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特開2024-146354微粒子測定装置および微粒子測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146354
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】微粒子測定装置および微粒子測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/13 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N15/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059199
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 康晴
(72)【発明者】
【氏名】鷲津 信栄
(57)【要約】
【課題】少ない粒子数でも粒径を推定可能な装置を提供する。
【解決手段】ポアデバイス100は、ポア112を有する隔壁により隔てられた第1液室122および第2液室124を有する。測定器200は、第1液室122に設けられた第1電極E1と第2液室124に設けられた第2電極E2の間に流れる電流信号を測定する。圧力制御装置400は、測定中に、第1液室122の圧力が第2液室124の圧力より高い第1状態φ1と、第1液室122の圧力が第2液室124の圧力より低い第2状態φ1と、を切り替える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポアデバイスを用いた微粒子測定装置であって、
前記ポアデバイスは、細孔を有する隔壁により隔てられた第1液室および第2液室を有し、
前記微粒子測定装置は、
前記第1液室に設けられた第1電極と前記第2液室に設けられた第2電極の間に流れる電流信号を測定する測定器と、
測定中に、前記第1液室の圧力が前記第2液室の圧力より高い第1状態と、前記第1液室の圧力が前記第2液室の圧力より低い第2状態と、を切り替える圧力制御装置と、
を備えることを特徴とする微粒子測定装置。
【請求項2】
前記第1状態において前記第2液室の圧力は大気圧であり、前記第2状態において前記第1液室の圧力は大気圧であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子測定装置。
【請求項3】
前記測定器は、
前記電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプの出力をデジタル信号に変換するデジタイザと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子測定装置。
【請求項4】
ポアデバイスを用いた微粒子測定方法であって、
前記ポアデバイスは、細孔を有する隔壁により隔てられた第1液室および第2液室を有し、
前記微粒子測定方法は、
前記第1液室の圧力が前記第2液室の圧力より高い第1状態と、前記第1液室の圧力が前記第2液室の圧力より低い第2状態と、を切り替えるステップと、
前記第1状態および前記第2状態それぞれにおいて、前記第1液室に設けられた第1電極と前記第2液室に設けられた第2電極の間に流れる電流信号を測定するステップと、
を備えることを特徴とする微粒子測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポアデバイスを用いた計測に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的検知帯法(コールター原理)と呼ばれる粒度分布測定法が知られている。この測定法では、粒子を含む電解液を、ナノポアと称される細孔を通過させる。粒子が細孔を通過するとき、細孔中の電解液は粒子の体積に相当する量だけ減少し、細孔の電気抵抗を増加させる。したがって細孔の電気抵抗を測定することで、粒子の体積(すなわち粒径)を測定することができる。
【0003】
図1は、電気的検知帯法を用いた微粒子測定装置1Rのブロック図である。微粒子測定装置1Rは、ポアデバイス100、測定器200Rおよびデータ処理装置300を備える。
【0004】
ポアデバイス100の内部は、検出対象の粒子4を含む電解液2が満たされる。ポアデバイス100の内部は、ポアチップ102によって2つの空間に隔てられており、2つの空間には電極106と電極108が設けられる。電極106と電極108の間に電位差を発生させると、電極間にイオン電流が流れ、また電気泳動によって粒子4が細孔104を経由して、一方の空間から他方の空間に移動する。
【0005】
測定器200Rは、電極対106,108の間に電位差を発生させるとともに、電極対の間の抵抗値Rpと相関を有する情報を取得する。測定器200Rは、トランスインピーダンスアンプ210、電圧源220、デジタイザ230を含む。電圧源220は電極対106,108の間に電位差Vbを発生させる。この電位差Vbは、電気泳動の駆動源であるとともに、抵抗値Rpを測定するためのバイアス信号となる。
【0006】
電極対106,108の間には、細孔104の抵抗に反比例する微小電流Isが流れる。
Is=Vb/Rp …(1)
【0007】
