(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146325
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】医療画像処理装置、OCT装置、および医療画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059149
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100184550
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 珠美
(72)【発明者】
【氏名】柴 涼介
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB03
4C316AB04
4C316AB11
4C316FB05
4C316FB13
4C316FB16
4C316FB23
4C316FB29
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】複数の三次元画像の間の差異をユーザに適切に把握させることが可能な医療画像処理装置、OCT装置、および医療画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する(S1)。制御部は、第1画像データおよび第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データ内のZ方向画像と第2画像データ内のZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する(S7)。制御部は、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する(S9,S10)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の画像データを処理する医療画像処理装置であって、
前記画像データは、
生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、
前記医療画像処理装置の制御部は、
同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、
XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、
を実行することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療画像処理装置であって、
前記相関出力ステップでは、前記制御部は、XY方向の各々の位置について取得された相関の強さの、XY方向における二次元分布を示す類似度マップの生成処理を実行し、生成した前記類似度マップを出力することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医療画像処理装置であって、
前記制御部は、
表示部に表示出力された前記類似度マップ上で、ユーザによる二次元画像の抽出位置の指定指示を受け付ける抽出位置受付ステップと、
前記抽出位置受付ステップにおいて抽出位置の指定指示が受け付けられた場合に、指定された前記抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、前記第1画像データおよび前記第2画像データの少なくとも一方から抽出して表示部に表示させる抽出表示ステップと、
をさらに実行することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療画像処理装置であって、
前記抽出表示ステップでは、前記制御部は、前記抽出位置受付ステップにおいて指定された前記抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々から抽出して、前記表示部に表示させることを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の医療画像処理装置であって、
前記制御部は、
前記類似度マップ上で相関が最も弱い位置を含む位置に、二次元画像の抽出位置を自動設定する抽出位置自動設定ステップと、
前記抽出位置自動設定ステップにおいて自動設定された前記抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、前記第1画像データおよび前記第2画像データの少なくとも一方から抽出して表示部に表示させる抽出表示ステップと、
をさらに実行することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療画像処理装置であって、
前記抽出表示ステップでは、前記制御部は、前記抽出位置自動設定ステップにおいて自動設定された前記抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々から抽出して、前記表示部に表示させることを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の医療画像処理装置であって、
前記相関出力ステップでは、前記制御部は、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関の値を統合する処理を実行し、統合した前記相関の統合値出力することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の医療画像処理装置であって、
前記第1画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第1正面画像を生成する第1正面画像生成ステップと、
前記第2画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第2正面画像を生成する第2正面画像生成ステップと、
をさらに実行し、
前記相関取得ステップでは、前記制御部は、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像を、前記第1正面画像と前記第2正面画像に基づいて特定することで、前記相関を取得することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の医療画像処理装置であって、
前記第1画像データに含まれる複数の前記Z方向画像の間の、Z方向における位置合わせを行う第1画像内位置合わせステップと、
前記第2画像データに含まれる複数の前記Z方向画像の間の、Z方向における位置合わせを行う第2画像内位置合わせステップと、
をさらに実行することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の医療画像処理装置であって、
前記相関取得ステップでは、前記制御部は、撮影された前記第1画像データおよび前記第2画像データの全体同士で、XY方向の各々の位置の相関を取得することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の医療画像処理装置であって、
前記第1画像データが撮影された日と、前記第2画像データが撮影された日が異なることを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項12】
参照光と、生体組織に照射された測定光の反射光との干渉光を受光することで、前記生体組織の画像データを撮影するOCT装置であって、
前記画像データは、
生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、
前記OCT装置の制御部は、
同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、
XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、
を実行することを特徴とするOCT装置。
【請求項13】
生体組織の画像データを処理する医療画像処理装置によって実行される医療画像処理プログラムであって、
前記画像データは、
生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、
前記医療画像処理プログラムが前記医療画像処理装置の制御部によって実行されることで、
同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、
XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、
を前記医療画像処理装置に実行させることを特徴とする医療画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体組織の三次元画像の画像データを処理する医療画像処理装置、OCT装置、および、医療画像処理装置において実行される医療画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織の三次元画像は、医療従事者による患者の診療を補助するために有用である。近年では、同一の生体組織について撮影された複数の三次元画像を処理することで、複数の三次元画像の間の差異(例えば、複数の三次元画像に表れる、生体組織の経時的な変化等)を、医療従事者等のユーザに把握させる技術も提案されている。例えば、特許文献1に記載の装置は、生体組織の一例である眼底の三次元画像に対して、三次元画像に写る層を検出するセグメンテーション処理を実行し、特定の層の厚みの二次元分布を示す解析マップを生成する。また、従来の装置は、同一の被検者の同一の位置を異なる時期に撮影し、撮影された複数の三次元画像の各々について解析マップを生成することも可能である。生成された複数の解析マップは、組織の経時的な変化をユーザに把握させるために用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元画像に対するセグメンテーション処理を利用する場合には、少なくともいずれかの三次元画像に対するセグメンテーション処理の精度が低くなってしまうと、複数の三次元画像の間の差異をユーザに正確に把握させることは困難である。また、層への影響が小さい経時変化(例えば、組織に表れる白斑の経時変化等)についても、セグメンテーション処理の結果には反映され難い。本願発明の発明者は、複数の三次元画像の間の差異をユーザに適切に把握させるための、セグメンテーション処理とは異なる技術を新たに見出した。
【0005】
本開示の典型的な目的は、複数の三次元画像の間の差異をユーザに適切に把握させることが可能な医療画像処理装置、OCT装置、および医療画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する医療画像処理装置は、生体組織の画像データを処理する医療画像処理装置であって、前記画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、前記医療画像処理装置の制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、を実行する。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供するOCT装置は、参照光と、生体組織に照射された測定光の反射光との干渉光を受光することで、前記生体組織の画像データを撮影するOCT装置であって、前記画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、前記OCT装置の制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、を実行する。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供する医療画像処理プログラムは、生体組織の画像データを処理する医療画像処理装置によって実行される医療画像処理プログラムであって、前記画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データであり、前記医療画像処理プログラムが前記医療画像処理装置の制御部によって実行されることで、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における前記生体組織の撮影位置が互いに一致する前記第1画像データのZ方向画像と前記第2画像データのZ方向画像の相関を、XY方向の各々の位置について取得する相関取得ステップと、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する相関出力ステップと、を前記医療画像処理装置に実行させる。
【0009】
本開示に係る医療画像処理装置、OCT装置、および医療画像処理プログラムによると、複数の三次元画像の間の差異がユーザによって適切に把握される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】医療画像処理システム100の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の撮影装置1が生体組織50の三次元画像を撮影する方法を説明するための説明図である。
【
図3】複数の二次元画像61によって三次元画像が構成されている状態を説明するための説明図である。
【
図5】二次元画像61に含まれる複数のZ方向画像62の一例を示す図である。
【
図6】医療画像処理装置40が実行する医療画像処理の一例を示す図である。
【
図7】三次元の第1画像60Aから生成される第1正面画像65Aと、三次元の第2画像60Bから生成される第2正面画像65Bの一例を示す図である。
【
