(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146360
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】フィルム検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/92 20060101AFI20241004BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N27/92 D
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059206
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519079636
【氏名又は名称】宇部マクセル京都株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本郷 豊
【テーマコード(参考)】
2G041
2G051
【Fターム(参考)】
2G041NA09
2G041NA12
2G041NA24
2G051AA32
2G051AB01
2G051AB04
2G051BB01
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】樹脂製フィルムにおける不良個所の検査を、樹脂製フィルムの全長にわたって、迅速に、かつ、高い精度で実行することができるフィルム検査装置を実現すること。
【解決手段】所定の電圧が印加された一対のロール22、23に樹脂製フィルム1をニップして走行させる検査装置100であって、前記一対のロールの一方22が、支持体22aと前記支持体上に配置された弾性層22bと前記弾性層の表面に配置された円筒金属23cとを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電圧が印加された一対のロールに、樹脂製フィルムをニップして走行させる検査装置であって、
前記一対のロールの一方が、支持体と前記支持体上に配置された弾性層と前記弾性層の表面に配置された円筒金属とを備えていることを特徴とする、フィルム検査装置。
【請求項2】
前記弾性層が、シリコンスポンジゴムで形成されている、請求項1に記載のフィルム検査装置。
【請求項3】
前記円筒金属の厚みが、0.05mm~0.3mmmであり、前記筒状金属が前記弾性層の表面に接着されている、請求項1に記載のフィルム検査装置。
【請求項4】
前記一対のロール間を走行した前記樹脂製フィルムの表面を撮影する撮像部を備えた欠陥検査部をさらに備えた、請求項1に記載のフィルム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、帯状に成型される樹脂製フィルムにおける、異物の付着やピンホールなどの不良個所の存在を検査する検査装置に関し、特に、所定の電圧が印加された一対の導電ロールでフィルムをニップして走行させながら不良個所の存在を検出することができるフィルム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製フィルム(多孔質樹脂製フィルムを含む)は、包装材料、電気絶縁材料(電気化学素子のセパレータほか)、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料、ディスプレイ材料、およびヘルスケア材料など多岐の用途に利用されている。
【0003】
一例として電気化学素子のセパレータ用の樹脂製フィルムとしては、ポリオレフィンを主成分とする多孔質の樹脂製フィルムが単独で、あるいは、無機粒子の塗膜などを積層した積層体の形態で使用されている。
【0004】
しかし、樹脂製フィルムに金属粉などの異物が付着・混入していたり、ピンホールなどの欠陥が形成されていたりすると、これらの不良個所で電気絶縁性が維持できなくなったり、電気化学素子の成型時に絶縁材料を傷つけてしまったりするなど、目的とする用途での使用に支障をきたすおそれを生じる。
【0005】
