(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014635
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】止水開閉体装置及び止水開閉体装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240125BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20240125BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B9/02 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117605
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大助
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC06
2E139AC10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】止水動作開始時にチェーンを所定量だけ弛ませることなく、止水動作時にチェーンの弛みが発生しないように制御する。
【解決手段】複数の止水パネル34~37によって開口部が全閉した後にチェーンの移動を停止し、チェーンの移動停止時に制動手段によって駆動手段に制動を掛け、圧迫力を加える処理(止水処理)を実行する直前に駆動手段に掛けていた制動手段の制動を解除し、解除後に止水処理を実行するようにした。これによって、従来行っていたチェーンを所定量だけ弛むようにする必要性はなくなり、止水動作時にチェーンの弛みが発生しないように制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンによって連結された複数のパネル手段を開口部の周縁部からガイド手段に沿って移動させることによって前記開口部を開閉する止水開閉手段と、
チェーンホイールを回転駆動することによって前記チェーンを前記ガイド手段に沿って移動させる駆動手段と、
前記チェーンの移動停止時に前記駆動手段に制動を掛ける制動手段と、
前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して水平移動方向へ圧迫力を加える水平圧迫手段と、
垂直方向でそれぞれ接触する前記複数のパネル手段間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して垂直移動方向へ圧迫力を加える垂直圧迫手段とを備えた止水開閉体装置において、
前記複数のパネル手段によって前記開口部が全閉した後の前記チェーンの移動停止時に前記制動手段によって前記駆動手段に制動を掛け、
前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段によって前記圧迫力を加える前に前記駆動手段に掛けていた前記制動手段の制動を解除し、
解除後に前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理を実行することを特徴とする止水開閉体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水開閉体装置において、
前記水平圧迫手段による第1水平圧迫処理を実行し、
前記第1水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第1垂直圧迫処理を実行し、
前記第1垂直圧迫処理終了後にさらに前記水平圧迫手段による第2水平圧迫処理を実行し、
前記第2水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第2垂直圧迫処理を実行することを特徴とする止水開閉体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の止水開閉体装置において、
前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性及び前記複数のパネル手段間の水密性を高めるための前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理終了後に、前記圧迫力を加える処理を解除して前記複数のパネル手段を前記開口部全閉時の状態に復帰させた後に発生する前記チェーンの弛みを除去するために、前記複数のパネル手段に対して開-停-閉の一連の動作を実行することを特徴とする止水開閉体装置。
【請求項4】
チェーンによって連結された複数のパネル手段を開口部の周縁部からガイド手段に沿って移動させることによって前記開口部を開閉する止水開閉手段と、
チェーンホイールを回転駆動することによって前記チェーンを前記ガイド手段に沿って移動させる駆動手段と、
前記チェーンの移動停止時に前記駆動手段に制動を掛ける制動手段と、
前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して水平移動方向へ圧迫力を加える水平圧迫手段と、
垂直方向でそれぞれ接触する前記複数のパネル手段間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して垂直移動方向へ圧迫力を加える垂直圧迫手段とを備えた止水開閉体装置の制御方法において、
