント系固化材等スラリーにおける本発明のセメント系固化材等用混和剤の含有量は、前記スラリーの固形分100質量%に対して0.05~2質量%であり、また例えば望ましくは0.05~0.5質量%とすることができる。
【0050】
なお一般にセメント系固化材とは、セメントクリンカー構成化合物を含み、かつ、任意に配合可能な混和材を含むものをいう。
上記セメント系固化材に含まれるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられる。本発明のセメント系固化材に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
また上記混和材としては、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、シリカ粉末、石灰石微粉末、及び石膏等が挙げられ、上記セメント系固化材はこれらの1種又は2種以上を含んでいてもよい。
上記セメント系固化材において、セメント(類)は、5~100質量%とすることができる。
【0051】
上記セメント系固化材等スラリーにおける上記セメント系固化材等の含有量は、該セメント系固化材等スラリーの固形分(100質量%)に対して、例えば20~100質量%未満、40~100質量%未満、また例えば60~100質量%未満とすることができる。このような割合でセメント系固化材等を含むセメント系固化材等スラリーを地盤(土壌)に対して用いることで、得られる地盤改良体をより強度に優れたものとすることができる。
【0052】
本発明のセメント系固化材等スラリーにおいて、水の含有量は、該スラリーの固形分100質量部に対して、30~120質量部とすることができ、例えば同30~100質量部、また同30~80質量部とすることができる。また例えば水とセメント系固化材等(固形分)との比(W/C)を0.3~1.2とすることができ、特に0.4といったセメント系固化材等の割合が高い領域に調整することも可能である。このような割合で水を含むことで、セメント系固化材等スラリーが流動性により優れ、かつ、該スラリー固形分の分離沈降がより充分に抑制され、ひいては優れた圧送性を長時間保持することができる。
【0053】
また本発明のセメント系固化材等スラリーには、種々の使用条件に応じて、セメントやコンクリート等の技術分野において公知公用の各種混和剤(以下、添加剤と称する)を採用して配合することができる。具体的には、本発明のセメント系固化材等用混和剤に係るポリカルボン酸系重合体A及びB以外の成分:公知のセメント分散剤、空気連行剤、凝結遅延剤、促進剤、分離低減剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤等である。
【0054】
一般にセメント分散剤は、コンクリートの製造条件及び性能要求等に応じて、適宜組み
合わされ使用される。セメント分散剤として単独、あるいは主剤として使用されるものであるが、スランプロスの大きいセメント分散剤の改質助剤として、或いは、初期減水性が高いセメント分散剤として併用して使用され得るものである。
公知のセメント分散剤としては特公昭58-38380号公報、特公昭59-18338号公報、特許2628486号公報、特許第2774445号公報、特許第3235002号公報、特許第3336456号公報、特許第3780456号公報などのポリカルボン酸系共重合体の塩があり、またナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸ソーダ、糖アルコールも挙げられる。
本発明のセメント系固化材等用混和剤(ポリカルボン酸系重合体A及びBの合計)と上記公知のセメント分散剤との配合割合は、例えば1:99~99:1質量%である。
【0055】