トランスインピーダンスアンプ210は、微小電流Isを電圧信号Vsに変換する。変換ゲインをrとするとき、以下の式が成り立つ。
Vs=-r×Is …(2)
式(1)を式(2)に代入すると、式(3)が得られる。
Vs=-Vb×r/Rp …(3)
デジタイザ230は、電圧信号VsをデジタルデータDsに変換する。このように測定器200Rにより、細孔104の抵抗値Rpに反比例する電圧信号Vsを得ることができる。データ処理装置300は、デジタルデータDsを処理し、電解液2に含まれる粒子4の個数や粒径分布などを解析する。
【0008】
図2は、測定器200Rにより測定される例示的な微小電流Isの波形図である。なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0009】
粒子が通過する短い期間、細孔104の抵抗値Rpが増大する。したがって、粒子が通過するごとに電流Isはパルス状に減少する。個々のパルス電流の振幅は、粒径と相関を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-016881号公報
【特許文献2】特開2014-219235号公報
【特許文献3】特開2018-054594号公報
【特許文献4】国際公開第2002/084306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
理想的には、パルス電流の振幅と粒径は1対1で対応するが、現実的には、粒子の通過経路などによって、同じ粒径の粒子が通過したときのパルス電流の振幅は、ばらつきを持つ。そのため、細孔104に多数(たとえば数千個)の粒子を通過させてデータを取得し、統計的な処理によって、粒径を推定する必要がある。
【0012】
粒子の種類によっては、多数の粒子を含む溶液を用意できない場合がある。あるいは、粒子の性質が、溶液中の密度によって変化するような場合には、溶液中の粒子数を任意に増やすことはできない。
【0013】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、少ない粒子数でも粒径を推定可能な装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のある態様は、ポアデバイスを用いた微粒子測定装置に関する。ポアデバイスは、細孔を有する隔壁により隔てられた第1液室および第2液室を有する。微粒子測定装置は、第1液室に設けられた第1電極と第2液室に設けられた第2電極の間に流れる電流信号を測定する測定器と、測定中に、第1液室の圧力が第2液室の圧力より高い第1状態と、第1液室の圧力が第2液室の圧力より低い第2状態と、を切り替える圧力制御装置と、を備える。
【0015】
本開示の別の態様は、ポアデバイスを用いた微粒子測定方法に関する。ポアデバイスは、細孔を有する隔壁により隔てられた第1液室および第2液室を有する。微粒子測定方法は、第1液室の圧力が第2液室の圧力より高い第1状態と、第1液室の圧力が第2液室の圧力より低い第2状態と、を切り替えるステップと、第1状態および第2状態それぞれにおいて、第1液室に設けられた第1電極と第2液室に設けられた第2電極の間に流れる電流信号を測定するステップと、を備える。
【0016】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0017】
本開示のある態様によれば、少ない粒子数でも粒径を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電気的検知帯法を用いた微粒子測定装置のブロック図である。
図2】測定器により測定される例示的な微小電流Isの波形図である。
図3】実施形態に係る微粒子測定装置を示す図である。
図4図3の微粒子測定装置の動作を説明する図である。
図5】圧力と通過粒子数の関係を示す図である。
図6】一実施例に係る測定器のブロック図である。
図7】一実施例に係る圧力制御装置の構成例を示す図である。
図8】一実施例に係る圧力制御装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0020】
一実施形態に係る微粒子測定装置は、ポアデバイスを利用して微粒子を測定する。ポアデバイスは、細孔を有する隔壁により隔てられた第1液室および第2液室を有する。微粒子測定装置は、第1液室に設けられた第1電極と第2液室に設けられた第2電極の間に流れる電流信号を測定する測定器と、測定中に、第1液室の圧力が第2液室の圧力より高い第1状態と、第1液室の圧力が第2液室の圧力より低い第2状態と、を切り替える圧力制御装置と、を備える。
【0021】
この構成によると、第1状態と第2状態を切りかえることにより、第1液室と第2液室の間を、微粒子を往復させることができる。これにより、微粒子の個数が少ない状況でも、細孔に多くの微粒子を通過させることができ、粒径を推定するのに足りるデータを取得することができる。
【0022】
電気泳動を利用した駆動方法において、電界の向きを反転させることにより、微粒子を往復させる手法も考えられる。しかしながら、この手法では、電界の極性を反転させたときの過渡的な挙動が、電流計測値に現れ、これが粒子径の測定精度を低下させる。また、電解質溶液における電圧-電流特性は、一般的にヒステリシスを描くことが知られている(サイクリックポルタンメトリー)。したがって、電気泳動の電界の極性を反転させる手法では、同じ粒径の粒子に対して測定される電流パルスの振幅が、電界の極性によって異なることとなる。上述の圧力制御による微粒子の駆動方法によれば、このような問題が発生しないという利点がある。