図8】XY方向における同一位置のZ方向画像62A,62Bの相関および変位を取得する方法を説明するための説明図である。
【
図10】医療画像処理中に実行される二次元画像表示処理のフローチャートである。
【
図11】類似度マップ70上で二次元画像の抽出位置75が設定された状態の一例を示す図である。
【
図12】第1二次元画像61A,第2二次元画像61B、および合成二次元画像69の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示で例示する医療画像処理装置の第1態様は、生体組織の画像データを処理する。画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向に延びる複数のZ方向画像が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データである。医療画像処理装置の制御部は、画像データ取得ステップ、相関取得ステップ、および相関出力ステップを実行する。画像データ取得ステップでは、制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する。相関取得ステップでは、制御部は、第1画像データおよび第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像のうち、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データ内のZ方向画像と第2画像データ内のZ方向画像の相関(「類似度」と表現してもよい)を、XY方向の各々の位置について取得する。相関出力ステップでは、制御部は、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関を処理して出力する。
【0012】
本開示の第1態様に係る技術によると、XY方向の撮影位置が一致する2つのZ方向画像(つまり、第1画像データ内のZ方向画像と、第2画像データ内のZ方向画像)の相関が、XY方向の各々の位置について取得される。XY方向の各位置のうち、第1画像データと第2画像データの間の差異が小さい位置(例えば、生体組織の変化が小さい位置等)では、2つのZ方向画像間の相関が強くなる。一方で、XY方向の各位置のうち、第1画像データと第2画像データの間の差異が大きい位置(例えば、生体組織の変化が大きい位置等)では、2つのZ方向画像間の相関が弱くなる。従って、ユーザは、XY方向の各々の位置について取得される相関の情報を確認することで、第1画像データと第2画像データの間の差異を適切に把握することができる。例えば、ユーザは、XY方向の各々の位置について取得される相関の情報を確認することで、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化を、適切に把握することも可能である。
【0013】
本開示では、OCT装置によって撮影された三次元画像の画像データを処理する場合を例示する。OCT装置は、光コヒーレンストモグラフィの原理を利用して、生体組織の三次元画像(三次元断層画像)を撮影することができる。一例として、本開示におけるOCT装置は、光(測定光)のスポットを二次元方向に走査させることで、三次元画像を撮影する。しかし、OCT装置の照射光学系は、被検体の組織上の二次元の領域に、測定光を同時に照射してもよい。この場合、受光素子は、組織上の二次元の領域における干渉信号を検出する二次元受光素子であってもよい。つまり、OCT装置は、所謂フルフィールドOCT(FF-OCT)の原理によって三次元画像を撮影してもよい。また、OCT装置は、組織において一次元方向に延びる照射ライン上に測定光を同時に照射すると共に、照射ラインに交差する方向に測定光を走査させてもよい。この場合、受光素子は、一次元受光素子(例えばラインセンサ)または二次元受光素子であってもよい。つまり、OCT装置は、所謂ラインフィールドOCT(LF-OCT)の原理によって三次元画像を撮影してもよい。
【0014】
ただし、本開示で例示する技術は、OCT装置以外の撮影装置によって撮影された画像のデータを処理する場合にも適用できる。例えば、本開示で例示する技術は、MRI(磁気共鳴画像診断)装置、または、CT(コンピュータ断層撮影)装置等によって撮影された画像のデータを処理するために用いられてもよい。
【0015】
本開示では、OCT画像を撮影する光の光軸に沿うZ方向に延びる一次元画像(所謂Aスキャン画像)が、Z方向画像として処理される。しかし、Z方向画像はAスキャン画像に限定されない。例えば、三次元画像がOCT画像とは異なる画像である場合でも、Z方向に並べられた複数の画素列が、Z方向画像として処理されてもよい。また、Z方向に延びる複数の画素列の集合が、Z方向画像として処理されてもよい。つまり、各々のZ方向画像では、XY方向においても複数の画素が含まれていてもよい。
【0016】
XY方向の撮影位置が一致する2つのZ方向画像(つまり、第1画像データ内のZ方向画像と、第2画像データ内のZ方向画像)の相関を取得する方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、撮影位置が一致する2つのZ方向画像の、Z方向における相対位置を変化させながら、2つのZ方向画像の相関が最も強くなった際の相関の値を探索することで、相関を取得してもよい。この方法は、テンプレートマッチングとして知られている。この場合、2つのZ方向画像の相関の最高値と共に、2つのZ方向画像の間のZ方向の変位も併せて検出される。また、相関の取得方法として、正規化相互相関、相関係数、位相相関等の少なくともいずれかが用いられてもよい。SSD(二乗誤差の総和)、またはSAC(絶対誤差の総和)等が相関として取得されてもよい。この場合、値が小さい程、2つのZ方向画像の類似度が高いことになる。
【0017】
相関出力ステップでは、制御部は、XY方向の各々の位置について取得された相関の強さの、XY方向における二次元分布を示す類似度マップの生成処理を実行し、生成した前記類似度マップを出力してもよい。
【0018】
この場合、ユーザは、出力された類似度マップを確認することで、第1画像データと第2画像データの間の相関の強さ(つまり、類似度の高さ)の、XY方向における二次元分布を、直感的に把握することができる。例えば、ユーザは、出力された類似度マップを確認することで、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置を、適切に把握することも可能である。
【0019】
制御部は、抽出位置受付ステップと抽出表示ステップをさらに実行してもよい。抽出位置受付ステップでは、制御部は、表示部に表示出力された類似度マップ上で、ユーザによる二次元画像の抽出位置の指定指示を受け付ける。抽出表示ステップでは、制御部は、抽出位置受付ステップにおいて抽出位置の指定指示が受け付けられた場合に、指定された抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方から抽出して表示部に表示させる。
【0020】
この場合、ユーザは、類似度マップによって示される第1画像データと第2画像データの相関の強さの二次元分布を把握したうえで、適切な位置の二次元画像を表示させることができる。例えば、類似度マップによって示される相関が弱い位置では、第1画像データと第2画像データの間で、画像の写る生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高い。従って、ユーザは、類似度マップのうち相関が弱い位置に抽出位置を指定することで、生体組織の経時的な変化を二次元画像によって適切に把握することも可能である。さらに、ユーザは、二次元画像が抽出された位置を、類似度マップ上で把握することもできる。よって、診療の効率がさらに向上し易くなる。
【0021】
なお、ユーザによる抽出位置の指定指示を受け付けるための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、二次元の類似度マップ上で、ライン状の抽出位置をユーザに指定させることで、抽出位置の指定指示が受け付けられてもよい。この場合、ユーザは、操作部(例えば、マウスおよびタッチパネル等の少なくともいずれか)を操作することで、ライン状の抽出位置を指定してもよい。抽出位置を示すラインの形状も、直線状、曲線状、環状等の種々の形状を採用できる。複数の抽出位置が指定されてもよいことは言うまでもない。また、ユーザは、マウスおよびタッチパネル等の少なくともいずれかを操作(例えば、マウスのドラッグ操作等)することで、類似度マップ上で任意の形状のライン状の抽出位置を指定してもよい。
【0022】
抽出表示ステップでは、制御部は、抽出位置受付ステップにおいて指定された抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、第1画像データおよび第2画像データの各々から抽出して、表示部に表示させてもよい。
【0023】
この場合、ユーザは、第1画像データと第2画像データの相関の強さに基づいて指定した同一の抽出位置について、第1画像データ内の二次元画像と、第2画像データ内の二次元画像を容易に比較することができる。例えば、ユーザは、類似度マップのうち相関が弱い位置に抽出位置を指定し、表示される2つの二次元画像を比較することで、生体組織の経時的な変化をさらに適切に把握することも可能である。
【0024】
なお、第1画像データおよび第2画像データの各々の同一位置から抽出した2つの二次元画像の表示方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、抽出した2つの二次元画像を並べて表示部に表示させてもよいし、2つの二次元画像を切り換えて(交互に)表示部に表示させてもよい。また、制御部は、抽出した2つの二次元画像を、後述する方法で合成して表示させてもよい。
【0025】
制御部は、抽出位置自動設定ステップと抽出表示ステップをさらに実行してもよい。抽出位置自動設定ステップでは、制御部は、類似度マップ上で相関が最も弱い位置を含む位置に、二次元画像の抽出位置を自動設定する。抽出表示ステップでは、制御部は、抽出位置自動設定ステップにおいて自動設定された前記抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、前記第1画像データおよび前記第2画像データの少なくとも一方から抽出して表示部に表示させてもよい。
【0026】
この場合、ユーザは、類似度マップによって示される第1画像データと第2画像データの相関が最も弱い位置の二次元画像を、容易に確認することができる。例えば、類似度マップによって示される相関が最も弱い位置では、第1画像データと第2画像データの間で、画像の写る生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高い。よって、ユーザによる経過観察の効率も向上し易くなる。
【0027】
前述したように、抽出位置はライン状であってもよい。抽出位置を示すラインの形状には、直線状、曲線状、環状等の種々の形状を採用できる。複数の抽出位置が指定されてもよい
【0028】
二次元画像の抽出位置を自動設定するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、所定の形状(例えばライン状等)の抽出位置における相関の累積値が最も弱くなる位置を探索し、探索された位置を抽出位置として自動設定してもよい。また、制御部は、相関が最も弱い位置を中心とし、且つ所定方向(例えば、X方向またはY方向等)に延びる直線状の位置に、抽出位置を自動設定してもよい。制御部は、相関が最も弱い位置と、画像上の基準位置(例えば、黄斑中心または乳頭中心等)を共に通過する直線状の位置に、抽出位置を自動設定してもよい。
【0029】
抽出表示ステップでは、制御部は、抽出位置自動設定ステップにおいて自動設定された抽出位置を通過し、且つZ方向に広がる二次元画像を、第1画像データおよび第2画像データの各々から抽出して、表示部に表示させてもよい。
【0030】
この場合、ユーザは、第1画像データと第2画像データの相関が最も弱い位置を含む同一の抽出位置について、第1画像データ内の二次元画像と、第2画像データ内の二次元画像を容易に比較することができる。従って、ユーザによる診療がさらに適切に補助され易くなる。なお、2つの二次元画像の表示方法には、前述したように種々の方法を選択できる。
【0031】
相関出力ステップでは、制御部は、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関の値を統合する処理を実行し、算出した相関の統合値を出力してもよい。
【0032】
この場合、ユーザは、出力される相関の統合値によって、第1画像データと第2画像データの差異を適切に把握することができる。例えば、ユーザは、相関の統合値によって、第1画像データの撮影時と第2画像データの撮影時の間の、生体組織の全体的な経時変化の程度を把握することも可能である。また、相関の統合値によって、Z方向画像同士の相関が取得された際の、第1画像データと第2画像データの位置合わせの正確性を評価することも可能である。また、第1画像データと第2画像データの少なくとも一方の撮影の精度が低ければ、相関の統合値は低くなる。従って、相関の統合値によって、画像の撮影精度を評価することも可能である。例えば、制御部は、第2画像データが新たに撮影された場合に、第1画像データと第2画像データの相関の統合値が閾値未満であれば、第2画像データの撮影精度が低いと判断し、第2画像データの再撮影の指示を出力してもよい。
【0033】
なお、複数の相関の値を統合する方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、複数の相関の値の平均値、中央値、最大値、最小値等を算出することで、複数の相関の値を統合してもよい。また、制御部は、値が閾値を超えた相関、または、値が閾値未満となった相関の数または割合等を、統合値として算出してもよい。
