(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146345
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】環境業務統合管理システムおよび環境業務統合管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059186
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利光
(72)【発明者】
【氏名】梅北 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】町田 芳広
(72)【発明者】
【氏名】天野 光司
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩貴
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】企業等においてGXを推進しやすくすることが可能な技術を提供する。
【解決手段】環境業務統合管理システムは、環境業務の統合管理を行うシステムであって、ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定するKPI設定部と、設定されたKPIに基づいて、管理対象の環境負荷情報を収集する情報収集部と、収集された環境負荷情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境業務の統合管理を行う環境業務統合管理システムであって、
ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定するKPI設定部と、
前記設定されたKPIに基づいて、前記管理対象の環境負荷情報を収集する情報収集部と、
前記収集された環境負荷情報を出力する出力部と
を備える
環境業務統合管理システム。
【請求項2】
前記管理対象に係る企業と類似する企業を検索する類似企業検索部をさらに備え、
前記出力部は、少なくとも、前記類似企業検索部が検索した企業の行っている改善施策に基づいて、前記改善施策を導入した際の効果を試算して、当該試算の結果を出力する、請求項1に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記類似企業検索部が検索した企業の行っている改善施策と、前記管理対象の環境負荷情報に基づいて、前記改善施策を導入した際の環境負荷の改善効果を出力する、請求項2に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項4】
前記収集された環境負荷情報に基づいて、前記管理対象による環境負荷を低減する改善施策を検索する改善施策検索部をさらに備え、
前記出力部は、前記検索結果として取得された改善施策を出力する、
請求項1に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項5】
前記検索結果として取得された改善施策の各々について、環境負荷の低減効果のシミュレーションを行う効果シミュレーション部をさらに備え、
前記出力部は、前記シミュレーションの結果とともに前記検索結果として取得された改善施策を出力する、
請求項4に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項6】
前記シミュレーションの結果に基づいて、前記検索結果として取得された改善施策について環境負荷の低減効果が高い順に優先順位を判定する優先順位判定部をさらに備え、
前記出力部は、前記検索結果として取得された改善施策が複数存在する場合、前記判定された優先順位によって当該複数の改善施策を出力する、
請求項5に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項7】
前記改善施策検索部は、類似企業の施策の中から前記改善施策と共通の改善施策を出力する、
請求項6に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項8】
前記出力部は、表示する情報および当該情報の掲載順序をユーザIDに応じて変更する、請求項1に記載の環境業務統合管理システム。
【請求項9】
環境業務の統合管理を行う環境業務統合管理方法であって、
少なくともプロセッサと記憶装置とを備えるコンピュータが、
ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定し、
前記設定されたKPIに基づいて、前記管理対象の環境負荷情報を収集し、
前記収集された環境負荷情報を出力する
環境業務統合管理方法。
【請求項10】
前記管理対象に係る企業と類似する企業を検索し、
少なくとも、前記検索した企業の行っている改善施策に基づいて、前記改善施策を導入した際の効果を試算して、当該試算の結果を出力する、
請求項9に記載の環境業務統合管理方法。
【請求項11】
前記検索した企業の行っている改善施策と、前記管理対象の環境負荷情報に基づいて、前記改善施策を導入した際の環境負荷の改善効果を出力する、請求項10に記載の環境業務統合管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、環境業務の統合管理を行うためのコンピュータ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進みつつある今、その要因の一つであるとされる温室効果ガスの排出量(以下、「CO2排出量」と称する)を削減するために化石燃料由来のエネルギーから再生可能エネルギーへと転換する、所謂グリーントランスフォーメーション(Green Transformation; 以下、「GX」とも称する)は、地球上で暮らす我々人類にとって、早急に実現すべき喫緊の社会課題である。
【0003】
こうした中、産業界を中心に、GXへの取り組みの度合いを、重要業績評価指標(Key Performance Indicator; KPI)として扱おう、という機運が高まっている。その一例として、特許文献1には、銀行が融資判断を行う際の判断基準として、融資先企業の倒産確率や資本コスト率、市場効率的付加価値に加えて、環境への貢献度等の非財務情報を金銭的な価値として評価した値等を総合的に加味した経営指標を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GXを推進するためには、GXへの取り組みについて現状を的確に捉え、有効な改善施策を講じて実施することが欠かせない。その前提として、自社や融資先の企業等が行う環境業務に関する各種情報は、KPIとして活用することができる形で、一括して管理されていることが好ましい。
【0006】
しかしながら、環境業務に関する各種情報の管理体制は、企業経営上の各種の意思決定や金融機関における融資判断の際に従来KPIとされてきた予算や納期等の情報の管理体制と比べて立ち遅れていた。このことがGXを推進するうえで障壁となっており、新規な技術の開発が待たれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、企業等においてGXを推進しやすくすることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による環境業務統合管理システムは、環境業務の統合管理を行うシステムであって、ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定するKPI設定部と、設定されたKPIに基づいて、管理対象の環境負荷情報を収集する情報収集部と、収集された環境負荷情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、企業等においてGXを推進しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る環境業務統合管理システムを含むシステム全体の構成の一例を示す図である。
