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特開2024-146363フィルム、包装体及び内容物入り包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146363
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】フィルム、包装体及び内容物入り包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059210
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】金森 進一郎
(72)【発明者】
【氏名】滑川 裕子
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA19
3E013BB06
3E013BB09
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF23
(57)【要約】
【課題】感熱塗料が内部に侵入することを防止できるとともに、サーマル印刷部の識別性の低下を抑制できるフィルム、包装体及び内容物入り包装体を提供すること。
【解決手段】フィルムは、電子レンジによって加熱される包装体に用いられるフィルムであって、内圧の上昇によって破断する破断部と、前記破断部とずれた位置に設けられるサーマル印刷部と、備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジによって加熱される包装体に用いられるフィルムであって、
内圧の上昇によって破断する破断部と、
前記破断部とずれた位置に設けられる、感熱塗料を含むサーマル印刷部と、
を備えるフィルム。
【請求項2】
分子配向された基材層を含み、
前記破断部は、前記基材層に形成された1以上の配向緩和部が所定の間隔を空けて対向する部位により形成される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記破断部とずれた位置に設けられるグラビア印刷部を備える、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記サーマル印刷部は、前記感熱塗料を含む感熱層を有し、
前記感熱層は、前記破断部の中心から半径15mm以上離れる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記感熱層は、前記破断部の中心から半径40mm以上離れる、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフィルムにより形成された蓋と、
前記蓋が熱融着されるフランジを有する容器本体と、
を備える包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の包装体と、
前記包装体に収容された内容物と、
を備える内容物入り包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装した内容物を電子レンジで加熱したときに発生する水蒸気を外部に放出するフィルム、包装体及び内容物入り包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から内容物を収容し、密封した状態で内容物を電子レンジで加熱する包装体が知られている。しかしながら、このような包装体は、電子レンジによって内容物を加熱すると、内圧が上昇する。このため、電子レンジ加熱中に、水蒸気を自動的に排出し、内圧を低下させる手段を備えた包装体も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、結晶性延伸配向フィルムの配向部を挟んで対向配置された無配向部を有する破断部を設けることにより、電子レンジ加熱時に水蒸気を放出することができるカップ容器およびフィルムが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、過度に水蒸気を放出することなく蒸らしを行うカップ容器及びフィルムが開示されている。
【0005】
また、これらのフィルムをフランジ付きのカップ容器やパウチ容器の一部に溶着する技術も知られている。また、包装体として、フィルムに、熱により印字されるサーマル印刷部を設けることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-64642号公報
【特許文献2】特開2017-74965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した包装体において、熱により印字されるサーマル印刷部を設けることも考えられる。しかしながら、フィルムが破断部で破断すると、破断部から噴出される水蒸気がサーマル印刷部の感熱層に触れる虞がある。サーマル印刷部の感熱層に用いられる感熱塗料は、一般的に水系塗料であり、水蒸気により感熱塗料が溶ける可能性がある。そして、水蒸気により溶けた感熱塗料が破断部から内部に侵入する虞がある。
【0008】
また、破断部から噴出した水蒸気がサーマル印刷部に付着すると、感熱層が着色し、サーマル印刷部に印刷された文字等の印字の識別を阻害する虞がある。
【0009】
