(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146376
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20241004BHJP
G01S 7/52 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01S7/52 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059231
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡之
【テーマコード(参考)】
2G064
5J083
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB29
2G064BA02
2G064BA08
2G064BA11
2G064DD23
5J083FA04
(57)【要約】
【課題】水中での受波電圧感度の測定において、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる測定装置及び測定方法が望まれていた。
【解決手段】測定装置100は、水中に設けられ、音波を送波する送波器3と、水中に設けられ、音波を受波する受波器5と、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr
0上に設けられ、当該音波を遮音する遮音部材9と、を備えるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設けられ、音波を送波する送波器と、
前記水中に設けられ、前記音波を受波する受波器と、
前記送波器から送波された後に反射面で反射して前記受波器に至る前記音波の伝搬経路上に設けられ、当該音波を遮音する遮音部材と、
を備えた、測定装置。
【請求項2】
前記遮音部材は、
鉛直方向から見た場合に、前記送波器と前記受波器との間に、前記送波器と前記受波器とを結ぶ直線に交差する方向に延びて設けられ、
上端部が水面より上方に配置され、下端部が前記送波器及び前記受波器より下方に配置され、
前記送波器と前記受波器とを結ぶ直線と交差する位置に、前記送波器から前記受波器に向かう直接波を通過させる開口部が設けられている、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記遮音部材は、
前記開口部の縁部が前記送波器側に湾曲する湾曲部を有する、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記遮音部材は、
鉛直方向から見た場合に、前記送波器と前記受波器との間に、前記送波器と前記受波器とを結ぶ直線に交差する方向に延びて設けられ、
上端部が水面より上方に配置され、下端部が前記送波器及び前記受波器より上方に配置される、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記遮音部材は、
鉛直方向から見た場合に、前記送波器と前記受波器との間の中間位置に配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記送波器、前記受波器及び前記遮音部材は、
壁面及び底面に吸音部材が設けられた水槽内に配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
入力信号を生成する発振器と、
前記入力信号を増幅するパワーアンプと、
前記パワーアンプで増幅された前記入力信号を音波に変換して送波する前記送波器と、
前記パワーアンプで増幅された前記入力信号を減衰する減衰器と、
前記送波器から送波された音波を受波し、電圧信号に変換して出力信号を出力する前記受波器と、
前記出力信号を増幅するプリアンプと、
前記減衰器で減衰された前記入力信号と前記プリアンプで増幅された前記出力信号とに基づき、受波電圧感度を算出する算出部と、
を備える、
請求項1~4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
音波を送波する送波器と、前記音波を受波する受波器とを水中に設置する工程と、
前記送波器から送波された後に反射面で反射して前記受波器に至る前記音波の伝搬経路上に、当該音波を遮音する遮音部材を設置する工程と、
前記送波器から送波された前記音波を、前記受波器が受波する工程と、
を有する、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において音波を受波する受波器の感度を測定する測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中での受波電圧感度の測定方法として、例えば、非特許文献1には、基準となる送波器(以下「基準送波器」という)と測定対象の受波器(以下「供試受波器」という)の感度積を所定の器間距離で測定して算出するものが開示されている。ここで、感度積は、我が国で古くから用いられてきたソーナー技術固有の概念である(非特許文献1参照)。また、感度積は、基準送波器と供試受波器とを水中で対向して配置して基準送波器を電気的に駆動するとき、供試受波器の開放出力電圧を基準送波器の駆動電圧で割った値である(非特許文献2参照)。
