(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146333
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20241004BHJP
B65D 77/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D81/26 S
B65D77/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059168
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】502138359
【氏名又は名称】イーエヌ大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】相原 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 啓太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 陸
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA04
3E067AB01
3E067AC04
3E067AC05
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067CA06
3E067CA10
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA32
3E067EB07
3E067EB22
3E067EB27
3E067EC14
3E067EE25
3E067EE29
3E067EE48
3E067FC01
3E067GB13
3E067GD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱処理される容器でも吐出部を密封した空間内に残留する酸素の除去能を向上でき、収容後に加熱処理される収容物の酸化防止機能を向上できる容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガスバリア性を有する容器壁により密封して形成された第1室11及び第2室12と、第1室11と第2室12との間を仕切る仕切部13と、両室11、12間を連通するように仕切部13に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部14と、を有し、第1室11に水を含む収容物が収容されて加熱処理される容器10であり、少なくとも第2室12内には鉄を含有する脱酸素剤が配置され、脱酸素剤は吐出部14を透過した収容物からの水蒸気を用いて第2室12内の酸素を除去するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する容器壁により密封して形成された第1室及び第2室と、
前記第1室と前記第2室との間を仕切る仕切部と、
両室間を連通するように前記仕切部に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部と、を有し、
前記第1室に水を含む収容物が収容されて加熱処理される容器であって、
少なくとも前記第2室内には鉄を含有する脱酸素剤が配置され、
前記脱酸素剤は前記吐出部を透過した前記収容物からの水蒸気を用いて前記第2室内の酸素を除去することを特徴とする容器。
【請求項2】
前記第2室内の水分量が、該第2室内の酸素量に対応する前記脱酸素剤の酸化反応における要求水分量未満であることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記脱酸素剤を含有する脱酸素部材が、前記第2室内に収容されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記脱酸素剤が前記容器壁に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項5】
前記吐出部は、前記第1室と前記第2室とを連通可能な貫通孔を有するスパウト本体と、前記貫通孔を前記第2室側で閉塞する着脱可能なキャップと、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項6】
ガスバリア性を有する容器壁により形成された第1室及び第2室と、前記第1室と前記第2室との間を仕切る仕切部と、前記第1室側と前記第2室側とを連通するように前記仕切部に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部と、を有し、前記第1室に水を含む収容物を収容して加熱処理する容器の製造方法であって、