そこで本発明は、感熱塗料が内部に侵入することを防止できるとともに、サーマル印刷部の識別性の低下を抑制できるフィルム、包装体及び内容物入り包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、フィルムは、電子レンジによって加熱される包装体に用いられるフィルムであって、内圧の上昇によって破断する破断部と、前記破断部とずれた位置に設けられる、感熱塗料を含むサーマル印刷部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感熱塗料が内部に侵入することを防止できるとともに、サーマル印刷部の印字の識別性の低下を抑制できるフィルム、包装体及び内容物入り包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る包装体の構成を示す斜視図。
図2】同包装体の構成を示す平面図。
図3】同包装体の構成を概略的に示す断面図。
図4】同包装体に用いられる蓋の要部構成を示す平面図。
図5】同蓋の要部構成を示す説明図。
図6】同包装体の構成の一例を示す説明図。
図7】同包装体の構成の一例を示す説明図。
図8】同包装体の構成の一例を示す説明図。
図9】同包装体の構成の一例を示す説明図。
図10】同包装体の構成の他の一例を示す説明図。
図11】比較例の包装体の蓋の構成を概略的に示す断面図。
図12】同包装体を用いた評価試験の一例を示す説明図。
図13】評価試験の結果を示す説明図。
図14】評価試験に用いた実施サンプルの写真を用いて評価試験結果を示す説明図。
図15】本発明の他の実施形態に係る包装体の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態に係る包装体1を、図1乃至図11を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る包装体1の構成を示す斜視図、図2は、包装体1の構成を示す平面図である。図3は、包装体1の構成を概略的に示す断面図である。図4は、包装体1に用いられる蓋11の配向緩和部21a及び蒸気口21c(破断部13)の構成を示す平面図である。図5は、蓋11の配向緩和部21a及び蒸気口21cと蒸気口21cから要部構成を示す説明図である。図6は、包装体1の破断部13とサーマル印刷部31との配置構成の一例として、包装体1のサーマル印刷部31を配置する領域E1の一例を示す説明図であり、図7は、他の例として、包装体1のサーマル印刷部31を配置する領域E2の一例を示す説明図である。図8は、包装体1の破断部13を配置する領域F1及びサーマル印刷部31を配置する領域F2の一例を、平面視で示す説明図であり、図9は、包装体1の破断部13を配置する領域F1及びサーマル印刷部31を配置する領域F2の一例を、側面視で示す説明図である。図10は、他の例として、包装体1の破断部13を配置する領域F1及びサーマル印刷部31を配置する領域F2の一例を、平面視で示す説明図である。図11は、比較例の包装体の蓋110の構成を概略的に示す断面図である。
【0014】
包装体1は、二以上の部材が熱融着(溶着)等の手段により接着されることによって構成される、内容物100を包装する包装容器である。包装体1は、内容物100が内部に収容され、そして、密封された内容物入り包装体である。包装体1は、電子レンジで加熱可能に、内容物を収容する電子レンジ加熱用容器である。包装体1は、例えば、カップ容器やトレイ容器等の容器本体10にフィルムを蓋11として溶着した容器である。本実施形態において、包装体1は、二つの部材として、トレイ容器及び蓋が熱融着されることで形成されたトレイ容器であり、以下、包装体1をトレイ容器1とし、容器本体10をトレイ本体10として説明する。
【0015】
トレイ容器1は、内容物100を内部に充填し、包装する包装容器である。トレイ容器1は、電子レンジで加熱可能に、内容物100を収容する電子レンジ加熱用容器である。図1に示すように、本実施形態において、トレイ容器1は、有底矩形筒状のトレイ本体10と、トレイ本体10を密封する蓋11と、を備える。
【0016】
図1乃至図3に示すように、トレイ本体10は、樹脂材料、紙材料、又は、これらの複合材料により形成される。トレイ本体10は、有底矩形筒状の胴部10aと、胴部10aの開口の外周縁に形成されるフランジ10bと、を備える。なお、トレイ本体10は、胴部10aの外周面とフランジ10bの下面とを連続する、複数のリブを有していても良い。
【0017】
胴部10aは、矩形筒状のトレイ状であるが、矩形以外の多角形筒状や円筒状に形成されていてもよく、また、カップ状であってもよい。胴部10aは、内部に所望量の内容物100を収容可能な容積に形成される。
【0018】
フランジ10bは、トレイ本体10の開口形状に沿って、トレイ本体10の軸線方向に対して直交方向に延びる環状の平板状に形成される。なお、フランジ10bは、トレイ本体10の開口形状に沿って、トレイ本体10の軸線方向に対して直交方向に傾斜する環状の平板状に形成される構成であってもよい。また、フランジ10bは、環状の平板状に形成されるとともに、上面から上方に突出し、蓋11がシールされる環状の突起を有する構成としてもよい。
【0019】
図1乃至図4に示すように、蓋11は、基材層21を外面側に有する積層構造のフィルムである。蓋11は、トレイ本体10のフランジ10bに熱融着することで形成されたシール部30によって固定される。蓋11は、固定されたフランジ10bから剥がすときに、摘まむことができるタブを有していてもよい。また、蓋11は、トレイ容器1の内圧が上昇したときに破断することで蒸気が排出される蒸気口21cを形成する破断部13と、内容物や商品等の情報を表示する印刷部14と、を有する。
【0020】
