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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146372
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 99/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C10G99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059222
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】森 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA03
4H129CA08
4H129LA14
4H129NA37
4H129NA42
(57)【要約】
【課題】生成油を効率的に生産することができる。
【解決手段】原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の目標運転期限と、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成される劣化モデルと、を記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、前記劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、生成された前記寿命予測データと前記目標運転期限とに基づいて、前記目標運転期限における前記プラント装置の運転状態に関する評価情報を生成する評価情報生成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、
前記プラント装置の目標運転期限と、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成される劣化モデルと、を記憶する記憶部と、
前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、
前記劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、
生成された前記寿命予測データと前記目標運転期限とに基づいて、前記目標運転期限における前記プラント装置の運転状態に関する評価情報を生成する評価情報生成部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の度合に応じて値が変動する評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、
前記記憶部は、
前記評価指標に対応する閾値データをさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記評価指標と前記閾値データとを比較することで、前記目標運転期限における前記運転状態が第1状態及び第2状態のうち一方であると判定し、
前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成し、
前記第1状態は、前記目標運転期限前に前記触媒が寿命を迎えない状態であり、
前記第2状態は、前記目標運転期限前に前記触媒が寿命を迎える状態である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、
前記記憶部は、第1閾値と、前記第1閾値よりも値が小さい第2閾値と、をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第1閾値以下であり、且つ、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第2閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第2閾値未満である場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、
前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、
前記記憶部は、第3閾値と、前記第3閾値よりも値が小さい第4閾値と、をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第3閾値以上であり、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第4閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記評価指標が前記第4閾値を超える場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、
前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記寿命予測データは、要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、
前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、
前記記憶部は、第1閾値をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記寿命予測データは、要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、
前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、
前記記憶部は、第1閾値と、前記第1閾値よりも値が小さい第2閾値と、をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値以下であり、且つ、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第2閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記要求温度が前記第2閾値未満である場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、
前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1閾値は、前記プラント装置の運転上限温度である、
請求項5又は請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記寿命予測データは、前記触媒の劣化度と運転時間との関係を表す触媒劣化予測データであり、
前記記憶部は、第3閾値をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記寿命予測データは、前記触媒の劣化度と運転時間との関係を表す触媒劣化予測データであり、
前記記憶部は、第3閾値と、前記第3閾値よりも大きい値である第4閾値と、をさらに記憶しており、
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上であり、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、
前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値を超える場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、
前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記評価情報生成部は、
前記プラント装置が前記第1状態であると判定された場合に、前記第1状態に応じた第1メッセージを含む前記評価情報を生成し、
前記プラント装置が前記第2状態であると判定された場合に、前記第2状態に応じた第2メッセージを含む前記評価情報を生成する、
請求項2、請求項5及び請求項8のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第2メッセージは、前記運転予定データの変更を提案する情報又は前記プラント装置の前記運転状況の変更を提案する情報を含む、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記評価情報生成部は、
前記プラント装置が前記第1状態であると判定された場合に、前記第1状態に応じた第1メッセージを含む前記評価情報を生成し、
前記プラント装置が前記第2状態であると判定された場合に、前記第2状態に応じた第2メッセージを含む前記評価情報を生成し、
前記プラント装置が前記第3状態であると判定された場合に、前記第3状態に応じた第3メッセージを含む前記評価情報を生成する、
請求項3、請求項4、請求項6及び請求項9のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第3メッセージは、前記運転予定データの変更を提案する情報又は前記プラント装置の前記運転状況の変更を提案する情報を含む、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記評価情報生成部は、
前記目標運転期限と生成された前記寿命予測データとを含む運転状態情報を生成し、
前記評価情報は、生成された前記運転状態情報を含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記寿命予測データは、前記触媒の要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、
前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、
前記データ取得部は、
前記第1運転期間が経過した後の運転期間である第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、
前記第2運転実績データは、前記触媒の温度の測定値を含み、
前記評価情報生成部は、
温度と時間とを軸とする共通の座標系に、前記要求温度と前記測定値とを配置した運転状態情報を生成し、
前記評価情報は、生成された前記運転状態情報を含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
データ出力部をさらに備え、
前記データ出力部は、前記評価情報をユーザ端末に送信して前記ユーザ端末の画面に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記劣化モデルを更新する関数生成部をさらに備え、
前記劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、
前記運転予定データは、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である第2運転期間に関するデータであり、
前記データ取得部は、
前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、
前記関数生成部は、
取得された前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルを更新し、
前記評価情報生成部は、
更新された劣化モデルに基づいて、前記評価情報を更新し、
前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記プラント装置への通油開始直後から発生する前記触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間とするとき、
前記関数生成部は、
取得された前記第2運転期間に応じて、前記第2運転期間における前記不安定期間の終了を判定し、
前記不安定期間の終了が判定された前記第2運転期間に関する前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルを更新する、
請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記データ取得部は、
前記第2運転期間における前記プラント装置の運転開始から前記目標運転期限までの時間よりも短い周期で前記第2運転実績データを更新し、
前記関数生成部は、
更新された前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルをさらに更新する、
請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記データ取得部は、
取得された第2運転実績データに応じて、前記周期を変更する、
請求項19に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は、原油から精製される。原油は、5%以下程度の硫黄分を含む。硫黄を含む化合物は、燃焼により亜硫酸ガスとなって大気環境を悪化させることがあり、また、石油製品の劣化、装置の腐食、触媒被毒等を発生させる原因となり得る。このため、石油は、この硫黄をはじめとする不純物が除去される脱硫過程を経て精製される。脱硫において用いられる触媒は、脱硫の過程により劣化することによる寿命がある。この寿命は、例えば、原油を処理する槽における原油量、触媒量、温度等の種々の条件に依存して変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/117154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保全計画等に基づいてプラント装置の運転を停止する予定の期限よりも前に触媒が寿命を迎えると、プラント装置に対して予定外の触媒交換を実施する必要が生じ、生成油を効率的に生産することができない。そのため、プラント装置に用いる触媒の寿命を予測するだけでなく、予測結果に基づいてプラント装置の運転条件等の変更要否をユーザが把握できることが望まれている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生成油を効率的に生産することができる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の目標運転期限と、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成される劣化モデルと、を記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、前記劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、生成された前記寿命予測データと前記目標運転期限とに基づいて、前記目標運転期限における前記プラント装置の運転状態に関する評価情報を生成する評価情報生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、生成油を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る情報処理システムとプラント装置とを含む全体システムの構成を例示的に示す図。
図2】運転期間の説明図。
図3】一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を例示的に示す図。
図4】第1運転実績データから算出した運転時間毎の劣化度の実績値の一部を、横軸を時間、縦軸を劣化度とする座標系にプロットした例を示す図。
図5図4に示した劣化度の実績値を補正した例を示す図。
図6】不安定期間を説明する図。
図7】固有触媒劣化関数と、第2運転期間の運転予定データとから算出した劣化度の予測値を含む触媒劣化予測データの例を示す図。
図8】温度予測データの一例を示す図。
図9】温度予測データと共通の座標系に、運転上限温度、目標運転期限、現在までの運転日数、触媒の温度が運転上限温度に達する時刻、触媒の温度の実測値とを表示した例を示す図。
図10】評価情報の一例を示す図。
図11図10の状態から更新された評価情報の例を示す図。
図12】評価情報の他の例を示す図。
図13】一実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示における実施形態の説明をする。図面は、簡略化して書かれているものであり、図に書かれている以外にも実装上必要な構成は、適切に備えられるものとする。また、本明細書又は請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0010】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1とプラント装置500とを含めた全体構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置100と、データ収集装置200と、ユーザ端末300と、ネットワーク400とを備える。情報処理装置100とデータ収集装置200とユーザ端末300とは、ネットワーク400を介して互いに通信可能に接続されている。データ収集装置200は、プラント装置500と有線又は無線にて互いに通信可能に接続されている。ユーザ端末300は、一台以上設けられている。情報処理システム1は、プラント装置500の運転を支援するシステムである。
【0012】