【
図2】環境業務統合管理システムの機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】環境業務統合管理システムによって管理される管理対象群の一例を示す図である。
【
図4】環境負荷情報可視化処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図5】改善施策提案処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】環境業務統合管理システムを含むシステム全体の構成の別の一例を示す図である。
【
図15】環境業務統合管理システムによって管理される管理対象群の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、「インタフェース装置」は、一つ以上のインタフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインタフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インタフェースデバイス。I/O(Input/Output)インタフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインタフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインタフェースデバイスは、通信インタフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインタフェースデバイス、例えば、キーボードおよびポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インタフェースデバイス。一つ以上の通信インタフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インタフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インタフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0013】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、または、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0015】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0016】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインタフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0018】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムを主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。また、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0019】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のテーブルでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部または一部が一つのテーブルであってもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「環境業務統合管理システム」は、一つ以上の物理的な計算機で構成されたシステムでもよいし、物理的な計算リソース群(例えば、クラウド基盤)上に実現されたシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)でもよい。環境業務統合管理システムが表示用情報を「表示する」ことは、計算機が有する表示デバイスに表示用情報を表示することであってもよいし、計算機が表示用計算機に表示用情報を送信することであってもよい(後者の場合は表示用計算機によって表示用情報が表示される)。
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態を詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明においては、同一の、または類似する構成に共通の符号を付すことにより、重複した説明を省略することがある。
【0023】
また、同一あるいは同様の機能を有する要素が複数存在する場合に、当該複数の要素を区別するために、同一の符号に異なる添字を付して説明することがある。他方、当該複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明することがある。
【0024】
<用語の定義等>
以下の本実施形態の説明は、サプライヤやセットメーカといった、サプライチェーン(Supply Chain)またはバリューチェーン(Value Chain)とよばれる、商流の上流から下流まで脈々と連なる原材料、部品、半製品および製品(以下、「部品等」または「製品等」と総称する)の供給網(以下、「サプライチェーン」と総称する)の構成企業における環境業務の担当者が、管理対象群である自社の拠点や工場等について環境業務を行う場合を例に行う。
【0025】
この場合において、「環境業務」とは、環境情報に関する各種業務を表す。本実施形態に係る環境業務統合管理システムのユーザは、例えば、勤務先の企業における環境業務として、全社の消費電力やCO2排出量等といった環境負荷情報の管理や、環境負荷を低減するための改善施策の立案・検討等の業務に従事する者である。
【0026】
また、以下の本実施形態の説明では、「サプライヤ」とは、製造した部品等をセットメーカに供給する企業等の事業主体を表す。
【0027】
他方、「セットメーカ」とは、サプライヤから購入した部品等を用いて他の製品等を製造する企業等の事業主体を表す。すなわち、セットメーカは、サプライヤの取引先である。より具体的には、セットメーカは、サプライヤが製造した部品等の受発注における発注元であり、サプライヤが受注した部品等の納入先である。
【0028】
また、以下の本実施形態の説明では、サプライチェーンにおいて使用される各種の電子データ交換システムを、「EDI(Electronic Data Interchange)」と総称する。このうち、環境業務統合管理システムを使用するサプライヤが使用するEDIを、「当該EDI」と称する。また、当該サプライヤを構成要素として含むサプライチェーンにおいて使用されているEDIのうち、当該EDI以外の種類のEDIを、「他のEDI」と称する。さらに、当該サプライチェーンにおいて使用されている全てのEDIを、「全EDI」と称する。