【0023】
(実施形態)
以下、好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
また図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0027】
図3は、実施形態に係る微粒子測定装置1を示す図である。微粒子測定装置1は、ポアデバイス100、測定器200、データ処理装置300、圧力制御装置400を備える。
【0028】
ポアデバイス100は、ポアチップ110およびチップケース120を備える。ポアチップ110にはポア(細孔)112が形成されている。ポアチップ110は、チップケース120の内部に収容され、チップケース120の内部空間を、第1液室122と第2液室124とに区切っている。第1液室122と第2液室124の間は、ポア112を介して連通している。第1液室122には第1電極E1が設けられ、第2液室124には第2電極E2が設けられる。
【0029】
測定時には、チップケース120の内部空間は、測定対象の粒子4を含む電解液2で満たされる。
【0030】
測定器200は、第1電極E1と第2電極E2の間に電圧Vを加えて、第1電極E1と第2電極E2の間に流れるイオン電流Iを測定する。測定器200は、電圧源202、電流検出回路204、波形キャプチャモジュール206を備える。電圧源202は、第1電極E1と第2電極E2の間に電位差Vを発生する。電流検出回路204は、第1電極E1から第2電極E2に流れるイオン電流Iを示す電流検出信号Vcsを生成する。波形キャプチャモジュール206は、電流検出信号Vcsの波形をキャプチャする。波形キャプチャモジュール206が生成した波形データWAVEは、データ処理装置300に送信される。データ処理装置300は、波形データを処理し、粒子4の粒径などを推定する。
【0031】
圧力制御装置400は、第1液室122と第2液室124の圧力差を制御する。具体的には圧力制御装置400は、測定中に、第1液室122の圧力p1の方が高い第1状態φ1と、第2液室124の圧力p2の方が高い第2状態φ2と、を交互に繰り返す。p1>p2が成り立つ第1状態φ1では、電解液2は、第1液室122から第2液室124に向かって移動するため、それに含まれる粒子4も、第1液室122から第2液室124に向かってポア112を通過する。反対に、p1<p2が成り立つ第2状態φ2では、電解液2は、第2液室124から第1液室122に向かって移動するため、それに含まれる粒子4も、第2液室124から第1液室122に向かってポア112を通過する。圧力制御装置400は、第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返すことにより、粒子4を、第1液室122と第2液室124の間で往復させる。
【0032】
以上が微粒子測定装置1の構成である。続いてその動作を説明する。
【0033】
図4は、図3の微粒子測定装置1の動作を説明する図である。圧力制御装置400によって、第1状態φ1と第2状態φ2が交互に繰り返される。第1状態φ1では、第1液室122から第2液室124に向かって粒子4が流れる。粒子4がポア112を通過するとき、イオン電流Iがパルス状に減少する。イオン電流Iの振幅は、粒子4の径と相関を有する。
【0034】
第1状態φ1の間、いくつかの粒子4がポア112を通過し、通過するたびにイオン電流Iにパルス状の変化(単にパルスという)が現れる。第1状態φ1が続くと、第1液室122内の電解液2の量が少なくなり、第2液室124側の電解液2の量が多くなる。第1液室122側の電解液2の量がある程度減少すると、第1状態φ1から第2状態φ2に切り替えられる。
【0035】
第2状態φ2に切りかえた直後、第2液室124側の電解液2の量が多くなっている。第2状態φ2では、第2液室124から第1液室122に向かって電解液2が送り込まれ、電解液2に含まれる粒子4がポア112を通過するたびに、イオン電流Iにパルスが現れる。第2状態φ2が続くと、第2液室124内の電解液2の量が減少し、第1液室122側の電解液2の量が増加する。
【0036】
このように、実施形態に係る微粒子測定装置1では、第1液室122と第2液室124の間で、電解液2を往復させる。これにより、電解液2に含まれる粒子4の個数が少ない場合であっても、多くのパルスを含む波形データを取得することができる。こうして得られた波形データを処理することで、統計処理の確からしさが高まるため、粒径の推定の精度を改善できる。
【0037】
第1状態φ1と第2状態φ2の切りかえは、ポア112を通過した粒子4の個数が所定数に達する度に、言い換えると波形データに所定数のパルスが現れる度に行ってもよい。あるいは、所定のタイムインターバルで、第1状態φ1と第2状態φ2の切りかえを行ってもよい。
【0038】