前記複数のパネル手段によって前記開口部が全閉した後の前記チェーンの移動停止時に前記制動手段によって前記駆動手段に制動を掛け、前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段によって前記圧迫力を加える前に前記駆動手段に掛けていた前記制動手段の制動を解除し、解除後に前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理を実行することを特徴とする止水開閉体装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の止水開閉体装置の制御方法において、
前記水平圧迫手段による第1水平圧迫処理を実行し、
前記第1水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第1垂直圧迫処理を実行し、
前記第1垂直圧迫処理終了後にさらに前記水平圧迫手段による第2水平圧迫処理を実行し、
前記第2水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第2垂直圧迫処理を実行する
ことを特徴とする止水開閉体装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の止水開閉体装置の制御方法において、
前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性及び前記複数のパネル手段間の水密性を高めるための前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理終了後に、前記圧迫力を加える処理を解除して前記複数のパネル手段を前記開口部全閉時の状態に復帰させた後に発生する前記チェーンの弛みを除去するために、前記複数のパネル手段に対して開-停-閉の一連の動作を実行することを特徴とする止水開閉体装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨時などにおいて、ビル、工場、倉庫、車庫等の建物の出入口などの開口部、または地下鉄の駅や地下街の出入口などの開口部を水密状態に閉鎖する止水開閉体装置及び止水開閉体装置の制御方法に係り、特に、複数の止水パネルを用いて構成された止水開閉体装置の制御に好適な止水開閉体装置及び止水開閉体装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄の駅や地下街などの地下施設へ通じる地上の出入口や、建物の出入口などには、大雨などによる水が地下施設または建物内部へ流入することを防止するための止水開閉体装置が設けられる。
このような止水開閉体装置として、特許文献1に記載の防水扉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水扉は、扉体を垂直方向に圧迫する第1の圧迫手段と、水平方向に圧迫する第2の圧迫手段とを備え、第1の圧迫手段の圧迫動作後に第2の圧迫手段の圧迫動作を行うものである。
【0005】
特許文献1に記載のような止水パネルシャッターは、下限停止時に複数の止水パネルを吊っているチェーンが所定量だけ弛むように設定しておき、第1圧迫手段による止水動作時(垂直方向の圧迫時)には止水パネル間の水密性ゴムが潰れて止水パネルが垂直方向に移動し、それによって予め設定してあったチェーンの弛み分でその垂直方向の移動分を吸収できるようにしている。
一方、止水パネルシャッターを止水用以外の通常のパネルシャッターとして開口部の開閉動作で使用する場合、チェーンが弛んでいると、それが原因で引っ掛かりが発生する可能性があるので、チェーン弛み検知器を設け、シャッター閉鎖時の安全性を確保するためチェーンが常に張った状態となるように止水パネルシャッターの停止位置を制御していた。
そして、止水動作時の下限付近でチェーン弛み検知器を無効とし、チェーンが所定量だけ弛むようにしていた。このように下限付近でチェーン弛み検知器を無効とすることによって、チェーン弛み検知の無効エリアが存在することとなり、安全性の確保が難しくなる場合が生じていた。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、止水動作開始時にチェーンを所定量だけ弛ませることなく、止水動作時にチェーンの弛みが発生しないように制御することのできる止水開閉体装置及び止水開閉体装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の止水開閉体装置の第1の特徴は、チェーンによって連結された複数のパネル手段を開口部の周縁部からガイド手段に沿って移動させることによって前記開口部を開閉する止水開閉手段と、チェーンホイールを回転駆動することによって前記チェーンを前記ガイド手段に沿って移動させる駆動手段と、前記チェーンの移動停止時に前記駆動手段に制動を掛ける制動手段と、前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して水平移動方向へ圧迫力を加える水平圧迫手段と、垂直方向でそれぞれ接触する前記複数のパネル手段間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して垂直移動方向へ圧迫力を加える垂直圧迫手段とを備えた止水開閉体装置において、前記複数のパネル手段によって前記開口部が全閉した後の前記チェーンの移動停止時に前記制動手段によって前記駆動手段に制動を掛け、前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段によって前記圧迫力を加える前に前記駆動手段に掛けていた前記制動手段の制動を解除し、解除後に前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理を実行することにある。
