(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146337
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バッテリモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20241004BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/211
H01M50/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059173
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】臼井 英正
(72)【発明者】
【氏名】樋口 将成
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健雄
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC25
5H040CC30
5H040CC34
5H040NN00
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】緩衝材中の流体の充填量を変化させずに、エネルギー密度を向上させることが可能なバッテリモジュールを提供する。
【解決手段】バッテリモジュールは、複数のバッテリセル11aが積層されているバッテリセル積層体と、バッテリセル積層体の積層方向の両端に設けられている一対の板状部材と、複数のバッテリセル11aの間、および/または、バッテリセル11aと板状部材との間に配置されている緩衝材14と、を備える。緩衝材14は、伸縮性部材21に流体22が充填されている。伸縮性部材21は、バッテリセル11aと対向していない第1領域21aと、第1領域21aと接続されており、第1領域21aよりもヤング率が低い第2領域21bと、を有する。バッテリセル11aの積層方向から上面視した場合に、第1領域21aは、伸縮性部材21の外周部のうち、バッテリセル11aのタブリード23が配置されている側に存在している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルが積層されているバッテリセル積層体と、
前記バッテリセル積層体の積層方向の両端に設けられている一対の板状部材と、
前記複数のバッテリセルの間、および/または、前記バッテリセルと前記板状部材との間に配置されている緩衝材と、を備え、
前記緩衝材は、伸縮性部材に流体が充填されており、
前記伸縮性部材は、前記バッテリセルと対向していない領域を含む第1領域と、前記第1領域と接続されており、前記第1領域よりもヤング率が低い第2領域と、を有し、
前記バッテリセルの積層方向から上面視した場合に、前記第1領域は、前記伸縮性部材の外周部のうち、少なくとも一部の領域に存在している、バッテリモジュール。
【請求項2】
前記流体は、気体である、請求項1に記載のバッテリモジュール。
【請求項3】
前記伸縮性部材は、前記第1領域よりもヤング率が高い第3領域をさらに有し、
前記第1領域および前記第2領域は、前記第3領域を介して、接続されている、請求項1または2に記載のバッテリモジュール。
【請求項4】
前記バッテリセルの積層方向から上面視した場合に、前記第1領域は、前記伸縮性部材の外周部のうち、前記バッテリセルのタブリードが配置されている側に存在している、請求項1または2に記載のバッテリモジュール。
【請求項5】
前記伸縮性部材は、平均厚さが0.4mm以下である、請求項1または2に記載のバッテリモジュール。
【請求項6】
前記第1領域に存在する前記流体の体積は、最小値が20mL以上25mL以下である、請求項1または2に記載のバッテリモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの人々が手頃で信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献するバッテリモジュールの研究開発が実施されている。
【0003】
バッテリモジュールは、例えば、複数のバッテリセルが積層されているバッテリセル積層体と、バッテリセル積層体の積層方向の両端に設けられている一対のエンドプレートと、を有する。ここで、バッテリセルは、充放電に伴い、膨張収縮するため、バッテリセルの間、および、バッテリセルとエンドプレートとの間に、緩衝材が設置されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のコネクタと、コネクタに接続された複数の電気エネルギーの集合部を備えた少なくとも1つの電気化学セルと、電気化学セルに接して配置された少なくとも1つの変形可能なチャンバと、を含む加圧電気化学バッテリが記載されている。ここで、電気化学セルは、複数の電極シートと、電極シート間に挿入された複数の固体電解質シートとを含み、変形可能なチャンバには、電気化学セルに圧力を加えるためにチャンバを変形させる流体が供給される。また、変形可能なチャンバは、流体供給の収集システムに接続されており、収集システムは、収集システムへの流入量を制御する供給システムと、変形可能なチャンバ内の圧力を調整する圧力調整器とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の加圧電気化学バッテリは、電気化学セルの充放電に伴う膨張収縮に追従して、チャンバを変形させるために、収集システムを使用して、チャンバへの流体の供給量を調整する必要がある。
【0007】
そこで、緩衝材中の流体の充填量を変化させずに、緩衝材を変形させることが望まれている。しかしながら、バッテリモジュールのエネルギー密度を向上させるために、緩衝材の体積を小さくすると、バッテリセルの充電に伴う膨張に追従して、緩衝材が収縮する際に、流体の圧力が増大する。このため、バッテリモジュールの耐久性を維持するために、エンドプレートを補強する必要があり、その結果、バッテリモジュールのエネルギー密度が低下する。
【0008】