ここで、内容物100とは、電子レンジにより加熱調理される食品、電子レンジにより加熱されるおしぼり等、電子レンジによって加熱される水分を含有するものである。また、印刷部14が表示する内容物や商品(製品)等の情報とは、原材料名、原料原産地名、アレルギー・添加物、栄養成分、内容量等の内容物に関する各種の表示、バーコード、商品名、価格、製造所固有記号、リサイクルマーク、ケアマーク等の商品に関する情報、及び、販売/製造会社名、デザインや標章等の商品の識別に関する情報の少なくともいずれかを含んでよい。
【0021】
蓋11の外形状は、フランジ10bの外周縁形状と同形状又はフランジ10bの外周縁形状よりも若干大きい略同形状に形成される。また、タブ11aが手指で摘まむことが可能に、外方へと突出するように、例えば、略三角形状や半円形状に形成されていてもよい。
【0022】
蓋(フィルム)11は、トレイ容器1を形成したときのトレイ容器1の外面側から、配向フィルムである基材層21と、接着剤層22と、シーラントフィルムであるシーラント層23と、防曇層24と、を備える。また、蓋11には、基材層21の外面や、基材層21及びシーラント層23の間に、商品の情報を施す印刷部14が設けられる。なお、蓋11の層構成はこれに限定されず、2層以上であって、少なくとも一層に基材層21を有し、そして、一部に破断部13及び印刷部14を有する構成であってもよい。
【0023】
基材層21は、防爆加工により、一部を融点近傍の所定温度以上に加熱することで形成された配向緩和部21aを含む。配向緩和部21aは、破断部13の一部を構成する。配向緩和部21aは、破断部13の構成によって種々の形状に構成される。
【0024】
基材層21は、二軸延伸により分子配向された結晶性延伸配向フィルムである。基材層21は、例えば、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸PPフィルム等の汎用二軸延伸フィルムまたは、これらの複合フィルムにより構成される。また、その他好適な例としては、基材層21は、二軸延伸PVAフィルム、二軸延伸EVOHフィルム等のバリア性を有する二軸延伸フィルムや、PET/NYやPP/EVOH/PP、NY/EVOH/NY、NY/MXD-NY/NY等のバリア性樹脂を中間層に有する共押出二軸延伸フィルムが挙げられる。また、汎用二軸延伸フィルムにPVA系、PVDC、PAA系のバリア性樹脂をコートしたフィルム、あるいは前述のバリア性樹脂に無機物が分散したハイブリットコートフィルムも基材層21に好適に使用できる。基材層21の厚さは、12μm以上50μm以下が好適である。
【0025】
これは、基材層21の厚さを12μm未満とすると、トレイ容器1の物理的強度が低下する虞があり、また、成膜技術的に難しく、コストアップとなるためである。また、基材層21の厚さが50μmを超えると、基材層21を含む蓋11が伸長しにくくなるためである。但し、配向緩和部21aの形状等によって破断部13が破断する構成であれば、基材層21の厚さは、限定されない。
【0026】
配向緩和部21aは、基材層21を融点近傍の所定温度以上に加熱し、配向を緩和させるか、又は、配向を消失させることで形成される。即ち、蓋11の基材層21は、融点近傍の所定温度以上に加熱されていない配向を有する配向部21bの一部に、融点近傍の所定温度以上に加熱された配向緩和部21aを有する。なお、融点近傍の所定温度とは、基材層21によって異なるが、少なくとも、配向を緩和し、配向緩和部21a及び配向部21bの引張弾性率及び破断伸度等を所望の関係とできる温度である。即ち、配向緩和部21aは、基材層21の一部をアモルファス化することで形成される。
【0027】
なお、基材層21に配向緩和部21aを形成するための基材層21の加熱方法は、レーザー光加熱、熱板加熱、インパルス加熱、近赤外線加熱等の方法を用いることが好ましい。
【0028】
例えば、レーザー光加熱、近赤外線加熱は、非接触で基材層21を加熱できる利点があるが、局所的に加熱が可能であることからレーザー光加熱が好ましい。また、使用する基材層21のレーザー光の吸収性が乏しく、配向緩和部21aの形成が困難である場合、基材層21にレーザー光の吸収性を向上させるレーザー光吸収材を事前に基材層21の材料にブレンドしても良く、あるいは基材層21にレーザー光吸収材をコートしても良い。
【0029】
また、レーザー光の種類としては、基材層21に使用される樹脂素材の多くが比較的吸収性が高い炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。レーザー光吸収材としてはレーザー光の種類によって適宜選択することができる。これらの加熱方法は、使用する基材層21の材質等によって適宜選択できる。
【0030】
熱板加熱やインパルス加熱は、押さえヘッド部に溶融した基材層21の樹脂やシーラント層23の樹脂の一部が付かないようテフロン(登録商標)表面処理等の処理を押えヘッド部に行うことが好ましい。例えば、熱板加熱であれば、基材層21の融点近傍の所定温度以上で温度設定され加熱された押さえヘッド(熱板)を基材層21に押し当てて溶融加熱することにより、配向緩和部21aを形成する。
【0031】
また、形成した配向緩和部21aが適正に形成されているか否かについては、形成した基材層21を検査することで判断できる。この検査方法としては、X線回折、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)、DSC(示差走査熱量測定)等による結晶化度測定、偏光板を使用した配向ビュワー等を用いることができる。
【0032】