【0034】
制御部は、第1正面画像生成ステップと第2正面画像生成ステップをさらに実行してもよい。第1正面画像生成ステップでは、制御部は、第1画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第1正面画像を生成する。第2正面画像生成ステップでは、制御部は、第2画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第2正面画像を生成する。相関取得ステップでは、制御部は、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データのZ方向画像と第2画像データのZ方向画像を、第1正面画像と第2正面画像に基づいて特定することで、相関を取得してもよい。
【0035】
この場合、XY方向における同一位置を特定する必要がある第1画像データと第2画像データ自体から正面画像が生成され、生成された正面画像に基づいて同一位置が特定される。従って、他の手法(例えば、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて同一位置を特定する手法等)が用いられる場合に比べて、第1画像データと第2画像データのXY方向における同一位置が、より正確に特定され易くなる。
【0036】
なお、画像データ(第1画像データと第2画像データ)に基づいて正面画像(第1正面画像および第2正面画像)を生成するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、画像データに含まれる複数のZ方向画像の各々について、Z方向に並ぶ複数の画素の画素値を加算(加算平均でもよい)することで、正面画像を生成してもよい。また、制御部は、画像データに含まれる複数のZ方向画像の各々のうち、特定の位置または範囲の画素値(例えば、画像データに写る層および境界のうち、特定の層の画素値、特定の境界の画素値、または特定の層・境界の範囲内の画素値等)に基づいて、正面画像(所謂Enface画像)を生成してもよい。この場合、制御部は、画像データに写る少なくともいずれかの層・境界を検出するセグメンテーション処理を実行し、セグメンテーション処理の結果に基づいて正面画像を生成してもよい。
【0037】
制御部は、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行うことで、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データのZ方向画像と第2画像データのZ方向画像を特定してもよい。この場合、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行うことで、XY方向における全ての範囲で、第1画像データのZ方向画像と第2画像データのZ方向画像の位置が一致する。よって、第1画像データと第2画像データのXY方向における同一位置が、より容易且つ正確に特定され易くなる。なお、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行う場合、制御部は、第1正面画像と第2正面画像を重複させた状態で、2つの正面画像の間の相対的な位置および角度を変化させてもよい。制御部は、2つの正面画像の相関が最も強くなる位置および角度を探索することで、2つの正面画像の位置合わせを行ってもよい。また、画像局所特徴量(例えば、SIFT:Scale-Invariant Feature Transform)、または、回転不変位相限定相関等の手法が利用されることで、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせが行われてもよい。
【0038】
また、制御部は、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを実際に行わずに、第1画像データと第2画像データのXY方向における同一位置を特定することも可能である。例えば、制御部は、第1正面画像に写る生体組織と、第2正面画像に写る生体組織の位置ずれを算出し、算出した位置ずれに基づいて、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データのZ方向画像と第2画像データのZ方向画像を特定してもよい。
【0039】
なお、第1画像データと第2画像データのXY方向における同一位置を特定するための方法を変更することも可能である。例えば、第1画像データを撮影する際に、第1画像データの撮影原理とは異なる原理で、第1画像データと同一の撮影位置の正面画像が撮影されてもよい。同様に、第2画像データを撮影する際に、第2画像データの撮影原理とは異なる原理で、第2画像データと同一の撮影位置の正面画像が撮影されてもよい。制御部は、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて、第1画像データと第2画像データのXY方向における同一位置を特定してもよい。
【0040】
制御部は、第1画像内位置合わせステップと第2画像内位置合わせステップをさらに実行してもよい。第1画像内位置合わせステップでは、制御部は、第1画像データに含まれる複数のZ方向画像の間の、Z方向における位置合わせを行う。第2画像内位置合わせステップでは、制御部は、第2画像データに含まれる複数のZ方向画像の間の、Z方向における位置合わせを行う。
【0041】
三次元の画像データに含まれる複数のZ方向画像の少なくとも一部には、例えば、撮影中の生体組織の動き、装置の振動等に起因して、Z方向における位置が正常な位置から外れているZ方向画像が含まれる場合がある。複数のZ方向画像の間の位置合わせが行われることで、Z方向における位置が正常な位置から外れている画像に起因する種々の影響が抑制される。例えば、第1画像データと第2画像データの少なくとも一方から二次元画像が抽出される場合には、抽出された二次元画像内に含まれる各々のZ方向画像のZ方向における位置ずれが抑制されているので、より適切な二次元画像が抽出され易くなる。
【0042】
相関取得ステップでは、制御部は、撮影された第1画像データおよび第2画像データの全体同士で、XY方向の各々の位置の相関を取得してもよい。この場合、画像の撮影範囲の全体で、第1画像データと第2画像データの間の差異が適切に把握される。よって、ユーザによる診療等が、より適切に補助され易くなる。
【0043】
ただし、制御部は、第1画像データおよび第2画像データのうち、互いに共通する一部の領域同士で、XY方向の各々の位置の相関を取得することも可能である。
【0044】
第1画像データが撮影された日と、第2画像データが撮影された日が異なっていてもよい。この場合、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化が、適切に把握され易くなる。従って、生体組織の経過観察等が、より適切に行われ易くなる。
【0045】
制御部は、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方を、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに入力することで、入力された三次元画像に写る眼底組織における層および境界の少なくともいずれかを識別するための確率分布を取得し、取得した確率分布に基づいて乖離度マップを生成してもよい。乖離度マップは、識別対象の層または境界が正確に識別される場合の確率分布に対する、取得された確率分布の乖離度の二次元分布を示す。制御部は、乖離度マップと類似度マップを、同時に、または切り換えて表示部に表示出力してもよい。
【0046】
前提として、層・境界の構造に異常が無い場合には、数学モデルによって層・境界が正確に識別され易いので、数学モデルによって層・境界を識別する際の確率分布が偏り易い。一方で、層・境界の構造に異常がある場合には、確率分布が偏り難くなる。従って、層・境界が正確に識別される場合の確率分布と、実際に取得された確率分布の乖離度の二次元分布を示す乖離度マップには、層・境界の構造の異常度が表れやすい。また、前述したように、類似度マップによると、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置等が適切に把握され易い。従って、乖離度マップと類似度マップが同時に、または切り換えて表示部に表示されることで、ユーザは、被検者の生体組織の状態を、より適切に把握し易くなる。なお、制御部は、ユーザによって入力される指示に応じて、乖離度マップと類似度マップの同時表示を実行するか否か、乖離度マップと類似度マップの切替表示を実行するか否か等を決定してもよい。この場合、ユーザが希望するマップが適切に表示部に表示されるので、ユーザによる診療等の効率がさらに向上し易くなる。
【0047】
制御部は、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方に写る眼底組織における、少なくともいずれかの層の厚みについての解析結果の二次元分布を示す厚みマップを生成してもよい。制御部は、厚みマップと類似度マップを、同時に、または切り換えて表示部に表示出力してもよい。
【0048】
厚みマップによると、生体組織の層の厚みの分布が適切に把握される。また、前述したように、類似度マップによると、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置等が適切に把握され易い。従って、厚みマップと類似度マップが同時に、または切り換えて表示部に表示されることで、ユーザは、被検者の生体組織の状態を、より適切に把握し易くなる。なお、制御部は、ユーザによって入力される指示に応じて、厚みマップと類似度マップの同時表示を実行するか否か、厚みマップと類似度マップの切替表示を実行するか否か等を決定してもよい。この場合、ユーザが希望するマップが適切に表示部に表示されるので、ユーザによる診療等の効率がさらに向上し易くなる。
【0049】
さらに、制御部は、乖離度マップ、厚みマップ、および類似度マップのうちの少なくとも2つを、同時にまたは切り換えて表示部に表示出力することも可能である。さらに、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方に基づいて生成される、乖離度マップおよび厚みマップ以外の生体組織の情報の二次元分布を示すマップが、類似度マップと同時に、または切り換えて表示されてもよい。
【0050】
本開示で例示する医療画像処理装置の第2態様は、生体組織の画像データを処理する。医療画像処理装置の制御部は、二次元画像取得ステップと合成表示ステップを実行する。二次元画像取得ステップでは、制御部は、同種の生体組織についての画像である第1二次元画像および第2二次元画像を取得する。合成表示ステップでは、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像を重ねた状態で合成して表示部に表示させる。
【0051】
本開示の第2態様に係る技術によると、同種の生体組織についての第1二次元画像と第2二次元画像が、重ねられて合成された状態で表示部に表示される。従って、ユーザは、表示部に合成表示された二次元画像(以下、「合成二次元画像」という)を確認することで、第1二次元画像と第2二次元画像の各々に写る生体組織の差異を適切に比較することができる。
【0052】
合成表示ステップでは、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像を、互いに異なる色で合成して表示させてもよい。この場合、1つの合成二次元画像において、第1二次元画像に写る被写体と、第2二次元画像に写る被写体が異なる色で表示される。従って、ユーザは、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化を、合成二次元画像によってさらに適切に把握することができる。
【0053】
合成表示ステップでは、制御部は、被写体が写らない背景の画素の色である背景色を、黒色または白色としてもよい。第1二次元画像において被写体が写る部位の画素の色を、第1色とする。第2二次元画像において被写体が写る部位の画素の色を、第2色とする。制御部は、第1色と第2色の組み合わせを、2つの色が合成された場合に背景色(黒色または白色)とは逆の色となる組み合わせに設定してもよい。
【0054】
この場合、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重なる位置では、背景色とは逆の色(白色または黒色)で被写体が表現される。つまり、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重なる位置では、被写体がグレースケールで表現される。さらに、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重ならない位置では、第1二次元画像の被写体は第1色で表現され、且つ、第2二次元画像の被写体は第2色で表現される。その結果、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重ならない位置では、グレースケールではなく、カラーの第1色と第2色によって、各々の二次元画像の被写体が適切に把握される。従って、ユーザは、第1二次元画像の被写体のみが写る部位、第2二次元画像の被写体のみが写る部位、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重なる部位、および背景部位の各々を、直感的に把握することが可能である。
【0055】