空気連行剤を具体的に例示すると<1>アニオン系空気連行剤、<2>ノニオン系空気連行剤、及び<3>両性系空気連行剤が挙げられる。<1>アニオン系空気連行剤としては高級アルコール(又はそのアルキレンオキシド付加物)の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン石鹸などの樹脂石鹸塩、高級アルコール(又はそのアルキレンオキシド付加物)の燐酸エステル塩など、<2>ノニオン系空気連行剤としてはアルキレングリコール、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸とアルキレングルコールとのエステル、糖アルコールのアルキレングルコール付加物など、<3>アニオン、カチオンからなる両性系空気連行剤としてはアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミノ酸系両性活性剤型などが挙げられる。
本空気連行剤の好ましい添加量は、本発明のセメント系固化材等用混和剤(ポリカルボン酸系重合体A及びBの合計)に対し0.001~0.03質量%程度である。
【0056】
凝結遅延剤を例示すると、<1>無機質系凝結遅延剤:リン酸塩、珪フッ化物、酸化亜鉛、炭酸化亜鉛、塩化亜鉛、一酸化亜鉛、水酸化銅、マグネシア塩、ホウ砂、酸化ホウ素、<2>有機質系凝結遅延剤:ホスホン誘導体、糖類やその誘導体、オキシカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩が挙げられ、さらに詳しく例示するとホスホン誘導体:アミノトリ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のホスホン酸及びその誘導体、糖類:サッカロース、マルトース、ラフィノース、ラクトース、グルコース、フラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、アビトース、リポーズ、オキシカルボン酸塩:グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、リンゴ酸、酒石酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。本凝結遅延剤の好ましい添加量は、前述のセメント系固化材等に対して0.01~1.5質量%程度である。
【0057】
促進剤を例示すると塩化カルシウム、亜硝酸カルシウムなどで代表される無機系促進剤、アルカノールアミンなどで代表される有機系促進剤が挙げられる。本促進剤の好ましい添加量は前述のセメント系固化材等に対して0.5~5質量%程度である。
【0058】
増粘剤・分離低減剤を例示すると、<1>セルロース系水溶性高分子:セルロースエーテル(MCなど)、<2>ポリアクリルアミド系水溶性高分子:ポリアクリルアミド、<3>バイオポリマー:カードラン、ウエランガム、<4>非イオン系増粘剤:ポリアルキレングリコールの脂肪酸ジエステル、ポリアルキレングリコールのウレタン縮合物などが挙げられる。本増粘・分離低減剤の好ましい配合割合は、前述のセメント系固化材等スラリーに対し0.01~0.5質量%程度である。
【0059】
消泡剤を例示すると脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、アルキレンオキサイドジ脂肪酸エステル、多価アルコールアルキレン
オキサイド付加物、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキサイド付加物等の非イオン系消泡剤類、シリコーンオイルをエマルションとしたシリコーン系消泡剤類、高級アルコールをエマルションとした高級アルコール類、これらを主成分とした混合物などが挙げられる。本消泡剤の好ましい添加量は、本発明のセメント系固化材等用混和剤(ポリカルボン酸系重合体A及びBの合計)に対し0.01~1質量%程度である。
【0060】
収縮低減剤を例示するとポリアルキレングリコール、低級アルコールアルキレンオキサイド付加物、これらが油性である場合はエマルションとしたものであり、好ましい添加量は、前述のセメント系固化材等に対し0.1~5質量%程度である。
【0061】
また上記の他、本発明のセメント系固化材等用混和剤の使用条件(施用する土壌等)に応じて、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、凝集剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を含むことができる。