前記第1室に前記収容物を収容して密封するとともに少なくとも前記第2室に鉄を含有する脱酸素剤を配置して密封した後で前記加熱処理し、該加熱処理時又はそれ以後に、前記収容物からの水蒸気を前記吐出部から前記第2室に透過させて前記脱酸素剤の酸化反応に用い、前記第2室内の酸素を除去することを特徴とする容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出部が必要な容器では、収容物の収容部をガスバリア性のフィルムで覆っていても、容器外部から吐出部を透過して侵入した酸素によって収容物の劣化が生じることが知られていた。特に、流動性の低い収容物を収容する容器では、吐出部近傍の収容物が集中的に酸素により劣化が生じていた。そのため収容部だけでなく、吐出部もガスバリア性のフィルムで覆うことで、吐出部から侵入する酸素により収容物が酸化されることを防止する容器が提案されていた。
例えば、下記特許文献1には、密封室と収容室とが隔壁部により区画され、収容室の食品を注出する注出具が隔壁部に熱融着された包装袋が提案されていた。この包装袋では、全体がガスバリア性の積層フィルムから形成されていて、収容室内の食品だけでなく、密封室の注出具もガスバリア性の積層フィルムで覆われていた。これにより包装袋の外部の酸素が注出具を透過して収容室内に侵入し、収容室内の食品が酸化変質することが防止されていた。またこの文献には、遮蔽性を向上して加熱殺菌時の注出口からの食品の漏れを防止するために、注出具本体に栓体を一体的に成形して注出孔を封止することが記載され、さらに注出孔を別体の栓体で塞ぐとともに注出孔の開口部にアルミ箔等のインナーシール材を貼着することが変形例として記載されていた。
【0003】
下記特許文献2には、口栓付パウチの口栓部にガスバリア性を持たせるために、口栓部をガスバリア性のフィルムで被覆したり、口栓部と共に酸素吸収剤をガスバリア性のフィルムで被覆したりした口栓付パウチが提案されていた。この口栓付パウチでは、口栓部にガスバリア性を持たせて遮蔽性を向上することにより、口栓付パウチの外部の酸素が口栓部を透過して内部に侵入し、内容物が劣化することを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-130153号公報
【特許文献2】特開2003-95288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しよとする課題】
【0005】
しかしながら、ガスバリア性の材料により吐出部を気密に覆うことで外部から酸素が侵入することを防止していても、ガスバリア性の材料で覆われた空間内に残留する酸素が吐出部から透過して収容室内に侵入することを防げなかった。
上記特許文献1の変形例に記載されたように、吐出口にアルミ箔のインナーシール材を設けるとすれば、収容物の漏れを防止するだけでなく収容室のガスバリア性も向上できるが、吐出部の構造が複雑化して製造時や使用時に手間を要するという問題点があった。
また上記特許文献2のように、吐出部と共に酸素吸収剤をガスバリア性のフィルムで被覆して吐出部の遮蔽性を向上させた場合、収容物を収容して加熱処理する容器として使用すると、酸化防止効果が不足することが考えられ、酸化防止効果を向上させることが容易でないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、加熱処理が施される容器であっても吐出部を密封した空間内に残留する酸素の除去能を向上でき、収容後に加熱処理される収容物の酸化防止機能を向上できる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、加熱処理時に劣化し難い鉄系の脱酸素剤を用いると脱酸素効果を発現するために必ず水分が必要であり、脱酸素剤が配置された空間内で完全に酸素を除去するためには、相対湿度100%であっても脱酸素反応における水分量が不足し、脱酸素反応が停止すること、そのため吐出部を密封した空間内に残留した酸素を除去できず、吐出部を透過した酸素による収容物の酸化が進行することを新たに見出し、本発明に到達するに至った。
【0008】
かかる本発明の容器は、ガスバリア性を有する容器壁により密封して形成された第1室及び第2室と、第1室と第2室との間を仕切る仕切部と、両室間を連通するように仕切部に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部と、を有し、第1室に水を含む収容物が収容されて加熱処理される容器であって、少なくとも第2室内には鉄を含有する脱酸素剤が配置され、脱酸素剤は吐出部を透過した収容物からの水蒸気を用いて第2室内の酸素を除去することを特徴としている。
【0009】
本発明の容器によれば、ガスバリア性を有する容器壁により仕切部を介して第1室及び第2室が密封して形成されるとともに液密に閉塞された状態で仕切部に吐出部が設けられ、第1室には収容物が収容され、少なくとも第2室内には脱酸素剤が配置されているので、第2室内の酸素を脱酸素剤で除去できる。
【0010】
特に、水を含む収容物が第1室に収容され、鉄を含有する脱酸素剤が第2室内に配置され、吐出部が収容物からの水蒸気を十分に透過可能に構成されている。その結果、第1室に収容物を収容して第1室及び第2室を密封した状態で加熱処理した際、脱酸素剤が熱により劣化することがなく、さらに加熱処理時及び加熱処理後において鉄系の脱酸素剤が収容物からの水蒸気を利用して第2室内の酸素を十分に除去できる。そのため第1室内の収容物の酸化防止機能を向上できる。
