(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146343
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発光装置のリペア方法及び発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20241004BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241004BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/00 K
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059184
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】白岩 俊紀
【テーマコード(参考)】
5F044
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F044KK06
5F044KK16
5F044LL13
5F142AA32
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD17
5F142FA34
5F142GA02
5F142GA21
5F241AA31
5F241FF06
5F241FF11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のμLEDが実装されている発光装置において、点灯状態が不良のμLEDをリペアする際に、リペアしたμLEDが良好に点灯するようにする。
【解決手段】複数のμLED1が第1導電粒子3が第1絶縁性樹脂層2に保持されている第1導電フィルム4を介して実装されている発光装置10のリペアにおいて、実装μLEDの中からリペア対象のμLEDを特定してレーザーリフトオフ法により透光性基板5から取り除き、μLEDが取り除かれた透光性基板の部分に、第2導電粒子30が第2絶縁性樹脂層20に保持されているリペア用導電フィルム40を個片状に設置した後リペア用μLED1yを設置し、リペア用μLEDを熱圧着して透光性基板に実装する。リペア用第2導電フィルムの第2導電粒子として、第1導電フィルムの第1導電粒子よりも大きな粒径のものを使用するか、第1導電フィルムの第1導電粒子よりもが潰れ難いものを使用する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のμLEDが、第1導電粒子が第1絶縁性樹脂層に保持されている第1導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装されている発光装置のリペア方法であって、以下の工程(A)~(F):
(工程A)
実装されている複数のμLEDの中からリペア対象のμLEDを特定する工程:
(工程B)
リペア対象のμLEDをレーザーリフトオフ法により透光性基板から取り除く工程:
(工程C)
μLEDが取り除かれた、透光性基板の部分に、第2導電粒子が第2絶縁性樹脂層に保持されているリペア用導電フィルムを個片状に設置する工程;
(工程D)
透光性基板に設置されたリペア用導電フィルムに対してリペア用μLEDを設置する工程;
(工程E)
リペア用μLEDを熱圧着して透光性基板に実装する工程;及び
(工程F)
リペア用μLEDが実装された発光装置の動作確認を行う工程
を有し、
第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有しているか、又は第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れ難くなっている、リペア方法。
【請求項2】
第1導電粒子の平均粒径D1が1μm以上5μm以下であり、第2導電粒子の平均粒径D2はD1の1.1倍以上2倍以下である請求項1記載のリペア方法。
【請求項3】
第1導電粒子の20%圧縮弾性率E1(20%K値)が2000MPa以上6000MPa以下であり、第2導電粒子の20%圧縮弾性率E2(20%K値)はE1の1.1倍以上2.5倍以下である請求項1記載のリペア方法。
【請求項4】
第1導電フィルム及びリペア用第2導電フィルムが、それぞれ異方導電性を有するものである請求項1記載のリペア方法。
【請求項5】
工程Aにおいて、発光装置を動作させた際に不点灯のμLEDをリペア対象のμLEDとして特定する請求項1記載のリペア方法。
【請求項6】
工程Bにおいて、リペア対象のμLEDをその直下の第1導電フィルムと共にレーザーリフトオフ法により取り除く請求項1記載のリペア方法。
【請求項7】
工程Cにおいて、レーザーリフトオフ法によりリペア用導電フィルムを個片状に設置する請求項1記載のリペア方法。
【請求項8】
工程Dにおいて、レーザーリフトオフ法によりリペア用μLEDを設置する請求項1記載のリペア方法。
【請求項9】
複数のμLEDが透光性基板に実装されている発光装置であって、
大多数のμLEDについては、第1導電粒子が第1絶縁性樹脂層に保持されている第1導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装され、残余の少数のμLEDについては、第2導電粒子が第2絶縁性樹脂層に保持されているリペア用第2導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装され、