【0029】
また、以下の本実施形態の説明において、CO2排出量の「原単位」とは、取引の対象となる部品等の品目ごとの一円単位のCO2排出量を表す。なお、本実施形態に係る環境業務統合管理システムは、他に、例えば、取引の対象となる部品等の品目ごとの一個単位や基準となる質量の単位、例えば一キログラム(kg)単位のCO2排出量を、CO2排出量の原単位として設定することも可能である。このように、CO2排出量の原単位を規定する際に基準とする単位は、適宜に変更されてよい。
【0030】
また、以下の本実施形態の説明では、いわゆる部品表(構成部品表)を、例えば「製品毎環境BOM」や「環境BOM」、「製造BOM」といったように、「BOM(Bill of Materials)」と省略して表記する場合がある。
【0031】
また、同様に、以下の本実施形態の説明では、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment; LCA)やエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System; EMS)、製造実行システム(Manufacturing Execution System; MES)、企業資源計画(Enterprise Resource Planning; ERP)等といった周知技術に係る表記を適宜に省略する場合がある。
【0032】
<環境業務統合管理システム100の構成例>
まず、本実施形態に係る環境業務統合管理システム100の構成例について、
図1~2を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、環境業務統合管理システム100を含むシステム全体の構成の一例を概略的に示した図である。
【0034】
(システム全体の構成例)
本実施形態の環境業務統合管理システム100は、製品等の生産に伴って排出されるCO2の量(CO2排出量)のような、環境業務の遂行時に使用される各種環境負荷情報の可視化や、環境負荷を低減するための改善施策の提案等を行うことが可能なコンピュータシステムであり、後述の各構成を備えるコンピュータ装置またはサーバ装置によって実現される。
【0035】
この環境業務統合管理システム100は、
図1に示したように、サプライチェーンの構成企業における環境業務の担当者や、金融機関の融資担当者、機関投資家等といった環境業務統合管理システム100のユーザが保有するラップトップPCやタブレット、スマートフォン等のユーザ端末20a、20b、20c・・・20n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「ユーザ端末20」と総称する)と、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワーク50を介して相互にデータ通信可能に接続されている。環境業務統合管理システム100と通信ネットワーク50とは周知の通信用機器(不図示)を介して有線で接続されるが、無線で接続されてもよい。また、ユーザ端末20と通信ネットワーク50とは無線で接続されるが、有線で接続されてもよい。ユーザ端末20を保有する環境業務統合管理システム100の各ユーザには、それぞれユーザIDとよばれる一意のIDが予め付与されている。
【0036】
また、環境業務統合管理システム100には、当該環境業務統合管理システム100の管理対象群300である、サプライチェーンを構成しているサプライヤや完成品メーカ(セットメーカ)等といった各企業の企業内システムを司る各種のコンピュータ装置やサーバ装置(不図示)が、通信ネットワーク50を介して相互にデータ通信可能に接続されている。環境業務統合管理システム100は、そうした企業内システムから、後述する環境負荷情報可視化処理や改善施策提案処理に使用する各種情報を表すデータを取得する。各企業内システムと通信ネットワーク50とは、周知の通信用機器(不図示)を介して有線で接続されるが、無線で接続されてもよい。各企業内システムには、それぞれ企業IDとよばれる一意のIDが予め付与されている。
【0037】
さらに、環境業務統合管理システム100に対して、サプライチェーンにおいて製品等の受発注に使用される周知のコンピュータシステムである受発注システム(不図示)や、サプライチェーンを構成している各企業同士の垣根を越えて、当該サプライチェーン全体の環境情報を管理することが可能なコンピュータシステムである企業間情報管理システムのようなさらに別の装置や端末が、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワーク50を介して相互にデータ通信可能に接続されていてもよい。環境業務統合管理システム100は、然様なさらに別の装置や端末から、例えば、後述する環境負荷情報可視化処理や改善施策提案処理に使用する各種データを取得してもよい。
【0038】
なお、以下の本実施形態の説明では、環境業務統合管理システム100に対して接続されるユーザ端末20や、各企業内システムを司る各種のコンピュータ装置やサーバ装置等の他の装置・端末を、単に「他の装置」や「他の端末」と省略して表記する場合がある。
【0039】
なお、本実施形態では、
図1に示したように、環境業務統合管理システム100が一つの装置からなるものとして説明した。しかしながら、例えば、環境業務統合管理システム100は、複数の装置から構成されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、
図1に示したように、環境業務統合管理システム100が、ユーザ端末20や各企業内システムを司る各種のコンピュータ装置やサーバ装置等の他の装置や端末と通信ネットワーク50を介して相互に接続されているものとして説明した。しかしながら、例えば、環境業務統合管理システムは、そうした他の装置や端末を含むシステムとして構成されていてもよい。また、例えば、環境業務統合管理システムは、他の装置や端末が担う一部または全部の機能を含む形で構成されていてもよい。
【0041】
(環境業務統合管理システム100のハードウェア構成例)
次に、本実施形態に係る環境業務統合管理システム100のハードウェア構成の一例について説明する。
【0042】
本実施形態の環境業務統合管理システム100は、一台の汎用コンピュータ装置によって実現される。以下の説明は、環境業務統合管理システム100が、一つ以上のプロセッサ、一つ以上の記憶装置、一つ以上のインタフェース装置、およびそれらを連結する有線または無線の通信線(いずれも不図示)を備える一台の汎用コンピュータ装置により実現されているものとして行う。
【0043】
すなわち、環境業務統合管理システム100は、永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置と、インタフェース装置と、それらに接続されたプロセッサとを有する。
【0044】
永続記憶装置は、フラッシュメモリ(Flash Memory)のような不揮発性記憶素子からなる補助記憶デバイスである。永続記憶装置の具体例としては、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等が挙げられる。永続記憶装置は、少なくとも環境業務統合管理プログラムを格納する。環境業務統合管理プログラムは、環境負荷情報を可視化する処理である環境負荷情報可視化処理や、環境負荷を低減するために有効な改善施策を提案する処理である改善施策提案処理を含む、環境業務統合管理システム100として必要な機能を実装するためのコンピュータプログラムである。