このような樹脂製フィルムにおける不良個所部分を検査する方法として、耐電圧検査(絶縁欠陥検出)が行われている。耐電圧検査は、樹脂製フィルムの両面にそれぞれ電極を配置して電極間に高電圧を印加し、異物やピンホールなどの欠陥がある場所で電流が流れることで欠陥の存在を検知するものである。このような耐電圧検査において、従来、金属ロールと導電性弾性ロールとの間に樹脂製フィルムをニップし、走行させながら両ロール間に電圧を印加することで欠陥部分を検知し、材料の走行を停止させて欠陥部分を検出、または、除去する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の従来の欠陥検査方法は、帯状の樹脂製フィルムをニップした状態で長手方向に走行させながら検査することができ、プレス工程後に生じる欠陥部分を検出可能とするとともに、欠陥部分に生じる破壊穴を小さく抑え、かつ、大面積の樹脂製フィルムを短時間で検査できる。また、樹脂製フィルムをニップするロールの少なくとも一方の表面が、カーボン入りゴム、金属粉入りゴム、カーボンシート、導電性プラスチックなどで形成された導電性弾性ロールとすることで、一対の金属ロール間を走行させる場合に生じるロール表面の突起や傷などにより樹脂製フィルムが傷付くことを防止することができる。
【0008】
しかし、上記従来の検査方法では、導電性弾性ロールの表面の抵抗値を十分に低下させることができず、精度よく不良個所の検査を行うことができないという問題が生じていた。
【0009】
本開示は、上記従来の課題を解決するもので、樹脂製フィルムにおける不良個所の検査を、樹脂製フィルムの全長にわたって、迅速に、かつ、高い精度で実行することができるフィルム検査装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本願で開示するフィルム検査装置は、所定の電圧が印加された一対のロールに樹脂製フィルムをニップして走行させる検査装置であって、前記一対のロールの一方が、支持体と前記支持体上に配置された弾性層と前記弾性層の表面に配置された円筒金属とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願で開示するフィルム検査装置は、所定の電圧が印加された一対のロールの一方を、支持体と前記支持体上に配置された弾性層と前記弾性層の表面に配置された円筒金属とを備えたロールとしている。このため、ロール間を走行する樹脂製フィルムに対して所定の圧力を印加した状態で耐電圧検査を行うことができ、樹脂製フィルムの異物が含まれている部分で放電を生じさせることができ、不良部分を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】フィルム検査装置の全体構成を説明するための概略構成図。
【
図2】樹脂製フィルムをニップするロールの形状を説明するための概略斜視図。
【
図3】金属粉が存在する部分に対して、樹脂製フィルムをニップして耐電圧検査を行った際の検査後の状態を説明する図。
【
図4】金属粉が存在する部分に対して、樹脂製フィルムを加圧することなく耐電圧検査を行った際の検査後の状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願で開示するフィルム検査装置は、所定の電圧が印加された一対のロールに樹脂製フィルムをニップして走行させる検査装置であって、前記一対のロールの一方が、支持体と前記支持体上に配置された弾性層と前記弾性層の表面に配置された円筒金属とを備えている。
【0014】
このようにすることで、本願で開示するフィルム検査装置では、検査対象の樹脂製フィルムを適度に押圧することができるので、金属粉などの異物が存在する部分で放電を生じさせて、不良個所部分を確実に検出することができる。
【0015】
上記構成のフィルム検査装置において、前記弾性層が、シリコンスポンジゴムで形成されていることが好ましい。このようにすることで、表面に金属円筒が配置された前記一方のロールを、樹脂製フィルムに適度な押圧力を印加するとともに耐久性を備えた金属表面ロールとすることができる。
【0016】
また、前記円筒金属の厚みが、0.05mm~0.3mmmであり、前記筒状金属が前記弾性層の表面に接着されていることが好ましい。このようにすることで、弾性層の表面に金属円筒を配置する工程を容易に行うことができ、さらに、樹脂製フィルムが走行することによる金属円筒の軸方向のずれを防止することができる。
【0017】
また、前記一対のロール間を走行した前記樹脂製フィルムの表面を撮影する撮像部を備えた欠陥検査部をさらに備えることが好ましい。このようにすることで、耐電圧検査検査と、光学検査とを連続して行うことができるフィルム検査装置を実現することができる。
【0018】
(実施の形態)
以下、本開示にかかるフィルム検査装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態にかかるフィルム検査装置の全体構成を説明するイメージ図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態にかかる検査装置100は、巻出ロール10、耐電圧検査部20、光学検査部30、巻取ロール40を備えていて、巻出ロール10と巻取ロール40との間で樹脂製フィルム1を、一例として最大速度200m/minで走行させながら、耐電圧検査と光学検査とが行われる。