このような基材層21は、例えば、配向部21bの破断伸度が200%以下に設定され、配向緩和部21aの破断伸度が300%以上に設定される。
【0033】
接着剤層22は、一般的な食品用途のドライラミ用接着剤から適宜選択して使用できる。ただし、トレイ容器1は、電子レンジ加熱に用いるため、接着剤層22は、耐熱性を有するものが好適である。接着剤層22の厚さは、2μm~5μmが性能的、経済的観点より好ましい。
【0034】
シーラント層23は、例えば、未延伸低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、未延伸ポリプロピレン(PP)フィルム、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等により構成される。シーラント層23の厚さは、10μm以上100μm以下が好適である。なお、シーラント層23の厚さは、20μm以上60μm以下がより好ましい。
【0035】
これは、シーラント層23の厚さが10μm未満では包装体1の実用的な強度が不足する虞があり、輸送時の振動や落下の衝撃でシール部30が破断し易くなる虞があるためである。また、シーラント層23の厚さが100μmを超えると、伸長しにくくなるため、蒸気抜きに対する確実性の問題が生じる虞があるためである。
【0036】
防曇層24は、蓋11の内面の曇りを防止可能に形成される。例えば、防曇層24は、吸湿性を有する材料で形成される。防曇層24は、例えば、10μm以下が好ましい。なお、蓋11は、防曇層24を有さずに、シーラント層23に防曇材が混練される構成であってもよい。また、温度や湿度によって蓋11の内面に曇りが生じることを許容できる商品である場合においては、防曇性を蓋11が有さなくてもよい。
【0037】
破断部13は、対向する配向緩和部21aの間に配置される部位の配向部21bにより形成される。即ち、破断部13は、蓋11の一部に設けられ、直線又は曲線等の線状に延び、自身の二箇所が所定の間隔を開けて対向する形状の単数の配向緩和部21aが配置されるか又は複数の配向緩和部21aが対向して配置されることで、配向緩和部21aの間に存する配向部21bによって構成される。即ち、破断部13は、基材層21の融点近傍の所定温度以上に加熱されていない配向部21b、換言すると配向を有する基材層21の配向部21bを介在して配向緩和部21aの一部が対向することで構成される。具体例として、配向緩和部21aは、短辺及び長辺を有し、一以上設けられる。
【0038】
配向緩和部21aが一つ設けられるときは、配向緩和部21aは、自身の短辺同士が所定の間隔を開けて対向するか、又は、自身の短辺及び長辺が所定の間隔を開けて対向する。一つの配向緩和部21aは、形状としては、一部が切欠する円環状や多角環状等が考えられる。
【0039】
配向緩和部21aが二つ設けられるときは、二つの配向緩和部21aは、それぞれの短辺同士または長辺同士が所定の間隔を開けて対向するか、又は、一方の配向緩和部21aの短辺及び他方の配向緩和部21aの長辺が所定の間隔を開けて対向する。二つの配向緩和部21aは、例えば、直線状に構成され、互いに短辺同士が直線状に又は所定の角度で交差する様に対向する構成や、T字状に短辺と長辺が対向する構成が考えられる。また、二つの配向緩和部21aは、直線状以外にも、波状等の構成が考えられる。
【0040】
配向緩和部21aが三つ以上設けられるときは、いずれか二つの配向緩和部21a又は三以上の配向緩和部21aは、短辺同士又は短辺及び長辺が所定の間隔を開けて対向する。なお、複数の配向緩和部21aを破断部13に設ける場合には、配向緩和部21aのサイズ及び形状を同じとすることが好ましいが、破断部13が破断する構成であれば、異なるサイズ及び形状であってもよい。三つ以上の配向緩和部21aとしては、図2に示すように、一方向に長手方向が沿って並ぶ構成や、破断部13を中心として、周方向に並ぶ構成が考えられる。
【0041】
このような破断部13は、基材層21が加熱されてアモルファス化した一以上の配向緩和部21aが、基材層21の配向を有する配向部21bを挟んで所定の距離だけ間隔を開けて近接することで構成される。ここで、所定の距離とは、電子レンジ加熱時に破断部13が破断して蒸気口21cを形成できる距離であれば、適宜設定可能であるが、好ましくは5mm未満である。また、長辺及び短辺は、直線状に限らず、曲線状であってもよい。即ち、破断部13は、配向緩和部21aがいずれかの方向に延びる形状に構成され、一の配向緩和部21aの一つの端部が、同配向緩和部21aの他の部位又は他の配向緩和部21aの一部と所定の間隔を開けて対向すればよい。なお、破断部13が破断して蒸気口21cを形成できるのであれば、対向する配向緩和部21aに挟まれた配向部21bの一部が配向緩和されていても良い。
【0042】
本実施形態において、図1乃至図10に示すように、破断部13は、3つの配向緩和部21aを有する。3つの配向緩和部21aは、直線状に所定の間隔を空けて配置される。
【0043】
また、配向緩和部21aは、製造コスト等を考慮すると、図2に示すように、一方向に長い矩形状に形成されるとともに、短辺同士が対向する構成が好ましい。また、図2に示す配向緩和部21aは、短辺の長さを0.5~10mm、長辺の長さを3~100mmの範囲とし、且つ、短辺の長さは長辺の長さよりも短い範囲に設定することが好ましく、トレイ容器1のサイズや蓋11の構成によって適宜選択する。また、二つの配向緩和部21aの対向する短辺間の距離は、5mm未満に設定され、さらにいえば0.5~3.0mmに設定することがより好ましく、トレイ容器1のサイズや蓋11の構成によって適宜選択する。