【0008】
止水開閉手段は、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物などの構造物における、出入口や窓部、あるいは内部の通路や空間などの開口部を電動で開閉移動する複数のパネル手段で構成される。複数のパネル手段は、チェーンによって連結されており、建物などの開口部の周縁部の一つである上部に収納され、まぐさなどを通過してガイド手段に沿って開口部を移動(下降)し、チェーンをガイド手段に沿って移動させることによって開口部を電動で開閉している。これ以外にも、止水開閉手段が開口部の下部に収納されて、上昇方式にて電動で開閉移動したり、止水開閉手段が側部に収納されて、スライド方式にて電動で移動したりすることもある。また、止水開閉手段には、閉鎖によって開口部を全閉できるものも全閉できないものも含む。
【0009】
水平圧迫手段は、止水開閉手段によって開口部が閉鎖された後又はこの閉鎖後に止水開始ボタンが操作された後に複数のパネル手段に対して水平移動方向へ圧迫力を加える。水平圧迫手段が水平移動方向へ圧迫力を加える処理を水平圧迫処理という。この水平圧迫処理によって複数のパネル手段はガイド手段の内壁面に圧迫されて接触するようになり水密性が高まるようになっている。一方、垂直圧迫手段は、止水開閉手段によって開口部が閉鎖された後に複数のパネル手段に対して垂直移動方向へ圧迫力を加える。垂直圧迫手段が垂直移動方向へ圧迫力を加える処理を垂直圧迫処理という。この垂直圧迫処理によってそれぞれ垂直方向で圧迫されて接触する複数のパネル手段間の水密性が高まるようになっている。
【0010】
この発明は、複数のパネル手段によって開口部が全閉した後にチェーンの移動を停止し、チェーンの移動停止時に制動手段によって駆動手段に制動を掛け、圧迫力を加える処理(止水処理)を実行する直前に駆動手段に掛けていた制動手段の制動を解除し、解除後に止水処理を実行するようにした。これによって、従来行っていたチェーンを所定量だけ弛むようにする必要性はなくなり、止水動作時にチェーンの弛みが発生しないように制御することができる。
【0011】
本発明の止水開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の止水開閉体装置において、前記水平圧迫手段による第1水平圧迫処理を実行し、前記第1水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第1垂直圧迫処理を実行し、前記第1垂直圧迫処理終了後にさらに前記水平圧迫手段による第2水平圧迫処理を実行し、前記第2水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第2垂直圧迫処理を実行することにある。
この発明は、水平圧迫手段による第1水平圧迫処理、第1垂直圧迫処理、第2水平圧迫処理及び第2垂直圧迫処理の順番で圧迫処理を実行するようにしたものである。複数のパネル手段に対して第1水平圧迫処理を実行することによって、複数のパネル手段はガイド手段の内壁面に圧迫されて接触するようになり、複数のパネル手段とガイド手段との間に存在していた間隙は消滅し、複数のパネル手段が個々に傾きを生じることもなくなり、複数のパネル手段はガイド手段の内壁面に沿って一直線を維持することになる。この第1水平圧迫処理の後に第1垂直圧迫処理を実行することによって一直線を維持している複数のパネル手段に対して垂直圧迫手段から垂直移動方向への圧迫力が加わるようになるので、垂直方向で効率的に圧迫されて接触するようになり複数のパネル手段間の水密性を高めることができるようになる。この発明では、第1垂直圧迫処理によって複数のパネル手段が垂直移動方向へ移動するようになるので、第1垂直圧迫処理の後に第2水平圧迫処理を実行するようにしている。第2水平圧迫処理及び第3垂直圧迫処理によって水平方向及び垂直方向に移動した複数のパネル手段はガイド手段の内壁面に効率的に圧迫されて接触するようになり水密性が格段に高まる。
【0012】
本発明の止水開閉体装置の第3の特徴は、前記第1の特徴に記載の止水開閉体装置において、前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性及び前記複数のパネル手段間の水密性を高めるための前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理終了後に、前記圧迫力を加える処理を解除して前記複数のパネル手段を前記開口部全閉時の状態に復帰させた後に発生する前記チェーンの弛みを除去するために、前記複数のパネル手段に対して開-停-閉の一連の動作を実行することにある。
止水処理終了後に水平圧迫手段及び垂直圧迫手段による圧迫力を加える処理を解除し、複数のパネル手段を開口部全閉時の状態に復帰させることによって、パネル手段間の水密性ゴムの潰れが元に戻って止水パネルが垂直方向に移動し、それによってチェーンに弛みが発生するようになる。そこで、この発明では、複数のパネル手段に対して開-停-閉の一連の動作を実行することによって、チェーンの弛みを除去するようにした。
【0013】
