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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146329
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】建物の床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E04F15/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059163
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】396015046
【氏名又は名称】株式会社エス・アイ・ルネス
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】八田 徹也
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA39
2E220AA51
2E220AC03
2E220CA03
2E220CA04
2E220FA13
(57)【要約】
【課題】逆梁大引床構造が適用される集合住宅の現地でビーム部材を連結してダブルビームを製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように予め貫通孔の位置を設定して、ダブルビームの製作を行うこと。
【解決手段】逆梁大引床構造の大引の少なくとも一部がダブルビームにより構成される場合において、当該ダブルビームを構成する2本の長さLのビーム部材51の夫々において、第1方向に対して所定ピッチ毎に、連結部材が貫通する貫通孔50が形成される際に、当該貫通孔50の個数N個(Nは2以上の整数値)は式(1)で規定される。また、貫通孔50の、第1方向のビーム部材51の端部から1つ目までのピッチL1は式(2)により規定される。
N=L÷100―1(小数点は切り捨て)・・・(1)
L1=(L―100×N)÷2<100・・・(2)
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの上面に複数の逆梁が間隔を存して突設されている状態で、互いに対向する逆梁間の第1方向に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設される建物の床構造であって、
前記第1方向に互いに並列される2本のビーム部材が、前記第1方向と略直角の第2方向に貫通する連結部材により連結されたものをダブルビームと呼び、
前記大引の少なくとも一部が前記ダブルビームにより構成される場合において、
当該ダブルビームを構成する長さLの前記2本のビーム部材の夫々において、
前記第1方向に対して所定ピッチ毎に、前記連結部材が貫通する貫通孔が形成される際に、
当該貫通孔の個数N個(Nは2以上の整数値)は式(1)で規定され、
当該式(1)で前記貫通孔の前記個数N個が規定されると、前記貫通孔の、前記第1方向の前記ビーム部材の端部から1つ目までのピッチL1は式(2)により規定される、
N=L÷100―1(小数点は切り捨て)・・・(1)
L1=(L―100×N)÷2<100・・・(2)
建物の床構造。
【請求項2】
第1条件又は第2条件を満たすことから前記ビーム部材を1本で使用した際に限界たわみ量を超えてしまう場合において、スパンの1/500以下かつ10mm以内という規定値に抑えるために、前記ダブルビームが採用される、
建物の床構造であって、
第1条件は、標準のビーム配置における大引最大ピッチが600mmである場合において、スパンと呼ばれる大引支点間距離が3、700mmを超えるという条件であり、
第2条件は、前記床材の開口部の縦方向と横方向のうち少なくとも一方の空き寸法が、外周のビーム芯間距離にて1,200mmを超えるという条件である、
請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記2本のビーム部材の間に、樹脂製のダブルビームスペーサが挟み込まれ、前記貫通孔に前記連結部材が貫通されて、当該2本のビーム部材が結合することで前記ダブルビームが構成される、