さらに換言すると、第1色と第2色の合成色が、背景と反対の色にならない場合には、第1色、第2色、および合成色の3つの色が、合成二次元画像に含まれることになるので、被写体の視認性が低下し易い。例えば、第1色を赤、第2色を緑とすると、赤と緑の合成色である黄色も合成二次元画像に含まれることになる。これに対し、第1色と第2色の合成色を、背景色とは逆の色とすることで、2つの被写体が重なる位置がグレースケールで示されることになり、被写体の視認性が向上し易くなる。
【0056】
第1色と第2色の具体的な組み合わせは適宜選択できる。例えば、制御部は、背景色を黒色とする場合には、全ての色が合成された際に白色となる光の三原色(Red,Green,Blue)のうち、2つの原色の合成色を第1色および第2色の一方とし、残りの1つの原色を他方の色としてもよい。一例として、制御部は、背景色を黒色とする場合に、RedとBlueを合成したMagentaを第1色とし、残りの原色であるGreenを第2色としてもよい。また、制御部は、背景色を白色とする場合には、全ての色が合成された際に黒色となる色材の三原色(Cyan,Magenta,Yellow)のうち、2つの原色の合成色を第1色および第2色の一方とし、残りの1つの原色を他方の色としてもよい。
【0057】
ただし、第1二次元画像の被写体と第2二次元画像の被写体が重なる位置を、グレースケール(つまり、白色または黒色)以外の色で表現することも可能である。この場合でも、第1色と第2色が異なる色に設定されることで、第1二次元画像の被写体のみが写る部位、第2二次元画像の被写体のみが写る部位、第2二次元画像に被写体と第2二次元画像の被写体が重なる部位、および背景部位の各々が適切に把握される。
【0058】
制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像の各々を構成する複数の部分画像のうち、第1二次元画像と第2二次元画像が位置合わせされた結果同一位置となる部分画像間の類似度を算出し、算出された複数の類似度の二次元分布を示す二次元画像類似度マップを出力する二次元画像類似度マップ出力ステップをさらに実行してもよい。この場合、ユーザは、出力された二次元画像類似度マップを確認することで、第1二次元画像と第2二次元画像の位置合わせが行われた場合の類似度の分布を、直感的に把握することができる。従って、ユーザは、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化を、より適切に把握することができる。
【0059】
なお、第1二次元画像と第2二次元画像の間で類似度を取得する単位となる部分画像は、各画像を構成する画素であってもよい。この場合、2つの画像の間の類似度の分布が画素毎に示されるので、生体組織の経時的な変化を細かく把握し易くなる。しかし、部分画像の単位を変更することも可能である。例えば、複数の画素を含む矩形の部分画像を単位として類似度が取得されてもよい。また、Z方向に延びる複数の画素の集合であるZ方向画像を部分画像として類似度が取得されてもよい。
【0060】
二次元画像類似度マップを生成するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、公知のSSIM(Structural Similaryty)が利用されることで、二次元画像類似度マップが生成されてもよい。この場合、複数の画素を含む小領域内でSSIMが算出される。2つの小領域の相対位置をずらしながら、複数のSSIMが算出され、算出された複数のSSIMの平均値等が類似度とされる。その結果、同一位置の一対の部分画像の情報(例えば、輝度およびコントラスト等)に加えて、周囲の部分画像の情報も用いられるので、画像の構造の差の評価も可能となる。
【0061】
画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向と、Z方向に交差する二次元のXY方向に広がる三次元画像の画像データであってもよい。制御部は、画像データ取得ステップと抽出位置設定ステップをさらに実行してもよい。画像データ取得ステップでは、制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影され、且つ、撮影位置の少なくとも一部が互いに重複する第1画像データおよび第2画像データを取得する。抽出位置設定ステップでは、制御部は、第1画像データと第2画像データで共通するXY方向における撮影範囲内で、二次元画像を抽出する抽出位置を設定する。二次元画像取得ステップでは、制御部は、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に写る生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置から二次元画像を抽出することで、第1二次元画像と第2二次元画像を取得してもよい。合成表示ステップでは、制御部は、第1画像データの抽出位置から抽出された第1二次元画像と、第2画像データの抽出位置から抽出された第2二次元画像を、位置合わせした状態で合成して表示部に表示させてもよい。
【0062】
この場合、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に写る生体組織中の同一の位置から、二次元画像(つまり、第1二次元画像と第2二次元画像)が自動的に抽出される。抽出された第1二次元画像と第2二次元画像が、位置合わせされた状態で表示部に合成表示される。従って、ユーザは、表示部に合成表示された二次元画像(以下、「合成二次元画像」という)を確認することで、生体組織中の撮影位置が共通する第1二次元画像と第2二次元画像の各々の被写体を適切に比較することができる。よって、ユーザは、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化を、合成二次元画像によって適切に把握することができる。
【0063】
本開示では、OCT装置によって撮影された三次元画像の画像データを処理する場合を例示する。OCT装置は、光コヒーレンストモグラフィの原理を利用して、生体組織の三次元画像(三次元断層画像)を撮影することができる。一例として、本開示におけるOCT装置は、光(測定光)のスポットを二次元方向に走査させることで、三次元画像を撮影する。しかし、OCT装置の照射光学系は、被検体の組織上の二次元の領域に、測定光を同時に照射してもよい。この場合、受光素子は、組織上の二次元の領域における干渉信号を検出する二次元受光素子であってもよい。つまり、OCT装置は、所謂フルフィールドOCT(FF-OCT)の原理によって三次元画像を撮影してもよい。また、OCT装置は、組織において一次元方向に延びる照射ライン上に測定光を同時に照射すると共に、照射ラインに交差する方向に測定光を走査させてもよい。この場合、受光素子は、一次元受光素子(例えばラインセンサ)または二次元受光素子であってもよい。つまり、OCT装置は、所謂ラインフィールドOCT(LF-OCT)の原理によって三次元画像を撮影してもよい。
【0064】
ただし、本開示で例示する技術は、OCT装置以外の撮影装置によって撮影された画像のデータを処理する場合にも適用できる。例えば、本開示で例示する技術は、MRI(磁気共鳴画像診断)装置、または、CT(コンピュータ断層撮影)装置等によって撮影された画像のデータを処理するために用いられてもよい。
【0065】
なお、二次元画像取得ステップにおいて第1二次元画像と第2二次元画像を取得する方法を変更することも可能である。例えば、制御部は、生体組織の深さ方向であるZ方向と、Z方向に交差する二次元のXY方向に広がる生体組織の三次元画像の画像データを取得する画像データ取得ステップを実行してもよい。二次元画像取得ステップでは、制御部は、取得された1つの三次元画像の画像データのうち、画像に写る生体組織中の位置が互いに異なる2つの抽出位置の各々から二次元画像を抽出することで、第1二次元画像と第2二次元画像を取得してもよい。合成表示ステップでは、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像を重ねた状態で合成して表示部に表示させてもよい。この場合、1つの三次元画像のうち、異なる位置から抽出された第1二次元画像と第2に次元画像が合成表示される。従って、ユーザは、1つの生体組織のうち、撮影位置(抽出位置)が互いに異なる第1二次元画像と第2に次元画像の各々に写る生体組織の差異を、合成二次元画像によって適切に比較することができる。
【0066】
1つの三次元画像の画像データのうち、2つの抽出位置の各々から二次元画像を抽出するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、特定の基準部位(例えば、黄斑または乳頭等)の位置を特定し、特定した基準部位を中心として対称となる2つの位置に、二次元画像の抽出位置を設定してもよい。この場合、基準部位を中心として対称となる2つの位置の二次元画像の差異が、合成二次元画像によって適切に比較される。具体的には、制御部は、黄斑を基準部位とし、基準部位を中心として上下に対象となる2つのライン状の位置に、二次元画像の抽出位置を設定してもよい。緑内障等の疾患では、黄斑を基準とする上下の位置の組織の対称性が、診療に有効活用される場合も多い。従って、黄斑を中心として上下に対象となる2つの位置の二次元画像の差異が、合成二次元画像によって適切に比較されることで、診療がより適切に補助され易くなる。
【0067】
また、制御部は、同一の被検者の生体組織の同一位置について、異なる時期に撮影された第1二次元画像および第2二次元画像を、二次元画像取得ステップにおいて取得してもよい。合成表示ステップでは、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像を重ねた状態で合成して表示部に表示させてもよい。つまり、制御部は、同一の被検者の生体組織について異なる時期に撮影された2つの三次元画像から、同一位置の二次元画像を抽出する処理を行わずに、異なる時期に同一位置について撮影された第1二次元画像と第2二次元画像を直接取得してもよい。この場合でも、第1二次元画像の撮影時と第2二次元画像の撮影時の間の、生体組織の経時的な変化を、合成二次元画像によって適切に把握することができる。
【0068】
本開示では、合成する対象の第1二次元画像と第2二次元画像として、組織の深さ方向に広がる二次元断層画像が用いられる場合を主に例示する。しかし、合成する対象の第1二次元画像と第2二次元画像は、組織を正面から見た二次元正面画像であってもよい。この場合、第1二次元画像と第2二次元画像の各々に写る、生体組織の正面の差異が、合成二次元画像によって適切に把握される。なお、二次元正面画像である第1二次元画像および第2二次元画像の取得方法も、適宜選択できる。例えば、二次元正面画像は、生体組織の二次元正面画像を撮影する撮影装置(生体組織が眼底である場合には、眼底カメラおよび走査型レーザ検眼鏡等の少なくともいずれか)によって撮影されてもよい。また、制御部は、三次元画像に含まれる複数のZ方向画像の各々のうち、特定の位置または範囲の画素値(例えば、画像データに写る層および境界のうち、特定の層の画素値、特定の境界の画素値、または特定の層・境界の範囲内の画素値等)に基づいて正面画像(所謂Enface画像)を生成することで、二次元正面画像を取得してもよい。
【0069】
本開示では、同一の被検者の生体組織について撮影された第1二次元画像と第2二次元画像を合成して表示させる場合を例示する。しかし、制御部は、複数の被検者の各々の、同種の生体組織について撮影された、第1二次元画像および第2二次元画像を合成して表示させてもよい。この場合、複数の被検者の生体組織の差異が、合成二次元画像によって適切に把握され易くなる。また、制御部は、同一の被検者の左眼の第1二次元画像と、右眼の第2二次元画像を合成して表示させてもよい。この場合、左眼と右眼の各々の生体組織のうち、互いに対称となる位置についての第1二次元画像と第2二次元画像が合成されてもよい。なお、第1二次元画像と第2二次元画像の各々に写る生体組織の左右が略対称となる場合には、一方の画像の左右を判定させたうえで2つの画像を合成してもよい。この場合、左眼と右眼の各々の生体組織が適切に比較され易くなる。
【0070】
制御部は、第1正面画像生成ステップと第2正面画像生成ステップをさらに実行してもよい。第1正面画像生成ステップでは、制御部は、第1画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第1正面画像を生成する。第2正面画像生成ステップでは、制御部は、第2画像データに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第2正面画像を生成する。二次元画像取得ステップでは、第1画像データおよび第2画像データの各々のうち、生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置を、第1正面画像と第2正面画像に基づいて特定してもよい。
【0071】
この場合、XY方向における同一の抽出位置を特定する必要がある第1画像データと第2画像データ自体から正面画像が生成され、生成された正面画像に基づいて二次元画像の抽出位置が特定される。従って、他の手法(例えば、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて抽出位置を特定する手法等)が用いられる場合に比べて、第1画像データと第2画像データのXY方向における二次元画像の抽出位置が、より正確に特定され易くなる。
【0072】