本発明の止水開閉体装置の制御方法の第1の特徴は、チェーンによって連結された複数のパネル手段を開口部の周縁部からガイド手段に沿って移動させることによって前記開口部を開閉する止水開閉手段と、チェーンホイールを回転駆動することによって前記チェーンを前記ガイド手段に沿って移動させる駆動手段と、前記チェーンの移動停止時に前記駆動手段に制動を掛ける制動手段と、前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して水平移動方向へ圧迫力を加える水平圧迫手段と、垂直方向でそれぞれ接触する前記複数のパネル手段間の水密性を高めるために前記複数のパネル手段に対して垂直移動方向へ圧迫力を加える垂直圧迫手段とを備えた止水開閉体装置の制御方法において、前記複数のパネル手段によって前記開口部が全閉した後の前記チェーンの移動停止時に前記制動手段によって前記駆動手段に制動を掛け、前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段によって前記圧迫力を加える前に前記駆動手段に掛けていた前記制動手段の制動を解除し、解除後に前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理を実行することにある。
これは、前記止水開閉体装置の第1の特徴に対応した止水開閉体装置の制御方法の発明である。
【0014】
本発明の止水開閉体装置の制御方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の止水開閉体装置の制御方法において、前記水平圧迫手段による第1水平圧迫処理を実行し、前記第1水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第1垂直圧迫処理を実行し、前記第1垂直圧迫処理終了後にさらに前記水平圧迫手段による第2水平圧迫処理を実行し、前記第2水平圧迫処理終了後に前記垂直圧迫手段による第2垂直圧迫処理を実行することにある。
これは、前記止水開閉体装置の第2の特徴に対応した止水開閉体装置の制御方法の発明である。
【0015】
本発明の止水開閉体装置の制御方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の止水開閉体装置の制御方法において、前記複数のパネル手段と前記ガイド手段との間の水密性及び前記複数のパネル手段間の水密性を高めるための前記水平圧迫手段及び前記垂直圧迫手段による前記圧迫力を加える処理終了後に、前記圧迫力を加える処理を解除して前記複数のパネル手段を前記開口部全閉時の状態に復帰させた後に発生する前記チェーンの弛みを除去するために、前記複数のパネル手段に対して開-停-閉の一連の動作を実行することにある。
これは、前記止水開閉体装置の第3の特徴に対応した止水開閉体装置の制御方法の発明である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の止水開閉体装置及び止水開閉体装置の制御方法によれば、止水動作開始時にチェーンを所定量だけ弛ませることなく、止水動作時にチェーンの弛みが発生しないように制御することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態による止水開閉体装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の止水開閉体装置の制御装置の概略を示すブロック図である。
【
図3】止水開始ボタンが操作され、止水処理が完了するまでの止水開閉体装置の動作例を示す動作ダイヤグラムである。
【
図4】止水解除ボタンが操作され、止水状態が解除されるまでの止水開閉体装置の動作例を示す動作ダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って、本発明に係る止水開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では、止水開閉体装置として、開口部の周縁部から複数の止水パネル(パネル手段)をガイドレール(ガイド手段)に沿って順次移動させることによって開口部を開閉する従来から知られている止水開閉体装置を例に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による止水開閉体装置の概略構成を示す図である。
図1において、止水開閉体装置10は、複数の止水パネルを開口部の上下に移動させることによって開口部を開閉すると共に各止水パネルに設けられた水密性ゴムによって水密性を飛躍的に向上させている。
【0019】
止水開閉体装置10は、建物等の構造物などの開口部や、地下鉄の駅や地下街の出入口などの開口部に設けられる。止水開閉体装置10は、制御装置20、パネル収納部30、止水パネル34~37、ガイドレール31,32、水平圧迫装置41,42、垂直圧迫装置51~54を含んで構成されている。この止水開閉体装置10の基本的な構造及び動作は特許文献1などに記載されており公知なので説明は省略する。
【0020】
水平圧迫装置41,42及び垂直圧迫装置51~54は、モータを動力源とする伸縮アクチュエータで構成される。伸縮アクチュエータはモータの回転駆動力を伸縮ロッドの伸縮力に変換するものである。止水開閉体装置10では、水平圧迫装置41,42を構成する伸縮アクチュエータの伸縮力を利用して、止水パネル34~37をガイドレール31,32の内壁面に圧迫させる水平圧迫機構を内蔵している。この水平圧迫機構は、水平圧迫装置41,42を構成する伸縮アクチュエータのロッドが垂直方向(下方向)に移動した場合に、その移動を利用して止水パネル34~37をガイドレール31,32の内壁面に向かう方向(水平方向)に移動させるように構成されている。この水平圧迫機構についても既に公知なので説明は省略する。なお、止水パネルまたはガイドレールの内壁面には、ゴム製の水密材(水密性ゴム)が設けられていて、止水パネルとガイドレールはこの水密材を介して接触する。
【0021】