【0062】
[地盤改良体、地盤改良工法]
本発明のセメント系固化材等スラリーは流動性に優れるため、地盤改良のためにこれを地盤に形成された孔に挿入された装置により地盤に注入して地盤改良体を造成する、地盤改良工法に好適に用いることができる。上記地盤改良体及び地盤改良工法も本発明の対象である。
【0063】
本発明の地盤改良工法は、前記セメント系固化材等スラリーを地盤中に注入し、該スラリーとこれを注入した地盤とを混合撹拌する工程を含む。前記混合撹拌は、例えば撹拌翼による機械撹拌、被圧スラリーによる噴射撹拌、又はそれらを併用して実施することができる。
【0064】
以下、本発明の地盤改良工法の一例を示す。
前記セメント系固化材等スラリーの地盤への注入に際しては、通常、地盤に孔を形成する段階を含む。地盤に孔を形成する方法は特に制限されないが、効率的に孔を形成することができる点で地盤を削孔して孔を形成する方法が好ましい。
地盤を削孔して孔を形成する段階を含む地盤改良工法の具体例としては、例えば、
(1)地盤を削孔して形成した孔中で、前記セメント系固化材等スラリーと土とを機械撹拌により混合して地盤改良体を造成する機械撹拌式の地盤改良工法(機械撹拌工法)、
(2)地盤を削孔して形成した孔に管を挿入し、管から前記セメント系固化材等スラリーを地中に高圧噴射して、地中の土を切削すると同時に強制撹拌することにより、化学的に固化させる高圧噴射撹拌式の地盤改良工法(高圧噴射撹拌工法)、
(3)(1)と(2)の組合わせ(高圧噴射併用機械撹拌工法:機械撹拌と撹拌翼先端からの前記セメントの系固化材等スラリーの高圧噴射との併用)
等が挙げられる。
【0065】
本発明のセメント系固化材等スラリーは、これらいずれの工法にも好適に用いることができる。
すなわち、上記地盤改良工法が、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明のセメント系固化材等スラリーを高圧噴射して地中の土を切削すると同時に強制撹拌して化学的に固化する工程を含むことや、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明のセメント系固化材等スラリーと土とを機械撹拌により混合する工程を含むことは、いずれも本発明の地盤改良工法の好適な実施形態である。
本発明の地盤改良工法は、上記工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
【0066】
本発明のセメント系固化材等混和剤やセメント系固化材等スラリーは上記工法や用途に
限定されず、例えば薬液注入工や空洞充填工のような地盤の削孔や地盤の緩み、空洞を充填して地盤との密着性を図る工法や遮水性を高める工法等、種々の地盤改良用途に用いることができるほか、また例えばグランドアンカーやロックボルトといった法面や土木構造物の安定化・補強するための工法等(地山補強用)においても用いることができる。
【実施例0067】
次に実施例に基づいて本発明をより詳しく説明する。なお本発明は前記製造方法により得られるものであり、この実施例に限定されるものではない。
なお、特に記載のない限り、以下に示す%は質量%を表す。
【0068】
[(A)ポリカルボン酸系重合体A]
〈製造例 化合物A-1(ポリアミドポリアミン類)の製造〉
<化合物PAPA(1)>
温度計、窒素導入管、撹拌機、検水管付コンデンサーを備えたガラス製反応容器にジエチレントリアミン103gを仕込み、窒素を液中に導入しながら撹拌した。撹拌しながらアジピン酸121g(ポリアルキレンポリアミン/二塩基酸のモル比は6モル/5モル)を仕込み、150℃まで昇温し、流出水を除去しながら同温度で20時間反応を継続した。次にハイドロキノンメチルエーテル1.1gを仕込み30分間混合したあと、メタクリル酸14.3g(ポリアミドポリアミン鎖に対し1モル相当)を仕込み、更に10時間反応させた(アミド化反応)。