【0045】
すなわち、環境業務統合管理プログラムがプロセッサにより実行されることで、上記の環境負荷情報可視化処理(
図4に関連して詳細後述)や改善施策提案処理(
図5に関連して詳細後述)をはじめとする各種処理が行われる。
【0046】
なお、環境業務統合管理プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えばプログラム配布計算機や計算機が読み取り可能な記録媒体等であってもよい。また、環境業務統合管理プログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。さらに、二つ以上のプログラムが一つの環境業務統合管理プログラムとして実現されてもよいし、一つの環境業務統合管理プログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0047】
メモリは、主にRAM(Random Access Memory)のような揮発性記憶素子からなる主記憶デバイスである。メモリには、永続記憶装置から読み込んだ各種情報を表すデータや、ユーザ端末20から取得した各種データが一時的に保持される。
【0048】
プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(Co-processor)等のプロセッサデバイスである。このプロセッサは、環境業務統合管理プログラムをメモリに呼び出して実行することにより、環境業務統合管理システム100自体の統括制御を行なうとともに、演算処理や判定処理等の各種処理を行う制御部110を司る。
【0049】
インタフェース装置は、通信ネットワーク50に接続して他の端末と通信を行う通信インタフェースデバイスと、I/Oインタフェースデバイスとを含む。
【0050】
(環境業務統合管理システム100の機能ブロック例)
次に、本実施形態に係る環境業務統合管理システム100が備える各種機能のブロックの一例について、
図2を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0051】
環境業務統合管理システム100は、制御部110、記憶部120および通信部130と、入力部140および出力部150からなるユーザインタフェース部(不図示)との各機能ブロックを備えて構成される。
【0052】
制御部110は、記憶部120が格納しているプログラムやデータ、および、通信部130により取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行する。制御部110は、記憶部120および通信部130のインタフェースとしても機能する。
【0053】
制御部110は、アクセス制御部111、KPI設定部112、構造化ID管理部113、情報収集部114、トリガー条件監視部115、類似企業検索部116、改善施策検索部117、効果シミュレーション部118および優先順位判定部119の各機能ブロックを有する。
【0054】
アクセス制御部111は、環境業務統合管理システム100へのユーザのログインやアクセス制限等といった、環境業務統合管理システム100のユーザのアクセス制御に関する各種処理を、後述するユーザ情報記憶部121が記憶する当該ユーザのユーザ情報に基づいて実行する。
【0055】
KPI設定部112は、環境業務統合管理システム100のユーザにより予め設定されたKPIに関する各種情報(以下、「KPI情報」とも称する)の管理のための各種処理を実行する。このKPI設定部112は、ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定する。
【0056】
構造化ID管理部113は、構造化IDに関する情報(以下、「構造化ID情報」とも称する)の設定に関する各種処理を実行する。
【0057】
情報収集部114は、KPI設定部112により設定されたKPI情報に基づいて、後述する環境業務統合管理システム100の管理対象群300に含まれる各種設備やシステムから各種の環境負荷情報を収集するための処理を実行する。
【0058】
トリガー条件監視部115は、KPI設定部112が管理するKPI情報および情報収集部114が収集した情報に基づいて、後述する所定のトリガー条件を満たしたか否かを判定する処理を実行する。
【0059】
類似企業検索部116は、管理対象群300に係る企業、すなわち、環境業務統合管理システム100のユーザが所属する企業と類似する企業の検索のための各種処理を実行する。環境業務統合管理システム100は、当該検索の結果抽出した類似企業を参照し、効果のあるアドバイスをする。
【0060】
改善施策検索部117は、情報収集部114により収集された環境負荷情報および類似企業検索部116により検索された類似企業に関する情報に基づいて、GXに関する各種改善施策に関する情報(以下、「改善施策情報」とも称する)の検索のための各種処理を実行する。
【0061】
効果シミュレーション部118は、改善施策検索部117による検索処理の結果である改善施策の各々について、導入した際の環境負荷の低減効果をシミュレーションする処理を実行する。
【0062】
優先順位判定部119は、効果シミュレーション部118によるシミュレーション処理の結果に基づいて、改善施策検索部117による検索処理の結果である改善施策について、環境負荷の低減効果が高い順に優先順位を判定する処理を実行する。
【0063】
制御部110は、プロセッサを用いて構成され、所定の環境業務統合管理プログラムを実行することによって、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、プロセッサの代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路を用いて制御部110を構成してもよい。また、プロセッサと論理回路との組合せによって制御部110を構成してもよい。
【0064】
記憶部120は、例えば永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置を用いて構成されており、制御部110に各種処理命令を供給するプログラム、および制御部110が実行する処理において用いられる各種情報を表すデータを格納する。
【0065】
記憶部120は、ユーザ情報記憶部121、改善施策情報記憶部122、構造化IDデータ記憶部123およびKPI情報記憶部124の各機能ブロックを有する。
【0066】
ユーザ情報記憶部121は、環境業務統合管理システム100の各ユーザについてログイン管理や各種アクセス権限に関する各種情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)を表すデータを記憶することによって管理する。
【0067】
改善施策情報記憶部122は、前述した改善施策情報を表すデータを記憶することによって管理する。改善施策情報記憶部122が記憶する改善施策情報の例としては、GX関連の各種改善施策に加えて、それらに係る各種コストや納期等が挙げられる。
【0068】
構造化IDデータ記憶部123は、前述した構造化ID情報を表すデータを記憶することによって管理する。
【0069】