第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有しているか、又は第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れていない発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子としてμLED(Light Emitting Diode)が実装された発光装置のリペア方法及び発光装置に関する。具体的には、実装された複数のμLEDの内の発光状態が不良のμLEDを良品のμLEDにリペアする発光装置のリペア方法及びリペアされたμLEDを有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、膨大な数のμLEDをパネル基板に実装したフルカラーディスプレイなどの発光装置が注目されている(
図7参照)。このような発光装置10は、多数個のμLED100が、熱硬化性の絶縁性樹脂層101に導電粒子102が保持された(異方性)導電フィルム103を介して透光性基板104に熱圧着により実装された構造を有している。この構造においては、μLED100と透光性基板104との間の導通を確保するために、μLED100の電極100aと透光性基板104の電極(図示せず)との間で、導電粒子102を押し潰すように熱圧着して実装している。
【0003】
ところで、このような発光装置10においては、一部のμLEDが不点灯となった場合には、そのような不点灯のμLEDをリペアすることが行われている(特許文献1、2等)。具体的には、
図8に示すように、まず、不点灯のμLED100に対して、レーザーリフトオフ法により、透光性基板104側からレーザーLを照射することにより透光性基板104から導電フィルムと共に選択的に取り除き、続いて、
図9に示すように、透光性基板104の不点灯μLEDが取り除かれた部分に、スタンプ法やレーザーリフト法等により、個片とする以外、導電フィルム103と同じ構成のリペア用導電フィルム103aと、μLED100と同じ構成のリペア用μLED100Rとを設置し、
図10に示すように、リペア用μLED100Rの表面積よりも非常に大きな表面積を有しているヒートツール105で、リペア用μLED100Rを透光性基板104に押し込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-140934号公報
【特許文献2】特開2021-144970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図10のように押し込んだ場合、その時点では、リペア用μLED100Rの周囲のμLED100と透光性基板104との間の導電フィルム103を構成する絶縁性樹脂層101は既に硬化しているため、ヒートツール105での押し込みでは変形し難くなっている。このため、リペア用μLED100Rを、その周囲のμLED100と同じ高さまでしか押し込めず、ヒートツール105を引き上げると、
図11に示すように、スプリングバック現象が発生し、リペア用μLED100Rの電極100Raと透光性基板104の電極(図示せず)との間の導電粒子102aが潰れず、導通抵抗が増大し、場合によりリペア用μLED100Rが不点灯になり、再度のリペアを行う必要が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決しようとするものであり、複数のμLEDが、導電粒子が絶縁性樹脂層に保持されている導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装されている発光装置において、点灯状態が不良のμLEDをリペアする際に、リペアしたμLEDが良好に点灯するようリペアすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上述の従来の問題が、リペア用μLEDを透光性基板に設置する際に使用するリペア用導電フィルムとして、複数のμLEDを透光性基板に最初に設置する際に使用した当初導電フィルムと同じものを使用したことに起因しているのではないかとの仮定の下、当初導電フィルム及びリペア用導電フィルムのそれぞれを構成する導電粒子について検討した。その結果、後述するように、当初導電フィルムの導電粒子よりもリペア用導電フィルムの導電粒子の方が大きな粒径を有しているか、又は当初導電フィルムの導電粒子よりもリペア用導電フィルムの導電粒子の方が潰れ難くなっていれば上述の本発明の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、複数のμLEDが、第1導電粒子が第1絶縁性樹脂層に保持されている第1導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装されている発光装置のリペア方法であって、以下の工程(A)~(F):
(工程A)
実装されている複数のμLEDの中からリペア対象のμLEDを特定する工程:
(工程B)
リペア対象のμLEDをレーザーリフトオフ法により透光性基板から取り除く工程:
(工程C)
μLEDが取り除かれた、透光性基板の部分に、第2導電粒子が第2絶縁性樹脂層に保持されているリペア用導電フィルムを個片状に設置する工程;
(工程D)
透光性基板に設置されたリペア用導電フィルムに対してリペア用μLEDを設置する工程;
(工程E)
リペア用μLEDを熱圧着して透光性基板に実装する工程;及び
(工程F)
リペア用μLEDが実装された発光装置の動作確認を行う工程
を有し、
第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有しているか、又は第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れ難くなっているリペア方法である。