プラント装置500は、原料油を触媒に通油して生成油を取得する製油装置(第1プラント装置)である。プラント装置500は、例えば、石油精製プラント内に設けられている。図1において、プラント装置500は1台のみ示されるが、複数のプラント装置500が設けられていてもよい。プラント装置500は、所望の生成油を取得するために必要な様々な処理を実行する装置の群であってもよい。
【0013】
プラント装置500は、触媒を利用するものであれば特に限定されないが、硫黄などの不純物を含む石油留分を、触媒の存在下で水素と反応させる水素化脱硫方式を使って精製する水素化脱硫装置や、触媒粒子を固定充填して触媒反応を行う固定床式触媒反応器を用いた装置等が挙げられる。プラント装置500に用いる触媒は、プラント装置500の種類に応じて、適切なものが選択される。例えば、プラント装置500として脱硫装置を用いる場合、触媒は脱硫触媒が選択される。以下の説明ではプラント装置500として主に脱硫装置を想定するが、これに限定されるものではない。
【0014】
本開示において、「運転期間」は、触媒が充填されたプラント装置500において、触媒を用いた処理を開始してから当該触媒を用いた処理が終了するまでの期間に対応する。即ち、「運転期間」とは、プラント装置500が同じ触媒を用いて運転を継続している期間である。
【0015】
図2は、運転期間の一例を示す図である。図2に示される例では、運転期間は、第1運転期間と第2運転期間とを有する。第2運転期間は、第1運転期間とは異なる運転期間であるとともに、第1運転期間が経過した後の運転期間である。第1運転期間から第2運転期間への切り替わりは、例えば、第1運転期間におけるプラント装置500の運転が終了した後に、プラント装置500内に充填されていた触媒を新たな触媒に交換し、プラント装置500を運転し直したときにおきる。第1運転期間は、例えば、過去に終了した運転期間である。第2運転期間は、例えば、現在も続いており、まだ終了していない運転期間である。
【0016】
図1に戻り、プラント装置500の運転条件等の運転状況は、例えば、プラント装置500に期待される製油処理を維持するために、ユーザ操作又は自動制御などにより運転期間の途中で適宜変更され得る。
【0017】
プラント装置500には、プラント装置500の運転状況を示す状態量を測定する一又は複数の測定器が設けられている。プラント装置500が備える測定器の種類は特に限られないが、例えば、温度計、圧力計、振動計、流量計、回転計、電流計および電圧計等が挙げられる。測定器が測定した、温度、圧力、振動、流量、回転数、電流値および電圧値等の測定値や、起動、停止、運転負荷などのプラント装置500の運転状況を示す各種信号は、プラント装置500からデータ収集装置200へ時々刻々と送信される。各種の測定値及び各種の信号は、後述の運転実績データの一部を構成する。
【0018】
ネットワーク400は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、図示しない無線基地局によって構成される各種移動通信システムを含む通信網で構成される。移動通信システムとしては、例えば、3G、4G又は5Gなどの移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)および所定のアクセスポイントによってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標))が挙げられる。
【0019】
ユーザ端末300は、ユーザが使用する情報処理端末である。ユーザ端末300は、情報処理装置100又はデータ収集装置200と各種データを送受信するための装置である。ユーザ端末300は、ユーザが勤務する場所に応じて、例えば本社、研究所、製油所、リモートワークの場合は自宅等に設けられている。
【0020】
ユーザ端末300は、情報処理装置100又はデータ収集装置200とのデータ又は情報をやりとりためのアプリケーションが搭載されていてもよい。ユーザ端末300は、Webブラウザベースで情報処理装置100又はデータ収集装置200とのデータ又は情報をやりとりしてもよい
【0021】
データ収集装置200は、ユーザ端末300又はプラント装置500から、情報処理装置100にて使用する各種データを取得して管理する。データ収集装置200は、取得したデータをデータ収集装置200内部のデータベース210に記憶する。データ収集装置200は、例えば、情報処理装置100の要求に応じて、情報処理装置100に各種データを送信する。なお、データベース210は、データ収集装置200の外部の装置に設けられてもよい。この場合、外部に設けられたデータベースとデータ収集装置200とは、有線又は無線で互い通信可能に接続されてもよい。
【0022】
データ収集装置200は、取得された運転実績データに運転期間を識別するIDを割り当ててもよい。IDを割り当てることにより、運転実績データが属する運転期間(第1運転期間、第2運転期間)を容易に区別できる。また、データ収集装置200は、情報処理装置100が生成したデータを取得して管理してもよい。
【0023】
情報処理装置100は、プラント装置500の運転を支援するための装置である。情報処理装置100は、データ収集装置200やユーザ端末300から各種データを取得する。情報処理装置100は、取得した各種データに基づき、プラント装置500の運転状態に関する評価情報を生成する。情報処理装置100は、例えば、生成された評価情報を、ユーザ端末300に送信する。
【0024】
情報処理装置100は、ユーザ端末300又はプラント装置500から送信される各種データを直接取得して、管理してもよい。この場合は、情報処理装置100が、データ収集装置200としての機能を実現するため、情報処理システム1はデータ収集装置200を省略することができる。
【0025】
<ハードウェア構成>
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0026】
図3に示すように、情報処理装置100は、プロセッサ1001と、メモリ1002と、記憶装置1003と、入力装置1004と、表示装置1005と、通信装置1006と、を備える。情報処理装置100は、これらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。情報処理装置100は、図3に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されていてもよい。
【0027】
プロセッサ1001は、各種データを演算処理したり、表示装置1005等を含めた情報処理装置100を制御処理したりする。プロセッサ1001は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央演算装置(CPU: Central Processing Unit)によって構成されてもよい。プロセッサ1001は、情報処理装置100における処理の実行に必要なプログラム等を、記憶装置1003と通信装置1006の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って処理を実行する。
【0028】
メモリ1002は、コンピュータ可読記憶媒体であり、例えば、ROM(Read only memory)、EPROM(Erasable Program ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Program ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、各種データを記憶したり、情報処理装置100における処理の実行に必要なプログラム(プログラムコード)等を記憶したりする。
【0029】
記憶装置1003は、非一時的コンピュータ可読酷記憶媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。記憶装置1003は、本実施形態に係るプログラムを含む、情報処理装置100における処理の実行に必要な各種プログラムや各種のデータ、及び処理結果のデータを記憶する。なお、非一時的コンピュータ可読酷記憶媒体としては、他にも、磁気テープ、フレキシブルディスク、光ディスク、デジタルバーサタイルディスク、光磁気ディスク、メモリーカード、USBメモリなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。記憶装置1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0030】
入力装置1004は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、等)である。表示装置1005は、外部への出力を実施する表示デバイス(例えば、ディスプレイ等)である。また、入力装置1004と表示装置1005とは、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0031】
通信装置1006は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)である。通信装置1006は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークインタフェースカード、ネットワークコントローラ、ネットワークモジュール、通信モジュールなどとも呼ばれる。通信装置1006は、例えば、データ収集装置200やユーザ端末300との間で各種のデータを送受信する。
【0032】
情報処理装置100は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、後述の各機能ブロックの一部又はすべてが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0033】
なお、情報処理装置100は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどを用いて実現することができる。また、情報処理装置100は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図3は、情報処理装置100が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、情報処理装置100は、サーバが一般的に備える他の構成を備えることができる。また、データ収集装置200及びユーザ端末300のハードウェア構成も、情報処理装置100と同様の構成を備えることができる。
【0034】
<情報処理システム1の機能的構成>
図1は、情報処理システム1の機能的構成の一例を示す図でもある。
【0035】
図1に示すように、情報処理装置100は、機能的構成として、処理部110と、記憶部120と、通信部130とを備える。情報処理装置100は、図示されない、ユーザがデータ入力する入力部及びユーザにデータを表示する表示部をさらに備えていてもよい。情報処理装置100は、ユーザ端末300以外に、入力部からユーザの指示データを受けてもよい。また、情報処理装置100は、処理部110によって処理された結果のデータ等を、当該表示部に表示してもよい。これらの機能的構成は、プロセッサ1001がプログラムをメモリ1002に読み出して実行することにより実現される。なお、これらの機能的構成の機能のうち少なくとも一部の機能を実装したプログラムが、複数台のストレージに記憶装置にインストールされていてもよい。複数台のコンピュータのプロセッサは、自機にインストールされたプログラムをメモリに読み出して実行することにより、複数の機能的構成の機能を発揮してもよい。すなわち、複数の機能的構成の機能は、複数台のコンピュータにより分散して実行されてもよい。
【0036】
データ収集装置200およびユーザ端末300における各機能は、情報処理装置100における各機能と同様に、ハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで実現できる。
【0037】
データ収集装置200は、プラント装置500に関する運転実績データ等の各種データを取得、記憶、提供及び管理するデータベース210を備えるデータサーバとして機能する。
【0038】
ユーザ端末300は、機能的構成として、表示部310と、入力部320とを備える。
【0039】
表示部310は、例えば、情報処理装置100にて使用するデータを入力するための入力画面を表示できる。入力部320によって入力されたデータは、例えば、各種指示データ、運転実績データ、運転予定データ等として、情報処理装置100又はデータ収集装置200に送信される。
【0040】
表示部310は、情報処理装置100の動作を設定するための設定画面を表示できる。ユーザは、ユーザ端末300に表示される設定画面を通じて、情報処理装置100の動作設定を確認できる。ユーザは、入力部320により新たな動作設定を入力することで、設定画面を通じて情報処理装置100の動作設定を変更したりすることもできる。ユーザは、例えば、評価情報に含まれる情報の種類、評価情報を生成するタイミング、情報処理装置100が各種データを取得するタイミングなどの動作設定を変更できる。
【0041】
表示部310は、情報処理装置100によって生成された各種データを確認するための確認画面を表示できる。表示部310は、例えば、評価情報を確認画面に表示する。ユーザは、例えば、表示部310に表示された情報に基づいて、プラント装置500の運転状態や触媒の寿命を確認できる。なお、表示部310に表示される入力画面、設定画面および確認画面は、共通の画面であってもよいし、別々の画面であってもよい。
【0042】
<情報処理装置100の機能的構成>
通信部130は、情報処理装置100における通信インタフェースであり、アクセス回線を介してネットワーク400に接続する。通信部130は、ネットワーク400を介して、ユーザ端末300又はデータ収集装置200と通信を行う。通信部130は、ユーザ端末300又はデータ収集装置200との通信に必要な各種プロトコル処理を行う。各種プロトコルの処理の例として、物理層、データリンク層、インターネット層、トランスポート層の処理がある。通信部130は、処理部110のOS又はアプリケーションとの間で、送受信するデータの受け渡しを行ってもよい。
【0043】
記憶部120は、各種データを記憶する。記憶部120は、処理部110によって取得、算出又は生成された各種データが記憶されてもよい。記憶部120は、例えば、運転実績データ、運転予定データ、装置データ、基準触媒劣化関数、固有触媒劣化関数、寿命予測データ、閾値データ、メッセージデータなどの各種データが記憶されてもよい。上述の各種データは、予め記憶部120に記憶されていてもよい。以下、記憶部120に記憶され得る代表的な各種データの詳細を説明する。
【0044】
運転実績データは、プラント装置500の運転状況を表す運転情報が含まれるデータである。運転実績データは、プラント装置500の運転情報の時系列の履歴に関する時系列データである。運転実績データは、例えば、運転時間(運転時刻)毎の運転情報を含むデータである。本開示において、第1運転期間に関する運転実績データを第1運転実績データと、第2運転期間に関する運転実績データを第2運転実績データと、称する場合がある。
【0045】
運転情報は、例えば、プラント装置500に設けられた各測定器から取得した測定値及び信号、石油精製分野において公知の測定方法により取得できる原料油に関する値及び定性情報、石油精製分野において公知の測定方法により取得できる生成油に関する値及び定性情報及びこれらの値から算出される値などが含まれる。
【0046】
運転情報は、例えば、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報、生成油の性状に関する情報及び触媒に関する情報などのうち少なくとも1つを含む。本開示において、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報及び生成油の性状に関する情報を、基礎情報と称する場合がある。
【0047】
運転条件に関する情報は、例えば、触媒の温度(反応槽内の温度)、原料油の通油量、反応槽内の圧力、反応ガス分圧、反応ガスの供給量、などのうち少なくとも1つを含む。反応ガスが水素である場合、運転条件に関する情報として、水素分圧、水素供給量、水素油比(原料油通油量当たりの水素供給量)、水素ガスの成分などに関する情報を更に含んでよい。なお、水素ガスの成分は、水素以外の不純物(例えば、硫化水素ガス、アンモニアガスなど)が触媒の劣化に繋がるため、触媒の寿命予測の観点では有効な情報である。
【0048】
原料油の性状に関する情報は、例えば、原料油の硫黄濃度、原料油の金属分濃度、原料油の割合(原料油を構成する基材の構成比)、原料油のアロマ分濃度、等のうち少なくとも1つを含む。生成油の性状に関する情報は、例えば、生成油の硫黄濃度、生成油の金属分濃度、などのうち少なくとも1つを含む。
【0049】
触媒に関する情報としては、例えば、劣化度の実績値、劣化度の補正値、などのうち少なくとも1つを含む。なお、劣化度の実績値および劣化度の補正値は、例えば、基礎情報に基づいて算出される値の一例である。劣化度の実績値および劣化度の補正値の算出方法の詳細は、後述する。
【0050】
運転予定データは、プラント装置500に予定されている運転情報が含まれるデータである。運転予定データは、例えば、第2運転期間における運転情報の予定に関する時系列データである。運転予定データは、例えば、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報及び生成油の性状に関する情報などのうち少なくとも1つを含む。運転予定データは、例えば、固有触媒劣化関数の入力変数に対応する運転情報の値を含む。