【0011】
しかも吐出部自体の遮蔽性を高めるような特別な構造は不要であり、単に液密に閉塞できる構造であればよいため吐出部の構造を簡素化できる。
従って、本発明によれば、加熱処理が施される容器であっても吐出部を密封した空間内に残留する酸素の除去能を向上でき、収容後に加熱処理される収容物の酸化防止機能を向上できる容器を提供することが可能である。
【0012】
本発明の容器では、第2室内の水分量が、第2室内の酸素量に対応する脱酸素剤の酸化反応における要求水分量未満であってよく、第2室に予め水を収容しておく必要もない。そのような条件下であっても、鉄系の脱酸素剤が収容物からの水蒸気を利用することで第2室内の酸素の除去能を向上する効果を顕著に得られる。
【0013】
また本発明の容器では、脱酸素剤を含有する脱酸素部材が、第2室内に収容されていてもよく、あるいは脱酸素剤が容器壁に含有されていてもよい。
さらに本発明では、吐出部が第1室と第2室とを連通可能な貫通孔を有するスパウト本体と、貫通孔を第2室側で閉塞する着脱可能なキャップと、を有するものであってもよい。
【0014】
このようにすれば、スパウト本体、貫通孔が設けられた部位、貫通孔を閉塞するキャップなどの寸法や材質によって水蒸気の透過量を適宜設定することができ、吐出部における収容物からの水蒸気の透過性を十分に確保することができる。
【0015】
本発明の容器の製造方法においては、ガスバリア性を有する容器壁により形成された第1室及び第2室と、第1室と第2室との間を仕切る仕切部と、第1室側と第2室側とを連通するように仕切部に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部と、を有し、第1室に水を含む収容物を収容して加熱処理する容器の製造方法であって、第1室に収容物を収容して密封するとともに少なくとも第2室に鉄を含有する脱酸素剤を配置して密封した後で加熱処理し、加熱処理時又はそれ以後に、収容物からの水蒸気を吐出部から第2室に透過させて脱酸素剤の酸化反応に用い、第2室内の酸素を除去することを特徴としている。
【0016】
本発明の容器の製造方法によれば、ガスバリア性を有する容器壁により仕切部を介して第1室及び第2室が形成されるとともに、両室間を連通可能な吐出部が閉塞した状態で仕切部に設けられた容器を用い、第1室に水を含む収容物を収容して密封するとともに少なくとも第2室に鉄を含有する脱酸素剤を配置して密封した後、加熱処理する。そのため加熱処理時に脱酸素剤が劣化することがなく、また加熱処理時及び加熱処理後に、鉄系の脱酸素剤が収容物からの水蒸気を利用して第2室内の酸素の除去能を向上することができる。
従って、吐出部を密封した空間内に残留する酸素の除去能を向上して収容後に加熱処理される収容物の酸化防止機能を向上できる上述のような容器の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る容器の正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る容器の吐出部の縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る容器の第1室の縦断面図である。
【
図4】(a)乃至(c)は、本発明の第1実施形態に係る容器の使用方法を説明する図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る容器の正面図である。
【
図6】第1実施形態及び第2実施形態の変形例を示す吐出部の縦断面図である。
【
図7】本発明の実施例1及び比較例1の容器の第2室の酸素量の経時変化を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例2及び比較例2の容器の第2室の酸素量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態の容器は、水を含む液状又は半固形状の収容物を収容して加熱処理される容器である。
この容器10は、
図1に示すように、ガスバリア性を有する容器壁により密封して形成された第1室11及び第2室12と、第1室11と第2室12との間を仕切る仕切部13と、両室11、12間を連通するように仕切部13に設けられて液密に閉塞された立体形状の吐出部14と、を有する。第1室11には水を含む収容物が収容され、第2室12内には鉄を含有する脱酸素剤を収容した脱酸素部材15が配置されている。
吐出部14が立体形状を有するため、第2室12の内部は、
図3に示すように、吐出部14を収容可能な容積を有する立体的な形状を呈する。
【0019】
容器壁は、例えば可撓性樹脂を用いたシートからなり、アルミニウム蒸着層等のガスバリア性を有する層が設けられた積層シートであってもよい。最内層には収容物を安定に収容できるとともに互いに対向させて溶着可能な樹脂からなる層が設けられている。容器壁を構成するシート材を、最内層同士が周縁で溶着されるとともに、中間位置で周縁間を横断するように溶着されることで、仕切部13で仕切られた第1室11及び第2室12が形成されている。