垂直圧迫装置51~54は、伸縮アクチュエータの伸縮力を利用して、止水パネル34の上端部を垂直方向(下方向)に圧迫させる垂直圧迫機構を内蔵している。この水平圧迫機構は、垂直圧迫装置51~54を構成する伸縮アクチュエータのロッドが移動した場合に、その移動を利用して止水パネル34を垂直方向(下方向)に移動させるように構成されている。この垂直圧迫機構についても既に公知なので説明は省略する。なお、止水パネルと止水パネルとの間、止水パネルと床との間にもそれぞれ水密材(水密性ゴム)が設けられている。
【0022】
この実施の形態に係る止水開閉体装置10は、4個の垂直圧迫装置51~54で構成されている。垂直圧迫装置51,52は止水パネル34の左側上端部に接触し、垂直圧迫装置51,52の圧迫力を接触部材61を介して止水パネル34に伝達し、止水パネル34を垂直方向(下方向)に圧迫するように構成されている。垂直圧迫装置53,54は、止水パネル34の右側上端部に接触し、垂直圧迫装置53,54の圧迫力を接触部材63を介して止水パネル34に伝達し、止水パネル34を垂直方向(下方向)に圧迫するように構成されている。この実施の形態において、垂直圧迫装置の個数は一例であり、右側左側中央のそれぞれ3個所に垂直圧迫装置を設けてもよいし、止水パネル34の横方向の長尺が短い場合には、1~2個の垂直圧迫装置を設けてもよい。逆に、止水パネル34の横方向の長尺が長い場合には、4個以上の垂直圧迫装置を設けてもよい。
【0023】
なお、この実施の形態では、2個の垂直圧迫装置51,52で一つの接触部材61を圧迫し、2個の垂直圧迫装置53,54で一つの接触部材63を圧迫する場合を示しているが、3個以上の垂直圧迫装置で一つの接触部材を圧迫するように構成してもよいし、1個乃至複数個の垂直圧迫装置を組み合わせて、それぞれ一つの接触部材を圧迫するように構成してもよい。例えば、左側及び右側の接触部材は2個の垂直圧迫装置で圧迫し、中央の接触部材は1又は3個の垂直圧迫装置で圧迫してもよい。
【0024】
図2は、
図1の止水開閉体装置の制御装置の概略を示すブロック図である。止水開閉体装置の制御装置20は、シャッター制御盤21、開閉機22、自動閉鎖装置23、止水制御装置25及び操作スイッチ27などを含んで構成される。
シャッター制御盤21及び開閉機22は、図示していないチェーンホイールを回転駆動して、チェーンを巻き取ったり巻き戻したりして止水パネル(止水開閉手段)34~37の開閉動作を制御する。開閉機22には図示しないブレーキ(制動手段)が取り付けられており、平常時には止水パネル34~37の開放状態をブレーキによって機械的に保持している。そして、外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが入力した場合、シャッター制御盤21へ閉鎖指示信号が送信され、閉鎖指示信号に応じて開閉機22のブレーキを開放し、止水パネル34~37の開放状態の保持を解除し、チェーンホイールを回転駆動して止水パネル34~37を閉方向に移動し、建物等の構造物などの開口部を閉鎖するように制御している。
【0025】
なお、外部からの非常信号BSの入力と併せて、又は代わりに、パネル収納部30の内側であって、まぐさ部の開口部近傍、すなわち止水パネル34~37が昇降する部分に温度感知器などを設けてもよい。この温度感知器としては、常時接点がオン状態にあり、接点が所定温度(摂氏100~300度の範囲の任意温度)に達した時点で接点を開きオフ状態となるB接点の自動復帰型の高温度用バイメタル式サーモスタットなどで構成され、接点が開いた場合には火災などが発生したことを示す信号を非常信号BSに相当する信号として出力するようにしてもよい。
【0026】
開閉機22には、その回転位置を検出して、チェーンの巻き取り過ぎ及び巻き戻し過ぎ(チェーン弛み)を防止するための図示しないリミットスイッチが設けられている。リミットスイッチの検出信号は、シャッター制御盤21へ出力される。
【0027】
シャッター制御盤21は、マイクロコンピューター構成になっており、商用電源の電源ラインACから、例えば200vの交流電力が供給されている。
操作スイッチ27は、止水パネル34~37の開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、開ボタン、停ボタン、閉ボタン、止水ONボタン及び止水OFFボタンなどの操作ボタンをそれぞれ有し、これら各操作ボタンの操作状態に応じた制御信号を止水制御装置25に出力する。なお、図示していないが止水ONボタンの近傍には止水処理を行った回数を表示するLED等の表示手段を有する。
【0028】
シャッター制御盤21は、操作スイッチ27の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号や、開閉機22に設けられたリミットスイッチからの検出信号などに基づいて、開閉機22の回転を制御したり、非常信号BSに基づいて開閉機22のブレーキを解除したりする。
また、止水制御装置25は、操作スイッチ27の運転操作用の止水ONボタン及び止水OFFボタンの操作状態に対応した制御信号に応じて、水平圧迫装置41,42及び垂直圧迫装置51~54の動作を制御する。
【0029】
止水制御装置25は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)251、スイッチング電源252、追加リレー253,254を含んで構成され、PLC251に従って制御される。スイッチング電源252は、開閉機22に設けられたリミットスイッチからの検出信号(a接点)がオン状態(b接点)となった時点で、作動信号(24V)の供給を停止し、開閉機22に制動を掛けて、チェーン及び止水パネル34~37の移動を停止させる。これと同時に止水制御装置25は、止水信号をON状態として、止水制御を開始する。止水制御装置25は止水信号がON状態となってから所定時間経過後(例えば1秒後)にスイッチング電源252から作動信号(24V)を自動閉鎖装置23の作動入力端子に出力する。自動閉鎖装置23は、この作動信号(24v)の入力に応じて開閉機22のブレーキを解除する。