本発明は、緩衝材中の流体の充填量を変化させずに、エネルギー密度を向上させることが可能なバッテリモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)複数のバッテリセルが積層されているバッテリセル積層体と、前記バッテリセル積層体の積層方向の両端に設けられている一対の板状部材と、前記複数のバッテリセルの間、および/または、前記バッテリセルと前記板状部材との間に配置されている緩衝材と、を備え、前記緩衝材は、伸縮性部材に流体が充填されており、前記伸縮性部材は、前記バッテリセルと対向していない領域を含む第1領域と、前記第1領域と接続されており、前記第1領域よりもヤング率が低い第2領域と、を有し、前記バッテリセルの積層方向から上面視した場合に、前記第1領域は、前記伸縮性部材の外周部のうち、少なくとも一部の領域に存在している、バッテリモジュール。
【0010】
(2)前記流体は、気体である、(1)に記載のバッテリモジュール。
【0011】
(3)前記伸縮性部材は、前記第1領域よりもヤング率が高い第3領域をさらに有し、前記第1領域および前記第2領域は、前記第3領域を介して、接続されている、(1)または(2)に記載のバッテリモジュール。
【0012】
(4)前記バッテリセルの積層方向から上面視した場合に、前記第1領域は、前記伸縮性部材の外周部のうち、前記バッテリセルのタブリードが配置されている側に存在している、(1)から(3)のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
【0013】
(5)前記伸縮性部材は、平均厚さが0.4mm以下である、(1)から(4)のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
【0014】
(6)前記第1領域に存在する前記流体の体積は、最小値が20mL以上25mL以下である、(1)から(5)のいずれか一項に記載のバッテリモジュール。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、緩衝材中の流体の充填量を変化させずに、エネルギー密度を向上させることが可能なバッテリモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のバッテリモジュールの一例を示す断面図である。
【
図2】
図1の緩衝材の未充電時の状態を示す模式断面図である。
【
図3】
図1の緩衝材の満充電時の状態を示す模式断面図である。
【
図4】
図2の状態において、第1領域に存在する流体の体積を変化させた場合の緩衝材の厚さとバッテリセルの面圧の関係を示すシミュレーション結果である。
【
図5】緩衝材の厚さが1mmである場合の未充電時の第1領域に存在する流体の体積とバッテリセルの面圧の関係を示すシミュレーション結果である。
【
図6】
図1の緩衝材の変形例の未充電時の状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に、本実施形態のバッテリモジュールの一例を示す。
【0019】
バッテリモジュール10は、複数のバッテリセル11aが積層されているバッテリセル積層体11と、バッテリセル積層体11の積層方向の両端に設けられている一対の板状部材としての、エンドプレート12と、一対のエンドプレート12の間にバッテリセル積層体11を拘束する拘束部材としての、バインドバー13と、を備える。ここで、バインドバー13は、図中、上部および下部の2箇所に設置されている。ここで、バインドバー13による拘束圧は、特に限定されないが、例えば、1.0MPa以上2.5MPa以下である。バッテリモジュール10は、複数のバッテリセル11aの間、および、バッテリセル11aとエンドプレート12との間に、緩衝材14が配置されている。
【0020】
緩衝材14は、
図2および
図3に示すように、伸縮性部材21に流体22が充填されている。ここで、伸縮性部材21は、バッテリセル11aと対向していない第1領域21aと、第1領域21aと接続されており、第1領域21aよりもヤング率が低い第2領域21bを有する。バッテリセル11aの積層方向から上面視した場合に、第1領域21aは、伸縮性部材21の外周部のうち、バッテリセル11aのタブリード23が配置されている側(図中、左右方向の両端部)に存在している。このため、バッテリセル11aの充電に伴う膨張に追従して、緩衝材14が収縮する際に、流体22の圧力の増大が抑制される(
図3参照)。その結果、エンドプレート12を補強しなくても、バッテリモジュール10の耐久性が維持される。このため、バッテリモジュール10は、緩衝材14中の流体22の充填量を変化させなくても、エネルギー密度が向上する。また、バッテリセル11aのタブリード23が配置されている側のデッドスペースが有効に活用される。
【0021】
なお、第1領域21aは、バッテリセル11aと対向していない領域を含んでいればよい。例えば、第1領域21aは、バッテリセル11aと対向していない領域およびバッテリセル11aと対向する領域を有してもよい。
【0022】
また、バッテリセル11aの積層方向から上面視した場合に、第1領域21aは、伸縮性部材21の外周部のうち、少なくとも一部の領域に存在していればよい。例えば、第1領域21aは、伸縮性部材21の外周部のうち、図中、左右方向の一方の端部に存在していてもよいし、伸縮性部材21の外周部の全領域に存在していてもよい。
【0023】
緩衝材14を構成する材料としては、バッテリセル11aの充放電に伴う膨張収縮に追従することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ゴム、エラストマー、伸縮性樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムが挙げられる。エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが挙げられる。伸縮性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミドが挙げられる。
【0024】