【0009】
また、本発明は、複数のμLEDが透光性基板に実装されている発光装置であって、
大多数のμLEDについては、第1導電粒子が第1絶縁性樹脂層に保持されている第1導電フィルムを介して透光性基板に圧着(例えば熱圧着)により実装され、残余の少数のμLEDについては、第2導電粒子が第2絶縁性樹脂層に保持されているリペア用第2導電フィルムを介して透光性基板に圧着(例えば熱圧着)により実装され、
第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有しているか、又は第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れていない発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光装置のリペア方法では、(a)第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有していること、又は(b)第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れ難くなっていること(換言すれば、20%圧縮弾性率が高くなっている)が特徴となっている。このため、接続対象の対向電極間に安定的な導通を実現することができる。従って、本発明の発光装置のリペア方法によれば、複数のμLEDが、導電粒子が絶縁性樹脂層に保持されている導電フィルムを介して透光性基板に圧着(例えば熱圧着)により実装されている発光装置において、点灯状態が不良のμLEDをリペアすると、リペアしたμLEDを良好に点灯するようにでき、再リペアを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のリペア方法を適用する前の発光装置の一部のμLEDが不点灯である様子を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明のリペア方法の工程説明図である。
【
図3】
図3は、本発明のリペア方法の工程説明図である。
【
図4】
図4は、本発明のリペア方法の工程説明図である。
【
図5】
図5は、本発明のリペア方法の工程説明図である。
【
図6】
図6は、本発明のリペア方法を適用した後の発光装置の概略断面図である。
【
図7】
図7は、従来の発光装置の一部のμLEDが不点灯である様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、従来の発光装置のリぺア方法の工程説明図である。
【
図9】
図9は、従来の発光装置のリペア方法の工程説明図である。
【
図10】
図10は、従来の発光装置のリペア方法の工程説明図である。
【
図11】
図11は、従来の発光装置のリペア方法を適用した後の発光装置の一部のμLEDが不点灯である様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<発光装置のリペア方法>
本発明は、発光装置のリペア方法であり、リペア方法を適用する発光装置は、代表的には
図1に示す構造を有する。即ち、発光装置10のリペア方法であって、複数のμLED1が、第1絶縁性樹脂層2に第1導電粒子3が保持されている第1導電フィルム4を介して透光性基板5に熱圧着により実装されている発光装置10のリペア方法であって、以下の工程(A)~(F)を有する。以下、各工程を説明した後、本発明を特徴づける導電粒子の特徴について説明し、更にリペア方法に適用可能な各構成要素について説明する。
【0014】
(工程A)
工程Aは、実装されている複数のμLEDの中からリペア対象のμLEDを特定する工程である。リペア対象のμLEDを特定するための指標としては、点灯の有無、発光量不足の有無、色や形状や大きさの外観異常の有無、アライメント誤差の有無等が挙げられる。通常、不点灯なものをリペア対象とする。
図1の場合、中央の不点灯μLEDがリペア対象のものとして特定される。なお、リペア前の発光装置10は、
図1に示すように、複数のμLED1が、熱硬化した第1絶縁性樹脂層2に第1導電粒子3が保持された第1導電フィルム4を介して透光性基板5に熱圧着により実装された構造を有している。このような発光装置10では、μLED1の電極1aと透光性基板5の電極(図示せず)との間に押し潰された導電粒子2が配されている。
【0015】
(工程B)
工程Bは、リペア対象のμLED(例えば、不点灯μLED)をレーザーリフトオフ法により透光性基板から取り除く工程である。具体的には、
図2に示すように、取り除くべき不点灯のμLED1xに対して、発光装置10の透光性基板5側からレーザーLを照射し、不点灯のμLED1xをその直下の第1導電フィルム4(換言すれば、不点灯のμLED1xと透光性基板5との間に位置している第1導電フィルム4)と共に、別途用意した粘着フィルムに選択的に移送し、取り除くことができる。レーザーリフトオフ法を実施するためのレーザーリフトオフ装置としては、市販のレーザーリフトオフ装置(例えば、商品名「In visi LUM-XTR」、信越化学工業(株)製)を使用することができる。また、レーザーリフトオフ条件も、リペア対象のμLEDや発光装置の形状、構成材料、構造や、使用するレーザーリフトオフ装置の推奨条件等を考慮して適宜選択することができる。なお、第1導電フィルム4は、異方導電性であってもよい。
【0016】
(工程C)
工程Cは、μLEDが取り除かれた、透光性基板の部分に、第2絶縁性樹脂層に第2導電粒子が保持されているリペア用導電フィルムを個片状に設置する工程である。具体的には、