【0021】
なお、本実施形態では、検査対象の樹脂製フィルム1として、下記表1に示すように、厚さが9.5~19μmで空孔率が約50%のポリオレフィン微多孔膜を基材(原膜)として、その一表面にベーマイト粒子を樹脂バインダで接着した厚さが3~4.5μmの無機粒子膜(ベーマイト粒子の割合:95質量%)を塗布形成した、積層膜1~積層膜4の4種類の積層膜(非水電解液二次電池用セパレータ)を用いた。
【0022】
【0023】
耐電圧検査部20では、位置規制ロール21を通過した樹脂製フィルム1を上下方向から挟むように第1のロール22と第2のロール23とが配置され樹脂製フィルムがニップされる。
【0024】
図2に、耐電圧検査部における第1のロール22と第2のロール23との構成を説明するための拡大イメージ図を示す。
【0025】
図2に示すように、本実施形態にかかる検査装置100の耐電圧検査部20では、第1のロール22と第2のロール23とが検査対象である樹脂製フィルム1をニップしている。本実施形態にかかる検査装置では、検査対象の樹脂製フィルム1の上方に配置される第1のロール22として、支持体22a上に弾性層22bが配置され、弾性層22bの表面に金属円筒22cが接着剤で接着された金属表面ゴムロールを用いている。一方、樹脂製フィルム1の下方側に配置されている第2のロール23は、ステンレス製の金属ロールが用いられている。なお、本実施形態では、 ニップされている樹脂製フィルム1に印加される線圧は、8g/mmおよび150g/mmとし、それぞれの条件で測定を行った。
【0026】
第1のロールである金属表面ゴムロール22は、クロムメッキされたニッケル製の直径が75.3mmの支持体22a上に、厚さが約10mmのシリコンスポンジゴムで構成された弾性層22bが配置され、この弾性層22bの表面に厚さが0.1mmの金属円筒22cが配置され、金属円筒22cをシリコン系接着剤で弾性層22bの表面に接着することで樹脂製フィルム1を走行させたときに金属円筒22cが金属表面ロール22の軸方向にずれることを防止している。また、金属円筒22cおよび第2のロール23は、両者の間で放電が可能となるよう、それぞれ耐電圧検査部20に備えられた高電圧電源と電気的に接続されている。
【0027】
中心の軸部を含む支持体22aは、上述したステンレス鋼の他に、鉄、アルミニウム合金などの金属、または、炭素繊維強化プラスチックなどの剛性が高く、かつ、導電性の高い材料で形成することができる。なお、支持体22aの径が大きい場合は、内部を中空とすることにより支持体22aの重量を小さくすることができる。
【0028】
弾性層22bは、上述したシリコンスポンジゴムの他に、アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムなどの発泡体を用いることができる。弾性層22bは、ポアソン比が0.4以下であることが好ましく、ポアソン比が0.2以下であることがより好ましい。また、弾性層22bの厚さは、3mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0029】
なお、支持体22aと弾性層22bとの間にエボナイト、FRP、ゴム、樹脂などを成型することで形成された中間層を配置することができ、中間層を配置することで支持体22aと弾性層22bとの接着性を向上させることができる。
【0030】
金属円筒22cは、厚さが0.05mm~0.3mmのニッケル、ステンレス鋼、クロムなどにより形成された金属スリーブを使用することができる。なお、金属筒22cの表面は、最大厚さ(JIS B 0601:2013)Rzが0.2μm以下であるようにすることで、ニップされた樹脂製フィルム1の表面平滑性を損なわないようにすることができる。
【0031】
弾性層22bと金属円筒22cとは、弾性層22bの表面にシリコン系接着剤を塗布した後に、収縮させた弾性層22bを金属円筒22cに挿入することで接着することができる。
【0032】