【0003】
また、非特許文献1には、自由音場での測定においては、水面や水底、水槽壁面、吊下治具、その他の構造物等からの反射が、測定値に疑義を生じるような影響を与えてはならないことが開示されている。また、連続波を用いる測定の場合は、必要精度に応じて、基準送波器及び供試受波器と反射面との位置関係を決めることが開示されている。また、パルス波(PCW)を用いる測定の場合は、時間的な分離によって必要精度を満たすことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】防衛庁,“NDS Y-4301 防衛庁規格 ソーナー用送受波器,送波器及び受波器の試験方法”,p.2-3,p.9-11[online],平成15年4月9日,[令和5年3月27日検索],インターネット<URL:https://www.mod.go.jp/atla/nds/Y/Y4301.pdf>
【非特許文献2】防衛庁,“NDS Y0012B 防衛庁規格 水中音響用語-機器”,p.20,[online],平成12年3月6日,[令和5年3月27日検索],インターネット<URL:https://www.mod.go.jp/atla/nds/Y/Y0012B.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水中での受波電圧感度の測定では、基準送波器から送波され供試受波器に直接入射する音波(以下「直接波」という)と、基準送波器から送波された後に水面等の反射面で反射して供試受波器に入射する音波(以下「反射波」という)が発生する。
【0006】
反射波の影響を少なくするために、基準送波器から送波する音波にパルス波を用いて、供試受波器が受波した直接波と反射波を時間的に分離する場合、直接波と反射波とが重ならないようにする必要がある。直接波と反射波とが重ならないようにするには、測定するパルス波のパルス幅が、直接波と反射波の到達時間の時間差に収まるように、パルス波の周波数を設定する必要がある。
【0007】
直接波と反射波の到達時間の時間差は、基準送波器と供試受波器との器間距離及び反射面からの距離によって決まるため、基準送波器及び供試受波器の設置位置に制約があると、設けられる時間差には限度がある。パルス波の周波数が低い程、パルス幅が長くなるため、測定が可能となるパルス波の周波数範囲の下限値は、直接波と反射波の到達時間の時間差の限度によって制限されてしまう、という課題があった。
【0008】
したがって、水中での受波電圧感度の測定において、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる、測定装置および測定方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る測定装置は、水中に設けられ、音波を送波する送波器と、前記水中に設けられ、前記音波を受波する受波器と、前記送波器から送波された後に反射面で反射して前記受波器に至る前記音波の伝搬経路上に設けられ、当該音波を遮音する遮音部材と、を備えたものである。
【0010】
本発明に係る測定方法は、音波を送波する送波器と、前記音波を受波する受波器とを水中に設置する工程と、前記送波器から送波された後に反射面で反射して前記受波器に至る前記音波の伝搬経路上に、当該音波を遮音する遮音部材を設置する工程と、前記送波器から送波された前記音波を、前記受波器が受波する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、送波器から送波された後に反射面で反射して受波器に至る音波の伝搬経路上に、当該音波を遮音する遮音部材を設置することにより、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る測定装置を示すブロック構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る測定装置の遮音部材の配置を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る測定装置の遮音部材の配置を示す平面図である。
【
図4】実施の形態1に係る測定装置の遮音部材の開口部を示す要部平面図である。
【
図5】比較例に係る測定装置の音波の伝搬の動作を説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係る測定装置の音波の伝搬の動作を説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る測定装置の音波の伝搬の動作を説明する図である。
【
図8】実施の形態2に係る測定装置を示すブロック構成図である。
【
図9】実施の形態2に係る遮音部材の開口部を示す要部斜視図である。
【
図10】実施の形態2に係る測定装置の音波の伝搬の動作を説明する図である。
【
図11】実施の形態3に係る測定装置を示すブロック構成図である。
【
図12】実施の形態4に係る測定装置の遮音部材の配置を示す図である。
【
図13】実施の形態4に係る測定装置の遮音部材の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る測定装置100を示すブロック構成図である。