【0020】
仕切部13には、
図2に示すように、第1室11と第2室12との間を連通するように設けられて液密に閉塞された吐出部14が設けられている。
吐出部14は、第1室11と第2室12とを連通可能な貫通孔16aを有するスパウト本体16と、貫通孔16aを第2室12側で閉塞する着脱可能なキャップ17と、を有する。
【0021】
スパウト本体16は、仕切部13の容器壁に液密に固定された船形16bと、船形16bから第2室12側に円筒状に突出した突出部16cと、を備え、船形16b及び突出部16cを貫通するように貫通孔16aが設けられている。突出部16cの外周には、キャップ17や使用時のチューブを係止するための係止構造が設けられている。本実施形態のスパウト本体16は、ISO規格のチューブと接続することができるISO80369-3に準拠したメス形状のスパウトでもよい。
【0022】
スパウト本体16は、容器壁の最内層と溶着可能な樹脂により一体に形成された成形体からなる。このスパウト本体16を構成する樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる成形体であってもよい。
【0023】
スパウト本体16の第1室11側の表面及び第2室側の表面には、水蒸気の透過性を低減するような材料により被覆されることなく、スパウト本体16の構成樹脂がそのまま露出している。
また貫通孔16aは両端が開口した状態で設けられていて、キャップ17により閉塞される第2室12側の端部と第1室11側の端部とのいずれにも、水蒸気の透過性を低減するような樹脂や金属等の膜のような閉塞部分は設けられていない。
【0024】
キャップ17は、スパウト本体16の突出部16cの外周に着脱可能に係止されていて、スパウト本体16の貫通孔16aにおける第2室12側の端部の開口を頂部壁17aにより密着して液密に閉塞するとともに、突出部16cの外周を筒状壁17bにより被覆している。スパウト本体16の突出部16cの貫通孔16aは、キャップ17のみにより閉塞されている。
本実施形態のキャップ17の筒状壁17bには、ISO80369-3に準拠したメス形状のスパウトに係合可能な構造を有している。
キャップ17は、樹脂により成形されていることが好ましく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる成形体であってもよい。
【0025】
脱酸素部材15は、通気性の材料により形成された袋状の容器内に、脱酸素剤を含有する物質が収容された部材であり、
図1及び
図3に示すように第2室12内に収容されている。袋状の容器は加熱処理時の環境下で使用可能な材料により形成されている。
脱酸素剤は、主成分が鉄を含有する鉄系脱酸素剤からなり、周囲の水分を用いて酸素を除去するものである。鉄系脱酸素剤における脱酸素の反応は次の式(1)及び式(2)で示され、反応全体として式(3)のように示される。
【化1】
【0026】
第2室12が吐出部14の大きさに応じた立体的形状を有するため、第2室12の内部は吐出部14に応じた容積を有していて、吐出部14とともに容積に応じた空気が収容されている。しかも第2室12はガスバリア性の容器壁により密封して形成されている。そのため第2室12の内部には容積に応じた酸素が存在している。
脱酸素部材15には、このような第2室12内に存在する酸素を除去するのに十分な能力を有する脱酸素剤が収容配置されている。
【0027】
一方、脱酸素剤により酸素を除去するには、式(3)のように水が必須であるが、本実施形態の容器10では、仮に第2室12内の空気が相対湿度100%であっても、第2室12内の水分量が第2室12内の酸素量に対応する脱酸素剤の酸化反応における要求水分量未満となっている。
そこで本実施形態では、第1室11内の収容物の水蒸気を吐出部14から積極的に透過させて第2室12に供給することで、脱酸素部材15の脱酸素剤が収容物からの水蒸気を利用して第2室12内の酸素除去能を向上することを可能にしている。
【0028】
次に、このような容器10の製造方法について説明する。
まずガスバリア性を有する容器壁を用いて、第1室11及び第2室12と、第1室11と第2室12との間を仕切る仕切部13と、第1室11側と第2室12側とを連通可能に仕切部13に配置されて液密に閉塞された吐出部14と、を有する空の容器を予め準備する。
空の容器は各種の方法で作製でき、例えば容器壁を構成する一対の積層シートを互いに対向させて重ね、積層シート間に吐出部14となる成形体を配置して仕切部13を溶着するとともに周縁を溶着してもよい。このとき吐出部14の貫通孔16aはキャップ17により予め閉塞しておいてもよく、第1室11及び第2室12の周縁の少なくとも一部を開封状態で作製してもよい。
【0029】