【0044】
これは、配向緩和部21aの寸法が当該範囲未満では伸長する範囲が狭すぎて蒸気抜きがうまく発動できない虞があり、当該範囲を超えると蓋11の強度の低下やガスバリア性低下の影響が大きくなる虞があるためである。また、二つの配向緩和部21aの対向する短辺間の距離は、当該範囲未満では対向する配向緩和部21aの先端同士が一体化してしまい、破断部13において蒸気口21cを形成できずに破裂してしまう虞があるためである。また、二つの配向緩和部21aの対向する短辺間の距離が当該範囲を超えると、二つの配向緩和部21aの対向する短辺間の領域が伸長できなくなるため、破断部13が破断せずに、トレイ容器1が蒸気口21cを形成できずに破裂してしまう虞があるためである。
【0045】
印刷部14は、少なくとも、サーマル印刷部31を有する。本実施形態において、印刷部14は、サーマル印刷部31及び通常印刷部32を有する。
【0046】
サーマル印刷部31は、例えば、蓋11の基材層21の外面に形成される。サーマル印刷部31は、蓋11の一箇所又は二箇所以上の領域に設けられる。サーマル印刷部31は、感熱層41と、感熱層41を覆う保護層42と、を備える。サーマル印刷部31は、感熱層41が加熱されることで、黒色に印字可能に形成される。感熱層41は、感熱塗料を含む。感熱層41は、基材層21の外面の所定の領域に、感熱塗料が塗布されることで形成される。保護層42は、感熱層41を保護する。また、保護層42は、感熱層41における印字の視認性を向上可能に、黒色の印字の視認性を向上可能な有色であって、且つ、包装体1の内部を視認可能な透明性を有する。例えば、保護層42は、半透明の白色に形成される。なお、保護層42は、無色透明に形成され、基材層21のうち、サーマル印刷部31が設けられる領域が、感熱層41の印字の視認性を向上可能に、有色で半透明に形成されていてもよい。サーマル印刷部31は、破断部13及びシール部30と離間して、蓋11に形成される。例えば、サーマル印刷部31には、成分表示やバーコードなどが印字される。
【0047】
通常印刷部32は、例えば、蓋11の基材層21のシーラント層23と対向する内面に形成され、接着剤層22で覆われる。通常印刷部32は、蓋11の一箇所又は二箇所以上の領域に設けられる。例えば、通常印刷部32は、塗料によって印刷される。通常印刷部32は、例えば、多色刷りである。ここで、通常印刷部32は、例えば、グラビア印刷である。以下、通常印刷部32をグラビア印刷部32として説明する。グラビア印刷部32は、破断部13と離間して、蓋11に形成される。例えば、グラビア印刷部32には、商品名、販売会社、価格、リサイクルマーク、ケアマークなどが印字される。
【0048】
蓋11をフランジ10bに熱融着することで形成されるシール部30は、フランジ10bに沿って環状に形成される。シール部30の幅は、フランジ10bの幅と同じか、又は、フランジ10bよりも小さい。シール部30による蓋11のフランジ10bへのシール強度は、破断部13がトレイ容器1の容器内圧の上昇によって破断する開口強度よりも高い。ここで、シール強度及び開口強度は、例えば、内圧が上昇して蓋11が膨張したとき、即ち、電子レンジによって内容物が加熱した、加熱後の強度である。
【0049】
次に、包装体1の破断部13、印刷部14及びシール部30の構成について図5乃至図10を用いて説明する。なお、図5の例においては、蓋11は、破断部13を構成する配向緩和部21aをレーザー加工で行い、3つの配向緩和部21aを形成し、隣り合う配向緩和部21aの間に破断部13(蒸気口21c)が2つ形成される。また、レーザー加工部(配向緩和部21a)の幅W1を1mmとし、3つの配向緩和部21aのうち長手方向で一方の端側に設けられる配向緩和部21aの端部から他方の端側に設けられる配向緩和部21aの端部までの長さL1を47mmとした場合の例を説明する。また、図5に、レーザー加工のニス避け、即ち、レーザー加工におけるレーザー加工部(配向緩和部21a)の位置ずれの領域Gを二点鎖線で示す。また、幅W1=1mm、長さL1=47mmとする破断部13において、レーザー加工のニス避け(ずれの範囲G)の幅W2は6mmであり、レーザー加工のニス避けの長さL2は57mmとする。
【0050】
破断部13は、蓋11のサーマル印刷部31の少なくとも感熱層41とずれた位置に配置される。好適には、破断部13は、蓋11のサーマル印刷部31の感熱層41及び保護層42とずれた位置に配置される。また、例えば、破断部13は、グラビア印刷部32とずれた位置に配置される。
【0051】
具体例として、図5に二点鎖線で示す円C1のように、破断部13は、例えば、蒸気口21cが形成される部位(破断部13)を中心としたときに、サーマル印刷部31と円C1の半径R1以上の距離でサーマル印刷部31から離間する。ここで、円C1の半径R1は、例えば、15mmである。
【0052】
より好ましくは、図5に二点鎖線で示す円C2のように、破断部13は、例えば、蒸気口21cが形成される部位を中心としたときに、円C2の半径R2以上の距離でサーマル印刷部31から離間する。ここで、円C2の半径R2は、例えば、40mmである。
【0053】
これは、蒸気口21cから半径15mm以内においては、蒸気口21cから噴出した水蒸気が付着しやすく、この水蒸気によってサーマル印刷部31に染み(黒色の着色)が生じ、印字の識別を阻害するためである。また、蒸気口21cから半径40mm未満においても、蒸気口21cから噴出した水蒸気が付着する可能性があるためである。
【0054】