【0051】
運転予定データに含まれる運転情報の値は、運転時間毎に設定されてもよいし、第2運転期間全体に対して共通に設定されてもよい。運転予定データに含まれる運転情報の値は、第2運転期間においてプラント装置500に実際に適用されている運転情報の値と異なっていてもよいし、第2運転期間においてプラント装置500に実際に予定されている運転情報の値と異なっていてもよい。運転予定データは、例えば、ユーザ端末300から受信することで、第2運転期間の途中で適宜変更(更新)されてもよい。
【0052】
基準触媒劣化関数は、触媒の劣化度を推定する基準となる関数である。基準触媒劣化関数は、プラント装置500に使用する触媒の種類に応じて算出される。基準触媒劣化関数は、後述する固有触媒劣化関数(劣化モデルの一例)の生成に用いられる。
【0053】
基準触媒劣化関数は、既存の知識又は実験等によりに導かれる関数である。基準触媒劣化関数は、例えば、文献に記載されている理論式等の技術情報と、プラント装置500の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、プラント装置500の実験装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、プラント装置500と同等の機能を有する他の製油装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、の少なくとも1つを利用して導出される。なお、プラント装置500の実験装置とは、例えば、プラント装置500よりも比較的小規模な試験装置であり、ラボスケール、ベンチスケール、又はパイロットスケールでプラント装置500の運転に必要なデータを収集できる装置である。なお、プラント装置500と同等の機能を有する他の製油装置とは、例えば、プラントに設置されているプラント装置500が水素化脱硫装置である場合は、プラントに設置されている他の水素化脱硫装置や他のプラントに設置されている水素化脱硫装置等が挙げられる。
【0054】
本実施形態では、基準触媒劣化関数として、入力変数によって出力変数を回帰する関数の例を示すが、ニューラルネットワークなどの他の形態のモデルでもよい。ニューラルネットワークの場合、運転時間及び入力変数は、入力ノードに与えられる値であり、パラメータは一例としてノード間の重み係数などであり、劣化度は出力ノードから出力される値に対応する。
【0055】
基準触媒劣化関数は、例えば、入力変数と、劣化寄与パラメータと、出力変数とを含む関数である。なお、基準触媒劣化関数は、劣化寄与パラメータ以外のパラメータを含んでもよい。基準触媒劣化関数は、例えば、既存の知識又は実験等によりに導かれる関数であるため、既存の知識又は実験などにより予め決定される固定パラメータが含んでもよい。
【0056】
入力変数は、例えば、運転実績データに含まれる基礎情報の値である。入力変数は、例えば、触媒の温度、原料油の通油量、原料油の硫黄濃度、生成油の硫黄濃度および水素油比の値が挙げられる。入力変数は、上述の基礎情報の値に限られず、運転実績データに含まれる基礎情報の値を適宜追加又は適宜削除することができる。
【0057】
劣化寄与パラメータは、入力変数が触媒の劣化に寄与する度合を表すパラメータである。劣化寄与パラメータは、入力変数が触媒の劣化に寄与する度合に基づいて値が変動するパラメータである。劣化寄与パラメータは、例えば、運転実績データに基づいて、決定されるパラメータである。劣化寄与パラメータは、例えば、運転実績データに基づいて、最適化されるパラメータ(最適化パラメータ)である。
【0058】
出力変数は、例えば、劣化度に関する値である。本開示における「劣化度に関する値」は、劣化度の値だけでなく、演算によって劣化度の値を算出できる値も含まれる。即ち、「劣化度に関する値」は、劣化度だけでなく、劣化度の時間微分の値、劣化度の対数の時間微分の値などを意味するように広く解釈されるべきである。即ち、出力変数が劣化度に関する値である基準触媒劣化関数は、劣化度の値だけでなく、劣化度の時間微分の値、劣化度の対数の時間微分の値などを出力変数とする関数であってもよい。
【0059】
ここで、劣化度は、触媒の劣化の進み具合を表す指標である。劣化度の一例として、下記の式(1)で示す触媒の残活性割合が挙げられる。残活性割合は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)における触媒の見かけの頻度因子(触媒活性の程度を表す)A0に対する、時刻t(運転期間内の時刻t、又は運転開始してからの経過時間t)における触媒の見かけの頻度因子Atの比であり、式(1)として示される。Φは、残活性割合を表す。
【数1】
【0060】
残活性割合の値は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)では1である。残活性割合の値はプラント装置500の運転時間が進むに伴い、徐々に減少する。残活性割合の値の減少(触媒の劣化)は、プラント装置500の運転状況の影響を受ける。触媒の劣化には、代表的には、コーク劣化と、メタル劣化とがある。コーク劣化とは、触媒反応の過程で触媒にコークが堆積することにより生じる触媒の劣化のことである。また、メタル劣化とは、触媒反応の過程で原料油中に含まれる金属分が触媒に堆積することによる触媒の劣化のことである。基準触媒劣化関数は、コーク劣化とメタル劣化とが反映された関数であることが望ましい。
【0061】
次に、基準触媒劣化関数について、一例を説明する。本実施形態では、例えば、基準触媒劣化関数は、出力変数である残活性割合Φの対数の時間微分が、下記の式(2)に示す通り、複数のパラメータpα,pβ,pγ,…と時刻(運転時間)tにおける複数の入力変数H1t,H2t,…,Hmtとの関数gとして表現される。ここで、複数のパラメータpα,pβ,pγ,…は、劣化寄与パラメータに相当する。
【数2】
【0062】
基準触媒劣化関数は、上述の式(2)に示したように、左辺(出力変数)を残活性割合Φの対数の時間微分とするのではなく、下記の式(2-1)に示すように、左辺(出力変数)を残活性割合Φの時間微分としてもよい。式(2-1)では、パラメータpα、pβ、pδ、pζが劣化寄与パラメータに相当し、パラメータpγ、pεが固定パラメータに相当する。
【数3】
【0063】
基準触媒劣化関数は、上述の式(2)に示したように左辺(出力変数)を残活性割合Φの対数の時間微分とするのではなく、下記の式(2-2)に示すように左辺(出力変数)左辺を残活性割合Φとし、右辺に運転時間t、すなわち運転時間を表す変数を含めた関数としてもよい。ここで、expは指数関数、sは任意の関数である。
【数4】
【0064】
上述の式(2)、式(2-1)及び式(2-2)に含まれるパラメータには、入力変数の係数又は乗数となるパラメータ、定数項のパラメータのいずれも含まれ得る。なお、上述のパラメータ及び入力変数の記号の一部は、式(2)と式(2-1)と式(2-2)との間で同じ記号を用いているが、式(2)と式(2-1)と式(2-2)とのパラメータ及び入力変数が同じである必要はない。
【0065】
固有触媒劣化関数は、第2運転期間における触媒の寿命の予測に用いる関数である。固有触媒劣化関数は、劣化度の推定モデル(劣化モデル)に対応する。固有触媒劣化関数は、例えば、基礎情報の値を入力すると、触媒の劣化度に関する値を出力可能である。固有触媒劣化関数は、例えば、運転実績データに基づいて、基準劣化関数の劣化寄与パラメータの値を決定することで生成又は更新される関数である。固有触媒劣化関数の生成方法および更新方法の詳細は後述する。
【0066】
固有触媒劣化関数は、運転実績データに基づいて生成されるため、基準触媒劣化関数をプラント装置500に適合させた関数である。よって、固有触媒劣化関数は、プラント装置500の設置環境、個体差、経年劣化状況などのプラント装置500に特有の状況が反映されている。
【0067】
装置データは、プラント装置500の識別に関する情報、プラント装置500の種類に関する情報、プラント装置500の触媒の種類に関する情報、プラント装置500の触媒の充填量に関する情報、目標運転期限に関する情報、運転上限温度に関する情報、運転上限圧力に関する情報、運転上限処理量に関する情報、などのうち少なくとも1つを含む。
【0068】
目標運転期限に関する情報は、目標運転期限の値を少なくとも含む。目標運転期限は、例えば、プラント装置500と関連する生産計画や保全計画などに基づいて、予め設定される期間である。目標運転期限は、例えば、プラント装置500に期待されている運転継続日数、プラント装置500に予定されている触媒交換までの残存日数などである。なお、目標運転期限は、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0069】
運転上限温度に関する情報は、運転上限温度の値を少なくとも含む。運転上限温度は、例えば、触媒の耐熱温度、プラント装置500の反応槽の耐熱温度、生成油の耐熱温度などのうち少なくとも1つに基づいて、予め設定される温度である。なお、運転上限温度は、プラント装置500の保全や生成油の品質管理のために、必要に応じて所定のマージンを持たせて設定してもよい。なお、運転上限温度は、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0070】
寿命予測データは、例えば、運転予定データと固有触媒劣化関数(劣化モデル)とに基づいて、生成されるデータである。寿命予測データは、第2運転期間におけるプラント装置500の触媒の寿命を予測するためのデータである。寿命予測データは、触媒の劣化の度合に応じて値が変動する評価指標と運転時間との関係を表すデータである。寿命予測データに含まれる評価指標は、例えば、触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取るものであってもよいし、触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取るものであってもよい。
【0071】
寿命予測データは、例えば、触媒劣化予測データ、温度予測データなどが挙げられる。なお、寿命予測データは、触媒の寿命に関する情報(評価指標)の変化を運転時間に応じて表したデータであればよく、運転時間の代わりに、運転時間に応じて単調増加又は単調減少する項目を用いてもよく、例えば、プロセスの途中で生成される生成物(気体、固体、又は液体)の量でもよいし、運転開始後に製油された量などでもよい。
【0072】
触媒劣化予測データは、例えば、触媒の劣化度の予測値と運転時間との関係を表すデータである。なお、触媒劣化予測データの生成方法の詳細は、後述する。
【0073】
温度予測データは、例えば、要求温度と運転時間との関係を表すデータである。本開示における「要求温度」とは、プラント装置500が運転予定データに含まれる運転状態を満たすために必要な触媒の温度の予測値である。ユーザは、要求温度に対して予め要求温度と装置データに含まれる運転上限温度とを比較することで、即ち、要求温度が運転上限温度に達する時刻を触媒の寿命とみなすことで、触媒の寿命を予測することができる。なお、温度予測データとの生成方法の詳細は、後述する。
【0074】
閾値データは、評価指標と比較して、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定するための閾値を含む。閾値データに含まれる閾値は、例えば、評価指標、運転実績績データ又は装置データ等に基づいて、ユーザがユーザ端末300から入力してもよいし、予め設定して記憶部120に記憶しておいてもよい。閾値データは、例えば、第1閾値を含む。閾値データは、第2閾値をさらに含んでもよい。閾値データは、第1閾値とともに又は第1閾値の代わりに、第3閾値を含んでもよい。閾値データは、第3閾値に加えて、第4閾値を含んでもよい。
【0075】
第1閾値及び第2閾値は、プラント装置500の運転状態の判定に用いる評価指標が、触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る場合に用いる閾値である。この様な評価指標としては、例えば、要求温度が挙げられる。第1閾値は、第2閾値よりも大きい値が設定されている。例えば、要求温度を評価指標に用いる場合、第1閾値は運転上限温度の値であってもよく、第2閾値は運転上限温度の値よりも小さい値であってもよい。
【0076】
第3閾値及び第4閾値は、プラント装置500の運転状態の判定に用いる評価指標が、触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る場合に用いる閾値である。この様な評価指標としては、例えば、劣化度が挙げられる。第3閾値は、第4閾値よりも小さい値が設定されている。
【0077】
メッセージデータは、例えば、閾値データに基づいて判定されたプラント装置500の運転状態に応じて、ユーザに通知されるメッセージを含んでいる。ここで、本開示における「メッセージ」とは、文字、記号、符号、番号及び図形等によって、ユーザに伝えたい事項が表された情報である。
【0078】
ユーザに通知されるメッセージは、例えば、後述の第1メッセージ、第2メッセージ及び第3メッセージなどを含む。ユーザに通知されるメッセージ(例えば、第1メッセージ)は、予め生成されて記憶部120に記憶されていてもよい。この場合、処理部110は、判定されたプラント装置500の運転状態に応じたメッセージを記憶部120から取得する。また、ユーザに通知されるメッセージを構成する候補である情報が、予め生成されて記憶部120に記憶されていてもよい。この場合、処理部110は、例えば、判定されたプラント装置500の運転状態や評価指標に応じて、ユーザに通知されるメッセージを構成する候補である情報を取捨選択し、ユーザに通知されるメッセージを生成してもよい。
【0079】
運転状態情報は、例えば、運転上限温度、目標運転期限、運転実績データに含まれる各運転情報の値又は閾値データに含まれる各閾値を、寿命予測データと共通の座標系に配置した情報である。
【0080】
評価情報は、例えば、判定された状態に関する情報、判定された運転状態に応じたメッセージ(例えば、第1メッセージ)、運転状態情報、運転状態に応じていないメッセージ(固定のメッセージ)、等を含む。
【0081】
次に、処理部110の詳細について説明する。処理部110は、例えば、データ取得部111、関数生成部112、寿命予測データ生成部113、評価情報生成部114及びデータ出力部115を有する。
【0082】
データ取得部111は、例えば、ネットワーク400を介して、データ収集装置200又はユーザ端末300から各種データを取得する。データ取得部111は、例えば、運転実績データ、基準触媒劣化関数、固有触媒劣化関数、運転予定データ及び装置データなどを取得する。データ取得部111が取得した各種データは、記憶部120に記憶されてもよい。
【0083】
データ取得部111は、例えば、運転実績データを取得する際に、取得可能な運転実績データをすべて取得しなくてもよい。より具体的には、データ取得部111は、運転実績データを取得する際に、すべて運転時間(運転時刻)に関する運転実績データを取得してもよいし、サンプリングにより取得する運転時間を間引いてもよい。また、データ取得部111は、運転実績データを取得する際に、すべての運転情報に関する運転実績データを取得してもよいし、算出する触媒寿命データに応じて必要となる運転情報に関する運転実績データのみを取得してもよい。取得部111が一度に取得する運転実績データを減少させることで、データ処理量及びデータ通信量を削減することができる。
【0084】
データ取得部111は、第2運転実績データを取得する際に、第2運転実績データをプラント装置500の運転開始から現時点までを纏めて取得してもよいし、第2運転実績データを運転時間毎に逐次取得してもよいし、第2運転実績データを所定の周期(時間間隔)で取得してもよい。
【0085】
データ取得部111が第2運転実績データを所定の周期で取得する場合、取得する周期は、第2運転期間の開始から目標運転期限までの期間より短い周期であれば、特定の値に限定されない。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、目標運転期限までの期間が350日であれば、1日、5日、10日、100日などの日単位であってもよいし、1時間、2時間などの時間単位であってもよいし、10分、20分などの分単位であってもよい。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、ユーザによって予め設定されている。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、記憶部120に予め記憶されていてもよいし、ユーザ端末300から指示データとして取得してもよい。
【0086】
データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、取得された第2運転実績データに応じて変更されてもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれるプラント装置500の運転情報(プラント装置500の運転状況)に応じて、当該周期を変更してもよい。より具体的には、データ取得部111は、例えば、プラント装置500で測定される触媒の温度が高くなるほど、第2運転実績データを短い周期で取得してもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度が、触媒の温度に対して予め定められた閾値以上である場合は、当該閾値未満である場合に比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を短くしてもよい。これにより、プラント装置500の触媒の寿命に比較的余裕があるときは第2運転実績データの取得頻度を少なくし、触媒の寿命に比較的余裕がなく劣化モデルにより予測精度が求めるときは取得頻度を高くできる。これにより、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況に応じて、劣化モデルの精度向上とデータ通信量とのバランスを取ることができる。