なお、画像データ(第1画像データと第2画像データ)に基づいて正面画像(第1正面画像および第2正面画像)を生成するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、画像データに含まれる複数のZ方向画像の各々について、Z方向に並ぶ複数の画素の画素値を加算(加算平均でもよい)することで、正面画像を生成してもよい。また、制御部は、画像データに含まれる複数のZ方向画像の各々のうち、特定の位置または範囲の画素値(例えば、画像データに写る層および境界のうち、特定の層の画素値、特定の境界の画素値、または特定の層・境界の範囲内の画素値等)に基づいて、正面画像(所謂Enface画像)を生成してもよい。この場合、制御部は、画像データに写る少なくともいずれかの層・境界を検出するセグメンテーション処理を実行し、セグメンテーション処理の結果に基づいて正面画像を生成してもよい。
【0073】
制御部は、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行うことで、XY方向における第1画像データおよび第2画像データにおける同一の抽出位置を特定してもよい。この場合、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行うことで、XY方向における全ての範囲で、第1画像データと第2画像データの生体組織上の位置が一致する。よって、第1画像データと第2画像データの各々の抽出位置が、より容易且つ正確に特定され易くなる。なお、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを行う場合、制御部は、第1正面画像と第2正面画像を重複させた状態で、2つの正面画像の間の相対的な位置および角度を変化させてもよい。制御部は、2つの正面画像の相関が最も高くなる位置および角度を探索することで、2つの正面画像の位置合わせを行ってもよい。
【0074】
また、制御部は、第1正面画像と第2正面画像の位置合わせを実際に行わずに、第1画像データおよび第2画像データにおける同一の抽出位置を特定することも可能である。例えば、制御部は、第1正面画像に写る生体組織と、第2正面画像に写る生体組織の位置ずれを算出し、算出した位置ずれに基づいて抽出位置を特定してもよい。
【0075】
なお、第1画像データと第2画像データの各々の二次元画像の抽出位置を特定するための方法を変更することも可能である。例えば、第1画像データを撮影する際に、第1画像データの撮影原理とは異なる原理で、第1画像データと同一の撮影位置の正面画像が撮影されてもよい。同様に、第2画像データを撮影する際に、第2画像データの撮影原理とは異なる原理で、第2画像データと同一の撮影位置の正面画像が撮影されてもよい。制御部は、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて、第1画像データと第2画像データの各々の二次元画像の抽出位置を特定してもよい。
【0076】
合成表示ステップでは、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像の各々に写る像の、Z方向における位置合わせが行われた状態で、第1二次元画像と第2二次元画像を合成して表示部に表示させてもよい。二次元画像に含まれる複数のZ方向画像(Z方向に延びる画像)の少なくとも一部には、例えば、撮影中の生体組織の動き、装置の振動等に起因して、Z方向における位置が正常な位置から外れているZ方向画像が含まれる場合がある。Z方向における位置が外れているZ方向画像が二次元画像に含まれた状態で、2つの二次元画像が合成されても、合成二次元画像によって生体組織の差異をユーザに把握させることは困難である。これに対し、像のZ方向における位置合わせが行われた状態で、合成二次元画像が表示されることで、第1二次元画像と第2二次元画像の各々の被写体を、合成二次元画像によってさらに適切に比較することができる。
【0077】
なお、制御部は、三次元画像である第1画像データと第2画像データの間で、Z方向における位置合わせを予め行った後に、第1二次元画像と第2二次元画像を抽出してもよい。この場合、抽出位置に関わらず、抽出された第1二次元画像と第2二次元画像のZ方向における相対位置が適切になる。
【0078】
なお、第1画像データと第2画像データの間のZ方向における位置合わせを行う方法も、適宜選択できる。例えば、制御部は、XY方向における撮影位置が一致する2つのZ方向画像(つまり、第1画像データ内のZ方向画像と、第2画像データ内のZ方向画像)の、Z方向における相対位置を変化させながら、2つのZ方向画像の相関が最も高くなった際の相関の値を探索してもよい。制御部は、探索された相関が最も高くなる場合のZ方向の変位に基づいて、2つのZ方向画像の位置合わせを行ってもよい。ここで、制御部は、第1画像データと第2画像データの間のZ方向における位置合わせを行う前に、第1画像データに含まれる複数のZ方向画像の間のZ方向における位置合わせと、第2画像データに含まれる複数のZ方向画像の間のZ方向における位置合わせを、予め行っておくことも可能である。この場合、撮影中の生体組織の動き等に起因して、Z方向における位置が正常な位置から外れている部分が存在していても、より高い精度でZ方向における位置合わせが行われ易くなる。
【0079】
ただし、制御部は、第1二次元画像と第2二次元画像を取得(例えば抽出等)した後で、第1二次元画像と第2二次元画像の間のZ方向における位置合わせを行うことも可能である。
【0080】
第1二次元画像と第2二次元画像は、同一の被検者の生体組織について撮影された画像であってもよい。第1二次元画像が撮影された日と、第2二次元画像が撮影された日が異なっていてもよい。この場合、第1二次元画像の撮影時と、第2二次元画像の撮影時の間の生体組織の経時的な変化が、適切に把握され易くなる。従って、生体組織の経過観察等が、より適切に行われ易くなる。
【0081】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の1つについて説明する。本実施形態では、OCT装置によって撮影された、被検眼Eの眼底組織の三次元画像の画像データを処理する場合を例示する。しかし、本開示の技術によって処理する対象となる画像は、眼底組織以外の組織の画像であってもよい。例えば、処理対象の画像は、被検眼Eの眼底以外の生体組織(例えば前眼部等)の画像であってもよいし、被検眼E以外の生体組織(例えば、皮膚、消化器、または脳等)の画像であってもよい。また、前述したように、処理対象の画像を撮影する撮影装置は、OCT装置に限定されない。
【0082】
図1を参照して、本実施形態の医療画像処理システム100の概略構成について説明する。本実施形態の医療画像処理システム100は、撮影装置1と医療画像処理装置40を備える。撮影装置(本実施形態ではOCT装置)1は、生体組織からの光を受光することで、生体組織の三次元画像を撮影する。医療画像処理装置40は、撮影装置1によって撮影された画像データの処理を実行する。本実施形態の医療画像処理装置40にはPCが用いられる。しかし、医療画像処理装置40として機能できるデバイスは、PCに限定されない。例えば、撮影装置(OCT装置)1またはサーバ等が、医療画像処理装置40として機能してもよい。撮影装置1が医療画像処理装置40として機能する場合、撮影装置1は、生体組織の三次元画像を撮影しつつ、撮影した三次元画像を適切に処理することができる。また、タブレット端末またはスマートフォン等の携帯端末が、医療画像処理装置40として機能してもよい。複数のデバイスの制御部(例えば、PCのCPUと、撮影装置1のCPU31)が、協働して各種処理を行ってもよい。
【0083】
本実施形態の撮影装置1の構成について説明する。撮影装置(OCT装置)1は、OCT部10と制御ユニット30を備える。OCT部10は、OCT光源11、カップラー(光分割器)12、測定光学系13、参照光学系20、および受光素子22を備える。
【0084】
OCT光源11は、画像データを取得するための光(OCT光)を出射する。カップラー12は、OCT光源11から出射されたOCT光を、測定光と参照光に分割する。また、本実施形態のカップラー12は、生体組織(本実施形態では被検眼Eの眼底)によって反射された測定光と、参照光学系20によって生成された参照光を合波して干渉させる。つまり、本実施形態のカップラー12は、OCT光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、測定光の反射光と参照光を合波する合波光学素子を兼ねる。なお、分岐光学素子および合波光学素子の少なくともいずれかの構成を変更することも可能である。例えば、カップラー以外の素子(例えば、サーキュレータ、ビームスプリッタ等)が使用されてもよい。
【0085】
測定光学系13は、カップラー12によって分割された測定光を被検体に導くと共に、生体組織によって反射された測定光をカップラー12に戻す。測定光学系13は、走査部(スキャナ)14、照射光学系16、およびフォーカス調整部17を備える。走査部14は、駆動部15によって駆動されることで、測定光の光軸に交差する二次元方向に測定光をスキャン(走査)させることができる。本実施形態では、互いに異なる方向に測定光を偏向させることが可能な2つのガルバノミラーが、走査部14として用いられている。しかし、光を偏向させる別のデバイス(例えば、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ、音響光学素子等の少なくともいずれか)が走査部14として用いられてもよい。照射光学系16は、走査部14よりも光路の下流側(つまり被検体側)に設けられており、測定光を生体組織に照射する。フォーカス調整部17は、照射光学系16が備える光学部材(例えばレンズ)を測定光の光軸に沿う方向に移動させることで、測定光のフォーカスを調整する。
【0086】
参照光学系20は、参照光を生成してカップラー12に戻す。本実施形態の参照光学系20は、カップラー12によって分割された参照光を反射光学系(例えば、参照ミラー)によって反射させることで、参照光を生成する。しかし、参照光学系20の構成も変更できる。例えば、参照光学系20は、カップラー12から入射した光を反射させずに透過させて、カップラー12に戻してもよい。参照光学系20は、測定光と参照光の光路長差を変更する光路長差調整部21を備える。本実施形態では、参照ミラーが光軸方向に移動されることで、光路長差が変更される。なお、光路長差を変更するための構成は、測定光学系13の光路中に設けられていてもよい。
【0087】
受光素子22は、カップラー12によって生成された測定光と参照光の干渉光を受光することで、干渉信号を検出する。本実施形態では、フーリエドメインOCTの原理が採用されている。フーリエドメインOCTでは、干渉光のスペクトル強度(スペクトル干渉信号)が受光素子22によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって複素OCT信号が取得される。フーリエドメインOCTの一例として、Spectral-domain-OCT(SD-OCT)、Swept-source-OCT(SS-OCT)等を採用できる。また、例えば、Time-domain-OCT(TD-OCT)等を採用することも可能である。
【0088】
また、本実施形態では、測定光のスポットが、走査部14によって二次元の領域内で走査されることで、三次元画像のデータが取得される。しかし、三次元画像のデータを取得する原理を変更することも可能である。例えば、ラインフィールドOCT(以下、「LF-OCT」という)の原理によって三次元画像のデータが取得されてもよい。LF-OCTでは、組織において一次元方向に延びる照射ライン上に測定光が同時に照射され、測定光の反射光と参照光の干渉光が、一次元受光素子(例えばラインセンサ)または二次元受光素子によって受光される。二次元の測定領域内において、照射ラインに交差する方向に測定光が走査されることで、三次元OCTデータが取得される。また、フルフィールドOCTの原理によって三次元画像のデータが取得されてもよい。フルフィールドOCTでは、被検体の組織上の二次元の領域に、測定光が同時に照射され、干渉光が二次元受光素子によって受光される。
【0089】
制御ユニット30は、撮影装置1の各種制御を司る。制御ユニット30は、CPU31、RAM32、ROM33、および不揮発性メモリ(NVM)34を備える。CPU31は各種制御を行うコントローラである。RAM32は各種情報を一時的に記憶する。ROM33には、CPU31が実行するプログラム、および各種初期値等が記憶されている。NVM34は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。撮影装置1が医療画像処理装置として機能する場合には、後述する医療画像処理(
図6参照)を実行するための医療画像処理プログラムがNVM34等に記憶されていてもよい。
【0090】
制御ユニット30には、モニタ37および操作部38が接続されている。モニタ37は、各種画像を表示する表示部の一例である。操作部38は、ユーザが各種操作指示を撮影装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部38には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、フットスイッチ等の種々のデバイスを用いることができる。なお、マイクに音が入力されることで各種操作指示が撮影装置1に入力されてもよい。
【0091】
医療画像処理装置40の概略構成について説明する。医療画像処理装置40は、CPU41、RAM42、ROM43、およびNVM44を備える。後述する医療画像処理(
図6参照)を実行するための医療画像処理プログラムは、NVM44に記憶されていてもよい。また、医療画像処理装置40には、モニタ47および操作部48が接続されている。モニタ47は、各種画像を表示する表示部の一例である。操作部48は、ユーザが各種操作指示を医療画像処理装置40に入力するために、ユーザによって操作される。操作部48には、撮影装置1の操作部38と同様に、マウス、キーボード、タッチパネル等の種々のデバイスを用いることができる。また、マイク46に音が入力されることで、各種操作指示が医療画像処理装置40に入力されてもよい。