【0030】
追加リレー253は、止水OFFボタンの制御信号入力後の所定条件達成時に自動閉鎖装置23に無電圧の復旧信号を出力し、開ボタン、停ボタン、閉ボタンの各操作に対応した開動作、停動作、閉動作を実行可能とする。追加リレー254は、開閉機22に設けられたリミットスイッチからの検出信号(a接点)がオン状態(b接点)となった時点で、PLC251からシャッター制御盤21へ出力される制御信号をインターロックしシャッター制御盤21及び開閉機22の動作を停止させる。
【0031】
また、追加リレー254は、スイッチング電源252から作動信号(24V)が自動閉鎖装置23の作動入力端子に出力されている間は、PLC251からシャッター制御盤21へ出力される制御信号をインターロックしシャッター制御盤21及び開閉機22の動作を停止させる。これによって止水制御装置25が水平圧迫装置41,42及び垂直圧迫装置51~54の動作を制御している間は、シャッター制御盤21及び開閉機22の動作はインターロックされるようになっている。
【0032】
図3は、止水開始(止水ON)ボタンが操作され、止水処理が完了するまでの止水開閉体装置の動作例を示す動作ダイヤグラムである。
図3において、波形h1,h2は、止水開閉体装置10の複数の止水パネル34~37によって開口部が閉鎖された後に、止水パネル34~37の水密性を向上させるために動作する水平圧迫装置41,42の伸縮アクチュエータの水平方向の移動量(すなわち止水パネル34~37の水平方向の移動距離)を、波形v1~v4は、垂直圧迫装置51~54の伸縮アクチュエータの垂直方向の移動量(すなわち止水パネル34~37の垂直方向の移動距離)を模式的にそれぞれ示す。水平圧迫装置41,42及び垂直圧迫装置51~54の移動量は、実際は装置毎にそれぞれ若干異なっているが、ここでは説明の便宜上、水平圧迫装置41,42及び垂直圧迫装置51~54は同じ移動量を示すものとして説明する。
【0033】
止水開始(止水ON)ボタンが操作されると、シャッター制御盤21及び開閉機22は止水開閉体装置10の複数の止水パネル34~37を閉鎖方向に移動し開口部を閉鎖する。止水パネル34~37による開口部の閉鎖処理が時刻t0で終了し、開口部が全閉鎖されると、その時刻t0で自動閉鎖装置23はa接点からb接点に移行したことを示す停止信号を追加リレー254に送信する。追加リレー254はこの停止信号を受信することによってシャッター制御盤21及び開閉機22をインターロック状態とする。時刻t0で停止信号が出力されると同時に止水信号がON状態となり、止水開閉体装置10は時刻t0で止水処理を開始する。
【0034】
従来は、この止水信号がON状態となると同時に水平圧迫装置41,42を動作させて水平圧迫処理を実行していたが、この実施の形態では止水信号がON状態となった時刻t0から約1秒後の時刻t1に自動閉鎖装置23へ24Vの作動信号を出力している。スイッチング電源252から自動閉鎖装置23へ24Vの作動信号が出力されることによって、追加リレー254は、シャッター制御盤21及び開閉機22をインターロック状態とする。すなわち、追加リレー254は、止水パネル34~37の停止信号を受信した後に、自動閉鎖装置23へ24Vの作動信号が出力している場合に、シャッター制御盤21及び開閉機22をインターロック状態とする。
【0035】
スイッチング電源252から自動閉鎖装置23へ24Vの作動信号が出力された時刻t1から約1秒経過後(止水ONから約2秒経過後)の時刻t2で水平圧迫装置41,42のモータが駆動を開始し、水平圧迫装置41,42によって止水パネル34~37が水平方向へ移動を開始する。止水パネル34~37の水平方向への移動距離は、波形h1,h2に示すように線形的に上昇する。
【0036】
水平圧迫処理開始時刻t2から所定時間で水平圧迫装置41,42のモータの電流フィードバック信号値は約0.5〔A〕となり、時刻t3に近づくに連れて電流フィードバック信号値は徐々に大きくなり、時刻t3では、約1.0〔A〕となり、止水パネル34~37の移動距離はAH1となる。移動距離AH1で停止したのは、水平圧迫装置41,42によって水平方向に移動していた止水パネル34~37がガイドレール31,32の内壁面に接触し、止水パネル34~37の水平方向の移動がパネルとガイドレールとの間の圧縮性のある水密性ゴムへの圧接によって水平方向の移動が抑止されたからである。
【0037】
水平圧迫装置41,42のモータの電流フィードバック信号の値が約1.0〔A〕、すなわち止水パネル34~37の移動距離がAH1となった時刻t3で水平圧迫装置41,42のモータへの電力供給を停止する。これによって、止水パネル34~37に対する水平圧迫装置41,42による水平方向への圧迫制御は一時的に停止し、伸縮アクチュエータのロッドの位置が保持されることで止水パネル34~37には電流値約1.0〔A〕のトルクに応じた水平方向の圧迫力が印可された状態が維持されることになる。すなわち、時刻t3から時刻t7までの間は電流値1.0〔A〕のトルクに応じた水平方向の圧迫力が印可された状態が継続することになる。
【0038】
一方、止水ON(止水信号が時刻t0でON状態)となることによって、操作スイッチ27上のLEDが点滅状態となり、止水パネルが止水処理の稼働中であることを報知するようになる。点滅状態は、例えばLEDを1秒点灯-1秒消灯を繰り返すことによって実行される。止水パネルによる止水処理が終了すると、その時点で操作スイッチ27上のLEDは連続した点灯状態となり、止水処理が終了したことを報知する。