【0087】
また、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度が、触媒の温度に対して予め定められた閾値未満である場合は、当該閾値以上である場合に比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を長くしてもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転実績データを取得する周期(時間間隔)を可逆的に変更してもよい。
【0088】
データ取得部111は、第2運転実績データを取得する周期を変更すると判定した場合、例えば、記憶部120に記憶されている周期を更新する。データ取得部111は、更新された周期に基づいて、次の第2運転実績データを取得するタイミングを制御する。
【0089】
上述の触媒の温度に対して予め定められた閾値は、例えば、プラント装置500の運転上限温度に基づいて決定される。当該閾値は、触媒の温度に対して複数設けられていてもよい。当該閾値及び第2運転実績データを取得する周期は、第2運転期間の途中において、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0090】
また、データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、取得された第2運転実績データに応じて変更される場合において、触媒の温度に基づいて変更することに限定されない。当該周期は、例えば、第2運転実績データに含まれる触媒の劣化度の値に基づいて変更されてもよいし、プラント装置500の運転上限温度と第2運転実績データの触媒の温度との差の絶対値に基づいて、変更されてもよい。例えば、第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度から算出された差の絶対値が、当該絶対値に対して予め定められた閾値以下である場合は、当該閾値を超える場合と比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を短くしてもよい。
【0091】
また、データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、第1運転実績データと第2運転実績データとを比較して、変更されてもよい。データ取得部111は、例えば、第1運転実績データと第2運転実績データとに含まれる触媒の温度の推移の乖離が、予め定められた閾値以上である場合は、予め定められた閾値未満である場合に比べて、短くしてもよい。即ち、第1運転実績データと第2運転実績データとの間において、注目する任意の運転時間における触媒の温度の差の絶対値が、予め定められた閾値以上になった場合、データ取得部111が次に第2運転実績データを取得する周期を短くしてもよい。第1運転実績データと第2運転実績データとを比較して変更する場合も、取得された第2運転実績データに応じて変更する場合と同様に、第2運転実績データを取得する周期(時間間隔)を可逆的に変更してもよい。
【0092】
(劣化度の実績値の算出)
関数生成部112は、運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、データ取得部111が取得した運転実績データに劣化度の実績値が含まれていない場合、固有触媒劣化関数を生成する前に、劣化度の実績値を算出する。
【0093】
関数生成部112は、第1運転実績データに基づいて、第1運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出する。運転時間tにおける触媒の劣化度の実績値の算出方法は、以下で詳細に説明する。
【0094】
関数生成部112は、運転時間tにおける第1運転実績データに基づいて、後述の式(3―1)、式(3-2)及び式(4)を用いて算出する。式(3―1)及び式(3―2)は、原料油の硫黄濃度、生成油の硫黄濃度及び原料油の通油量から見かけの反応速度定数kを算出する式である。nは反応次数であり、予め決定される。[S]は運転時間tにおける生成油の硫黄濃度であり、[S]0は原料油の硫黄濃度である。LHSVは運転時間tにおける液空間速度(Liquid hourly space velocity)、すなわち運転時間tにおける原料油の通油量である。式(3―1)は、n≠1のときに用いられる。
【数5】
【0095】
式(3―2)は、n=1のときに用いられる。
【数6】
【0096】
式(4)は、いわゆるアレニウスの式に相当する。
【数7】
Aは触媒の見かけの頻度因子(触媒活性の程度を表す)である。Eaは見かけの活性化エネルギーである。Rは気体定数である。Tは反応温度(触媒の温度)である。式(4)から、見かけの反応速度定数kと見かけの頻度因子Aとがわかれば、反応温度T(例えば次の運転時間で必要な反応温度)が計算できる。
【0097】
関数生成部112は、第1運転実績データに含まれる運転時間tにおける原料油の通油量、原料油の硫黄濃度及び生成油の硫黄濃度の値を用いて、式(3―1)及び式(3―2)に基づき、運転時間tにおける見かけの反応速度定数kを算出する。算出された見かけの反応速度定数kと第1運転実績データに含まれる運転時間tにおける反応温度(触媒の温度)Tとを用いて、式(4)に基づき見かけの頻度因子Aを算出する。算出された見かけの頻度因子Aは、触媒の運転時間tにおける見かけの頻度因子Atに対応する。関数生成部112は、見かけの頻度因子Atと、運転開始時(運転時間t=0)における見かけの頻度因子A0との比に基づき、運転時間tにおける触媒の劣化度Φを算出する。算出された劣化度Φは、運転時間tにおける触媒の劣化度の実績値に対応する。見かけの頻度因子A0は、予め与えられている、もしくは見かけの頻度因子Atと同様にして算出される。関数生成部112は、第1運転期間における運転時間毎に、上述の算出を繰り返すことで、第1運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出する。
【0098】
関数生成部112は、上述した第1運転期間に関する劣化度の実績値の算出方法と同様にして、第2運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出してもよい。
【0099】
劣化度の実績値は、データ取得部111によって運転実績データが取得されたタイミングで、関数生成部112によって算出されてもよい。なお、劣化度の実績値は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め算出されてもよい。この場合、予め算出された劣化度の実績値は、第1運転実績データ又は第2運転実績データの一部である触媒に関する情報として、データ収集装置200に記憶されていてもよい。
【0100】
図4は、第1運転実績データに含まれる運転時間毎の劣化度の実績値の一部を座標系にプロットした例を示である。横軸は時間、縦軸は劣化度である。各四角記号が、触媒の劣化度の値を示す。
【0101】
(劣化度の補正値の算出)
ここで、実際に稼働中のプラント装置500の運転状況は、運転期間中に適宜変更され得るものである。例えば、第1運転実績データに含まれる運転条件に関する情報の値は、第1運転期間において一定であるとは限らない。運転条件が変更されると、触媒の劣化度に影響を与え得る。より具体的な一例として、水素油比の値が高くなるほど触媒の脱硫反応が促進されることが知られている。よって、水素油比がある運転時刻を境に高くなると、以降の運転時刻において、触媒は、本来の触媒性能以上のパフォーマンスを発揮するようになる。すなわち、触媒の劣化度自体が本来は変化していないにもかかわらず、運転期間におけるプラント装置500の運転状況の変動に応じて、運転実績データに基づいて算出された劣化度の実績値は変動し得る。そこで、関数生成部112は、より同じ条件下で運転時間毎の劣化度を評価するために、運転実績データに基づいて劣化度の実績値を補正し、劣化度の補正値を算出してもよい。
【0102】
関数生成部112は、例えば、データ取得部111が取得した運転実績データに劣化度の補正値が含まれていない場合、劣化度の補正値を算出する。関数生成部112は、劣化度の実績値の算出に用いた基礎情報に基づいて、劣化度の補正値を算出してもよいし、劣化度の実績値の算出に用いた基礎情報とは異なる基礎情報に基づいて、劣化度の補正値を算出してもよい。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報は、触媒の劣化度に影響を与え得るものであればよく、上述の水素油比に限定されない。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報は、例えば、水素分圧、原料油のアロマ分濃度、原料油の窒素分濃度又は原料油の金属分濃度などであってもよい。
【0103】
関数生成部112は、例えば、第1運転実績データに関する劣化度の実績値を、第1運転実績データに基づいて補正し、劣化度の補正値を算出する。より具体的には、関数生成部112は、第1運転期間における任意の時刻に対して算出された劣化度の実績値を、第1運転実績データに含まれるとともに当該劣化度の実績値に対応する当該任意の時刻における基礎情報の値に基づいて、補正する。
【0104】
関数生成部112は、例えば、下記の式(5)で示す補正式によって、劣化度の補正値を算出する。
【数8】
Φactualは劣化度の実績値、Cは補正項、Φ’は劣化度の補正値である。
【0105】
補正項は、例えば、補正に用いる基礎情報の種類毎に算出される。補正項の式の形および補正項の式に含まれる係数は、上述の基準触媒劣化関数と同様に、既存の知識又は実験等によって予め導かれていてもよい。補正項の式の形および補正項の式に含まれる係数は、補正に用いる基礎情報毎に異なっていてもよい。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報が複数存在する場合、補正に用いる基礎情報の種類毎に補正項を生成し、これらの補正項を掛け合わせたものを、式(5)の補正項としてもよい。
【0106】
第1運転期間に関する劣化度の実績値に対する補正項は、第1運転実績データに基づいて算出される。補正項は、例えば、任意の運転時刻における第1運転実績データの基礎情報の値を実績値とし、基準に用いると定められた運転時刻における第1運転実績データの基礎情報の値を基準値(固定値)とすると、実績値に対する基準値の比で表される。即ち、第1運転期間における運転時刻tの補正項は、運転時刻tに対応する実績値に対する固定値の比を算出することで取得できる。
【0107】
関数生成部112は、第1運転期間における運転時刻毎の補正項を算出することで、算出された補正項と劣化度の実績値に基づいて、式(5)から、第1運転期間における運転時刻毎に劣化度の補正値を算出できる。
【0108】
補正項に用いる基準値は、第1運転実績データの基礎情報の値を基準化できる固定値であればよく、第2運転実績データに含まれる当該基礎情報の値であってもよいし、既存の知識又は実験等によって予め定めた値であってもよい。
【0109】
関数生成部112は、上述した第1運転期間に関する劣化度の補正値の算出方法と同様にして、第2運転期間に関する劣化度の補正値を算出してもよい。
【0110】
関数生成部112は、劣化度の補正値を、劣化度の実績値が算出した後に連続して算出してもよいし、ユーザ端末300からの指示されたタイミングで算出してもよい。また、劣化度の補正値は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め算出されてよい。この場合は、予め算出された劣化度の補正値は、第1運転実績データ又は第2運転実績データの一部である触媒に関する情報として、データ収集装置200に予め記憶されていてもよい。
【0111】
図5は、図4に示した劣化度の実績値を補正した例を示す。横軸は時間、縦軸は劣化度(ここでは残活性割合)である。劣化度の補正値が丸記号によって表される。矢印は、四角記号の実績値を、丸記号の値に補正することを意味する。グラフG1は、劣化度の補正値を滑らかに繋ぐ曲線である。
【0112】
(固有触媒劣化関数の生成)
関数生成部112は、運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、第1運転実績データに基づいて、基準触媒劣化関数の劣化寄与パラメータの値を決定することで、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、基準触媒劣化関数を第1運転実績データに基づきフィッティングすることで、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、第1運転実績データを教師データに用いて、機械学習を行うことで、固有触媒劣化関数を生成してもよい。
【0113】
関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、第2運転実績データを取得していた場合、第1運転実績データだけでなく、第2運転実績データも用いてもよい。
【0114】
関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、基準触媒劣化関数の出力変数が触媒の劣化度の値である場合に、劣化度の実績値の代わりに、劣化度の補正値を用いてもよい。なお、関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、必要に応じて、運転実績データに含まれる値及び運転実績データに基づいて算出された値を、基準触媒劣化関数の入力変数又は出力変数と一致させるための演算を行っても良い。
【0115】
関数生成部112は、例えば、データ取得部111が運転実績データを取得したタイミングで固有触媒劣化関数を生成してもよいし、ユーザ端末300からの指示されたタイミングで固有触媒劣化関数を生成してもよい。また、固有触媒劣化関数は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め生成されてもよい。この場合は、予め生成された固有触媒劣化関数は、データ収集装置200に記憶されていてもよいし、記憶部120に予め記憶されていてもよい。
【0116】
(固有触媒劣化関数の更新)
関数生成部112は、固有触媒劣化関数が存在する場合に、データ取得部111によって取得された第2運転実績データに更に基づいて、固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。関数生成部112は、上述した固有触媒劣化関数の生成方法と同様にして、固有触媒劣化関数を更新できる。
【0117】
関数生成部112は、例えば、データ取得部111が取得した第2運転実績データにも基づいて、劣化寄与パラメータを再決定することで、固有触媒劣化関数を更新する。劣化寄与パラメータの再決定することで固有触媒劣化関数を更新すれば、更新のための演算量を少なくできる。
【0118】
関数生成部112は、データ取得部111が第2運転実績データを所定の周期(時間間隔)で取得する場合、新たに取得された第2運転実績データに更に基づいて、固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。この場合、関数生成部112は、固有触媒劣化関数を当該周期で固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよいし、当該周期とは異なるタイミングで固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。
【0119】
(不安定期間の終了の判断)
ここで、プラント装置500が稼働開始し、原料油の触媒への通油が開始された後の最初のある期間の間は、触媒の活性が急激に低下する初期劣化が生じることが知られている。この期間の経過後、触媒の活性の変化は緩やかになり変化が安定する。プラント装置500への通油開始直後から発生する触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間と呼ぶ。
【0120】
図6は、不安定期間の例を説明する図である。図6には運転開始からある時点までの劣化度がプロットされている。図6に示すように、劣化度は、運転開始後から運転時間t1までは急劇に変化し、その後は緩やか変化している。この場合、運転時間t1までの期間は、不安定期間に対応する。運転時間t1以降の期間は、安定期間に対応する。このように、触媒の劣化度は、不安定期間を経た後、変化が比較的安定する安定期間に移行する。
【0121】
関数生成部112は、第2運転実績データを用いて固有触媒劣化関数を生成又は更新する場合、不安定期間の第2運転実績データを用いなくてもよい。関数生成部112は、例えば、不安定期間経過後の安定期間に取得される第2運転実績データのみを、固有触媒劣化関数の生成又は更新に用いてもよい。
【0122】
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。関数生成部112は、不安定期間の終了が判断された第2運転期間に関する第2運転実績データに基づいて、固有触媒劣化関数を生成又は更新してもよい。