図1に示すように、測定装置100は、発振器1、パワーアンプ2、送波器3、減衰器4、受波器5、プリアンプ6、算出部7、及び遮音部材9を備える。送波器3、受波器5及び遮音部材9は、水槽8内に配置される。なお、
図1においては、水槽8及び遮音部材9の縦断面を模式的に示している。
【0014】
発振器1は、受波電圧感度測定で使用する入力信号を生成する。入力信号は、パルス波である。ここで、パルス波の周波数は、パルス幅が、後述する直接波と反射波の到達時間の時間差に収まるように設定する。即ち、入力信号の周波数範囲の下限値は、直接波と反射波の到達時間の時間差に応じて設定する。
【0015】
パワーアンプ2は、発振器1で生成された入力信号を増幅する。送波器3は、水槽8の水中に設けられ、パワーアンプ2で増幅された入力信号を音波に変換して水中に送波する。送波器3は、受波電圧感度の測定において、基準送波器として機能する。減衰器4は、パワーアンプ2で増幅された入力信号を、算出部7が壊れないような強度まで減衰し、減衰した入力信号を算出部7に出力する。
【0016】
受波器5は、水槽8の水中に設けられ、送波器3から送波された音波を受波し、電圧信号に変換して、出力信号をプリアンプ6に出力する。受波器5は、例えば、電気音響変換素子により構成される音響センサである。受波器5は、受波電圧感度の測定において、供試受波器として機能する。プリアンプ6は、受波器5から出力された出力信号を算出部7が測定できる程度まで増幅し、増幅した出力信号を算出部7に出力する。
【0017】
算出部7は、減衰器4で減衰された入力信号とプリアンプ6で増幅された出力信号とに基づき、直接波と反射波とを時間的に分離した後、受波電圧感度を算出する。具体的には、算出部7は、減衰器4からの入力信号とプリアンプ6からの出力信号とを比較して、出力信号に重畳している反射波のパルス成分を分離して、直接波のパルス成分を抽出する。そして、算出部7は、減衰器4からの入力信号、減衰器4の減衰量、直接波のパルス成分を抽出した出力信号、及びプリアンプ6の増幅量から、送波器3(基準送波器)の入力電圧と受波器5(供試受波器)の出力電圧を計算し、受波器5の受波電圧感度を算出する。
【0018】
水槽8は、水等の液体を貯留するものであり、壁面及び底面に吸音部材81が設けられている。吸音部材81は、例えば、音波を吸収する吸音材を山形に形成した吸音楔である。水槽8は、いわゆる無響水槽であり、送波器3から送波された音波の水槽8の底面及び壁面での反射を低減する。
【0019】
遮音部材9は、音波を遮音(遮蔽)する部材により構成される。遮音部材9は、例えば平板状に形成され、水槽8内の送波器3と受波器5の間に配置されている。遮音部材9は、送波器3から受波器5に向かう直接波を通過させる開口部91が設けられている。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る測定装置100の遮音部材9の配置を示す斜視図である。
図2に示すように、遮音部材9の開口部91は、送波器3と受波器5とを結ぶ直線Lと交差する位置に設けられている。また、遮音部材9は、上端部92が水面82より上方に配置されている。また、遮音部材9は、下端部93が送波器3及び受波器5より下方に配置されている。例えば、下端部93が水槽8の底面に配置されている。また、遮音部材9は、側部94が水槽8の壁面に配置されている。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る測定装置100の遮音部材9の配置を示す平面図である。
図3においては、送波器3、受波器5及び遮音部材9を、鉛直方向から見た場合の配置を模式的に示している。
図3に示すように、遮音部材9は、鉛直方向から見た場合に、送波器3と受波器5との間に、送波器3と受波器5とを結ぶ直線Lに交差する方向Dに延びて設けられている。例えば、遮音部材9は直線Lと方向Dとが直交するように設けられている。また、遮音部材9は、鉛直方向から見た場合に、送波器3と受波器5との間の中間位置Cに配置されている。即ち、送波器3から遮音部材9までの距離d1と、受波器5から遮音部材9までの距離d2は、同じ距離である。
【0022】
図4は、実施の形態1に係る測定装置100の遮音部材9の開口部91を示す要部平面図である。
図4においては、遮音部材9を、送波器3と受波器5とを結ぶ直線L方向から見た場合の開口部91を示している。
図4に示すように、送波器3と受波器5とを結ぶ直線L方向に見た場合、遮音部材9の開口部91は、送波器3及び受波器5が開口範囲内に含まれるように形成されている。遮音部材9は、送波器3から受波器5に向かう直接波を開口部91によって通過させる。
【0023】
なお、本実施の形態1においては、遮音部材9の開口部91の形状が矩形である構成を説明するが、これに限定されない。開口部91の形状は、円形、楕円形、多角形、又は任意の形状で良い。即ち、送波器3から受波器5に向かう直接波を開口部91によって通過させる形状であれば良い。
【0024】