第2のロール23は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム合金などの金属、または、炭素繊維強化プラスチックなどにより形成することができる。本実施形態にかかるフィルム検査装置に用いられている第2のロール23の径は、60mmとなっている。金属表面ゴムロール22の径と第2のロール23の径との関係は、ほぼ同じとするか、または、金属表面ゴムロール22の径が第2のロール23の径よりも1%~20%ほど大きくすることができる。第1のロールと第2のロールのロール径は、互いに異なることが望ましく、また、検査装置が備えている他のロールのロール系とも異なるとが望ましい。このようにすることで、ロールで発生した欠陥がどのロールに起因するものかを容易に判断することができるようになる。
【0033】
本実施形態にかかるフィルム検査装置100では、金属表面ゴムロール22と第2のロールとの間に所定の電圧(一例として0.5~1.6kV)を印加しながら、樹脂製フィルム1を所定の速度(一例として50~200m/min)で走行させて耐電圧検査を行う。
図1では図示を省略しているが、耐電圧検査部20には、金属表面ゴムロール22と第2のロール23との間に生じた放電を検出する検出機構を備え、走行する樹脂製フィルム1において放電が生じた位置を走行距離(すなわち、走行開始側の端部から放電が生じた部分までの間隔)を把握することができるようになっている。
【0034】
表2に、ピンホールを正しく検出することができる印加電圧の例を示す。
【0035】
【0036】
表2は、上記表1に示した4種類の積層膜(積層膜1~積層膜4)に予め一定間隔でピンホールを形成して200m/minの速度で走行させた時に、ピンホールの位置で必ず放電し、かつ、ピンホールのない位置では放電を生じない結果を得る、すなわち、ピンホールを正しく識別し検出するための、積層膜に印加すべき電圧の範囲を示している。積層膜に印加する電圧が表2に記載された範囲よりも小さい場合には、1カ所以上のピンホールで放電しない場合が生じた。一方、印加する電圧が表2の範囲よりも大きい場合には、ピンホールのない位置で1カ所以上の放電が生じた。
【0037】
発明者らの検討の結果、樹脂製フィルムを200m/minの速度で走行させた場合でも、適正な電圧を印加することにより樹脂製フィルム1の欠陥を正しく検出できることが確認された。なお、樹脂製フィルム1の走行速度を、50m/min、100m/min、150m/minと変化させて同様の測定を行ったが、欠陥を正しく検出することのできる印加電圧の範囲は、上記表2に示した200m/minで樹脂製フィルム1を走行させた場合とほぼ同じ結果が得られた。
【0038】
樹脂製フィルム1はロールに巻かれていることから、異物混入による不良個所は所定の間隔で周期的に現れることが多く、上述した発明者らの検証による結果が周期性を有することから、樹脂製フィルムの不良個所を正しく検出できていると判断することができる。
【0039】
樹脂製フィルム1は、金属表面ゴムロール22と第2のロールでニップされた後、第2の規制ロール24を経て、光学検査部30へと走行する。
【0040】
光学検査部30では、上方側に配置されたカメラ31によって樹脂製フィルム1の表面状態を観察する。なお、樹脂製フィルム1のピンホールなどの欠陥部分が検知しやすいように、カメラ31のレンズ光軸33上には、樹脂製フィルム1を挟んで照明装置32が対向配置されている。
【0041】
光学検査部30では、カメラ31の撮像部により撮像された画像に基づいて、樹脂製フィルム上に存在する黒点として認識される金属粉などの異物や白点として認識されるピンホールなどの欠陥を、樹脂製フィルムの走行距離に対応して検出することができる。特に、テレセントリックレンズなどの画像歪みが生じにくいレンズを用いて撮像された撮像画像をデータ処理によって拡大して解析することで、数10μm程度の大きさの金異物や欠陥を検出することが期待できる。
【0042】
光学検査部30を走行した樹脂製フィルム1は、順次巻取ロール40に券回されて、耐電圧検査と光学的検査とが終了する。
【0043】
ここで、上記実施形態に示したフィルム検査装置100における、樹脂製フィルムに含まれている異物(金属粉)の検出状況を説明する。
【0044】
図3は、樹脂製フィルムを1.1kVの電圧を印加した1対のロールで8g/mmの線圧でニップしながら、200m/minの速度で走行させて耐電圧試験を行った際の、樹脂製フィルムに含まれる金属粉とその周囲の状態を示す顕微鏡写真である。
【0045】
図3(a)が、金属粉を無機粒子膜を形成した側から見た反射光による観測結果、
図3(b)が、金属粉を原膜側から見た反射光による観測結果、
図3(c)が、金属粉を無機粒子膜を形成した側から見た透過光による観測結果、
図3(d)が、金属粉を原膜側から見た透過光による観測結果を示している。なお、
図3(a)~