【0123】
関数生成部112は、第2運転実績データに含まれるプラント装置500の運転時間(運転時刻)に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、例えば、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の長さ(例えば、運転時刻)を予め決定し、予め決定された不安定期間の長さに関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された不安定期間の長さに関する情報と、取得された第2運転実績データに含まれる運転時間の値と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。関数生成部112は、より具体的には、第2運転実績データに含まれる運転時刻が予め決定された不安定期間の長さ以上となったときに、当該運転時刻において第2運転期間における不安定期間が終了したと判断できる。
【0124】
関数生成部112は、運転時間の代わりに、劣化度の値(例えば、実績値又は補正値)に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了時点に対応する劣化度の値を予め決定し、決定された劣化度の値に関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された劣化度の値に関する情報と、第2運転実績データに含まれる劣化度の値と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。関数生成部112は、より具体的には、第2運転実績データに含まれる運転時間毎の劣化度の値が予め決定された劣化度の値以下となったときに、当該運転時間において不安定期間が終了したと判断できる。
【0125】
関数生成部112は、運転時間の代わりに、劣化度の値の変化率に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了時点に対応する劣化度の変化率を予め決定し、決定された劣化度の変化率に関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された変化率に関する情報と、第2運転実績データに含まれる劣化度の値の変化率と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。ここで、劣化度の値の変化率は、所定の運転時間において、劣化度の値が変化した割合である。ユーザは、運転実績データに含まれる、又は、運転実績データに基づいて算出された劣化度の値の推移又は変化に基づいて、変化率を算出対象となる運転時間の長さを適宜調整できる。
【0126】
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて第2運転期間における不安定期間の終了を判断する際に、運転時間、劣化度の値及び劣化度の変化率以外の値を判断の指標として用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて判断してもよい。
【0127】
上述の例示では、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断するための指標と当該指標に対応する閾値を予め決定したがこれに限定されず、例えば、第1運転実績データよりも以前の運転実績データに基づいて決定してもよいし、プラント装置500の実績装置の実験データに基づいて決定されてもよい。
【0128】
(触媒劣化予測データの生成)
寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数と運転予定データとに基づき、触媒劣化予測データを生成する。寿命予測データ生成部113は、取得された運転予定データと固有触媒劣化関数とに基づいて、触媒劣化予測データを生成可能であるかを判断してもよい。寿命予測データ生成部113は、例えば、取得された運転予定データに含まれる運転情報の値の種類が、触媒劣化予測データを算出する際に用いる固有触媒劣化関数の入力変数及び上述の数式に含まれる値の種類を網羅しているかを判断してもよい。触媒劣化予測データは、寿命予測データ生成部113に生成可能であると判断されたタイミングで生成されてもよいし、ユーザ端末300からの指示に基づいて生成されてもよい。また、寿命予測データ生成部113は、例えば、温度予測データも生成する場合は、触媒劣化予測データの生成を開始する前に、温度予測データが生成可能であるかを併せて判断してもよい。なお、関数生成部112が触媒劣化予測データを生成する時点で、第2運転期間がまだ開始されていなくてもよいし、開始されていてもよい。以下、寿命予測データ生成部113における触媒劣化予測データの生成方法を説明する。
【0129】
第2運転期間の開始時(運転時間0又は時刻0)の劣化度を所定値(例えば1)とする。運転時間tにおける運転予定データの値を固有触媒劣化関数の入力変数に与えて、固有触媒劣化関数の出力値(dΦ/dt)を取得する。取得した出力値を運転時間t-1の劣化度から減算することで運転時間tの劣化度を取得する。取得した運転時間tの劣化度は、運転時間tにおける劣化度の予測値に対応する。以降、同様の処理を繰り返すことにより、第2運転期間における各運転時間の劣化度の予測値を得ることができる。
【0130】
なお、触媒劣化予測データの生成方法は、固有触媒劣化関数と運転予定データに基づく限り他の方法でもよく、上述の例に限定されるものではない。例えば固有触媒劣化関数の出力が、式(2)又は(2-1)のようなdΦ/dtではなく、式(2-2)のような劣化度Φとする関数であれば、運転予定データと運転時間tとを直接、固有触媒劣化関数の入力変数に与えることにより、運転時間tにおける劣化度の予測値を算出してもよい。
【0131】
なお、寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数又は運転予定データが更新された場合、更新された固有触媒劣化関数又は運転予定データに基づいて、触媒劣化予測データを更新(再生成)してもよい。
【0132】
図7は、固有触媒劣化関数と運転予定データとから算出した劣化度の予測値を含む触媒劣化予測データG2の例を示す。比較用に図5のグラフG1も示されている。星印が、第2運転期間における劣化度の予測値を表す。グラフG1は一点鎖線のグラフ、触媒劣化予測データG2は実線のグラフより表されている。触媒劣化予測データG2は、星印で示す劣化度の予測値を滑らかに繋いでいる。
【0133】
(温度予測データの生成)
寿命予測データ生成部113は、生成された触媒劣化予測データと運転予定データとに基づき、温度予測データを生成する。以下、寿命予測データ生成部113による、温度予測データの生成方法を説明する。
【0134】
寿命予測データ生成部113は、第2運転期間における運転時間毎に、運転予定データと触媒劣化予測データが示す劣化度とに基づき、要求温度を算出する。具体的には、運転時間tにおける運転予定データに基づき、上述の式(3―1)及び式(3―2)から、運転時間tにおける見かけの反応速度定数kを算出する。触媒劣化予測データが示す運転時間tにおける劣化度の予測値に基づき、上述の式(2)から、運転時間tにおける見かけの頻度因子A(At)を算出する。算出された見かけの反応速度定数kと見かけの頻度因子Atとに基づき、上述の式(4)から、運転時間tにおける要求温度Tを算出する。
【0135】
なお、寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数又は運転予定データが更新された場合、更新された固有触媒劣化関数又は運転予定データに基づいて、温度予測データを更新(再生成)してもよい。即ち、寿命予測データ生成部113は、更新された寿命予測データと運転予定データとに基づいて、温度予測データを更新(再生成)してもよい。
【0136】
図8は、寿命予測データ生成部113によって生成される温度予測データの一例を示す図である。運転時間ごとに算出された温度が、触媒の温度(要求温度)を縦軸、時間を横軸とする座標系に、斜線付の丸印によってプロットされている。プロットされた点を滑らかに繋いだ曲線が温度予測データG3に対応する。温度予測データG3は曲線グラフの形態に限定されず、運転時間と温度とを含むデータ又はテーブルであってもよい。
【0137】
(運転状態の判定)
評価情報生成部114は、寿命予測データ生成部113によって生成された寿命予測データと閾値データとに基づいて、プラント装置500の運転状態を判定してもよい。評価情報生成部114は、例えば、寿命予測データに含まれる触媒の劣化の度合に基づいて値が変動する評価指標と閾値データとを比較することで、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定してもよい。
【0138】
評価情報生成部114は、例えば、触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る評価指標を含む寿命予測データと第1閾値と第2閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を第1状態、第2状態及び第3状態のうちいずれか1つの状態に判定する。より具体的には、評価情報生成部114は、例えば、温度予測データと第1閾値と第2閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を第1状態、第2状態及び第3状態のいずれか1つの状態に判定する。この場合、評価指標は、要求温度である。以下、評価情報生成部114が温度予測データと第1閾値と第2閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定する場合の詳細を説明する。
【0139】
評価情報生成部114は、目標運転期限における要求温度が第1閾値(例えば、運上限温度)以下であり、且つ、目標運転期限における要求温度が第2閾値以上である場合、プラント装置500の運転状態が第1状態であると判定する。第1状態は、プラント装置500が目標運転期限前に触媒が寿命を迎えない状態である。第1状態は、プラント装置500の触媒の活用状態として良好な状態でもある。本開示において、「良好な状態」とは、目標運転期限前に触媒が寿命を迎えない状態である。第1状態は、プラント装置500の触媒を、ユーザが期待しているレベル(第2閾値)以上に経済的に活用できている状態でもある。
【0140】
評価情報生成部114は、目標運転期限における要求温度が第1閾値を超える場合、プラント装置500の運転状態が第2状態であると判定する。第2状態は、プラント装置500が目標運転期限前に触媒が寿命を迎える状態である。第2状態は、プラント装置500の触媒の活用状態として良好でない状態である。本開示において、「良好でない状態」とは、目標運転期限前に触媒が寿命を迎える状態である。
【0141】
評価情報生成部114は、目標運転期限における要求温度が第2閾値未満である場合、プラント装置500の運転状態が第3状態であると判定する。第3状態は、プラント装置500が目標運転期限前に触媒が寿命を迎えない状態である。第3状態は、プラント装置500の触媒の活用状態として良好な状態でもある。ただし、第3状態は、第1状態と比べて触媒の寿命を迎えるまでの有余が長い状態でもある。即ち、第3状態は、第1状態と比べてプラント装置500の触媒をより経済的に活用する余地がある状態でもあり、ユーザが期待しているレベル(第2閾値)に達していない状態でもある。
【0142】
評価情報生成部114は、温度予測データを用いてプラント装置500の運転状態を判定する際に、第3状態を判定することを省略し(第2閾値の設定を省略し)、第1状態と第2状態のみを判定してもよい。この場合、評価情報生成部114は、例えば、目標運転期限における要求温度が第1閾値(例えば、運転上限温度)以下である場合、プラント装置500の運転状態が第1状態であると判定してもよい。更に、評価情報生成部114は、目標運転期限における要求温度が第1閾値を超える場合、プラント装置500の運転状態が第2状態であると判定してもよい。この場合、第1状態は、プラント装置500が目標運転期限前に触媒が寿命を迎えない状態である。また、第2状態は、プラント装置500が目標運転期限前に触媒が寿命を迎える状態である。即ち、第1状態は、プラント装置500の触媒の活用状態として良好な状態でもあり、第2状態は、プラント装置500の触媒の活用状態として良好でない状態でもある。
【0143】
上述では、触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る評価指標の一例として、要求温度を評価指標に用いた場合のプラント装置500の運転状態の判定について説明したが、これに限定されない。触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る評価指標を用いれば、上述の要求温度の場合と同様にして、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定できる。
【0144】
また、評価情報生成部114は、触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る評価指標を含む寿命予測データと第3閾値と第4敷閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を第1状態、第2状態及び第3状態のいずれか1つの状態に判定してもよい。より具体的には、評価情報生成部114は、例えば、触媒劣化予測データと第3閾値と第4閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を第1状態、第2状態及び第3状態のいずれか1つの状態に判定してもよい。この場合、評価指標は、劣化度(残活性割合)である。以下、評価情報生成部114が触媒劣化予測データと第3閾値と第4閾値とに基づいて、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定する場合の詳細を説明する。
【0145】
評価情報生成部114は、例えば、目標運転期限における劣化度が第3閾値以上であり、且つ、目標運転期限における劣化度が第4閾値以下である場合、プラント装置500の運転状態が第1状態であると判定する。また、評価情報生成部114は、例えば、目標運転期限における劣化度が第3閾値未満である場合、プラント装置500の運転状態が第2状態であると判定する。また、評価情報生成部114は、目標運転期限における劣化度が第4閾値を超える場合、プラント装置500の運転状態が第3状態であると判定する。この場合、第1状態、第2状態および第3状態は、温度予測データと第1閾値と第2閾値とに基づいて判定した際の各状態と同様の状態である。
【0146】
評価情報生成部114は、触媒劣化予測データを用いてプラント装置500の運転状態を判定する際も、第3状態を判定することを省略し(第4閾値の設定を省略し)、第1状態と第2状態のみを判定してもよい。この場合、評価情報生成部114は、例えば、目標運転期限における劣化度が第3閾値以上である場合、プラント装置500の運転状態が第1状態であると判定し、目標運転期限における劣化度が第3閾値未満である場合、プラント装置500の運転状態が第2状態であると判定する。この場合、第1状態及び第2状態は、温度予測データと第1閾値とに基づいて判定した際の各状態と同様の状態である。
【0147】
上述では、触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る評価指標の一例として、劣化度を評価指標に用いた場合のプラント装置500の運転状態の判定について説明したが、これに限定されない。触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る評価指標を用いれば、上述の劣化度の場合と同様にして、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態を判定できる。
【0148】
(メッセージの生成)
評価情報生成部114は、判定されたプラント装置500の運転状態に応じたメッセージを生成してもよい。評価情報生成部114は、例えば、プラント装置500が第1状態である判定された場合、第1メッセージを生成してよい。評価情報生成部114は、プラント装置500が第2状態である判定された場合、第2メッセージを生成してもよい。評価情報生成部114は、プラント装置500が第3状態である判定された場合、第3メッセージを生成してもよい。なお、第1メッセージ、第2メッセージ及び第3メッセージは、上述のように、予め生成されて記憶部120に記憶されていてもよい。
【0149】
第1メッセージは、触媒の活用状態として良好な状態であることを通知する情報を含んでいてもよい。第1メッセージは、運転予定データを変更することを提案する情報を含んでいてもよく、例えば、触媒の寿命がより短くなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよく、目標運転期限における要求温度がより大きくなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよい。また、第1メッセージは、プラント装置500の運転状況を変更することをユーザに提案する情報を含んでもよく、例えば、プラント装置500の運転状況を運転予定データに含まれる運転情報に基づいて変更することを提案する情報を含んでもよい。なお、第1メッセージは、ユーザに固有触媒劣化関数(劣化モデル)の予測精度の確認を提案する情報を含んでもよいし、固有触媒劣化関数(劣化モデル)の更新を提案する情報を含んでもよい。