請求項1に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スラブの上面に複数の逆梁が間隔を存して突設されている状態で、互いに対向する逆梁間に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設される建物の床構造(以下、「逆梁大引床構造」と呼ぶ)において、大引としてΣ状のビーム部材が採用されている。そして、床荷重が大きくかかる箇所の大引には、2つのビーム部材を背中合わせして連結させたもの(以下、「ダブルビーム」と呼ぶ)が採用されている。具体的には、2つのビーム部材の夫々には複数の貫通孔が形成されており、当該貫通孔に対して連結部材が挿入されて固定されることにより、ダブルビームが構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2990425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、逆梁大引床構造が適用される集合住宅においては、1室の専有部面積が限られており、長いΣ状のビーム部材を振り回さなければならない行為は著しく作業効率を下げることとなる。そのため、現地でビーム部材を連結してダブルビームを製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように予め貫通孔の位置を設定して、ダブルビームの製作を行うことが要望されている。
しかしながら、特許文献1を含め従来の技術では、このような要望に十分に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、逆梁大引床構造が適用される集合住宅の現地でビーム部材を連結してダブルビームを製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように予め貫通孔の位置を設定して、ダブルビームの製作を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の建物の床構造は、
スラブの上面に複数の逆梁が間隔を存して突設されている状態で、互いに対向する逆梁間の第1方向に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設される建物の床構造であって、
前記第1方向に互いに並列される2本のビーム部材が、前記第1方向と略直角の第2方向に貫通する連結部材により連結されたものをダブルビームと呼び、
前記大引の少なくとも一部が前記ダブルビームにより構成される場合において、
当該ダブルビームを構成する前記2本のビーム部材の夫々において、
前記第1方向に対して所定ピッチL毎に、前記連結部材が貫通する貫通孔が形成される際に、
当該貫通孔の個数N個(Nは2以上の整数値)は式(1)で規定され、
当該式(1)で前記貫通孔の前記個数N個が規定されると、前記貫通孔の、前記第1方向の前記ビーム部材の端部から1つ目までのピッチL1は式(2)により規定される、
N=L÷100―1(小数点は切り捨て)・・・(1)
L1=(L―100×N)÷2<100・・・(2)
建物の床構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、逆梁大引床構造が適用される集合住宅の現地でビーム部材を連結してダブルビームを製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように予め貫通孔の位置を設定して、ダブルビームの製作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】逆梁大引床構造を適用した集合住宅の一部破断平面図である。
図2図1の2-2線に沿う断面図である。
図3】ビーム部材のスパン(大引支点間距離)とピッチ(大引最大pich)との関係を例示した表を示す図である。
図4】床の開口部におけるビーム部材の補強を説明するための図である。
図5】開口部の大きさによる必要なビーム部材の数の表を示す図である。
図6図2の部分Gの拡大図である。
図7】大引を構成するダブルビーム及びダブルビームスペーサの構成例を示す図である。
図8】ビーム部材の両端部からの1つ目までのピッチを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
まず、図1乃至図4を参照して、逆梁大引床構造を適用した本発明の床下構造の一実施形態について説明する。
図1は、逆梁大引床構造を適用した集合住宅の一部破断平面図である。図2は、図1の2-2線に沿う断面図である。
【0010】
図1及び図2において、逆梁構造のコンクリート躯体Fは、集合住宅の骨格を構成するものであり、水平方向に延びて、建物を複数の階層に区画する水平躯体部分Fhと、鉛直方向に延びて上下の水平躯体部分Fhを相互に連結する鉛直躯体部分Fvとを備えている。
【0011】
水平躯体部分Fhにより仕切られる各階層には、複数戸の住宅空間Hが並設され、各住宅空間Hは、その四隅にそれぞれ立設されて上下の床スラブSfを結合する躯体柱1と、対向する躯体柱1間を一体に結合する、躯体外壁2及び躯体隔壁3(耐力壁3)により仕切られる。