【0039】
水平圧迫装置41,42のモータへの電力供給が停止した時刻t3から約5秒経過後に垂直圧迫装置51~54のモータを駆動し、止水パネル34~37を垂直方向への移動(圧迫処理)を開始する。止水パネル34~37の垂直方向への移動距離は、波形v1~v4に示すように線形的に上昇する。これは、モータが駆動を開始し垂直圧迫装置51~54によって止水パネル34~37が垂直方向へ移動したことを示す。
【0040】
垂直圧迫処理開始時刻t4から所定時間で垂直圧迫装置51~54のモータの電流フィードバック信号値は約0.5〔A〕となり、時刻t5に近づくに連れて電流フィードバック信号値は徐々に大きくなり、時刻t5では、約1.0〔A〕となり、止水パネル34~37の移動距離はAV1となる。移動距離AV1で停止したのは、垂直圧迫装置51~54によって垂直方向に移動していた止水パネル34~37の垂直方向の移動がパネル間の圧縮性のある水密性ゴムへの圧接によって垂直方向の移動が抑止されたからである。
【0041】
垂直圧迫装置51~54のモータの電流フィードバック信号値が約1.0〔A〕、すなわち止水パネル34~37の移動距離がAV1となった時刻t5で垂直圧迫装置51~54のモータへの電力供給を停止する。これによって、止水パネル34~37に対する垂直圧迫装置51~54による垂直方向への圧迫制御は一時的に停止し、伸縮アクチュエータのロッドの位置が保持されることで止水パネル34~37には電流値約1.0〔A〕のトルクに応じた垂直方向の圧迫力が印可された状態が維持されることになる。すなわち、時刻t5から時刻t9までの間は電流値1.0〔A〕のトルクに応じた垂直方向の圧迫力が印可された状態が継続することになる。
【0042】
垂直圧迫装置51~54のモータへの電力供給が停止した時刻t5から所定時間(約8秒)経過後の時刻t6で、再び水平圧迫装置41,42のモータへの電力供給を開始する。この時刻t6では水平圧迫装置41,42は、水平方向の移動がパネルとガイドレールとの間の圧縮性のある水密性ゴムへの圧接によって抑止された状態にあるので、電流フィードバック信号は時刻t6から徐々に線形的に増加する。この電流フィードバック信号の増加と共に水平圧迫装置41,42の水平方向の圧迫力(トルク)も徐々に増加する。
【0043】
電流フィードバック信号の値が約1.0〔A〕に達した時刻t7から電流フィードバック信号も増加し、それに伴って波形h1,h2(止水パネル34~37の移動距離)も徐々に増加し、移動距離がAH2となった時刻t8、すなわち電流フィードバック信号の値が約4.0〔A〕に達した時刻t8で水平圧迫装置41,42のモータへの電力供給を停止する。これによって、止水パネル34~37に対する水平圧迫装置41,42による水平方向への圧迫制御は停止し、伸縮アクチュエータのロッドの位置が保持されることで止水パネル34~37には電流値約4.0〔A〕のトルクに応じた水平方向の圧迫力が印可された状態が維持されることになる。すなわち、時刻t8以降はAL2(電流値4.0〔A〕)のトルクに応じた水平方向の圧迫力が印可された状態が継続することになる。
【0044】
水平圧迫装置41,42のモータへの電力供給が停止した時刻t8で垂直圧迫装置51~54への電力供給を開始する。この時刻t8では垂直圧迫装置51~54は、垂直方向の移動がパネル間の圧縮性のある水密性ゴムへの圧接によって抑止される状態にあるので、電流フィードバック信号は電流値のみが線形的に増加する。この電流値の増加と共に垂直圧迫装置51~54の垂直方向の圧迫力(トルク)も徐々に増加し、それに伴って波形v1~v4(止水パネル34~37の移動距離)も徐々に増加し、移動距離がAV2となった時刻t10、すなわち電流フィードバック信号の値が約4.0〔A〕に達した時刻t10で垂直圧迫装置51~54のモータへの電力供給を停止する。これによって、止水パネル34~37に対する垂直圧迫装置51~54による垂直方向への圧迫制御は停止し、伸縮アクチュエータのロッドの位置が保持されることで止水パネル34~37には電流値約4.0〔A〕のトルクに応じた垂直方向の圧迫力が印可された状態が維持されることになる。
【0045】
垂直圧迫装置51~54のモータへの電力供給を停止した時刻t10で、止水信号は連続点灯となり、止水動作が終了し、複数の止水パネル34~37によって開口部は完全な止水状態になったことを報知する。完全な止水状態になった回数をカウントするためのカウントパルスが止水カウンタへ出力される。止水カウンタの累積値は、止水OFFボタンの近くに表示される。
【0046】
図3のダイヤグラムの一連の処理によって、止水開閉体装置10の複数の止水パネル34~37による水密性を向上させることが可能となる。なお、時刻t0から時刻t1までの時間(1秒)、時刻t1から時刻t2までの時間(1秒)及び時刻t3から時刻t4までの時間(5秒)、時刻t5から時刻t6までの時間(8秒)、時刻t8から時刻t9までの時間(5秒)は一例であり、開口部の大きさや止水パネルの枚数や大きさ等によって0~十数秒の範囲で適宜変更可能な値である。また、水平圧迫装置41,42、垂直圧迫装置51~54への電力供給を停止する際の電流フィードバック信号の電流値0.5〔A〕,1.0〔A〕,4.0〔A〕も一例であり、開口部の大きさや止水パネルの枚数や大きさ、水密材のやわらかさ(弾力性)等によって0~十数〔A〕の範囲で適宜変更可能な値である。
【0047】
図3のダイヤグラムの制御では、時刻t2から時刻t3までの第1水平圧迫処理と、時刻t4から時刻t5までの第1垂直圧迫処理と、時刻t7から時刻t8までの第2水平圧迫処理と、時刻t9から時刻t10までの第2垂直圧迫処理とを行う場合について説明したが、これらの水平圧迫処理及び垂直圧迫処理をさらに複数回実行してもよい。