【0150】
第2メッセージは、触媒の活用状態として良好ではない状態であることを通知する情報を含んでいてもよい。第2メッセージは、運転予定データを変更することをユーザに提案する情報を含んでもよく、例えば、触媒の寿命がより長くなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよく、目標運転期限における要求温度がより小さくなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよい。なお、第2メッセージは、ユーザに固有触媒劣化関数(劣化モデル)の予測精度の確認を提案する情報を含んでもよいし、固有触媒劣化関数(劣化モデル)の更新を提案する情報を含んでもよい。
【0151】
第3メッセージは、触媒の活用状態として良好な状態であることを通知する情報を含んでいてもよい。第3メッセージは、運転予定データを変更することを提案する情報を含んでいてもよく、例えば、触媒の寿命がより短くなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよく、目標運転期限における要求温度がより大きくなる運転予定データに変更することをユーザに提案する情報を含んでもよい。なお、第3メッセージは、ユーザに固有触媒劣化関数(劣化モデル)の予測精度の確認を提案する情報を含んでもよいし、固有触媒劣化関数(劣化モデル)の更新を提案する情報を含んでもよい。
【0152】
(運転状態情報の生成)
評価情報生成部114は、装置データ、運転実績データ及び閾値データのうち少なくとも1つと、寿命予測データと、に基づいて、運転状態情報を生成してもよい。
【0153】
図9は、運転状態情報の例を示す。図9の例は、温度予測データに基づいて生成された運転状態情報の例である。図9の例では、温度予測データG4と共通の座標系に、運転上限温度(第1閾値)、第2閾値、目標運転期限、現在までの運転日数、触媒の要求温度が運転上限温度に達する時刻t2が配置されている。縦軸が触媒の温度(要求温度)を表し、横軸が時間を表す。温度予測データG4は実線のグラフで表され、時間に応じた触媒の要求温度の遷移を示す。この例では、目標運転期限は365日、現在までの運転日数は200日である。この例では、第1閾値は運転上限温度の値であり、運転上限温度は395℃であり、第2閾値は390℃である。触媒の温度が運転上限温度に達する運転時間(日)は時刻t2である。ここで、時刻t2から現在までの運転日数を減算することで、寿命を迎えるまでの残りの日数を把握できる。処理部110は、残りの日数を計算し、残りの日数を座標系にさらに配置してもよい。なお、図9の例では触媒の温度(要求温度)を日単位で求めているため時刻t2の単位も日であるが、要求温度を求める単位が時間、分又は秒であれば、それに応じて時刻t2の単位も時間、分又は秒となる。
【0154】
(評価情報の生成)
評価情報生成部114は、目標運転期限におけるプラント装置500の運転状態に関する評価情報を生成する。評価情報は、例えば、判定された状態に関する情報、判定された状態に応じたメッセージ、固定のメッセージ及び運転状態情報などのうち少なくとも1つを含んでいればよい。評価情報生成部114は、例えば、固有触媒劣化関数(劣化モデル)の更新や運転予定データの更新によって、寿命予測データ生成部113により寿命予測データが更新されるのに応じて、評価情報を更新してもよい。
【0155】
図10は、評価情報生成部114によって生成された評価情報の一例を示す。図10の例は、第2運転期間におけるプラント装置500の運転状態に関する評価情報の一例である。図10の例では、プラント装置500が第3状態であると判定されている。図10の例は、温度予測データに基づいて生成された評価情報であり、評価指標として要求温度が用いられている。図10の例では、判定された運転状態に関する情報(この例では、「現在のNo.XXXの運転状態は<良好>です。」)、第3メッセージ、固定のメッセージ(この例では、「運転状態のお知らせメッセージ(装置No.XXX)」、「本メールは自動で送信されています。」及び「下記は、現状における要求温度の予測グラフを表しています。」)及び運転状態情報が含まれている。なお、図10の例で示されている運転状態情報は、図9で例示された運転状態情報である。
【0156】
図10の例では、第3メッセージとして、運転予定データを変更することを提案する情報(この例では、「目標運転期限に向けて触媒の使い切りの検討をお願いいたします。」)、触媒の活用状態として良好な状態であることを通知する情報(この例では、「目標運転期限における要求温度は、運転上限温度以下です。」)、ユーザに劣化モデルの予測精度の確認を提案する情報(この例では、「必要に応じて、シミュレーションの精度の確認をお願いいたします。」)が含まれている。
【0157】
図11は、上述の図10の状態から評価情報が更新された例を示す。図11の例では、プラント装置500が第1状態であると判定されている。図11の例は、図10と同様に、温度予測データに基づいて生成された評価情報である。図11の例では、判定された運転状態に関する情報(この例では、「現在のNo.XXXの運転状態は<良好>です。」)、第1メッセージ、運転状態情報及び固定のメッセージ(図10と同様)が含まれている。
【0158】
図11の運転状態情報では、現在までの運転日数が200日から250日に更新されている。図11の運転状態情報では、温度予測データG4から更新された温度予測データG5が示されている。図11では、触媒の温度の測定値(第2運転実績データに含まれる触媒の温度)が、斜線の四角記号で示されている。運転上限温度に達する時刻(触媒の寿命)が時刻t3であり、時刻t2より早くなっている。但し、時刻t3は、時刻t2と同様、目標運転期限より後の時刻であり、目標運転期限において要求温度が運転上限温度(第1閾値)に達しない。即ち、目標運転期限における要求温度は、第1閾値以下である。また、目標運転期限における要求温度は、第2閾値以上である。よって、図11の例は、図10の例に比べて、触媒を、より経済的に活用できている状態であることが分かる。
【0159】
図11の例では、運転状態情報において、触媒の温度の測定値(実績値)が、温度予測データG5とともにプロットされている。触媒の温度の測定値(実績値)は温度予測データG5(要求温度)に沿って配置されており、プロットされた測定値と要求温度との間に大きな乖離がない。これは、例えば、劣化モデルの予測精度が良好であり、評価情報の精度が良好であることを示唆している。したがって、ユーザは、共通の座標系に配置された触媒の温度の測定値(実績値)と要求温度(予測値)とを比較すれば、評価情報(運転状態の判定)の信頼性を迅速に判断できる。
【0160】
図11の例では、第1メッセージとして、触媒の活用状態として良好な状態であることを通知する情報(この例では、「目標運転期限における要求温度は、運転上限温度以下です。」)、プラント装置500の運転状況を変更することをユーザに提案する情報(この例では、「必要に応じて、シミュレーション結果に基づき、プラント装置の運転状況を変更してください。」)が含まれている。
【0161】
図12は、評価情報生成部114によって生成された評価情報の他の一例を示す。図12の例は、第2運転期間におけるプラント装置500の運転状態に関する評価情報の他の一例である。図12の例は、プラント装置500が第2状態であると判定されている。図12は、温度予測データに基づいて生成された運転状態情報の例である。図12の例では、判定されたプラント装置500の運転状態に関する情報(この例では、「現在のNo.XXXの運転状態は<良好ではない>です。」)、第2メッセージ、運転状態情報及び固定のメッセージ(図10と同様)等が含まれている。
【0162】
図12の例では、第2メッセージとして、触媒の活用状態として良好ではない状態であることを通知する情報(この例では、「目標運転期限における要求温度は、運転上限温度を超えています。」)、運転予定データを変更することを提案する情報(この例では、「要求温度が運転上限温度以下になるように今後の運転条件の見直しを検討してください。」、ユーザに劣化モデルの予測精度の確認を提案する情報(この例では、「必要に応じて、シミュレーションの精度の確認をお願いいたします。」)が含まれている。
【0163】
図12の例では、運転状態情報は、温度予測データG6と共通の座標系に、運転上限温度(第1閾値)、第2閾値、目標運転期限、現在までの運転日数、触媒の要求温度が運転上限温度に達する時刻t4が配置されている。縦軸が触媒の温度(要求温度)を表し、横軸が時間を表す。温度予測データG6は実線のグラフで表され、時間に応じた触媒の要求温度の遷移を示す。図12では、触媒の温度の測定値(第2運転実績データに含まれる触媒の温度)が、斜線の四角記号で示されている。この例では、目標運転期限は365日、現在までの運転日数は200日である。この例では、第1閾値は運転上限温度の値であり、運転上限温度は395℃であり、第2閾値は390℃である。触媒の温度が運転上限温度に達する運転時間(日)は時刻t4である。時刻t4は、目標運転期限よりも前の時刻である。目標運転期限における要求温度は、運転上限温度(第1閾値)を超えている。
【0164】
図12の例では、運転状態情報において、触媒の温度の測定値(実績値)が、温度予測データG6とともにプロットされている。図12の例では、触媒の温度の測定値(実績値)は温度予測データG6(要求温度)に比べて低温側に配置されており、プロットされた測定値と要求温度との間の乖離は運転日数が200日に近づくに応じて大きくなっている。この乖離は、例えば、劣化モデルの予測精度が良好ではなく、劣化モデルの更新が望まれる状態であることを示唆する。したがって、ユーザは、共通の座標系に配置された触媒の温度の測定値(実績値)と要求温度(予測値)とを比較すれば、評価情報(運転状態の判定)の信頼性を迅速に判断できる。
【0165】
上述の図10図11及び図12に示した例では、要求温度を評価指標として用いたが、例えば、劣化度などの他の評価指標を用いた場合も同様にして、評価情報を生成できる。なお、劣化度は、触媒の劣化が進行するのに応じて小さい値と取る評価指標の一例である。よって、評価指標に劣化度も用いた場合、即ち、触媒劣化予測データに基づいて評価情報を生成した場合、評価情報に含まれる運転情報のグラフは、運転時間に応じて値が小さくなるグラフとなる(図6参照)。この場合、評価情報に含まれる判定に応じてメッセージの具体的な内容も、評価指標に応じて適宜変更され得る。例えば、第1メッセージとして、触媒の活用状態として良好な状態であることを通知する情報が含まれる場合は、図11で示した例の代わりに、「目標運転期限における劣化度は、第3閾値以上です。」等を用いてもよい。
【0166】
(評価情報の出力)
データ出力部115は、評価情報生成部114により生成された評価情報を、通信部130を介して、対象となるユーザ端末300に送信してもよい。データ出力部115は、例えば、情報処理装置100に評価情報の生成を要求したユーザ端末300に、評価情報を送信してもよい。また、データ出力部115は、例えば、予め定めた1人以上のユーザのユーザ端末300又は予め定めたグループに属する複数のユーザのユーザ端末300に評価情報を送信してもよい。
【0167】
ユーザ端末300の表示部310は、受信された評価情報を表示する。また、評価情報生成部114により評価情報が更新された場合は、ユーザ端末300の表示部310の画面も更新されてよい。
【0168】
ユーザ端末300が図10の評価情報を受信した場合、表示部310には図10の評価情報が表示される。ユーザは、表示部310に表示された評価情報を確認し、プラント装置500における触媒の活用状況(例えば触媒が有効に活用されているかどうか)を評価できる。ユーザは、例えば、図10の評価情報に基づいて、要求温度が運転上限温度に達する時刻を特定することで、即ち、要求温度が運転上限温度(第1閾値)となる時刻を特定することで、触媒の寿命の時期を把握できる。よって、ユーザは、図10の評価情報に用いた運転予定データをプラント装置500の運転状況に反映させるか否かを判断できる。また、評価情報に含まれる第3メッセージ又はプラント装置500の運転状態に関する情報に基づき、図10の評価情報に用いた運転予定データをプラント装置500の運転状況に反映させるか否かを判断できる。図10の例の場合、ユーザは、時刻t2が目標運転期限より後であるため、目標運転期限において触媒の温度が運転上限温度に達しないことを確認できる。さらに、ユーザは、要求温度が第2閾値未満であることから、触媒の寿命に比較的余裕があると判断できる。即ち、ユーザは、図10の例は、第3状態であり、第1状態と比べてプラント装置500の触媒をより経済的に活用する余地がある状態であると判断できる。よって、ユーザは、要求温度がより大きくなるように運転予定データを模索する、又は、図10の評価情報に用いた運転予定データとプラント装置500の運転状況(例えば、運転条件、原料油の通油量など)とを比較し、プラント装置500の運転状況を変更することを決定することができる。この際、図10の運転情報に、図11及び図12の例の様に、触媒の温度の測定値が要求温度と共通の座標系に配置されていれば、ユーザは、測定値と要求温度(予測値)とを比較することで、評価情報を信頼すべきか否かも迅速に判断できる。上述のように、ユーザは、評価情報に基づき、目標運転期限に合わせて触媒の寿命が尽きる状態に近づくように、すなわち、目標運転期限に対して触媒が効率よく利用できるようにプラント装置500の運転状況(例えば、運転条件等)を変更できる。
【0169】
なお、データ出力部115は、例えば、情報処理装置100の表示部に評価情報を出力してもよい。この場合であっても、ユーザは、情報処理装置100の表示部に表示された評価情報を確認することで、プラント装置500における触媒の活用状況を同様に評価できる。
【0170】
<処理の流れ>
図13は、情報処理装置100の処理の一例を示すフローチャートである。図13に示す例では、プラント装置500の第2運転期間における運転が開始しているものとする。なお、以下で説明するステップの内容及び順番は、あくまでも例示であって、本開示の内容と矛盾がない限り、適宜変更することができる。
【0171】
(ステップS100)
データ取得部111は、データ収集装置200からプラント装置500の装置データを取得する。データ取得部111は、取得した装置データに含まれる触媒の種類に対応する基準触媒劣化関数を取得する。データ取得部111は、データ収集装置200にプラント装置500に適合する固有触媒劣化関数が有る場合、当該固有触媒劣化関数を取得する。データ取得部111は、取得した装置データに含まれる触媒の種類等に基づいて、閾値データを取得する。最後に、データ取得部111は、取得された装置データ、基準触媒劣化関数、固有触媒劣化関数及び閾値データを記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS101の処理に進む。
【0172】
(ステップS101)
関数生成部112は、記憶部120に固有触媒劣化関数が有るか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、処理はステップS110の処理に進む。当該判定が否定判定された場合、処理はステップS102の処理に進む。
【0173】
(ステップS102)
ステップS101が否定判定された場合、データ取得部111は、データ収集装置200から第1運転実績データを取得する。データ取得部111は、取得された第1運転実績データを記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS103の処理に進む。
【0174】
(ステップS103)
関数生成部112は、取得された第1運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を生成する。また、取得された第1運転実績データに第1運転期間に関する劣化度に関する値の実績値又は補正値が含まれていない場合、関数生成部112は、取得された第1運転実績データに基づいて劣化度に関する値の実績値又は補正値を算出し、算出された劣化度に関する値の実績値又は補正値を用いて、固有触媒劣化関数を生成する。最後に、関数生成部112は、生成された固有触媒劣化関数を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS120の処理に進む。
【0175】
(ステップS110)
ステップS101が肯定判定された場合、データ取得部111は、第2運転実績データを取得するための周期に基づいて、第2運転実績データを取得するタイミングであるか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、処理はステップS111の処理に進む。当該判定が否定判定された場合、処理はステップS120の処理に進む。
【0176】
(ステップS111)
ステップS110が肯定判定された場合、データ取得部111は、データ収集装置200から第2運転期間における該当する周期分の第2運転実績データを取得する。データ取得部111は、取得された第2運転実績データを記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS112の処理に進む。
【0177】