【0012】
水平躯体部分Fhを構成する床スラブSfには、各住宅空間Hの床下空間Hdを区画する縦、横の逆大梁5L,5Tが床スラブSfから上向きに一体に突設されている。これらの縦、横の逆大梁5L,5T上に、躯体隔壁3及び躯体外壁2の下端が一体に結合されている。また、それらの逆大梁5L,5Tは、住宅空間Hの四隅に位置する躯体柱1に一体に結合される。
【0013】
各住宅空間Hにおいて、床スラブSf上には、逆大梁5L,5Tよりも低い縦、横の逆小梁6L,6Tが上向きに一体に突設されている。これらの縦、横の逆小梁6L,6Tは互いに交差して、それらの端部は、横、縦の逆大梁5T,5Lの中間部にそれぞれ一体に連結されている。
【0014】
この他、住宅空間Hの外側、例えば並列する複数戸の住宅空間Hの一方の躯体外壁2(図1、左側)の外側には、通路7が構築され、またそれらの他方の躯体外壁2(図1、右側)の外側には、ベランダ8が構築されている。
【0015】
各住宅空間Hの縦横の逆大梁5L,5Tと、縦横の逆小梁6L,6T間には、床構造体Frが支持され、この床構造体Frにより、住宅空間Hは、床下空間Hd(物入れ空間Hd)と、床上空間Hu(居住空間Hu)とに画成される。
【0016】
床構造体Frは、図6に示すように、複数本の大引10と、それらの上にそれらと直交して支持される複数本の根太11と、それらの根太11上に敷設される木質系のフローリング板等よりなる床板12とより一体的に構成されている。該床板12は、下地材上に仕上材を一体に積層して構成されている。
根太11は、木製のものを根太木といい、鋼製のものを鋼製根太という。鋼製根太の場合は、大引10との間にゴム部材等の緩衝材(防音及び防振材)を介在させることが好ましい。大引10は、例えば防錆性の亜鉛鉄板を断面Σ状に屈曲加工して形成したものをΣビームと呼ぶ。
【0017】
図1に示すように、各住宅空間Hは平面長方形状に形成され、その長手方向と直交する方向、すなわち該住宅空間Hの幅方向において、縦の逆大梁5Lと縦の逆小梁6Lとの比較的短いスパン間に、複数本の大引10がそれぞれ橋架支持される。
図2に示すように、縦の逆大梁5Lの側部には、逆小梁6L,6Tと略同じレベルの打増部すなわち床支持部14が段状に一体に成形(縦の逆大梁5Lの型枠による成形時に同時に一体成形)されている。
この床支持部14と縦の逆小梁6Lの上面との間に、複数本の大引10の端部が、アジャスター式床下支持金具FSを介してフローティング支持される。
【0018】
このような図1及び図2で示す逆梁大引床構造においては、二重床を構成する大引10は、Σの形状をした溶融亜鉛メッキ鋼材(以下、「ビーム部材」と呼ぶ)から形成されている。
ビーム部材は、定型鋼材であり、その鋼材の持つ断面性能により、スパン(大引支点間距離)とピッチ(大引最大pich)の関係に従属し、床に生じるたわみ量が決定する。
集合住宅の専有部におけるプランニング上、下記の第1ケース又は第2ケースによりビーム部材を1本で使用した際に限界たわみ量を超えてしまうことがある。
このような場合、大引10として、2つのビーム部材が背中合わせに連結されたダブルビームを採用して、限界たわみ量を規定値に抑えるように計画する必要がある。ここで、限界たわみ量の規定値とは、スパンの1/500以下かつ10mm以内である。
【0019】
第1ケースについて、図3を参照して説明する。
図3は、ビーム部材のスパン(大引支点間距離)とピッチ(大引最大pich)の関係を示す図である。
図3(A)は、大引10を1つのビーム部材で構成した場合(Σビームシングルの場合)の、スパン(大引支点間距離)とピッチ(大引最大pich)の関係を示す図である。
図3(B)は、大引10をダブルビームで構成した場合(Σビームダブルの場合)の、スパン(大引支点間距離)とピッチ(大引最大pich)の関係を示す図である。
第1ケースとは、図3(A)の関係が成立する場合、標準のビーム部材の配置におけるピッチ(600mm)においてスパン(大引支点間距離)が3,700mmを超えるときに、大引10を1つのビーム部材で構成すると限界たわみ量を超えてしまうため、当該ビーム部材10はダブルビームを採用する必要があるというケースである。
【0020】
第2ケースについて、図4を参照して説明する。
図4は、床の開口部におけるビーム部材の補強を説明するための図である。
図4(A)は、床の開口部の概念を示す図である。
図1及び図2に示す住宅空間Hのうち、床下空間Hdを物入れ空間として居住者が利用するためには、図4(A)に示すように、床上空間Hu(居住空間)から当該床下空間Hdに進入可能な開口部Kが必要になる。