なお、本実施の形態1においては、遮音部材9は、例えば平板状に形成された構成を説明するが、これに限定されない。遮音部材9は、例えば、軟質の材料によりシート状又はカーテン状に形成した構成でも良い。また、遮音部材9は、音波の通過を一定程度低減させるものであれば良く、音波の通過を完全に遮音するものに限定されない。また、遮音部材9の材質は、音波の通過を低減させる任意の材質で良く、例えば、樹脂、木材、若しくは金属、又はこれらを組み合わせた材質を用いることができる。また、遮音部材9は、音波を吸収する吸収材で構成してもよい。
【0025】
次に、測定装置100の測定方法の手順を説明する。
まず、水槽8内に遮音部材9を設置する。次に、送波器3と受波器5とを水槽8の水中に設置する。この際、送波器3と受波器5と結ぶ直線が遮音部材9の開口部91を通るよう、送波器3と受波器5とを配置する。その後、発振器1を駆動して送波器3から送波された音波を、受波器5が受波する。そして、算出部7により、受波器5の受波電圧感度を算出する。
【0026】
なお、送波器3と受波器5とを水槽8内に設置した後に、遮音部材9を水槽8内に設置する手順でも良い。また、水槽8内に水を貯留する前に、送波器3、受波器5、及び遮音部材9の全部又は一部を配置し、その後に水を水槽8内に貯留してもよい。
【0027】
次に、送波器3から送波された音波の伝搬の動作について、遮音部材9を設けない比較例における音波の伝搬の動作を説明した後、本実施の形態1における測定装置100の音波の伝搬の動作を説明する。
【0028】
図5は、比較例に係る測定装置100bの音波の伝搬の動作を説明する図である。
図5に示すように、比較例に係る測定装置100bは、遮音部材9を備えていない構成である。その他の構成は、本実施の形態1に係る測定装置100と同じである。
【0029】
送波器3は、パワーアンプ2から入力信号が入力されると、入力信号を音波に変換して水中に送波する。送波器3から送波された音波は、球面拡散し、水槽8内の水中を伝搬する。送波器3から受波器5への直接波は、送波器3と受波器5とを結ぶ直線上の伝搬経路Wdによって伝搬する。
【0030】
一方、送波器3から水面82方向へ向かった音波は、水面82で反射する。水面82で反射した音波の一部は、受波器5によって反射波として受波される。即ち、受波器5が受波する反射波は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr0によって伝搬する。なお、水面82における反射は、全反射とみなせるため、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr0の反射位置は、送波器3と受波器5との間の中間位置となる。
【0031】
比較例に係る測定装置100bでは、直接波と反射波との時間差は、直接波の伝搬経路Wdの距離と反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr0の距離との距離差を、水中における音波の伝搬速度で除した値となる。
【0032】
次に、本実施の形態1に係る測定装置100の音波の伝搬の動作を説明する。
図6及び
図7は、実施の形態1に係る測定装置100の音波の伝搬の動作を説明する図である。
送波器3は、パワーアンプ2から入力信号が入力されると、入力信号を音波に変換して水中に送波する。送波器3から送波された音波は、球面拡散し、水槽8内の水中を伝搬する。
図6に示すように、送波器3から水面82方向へ向かった音波のうち、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0によって伝搬する音波は、遮音部材9によって遮音される。即ち、遮音部材9は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr
0上に設けられ、この伝搬経路Wr
0を伝搬する当該音波を遮音する。
【0033】
一方、送波器3から受波器5に向かう直接波は、遮音部材9の開口部91を通過して、伝搬経路Wdによって伝搬する。これにより、受波器5は、遮音部材9がない場合と同様に、直接波を受波することができる。
【0034】
図7に示すように、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82での反射と開口部91での回折により、伝搬経路Wr
1を伝搬して受波器5に受波される。即ち、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82で反射して遮音部材9の開口部91へ向かう。そして、開口部91の縁部で音波の回折現象が生じ、受波器5まで伝搬する。この反射及び回折を経た伝搬経路Wr
1の距離は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0よりも長い距離となる。
【0035】
本実施の形態1に係る測定装置100では、直接波と反射波との時間差は、直接波の伝搬経路Wdの距離と反射及び回折を経た伝搬経路Wr1の距離との距離差を、水中における音波の伝搬速度で除した値となる。即ち、上述した比較例よりも、直接波と反射波との時間差が長くなる。
【0036】
以上のように本実施の形態1においては、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr0上に、音波を遮音する遮音部材9を設けた。このため、遮音部材9を設けない場合と比較して、直接波と反射波の到達時間の時間差を長くすることができる。よって、遮音部材9を設けない場合と比較して、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる。