空の容器を用い、第1室11に水を含む収容物を収容し、周縁を溶着して第1室11を密封する。また第2室12に鉄系脱酸素剤を含有する脱酸素部材15を収容配置し、周縁部を溶着して第2室12を密封する。第1室11に収容される収容物は、十分な水蒸気を発生できる程度に水を含有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば液状或いは半固形状の物質であってもよい。
【0030】
その後、収容物及び脱酸素部材15を収容した容器10に加熱処理を施す。加熱処理は特に限定されるものではないが、例えばレトルト処理などであってもよい。
加熱処理時又はそれ以後に、収容物から水蒸気が生じ、吐出部14を透過して第2室12に供給される。そして、この水蒸気が脱酸素剤の酸化反応に用いられ、第2室12内の酸素除去能を向上することで、本実施形態の容器10が製造される。
【0031】
このような容器10を使用するには、まず
図4(a)に示すように、容器壁の第2室12側を横断するように破断することで第2室12を開封し、
図4(b)に示すように、吐出部14の上部を露出させる。
図4(c)に示すように、キャップ17を取り外してISO規格のチューブ21を接続する。第1室11の収容物を吐出部14を経由してチューブ21から吐出させることで、収容物を使用することができる。
【0032】
以上のような本実施形態の容器10によれば、ガスバリア性を有する容器壁により仕切部13を介して第1室11及び第2室12が密封して形成されるとともに閉塞された状態で吐出部14が仕切部13に設けられていて、第1室11には収容物が収容され、第2室12内には脱酸素剤が存在するので、第2室12内に残留する酸素を脱酸素剤で除去できる。
【0033】
特に、水を含む収容物が第1室11に収容され、鉄を含有する脱酸素剤が第2室12内に配置され、吐出部14が収容物からの水蒸気を十分に透過可能に構成されているので、第1室11に収容物を収容して第1室11及び第2室12を密封した状態で加熱処理した際、脱酸素剤が熱により劣化することがないとともに、第1室11から吐出部14を透過して第2室12に供給される収容物からの水蒸気により脱酸素剤が第2室12内の酸素を除去することができる。
【0034】
第2室12内の水分量が第2室12内の酸素量に対応する脱酸素剤の酸化反応における要求水分量未満であっても、加熱処理時及び加熱処理後において、吐出部14が収容物からの水蒸気を十分に透過して供給可能であるため、この収容物からの水蒸気を鉄系の脱酸素剤が利用して第2室12内の酸素の除去能を向上することができる。
仮に第2室12内に収容された空気の常温における相対湿度が100%であっても、当該空気に存在する酸素全量を除去するには水分量が不足するため、収容物からの水蒸気を利用して第2室12内の酸素の除去することで確実に酸素の除去能を向上できる。
そのため加熱処理が施される容器であっても、吐出部14を密封した第2室12の空間内に残留した酸素の除去能を向上することができ、第2室12に残留した酸素が吐出部14を透過して第1室11に侵入し、第1室11の収容物を酸化させることがなく、収容物の酸化防止機能を向上することが可能である。
また収容物からの水蒸気を吐出部14から透過して第2室12に供給するため、第2室12内に予め水を収容しておく必要もなく、衛生性を担保でき、かつ、第2室12内の空気の湿度も問わないため、どのような環境下で第2室12を密封してもよい。
【0035】
さらに吐出部14の貫通孔16aを、破封可能な樹脂膜やアルミニウムの積層膜等を設けて閉塞したり、強固な栓体等により閉塞したりなど、吐出部14自体の遮蔽性を高めるような特別な構造は不要であり、キャップ17により貫通孔16aを液密に閉塞するだけの構造でよいため、吐出部14の構造を簡素化することが可能である。そのため容器10を容易に製造できるとともに、使用時にも容易に開封操作を行うことができて使い勝手がよい。
【0036】
本実施形態の容器10は、吐出部14が第1室11と第2室12とを連通可能な貫通孔16aを有するスパウト本体16と、貫通孔16aを第2室12側で閉塞する着脱可能なキャップ17とを有している。そのためスパウト本体16、突出部16c、貫通孔16a、キャップ17等の材質、大きさ、形状、厚みなどにより、水蒸気の透過性を適宜設定することで、吐出部14における収容物からの水蒸気の透過性を十分に確保することができる。
【0037】
またキャップ17を装着した状態で第1室11の収容物が第2室12へ流出することを防止できるとともに、キャップ17を外すことで第1室11の収容物を容易に吐出部14から吐出させることができるため使い勝手も良好である。
【0038】
さらに本実施形態の容器10では、脱酸素剤が脱酸素部材15として第2室12内に収容されている。そのため、ガスバリア性の高い材料で容器壁を形成して第1室11及び第2室12を密封できればよいため、容器壁材料の選択や構造等の容器形態の自由度を向上できるなどの利点がある。
【0039】
一方、本実施形態の製造方法によれば、第1室11に水を含む収容物を収容して密封するとともに第2室12に鉄を含有する脱酸素剤を配置して密封した後で加熱処理することで、上述のような容器10を製造している。
【0040】