開口部Kは、図4(A)に示す空き寸法L2×空き寸法L3の長方形(L2=L3ならば正方形)状に床に形成される。
図4(A)の縦方向の空き寸法L2は、2本のサイドビーム部材10Sの間に、当該サイドビーム部材10Sと平行に0本以上のセンタービーム部材10Cを挿入することで形成される。
図4(A)の横方向の空き寸法L3は、2本のサイドビーム部材10Sの間に、当該サイドビーム部材10Sと垂直に2本の補助ビーム部材10Hを離間して配置させることで形成される。
具体的には例えば、互いに直交する補助ビーム部材10Hとサイドビーム部材10S(又はセンタービーム部材10C)とが、図示せぬ専用ブラケットにて固定されることにより、開口部Kが形成される。
ここで、図4(B)に示すように、補助ビーム部材10Hとサイドビーム部材10Sとの間には実際には隙間が10mm存在するため、補助ビーム部材10Hの実寸A2は、内寸A1に対して、「実寸A2=内寸A1―2×10」の関係があることに注意が必要である。
図5は、開口部の大きさによる必要なビーム部材の数の表を示す図である。
図5に示すように、縦方向の空き寸法L2が1,200mmを超える場合には、サイドビーム部材10Sを1つのビーム部材で構成すると限界たわみ量を超えてしまうため、当該サイドビーム部材10Sはダブルビームを採用する必要がある。
また、図5に示すように、横方向の空き寸法L3が1,200mmを超える場合には、補助ビーム部材10Hを1つのビーム部材で構成すると限界たわみ量を超えてしまうため、当該補助ビーム部材10Hはダブルビームを採用する必要がある。
以上まとめたものが、第2のケースである。
即ち、縦方向の空き寸法L2又は横方向の空き寸法L3とは、相対する2つのビーム部材10(縦方向の空き寸法L2ならば2つのサイドビーム部材10Sであり、横方向の空き寸法L3ならば2つの補助ビーム部材10Hである)の芯間距離を示していえる。そこで、以下、このような芯間距離を「外周のビーム芯間距離」と呼ぶものとする。
この場合、縦方向と横方向のうち少なくとも一方の空き寸法が、外周のビーム芯間距離にて1,200mmを超える場合には、ビーム部材を1つのビーム部材で構成すると限界たわみ量を超えてしまうため、当該ビーム部材はダブルビームを採用する必要があるというケースが、第2ケースである。
【0021】
以上の図3乃至図5を用いて説明したダブルビームの必要性についてまとめると、次のようになる。
即ち、第1ケースを第1条件として、第2ケースを第2条件とするものとすると、第1条件又は第2条件を満たすことからビーム部材を1本で使用した際に限界たわみ量を超えてしまう場合において、スパンの1/500以下かつ10mm以内という規定値に限界たわみ量を抑えるために、ダブルビームが採用されるのである。
ここで、第1条件とは、標準のビーム配置における大引最大ピッチが600mmである場合において、スパンと呼ばれる大引支点間距離が3、700mmを超えるという条件である。
第2条件とは、図4及び図5に示すように、床の開口部Kの縦方向と横方向のうち少なくとも一方の空き寸法が、外周のビーム芯間距離にて1,200mmを超えるという条件である。
【0022】
さらに以下、図6及び図7を参照してダブルビームの構成例について詳細に説明する。
図6は、図2の部分Gの拡大図である。
図7は、大引を構成するダブルビーム及びダブルビームスペーサの構成例を示す図である。
図7(A)は、ダブルビームの第2方向の断面図を示している。
図7(B)は、ダブルビームスペーサの図7(A)と垂直方向側の側面図を示している。
図7(C)は、ダブルビームスペーサの図7(A)と同一方向側の側面図を示している。
【0023】
大引10は、その高さを拡大することなく、その強度、特にその曲げ強度を高めるべく構成されている。このため、本実施形態では上述の第1条件(図3参照)又は第2条件(図4及び図5参照)を満たす場合、大引10は、図7(A)に示すように、一対のΣ状のビーム部材51-1,51-2が背中合わせに連結されたダブルビームにより構成される。
ここで、ビーム部材51-1,51-2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて、「ビーム部材51」と呼ぶ。
図7(A)に示すように、ビーム部材51の長手方向(同図の記載に合わせて「第1方向」と呼ぶ)には、所定間隔(例えば100mmm)をあけて貫通孔50が中央に形成されている。
また、ダブルビームスペーサ70を挟んでビーム部材51-1,51-2が背中合わせに配置された状態で、ビーム部材51-1,51-2の夫々の貫通孔50に対して連結部材71が挿入されて、ビーム部材51-1,51-2の夫々の両端からボルト72が連結部材71に締結されることにより、ダブルビームが構成される。