KPI情報記憶部124は、前述したKPI情報を表すデータを記憶することによって管理する。KPI情報記憶部124が記憶するKPI情報の例としては、GX関連業務における予算や環境負荷の改善目標数値、期日等が挙げられる。
【0070】
制御部110は、これらの情報を記憶部120に読み書きすることで、前述の環境負荷情報可視化処理(
図4に関連して詳細後述)や改善施策提案処理(
図5に関連して詳細後述)をはじめとする各種処理を実行することができる。
【0071】
通信部130は、インターネット(通信ネットワーク50の一例)を介して行われる、ユーザ端末20や管理対象群300に含まれる各システム等の他の機器との通信処理を担当する。通信部130は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0072】
ユーザインタフェース部は、入力部140および出力部150の各機能ブロックを含んで構成される。
【0073】
入力部140は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、ユーザからの入力操作の受け付け等、入力に関する処理を担当する。入力部140は、例えばキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等を用いて構成され、ユーザからの各種操作を検出する。
【0074】
出力部150は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示や音声出力等、出力に関する処理を担当する。出力部150は、例えば液晶ディスプレイやタッチスクリーン等を用いて構成される。
【0075】
出力部150は、情報収集部114が収集した各種情報や、改善施策検索部117による検索処理の結果である改善施策情報を、優先順位判定部119が判定した優先順位に沿って出力する。
【0076】
すなわち、環境業務統合管理システム100の各構成要素は、プロセッサ、メモリや永続記憶装置といった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線やインタフェース装置を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。
【0077】
本実施形態では、環境業務統合管理システム100の各機能が一台のコンピュータ装置により一体的に実現されているものとして説明した。しかしながら、これらの各機能は相互に接続された複数台のコンピュータ装置またはサーバ装置によって実現されてもよい。また、環境業務統合管理システム100は、ラップトップPC等の汎用コンピュータ装置と、これにインストールされたウェブブラウザとを含む構成であってもよいし、ウェブサーバや各種携帯機器を含む構成であってもよい。
【0078】
(ユーザ端末20の機能ブロック例)
次に、本実施形態に係るユーザ端末20が備える各種機能のブロックの一例について説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0079】
ユーザ端末20は、制御部、記憶部および通信部と、入力部および出力部からなるユーザインタフェース部(いずれも不図示)との各機能ブロックを備えて構成される。
【0080】
制御部は、記憶部が格納しているプログラムやデータ、および通信部により取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行する。制御部は、記憶部および通信部のインタフェースとしても機能する。
【0081】
制御部は、プロセッサを用いて構成され、所定のプログラムを実行することによって、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、プロセッサの代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路を用いて制御部を構成してもよい。また、プロセッサと論理回路との組合せによって制御部を構成してもよい。
【0082】
記憶部は、例えば永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置を用いて構成されており、制御部に各種処理命令を供給するプログラム、および制御部が実行する処理において用いられる各種情報を表すデータを格納する。制御部は、これらの情報を記憶部に読み書きすることで、各種処理を実行することができる。
【0083】
通信部は、インターネット(通信ネットワーク50の一例)を介して行われる、環境業務統合管理システム100等の他の機器との通信処理を担当する。通信部は、例えば無線通信が可能な通信モジュール等を用いて構成される。なお、通信部が対応する通信規格は特に限定しないが、通信部は、例えば、3G、4Gおよび5Gの少なくともいずれかに対応する。また、通信部は、環境業務統合管理システム100と直接接続されてもよいし、通信事業者が提供する基地局やインターネットを介して環境業務統合管理システム100と接続されてもよい。
【0084】
ユーザインタフェース部は、入力部および出力部(いずれも不図示)の各機能ブロックを含んで構成される。
【0085】
入力部は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、ユーザからの入力操作の受け付け等、入力に関する処理を担当する。入力部は、例えばタッチパネル等を用いて構成され、ユーザからの各種操作を検出する。
【0086】
出力部は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示や音声出力等、出力に関する処理を担当する。出力部は、例えばタッチスクリーンや液晶ディスプレイ等を用いて構成される。
【0087】
なお、上述した各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0088】
また、環境業務統合管理システム100およびユーザ端末20が、上述した各種機能に加えて、さらに別の機能を備えていてもよい。例えば、環境業務統合管理システム100は、ユーザ端末20が備える上記機能の一部を含む形で構成されていてもよいし、ユーザ端末20は、環境業務統合管理システム100が備える上記機能の一部を含む形で構成されていてもよい。
【0089】
<環境業務統合管理システム100の管理対象群300について>
次に、環境業務統合管理システム100によって管理される管理対象群300の概要について、
図3を参照しつつ説明する。
【0090】
図3は、環境業務統合管理システム100の管理対象群300の構成の一例を示す図である。
【0091】
本実施形態に係る環境業務統合管理システム100の管理対象群300は、環境業務統合管理システム100のユーザの勤務先であるA社が保有する全ての設備やシステム等である。このA社は、
図3に例示したように、工場A、工場B、工場C等の複数の拠点を有している。各拠点には、工場Aの敷地内に建屋A、建屋B、建屋C等が存在しているように、それぞれ複数の建屋が存在する。また、各建屋には、建屋Aの敷地内に設備A、設備B、設備C等の複数の各種設備や、センサA、センサB、センサC等の複数の各種センサが設置されているように、それぞれ複数の設備やセンサ等が設けられている。さらに、各拠点の内部には、工場AにシステムA、システムB、システムC等が導入されているように、それぞれ複数の各種コンピュータシステムが導入されている。環境業務統合管理システム100は、こうした各拠点や各建屋、各設備、各センサ、各システム等の全てを管理対象群300として、一括で管理する。