【0092】
医療画像処理装置40は、撮影装置1から各種データ(例えば、撮影装置1によって撮影された画像データ等)を取得することができる。各種データは、例えば、有線通信、無線通信、および着脱可能な記憶装置(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって取得されればよい。
【0093】
(三次元画像)
図2から
図5を参照して、処理対象となる三次元画像の一例について説明する。
図2に示すように、本実施形態の撮影装置1は、生体組織50(
図2に示す例では、眼底組織)における二次元の撮影領域51内で、光(測定光)をスキャンする。詳細には、本実施形態の撮影装置1は、撮影領域51内の所定の方向に延びるスキャンライン52上で光をスキャンすることで、光の光軸に沿うZ方向と、Z方向に垂直なX方向に広がる二次元画像61(
図3参照)を撮影(取得)する。
図3に示す例では、Z方向は二次元の撮影領域51に対して垂直な方向(生体組織50の深さ方向)となり、X方向はスキャンライン52が延びる方向となる。次いで、撮影装置1は、スキャンライン52の位置を撮影領域51内でY方向に移動させて、二次元画像61の撮影を繰り返す。Y方向は、Z方向およびX方向に共に交差(本実施形態では垂直に交差)する方向となる。その結果、複数のスキャンライン52の各々を通過し、且つ生体組織50の深さ方向に広がる複数の二次元画像61が取得される。次いで、
図3に示すように、複数の二次元画像61が、Y方向(各々の二次元画像の画像領域に対して交差する方向)に並べられることで、撮影領域51における三次元画像60(
図4参照)が生成される。つまり、本実施形態の医療画像処理装置40によって処理される対象の画像データは、生体組織の深さ方向であるZ方向と、Z方向に交差する二次元のXY方向に広がる三次元画像の画像データである。
【0094】
図5に示すように、三次元画像を構成する複数の二次元画像61の1つに着目すると、各々の二次元画像61は、Z方向に延びる複数のZ方向画像62がX方向に並べられることで構成されている。一例として、本実施形態で処理される画像はOCT画像である。本実施形態では、OCT画像を構成する複数のAスキャン画像の各々が、Z方向画像とされる。前述したように、三次元画像は、複数の二次元画像61がY方向に並べられることで構成される。従って、本実施形態の医療画像処理装置40によって処理される対象の画像データは、Z方向に延びる複数のZ方向画像62が、Z方向に交差する二次元のXY方向に並べられた三次元画像の画像データとなる。
【0095】
(医療画像処理)
図6から
図12を参照して、本実施形態の医療画像処理装置40が実行する医療画像処理について説明する。本実施形態では、PCTである医療画像処理装置40が撮影装置1から生体組織の三次元画像の画像データを取得し、取得した画像データを処理する。しかし、前述したように、他のデバイスが医療画像処理装置として機能してもよい。例えば、撮影装置(本実施形態ではOCT装置)1自身が医療画像処理を実行してもよい。また、複数の制御部(例えば、撮影装置1のCPU31と、医療画像処理装置40のCPU41)が協働して医療画像処理を実行してもよい。本実施形態では、医療画像処理装置40のCPU41は、NVM44に記憶された医療画像処理プログラムに従って、
図6に示す医療画像処理を実行する。
【0096】
まず、CPU41は、撮影装置1によって撮影された第1画像データおよび第2画像データを取得する(S1)。第1画像データおよび第2画像データは、同一の被検者の生体組織が異なる時期に撮影されることで生成されている。第1画像データの撮影位置(撮影領域)と、第2画像データの撮影位置は、少なくとも一部において互いに重複している。仮に、第1画像データの撮影時と第2画像データの撮影時の間で、生体組織に何ら変化が無く、且つ、2つの画像データが共に高い精度で撮影されていれば、第1画像データと第2画像データの間で重複する撮影範囲内の画像は、同じ画像となる。一方で、第1画像データの撮影時と第2画像データの撮影時の間で、生体組織に経時的な変化が生じていれば、第1画像データと第2画像データの間で重複する撮影範囲のうち、変化が生じた部位の画像が異なることになる。
【0097】
例えば、ユーザは、操作部48を操作し、特定の被検者について異なる時期に撮影された複数の画像データの中から、経過観察等を行うために比較したい2つの画像データを第1画像データおよび第2画像データとして指定してもよい。CPU41は、ユーザによって指定された第1画像データおよび第2画像データを取得してもよい。
【0098】
本実施形態のS1では、互いに異なる日に撮影された2つの画像データが、第1画像データおよび第2画像データとして取得される。この場合、以下説明する処理が行われることで、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化が、適切に把握され易くなる。従って、生体組織の経過観察等が、より適切に行われ易くなる。ただし、S1では、同一の日の異なる時間に撮影された第1画像データと第2画像データが取得されてもよい。
【0099】
CPU41は、第1画像データによって示される三次元の第1画像60A(
図7参照)内の、複数のZ方向画像62(
図5参照)の位置合わせを実行する(S2)。つまり、CPU41は、第1画像データに含まれる複数のZ方向画像62の間の、Z方向における位置合わせを実行する。同様に、CPU41は、第2画像データによって示される三次元の第2画像60B(
図7参照)内の、複数のZ方向画像62の位置合わせを実行する(S3)。三次元の画像データ(第1画像データおよび第2画像データの各々)に含まれる複数のZ方向画像62の少なくとも一部には、撮影中の生体組織の動き、装置の振動等に起因して、Z方向における位置が正常な位置から外れている画像が含まれる場合がある。複数のZ方向画像62の間の位置合わせが、第1画像データおよび第2画像データの各々について予め行われることで、Z方向における位置が正常な位置から外れている画像の影響が抑制される。その結果、以後に行われる各種処理の精度、および、出力(表示)される画像の精度等が向上し易くなる。
【0100】
S2およびS3において、各々の画像データ内における複数のZ方向画像62の位置合わせを行うための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、CPU41は、三次元の画像(第1画像および第2画像の各々)に写る特定の層、または層の境界を検出し、検出された層または境界が特定の方向(例えば、XY平面に沿う方向)に沿って直線状に近づくように、複数のZ方向画像62の各々に写る像のZ方向における位置合わせを実行してもよい。また、CPU41は、複数のZ方向画像62の各々のうち、輝度が最大となる位置がZ方向において一致するように、複数のZ方向画像62の各々をZ方向に移動させてもよい。また、CPU23は、隣接するZ方向画像62同士の位置ずれの量を、位相限定相関法またはテンプレートマッチング等によって検出し、検出したずれ量が解消されるように、複数のZ方向画像62のZ方向における位置合わせを行ってもよい。
【0101】
また、三次元の画像(第1画像および第2画像の各々)に含まれる複数のZ方向画像62の間のZ方向の位置ずれ量には、画像の撮影中における生体組織の動きに起因する動き成分と、生体組織の形状に起因する形状成分が共に含まれる場合がある。この場合、CPU41は、S2およびS3の処理において、複数のZ方向画像62の間の位置ずれ量のうち、動き成分のみを解消させる処理(つまり、形状成分のみを残存させる処理)を行うことで、撮影中の生体組織の動きの影響を抑制してもよい。以上の処理には、例えば、特開2020-162886号公報に記載されている技術等を採用することが可能である。
【0102】
次いで、CPU41は、
図7に示すように、2つの三次元画像(第1画像60Aおよび第2画像60B)の各々に基づいて、撮影対象である生体組織をZ方向(本実施形態では、測定光の光軸に沿う方向)から見た場合の二次元の正面画像65A,65Bを生成する(S4,S5)。つまり、CPU41は、三次元の第1画像60Aに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第1正面画像65Aを生成する(S4)。また、CPU41は、三次元の第2画像60Bに基づいて、撮影対象をZ方向から見た場合の二次元の第2正面画像65Bを生成する(S5)。
【0103】
詳細は後述するが、本実施形態では、第1画像60Aと第2画像60Bの間の、XY方向における同一位置を特定するために、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bが用いられる。また、本実施形態では、第1画像60Aと第2画像60Bの各々から二次元画像を抽出する際に、第1画像60Aと第2画像60Bのうち、生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置を特定するために、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bが用いられる。つまり、本実施形態では、XY方向における同一の位置を特定する必要がある第1画像データと第2画像データ自体から正面画像65A,65Bが生成され、生成された正面画像65A,65Bに基づいて位置が特定される。従って、他の手法(例えば、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて位置を特定する手法等)が用いられる場合に比べて、第1画像データと第2画像データのXY方向における位置が、より正確に特定され易くなる。
【0104】
なお、三次元の画像(第1画像60Aと第2画像60B)に基づいて正面画像(第1正面画像65Aおよび第2正面画像65B)を生成するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、CPU41は、画像データに含まれる複数のZ方向画像62の各々について、Z方向に並ぶ複数の画素の画素値を加算(加算平均でもよい)することで、正面画像65A,65Bを生成してもよい。また、CPU41は、画像データに含まれる複数のZ方向画像62の各々のうち、特定の位置または範囲の画素値(例えば、画像データに写る層および境界のうち、特定の層の画素値、特定の境界の画素値、または特定の層・境界の範囲内の画素値等)に基づいて、正面画像65A,65B(所謂Enface画像)を生成してもよい。この場合、CPU41は、画像データに写る少なくともいずれかの層・境界を検出するセグメンテーション処理を実行し、セグメンテーション処理の結果に基づいて正面画像65A,65Bを生成してもよい。
【0105】
次いで、CPU41は、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bの位置合わせを行う(S6)。その結果、第1画像データと第2画像データについて、生体組織の撮影位置が互いに一致するXY方向の位置が特定される。つまり、本実施形態では、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bの位置合わせが行われることで、XY方向における共通の撮影領域の全ての範囲で、第1画像データと第2画像データの生体組織の撮影位置が一致する。よって、第1画像データと第2画像データのXY方向における位置が、より容易且つ正確に特定され易くなる。
【0106】
なお、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bの位置合わせを行う場合、CPU41は、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bを重複させた状態で、2つの正面画像65A,65Bの間の相対的な位置および角度を変化させてもよい。CPU41は、2つの正面画像65A,65Bの相関が最も強くなる位置および角度を探索することで、2つの正面画像65A,65Bの位置合わせを行ってもよい。また、画像局所特徴量(例えば、SIFT:Scale-Invariant Feature Transform)、または、回転不変位相限定相関等の手法が利用されることで、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bの位置合わせが行われてもよい。
【0107】
次いで、CPU41は、第1画像データおよび前記第2画像データの各々に含まれる複数のZ方向画像62のうち、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データのZ方向画像62Aと前記第2画像データのZ方向画像62Bの相関および変位(つまり、Z方向におけるずれ量)を、XY方向の各々の位置について取得する(S7)。XY方向の各位置のうち、第1画像データと第2画像データの間の差異が小さい位置(例えば、生体組織の変化が小さい位置等)では、生体組織の同一位置における2つのZ方向画像62間の相関が強くなる。一方で、XY方向の各位置のうち、第1画像データと第2画像データの間の差異が大きい位置(例えば、生体組織の変化が大きい位置等)では、生体組織の同一位置における2つのZ方向画像62間の相関が弱くなる。従って、XY方向の各々の位置について取得される相関の情報によると、第1画像データと第2画像データの間の差異(例えば、生体組織の経時的な変化等)が適切に把握される。
【0108】
図8を参照して、XY方向における同一位置のZ方向画像62A,62Bの間の相関および変位を取得する方法の一例について説明する。