なお、円C1、C2は、以下の包装体1を用いて求めた。トレイ本体10として、143mm角総菜トレイを用い、蓋体11として、保護層42(1.2g/m2)/感熱層41(3.7g/m2)/HBN(基材層21)(15μm)/接着剤層22/TE-100(シーラント層23)(30μm)の蓋11を用いた。また、トレイ本体10及び蓋体11のシール部30のシール条件を165℃×0.4Mpa×2秒とし、断熱のため、ALマスクを用いた。また、内容物100は、水100gを収容した。このような包装体1(内容物入り包装体)を、600Wの電子レンジで2分間加熱したときの水蒸気200の飛散状況に基づいて、円C1、C2を定めた。
【0055】
このため、図5に二点鎖線で示す領域Dに示すように、破断部13を中心として、□96mm×80mmの範囲にサーマル印刷部31を設けず、領域Dから外れた位置に、サーマル印刷部31を設ける。
【0056】
例えば、図6に示すように、蓋11の中心側に破断部13を設ける場合、図6に示す領域D及びシール部30の間の領域E1にサーマル印刷部31を設けることが好ましい。また、図7に示すように、蓋11の中心よりもフランジ10b側にずれた位置に破断部13を設ける場合には、図7に示す領域D及びシール部30の間の領域E2にサーマル印刷部31を設けることが好ましい。
【0057】
より好適な例としては、図8及び図9に示すように、蓋11のシール部30の内側の領域の中心(トレイ本体10の中心)を通る中心線Sに線対称な2つの対称領域F1、F2のうち、一方の対称領域F1に破断部13の少なくとも蒸気口21cが形成される部位を設け、他方の対称領域F2にサーマル印刷部31の少なくとも感熱層41を設けることが好ましい。さらに言えば、図8及び図9に示すように、トレイ本体10の中心を通る中心線Sに線対称な2つの対称領域F1、F2のうち、一方の対称領域F1に破断部13を設け、他方の対称領域F2にサーマル印刷部31の感熱層41及び保護層42を設けることがより好ましい。即ち、破断部13は、領域F1に設け、そして、サーマル印刷部31は、領域E2であって、且つ、対称領域F2に設けることが好ましい。
【0058】
なお、グラビア印刷部32は、破断部13とずれた位置であれば、2つの対称領域F1、F2のどちらか一方に設けられる構成であってもよく、また、2つの対称領域F1、F2の両方にそれぞれ設けられる構成であってもよく、さらに、2つの対称領域F1、F2に設けられる構成であってもよい。
【0059】
ここで、中心線Sは、平面視で蓋11のシール部30より内側の領域の中心(トレイ本体10の中心)上にあれば、例えば、図8及び図9に示すように、平面視で蓋11のシール部30より内側の領域の中心及びフランジ10bの所定の二辺の中心を通る中心線S1であってもよい。また、中心線Sは、例えば、図10に示すように、平面視で蓋11のシール部30より内側の領域の中心及びフランジ10bの2つの角部を通る中心線S2であってもよい。また、2つの対称領域F1、F2は、中心線Sに関する対称領域に限らず、トレイ本体10の中心を点対称とする対称領域であってもよい。また、トレイ本体10が正方形の矩形筒状でなく、円形状、長方形の矩形筒状、多角形筒状又は異形筒状である場合には、必ずしも線対称の領域に限定されない。
【0060】
即ち、蓋11は、シール部30内におけるトレイ本体10の中心を挟んだ2つの領域F1、F2にそれぞれに破断部13及びサーマル印刷部31を設け、そして、サーマル印刷部31を蓋11の破断部13から所定の距離、好ましくは、蒸気口21cが形成される部位から15mm以上、より好ましくは40mm以上、さらに好ましくは50mm以上離間する領域に形成することが好ましい。また、破断部13及びサーマル印刷部31は、各領域F1、F2の一部に設けられる構成であればよい。
【0061】
このように構成された包装体1によれば、蓋11は、破断部13に形成される蒸気口21cが生じる部位をサーマル印刷部31からずれた位置とすることで、破断部13が破断し、蒸気口21cから形成されたときに、蒸気口21cから噴出した水蒸気により、サーマル印刷部31が着色することを抑制できる。
【0062】
また、一般的に、サーマル印刷部31の感熱層41に用いられる感熱塗料は、水系塗料であり、水蒸気200により塗料が溶ける可能性が有る。図11に示す比較例の蓋110のように、蒸気口21c(破断部13)がフィルムの厚さ方向で感熱層41と対向する位置に配置されると、蒸気口21cから外部に噴出する水蒸気200が感熱層41に接触する虞がある。感熱層41の感熱塗料に水蒸気200が接触すると、感熱層41の感熱塗料が水蒸気200により溶融し、この感熱塗料が溶解した水蒸気200により生じる水滴が蒸気口21cを介して、包装体1内に浸入する虞がある。しかしながら、本実施形態の蓋11は、破断部13において生じる蒸気口21cを、サーマル印刷部31の少なくとも感熱層41からずれた位置に設けることで、感熱層41の塗料と蒸気が直接接触することを防止できる。
【0063】
また、蒸気口21cからサーマル印刷部31までの距離を15mm以上、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上離間させることで、蒸気口21cから噴出した蒸気に含まれる水滴がサーマル印刷部31に付着することによる、サーマル印刷部31の着色を抑制できる。よって、加熱後においても、サーマル印刷部31に表示された情報の識別性を阻害することを防止できる。
【0064】
また、グラビア印刷部32を破断部13の蒸気口21cが生じる部位からずれた位置とすることで、グラビア印刷部32の塗料片が蒸気口21cから包装体1内に侵入することを防止できる。