図3に示すように、μLEDが取り除かれた発光装置10の透光性基板5の露出表面に、第2絶縁性樹脂層20に第2導電粒子30が保持されているリペア用第2導電フィルム40を個片状に設置する。リペア用第2導電フィルム40を個片状に設置する手法としては、スタンプ法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の手法を採用することができるが、レーザーリフトオフ法により設置することが好ましい。例えば、第2絶縁性樹脂層20に第2導電粒子30が保持されているリペア用第2導電フィルム40が、透明基板の粘着層の全面に形成された積層体(透明基板/粘着層/リペア用第2導電フィルム)に対して、リペア用第2導電フィルム40が個片状に残るように、レーザーリフトオフ法によりレーザーを透明基板側から照射して不要なリペア用第2導電フィルム40を除去することにより多数の個片状のリペア用第2導電フィルム40を有する導電フィルム転写シートを取得し、その導電フィルム転写シートのリペア用第2導電フィルム40を、露出した透光性基板5の表面に位置合わせし、導電フィルム転写シートの透明基板側からレーザーを照射してリペア用第2導電フィルム40を透光性基板5の露出表面に移送することができる。なお、リペア用第2導電フィルム40は異方導電性であってもよい。
【0017】
(工程D)
工程Dは、透光性基板に設置されたリペア用導電フィルムに対してリペア用μLEDを設置する工程である。具体的には、
図4に示すように、μLEDが取り除かれた発光装置10の露出したリペア用第2導電フィルム40に、リペア用μLED1yをその電極1ya側から設置する。リペア用μLED1yをリペア用第2導電フィルム40に設置する手法としては、公知の手法を採用することができる。例えば、レーザーリフトオフ法によりμLEDウエハ基板の裏面からリペア用μLED1yにレーザーを照射し、直接的にリペア用第2導電フィルム40に移送することができる。あるいは、粘着性転写シートに予めリペア用μLEDを転写しておき、転写シートからリペア用第2導電フィルム40に移送させてもよい。
【0018】
(工程E)
工程Eは、リペア用μLEDを熱圧着して透光性基板に実装する工程である。具体的には、
図5に示すように、リペア用μLED1yを、その上からヒートツールHで加熱しながら透光性基板5に押し込み、リペア用第2導電フィルム40の第2導電粒子30を押し潰しながら熱硬化性の第2絶縁性樹脂層20を熱硬化させることにより実装する。これにより
図6の構造の発光装置10を取得することができる。
【0019】
(工程F)
工程Fは、リペア用μLEDが実装された発光装置の動作確認を行う工程である。具体的には、発光装置を動作させ、リペア用μLED1yが点灯することを確認する。これにより発光装置のリペアが完了する。
【0020】
<本発明の発光装置のリペア方法を特徴づける導電粒子の特徴>
本発明の発光装置のリペア方法においては、(a)第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が大きな粒径を有していること、又は(b)第1導電フィルムの第1導電粒子よりもリペア用第2導電フィルムの第2導電粒子の方が潰れ難くなっている(換言すれば、20%圧縮弾性率が高くなっている)ことが特徴となっている。勿論、(a)と(b)とを同時に満たしてもよい。
【0021】
前者(a)の場合、リペア用μLEDを実装するために透光性基板にリペア用導電フィルムとリペア用μLEDとを設置した際に、リペア用μLEDの透光性基板表面からの高さが、実装済の周囲のμLEDの高さよりも高くなり、その結果、ヒートツールでリペア用μLEDを熱圧着で実装する際に第2導電粒子に圧力を十分に集中し、接続対象の対向電極間で安定的な導通を実現することができる。
【0022】
第1導電フィルムの第1導電粒子の平均粒径D1は、粒子捕捉効率やμLEDのサイズへの適用の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。また、第2導電粒子の平均粒径D2は、μLEDのサイズに適用させ且つリペア性を担保させるために、第1導電粒子の平均粒径D1の好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.7倍以下である。なお、導電粒子の平均粒径は、公知の手法により測定でき、例えば画像型粒度分布計(FPIA-3000、マルバーン・パナリティカル社製)で測定することができる。
【0023】
また、後者(b)の場合、ヒートツールでリペア用μLEDを熱圧着で実装する際に少ない圧力で、接続対象の対向電極表面の酸化皮膜を突き破ることができ、接続対象の対向電極間で安定的な導通を実現することができる。
【0024】
導電粒子の潰れ易さは、圧縮弾性率で評価することができる。これは、導電粒子の圧縮弾性率の数値が高い程、導電粒子が潰れ難いという性質を示すからであり、また、20%圧縮時(20%K値)で評価するのは、20%も圧縮すると、圧縮された導電粒子による導通が安定するからである。第1導電粒子の20%圧縮弾性率E1(20%K値)は、μLEDに適用するために、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは3000MPa以上、好ましくは6000MPa以下、より好ましくは5000MPa以下である。また、第2導電粒子の20%圧縮弾性率E2(20%K値)は、μLEDのサイズに適用させ且つリペア性を担保させるためにE1の好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、好ましくは2.5倍以下、より好ましくは2倍以下であり、好ましくは4000MPa以上10000MPa以下である。20%圧縮弾性率は、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー・インストルメンツ社製、フィッシャースコープH-100)を用いて導電粒子に圧縮荷重を加えたときの導電粒子の圧縮変量を測定し、導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)をF、導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)をS、導電粒子の平均半径(mm)をRとしたとき、以下式により算出することができる。