なお、図6は、貫通孔50を強調させたイメージ図であり、実際の外観としては、貫通孔50に挿入された連結部材71の端部と、当該ボルト72に締結されていた連結部材71とが存在する。
【0024】
このように、ダブルビームを構成するためには、図7(A)に示すように、2本のΣ状のビーム部材51-1,51-2を連結し一体化する必要がある。しかしながら、2本のビーム部材51-1,51-2を並列に結合させる場合、仮にビーム部材51-1,51-2同士を直接結合させると、鋼材と鋼材が擦れ合うこととなり、いわゆる「床鳴り」を起こす原因となる。このため、「床鳴り」を起こさないように、2本のビーム部材51-1,51-2は、一定の隙間を設けて結合させる必要がある。
この「一定の隙間」を設けるための部品が、図7(A)乃至(C)に示すダブルビームスペーサ70である。
即ち、ダブルビームスペーサ70は、大引10としてダブルビームの使用時に、その間隔保持のために使用する部品である。
図7(A)に示すように、ビーム部材51-1,51-2の間にダブルビームスペーサ70が挟み込まれるだけで、ダブルビーム(大引10)の間隔を保持することができる。
具体的には、ダブルビームスペーサ70のφ12.5mmの貫通孔701(図7(B)及び図7(C)参照)と、ビーム部材51―1,51-2の夫々の中央部に100mmピッチで空けられたφ12.5mmの貫通孔50との位置が合わされる。このようにして位置が合わされた状態で貫通孔50及び貫通孔701に対して連結部材71が挿入され、当該連結部材71の両端に対してM12のボルト72が締結されることで、ダブルビームとしての大引10が構成される。
ダブルビームスペーサ70の取り付け位置は、ビーム部材51-1,51-2の両端部から第1方向に300乃至500mmの位置とし、ビーム部材51-1,51-2の長さが3,000mmを超える場合には第1方向の中央部に1箇所追加するものとする。
ダブルビームスペーサ70の材質は、例えばプラスティックである。
【0025】
ここで、本実施形態では、現地でビーム部材51-1,51-2を連結してダブルビーム(大引10)を製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように、貫通孔50の位置が図8に示すように予め設定されている。
図8は、ビーム部材の両端部からの1つ目までのピッチを説明する図である。
具体的には、図8に示すように、長さがLのビーム部材51において、第1方向に対して所定ピッチP毎に貫通孔50が夫々形成されるものとする。また、所定ピッチPは例えばPは100mm予め決定されているものとする。
この場合、貫通孔50の個数N個(Nは2以上の整数値)は、次の式(1)で規定される。
N=L÷100―1(小数点は切り捨て)・・・(1)
このようにして、式(1)で貫通孔50の個数Nが規定されると、貫通孔50の、第1方向のビーム部材51の端部から1つ目までのピッチL1は、次の式(2)により規定される。
L1=(L―100×N)÷2<100・・・(2)
これにより、ビーム部材51-1,51-2の夫々の両端から1つ目の貫通孔50までのヘリ空き寸法であるピッチL1が左右等しくなる。その結果、作業員は、ビーム部材51-1,51-2の夫々を、向きを気にせず、ダブルビームスペーサ70(図7)を用いて一体にして、ダブルビーム(大引10)を生成することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0027】
以上をまとめると、本発明が適用される建物の床構造は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される建物の床構造は、
スラブ(例えば図1及び図2の床スラブSf)の上面に複数の逆梁(例えば図1及び図2の逆大梁5L,5T及び小梁6L,6T)が間隔を存して突設されている状態で、互いに対向する逆梁間の第1方向に複数の大引(例えば図1及び図2の大引10)が橋架支持され、それらの大引上に床材(例えば図1及び図2の床板12)が敷設される建物の床構造(例えば図1及び図2に示す逆梁大引床構造)であって、
前記第1方向(例えば図6及び図7の第1方向)に互いに並列される2本のビーム部材(例えば図7(A)のビーム部材51-1,51-2)が、前記第1方向と略直角の第2方向に貫通する連結部材(例えば図7(A)の連結部材71)により連結されたものをダブルビーム(例えば図7(A)のように構成されるダブルビーム)と呼び、
前記大引の少なくとも一部が前記ダブルビームにより構成される場合において、
当該ダブルビームを構成する長さLの前記2本のビーム部材の夫々において、
前記第1方向に対して所定ピッチ(例えば図8のピッチP)毎に、前記連結部材が貫通する貫通孔(例えば図6乃至図8の貫通孔50)が形成される際に、