【0037】
また、本実施の形態1においては、遮音部材9は、鉛直方向から見た場合に、送波器3と受波器5との間に、送波器3と受波器5とを結ぶ直線Lに交差する方向Dに延びて設けられている。また、遮音部材9は、上端部92が水面82より上方に配置され、下端部93が送波器3及び受波器5より下方に配置されている。このため、送波器3から送波された音波のうち、反射面で反射して受波器5へ至る反射波を低減することができる。
【0038】
また、本実施の形態1においては、遮音部材9は、送波器3と受波器5とを結ぶ直線Lと交差する位置に、送波器3から受波器5に向かう直接波を通過させる開口部91が設けられている。このため、受波器5は送波器3からの直接波を受波することができる。
【0039】
また、本実施の形態1においては、遮音部材9は、鉛直方向から見た場合に、送波器3と受波器5との間の中間位置Cに配置される。このため、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr0を伝搬する反射波を遮音することができる。よって、受波器5が受波する反射波は、反射及び回折を経た伝搬経路Wr1を伝搬した反射波となり、遮音部材9を設けない場合と比較して、直接波と反射波の到達時間の時間差を長くすることができる。
【0040】
また、本実施の形態1においては、送波器3、受波器5及び遮音部材9は、壁面及び底面に吸音部材81が設けられた水槽8内に配置されている。このため、送波器3から送波された音波の水槽8の底面及び壁面での反射を低減することができる。
【0041】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る測定装置100を示すブロック構成図である。
図9は、実施の形態2に係る遮音部材9の開口部91を示す要部斜視図である。
なお、本実施の形態2においては、実施の形態1で説明した構成と同一の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図8及び
図9に示すように、本実施の形態2に係る測定装置100の遮音部材9は、開口部91の縁部が送波器3側に湾曲する湾曲部95を有する。例えば、湾曲部95は、開口部91の上縁部と下縁部が、送波器3側に湾曲するように形成されている。なお、湾曲部95は、開口部91の上縁部のみに形成しても良い。また、湾曲部95は、開口部91の上縁部、下縁部、左右の縁部の全てに設けても良い。
【0043】
次に、本実施の形態2に係る測定装置100の音波の伝搬の動作を説明する。
図8に示すように、送波器3から水面82方向へ向かった音波のうち、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0によって伝搬する音波は、遮音部材9によって遮音される。一方、送波器3から受波器5に向かう直接波は、遮音部材9の開口部91を通過して、伝搬経路Wdによって伝搬する。
【0044】
図10は、実施の形態2に係る測定装置100の音波の伝搬の動作を説明する図である。
図10に示すように、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82での反射と開口部91での回折により、伝搬経路Wr
2を伝搬する。即ち、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82で反射して遮音部材9の開口部91へ向かう。そして、開口部91の湾曲部95で音波の回折現象が生じる。ここで、回折現象は、部材のエッジ部分で発生し、音波の周波数が低いほど回折が顕著に生じる。本実施の形態2においては、湾曲部95は送波器3側に湾曲しているため、回折によって受波器5まで伝搬する音波が低減する。
【0045】
以上のように本実施の形態2においては、遮音部材9は、開口部91の縁部が送波器3側に湾曲する湾曲部95を有する。このため、遮音部材9の開口部91での回折を抑制することができる。よって、遮音部材9の開口部91で回折した後に、受波器5に受波される反射波を低減することができる。
【0046】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る測定装置100を示すブロック構成図である。
なお、本実施の形態3においては、実施の形態1及び2で説明した構成と同一の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図11に示すように、本実施の形態3に係る測定装置100の遮音部材9は、上端部92が水面82より上方に配置され、下端部93が送波器3及び受波器5より上方に配置されている。また、遮音部材9は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr
0上に設けられている。なお、遮音部材9は、開口部91が形成されていない構成である。
【0048】