【0025】
【0026】
以上説明したとおり、本発明の発光装置のリペア方法によれば、複数のμLEDが、導電粒子が絶縁性樹脂層に保持されている導電フィルムを介して透光性基板に熱圧着により実装されている発光装置において、点灯状態が不良のμLEDをリペアすると、リペアしたμLEDを良好に点灯するようにでき、再リペアを不要とすることができる。
【0027】
<本発明のリペア方法に適用する構成要素の一例の説明>
(発光装置10)
本発明のリペア方法が適用される発光装置10は、μLEDを発光素子として使用するものであり、フルカラーディスプレイ等の画像表示装置、照明装置などを例示することができる。μLEDに代えて、ミニLEDなどの別の微小な発光素子や微小な部品(電子部品)に適用することもできる。大きさの一例として、1辺の最大長が200μm以下のものが挙げられる。10~30μm角の手作業が極めて困難な大きさになるとこともある。
【0028】
(μLED1)
μLEDとしては、公知のものを使用することができ、平面視したときに好ましくは最大長が3μm以上100μm以下のものであり、その片面に電極が配置されているフリップチップ型のものである。電極としては、公知のμLEDに適用されているものを適宜適用することができ、例えば、インジウムITO等の透明電極を好ましく適用することができる。また、電極の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。
【0029】
(第1導電フィルム4)
第1導電フィルム4は、第1絶縁性樹脂層2に第1導電粒子3が保持されているものであって、導電フィルムあるいは異方性導電フィルムとして使用できるものである。また、第1導電フィルム4は、透光性基板5の全面にベタで適用されてもよく、スタンプ法、インクジェット法、レーザーリフトオフ法等により個片状に適用されてもよい。
【0030】
(第1導電粒子3)
第1導電フィルム4を構成する第1導電粒子3は、公知の導電フィルムや異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、半田などの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケル、金などの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。これにより、μLEDに半田バンプなどの接続部位が設けられていない場合でも、導通が可能となる。
【0031】
第1導電粒子3に関し、平均粒径については既に説明したとおりであるが、粒子面密度の下限に関しては、好ましくは500個/mm2以上、上限に関しては、好ましくは200000個/mm2以下、より好ましくは150000個/mm2以下、特に好ましくは120000個/mm2以下とすることができる。
【0032】
また、第1導電粒子3は、フィルム面視野でランダムに配置されていてもよいが、個々に独立して配置されていることが好ましい。この場合、導電粒子の個数基準で95%以上が独立していることが好ましい。更に、導電粒子は、個々に独立して配置されているだけでなく、規則的に配列されていることが好ましい。特に、フィルム面視野で互いに直交する方向のそれぞれの方向における粒子配置が周期的に繰り返される配置が好ましい。例えば、6方格子、長方格子、斜方格子、正方格子、その他の矩形格子等の格子配列を挙げることができる。また、導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させた配列としてもよい。このように、フィルム面視野で導電粒子を規則配列させることにより、導電粒子面密度を均一にすることができ、レーザー光の照射によるμLEDの転写率をさらに向上させることができる。
【0033】
(第1絶縁性樹脂層2)
第1絶縁性樹脂層2は、第1導電粒子3を保持するものであり、導電粒子を確実に保持するために、ヒートツールHで熱圧着を行った際に熱硬化する熱硬化性樹脂組成物から形成されたものであり、熱圧着前の層厚としては、導電粒子捕捉性の観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0034】
第1絶縁性樹脂層2は、透光性基板5への安定した貼り付け性のために優れたクッション性(衝撃吸収性)を示すことが好ましい。これにより、μLEDのずれ、変形、破壊、抜けなどの不良の発生を抑制し、レーザーの照射によるμLEDの転写率を向上させることができる。このようなクッション性は、後述するように、デュロメータA硬度及び/又は貯蔵弾性率で評価することができる。
【0035】
第1絶縁性樹脂層2のデュロメータA硬度は、好ましくは20以上40以下、より好ましくは20以上35以下、特に好ましくは20以上30以下である。デュロメータA硬度が高すぎる場合、第1絶縁性樹脂層が硬すぎて、μLEDの変形、破壊などの不良が発生し易くなる傾向にあり、デュロメータA硬度が低すぎる場合、第1絶縁性樹脂層2が柔らかすぎて、μLEDのずれなどの不良が発生し易くなる傾向にある。第1絶縁性樹脂層2のデュロメータA硬度は、JIS K6253に準拠し、デュロメータAを用いてゴム硬度(日本工業規格JIS-A硬度)で測定することができる。