【0048】
図4は、止水解除(止水OFF)ボタンが操作され、止水状態が解除されるまでの止水開閉体装置の動作例を示す動作ダイヤグラムである。
図4では
図3の波形と同じ波形を示すと共に停止信号(インターロック信号)、開信号、停止出力(停信号)及び閉信号を新たに示している。
図4における開信号、閉信号、停止出力(停信号)及び閉信号は、操作スイッチ27の開ボタン、停ボタン、閉ボタンの操作によって止水パネル34~37の開閉停の各動作を制御する開信号、停止信号(停信号)及び閉信号に対応するものである。
【0049】
止水解除(止水OFF)ボタンが時刻t0で操作されると、操作スイッチ27上のLEDは連続点灯状態から点滅状態となり、止水解除処理中であることを報知する。これと同時に止水開閉体装置10は止水解除処理を開始する。止水信号がOFF状態となった時刻t0で水平圧迫装置41,42のモータは圧迫処理の場合とは逆方向へ回転駆動する。これによって、水平圧迫装置41,42の伸縮アクチュエータは、止水パネル34~37を圧迫解除方向(水平圧迫の方向と逆方向)へ移動する。すなわち、止水解除(止水OFF)ボタンの動作時t0に伸縮アクチュエータは引込動作を開始する。止水パネル34~37の水平方向への移動距離は、波形h1,h2に示すように線形的に下降し減少する。水平圧迫装置41,42の各伸縮アクチャエータに取り付けられている近接センサがONとなった時点t1で水平方向の圧迫解除処理は終了する。
【0050】
水平方向の圧迫解除処理終了時刻t1から所定時間(約5秒)経過後の時刻t2で垂直圧迫装置51~54のモータを圧迫処理の場合とは逆方向へ回転駆動する。これによって、垂直圧迫装置51~54の伸縮アクチュエータは、止水パネル34~37を圧迫解除方向(垂直圧迫の方と逆方向)へ移動する。すなわち、時刻t2で伸縮アクチュエータは引込動作を開始する。止水パネル34~37の垂直方向への移動距離は、波形v1~v4に示すように線形的に下降し減少する。垂直圧迫装置51~54の各伸縮アクチュエータに取り付けられている近接センサがONとなった時点t3で垂直方向の圧迫解除処理は終了する。
【0051】
従来は、この垂直方向の圧迫解除処理が終了した時点で止水状態は解除され、操作スイッチ27の開ボタン、停ボタン、閉ボタンの操作によって止水パネル34~37の開閉停の各動作を制御可能としていた。しかし、止水状態の解除、すなわち止水パネル34~37に対する垂直方向の圧迫が解除したことによって、アクチュエータ機構の押し力が無くなり、水密性ゴムの反発力で止水パネル34~37が上方へ戻ることでチェーンに弛みが発生するようになる。
【0052】
そこで、この実施の形態では、全ての近接センサがONになった後の時刻t4でシャッター制御盤21から自動閉鎖装置23に復旧信号を出力し、ブレーキを解除させる。その後、止水パネル34~37の開-停-閉の一連の開動作、停止、閉動作を実行することで、チェーンの弛みを除去し、チェーンが張ったままの全閉状態となるように制御している。この一連のシャッター動作が終わるまで止水ランプを点滅させて止水OFF動作時(アクチュエータ引込動作)の一連の動作中であることを報知する。
【0053】
以下、この一連の動作について説明する。止水パネル34~37に対する垂直方向の圧迫が解除し、全ての近接センサがONになった後の時刻t4でシャッター制御盤21から自動閉鎖装置23に対して復旧信号が出力される。復旧信号の出力と同時(時刻t4)に停止出力がOFF状態となる。停止出力がON状態にある場合、開信号及び閉信号は出力されない。従って、停止出力がOFF状態となったことによって、開信号及び閉信号の出力が有効となる。
【0054】
復旧信号が出力した時刻t4及び停止出力がOFF状態となった時刻t4から約0.1秒遅れて、インターロック信号がOFF状態となり、インターロックが解除される。インターロック信号がOFF状態となり、インターロックが解除されているので、時刻t4から約2秒経過後の時刻t5に開信号を出力する。時刻t5から約2秒経過後の時刻t6に開信号に代えて停止出力を出力する。時刻t6から約1秒経過後の時刻t7に停止出力に代えて閉信号を出力する。時刻t7から約2秒経過後に閉信号の出力を停止する。この一連の止水パネル34~37の開-停-閉の開動作、停止、閉動作の実行によって、チェーンの弛みが解消され、チェーンが張ったままの全閉状態が復活する。
【0055】
なお、
図4のダイヤグラムにおいて、時刻t1から時刻t2までの時間(5秒)、時刻t4からの0.1秒、時刻t4から時刻t5までの時間(2秒)、時刻t5から時刻t6までの時間(2秒)、時刻t6から時刻t7までの時間(1秒)、時刻t7から時刻t8までの時間(2秒)は一例であり、開口部の大きさや止水パネルの枚数や大きさ等によって0~十数秒の範囲で適宜変更可能な値である。
【0056】
以上説明した実施の形態では、上下昇降方式で繰り出される止水開閉体装置を例に説明したが、止水パネルなどの止水用の開閉体が横引き方式又は水平方式で繰り出されたりするものであっても、同様に適応することができる。また、垂直圧迫の圧迫方向を、開閉体の繰り出し方向に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…止水開閉体装置
20…止水開閉体装置の制御装置
21…シャッター制御盤
22…開閉機
23…自動閉鎖装置
25…止水制御装置
251…PLC
252…スイッチング電源
253,254…追加リレー
27…操作スイッチ
30…パネル収納部
31,32…ガイドレール
34~37…止水パネル
41,42…水平圧迫装置
51~54…垂直圧迫装置
61,63…接触部材