反応終了後、イオン交換水138gを仕込み、ポリアミドポリアミンの60%水溶液345g(化合物PAPA(1)の水溶液)を得た。
【0069】
<化合物PAPA(2)>
化合物PAPA(1)のアミド化反応まで上記と同様に行い、次に、イオン交換水177gを仕込み30分撹拌を行った。窒素導入管、エチレンオキサイド導入管を備えたガラス製耐圧容器に移し窒素で充分に置換し温度を60℃まで昇温した。60℃~70℃を維持しながらエチレンオキサイド265gを徐々に吹き込み、その後1時間同温度で熟成させた。ポリエチレンオキサイド付加ポリアミドポリアミンの60%水溶液786g(化合物PAPA(2)の水溶液)を得た。
【0070】
〈(A)ポリカルボン酸系重合体Aの製造〉
次に以下の手順を用いて(A)ポリカルボン酸系共重合体Aの各種水溶液を得た。
なお、ポリカルボン酸系重合体Aの水溶液、及び後述するポリカルボン酸系重合体Bの水溶液のそれぞれの主成分である各重合体の重量平均分子量(Mw)のGPC法による測定条件は、以下に示す通りである。
<分子量測定>
カラム:OHpak SB-803HQ, OHpak SB-804HQ(昭和電工(株)製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20
検出器:示差屈折計
検量線:ポリエチレングリコール基準
【0071】
〈製造例A1(ポリカルボン酸系重合体A1の製造)〉
検水管付コンデンサー、窒素導入管、温度計、滴下漏斗、撹拌機付きガラス製反応容器にイオン交換水380gを仕込み、撹拌し反応系内を窒素置換し窒素を導入しながら80℃まで昇温した。イオン交換水232g、化合物PAPA(2)水溶液26g、メタクリル酸31gおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(以下、MEと略す、続く数字は分子量を表す)4000 263gの混合物、10%無水重亜硫酸ソーダ水溶液79g、10%過硫酸ソーダ水溶液63gを、各々滴下漏斗を用い反応容器へ2時間かけ滴下した。その後同温度で2時間熟成した。熟成終了後冷却し50℃となっ
たら48%NaOH水溶液27gを徐々に加え中和した。35%過酸化水素水1gを投入し1時間撹拌して、ポリカルボン酸系重合体A1の水溶液1089gを得た。ポリカルボン酸系重合体A1の水溶液は固形分30.3%、1%水溶液のpHは6.8、主成分である高分子化合物の重量平均分子量は42,000であった。
【0072】
〈製造例A2(ポリカルボン酸系重合体A2の製造〉
表1に示す通り、カルボン酸基を有する化合物(カルボン酸)、水溶性ポリアルキレングリコール(ポリアルキレングリコール)及びポリアミドポリアミン類(ポリアミド)の種類及び/又は比率を変化させた以外には、製造例A1と同様の手順にて、ポリカルボン酸系重合体A2を製造した。
【0073】
【0074】
[(B)ポリカルボン酸系重合体Bの製造]
〈製造例B1(ポリカルボン酸系重合体B1の製造)〉
窒素導入管、撹拌機、温度計付きステンレス製オートクレーブに3-メチル-3-ブテン-1-オール40EO付加物440g(ブロック付加物、MBO40EO)、イオン交換水371g、フマル酸12g、及びメトキシポリエチレングリコールジフマレート(化合物D1、分子量約340)150gを撹拌しながら仕込んだ。充分に窒素置換を行い、60℃まで昇温させた後、過硫酸ナトリウム15%水溶液112gを仕込み、同温度を維持しながら6時間反応させた。反応終了後80℃まで昇温し、1時間撹拌を継続した。重合液を50℃まで冷却し、48%NaOH水溶液13gを用いて中和し、ポリカルボン酸系重合体B1の水溶液1077g(固形分濃度:55%、重合体の重量平均分子量:32,400)を得た。
【0075】
〈製造例B2(ポリカルボン酸系重合体B2の製造)〉
表2に示す通り、反応性アルコール誘導体(反応性アルコール)、不飽和ジカルボン酸化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物(エステル:表3参照)の種類及び比率を変化させた以外には、製造例B1と同様の手順にて、ポリカルボン酸系重合体B2を製造した。
【0076】