【0092】
一例として、管理対象群300に含まれる、A社の工場Aに導入されているシステムAが備える各種機能のブロックの一例について説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0093】
システムAは、制御部、記憶部および通信部と、入力部および出力部からなるユーザインタフェース部(いずれも不図示)との各機能ブロックを備えて構成される。
【0094】
制御部は、記憶部が格納しているプログラムやデータ、および通信部により取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行する。制御部は、記憶部および通信部のインタフェースとしても機能する。
【0095】
制御部は、プロセッサを用いて構成され、所定のプログラムを実行することによって、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、プロセッサの代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路を用いて制御部を構成してもよい。また、プロセッサと論理回路との組合せによって制御部を構成してもよい。
【0096】
記憶部は、例えば永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置を用いて構成されており、制御部に各種処理命令を供給するプログラム、および制御部が実行する処理において用いられる各種情報を表すデータを格納する。制御部は、これらの情報を記憶部に読み書きすることで、各種処理を実行することができる。
【0097】
通信部は、インターネット(通信ネットワーク50の一例)を介して行われる、環境業務統合管理システム100等の他の機器との通信処理を担当する。通信部は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0098】
ユーザインタフェース部は、入力部および出力部(いずれも不図示)の各機能ブロックを含んで構成される。
【0099】
入力部は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、ユーザからの入力操作の受け付け等、入力に関する処理を担当する。入力部は、例えばタッチパネル等を用いて構成され、ユーザからの各種操作を検出する。
【0100】
出力部は、ユーザインタフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示や音声出力等、出力に関する処理を担当する。出力部は、例えばタッチスクリーンや液晶ディスプレイ等を用いて構成される。
【0101】
なお、上述した各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0102】
また、例えば、このシステムAは、工場Aの敷地内に設置されたコンピュータ装置やサーバ装置によって実現されずに、クラウド環境上に構築されたシステムの一つであってもよい。
【0103】
また、例えば、環境業務統合管理システム100は、
図3に例示した設備Aを管理対象群300に含めるだけでなく、設備Aの各種構成部品を管理対象群300に含めてもよい。このように、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300の具体的な内訳や粒度等を任意に設定することができる。
【0104】
<処理フロー例>
次に、本実施形態に係る環境業務統合管理システム100で実行される各処理について、
図4~13を参照しつつ説明する。
【0105】
(環境負荷情報可視化処理)
図4は、本実施形態で行われる環境負荷情報可視化処理の流れの一例を示したシーケンス
図400である。
【0106】
ステップS401において、ユーザ端末20の制御部は、環境業務統合管理システム100にログインするためのユーザの入力操作を、入力部を介して受け付ける処理を実行する。ユーザ端末20の制御部は、当該入力操作を受け付けると、通信部を介して、環境業務統合管理システム100に対してログイン要求を送信する。環境業務統合管理システム100の制御部110が、環境業務統合管理システム100への当該ユーザ端末20からのログイン要求を、通信部130を介して受け付けると、ステップS401における処理は完了し、ステップS402に進む。
【0107】
なお、環境業務統合管理システム100は、ステップS401において、当該ユーザからのログイン要求を、入力部140を介して受け付けることもできる。
【0108】
ステップS402において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、アクセス制御部111により、ユーザIDやパスワード等といった当該ユーザのユーザ情報が、ユーザ情報記憶部121が格納するデータベースに登録されているか否かを確認する処理を実行する。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS402における処理が完了すると、ステップS403に進む。
【0109】
ステップS403において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、当該ユーザのユーザ情報が当該データベースに登録済みであることがステップS402で確認された場合には、アクセス制御部111により、当該ユーザのログイン状態を更新して、当該ユーザを環境業務統合管理システム100にログインさせる処理を実行する。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS403における処理が完了すると、ステップS404に進む。
【0110】
ステップS404において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、アクセス制御部111により、ログイン結果を通知する処理を実行する。アクセス制御部111は、ステップS403で当該ユーザを環境業務統合管理システム100にログインさせた場合には、通信部130を介して、その旨をユーザ端末20に送信する。他方、当該ユーザのユーザ情報が当該データベースに未登録であることがステップS402で確認された場合には、アクセス制御部111は、環境業務統合管理システム100へのログインが失敗した旨を、通信部130を介してユーザ端末20に送信する。この場合、環境業務統合管理システム100の制御部110は、環境業務統合管理システム100に対して新たにユーザ登録を行うための画面を、ユーザ端末20の表示装置に表示させる。なお、環境業務統合管理システム100は、当該ユーザに対するログイン結果の通知を、出力部150を介して行うこともできる。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS404における処理が完了すると、ステップS405に進む。
【0111】
ステップS405において、ユーザ端末20の制御部は、入力部を介して受け付けたユーザの入力操作に応じて、環境業務統合管理システム100に情報可視化要求を送信する処理を実行する。環境業務統合管理システム100の制御部110が、通信部130を介してこの情報可視化要求を受信すると、ステップS405における処理は完了し、ステップS406に進む。
【0112】