【0036】
第1絶縁性樹脂層2の貯蔵弾性率は、好ましくは60MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。貯蔵弾性率が高すぎる場合、レーザー照射で高速に弾き出されたμLEDの衝撃を吸収できず、μLEDの転写率が低下する傾向にある。貯蔵弾性率は、押し込み試験装置を用いた動的粘弾性試験(温度30℃、周波数200Hz、直径100μmのフラットパンチを使用、目標押し込み深さを1μm、周波数1~200Hzの範囲を掃引)により求めることができる。
【0037】
また、第1絶縁性樹脂層2の熱硬化により形成される熱硬化樹脂層について、JIS K7244に準拠した引張モードで測定された貯蔵弾性率(30℃)は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは2000MPa以上である。温度30℃における貯蔵弾性率が低すぎる場合、良好な導通性が得られず、接続信頼性も低下する傾向にある。なお、温度30℃における貯蔵弾性率は、JIS K7244に準拠し、粘弾性試験機(レオバイブロン、株式会社エー・アンド・デイ)を用いた引張モードで、例えば、周波数11Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で測定することができる。
【0038】
第1絶縁性樹脂層2を形成するための熱硬化性樹脂組成物としては、好ましくは、ゴム成分と、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、無機フィラーとを含有するものである。必要に応じて、発明の効果を損なわない範囲で公知の他の添加剤を含有することができる。
【0039】
*ゴム成分
熱硬化性樹脂組成物が含有するゴム成分は、第1絶縁性樹脂層にクッション性(衝撃吸収性)を付与するための成分であり、クッション性の良好なエラストマーであれば特に限定されるものではなく、具体例として、例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)などを挙げることができる。これらの中でも、アクリルゴム、シリコーンゴムから選択される1種以上であることが好ましい。ゴム成分の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0040】
*膜形成樹脂
膜形成樹脂としては、膜形成性の観点から、好ましくは約10000以上80000以下の重量平均分子量のフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を用いることが好ましい。膜形成樹脂の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、特に好ましくは35質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下である。
【0041】
*熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができ、特にエポキシ化合物が好ましい。これらの化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーであってもよい。熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、特に好ましくは35質量部以下である。
【0042】
熱硬化性樹脂として使用できるエポキシ化合物としては、分子内に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等であってもよく、ウレタン変性のエポキシ樹脂であっても構わない。これらの中でも、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば三菱ケミカル株式会社製の商品名「YL980」を挙げることができる。熱硬化性樹脂としてエポキシ化合物を使用する場合、エポキシ化合物の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0043】
*熱硬化剤
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂に応じて選択され、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ化合物である場合には、熱アニオン重合開始剤又は熱カチオン重合開始剤を好ましく選択することができ、レーザー光による硬化反応を抑制し、熱により速硬化させることができる熱カチオン重合開始剤をより好ましく選択することができる。熱硬化剤の含有量は、熱硬化剤の種類や熱硬化性樹脂の種類等に応じて決定することができる。熱硬化剤の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、特に好ましくは6質量部以下である。
【0044】
なお、エポキシ化合物に好ましく適用可能な熱カチオン重合開始剤としては、熱によりカチオン重合型化合物をカチオン重合させ得る酸を発生するものであり、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができる。これらの中でも、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。芳香族スルホニウム塩系の重合開始剤の具体例としては、例えば三新化学工業株式会社製の商品名「サンエイドSI-60L」を挙げることができる。このような熱カチオン重合開始剤の含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上、より好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。