(ステップS112)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転実績データを取得する周期を変更するか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、処理はステップS113の処理に進む。当該判定が否定判定された場合、処理はステップS114の処理に進む。
【0178】
(ステップS113)
ステップS112が肯定判定された場合、データ取得部111は、第2運転実績データを取得する周期を変更する。データ取得部111は、変更した当該周期を記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS114の処理に進む。
【0179】
(ステップS114)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転期間における不安定期間が終了したか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、処理はステップS115の処理に進む。当該判定が否定判定された場合、処理はステップS120の処理に進む。
【0180】
(ステップS115)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を更新する。また、取得された第2運転実績データに第2運転期間に関する劣化度に関する値の実績値又は補正値が含まれていない場合、関数生成部112は、取得された第2運転実績データに基づいて劣化度に関する値の実績値又は補正値を算出し、算出された劣化度に関する値の実績値又は補正値を用いて、固有触媒劣化関数を更新する。最後に、関数生成部112は、更新された固有触媒劣化関数を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS120の処理に進む。
【0181】
(ステップS120)
処理部110は、所定の条件に基づいて、評価情報を生成するタイミングか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、処理はステップS121の処理に進む。当該判定が否定判定された場合、処理はステップS130の処理に進む。ここで、所定の条件は、例えば、ユーザ端末300等から評価情報を生成する要求を受信している場合、固有触媒劣化関数が新たに生成又は更新されている場合、評価情報を周期的に生成することが予め設定されており当該周期が到来している場合などがある。なお、所定の条件は、他の条件でもよい。
【0182】
(ステップS121)
ステップS120が肯定判定された場合、データ取得部111は、ユーザ端末300からプラント装置500の運転予定データを取得する。データ取得部111は、取得した運転予定データを記憶部120に記憶する。次に、寿命予測データ生成部113は、生成された固有触媒劣化関数と取得された運転予定データとに基づき、寿命予測データ(例えば、温度予測データ)を生成する。また、寿命予測データ生成部113は、更新された固有触媒劣化関数が存在する場合、更新された固有触媒劣化関数と運転予定データとに基づいて、寿命予測データ(温度予測データ)を生成する。寿命予測データ生成部113は、生成された寿命予測データ(温度予測データ)を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS122の処理に進む。
【0183】
(ステップS122)
評価情報生成部114は、生成された温度予測データに含まれる目標運転期限における要求温度が、閾値データに含まれる第1閾値を超えるか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合は、処理はステップS123の処理に進む。当該判定が否定判定された場合は、処理はステップS124の処理に進む。
【0184】
(ステップS123)
ステップS122が肯定判定された場合、評価情報生成部114は、プラント装置500の運転状態を第2状態であると判定する。そして、処理は、ステップS127の処理に進む。
【0185】
(ステップS124)
ステップS122が否定判定された場合、評価情報生成部114は、生成された温度予測データに含まれる目標運転期限における要求温度が、閾値データに含まれる第2閾値以上であるか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合は、処理はステップS125の処理に進む。当該判定が否定判定された場合は、処理はステップS126の処理に進む。
【0186】
(ステップS125)
ステップS124が肯定判定された場合、評価情報生成部114は、プラント装置500の運転状態を第1状態であると判定する。そして、処理は、ステップS127の処理に進む。
【0187】
(ステップS126)
ステップS124が否定判定された場合、評価情報生成部114は、プラント装置500の運転状態を第3状態であると判定する。そして、処理は、ステップS127の処理に進む。
【0188】
(ステップS127)
評価情報生成部114は、判定されたプラント装置500の運転状態に応じたメッセージを生成する。そして、処理は、ステップS128の処理に進む。
【0189】
(ステップS128)
評価情報生成部114は、装置データに含まれる運転上限温度と生成された温度予測データとに基づいて、運転状態情報を生成する。ここで評価情報生成部114は、取得された第2運転実績データが存在する場合、第2運転実績データに含まれる触媒の温度(測定値)を運転状態情報に用いてもよい。そして、処理は、ステップS129の処理に進む。
【0190】
(ステップS129)
評価情報生成部114は、判定された運転状態に応じたメッセージと運転状態情報とに基づいて、評価情報を生成する。データ出力部115は、生成された評価情報を対象となるユーザ端末300に送信する。なお、評価情報を受信したユーザ端末300では、評価情報がユーザ端末300の表示部に表示される。そして、処理は、ステップS130の処理に進む。
【0191】
(ステップS130)
処理部110は、終了条件に基づき、本処理を終了するか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、本処理は終了する。当該判定が否定判定された場合は、処理はステップS101の処理に進む。ここで、終了条件は、例えば、ユーザ端末300から終了の指示データを受信した場合、プラント装置500の運転が終了した場合などがある。終了条件は、その他の条件でもよい。
【0192】
(他の動作例)
図13に示されるステップの一部が削除されてもよい。例えば、ステップS100、ステップS110、ステップS112、ステップS113、ステップS114、ステップS124、ステップS127、ステップS128、ステップS130等が削除されてもよい。ステップS130が削除された場合は、例えば、ステップS129が完了したとき、又は、ステップS120にて否定判定がなされたとき、本処理は終了する。
【0193】
また、図13に示されるステップ以外の処理を行うステップが追加されてもよい。例えば、ステップS102とS103との間に、第2運転実績データを取得するステップS102Aを追加してもよい。この場合、ステップS103では、取得された第2運転実績データに基づいて、劣化度の実績値及び補正値が算出されてもよい。
【0194】
なお、ステップS121では、基準触媒劣化関数及び固有触媒劣化関数における入力変数に触媒の温度が含まれている場合、寿命予測データ生成部113は、触媒劣化予測データと寿命予測データとを同時並行的に生成する処理を行ってもよい。より具体的には、寿命予測データ生成部113は、運転時間(運転時間t-1とする)について算出された劣化度と次の運転時間t(例えば翌日)の運転予定データとに基づき、運転時間tの要求温度を算出する(詳細は、上述の式(3-1)及び式(3-2)及び式(4)の説明を参照)。更に、寿命予測データ生成部113は、運転時間tについて算出した要求温度と運転時間tの運転予定データとに基づいて、固有触媒劣化関数から触媒の劣化度を算出する。以降、tを単位時間ずつ増加させて、同様の処理を行うことで、温度の算出と劣化度の算出とを交互に繰り返し行う。このようにして運転時間毎に算出された一連の劣化度が触媒劣化予測データとして得られ、運転時間毎に算出された一連の要求温度が温度予測データとして得られる。
【0195】
(変形例1)
固有触媒劣化関数は、プラント装置500(第1プラント装置)とは異なる第2プラント装置の運転実績データ(第2プラント装置運転実績データ)に基づいて、生成されてもよい。第2プラント装置は、原料油を触媒に通油して生成油を取得する装置である。第2プラント装置は、例えば、第1プラント装置と同等の機能を有するプラント装置、第1プラント装置の実験装置、などが挙げられる。第2プラント装置の第2プラント装置運転実績データの定義は、第1プラント装置(プラント装置500)の運転実績データと同様である。第2プラント装置運転実績データは、固有触媒劣化関数を生成するために用いられる第1運転実績データと共通の運転情報の含むデータである。
【0196】
この場合、第2プラント装置運転実績データは、データ取得部111によってユーザ端末300又はデータ収集装置200から取得される。関数生成部112は、取得された第2プラント装置運転実績データを第1運転実績データとともに、固有触媒劣化関数の生成に用いることができる。第2プラント装置運転実績データは、情報処理装置100の入力部から取得されてもよい。取得された第2プラント装置運転実績データは、記憶部120に記憶されてもよい。
【0197】
この場合、例えば、図13に示されるステップS102とステップS103との間に、第2プラント装置運転実績データを取得するステップ102Bを追加すればよい。取得された第2プラント装置運転実績データは、以降の第1運転実績データを用いる各ステップ(例えば、ステップS103など)において、第1運転実績データとともに用いることができる。
【0198】
上述の変形例で生成した固有触媒劣化関数は、当該固有触媒劣化関数が生成された第1プト装置(プラント装置500)のみならず、第1プラント装置と同等の機能を有するプラント装置(第2プラント装置)に適用してもよい。
【0199】
(変形例2)
第1運転期間と第2運転期間とでプラント装置500に用いる触媒が異なっていてもよい。この場合であっても、関数生成部112は、上述の実施形態での固有触媒劣化関数の生成方法に準ずる方法にて、第1運転期間に関する運転実績データに基づいて第2運転期間における触媒の寿命の予測に用いる固有触媒劣化関数を生成できる。なお、「触媒が異なる」とは、触媒の種類(例えば、主成分)又は用途(例えば、脱硫触媒)が同じであるが、製品(製品番号)又は触媒の製造会社が異なる場合などが挙げられる。
【0200】
この場合、例えば、図13に示されるステップS103において、第1運転期間に関する触媒の劣化度の実績値に対して補正を行えばよい。より具体的には、過去の知見や実験装置などにより、両触媒の劣化度の値の時間毎の推移などに関するデータなどを取得する。取得された両触媒のデータを比較し、触媒の種類に関する補正項を生成すればよい。この場合、触媒の種類に関する補正項は、例えば、第1運転期間に用いる触媒の劣化度の値と第2運転期間に用いる触媒の劣化度の値との比であってもよいし、取得されたデータに基づいて算出された固定値であってもよい。なお、生成された触媒の種類に関する補正項は、他の補正項と併せて、劣化度の実績値の補正に用いてもよい。
【0201】
(その他の変形例)
上述の実施形態において、劣化度の一例として、上述の式(1)で示す触媒の残活性割合を挙げたが、触媒の残活性割合の代わりに触媒の見かけの反応速度定数の比であってもよい。すなわち、劣化度は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)における触媒の見かけの反応速度定数k0に対する、時刻t(運転期間内の時刻t、又は運転開始してからの経過時間t)における触媒の見かけの反応速度定数ktの比であってもよい。
【0202】
本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示したものと異なる場合もある。
【0203】
本開示における「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0204】
本開示において、「含む」、「含んでいる」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0205】
本開示における「判断」および「決定」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」および「決定」の各々は、例えば、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」および「決定」の各々は、例えば、解決、選択、選定、確立、比較などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」および「決定」各々は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0206】
本発明は、情報処理装置100において行われる処理のステップを備える情報処理方法として提供されてもよい。また、本発明は、情報処理装置100において実行されるプログラムとして提供されてもよい。当該プログラムは、光ディスクなどの記憶媒体に記憶した形態で提供されたり、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることが可能である。
【0207】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態及び変形例に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0208】
以下、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0209】
第1の態様は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の目標運転期限と、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成される劣化モデルと、を記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、前記劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、生成された前記寿命予測データと前記目標運転期限とに基づいて、前記目標運転期限における前記プラント装置の運転状態に関する評価情報を生成する評価情報生成部と、を備える、情報処理装置である。
【0210】
第1の態様によれば、ユーザは、目標運転期限までプラント装置を予定通りに運転した際の運転状態に関する評価情報を把握できる。したがって、ユーザは、運転予定データに含まれる運転情報に基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかを判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0211】
第2の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の度合に基づいて値が変動する評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、前記記憶部は、前記評価指標に対応する閾値データをさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記評価指標と前記閾値データとを比較することで、前記目標運転期限における前記運転状態が第1状態及び第2状態のうち一方であると判定し、前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成し、前記第1状態は、前記目標運転期限前に前記触媒が寿命を迎えない状態であり、前記第2状態は、前記目標運転期限前に前記触媒が寿命を迎える状態である、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0212】
第2の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0213】
第3の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の進行に応じて大きい値を取る評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、前記記憶部は、第1閾値と、前記第1閾値よりも値が小さい第2閾値と、をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第1閾値以下であり、且つ、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第2閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記目標運転期限における前記評価指標が前記第2閾値未満である場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0214】
第3の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0215】
