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▶ 田島 基嗣の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014637
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シミ皮膚改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240125BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022125105
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】399048401
【氏名又は名称】田島 基嗣
(72)【発明者】
【氏名】田島 基嗣
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AD331
4C083AD332
4C083CC02
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】乳酸による副反応を起こすことなく、皮膚のシミ(老人性色素斑などの色素沈着)及びクスミをとるシミ皮膚改善剤を提供する。
【解決手段】乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸を混和したシミ皮膚改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸とからなるシミ皮膚改善剤。
【請求項2】
0.5~5重量%の乳酸と分子量4万~10万のヒアルロン酸からなる請求項1のシミ皮膚改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のシミ(老人性色素斑などの色素沈着)、ソバカス(雀卵斑)及びクスミの改善をはかり、安全に使用できる美白作用に優れたシミ皮膚改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚のシミ、ソバカスは、日焼け等により組織中にメラニンが産生することに起因している事が知られている。また、メラニンは、チロシンがチロシナーゼにより酵素的に酸化された後、数段階の反応を経て形成される事も知られている。従って、チロシナーゼの活性を阻害することにより、メラニンの産生を抑制し、皮膚のシミ、ソバカス等の発生を抑制する事ができる。チロシナーゼの活性を阻害する物質として、乳酸が知られている。
【0003】
乳酸により、メラニン産生律速酵素であるチロシナーゼの発現量が抑制され、その結果メラニン量が減少することが報告されている。(非特許文献1)
【0004】
また、細胞内の乳酸が増加すると、メラニンの産生量が減少することが報告されている。(非特許文献2)
【0005】
しかし、乳酸は酸であるため高濃度で使用できない。乳酸を10%以上の濃度で塗布すると酸性度が高くなるため、皮膚に紅斑、色素沈着、瘢痕といった化学熱傷が起こる。そのため低濃度しか使用できず効果を現すことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Invest Dermatol.1993 Feb;100(2 Suppl):150S-155S Tyrosinase gene transcription and its control by melanogenic inhibitors.Ando S,Ando O,Suemoto Y,Mishima Y.
【非特許文献2】J Biol Chem.2002 Apr 26;277(17):14821-8.Epub 2002 Jan 25.Abnormal acidification of melanoma cells induces tyrosinase retention in the early secretory pathway.Halaban R,Patton RS,Cheng E,Svedine S,Trombetta ES,Wahl ML,Ariyan S,Hebert DN.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明は、乳酸が低濃度であって、術後の紅斑、色素沈着、瘢痕等の副反応がなく、シミ、ソバカスやクスミの改善することができるシミ皮膚改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。本発明のシミ皮膚改善剤は、乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸を混和したシミ皮膚改善剤で上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明のシミ皮膚改善剤は、乳酸を0.05~8重量%と分子量20万以下のヒアルロン酸と混和物が好ましく、乳酸を0.5~5重量%と分子量4万~10万のヒアルロン酸と混和物なら更に好ましい。
【0010】
本発明のシミ皮膚改善剤には、薬効を妨げないもの、若しくは薬効に関係ないものとして、粘性調節として水、ゼラチン、ワセリンなど軟膏用添加剤や化粧品用添加剤として一般的に使用されている香料、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤や湿潤剤を、薬効を損なわない範囲で適宜加えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低濃度の乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸を混和したシミ皮膚改善剤をシミに塗布した場合、シミ改善のために、高濃度の乳酸のみを塗布後に起こる肌における紅斑、色素沈着、瘢痕といった化学熱傷等の副作用がなく、シミ、ソバカスやクスミの改善することができ、問題を解決するシミ皮膚改善剤を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
本発明のシミ皮膚改善剤は、低濃度乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸を含有するものである。
【0013】
本発明に用いるシミ皮膚改善剤のヒアルロン酸の分子量は20万以下が好ましく、4万~10万が特に好ましい。
【0014】
また、本発明の混合比は、乳酸を0.05~8重量%と分子量20万以下のヒアルロン酸と混和物が好ましく、乳酸を0.5~5重量%と分子量4万~10万のヒアルロン酸と混和物が特に好ましい。
【0015】
本発明のシミ皮膚改善剤は、常法のとおり、常温で、又は加温あるいは加圧し、ヒアルロン酸を水に溶融した状態で乳酸と混和し、場合によっては添加剤を加えることにより製造することができる。
【0016】
本発明にかかるシミ皮膚改善剤を適用できる部位としては特に限定は無く、顔面のみならず、首筋、腕、胴体、臀部、脚等の全身に使用することができる。
【実施例0017】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
<本発明の製剤の製造>
【0018】
乳酸(和光純薬工業)と、平均分子量5000~1万のヒアルロン酸ナトリウム、平均分子量4万~8万のヒアルロン酸ナトリウム、平均分子量60万~112万のヒアルロン酸ナトリウム及び平均分子量160万~250万のヒアルロン酸ナトリウム(共に岩井化学薬品)を、それぞれ水と混和する。
【0019】
各濃度は、乳酸1.5重量%と各分子量のヒアルロン酸ナトリウムを、それぞれ1.5重量%になるように調整し、水と混和をすることにより、本発明の製剤をシミ皮膚改善剤として用いた。
【0020】
上記で示した製剤の混和濃度及び分子量による製剤番号A1~A5を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
<実施例判定方法>
上記で製造したシミ皮膚改善剤を、40代~60代の治験者20人のシミ40カ所に対して、就寝前に当該シミに塗布してもらった。これを毎日、皮膚のターンオーバーのサイクルが約6週間であることから、6週間行った。効果の判定としては、シミ診断機(ロボスキンアナライザー使用)による結果で改善の効果をみた。
【0023】
各製材番号にて、上記で示した判定方法を用い効果の箇所の数を有無として、また副反応の有無も調べ表2に示した。
【0024】
【表2】
【0025】
以上より、乳酸と分子量20万以下のヒアルロン酸の混和製剤にシミ改善効果がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のシミ皮膚改善剤では、乳酸が低濃度のため、紅斑、色素沈着、瘢痕等の副反応がない。したがって、安全で、効果的に皮膚のシミ(老人性色素斑などの色素沈着)、ソバカス(雀卵斑)及びクスミを改善することができる。そのため化粧品の可能性が広がると考えられる。