【0045】
*無機フィラー
熱硬化性樹脂組成物中の無機フィラーは、第1絶縁性樹脂層2のデュロメータA硬度、周波数200Hzにおける貯蔵弾性率、及び硬化後の貯蔵弾性率を調整する目的で用いられるものであり、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、シランカップリング剤、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等を用いることができる。無機フィラーは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0046】
無機フィラーの含有量は、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、特に好ましくは8質量部以上、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、特に好ましくは12質量部以下である。特に、ゴム成分の含有量が、ゴム成分と膜形成樹脂と熱硬化性樹脂と熱硬化剤と無機フィラーとの合計100質量部に対して2質量部以上10質量部以下である場合に、無機フィラーの含有量を8質量部以上12質量部以下とすることにより、所望のデュロメータA硬度、周波数200Hzにおける貯蔵弾性率、及び硬化後の貯蔵弾性率を容易に実現可能となる。
【0047】
(個片状のリペア用第2導電フィルム40)
個片状のリペア用第2導電フィルム40は、リペア対象のμLEDが取り除かれた透光性基板5の露出した部分に設けられる導電フィルムであり、第2絶縁性樹脂層20に第2導電粒子30が保持されたものである。リペア用第2導電フィルム40を個片化する手法としては、公知の手法を採用することができ、スクリーン印刷法、インクジェット法、レーザーリフトオフ法等を採用することができるが、レーザーリフトオフ法を好ましく採用することができる。
【0048】
なお、リペア用第2導電フィルム40を構成する第2絶縁性樹脂層20及び第2導電粒子30については、導電粒子の平均粒径や潰れ難さについて段落0020~0026に記載した内容以外については、第1絶縁性樹脂層2及び第1導電粒子3と同様の構成とすることができる。目的に応じて調整するために、異なる構成としてもよい。
【0049】
(リペア用μLED1y及びその電極1ya)
リペア用μLED1y及びその電極1yaについては、既に説明したμLED1及びその電極1aと同じ構成とすることができる。
【0050】
(透光性基板5)
透光性基板5としては、μLEDを使用した公知の発光装置の透光性基板を採用することができ、例えば、ガラス基板、石英基板、メタアクリル酸エステル基板、ポリカーボネート基板等を使用することができる。透光性基板5の厚み及び透光性の程度は、レーザーリフトオフ法を適用できる厚み及び透光性の程度であればよい。
【0051】
<発光装置>
以上説明した発光装置のリペア法を実施することにより取得したリペアされたμLEDを有する発光装置10それ自体も、本発明の一部である。即ち、
図6に示すように、複数のμLED1が透光性基板5に実装されている発光装置10は、大多数のμLED1については、第1絶縁性樹脂層2に第1導電粒子3が保持されている第1導電フィルム4を介して透光性基板5に熱圧着により実装され、残余の少数のμLED1y(リペアされたμLED)については、第2絶縁性樹脂層20に第2導電粒子30が保持されているリペア用第2導電フィルム40を介して透光性基板5に熱圧着により実装されている構造を有する。
図6の態様では、第1導電フィルム4並びにリペア用第2導電フィルム40は熱硬化した状態となっている。
【0052】
この発光装置10では、第1導電フィルム4の第1導電粒子3よりもリペア用第2導電フィルム40の第2導電粒子30の方が大きな粒径を有しているか、又は第1導電フィルム4の第1導電粒子3よりもリペア用第2導電フィルム40の第2導電粒子30の方が潰れている構造を有している。導電粒子の平均粒径の大きさや潰れ方については、本発明の発光装置のリペア方法で説明したとおりである。なお、第2導電粒子の方が第1導電粒子よりも大きな粒径を有している場合、透光性基板表面からリペアされたμLED表面までの高さが、その周囲のリペアされていないμLEDの高さよりも高くなっている構造を有している。このような構造を有する本発明の発光装置は、接続対象の対向電極間に安定的な導通を実現することができ、リペアしたμLEDの再リペアを不要もしくは極めて少なくすることができる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【0054】
参考例<導電粒子の潰れ具合とLED点灯・不点灯との関係>
(導電フィルムの作成)
フェノキシ樹脂(PKHH、巴工業株式会社)50質量部、液状エポキシ樹脂(YL980、三菱ケミカル株式会社)40質量部、ヒュームドシリカ(RY200、日本アエロジル株式会社)5質量部、及びカチオン重合開始剤(サンエイドSI-60L、三新化学工業株式会社)5質量部を均一に混合することにより熱硬化性の絶縁性樹脂組成物を調製した。
【0055】