【0065】
また、破断部13及びサーマル印刷部31を、蓋11のシール部30内の領域における中心線を挟んだ2つの領域F1、F2にそれぞれ設けることで、破断部13は、蓋11の一方側の領域F1に配置されることになる。よって、図8乃至図10に示すように、破断部13が破断して蒸気口21cから水蒸気200が噴出した場合であっても、破断部13が設けられる領域F1とは反対側の領域F2において、水蒸気200が付着することを防止できる。また、図9に示すように、蓋11が膨張したときに最も高くなる中心からずれた位置に破断部13が設けられることから、破断部13が破断して生じた蒸気口21cから噴射する水蒸気200は、外方に向かうことになる。
【0066】
よって、領域F2において、サーマル印刷部31が水蒸気200によって着色することを防止できる。加えて、破断部13が設けられていない領域F2においては、蒸気口21cから噴出した水蒸気200が触れることによって温度が高温となることを防止できる。このため、破断部13が設けられていない領域F2は、電子レンジで加熱調理した後に、領域F1に比べて温度が低いことから、加熱調理したトレイ容器1を持ち運ぶときに、領域F2に隣接するフランジ10bを掴むことで、安全にトレイ容器1を持ち運ぶことができる。例えば、包装体1は、フランジ10bに、加熱後に把持できる把手の為の領域を設けることも可能であり、この把手を領域F2に少なくとも設けることで、より安全に加熱後の包装体1を把持することができるようにもなる。
【0067】
次に、本実施形態に係る包装体1の評価試験及び評価試験の結果を、図12乃至図14を用いて説明する。図12は、評価試験に用いる包装体1の実施例1乃至実施例3の一例を示す説明図であり、図13は、評価試験の結果を示す説明図であり、図14は、評価試験に用いた実施サンプルの写真を用いて評価試験結果を示す説明図である。
【0068】
[評価試験]
評価試験として、以下の実施例1乃至実施例3の包装体1として、それぞれの実施例で破断部13の位置が異なる3か所に配置したサンプルを作成し、600Wで2分、及び、1600Wで1分加熱し、破断部13が破断して生じた蒸気口21cから噴射した水蒸気200により生じた着色シミの蒸気口21cからの最大距離および円状痕の最大距離を測定した。600Wの電子レンジとして、シャープ製、RE-TS3を用い、1600Wの電子レンジとして、ナショナル製、NE-1800を用いた。
【0069】
[実施例1の包装体]
実施例1の包装体1は、一辺が143mmの正方形状の電子レンジ加熱可能な樹脂製のフランジ付きのトレイ本体10を用い、保護層42(1.2g/m2)/感熱層41(3.7g/m2)/HBN(基材層21)(15μm)/接着剤層22/TE-100(シーラント層23)(30μm)で形成した蓋体11を用いた。感熱層には100℃以上で発色開始する日本製紙社製非フェノール系感熱塗料を用いた。また、トレイ本体10及び蓋体11のシール部30のシール条件を165℃×0.4Mpa×2秒とし、断熱のため、ALマスクを用いシールヘッドからの輻射熱による着色の影響は排除した。シール部30の一辺の最も内側(シールエッジ内側)から対向する辺のシールエッジ内側までの距離(シール内々長さ)は130mmとした。また、包装体1に、内容物100として水100gを収容した。蓋体11は、破断部13を構成する配向緩和部21aをレーザー加工で加工し、3つの配向緩和部21aを形成した。3つの配向緩和部21aは、シール部の所定の一辺とほぼ平行となる方向に形成した。また、レーザー加工部(配向緩和部21a)の幅を1mmとし、破断部の一方の配向緩和部の端部から他方の端側に設けられる配向緩和部の端部までの長さL1を47mmとした。また、破断部13のトレイ本体10の対向する二対の二辺のうち、一方の対の二辺の対向方向(以下、第1方向)の位置は、蓋体11の略中央となるように形成した。
【0070】
また、実施例1の包装体1として、図12に示すように、破断部13を設ける位置を、蓋体11の破断部13と略平行な一辺から第1方向に直交する第2方向(トレイ本体10の対向する二対の二辺のうち、他方の対の二辺の対向方向)のほぼ中央(約65mmの位置)としたもの(以下、「中央位置」とする)と、蓋体11の破断部13と略平行な一辺から第2方向で中央位置側へ、シール内々長さの約1/3だけ移動した位置(約43mmの位置)としたもの(以下、「1/3位置」とする)と、蓋体11の破断部13と略平行な一辺から中央位置側へ、シール内々長さの距離の約1/4だけ中央位置側へ移動した位置(約32mmの位置)としたもの(以下、「1/4位置」と記す)と、をサンプルとしてそれぞれ二つ作成した。
【0071】
[実施例2の包装体]
実施例2の包装体1は、長辺が148mm、短辺が115mmの長方形状の、電子レンジ加熱可能な樹脂製のフランジ付きのトレイ本体10を用い、蓋体11は、実施例1の蓋体11と同じ材料で形成した。また、蓋体11には、実施例1の破断部13と同じ形状の破断部13を形成した。また、トレイ本体10及び蓋体11の長辺方向(第2方向)のシール内々長さは135mmとした。破断部13は短辺とほぼ平行に延びるように形成した。実施例2の包装体1として、図12に示すように、破断部13を設ける位置を、第2方向で、蓋体11の中央位置(約67.5mmの位置)としたものと、第2方向(長手方向)のシール内々長さの約1/3だけ短辺から中央位置側へ移動した位置(1/3位置、約45mmの位置)としたものと、第2方向(長手方向)のシール内々長さの約1/4だけ短辺から中央位置側へ移動した位置(1/4位置、約33.8mmの位置)としたものと、をサンプルとしてそれぞれ二つ作成した。