当該貫通孔の個数N個(Nは2以上の整数値)は式(1)で規定され、
当該式(1)で前記貫通孔の前記個数N個が規定されると、前記貫通孔の、前記第1方向の前記ビーム部材の端部から1つ目までのピッチL1(例えば図8のピッチL1)は式(2)により規定される、
N=L÷100―1(小数点は切り捨て)・・・(1)
L1=(L―100×N)÷2<100・・・(2)
建物の床構造であれば足りる。
【0028】
これにより、逆梁大引床構造が適用される集合住宅の現地でビーム部材を連結してダブルビームを製作するにあたり、左右両端を気にせずどちらでも使用できるように予め貫通孔の位置を設定して、ダブルビームの製作を行うことが可能になる。
【0029】
さらに、第1条件又は第2条件を満たすことから前記ビーム部材を1本で使用した際に限界たわみ量を超えてしまう場合において、スパンの1/500以下かつ10mm以内という規定値に抑えるために、前記ダブルビームが採用される、
建物の床構造にすることができる。
ここで、第1条件は、標準のビーム配置における大引最大ピッチが600mmである場合において、スパンと呼ばれる大引支点間距離が3、700mmを超えるという条件(例えば図3参照)である。
第2条件は、前記床材の開口部(例えば図4の開口部K)の縦方向と横方向のうち少なくとも一方の空き寸法(例えば図4の空き寸法L2又はL3)が、外周のビーム芯間距離にて1,200mmを超えるという条件(例えば図5参照)である。
【0030】
このように、ダブルビームを採用するための第1条件及び第2条件を規定することで、限界たわみ量を規定値に確実に抑えることができる。
【0031】
さらにまた、前記2本のビーム部材の間に、樹脂製のダブルビームスペーサ(例えば図7のダブルビームスペーサ70)が挟み込まれ、前記貫通孔に前記連結部材が貫通されて、当該2本のビーム部材が結合することで前記ダブルビームが構成されるようにすることができる。
【0032】
このように、ダブルビームスペーサが挟み込まれることにより、2本のビーム部材の間に一定の隙間が設けられるので、2本のビーム部材(鋼材)同士が擦れあることにより発生する「床鳴り」を防止することが可能になる。
【符号の説明】
【0033】
5L,5T・・・逆大梁、6L,6T・・・小大梁、10・・・大引、12・・・床板、50・・・貫通孔、51,51-1,51-2・・・ビーム部材、L・・・ビーム部材の長さ、P・・・ビーム部材における貫通孔の配置のピッチ、L1・・・ビーム部材の端部から1つ目までのピッチ、Sf・・・床スラブ、N・・・ビーム部材における貫通孔の個数、K・・・開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの上面に複数の逆梁が間隔を存して突設されている状態で、互いに対向する逆梁間の第1方向に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設される建物の床構造であって、
前記第1方向に互いに並列される2本のビーム部材が、前記第1方向と略直角の第2方向に貫通する連結部材により連結されたものをダブルビームと呼び、
前記大引の少なくとも一部が前記ダブルビームにより構成されており
当該ダブルビームを構成する長さLの前記2本のビーム部材の夫々において、
前記第1方向に対して所定ピッチ毎に、前記連結部材が貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の、前記第1方向の前記ビーム部材の端部のうち、一方の端から1つ目までのピッチL1、及び、他方の端から1つ目までのピッチL1は同一であり、
当該所定の前記貫通孔から隣接する前記貫通孔のピッチをPとして、両側の2つの前記ピッチL1は(1)により規定されてい
[mm]=(L[mm]P[mm]×(L[mm]÷P[mm]-1:小数点は切り捨て))÷2<[mm]・・・(1)
建物の床構造。
【請求項2】
第1条件又は第2条件を満たす大引については前記ダブルビームが採用されている建物の床構造であって、
前記第1条件は、標準のビーム配置における大引最大ピッチが600mmである場合において、スパンと呼ばれる大引支点間距離が3700[mm]を超えるという条件であり、
前記第2条件は、前記床材の開口部の縦方向と横方向のうち少なくとも一方の空き寸法が、外周のビーム芯間距離にて1200mmを超えるという条件である、
請求項1に記載の建物の床構造。
【請求項3】
前記2本のビーム部材の間に、樹脂製のダブルビームスペーサが挟み込まれ、前記貫通孔に前記連結部材が貫通されて、当該2本のビーム部材が結合することで前記ダブルビームが構成される、
請求項1に記載の建物の床構造。