図3(d)の各図は、300倍の光学顕微鏡により撮像された画像データである。また、各図中に示される細線は、寸法を計測するために記入されたものである。
【0046】
図3(a)、
図3(b)において、矢印で示された粒状物、および
図3(c)、
図3(d)において黒色で示された部分が金属粉であり、
図3(c)、
図3(d)において金属粉の横の白色で示された部分は、前記金属粉がロールの間を通過する際に放電が生じ、その時の発熱で生じた長径が約70μmのピンホールである。金属粉の位置で放電を生じることや、この放電により金属粉の横にピンホールが生じることにより、本実施形態の検査装置を用いることで異物の存在を容易に検出することができる。
【0047】
図4は、比較例として、樹脂製フィルムをニップしない状態でロールの間を通過させて耐電圧試験を行った際の、樹脂製フィルムに含まれる金属粉とその周囲の状態を示す顕微鏡写真である。
【0048】
図3の各図と同様に、
図4(a)が、金属粉を無機粒子膜を形成した側から見た反射光による観測結果、
図4(b)が、金属粉を原膜側から見た反射光による観測結果、
図4(c)が、金属粉を無機粒子膜を形成した側から見た透過光による観測結果、
図4(d)が、金属粉を原膜側から見た透過光による観測結果をそれぞれ示している。
図3と同様に、300倍の光学顕微鏡により撮像された画像データを示している。
【0049】
図4に示すように、ニップしない状態(押圧力を加えない状態)で耐電圧試験と同じ印加電圧1.1kVの電圧を印加しても放電が起きずにピンホールは生じなかったことが確認できる。発明者らの検討では、樹脂製フィルムに金属粉が混入していた場合でも、ニップしない場合に金属粉の位置で放電が確認されたものは450カ所のうちわずか2カ所に留まった。このため、本実施形態で示した検査装置のように、樹脂製フィルムをロールでニップするのではなく、押圧力を加えない状態で検査した場合には、高電圧を印加しても異物の存在を容易に検出することはできないことが確認できた。
【0050】
上記のように、本実施形態にかかる検査装置100において、樹脂製フィルムを200m/minで走行させて検査する場合には、線圧が8(g/mm)のとき、印加電圧を1.1kVとすることで、樹脂製フィルム上に存在する金属粉などの異物が存在する部分で放電させることができることが確認できた。また、ピンホールなどの微細な欠陥が存在する部分でも、同様にその位置で放電させることができることが確認できた。もちろん、検査対象の樹脂製フィルムの材料や膜厚、積層構造や積層されている層数に応じて、また、検査時の樹脂製フィルムの走行速度に応じて、樹脂製フィルムをニップする線圧や金属表面ロールと第2のロールとの間に印加される電圧の値は調整する必要があるが、本実施形態の検査装置によれば、樹脂製フィルム上に存在する異物や欠陥を精度良く検出できることが確認された。
【0051】
また、耐電圧検査を行う際の2つのロールの一方を、上述した金属表面ゴムロールとすることで、2つのロールをいずれも金属ロールとした場合に樹脂製フィルムに生じるロールエッジ痕が生じないことが確認できた。さらに、2つの金属ロールを用いた耐電圧検査では、樹脂製フィルムに含まれるウェッジと称される未溶解部分である突起部でロールが飛び跳ねてしまうことが確認されていたが、本実施形態に示す一方のロールを金属表面ゴムロールの場合には、このような飛び跳ねが生じないことが確認できた。
【0052】
なお、上記実施形態では、帯電検査部と光学検査部との両方を備えた検査装置を例示したが、本願で開示する検査装置において光学検査部は必須の構成ではなく、帯電検査部のみを有する検査装置とすることができる。
【0053】
また、上記実施形態で説明した検査装置のように、製造された樹脂製フィルムを改めて検査する検反装置としてではなく、樹脂製の基材に所定の無機粒子による膜を塗布形成する樹脂製フィルムの製造装置の一部として本願で開示する検査装置を組み込むことができ、樹脂製フィルムの製造と検査とを一気通貫に行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示のフィルム検査装置は、検査対象の樹脂製フィルムをニップするローラの一方を、弾性層の表面に金属円筒が配置されたロールとすることで、樹脂製フィルムを高速で走行させながら、確実に異物や欠陥などの不良個所を検出可能な検査装置として極めて有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 樹脂製フィルム
20 耐電圧検査部
22 金属表面ゴムロール(第1のロール)載
23 第2のロール
30 光学検査部
100 フィルム検査装置