得られた絶縁性樹脂組成物を、透光性の厚さ0.7mmのガラス基材に塗布し、60℃、3minの乾燥処理を施すことにより、4μm厚の熱硬化性の絶縁性樹脂層を形成した。この絶縁性樹脂層に対し、特許第6187665号の段落0111-0112及び
図1Aに記載の導電粒子規則配列処理にて、表1の平均粒子径及び20%圧縮弾性率(20%K値)を示す導電粒子1~7(ミクロパールシリーズAU、積水化学工業株式会社)を、それぞれ粒子密度58000個/mm
2となるように六方格子状に規則配列させることにより、透光性基板上に導電フィルムを作成した。なお、透光性基板の導電フィルム側表面には、搭載するべきμLEDの電極に対応して厚さ200nmの透明ITO電極パターンが形成されていた。
【0056】
(発光装置の作成)
導電フィルムに対して、片面に電極が形成された縦60μm×横30μm×高さ10μm(含む電極)の大きさのμLED(電極個数:2個、電極寸法:縦15μm×横12μm、電極高さ:2μm)が、個数密度2518個/cm2(縦ピッチ216μm;横ピッチ192μm)で配置されているμLEDウエハのμLED側面を対向させ、以下の条件のレーザーリフトオフ法によりμLEDを移送させ、ヒートツール(160℃、60MPa一定、30秒)で熱圧着(本圧着)することにより発光装置を作成した。これにより、導電粒子1~7の圧着前後の潰れ率を約5%刻みで比較し、潰れ率と点灯/不点灯の関係性を検討することができた。
【0057】
使用レーザーリフトオフ装置: 信越エンジニアリング製LUM-XTR
レーザー: 発振波長248nmのエキシマレーザー
レーザー光のパルスエネルギー: 600J
フルーエンス(fluence): 150J/cm2
パルス幅(照射時間): 30000ピコ秒
パルス周波数: 0.01kHz
照射パルス数: 各μLEDにつき1パルス
【0058】
得られた発光装置について、点灯/不点灯の動作確認をした結果を表1に示す。表1の結果から、導電粒子に関し、透光性基板の透明電極の表面酸化膜を突き破りつつ且つ対向電極との接触面積をある程度確保しなければμLEDの点灯が困難であることが分かった。例えば、導電粒子2は、導電粒子1よりも20%K値が大きく硬いものであるが、導電粒子の大きさが小さすぎるため、電極との接触面積が十分とはいえず、優位性が確認できなかったと考えられる。従って、発光装置のμLEDのリペアを行うに当たっては、導電粒子の大きさとリペア後の導電粒子の潰れ量とを検討する必要があることが分かる。
【0059】
【0060】
実施例1-6及び比較例1-5
参考例と同様に発光装置を作成した。但し、本圧着用導電フィルムの導電粒子として、表2に示した平均導電粒子径(粒子径[μm])及び20%K値[MPa]のものを使用し、導電フィルムの絶縁性樹脂層厚(樹脂厚[μm])を表2に示した厚みとした。また、熱圧着後の導電粒子の厚み方向(潰れ方向)の粒径(粒子潰れ[μm])、熱圧着後の透光性基板表面からμLED表面までの距離(μLED最表面高さ[μm])をそれぞれ表2に示すように設定した。
【0061】
次に、発光装置の不点灯のμLEDについて、以下の条件のレーザーリフトオフ法によりμLEDをその直下の熱硬化した導電フィルムと共に剥離除去した。
【0062】
使用レーザーリフトオフ装置: 信越エンジニアリング製LUM-XTR
レーザー: 発振波長248nmのエキシマレーザー
レーザー光のパルスエネルギー: 600J
フルーエンス(fluence): 150J/cm2
パルス幅(照射時間): 30000ピコ秒
パルス周波数: 0.01kHz
照射パルス数: 各μLEDにつき1パルス
【0063】
続いて、不点灯μLEDと直下の熱硬化した導電フィルムとが除去された透光性基板の露出した部分に、上述のレーザーリフトオフ法に準じて、表2に示すリペア用導電フィルムを移送し、続いて本圧着時に使用したμLEDと同じリペア用μLEDを移送し、更に熱圧着した。但し、リペア用導電フィルムの導電粒子として、表2に示した平均粒子径(粒子径[μm])及び20%K値[MPa]のものを使用し、導電フィルムの絶縁性樹脂層厚(樹脂厚[μm])を表2に示した厚みとした。また、リペア時の熱圧着後の導電粒子の厚み方向(潰れ方向)の粒径(粒子潰れ[μm])、熱圧着後の透光性基板表面からμLED発光表面までの距離(μLED最表面高さ[μm])をそれぞれ表2に示すように設定した。リペアが実施された発光装置の動作確認結果を表2に示す。
【0064】
なお、実施例1-2及び比較例1-3は、導電粒子の大きさの重要性に着目した例であり、実施例3-4及び比較例4-5は、導電粒子の潰れ難さの重要性に着目した例であり、実施例5-6は、導電粒子の大きさと導電粒子の潰れ難さとの両方の重要性に着目した例である。
【0065】
【0066】
表2の実施例1-2の結果から、リペア用導電フィルムの導電粒子の大きさが、本圧着に使用した導電フィルムの導電粒子よりも大きいとリペアが成功したことが分かる。それに対し、比較例1-3の結果から、リペア用導電フィルムの導電粒子の大きさが、本圧着に使用した導電フィルムの導電粒子と同じ又は小さいと、リペアが不成功であったことがわかる。
【0067】
また、表2の実施例3-4の結果から、リペア用導電フィルムの導電粒子の潰れ難さ(硬さ)が、本圧着に使用した導電フィルムの導電粒子よりも潰れ難い(硬い)とリペアが成功したことが分かる。それに対し、比較例4-5の結果から、リペア用導電フィルムの導電粒子の潰れ難さ(硬さ)が、本圧着に使用した導電フィルムの導電粒子と同じ又は柔らかいと、リペアが不成功であったことがわかる。
【0068】
表2の実施例5-6の結果から、リペア用導電フィルムの導電粒子の大きさと潰れ難さ(硬さ)が、本圧着に使用した導電フィルムの導電粒子よりも大きく且つ潰れ難い(硬い)とリペアが成功したことが分かる。