図8に示すように、本実施形態では、CPU41は、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する第1画像データのZ方向画像62Aと第2画像データのZ方向画像62Bを特定する。前述したように、本実施形態では、第1画像データと第2画像データの間のXY方向における位置合わせが予め実行されている。従って、位置合わせの結果に基づいて、XY方向における生体組織の撮影位置が互いに一致する位置(
図8に示す例では位置(x,y))が、適切に特定される。次いで、CPU41は、撮影位置が一致する2つのZ方向画像62A,62Bの、Z方向における相対位置を変化させながら、2つのZ方向画像62A,62Bの相関が最も強くなった際の相関の値を探索する。CPU41は、探索された相関の最高値を、2つのZ方向画像62A,62Bの間の相関C(x,y)として取得する。さらに、CPU41は、2つのZ方向画像62A,62Bの相関が最も強くなった際の、2つのZ方向画像62A,62Bの間のZ方向における相対位置の変位dz(x,y)を取得する。以上の処理が、XY方向における複数の位置の各々について実行される。なお、相関の取得方法として、正規化相互相関、相関係数、位相相関等の少なくともいずれかが用いられてもよい。SSD(二乗誤差の総和)、またはSAC(絶対誤差の総和)等が相関として取得されてもよい。この場合、値が小さい程、2つのZ方向画像の類似度が高いことになる。
【0109】
次いで、CPU41は、S7においてXY方向の各位置で取得された変位(つまり、生体組織の同一位置における2つのZ方向画像62A,62Bの間の変位)に基づいて、第1画像データと第2画像データのZ方向における位置合わせを、各々のZ方向画像62毎に実行する(S8)。その結果、第1画像データと第2画像データの間の位置合わせが、より正確に行われ易くなる。
【0110】
次いで、CPU41は、XY方向の各々の位置について取得された相関の強さの、XY方向における二次元分布を示す類似度マップ70(
図9参照)の生成処理を実行し、生成した類似度マップ70を出力する(S9)。ユーザは、出力された類似度マップ70を確認することで、第1画像データと第2画像データの間の相関の強さの、XY方向における二次元分布を、直感的に把握することができる。例えば、ユーザは、出力された類似度マップ70を確認することで、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置を、適切に把握することも可能である。
【0111】
本実施形態のS9では、CPU41は、撮影された第1画像データおよび第2画像データの全体同士(つまり、少なくとも、第1画像データと第2画像データの間で重複する撮影領域の全体)で、XY方向の各々の位置の相関を取得する。従って、重複する画像の撮影領域の全体で、第1画像データと第2画像データの間の差異が適切に把握される。よって、ユーザによる診療等が、より適切に補助され易くなる。
【0112】
なお、類似度マップ70の出力方法は適宜選択できる。例えば、CPU41は、生成した類似度マップ70をモニタ(表示部)47に表示させることで、類似度マップ70を出力してもよい。この場合、CPU41は、類似度マップ70の各々の位置の色および明度等の少なくともいずれかを、相関の強さに応じて変化させることで、相関の強さの二次元分布を示してもよい。また、CPU41は、生成した類似度マップ70のデータを他のデバイスに出力してもよい。なお、CPU41は、XY方向の各々の位置について取得された相関の値に対して、平滑化処理、または、最小値フィルタを掛ける処理等を行ったうえで、類似度マップ70を表示させてもよい。この場合、第1画像データと第2画像データの間の差異が大きい位置が、より適切に類似度マップ70に表れやすくなる。
【0113】
また、CPU41は、乖離度マップと相関マップ70を、同時にまたは切り換えてモニタ47に表示させることも可能である。乖離度マップは、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルが、三次元画像に写る層および境界の少なくともいずれかを識別する際の、識別対象の層または境界が正確に識別される場合の確率分布に対する、取得された確率分布の乖離度の二次元分布を示す。この場合、CPU41は、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方(例えば、直近に撮影されたデータ等)を、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに入力することで、入力された三次元画像に写る眼底組織における層および境界の少なくともいずれかを識別するための確率分布を取得する。CPU41は、取得した確率分布に基づいて乖離度マップを生成する。前述したように、乖離度マップには、層・境界の構造の異常度が表れやすい。また、相関マップ70によると、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置等が適切に把握され易い。従って、乖離度マップと相関マップ70が同時に、または切り換えてモニタ47に表示されることで、ユーザは、被検者の生体組織の状態をより適切に把握し易くなる。なお、乖離度の取得方法、および乖離度マップの生成方法等については、例えば、特開2020-18794号公報に記載の技術等を採用できる。
【0114】
また、CPU41は、厚みマップと相関マップ70を、同時にまたは切り換えてモニタ47に表示させることも可能である。厚みマップは、三次元画像に写る層および境界のうち、少なくともいずれかの層の厚みについての解析結果の二次元分布を示す。この場合、CPU41は、第1画像データおよび第2画像データの少なくとも一方に基づいて厚みマップを生成する。厚みマップによると、生体組織の層の厚みの分布が適切に把握される。また、前述したように、相関マップ70によると、生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高いXY方向の位置等が適切に把握され易い。従って、厚みマップと相関マップ70が同時に、または切り換えてモニタ47に表示されることで、ユーザは、被検者の生体組織の状態を、より適切に把握し易くなる。
【0115】
CPU41は、XY方向の各々の位置について取得された複数の相関の統合値を算出し、算出した相関の統合値を出力する(S10)。ユーザは、出力される相関の統合値によって、第1画像データと第2画像データの差異を適切に把握することができる。例えば、ユーザは、相関の統合値によって、第1画像データの撮影時と第2画像データの撮影時の間の、生体組織の全体的な経時変化の程度を把握することも可能である。また、相関の統合値によって、Z方向画像62同士の相関が取得された際の、第1画像データと第2画像データの位置合わせの正確性を評価することも可能である。また、第1画像データと第2画像データの少なくとも一方の撮影の精度が低ければ、相関の統合値は低くなる。従って、相関の統合値によって、画像の撮影精度を評価することも可能である。例えば、CPU41は、第2画像データが新たに撮影された場合に、第1画像データと第2画像データの相関の統合値が閾値未満であれば、第2画像データの撮影精度が低いと判断し、第2画像データの再撮影の指示を出力してもよい。
【0116】
なお、算出された相関の統合値の出力方法も適宜選択できる。本実施形態では、CPU41は、複数の相関の平均値を統合値として算出する。しかし、複数の相関の中央値、最大値、最小値等を算出することで、複数の相関の値を統合することも可能である。CPU41は、算出された相関の統合値そのもの、または、相関の都合値の高さを示す指標(例えば、算出された相関の統合値の高さが、複数の段階のうちいずれの段階に該当するかを示す指標)等を、表示部への表示、および音声等の少なくともいずれかによって出力してもよい。また、CPU41は、値が閾値を超えた相関、または、値が閾値未満となった相関の数または割合等を、統合値として算出してもよい。
【0117】
次いで、CPU41は、二次元画像表示処理(S11)を実行し、処理を終了する。二次元画像表示処理では、CPU41は、三次元の第1画像データおよび第2画像データを処理することで、ユーザによる診療等に有用な二次元画像をモニタ47に表示させることができる。特に、本実施形態では、CPU41は、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に共通して写る生体組織中の同一の位置から、二次元画像(つまり、
図12に示す第1二次元画像61Aと第2二次元画像61B)を自動的に抽出することができる。CPU41は、同一位置から抽出した第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを位置合わせした状態(つまり、重ねた状態で)で合成することで、合成二次元画像69(
図12参照)を生成し、モニタ47に表示させることができる。
【0118】
図10を参照して、二次元画像表示処理について詳細に説明する。まず、第1画像データと第2画像データの間の相関が弱い位置の二次元画像を自動的に抽出して表示させる処理(S21~S23,S33~S38)について説明する。
【0119】
CPU41は、XY方向に広がる第1画像データと第2画像データの撮影範囲のうち、S7(
図6参照)で取得された相関が最も弱い位置(つまり、類似度マップ70上で相関が最も弱い位置55)を含む位置に、二次元画像61の抽出位置を自動設定する(S21)。この場合、ユーザは、自動設定された抽出位置の二次元画像61を確認することで、第1画像データと第2画像データの相関が最も弱い位置の生体組織の状態(例えば、生体組織の経時的な変化等)を、二次元画像61によって適切に把握することができる。
【0120】
図11に示すように、本実施形態では、CPU41は、XY方向に広がる二次元の類似度マップ70上で、ライン状の抽出位置75を設定する。
図11に示す例では、直線のライン状の抽出位置75が自動設定されている。しかし、抽出位置75を示すラインの形状には、直線以外の形状(例えば、曲線状、環状等)が採用されてもよい。
図11に示す例では、CPU41は、相関が最も弱い位置55と、画像上の基準位置56(
図11では黄斑中心)を共に通過する直線状の位置に、抽出位置75を自動設定する。この場合、CPU41は、三次元画像および正面画像の少なくともいずれかに対して、公知の画像処理を行うことで、画像上の基準位置56を検出してもよい。また、CPU41は、所定の形状(例えばライン状等)の抽出位置における相関の累積値が最も低くなる位置を探索し、探索された位置を抽出位置として自動設定してもよい。また、CPU41は、相関が最も弱い位置を中心とし、且つ所定方向(例えば、X方向またはY方向等)に延びる直線状の位置に、抽出位置を自動設定してもよい。
【0121】
CPU41は、第1画像データのうち、S21で自動設定された抽出位置75を通過し、且つZ方向に広がる第1二次元画像61A(
図12参照)を、第1画像データから抽出する(S22)。また、CPU41は、第2画像データのうち、S21で自動設定された抽出位置75を通過し、且つZ方向に広がる第2二次元画像61B(
図12参照)を、第2画像データから抽出する(S23)。つまり、S22,S23では、CPU41は、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に写る生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置75から二次元画像61A,61Bを抽出する。
【0122】
前述したように、本実施形態では、XY方向における同一の抽出位置75を特定する必要がある第1画像データと第2画像データ自体から正面画像65A,65Bが生成され、生成された正面画像65A,65Bに基づいて、二次元画像61A,61Bの各々の抽出位置75が特定される。従って、他の手法(例えば、第1画像データおよび第2画像データの撮影原理とは異なる原理で撮影された正面画像に基づいて抽出位置を特定する手法等)が用いられる場合に比べて、第1画像データと第2画像データのXY方向における二次元画像61A,61Bの抽出位置が、より正確に特定され易くなる。
【0123】
前述したように、本実施形態では、第1正面画像65Aと第2正面画像65Bの位置合わせが行われることで、XY方向における第1画像データおよび第2画像データにおける同一の抽出位置75が特定される。その結果、XY方向において共通する撮影領域内の全ての範囲で、第1画像データと第2画像データのXY方向における生体組織上の位置が一致する。よって、第1画像データと第2画像データの各々の抽出位置75が、より容易且つ正確に特定され易くなる。
【0124】
CPU41は、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの各々に写る像の、Z方向における位置合わせが行われた状態で、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを合成してモニタ47に表示させる。従って、XY方向の同一の抽出位置75から抽出された第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bが、Z方向における位置合わせも行われた状態で合成表示される。よって、ユーザは、合成二次元画像69を確認することで、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの各々の被写体を、さらに適切に比較することができる。なお、本実施形態では、CPU41は、三次元画像である第1画像データと第2画像データの間で、Z方向における位置合わせを予め行った後に、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを抽出する。従って、抽出位置に関わらず、抽出された第1二次元画像61Aと第2二次元画像61BのZ方向における相対位置が適切になる。