ステップS406において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、情報収集部114により、管理対象群300に含まれる各システムから環境負荷情報を取得する処理を実行する。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS406における処理が完了すると、ステップS407に進む。
【0113】
ステップS407において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、管理対象群300の企業内システムから取得した情報を、通信部130を介してユーザ端末20に出力する処理を実行する。
【0114】
ユーザ端末20の制御部は、通信部を介して当該情報を受信すると、受信した情報を表示装置に表示させる。本実施形態の環境業務統合管理システム100は、ステップS407で出力する管理対象群300についての環境負荷情報を、
図6に例示したように、予め設定した各種KPI毎に出力したり、類似企業との比較が可能な形で出力したりすることができる。また、環境業務統合管理システム100は、
図7~8に例示したように、管理対象群300に含まれる各拠点の所在地を地図上に表示する形で出力したり、
図9に例示したように、拠点内における各建屋の配置を当該拠点のマップ上に表示する形で出力したりすることもできる。さらに、環境業務統合管理システム100は、
図10に例示したように、建屋内に設置された各種設備の配置図上に表示する形で出力することもできる。
【0115】
これにより、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300の環境負荷情報を可視化することができる。また、環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS407において、当該情報を、出力部150を介して環境業務統合管理システム100の表示装置に表示させてもよい。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS407における処理が完了すると、
図4のシーケンス
図400に示す環境負荷情報可視化処理を終了する。
【0116】
(改善施策提案処理)
図5は、本実施形態で行われる改善施策提案処理の流れの一例を示したフローチャート500である。
【0117】
ステップS501において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、KPI設定部112により、予め当該ユーザが登録したコストや納期等のKPI情報を、KPI情報記憶部124から取得する処理を実行する。なお、環境業務統合管理システム100のユーザは、KPI情報に係るコストとして、導入コストや人件費等の各種コストを予め登録することができる。また、環境業務統合管理システム100の導入によって環境業務が自動化され、省人化が進むことでもたらされる人件費の削減効果を表す指標も、コストに関わるKPIの一例として挙げられる。これにより、環境業務統合管理システム100は、当該KPI情報を取得することができる。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS501における処理が完了すると、ステップS502に進む。
【0118】
ステップS502において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、類似企業検索部116により、当該ユーザが所属する企業の類似企業を検索する処理を実行する。これにより、環境業務統合管理システム100は、当該企業と類似する企業について情報を取得することができる。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS502における処理が完了すると、ステップS503に進む。
【0119】
ステップS503において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、改善施策検索部117により、改善施策情報記憶部122に予め登録されている改善施策情報から、ステップS501で取得したKPI情報に沿って、当該ユーザの所属企業にとって適用可能な改善施策を検索する処理を実行する。これにより、環境業務統合管理システム100は、当該企業にとっての改善施策を取得することができる。なお、ステップS503の処理においては、設備の更新のような実行にコストがかかるものと、設備稼働計画の変更のような実行にコストがかからないものとのいずれもが、当該企業に対する改善施策として取得される。すなわち、ステップS503においては、改善施策として実行可能なものが全て検索結果として出力される。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS503における処理が完了すると、ステップS504に進む。
【0120】
ステップS504において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、効果シミュレーション部118により、ステップS503で取得した改善施策の各々について、導入した場合に環境負荷を削減する効果をシミュレーションするための各種処理を実行する。環境業務統合管理システム100のユーザは、例えば、
図11に入力画面を例示したシミュレータを通じて、ステップS504における環境負荷の削減効果のシミュレーションを効果シミュレーション部118に実行させることができる。効果シミュレーション部118は、ステップS504で実行するシミュレーションの結果を、
図12に例示する出力画面のような形でユーザ端末20の出力部および/または出力部150を介して表示装置に表示させる。これにより、環境業務統合管理システム100は、ステップS503で取得した改善施策の各々について、環境負荷の削減効果を推計することができる。
【0121】
なお、効果シミュレーション部118は、ステップS504において実行する当該シミュレーションに係る処理を、通信部130を介して外部の各種シミュレーションシステムと協働して実行してもよい。また、効果シミュレーション部118は、ステップS504において実行される当該シミュレーションの結果として、通信部130を介して取得した外部の各種シミュレーションシステムによるシミュレーションの結果を出力してもよい。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS504における処理が完了すると、ステップS505に進む。
【0122】
ステップS505において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、優先順位判定部119により、ステップS504で環境負荷の削減効果についてシミュレーションを行った改善施策について、優先順位を判定する処理を実行する。これにより、環境業務統合管理システム100は、ステップS503で取得した改善施策について、より環境負荷の削減効果が高いものがより優先的に実施すべき改善施策であるとして、優先順位をつけることができる。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS505における処理が完了すると、ステップS506に進む。
【0123】
ステップS506において、環境業務統合管理システム100の制御部110は、出力部150および/または通信部130を介して、ステップS503で取得した改善施策を、ステップS505で判定処理の結果の順に出力する処理を実行する。制御部110は、例えば、