第4の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の劣化の進行に応じて小さい値を取る評価指標と運転時間との関係を表すデータであり、前記記憶部は、第3閾値と、前記第3閾値よりも値が小さい第4閾値と、をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上であり、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値を超える場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1態様に記載の情報処理装置である。
【0216】
第4の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。また、プラント装置の運転状態が3つの状態に判定されるため、ユーザは、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより詳細に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0217】
第5の態様は、前記寿命予測データは、要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、前記記憶部は、第1閾値をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0218】
第5の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0219】
第6の態様は、前記寿命予測データは、要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、前記記憶部は、第1閾値と、前記第1閾値よりも値が小さい第2閾値と、をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値以下であり、且つ、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第2閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第1閾値を超える場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記目標運転期限における前記要求温度が前記第2閾値未満である場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0220】
第6の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。また、プラント装置の運転状態が3つの状態に判定されるため、ユーザは、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより詳細に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0221】
第7の態様は、前記第1閾値は、前記プラント装置の運転上限温度である、第5の態様又は第6の態様に記載の情報処理装置。
【0222】
第7の態様によれば、第1閾値が運転上限温度である。よって、プラント装置の運転状態の判定精度が向上するため、評価情報の精度が向上する。したがって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより正確に判断できる。ひいては、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0223】
第8の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の劣化度と運転時間との関係を表す触媒劣化予測データであり、前記記憶部は、第3閾値をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記第1状態及び前記第2状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0224】
第8の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0225】
第9の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の劣化度と運転時間との関係を表す触媒劣化予測データであり、前記記憶部は、第3閾値と、前記第3閾値よりも大きい値である第4閾値と、をさらに記憶しており、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上であり、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値以下である場合に、前記プラント装置が第1状態であると判定し、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値未満である場合に、前記プラント装置が第2状態であると判定し、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第3閾値以上であり、前記目標運転期限における前記劣化度が前記第4閾値を超える場合に、前記プラント装置が第3状態であると判定し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうち判定された状態に基づいて、前記評価情報を生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0226】
第9の態様によれば、ユーザは、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態に基づいて生成された評価情報を確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。また、プラント装置の運転状態が3つの状態に判定されるため、ユーザは、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより詳細に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0227】
第10の態様は、前記評価情報生成部は、前記プラント装置が前記第1状態であると判定された場合に、前記第1状態に応じた第1メッセージを含む前記評価情報を生成し、前記プラント装置が前記第2状態であると判定された場合に、前記第2状態に応じた第2メッセージを含む前記評価情報を生成する、第2の態様、第5の態様及び第8の態様のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。
【0228】
第10の態様によれば、ユーザは、評価情報に含まれる判定された状態に応じたメッセージを確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0229】
第11の態様は、前記第2メッセージは、前記運転予定データの変更を提案する情報又は前記プラント装置の前記運転状況の変更を提案する情報を含む、第10の態様に記載の情報処理装置である。
【0230】
第11の態様によれば、ユーザは、評価情報に含まれるメッセージを確認することで、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態だけでなく、判定された運転状態に応じた対応候補も併せて把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0231】
第12の態様は、前記評価情報生成部は、前記プラント装置が前記第1状態であると判定された場合に、前記第1状態に応じた第1メッセージを含む前記評価情報を生成し、前記プラント装置が前記第2状態であると判定された場合に、前記第2状態に応じた第2メッセージを含む前記評価情報を生成し、前記プラント装置が前記第3状態であると判定された場合に、前記第3状態に応じた第3メッセージを含む前記評価情報を生成する、第3の態様、第4の態様、第6の態様及び第9の態様のうちいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。
【0232】
第12の態様によれば、ユーザは、評価情報に含まれる判定された状態に応じたメッセージを確認することで、目標運転期限におけるプラント装置の運転状態をより容易に把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0233】
第13の態様は、前記第3メッセージは、前記運転予定データの変更を提案する情報又は前記プラント装置の前記運転状況の変更を提案する情報を含む、第12の態様に記載の情報処理装置である。
【0234】
第13の態様によれば、ユーザは、評価情報に含まれるメッセージを確認することで、判定された目標運転期限におけるプラント装置の運転状態だけでなく、判定された運転状態に応じた対応候補も併せて把握できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0235】
第14の態様は、前記評価情報生成部は、前記目標運転期限と生成された前記寿命予測データとを含む運転状態情報を生成し、前記評価情報は、生成された前記運転状態情報を含む、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0236】
第14の態様によれば、ユーザは、評価情報に含まれる運転情報から、目標運転期限と寿命予測データとを確認できる。よって、ユーザは、判定された目標運転期限における運転状態の精度を確認できるとともに、目標運転期限までの運転状況の予測結果を確認できる。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0237】
第15の態様は、前記寿命予測データは、前記触媒の要求温度と運転時間との関係を表す温度予測データであり、前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度であり、前記データ取得部は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、前記第2運転実績データは、前記触媒の温度の測定値を含み、前記評価情報生成部は、温度と時間とを軸とする共通の座標系に、前記要求温度と前記測定値とを配置した運転状態情報を生成し、前記評価情報は、生成された前記運転状態情報を含む、第1の態様に記載の情報処理装置。
【0238】
第15の態様によれば、ユーザは、共通の座標系に配置された触媒の温度の測定値(実績値)と要求温度(予測値)とを比較することで、劣化モデルの予測精度を容易に判断できる。よって、ユーザは、評価情報(運転状態の判定)の信頼性を迅速に判断できる。したがって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。ひいては、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0239】
第16の態様は、データ出力部をさらに備え、前記データ出力部は、前記評価情報をユーザ端末に送信して前記ユーザ端末の画面に表示させる、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0240】
第16の態様によれば、ユーザに評価情報をより容易に又はより確実に視認させることができる。よって、ユーザは、より迅速に評価情報を把握できるため。したがって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより迅速に判断できる。ひいては、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0241】
第17の態様は、前記劣化モデルを更新する関数生成部をさらに備え、前記劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、前記運転予定データは、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である第2運転期間に関するデータであり、前記データ取得部は、前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、前記関数生成部は、取得された前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルを更新し、前記評価情報生成部は、更新された劣化モデルに基づいて、前記評価情報を更新し、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0242】
第17の態様によれば、第2運転実績データに基づいて更新された劣化モデルに基づき、評価情報が更新される。よって、プラント装置の運転状態の予測対象期間である第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況を劣化モデルに反映できるため、劣化モデルによる寿命予測データの予測精度を向上でき、寿命予測データの予測精度向上に応じて評価情報の信頼性が向上する。したがって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。ひいては、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0243】
第18の態様は、前記プラント装置への通油開始直後から発生する前記触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間とするとき、前記関数生成部は、取得された前記第2運転期間に応じて、前記第2運転期間における前記不安定期間の終了を判定し、前記不安定期間の終了が判定された前記第2運転期間に関する前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルを更新する、第17の態様に記載の情報処理装置である。
【0244】
第18の態様によれば、第2運転期間におけるプラント装置に固有の状況を劣化モデルに反映させる際に、不安定期が経過した後の第2運転実績データを用いる。よって、第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況をより適切に劣化モデルに反映できるため、劣化モデルによる寿命予測データの予測精度を向上でき、寿命予測データの予測精度向上に応じて評価情報の信頼性が向上する。したがって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。ひいては、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0245】
第19の態様は、前記データ取得部は、前記第2運転期間における前記プラント装置の運転開始から前記目標運転期限までの時間よりも短い周期で前記第2運転実績データを更新し、前記関数生成部は、更新された前記第2運転実績データに基づいて、前記劣化モデルをさらに更新する、第17の態様に記載の情報処理装置である。
【0246】
第19の態様によれば、第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況を劣化モデルに繰り返し反映できるため、第2運転期間が進むほどに劣化モデルによる寿命予測データの予測精度を向上でき、寿命予測データの予測精度向上に応じて評価情報の信頼性が向上する。よって、ユーザは、運転予定データに基づいて、プラント装置の運転状況を変更すべきかをより的確に判断できる。したがって、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0247】
第20の態様は、前記データ取得部は、取得された第2運転実績データに応じて、前記周期を変更する、第19の態様に記載の情報処理装置である。
【0248】
第20の態様によれば、取得された第2運転実績データに応じて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期(時間間隔)が変更される。よって、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況に応じて、データ通信量又は情報処理量と劣化モデルの更新頻度又は劣化モデルの精度とのバランスを取ることができる。したがって、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況に応じて、データ通信量又は情報処理量と評価情報の更新頻度又は評価情報の信頼性とのバランスを取ることができる。
【0249】
本開示の態様は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も前述の内容に限定されるものではない。各実施形態における構成要素は、適切に組み合わされて適用されてもよい。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0250】
1 情報処理システム
100 情報処理装置
300 ユーザ端末
400 ネットワーク
110 処理部
111 データ取得部
112 関数生成部
113 寿命予測データ生成部
114 評価情報生成部
115 データ出力部
120 記憶部
130 通信部
200 データ収集装置
210 データベース
300 ユーザ端末
310 表示部
400 ネットワーク
500 プラント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13