この方法では、加熱処理時に脱酸素剤が熱により劣化することがなく、また加熱処理時及び加熱処理後に、鉄系の脱酸素剤が収容物からの水蒸気を利用して第2室12内の酸素の除去能を向上できる。これにより上述のように吐出部14を密封した空間内に残留する酸素の除去能を向上して、収容後に加熱処理される収容物の酸化防止機能を向上できる容器10を製造することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図5は第2実施形態の容器10を示している。
第2実施形態の容器10では、第1実施形態のように第2室12内に脱酸素部材15を収容する代わりに、鉄系脱酸素剤が容器壁に含有されている。この容器壁は、例えばPET、ナイロン、アルミニウム等のガスバリア性のある層よりも内側において、第2室12の内壁面を構成するCPP(無延伸ポリプロピレン)等の酸素透過性のある層の外側に隣接して脱酸素剤層が配置されたものであってもよい。
その他は第1実施形態と同様である。
【0042】
このようにして脱酸素剤を第2室12内に配置しても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
しかも脱酸素剤が容器壁に含有されていれば、脱酸素部材15のような別部材を第2室12に収容する必要がないため、容器の部品点数を少なくできて製造を容易にできる。
【0043】
なお上記各実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記各実施形態では、使用時にキャップ17を外して吐出部14にチューブ21を連結して収容物を吐出させる例について説明したが、特に限定されるものではなく、吐出部から直接収容物を吐出させるものであってもよい。
また上記各実施形態では、スパウト本体として、ISO80369-3に準拠したメス形状のスパウトを用いたが、
図6に示すように、ISO規格のチューブやシリンジなどと接続できる変換コネクタを嵌合させるためのねじ形状を備えたスパウトであってもよい。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
図1乃至3に示す第1実施形態の容器10を製造した。
容器壁はガス不透過のフィルムにより形成し、吐出部14及びキャップ17はポリプロピレンにより形成した。
第1室11に収容物としてラコールNF配合経腸用半固形剤(イーエヌ大塚製薬株式会社製、商標)を収容して密封し、第2室12には、脱酸素部材15とともに大気を収容した状態で密封した。第2室12の密封状態の容積(吐出部14を除く)は15mlであった。
脱酸素部材15として、鉄系脱酸素剤が含有されたもの(「エージレスFX-50PAN」、三菱瓦斯化学株式会社製、商標)を用いた。
加熱処理としてレトルト処理を施した。
【0045】
第2室12に15mlの大気が収容された場合、酸素濃度が21%とすると、第2室12に収容された酸素は1.4×10-4(mol)である。この酸素を脱酸素剤により除去するための要求水分量は、その二倍の2.8×10-4(mol)である。
一方、第2室12内の水分量は、相対湿度が100%と仮定すると、20℃における絶対湿度が17.3g/m3であるため、1.4×10-5(mol)である。
従って第2室12内の水分量は第2室12内に存在する酸素を除去するために必要な要求水分量未満となる。
【0046】
実際に実施例1の容器に上記収容物及び脱酸素部材15を収容して複数の収容物入り容器を作製し、レトルト加熱処理を施し、室温40℃、湿度75%の保管条件で3カ月間保管した。
このときの第2室12の酸素量の推移を加熱処理前から3ヶ月間計測した。
結果を表1及び
図7に示す。なお理解容易のため、図中にはレトルト加熱処理前の酸素量も示している。
【0047】
【0048】
[実施例2]
図5に示す第2実施形態の容器10を製造した。
第2実施形態では、容器壁として、脱酸素剤が含有されている酸素吸収機能付きフィルム(「エージレスオーマック」、三菱瓦斯化学株式会社製、商標)を用いるとともに、第2室12に脱酸素部材15を収容しない他は、全て実施例1と同様にして実施例2の複数の収容物入り容器10を作製し、実施例1と同様にレトルト処理を施して3カ月間保管した。
第2室12の酸素量の推移を加熱処理前から3ヶ月間計測した結果を表1及び
図8に示す。
図7と同様に、図中にはレトルト加熱処理前の酸素量を直線とともに図示している。
【0049】
[比較例]
脱酸素部材15を第1室11に収容しない他は全て第1実施形態と同様にして、比較例の複数の収容物入り容器を作製し、実施例1と同様にレトルト処理を施して3カ月間保管した。第2室12の酸素量の推移を加熱処理前から3ヶ月間計測した結果を表1並びに
図7及び
図8に示す。
【0050】
実施例1、2及び比較例によれば、表1並びに
図7及び
図8に示すように、実施例1及び2のいずれもレトルト処理後または1ヵ月保管後までで、第2室12の酸素量が比較例を下回った。そして実施例1、2では保管期間中に収容物の色調の変化は生じなかったが、比較例では図中Aで示す保管期間1ヶ月以降に収容物の色調に変化が生じていた。