図13に例示した出力画面のような形で出力する。これにより、環境業務統合管理システム100は、予めユーザによって設定されたコストや納期等のKPIに沿ったGX関連の改善施策を、より優先度が高い順、すなわち、より有効である可能性が高い順に提案することができる。環境業務統合管理システム100の制御部110は、ステップS506における処理が完了すると、
図5のフローチャート500に示す改善施策提案処理を終了する。
【0124】
以上説明した本発明の実施形態は、以下のように総括される。
【0125】
(1)環境業務統合管理システム100は、環境業務の統合管理を行うシステムであって、ユーザの入力操作に応じて管理対象に係るKPIを設定するKPI設定部112と、設定されたKPIに基づいて、管理対象の環境負荷情報を収集する情報収集部114と、収集された環境負荷情報を出力する出力部150とを備える。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300の環境負荷情報を可視化することができる。その結果、環境業務統合管理システム100のユーザは、管理対象群300に係る企業等においてGXを推進しやすくなる。
【0126】
(2)管理対象に係る企業と類似する企業を検索する類似企業検索部116をさらに備え、出力部150は、少なくとも、類似企業検索部116が検索した企業の行っている改善施策に基づいて、改善施策を導入した際の効果を試算して、当該試算の結果を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0127】
(3)出力部150は、類似企業検索部116が検索した企業の行っている改善施策と、管理対象の環境負荷情報に基づいて、改善施策を導入した際の環境負荷の改善効果を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0128】
(4)収集された環境負荷情報に基づいて、管理対象による環境負荷を低減する改善施策を検索する改善施策検索部117をさらに備え、出力部150は、検索結果として取得された改善施策を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0129】
(5)検索結果として取得された改善施策の各々について、環境負荷の低減効果のシミュレーションを行う効果シミュレーション部118をさらに備え、出力部150は、シミュレーションの結果とともに検索結果として取得された改善施策を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0130】
(6)シミュレーションの結果に基づいて、検索結果として取得された改善施策について環境負荷の低減効果が高い順に優先順位を判定する優先順位判定部119をさらに備え、出力部150は、検索結果として取得された改善施策が複数存在する場合、判定された優先順位によって当該複数の改善施策を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0131】
(7)改善施策検索部117は、類似企業の施策の中から上記改善施策と共通の改善施策を出力する。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0132】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0133】
環境業務統合管理システム100は、
図14~15に例示したように、複数の企業等を管理対象群300bとして上述の環境負荷情報可視化処理および改善施策提案処理を実行してもよい。この場合、環境業務統合管理システム100のユーザは、金融機関における融資担当者や、機関投資家であってよい。このようにした場合、環境業務統合管理システム100のユーザは、複数の企業の情報を並行して確認することができるようになる。すなわち、環境業務統合管理システム100は、GX関連の投資効果をわかりやすくすることができる。
【0134】
(8)なお、出力部150は、表示する情報および当該情報の掲載順序をユーザIDに応じて変更可能に構成されている。すなわち、環境業務統合管理システム100は、ユーザIDによって一意に識別される当該ユーザのユーザ情報を参照し、当該ユーザ情報に基づいて、出力部150が、当該ユーザに対して表示する情報や、当該情報を掲載する際の優先順位を適宜に変更することができる。この場合、環境業務統合管理システム100が参照するユーザ情報としては、ユーザの職位や立場、担当する業務の領域や内容、閲覧履歴等が挙げられる。
【0135】
例えば、当該ユーザの職位が経営層レベルの場合、出力部150は、当該ユーザが環境業務統合管理システム100にログインした直後に当該ユーザに対して最初に表示するダッシュボード画面(以下、「初期画面」と称する)として、
図7に例示した世界地図上に、管理対象群300に含まれる各拠点の所在地を表示する形で出力する。同様に、例えば、当該ユーザの職位が職長レベルの場合、出力部150は、
図9に例示した当該拠点内のマップを初期画面に表示する形で出力し、当該ユーザの職位が業務担当者レベルの場合、出力部150は、
図10に例示した製造ラインの配置図を初期画面に表示する形で出力する。
【0136】
また、出力部150は、
図13に例示した出力画面においてユーザに提案する改善施策として、当該ユーザの職位が上がるほどコストの高い施策を表示することもできる。これは、職位が上がるほど扱える予算が多いためである。
【0137】
また、出力部150は、
図13に例示した出力画面においてユーザに提案する改善施策として、例えば、当該ユーザが調達担当者である場合には調達に関わる改善施策を、当該ユーザが設備担当者である場合には設備改善に関わる施策を、それぞれ出力することもできる。
【0138】
このように、環境業務統合管理システム100は、ユーザの職位や立場、担当する業務の領域・内容等の違いに応じて、出力する情報や、提案する改善施策の内容、提案する順序等を適宜に変更することができる。このようにしたので、環境業務統合管理システム100は、管理対象群300に係る企業等においてよりGXを推進しやすくすることができる。
【0139】
また、環境業務統合管理システム100は、例えば、法令が改正された場合や、天災や人災によってサプライチェーンに変化が生じた場合等、外的要因によりKPIに変更がある場合には、ユーザに対してプッシュ通知を行うことができる。
【0140】
上記の実施形態や実施例、変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や実施例、変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0141】
上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば、実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0142】
また、以上に説明した環境業務統合管理システム100の各機能部の配置形態は一例に過ぎない。各機能部の配置形態は、環境業務統合管理システム100が備えるハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【符号の説明】
【0143】
100:環境業務統合管理システム