なお、ポア112の形状やメンブレンの材質によっては、電流信号に発生するパルスの立ち上がり、立ち下がりの形状が、粒子の通過方向によって異なる場合がある。しかしながらその場合であっても、粒子4がポア112を通過することによる最大抵抗値は変わらないため、検出されるパルスの振幅は変わらない。そのため粒子径分布ヒストグラムを生成するためのデータとしては、第1状態と第2状態とで得られた波形データは、同等に扱うことができる。
【0039】
電気泳動を利用して粒子4の向きを反転させる場合、電圧-電流特性のヒステリシスによって、粒径の推定精度が低下する。これに対して、実施形態では、第1状態φ1と第2状態φ2とで、第1電極E1と第2電極E2に印加される電圧の極性が常に一定である。そのため、電圧-電流特性のヒステリシスの影響を受けないため、正確な粒径推定が可能となる。
【0040】
図5は、圧力差と通過粒子数の関係を示す図である。横軸は時間であり、縦軸は、波形データ中に現れる累積パルス数、すなわち粒子数である。傾きは、単位時間当たりの通過粒子の個数を表す。したがって圧力差を大きくするほど、単位時間当たりの通過粒子の個数を増やすことができる。
【0041】
続いて、測定器200の構成例を説明する。
【0042】
図6は、一実施例に係る測定器200Aのブロック図である。測定器200Aは、トランスインピーダンスアンプ210、電圧源220、デジタイザ230を含む。電圧源220は、上述の電圧源202に対応する。またトランスインピーダンスアンプ210は、上述の電流検出回路204に対応する。またデジタイザ230は上述の波形キャプチャモジュール206に対応する。
【0043】
トランスインピーダンスアンプ210は、オペアンプOA1および抵抗R1を含む。オペアンプOA1の反転入力端子は、第1電極E1と接続され、非反転入力端子は接地される。抵抗R1は、オペアンプOA1の反転入力端子と出力端子の間に接続される。
【0044】
電圧源220は、第1電極E1に電圧Vを印加する。オペアンプOA1の仮想接地により、反転入力端子、すなわち第1電極E1の電位は、接地(0V)となる。したがって、第1電極E1と第2電極E2間には、電圧Vが印加される。
【0045】
第1電極E1から第2電極E2に流れるイオン電流Iは、トランスインピーダンスアンプ210に流れ込む。トランスインピーダンスアンプ210の電圧Vcsは、
Vcs=-I×R1
となり、イオン電流Iに比例した電圧となる。したがって、イオン電流Iは、
I=Vcs/R1
として求めることができる。
【0046】
デジタイザ230は、A/Dコンバータ232、メモリ234、インタフェース回路236を含む。A/Dコンバータ232は、電流検出信号Vcsを所定のサンプリング周期で、デジタル信号に変換する。メモリ234は波形データを格納する。インタフェース回路236は、メモリ234に格納された波形データを、データ処理装置300に送信する。
【0047】
測定器200Aの構成は、図6のそれに限定されず、第1電極E1と第2電極E2間のインピーダンスを測定できる構成であればよい。図6の測定器200Aは、電圧印加電流センス(VFIS:Voltage Force Current Sense)方式であるが、電流印加電圧センス(IFVS:Current Force Voltage Sense)方式であってもよい。この場合、電圧源202に代えて電流源を設け、電流検出回路204に代えて電圧検出回路を設ければよい。
【0048】
図7は、一実施例に係る圧力制御装置400Aの構成例を示す図である。圧力制御装置400は、空気圧ポンプ402,404、バルブV1~V4、コネクタCN1,CN2を備える。圧力を急激に切り替えるとポアチップ110が破損するおそれがあるため、緩衝用のエアベントを設けることが好ましい。
【0049】
第1状態φ1では、バルブV2,V3が導通状態、バルブV1,V4が遮断状態となる。第1状態φ1では、第1液室122が空気圧ポンプ402によって加圧され、第2液室124が大気に開放される。
【0050】
第2状態φ2では、第2液室124が空気圧ポンプ404によって加圧され、第1液室122が大気に開放される。
【0051】
図8は、一実施例に係る圧力制御装置400Bの構成例を示す図である。圧力制御装置400は、図7の空気圧ポンプ404を省略して、バルブV2とV4を両方、空気圧ポンプ402と接続したものである。
【0052】
以上、実施の形態について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0053】
本明細書では微粒子測定器について説明したが本発明の用途はそれに限定されず、DNAシーケンサをはじめとするポアデバイスを用いた微小電流計測を伴う計測器に広く用いることができる。
【0054】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0055】
1 微粒子測定装置
2 電解液
4 粒子
100 ポアデバイス
110 ポアチップ
112 ポア
120 チップケース
122 第1液室
124 第2液室
E1 第1電極
E2 第2電極
200 測定器
202 電圧源
204 電流検出回路
206 波形キャプチャモジュール
210 トランスインピーダンスアンプ
220 電圧源
230 デジタイザ
232 A/Dコンバータ
234 メモリ
236 インタフェース回路
300 データ処理装置
400 圧力制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8