【0072】
[実施例3]
実施例3の包装体1は、所謂丸カップである、開口部の直径が95mmの円形状の、電子レンジ加熱可能な樹脂製のフランジ付きカップ容器をトレイ本体11として用いた。蓋体11は、実施例1及び実施例2の蓋体11と同じ材料で形成した。また、蓋体11には、実施例1及び実施例2の破断部13と同じ形状の破断部13を形成した。また、トレイ本体10及び蓋体11の径方向のシール内々長さは85mmとした。破断部13は、径方向とほぼ平行に延びるように形成した。実施例3の包装体1として、図12に示すように、破断部13を設ける位置を、径方向で、蓋体11の中央位置(約43mmの位置)としたものと、開口部の内周上の一点からシール内々長さの約1/3だけ中央位置側へ移動した位置(1/3位置、約28mmの位置)としたものと、開口部の内周上の一点からシール内々長さの約1/4だけ短辺から中央位置側へ移動した位置(1/4位置、約21mmの位置)としたものと、をサンプルとしてそれぞれ二つ作成した。
【0073】
[評価試験の結果]
図13に示すように、蒸気口21cから噴射した水蒸気200により生じた着色シミの蒸気口21cからの最大距離が最も大きくなったのは、実施例1において1/4位置に破断部13を設けたサンプルを1600Wの電子レンジで加熱した場合であり、蒸気口21cからの距離は15mmであった。また、円状痕について、距離が最も大きくなったのは、実施例1において1/4位置に破断部を設けたサンプルを1600Wの電子レンジで加熱した場合で40mmであった。なお、図14に、サンプルで生じた、噴射した水蒸気200の飛び散り、水蒸気200による感熱層41の着色、及び、円状痕を例示する。
【0074】
従って、蒸気口21c(破断部13)から15mm以上離れた位置にサーマル印刷部31の感熱層41を設けることにより、蒸気口21cから噴出した水蒸気または水蒸気により生じた水滴による着食シミの発生を防止できる。これにより、包装体1は、サーマル印刷部31の感熱層41が着色し、サーマル印刷部31に印刷された文字等の印字の識別を阻害することを防止できる。また、蒸気口21cから40mm以上離れた位置に感熱層41を設けることにより、円状痕による感熱層の着色でサーマル印刷部31の印字の識別が阻害されることを防止できる。
【0075】
上述したように、本発明の一実施形態に係る包装体1によれば、感熱塗料が内容物側に入ることを防止できるとともに、破断部13の蒸気口21cから噴射する水蒸気200によるサーマル印刷部31の着色を抑制できる。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、包装体1は、トレイ容器やカップ容器等の例を説明したが、これに限定されない。例えば、包装体は、図12に示すように、蓋11と同様の構成である、基材層21を外面側に有する多層構造を有するフィルム11Aを袋状に成形した包装体1Aであってもよい。図12の例において、フィルム11Aは、二つの配向緩和部21aを有する例を示す。フィルム11Aは、基材層21、接着剤層22及びシーラント層23を有する。なお、フィルム11Aは、防曇層24を有していても良い。また、フィルム11Aは、破断部13と、印刷部14とを備え、印刷部14は、少なくともサーマル印刷部31を有し、グラビア印刷部32を有していても良い。また、包装体1Aは、破断部13の蒸気口21cとサーマル印刷部31の少なくとも感熱層41とが離間している。包装体1Aは、好ましくは、上述した実施形態と同様に、領域Dの範囲外にサーマル印刷部31を設けることが好ましい。また、包装体1Aは、上述した包装体1の破断部13及びサーマル印刷部31の配置関係を適宜設定できる。
【0077】
なお、フィルム11Aを用いた包装体1Aの例としては、3方シールの平パウチ、半折りシールタイプの平パウチ、ガゼットパウチ、スタンディングパウチ等が挙げられる。
【0078】
また、上述した例では、包装体1、1Aは、印刷部14として、サーマル印刷部31及び通常印刷部32としてグラビア印刷部32を有する例を説明したが、サーマル印刷部31のみを有する構成であってもよく、また、通常印刷部32は、グラビア印刷以外の印刷であってもよい。また、通常印刷部32は、基材層21のシーラント層23側の面に設けられるのではなく、基材層21の外面に設けられていても良い。
【0079】
また、サーマル印刷部31及び通常印刷部32は、基材層21の同じ主面に、又は、基材層21の異なる主面に、蓋(フィルム)11、及び、フィルム11Aの面方向で重なる領域に設けられていても良い。即ち、蓋11及びフィルム11Aは、サーマル印刷部31の一部に重ねて通常印刷部32が設けられる構成であってもよく、また、通常印刷部32の一部に重ねてサーマル印刷部31が設けられる構成であってもよい。
【0080】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0081】
1…包装体(トレイ容器)、10…トレイ本体(容器本体)、10a…胴部、10b…フランジ、11…蓋(フィルム)、13…破断部、14…印刷部、21…基材層、21a…配向緩和部、21b…配向部、21c…蒸気口、22…接着剤層、23…シーラント層、24…防曇層、30…シール部、31…サーマル印刷部、32…グラビア印刷部(通常印刷部)、41…感熱層、42…保護層、100…内容物、200…水蒸気。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15