【0077】
【0078】
[その他のポリカルボン酸系重合体]
〈ポリカルボン酸系重合体C1〉
ポリカルボン酸系重合体C1として、メタクリル酸13.1質量部と、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(ME)225を60.8質量部とを常法により重合した重合体(重量平均分子量(Mw):11,100)を準備した。
〈ポリカルボン酸系重合体C2〉
ポリカルボン酸系重合体C2として、3-メチル-3-ブテン-1-オール10EO付加物77.5質量部と、アクリル酸22.5質量部とを常法により重合した重合体(重量平均分子量(Mw):12,250)を準備した。
【0079】
[セメント系固化材等用混和剤の製造]
表4に示す組成にて、ポリカルボン酸系重合体A及びポリカルボン酸系重合体Bを配合し、実施例1~4及び比較例1~3のセメント系固化材等用混和剤(以下、単に「混和剤」とも称する)を製造した(表4中、「混和剤の構成」参照)。
また比較例4のセメント系固化材等用混和剤として、ポリカルボン酸系重合体A(A1)とポリカルボン酸系重合体C1を配合した混和剤を、比較例5のセメント系固化材等用混和剤としてポリカルボン酸系重合体C2を用いた(表4参照)。
なお表4中の各成分の組成は固形分に換算した数値である。
【0080】
上記実施例1~4及び比較例1~5の混和剤について、以下の方法により、ファンネル粘性、及び、スラリーの分離沈降度合いの評価を行った。
【0081】
<セメント系固化材等スラリーの調製およびスラリーのファンネル粘性評価>
セメント系固化材(ジオセット225、太平洋セメント(株)製)1000gに、前記セメント系固化材に対して、表4に記載の配合割合となるように、実施例1~4及び比較例1~5の混和剤を含む水450gを加え、ホバート型ミキサー(型番N-50、ホバー
ト社製)で3分間撹拌して、セメント系固化材等スラリー(以下、単に「スラリー」とも称する)を調製した(W/C=0.45)。
調製したスラリー500mLをファンネル粘度計(型番S-251、(株)西日本試験機社製)に注ぎ入れ、該スラリーが流出(流下)する時間を測定し、ファンネル粘性を評価した。
なお流下時間の測定は、スラリー調製直後、調製後30分経過後、同60分経過後、同120分経過後にそれぞれ実施した。
【0082】
<スラリーの分離沈降度合い>
上記方法により調製したスラリー200gを、ポリプロピレン製カップ(品番:ニューディスポカップ100mL、アズワン(株)製)に充填した。調製後30分静置後、同60分静置後、同120分静置後に、目視でスラリーの硬化や分離沈降の有無を確認した。
【0083】
【0084】
表4に示すように、特定のポリカルボン酸系重合体Aとポリカルボン酸重合体BをA/B=60/40~75/25(質量比)の割合で配合した実施例1~実施例4のセメント系固化材等用混和剤を添加したセメント系固化材等スラリーは、スラリー調製直後から1
20分後まで流下時間の変化が少なく、また、120分後においても分離や硬化が確認されなかった。本結果は、本発明に係る混和剤により、W/C=0.45という高濃度領域にあるスラリーにおいても、初期(調製直後)の流動性を長時間維持することができ、また、スラリーの固液分離抵抗性(スラリー材料の分離抵抗性)に優れたものとすることができることを示すものであった。
【0085】
一方、本発明に係る混和剤において、ポリカルボン酸系重合体Aの割合を高めた場合(比較例1、A/B=80/20)には、調製から120分後にスラリーの流下時間が増加するとともに硬化開始が確認された。またポリカルボン酸系重合体Bを不使用とした場合(比較例2、A/B=100/0)、調製から30分後にスラリーの流下時間の増加と硬化開始が見られ、60分後には該スラリーの一部が硬化した。そしてポリカルボン酸系重合体Bの使用割合を高めた場合(比較例3、A/B=50/50)は、調製から60分後にスラリーの硬化開始が確認され、120分後には該スラリーの流下時間の増加と該スラリーの一部が硬化したことが確認された。