このような構成により、上記実施の形態1と同様に、送波器3から水面82方向へ向かった音波のうち、伝搬経路Wr0によって伝搬する音波は、遮音部材9によって遮音される。また、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82での反射及び遮音部材9の下端部93での回折により、伝搬経路Wr31を伝搬して受波器5に受波される。この反射及び回折を経た伝搬経路Wr31の距離は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr0よりも長い距離となる。
【0049】
また、水槽8は、壁面及び底面に吸音部材81が設けられている。このため、送波器3から水槽8の底面に向かった音波(伝搬経路Wr32)、及び送波器3から水槽8の壁面に向かった音波(図示せず)は、吸音部材81によって吸音される。このため、水槽8の壁面及び底面での反射が抑制される。
【0050】
一方、送波器3から受波器5に向かう直接波は、遮音部材9の下端部93の下方を通過して、伝搬経路Wdによって伝搬する。これにより、受波器5は、直接波を受波することができる。
【0051】
以上のように本実施の形態3においては、遮音部材9は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr0上に設けられている。また、遮音部材9の上端部92が水面82より上方に配置され、下端部93が送波器3及び受波器5より上方に配置される。このため、遮音部材9を設けない場合と比較して、直接波と反射波の到達時間の時間差を長くすることができる。よって、遮音部材9を設けない場合と比較して、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる。
【0052】
実施の形態4.
図12及び
図13は、実施の形態4に係る測定装置100の遮音部材9の配置を示す図である。
なお、本実施の形態4においては、実施の形態1~3で説明した構成と同一の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
上記実施の形態1~3では、遮音部材9が送波器3と受波器5の中間位置に配置された構成を説明したが、これに限定されない。遮音部材9は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr0上に設けられ、伝搬経路Wr0を伝搬する音波を遮音する構成であれば良い。
【0054】
例えば、
図12に示すように、遮音部材9は、送波器3側へ寄った位置に配置してもよい。この配置においても、遮音部材9は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0を伝搬する反射波を遮音することができる。また、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82での反射及び遮音部材9の下端部93での回折により、伝搬経路Wr
41を伝搬して受波器5に受波される。この反射及び回折を経た伝搬経路Wr
41の距離は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0よりも長い距離となる。
【0055】
また例えば、
図13に示すように、遮音部材9は、受波器5側へ寄った位置に配置してもよい。この配置においても、遮音部材9は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0を伝搬する反射波を遮音することができる。また、送波器3から水面82方向へ向かった音波の一部は、水面82での反射及び遮音部材9の下端部93での回折により、伝搬経路Wr
42を伝搬して受波器5に受波される。この反射及び回折を経た伝搬経路Wr
42の距離は、反射波の経路が最短となる伝搬経路Wr
0よりも長い距離となる。
【0056】
以上のように本実施の形態4においては、遮音部材9は、送波器3から送波された後に水面82で反射して受波器5に至る音波の伝搬経路Wr0上に設けられている。このため、遮音部材9を設けない場合と比較して、直接波と反射波の到達時間の時間差を長くすることができる。よって、遮音部材9を設けない場合と比較して、測定が可能となる音波の周波数範囲の下限値を低くすることができる。
【0057】
(変形例)
上記実施の形態1~4では、送波器3及び受波器5を、水槽8内に配置して、受波器5の受波電圧感度を測定する水槽試験での利用について説明したが、これに限定されない。例えば海での試験において、送波器3及び受波器5を海中に配置して、受波電圧感度を測定する場合においても、遮音部材9を設けることによって、海面での反射波の影響を抑制した測定を行うことが可能である。
【0058】
また、上記実施の形態1~4では、受波器5は、例えば、電気音響変換素子により構成される音響センサである場合を説明したが、これに限定されず、電気音響変換以外の原理を用いた音響センサに対しても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 発振器、2 パワーアンプ、3 送波器、4 減衰器、5 受波器、6 プリアンプ、7 算出部、8 水槽、9 遮音部材、81 吸音部材、82 水面、91 開口部、92 上端部、93 下端部、94 側部、95 湾曲部、100 測定装置、100b 測定装置。