【0125】
抽出された個々の二次元画像61A,61Bを表示させる設定が行われている場合(S33:YES)、CPU41は、S22,S23で抽出された第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを、並べて、または切り換えてモニタ47に表示させる(S34)。この場合、ユーザは、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に写る生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置の二次元画像61A,61Bを、適切に比較することができる。従って、生体組織の経時的な変化等が、2つの二次元画像61A,61Bを比較することで適切に把握され易くなる。
【0126】
合成二次元画像69(
図12参照)を表示させる設定が行われている場合(S35:YES)、CPU41は、同一位置から抽出した第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを位置合わせした状態で合成することで、合成二次元画像69を生成し、モニタ47に表示させる(S36)。ユーザは、モニタ47に表示された合成二次元画像69を確認することで、生体組織中の撮影位置が共通する第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの各々の被写体を、より適切に比較することができる。
【0127】
合成二次元画像69をモニタ47表示させる方法について、詳細に説明する。本実施形態では、CPU41は、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bを、互いに異なる色で合成して表示させる。その結果、1つの合成二次元画像69において、第1二次元画像61Aに写る被写体と、第2二次元画像61Bに写る被写体が、異なる色で表示される。従って、ユーザは、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの各々に写る生体組織の差異(例えば、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化等)を、合成二次元画像69によってさらに適切に把握することができる。
【0128】
また、CPU41は、合成二次元画像69のうち、被写体が写らない背景の画素の色(背景色)を、黒色または白色とする。第1二次元画像61Aにおいて被写体が写る部位の画素の色を、第1色とする。第2二次元画像61Bにおいて被写体が写る部位の画素の色を、第2色とする。CPU41は、合成二次元画像69を表示させる際に、第1色と第2色の組み合わせを、2つの色が合成された場合に背景色(黒色または白色)とは逆の色となる組み合わせに設定する。その結果、第1二次元画像61Aの被写体と第2二次元画像61Bの被写体が重なる位置では、背景色とは逆の色(白色または黒色)で被写体が表現される。つまり、第1二次元画像61Aの被写体と第2二次元画像61Bの被写体が重なる位置では、被写体がグレースケールで表現される。さらに、第1二次元画像61Aの被写体と第2二次元画像61Bの被写体が重ならない位置では、第1二次元画像61Aの被写体は第1色で表現され、且つ、第2二次元画像61Bの被写体は第2色(第1色とは異なる色)で表現される。その結果、第1二次元画像61Aの被写体と第2二次元画像61Bの被写体が重ならない位置では、グレースケールではなく、カラーの第1色と第2色によって、各々の二次元画像61A,61Bの被写体が適切に把握される。従って、ユーザは、第1二次元画像61Aの被写体のみが写る部位、第2二次元画像61Bの被写体のみが写る部位、第1二次元画像61Aの被写体と第2二次元画像61Bの被写体が重なる部位、および背景部位の各々を、直感的に把握することが可能である。
【0129】
換言すると、第1色と第2色の合成色が、背景と反対の色にならない場合には、第1色、第2色、および合成色の3つの色が、合成二次元画像に含まれることになる。この場合、被写体の視認性が低下し易い。例えば、第1色を赤、第2色を緑とすると、赤と緑の合成色である黄色も合成二次元画像69に含まれることになる。これに対し、第1色と第2色の合成色を、背景色とは逆の色とすることで、2つの被写体が重なる位置がグレースケールで示されることになり、被写体の視認性が向上し易くなる。
【0130】
一例として、CPU41は、背景色を黒色とする場合には、全ての色が合成された際に白色となる光の三原色(Red,Green,Blue)のうち、2つの原色の合成色を第1色および第2色の一方とし、残りの1つの原色を他方の色とする。また、CPU41は、背景色を白色とする場合には、全ての色が合成された際に黒色となる色材の三原色(Cyan,Magenta,Yellow)のうち、2つの原色の合成色を第1色および第2色の一方とし、残りの1つの原色を他方の色とする。ただし、第1色と第2色の組み合わせを変更することも可能である。
【0131】
また、CPU41は、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの類似度の二次元分布を示す二次元画像類似度マップをモニタ47に表示させることも可能である。二次元画像類似度マップを生成する場合、CPU41は、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの各々を構成する複数の部分画像(例えば画素等)のうち、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bが位置合わせされた結果同一位置となる部分画像間の類似度を、各位置の部分画像について算出する。CPU41は、各位置の部分画像について算出された類似度に基づいて、二次元画像類似度マップを生成する。二次元画像類似度マップを表示させる設定が行われている場合(S37:YES)、CPU41は、二次元画像類似度マップを生成してモニタ47に表示させる(S38)。その後、処理はS26へ移行する。ユーザは、出力された二次元画像類似度マップを確認することで、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの位置合わせが行われた場合の類似度の分布を、直感的に把握することができる。従って、ユーザは、第1画像データの撮影時と、第2画像データの撮影時の間の生体組織の経時的な変化を、より適切に把握することができる。
【0132】
二次元画像類似度マップを生成するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、公知のSSIM(Structural Similaryty)が利用されることで、二次元画像類似度マップが生成されてもよい。この場合、複数の画素を含む小領域内でSSIMが算出される。2つの小領域の相対位置をずらしながら、複数のSSIMが算出され、算出された複数のSSIMの平均値等が類似度とされる。その結果、同一位置の一対の部分画像の情報(例えば、輝度およびコントラスト等)に加えて、周囲の部分画像の情報も用いられるので、画像の構造の差の評価も可能となる。また、公知のDPマッチングの手法が用いられることで、二次元画像類似度マップが生成されてもよい。この場合、二次元画像61A,61Bに写る被写体の変化(例えば、層の厚みの変化等)が、さらに把握され易くなる。
【0133】
次に、第1二次元画像61Aと第2二次元画像61Bの抽出位置75を、ユーザによって入力される指示に応じて設定し、設定した抽出位置の二次元画像を表示させる処理(S26~S30,S33~S38)について説明する。
【0134】
CPU41は、処理を終了させる指示が入力されていなければ(S26:NO)、CPU41は、モニタ47に表示させた類似度マップ70(
図9および
図11参照)上で二次元画像61A,61Bの抽出位置が指定されたか否かを判断する(S27)。指定されていなければ(S27:NO)、S26,S27の判断が繰り返されて待機状態となる。処理を終了させる指示が入力されると(S26:YES)、医療画像処理は終了する。
【0135】
本実施形態では、CPU41は、モニタ47に表示出力された類似度マップ70上で、ユーザによる二次元画像61A,61Bの抽出位置の指定指示を受け付ける。一例として、本実施形態では、二次元の類似度マップ70上で、ライン状の抽出位置75をユーザに指定させることで、抽出位置75の指定指示が受け付けられる。ユーザは、操作部48を操作することで、ライン状の抽出位置75を指定する。前述したように、抽出位置75を示すラインの形状には、直線状、曲線状、環状等の種々の形状を採用できる。複数の抽出位置75が指定されてもよいことは言うまでもない。
【0136】
類似度マップ70上で二次元画像61A,61Bの抽出位置が指定されると(S27:YES)、CPU41は、類似度マップ70上で指定された位置に抽出位置75を設定する(S28)。CPU41は、前述したS22の処理と同様に、第1画像データのうち、S28で設定された抽出位置75を通過し、且つZ方向に広がる第1二次元画像61A(
図12参照)を、第1画像データから抽出する(S29)。また、CPU41は、前述したS23の処理と同様に、第2画像データのうち、S28で設定された抽出位置75を通過し、且つZ方向に広がる第2二次元画像61B(
図12参照)を、第2画像データから抽出する(S30)。つまり、S29,S30では、CPU41は、第1画像データと第2画像データの各々のうち、画像に写る生体組織中の位置が互いに共通する同一の抽出位置75から二次元画像61A,61Bを抽出する。その後、S33~S38の処理が実行される。この場合、ユーザは、類似度マップ70によって示される第1画像データと第2画像データの相関の強さの二次元分布を把握したうえで、適切な位置の二次元画像(第1二次元画像61Aおよび第2二次元画像61Bの少なくとも一方)を表示させることができる。例えば、類似度マップ70によって示される相関が弱い位置では、第1画像データと第2画像データの間で、画像の写る生体組織の経時的な変化が大きい可能性が高い。従って、ユーザは、類似度マップ70のうち相関が弱い位置に抽出位置75を指定することで、生体組織の経時的な変化を二次元画像によって適切に把握することも可能である。
【0137】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。まず、上記実施形態で例示された処理の一部のみを実行することも可能である。例えば、CPU41は、第1画像データと第1画像データの相関(例えば類似度マップ70等)の出力処理を実行せずに、合成二次元画像69を表示させる処理を実行してもよい。この場合、第1二次元画像75と第2二次元画像の抽出位置75は、類似度マップ70上で指定されなくてもよい。例えば、CPU41は、正面画像65A,65B上で、ユーザによる抽出位置75の指定指示を受け付けてもよい。また、CPU41は、合成二次元画像69を表示させる処理を実行せずに、第1画像データと第1画像データの相関の出力処理を実行してもよい。この場合、CPU41は、第1二次元画像61Aおよび第2二次元画像61Bの一方のみを画像データから抽出して表示させてもよい。
【0138】
以下、本開示の第1態様の各ステップを、上記実施形態の処理と対応させる。
図6のS1で画像データを取得する処理は、「画像データ取得ステップ」の一例である。
図6のS7で相関を取得する処理は、「相関取得ステップ」の一例である。
図6のS9,S10で相関を処理して出力する処理は、「相関出力ステップ」の一例である。
図10のS27で二次元画像の抽出位置の指定指示を受け付ける処理は、「抽出位置受付ステップ」の一例である。
図10のS22,S23,S29,S30,S33~S36で二次元画像を抽出して表示させる処理は、「抽出表示ステップ」の一例である。
図10のS21で二次元画像の抽出位置を自動設定する処理は、「抽出位置自動設定ステップ」の一例である。
図6のS4で第1正面画像を生成する処理は、「第1正面画像生成ステップ」の一例である。
図6のS5で第2正面画像を生成する処理は、「第2正面画像生成ステップ」の一例である。
図6のS2で第1画像データ内のZ方向における位置合わせを行う処理は、「第1画像内位置合わせステップ」の一例である。
図6のS3で第2画像データ内のZ方向における位置合わせを行う処理は、「第2画像内位置合わせステップ」の一例である。
【0139】
本開示の第2態様の各ステップを、上記実施形態の処理と対応させる。
図10のS22,S23,S29,S30で二次元画像を取得する処理は、「二次元画像取得ステップ」の一例である。
図10のS36で合成二次元画像を表示させる処理は、「合成表示ステップ」の一例である。
図6のS1で画像データを取得する処理は、「画像データ取得ステップ」の一例である。
図10のS21,S28で二次元画像の抽出位置を設定する処理は、「抽出位置設定ステップ」の一例である。
図10のS38で二次元画像類似度マップを出力する処理は、「二次元画像類似度マップ出力ステップ」の一例である。
図6のS4で第1正面画像を生成する処理は、「第1正面画像生成ステップ」の一例である。
図6のS5で第2正面画像を生成する処理は、「第2正面画像生成ステップ」の一例である。
【0140】
1 撮影装置(OCT装置)
40 医療画像処理装置
41 CPU
44 NVM
47 モニタ
48 操作部
50 生体組織
61A 第1二次元画像
61B 第2二次元画像
62 Z方向画像
65A 第1正面画像
65B 第2正面画像
69 合成二次元画像
70 類似度マップ
75 抽出位置