第1領域21aのヤング率は、流体22の圧力の増大を抑制することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、3MPa以上5GMPa以下である。また、第2領域21bのヤング率は、バッテリセル11aの充放電に伴う膨張収縮に追従することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、2MPa以上1GPa以下である。なお、第1領域21aおよび第2領域21bのヤング率は、厚さによって大きく異なる。
【0025】
なお、第1領域21aおよび第2領域21bのヤング率は、例えば、第1領域21aおよび第2領域21bを構成する材料や、第1領域21aおよび第2領域21bの厚さを変更することにより、調整することができる。
【0026】
伸縮性部材21の平均厚さは、0.4mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがさらに好ましい。伸縮性部材21の平均厚さが0.4mm以下であると、バッテリセル11aの放電時の緩衝材14の膨張が抑制され、その結果、バッテリセル11aの放電時のバッテリモジュール10のエネルギー密度が向上する。なお、伸縮性部材21の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上である。
【0027】
第1領域21aに存在する流体22の体積の最小値、すなわち、バッテリセル11aの未充電時に第1領域21aに存在する流体22の体積は、20mL以上25mL以下であることが好ましい。第1領域21aに存在する流体22の体積の最小値が20mL以上25mL以下であると、バッテリセル11aの充電に伴う膨張に追従して、緩衝材14が収縮する際に、流体22の圧力の増大が抑制される。
【0028】
流体22は、液体および気体のいずれであってもよいが、バッテリセル11aの充放電に伴う膨張収縮に追従しやすいことから、気体であることが好ましい。
【0029】
図4に、
図2の状態(未充電時)において、第1領域21aに存在する流体22の体積を変化させた場合の緩衝材14の厚さとバッテリセル11aの面圧の関係を示す。このとき、SOC0%(10℃)からSOC100%(75℃)にバッテリセル11aを充電した場合のシミュレーションを実施し、伸縮性部材21の厚さを0.2mmとした。
【0030】
図4から、未充電時の第1領域21aに存在する流体22の体積が0mlであると、バッテリセル11aの面圧が大きく、未充電時の第1領域21aに存在する流体22の体積が大きくなると、バッテリセル11aの面圧が小さくなることがわかる。
【0031】
図5に、緩衝材14の厚さが1mmである場合の未充電時の第1領域21aに存在する流体22の体積とバッテリセル11aの面圧の関係を示す。
【0032】
図5から、バッテリモジュール10のエネルギー密度を考慮して、緩衝材14の厚さを1mm程度とする場合に、バッテリセル11aの面圧を所定値以下にするためには、未充電時の第1領域21aに存在する流体22の体積を所定値以上にする必要があることがわかる。
【0033】
なお、緩衝材14は、複数のバッテリセル11aの間、または、バッテリセル11aとエンドプレート12との間に、配置されていてもよい。
【0034】
また、伸縮性部材21の代わりに、第1領域21aよりもヤング率が高い第3領域21cをさらに有し、第1領域21aおよび第2領域21bは、第3領域21cを介して、接続されている伸縮性部材21Aを使用してもよい(
図6参照)。これにより、第3領域21cの剛性が高くなるため、緩衝材14の耐久性が向上する。
【0035】
第3領域21cのヤング率は、緩衝材14の耐久性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、5MPa以上10GPa以下である。
【0036】
なお、第3領域21cのヤング率は、例えば、第3領域21cを構成する材料や、第3領域21cの厚さを変更したり、第3領域21cの内面および/または外面にテープを貼り付けたりすることにより、調整することができる。
【0037】
テープとしては、第3領域21cの剛性を高くすることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー等の連続繊維にポリアミド等の樹脂を含浸させた高剛性テープが挙げられる。
【0038】
バッテリセル11aとしては、特に限定されないが、例えば、全固体リチウムイオン電池セル、全固体リチウム金属電池セル等の固体電池セル、リチウム金属電池セル等の非水電解液電池セルが挙げられる。これらの中でも、固体電池セルが好ましい。
【0039】
以下、固体電池セルが全固体リチウム金属電池セルである場合について説明する。
【0040】
全固体リチウム金属電池セルは、例えば、正極集電体と、正極合材層と、固体電解質層と、リチウム金属層と、負極集電体と、が順次積層されている。
【0041】
正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0042】
正極合材層は、正極活物質を含み、固体電解質、導電助剤、結着剤等をさらに含んでいてもよい。
【0043】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、LiCoO2、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO4、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4、硫化リチウム、硫黄等が挙げられる。
【0044】
固体電解質層を構成する固体電解質としては、リチウムイオンを伝導することが可能な材料であれば、特に限定されないが、例えば、酸化物系電解質、硫化物系電解質等が挙げられる。
【0045】
負極集電体としては、特に限定されないが、例えば、銅箔等が挙げられる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 バッテリモジュール
11 バッテリセル積層体
11a バッテリセル
12 エンドプレート
13 バインドバー
14 緩衝材
21、21A 伸縮性部材
21a 第1領域
21b 第2領域
21c 第3領域
22 流体
23 タブリード