なお、ポリカルボン酸系重合体Bの代わりに、その他のポリカルボン酸系重合体C1を追加した混和剤(比較例4、A/C=30/70)を使用したスラリーでは、ポリカルボン酸系重合体Aのみを使用した比較例2と比べて、一見、調製から60分後まで初期と同等程度の流下時間を確保できたようにみられたが、実際には30分後に固液の分離が確認される結果となった。
さらに、セメント系固化材等用混和剤として、不飽和ポリアルキレングリコール(MBO10EO)にアクリル酸を付加させた重合体C2を用いた比較例5を配合したスラリーでは、実施例の混和剤を用いたスラリーと比べて、調製直後から2倍以上の流下時間を要し、また調製後30分後には硬化開始が確認される結果となった。
【0086】
<セメント系固化材等スラリーの流下試験>
セメント系固化材(ジオセット225、太平洋セメント(株)製)3000gに、前記セメント系固化材に対して、上記実施例2の混和剤(配合割合は後述参照)を含む水1200g(温度20℃又は35℃)または1350g(温度20℃)を加え、ホバート型ミキサー(型番N-50、ホバート社製)で3分間撹拌して、セメント系固化材等スラリーを調製した(水/セメント系固化材等比率(W/C):0.4(固化材に対する混和剤割合:0.38質量%)、又は0.45(同:0.35質量%)。
調製したスラリー1725mLをプレパクトフローコーン(Pロート)(JSCE-F521-2018適合品)に注ぎ入れ、スラリーが流出する時間(P漏斗流下時間)を測定した。なお測定は、スラリー調製直後、調製後5分経過後、同10分経過後、同15分経過後、同30分経過後、同60分経過後にそれぞれ実施した。その際スラリーはミキサーで流動状態を維持しながら測定をした。得られた結果を
図1に示す。
【0087】
図1は、セメント系固化材等スラリー[W/C=0.40(混和剤配合量:C×0.38質量%、水温20℃)、W/C=0.45(混和剤配合量:C×0.35質量%、水温20℃)、W/C=0.40(混和剤配合量:C×0.38質量%水温35℃(温水))]別のP漏斗流下時間を、スラリー調製直後(0分)から調製後60分後の経過時間別に示す図である。
図1に示すように、調製後5分後にはいずれのスラリーにおいても、地盤改良に使用する一般的なW/C=0.8のセメント系固化材等スラリーにおいて、当該スラリーに求められるポンプ圧送可能な流下時間の指標となるP漏斗流下時間14秒と同等以下の流下時間を実現でき、すなわちW/Cが0.4又は0.45という高濃度領域のスラリーにおいてもW/C=0.8のスラリーと同等の圧送性を確保でき、また60分間それを保持できたことが確認された。
【0088】
<セメント系固化材等スラリーによる配合試験(圧縮強度)>
セメント系固化材(ジオセット225、太平洋セメント(株)製)に、表5に記載の配合割合となるように、上記実施例2の混和剤を含む水(W/C=0.8においては水のみ)を加え、予め3分アルミ製ボール中でゴムへらでセメント系固化材等スラリーを手練り調製した。
酒々井産ローム土(湿潤密度ρt=1.395g/cm
3、含水比w=110.9%)3100gに前記スラリーを加え、ホバート型ミキサー(型番SK-20、エスケーミキサー社製)で10分間撹拌(5分撹拌後、掻き落とし後5分撹拌)して、安定処理土の締め固めをしない供試体作製(JGS0821-2020)法に準じて供試体を作製した。
作製した供試体を一軸圧縮試験機(JIS A 1216:2020準拠 (株)マルイ製)を用いて、一軸圧縮強さを測定した。なお測定は、材齢7日で実施した。
得られた結果を
図2に示す。
【0089】
【0090】
図2は、水/セメント系固化材等スラリー(W/C=0.8、0.7、0.6、0.4)別の、土量に対して添加した該スラリーの添加量(kg/m
2)に対する一軸圧縮強さ(kN/m
2)を示す図である。
図2に示すように、地盤改良に使用する一般的なW/C=0.8であるスラリーから作製した供試体に比べて、本発明に係る混和剤を添加し製造したW/C=0.7、0.6、0.4の供試体の一軸圧縮強さは高い値を示した。
本結果より、W/C=0.4といった高濃度化したスラリーから、高強度の地盤改良体を製造可能であることが確認された。