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特開2024-146377分光干渉判定方法、及び分光干渉判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146377
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】分光干渉判定方法、及び分光干渉判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/73 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N21/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059232
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】323001683
【氏名又は名称】アサヒプリテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田村 信也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊太
(72)【発明者】
【氏名】稲木 隼人
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA01
2G043BA02
2G043BA03
2G043BA04
2G043CA02
2G043EA08
2G043FA06
2G043KA03
2G043NA01
2G043NA06
2G043NA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉であっても、分析者の熟練度に依存することなく自動判定できる方法を提供する。
【解決手段】判定対象元素の標準試料と、判定に供する測定試料との波形形状の乖離度合が所定の範囲を満たす測定波長のデータを、複数の異なる測定波長から絞り込む工程を行うことにより、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉であっても、分析者の熟練度に依存することなく自動判定できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する、データ取得工程(S1)と、
前記n個の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する、乖離スコア算出工程(S2)と、
前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内にない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する、第1の分光干渉判定工程(S3)と、
前記n個の原子分光分析データから前記第1の分光干渉判定工程(S3)によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データのうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、前記判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、前記判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する、影響度算出工程(S6)と、
前記影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、前記測定波長(b)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する、第2の分光干渉判定工程(S7)と、を含む、分光干渉判定方法。
【請求項2】
前記判定対象元素が、Au、Ag、Pd、Rh、及びPtからなる群より選択される元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定対象元素が、Cr、Cu、Sn、Hg、Pb、Ru、Ti、Ba、Cd、Ce、Co、Er、Fe、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Re、Sm、Te、Zr、In、Y、Al、及びZnからなる群より選択される元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定試料が、低濃度金属元素と高濃度金属元素とを含み、
前記低濃度金属元素及び高濃度金属元素のうち、いずれか一方が前記判定対象元素、いずれか他方が前記干渉候補元素であり、
前記高濃度金属元素の濃度が、前記低濃度金属元素の濃度の8倍重量以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記データ取得工程(S1)が、
判定対象元素を含む測定試料についてN(N≧3の整数)種類の異なる測定波長で測定したN個の原子分光分析データを読み込む工程(S11)と、
前記N個の原子分光分析データから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択する、内標準チェック工程(S12)と、
前記工程(S12)で選択されたデータから、前記判定対象元素の測定濃度が外れ値に該当しないデータを選択する、濃度外れ値判定工程(S13)と、
前記工程(S12)又は前記工程(S13)で選択されたデータが、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいることを判定する、検出限界判定工程(S14)と、
前記工程(S14)を経た、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいるデータから、前記判定対象元素の測定濃度が検量線範囲以内であるデータを選択する検量線判定工程(S15)と、
前記工程(S15)で選択されたデータから、前記判定対象元素の検出強度がブランク強度と有意差が認められるデータを選択することで、前記n個の原子分光分析データを取得する、有効強度判定工程(S16)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記乖離スコア算出工程(S2)において、前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す前記乖離スコア[Ps]が、平均二乗誤差の負の常用対数として算出され、
前記第1の分光干渉判定工程において、前記乖離スコア[Ps]の前記所定範囲が2.5超である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記干渉候補元素が、前記対象波長から低波長側及び高波長側の両方に0.009~0.021nm以内の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲以内で検出される元素に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記影響度算出工程(S6)において、前記影響度[Pe]が、(前記干渉候補元素の濃度×前記干渉候補元素のピーク強度)/(前記判定対象元素の濃度×前記判定対象元素の前記対象波長でのピーク強度)により算出される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記干渉候補元素のピーク強度を決定する、干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)を含み、
前記工程(S5)が、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが不一致である場合に、
前記対象波長と前記干渉候補元素のピーク波長との距離が長いほど大きく設定される補正量を用い、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]に対し、前記補正量に応じて小さくなるように補正をかけることで前記干渉候補元素のピーク強度を算出する、第1補正工程(S52)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記干渉候補元素のピーク強度を決定する、干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)を含み、
前記工程(S5)が、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが一致する場合に、
前記干渉候補元素のピーク強度を、算出強度値と、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]とのうち、いずれか大きいほうの値として得る、第2補正工程(S53)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記判定対象元素の前記対象波長を、該当する複数の波長から所定の優先順位[Pо]で選択する、対象波長選択工程(S4)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する、データ取得部と、
前記n個の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する、乖離スコア算出部と、
前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内にない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する、第1の分光干渉判定部と、
前記n個原子分光分析データから前記第1の分光干渉判定部によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データのうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、前記判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、前記判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する、影響度算出部と、及び
前記影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、前記測定波長(b)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する、第2の分光干渉判定部と、を含む、分光干渉判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光干渉判定方法、及び分光干渉判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析装置は、アルゴンプラズマを発光光源として使用し、霧状にした溶液サンプルをプラズマに導入することで元素固有のスペクトルを発光させ、スペクトルの発光波長から元素を特定し、スペクトルの発光強度から元素を定量する。
【0003】
ICP発光分光分析においては、元素の発光スペクトル線の数が非常に多いため、対象元素のスペクトル線に、近傍の発光波長を有する共存元素のスペクトル線が重なる現象、つまり分光干渉が生じる。分光干渉の影響を受けた対象元素の見かけの発光強度は、実際よりも見かけ上大きくなる。このような見かけの発光強度に基づいて対象元素の濃度を算出すると、実際の濃度より高くなる問題がある。ICP発行分光分析では、上記の問題への対処法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、試料の測定により取得された目的元素や共存元素のスペクトル強度をバックグラウンド補正することで純粋なスペクトルのピーク高さを算出し、そのピーク高さ(上記「バックグラウンド補正」を施した強度値)を用いて、濃度(定量値)に変換することなく干渉量を算出し、補正する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2では、あらかじめ定量する目的元素に対し、ICP発光分光分析に使用する光の波長と、目的元素に係る測定結果に与える共存元素の単位濃度あたりの分光干渉度合いとの関係を表すデータを取得し、分光干渉度合いの合計が許容範囲内か否かを判定し、許容範囲内のものを測定値として使用可能とする方法が開示されている。
【0006】
特許文献3では、分光干渉による影響が少なく感度の高いピーク波長を準備し、優先順位をつけ、その複数のピーク波長を分析値の近いもの同士へと仲間分けし、一つの仲間に属するピーク波長の数が最も多い仲間を選択し、該仲間中のピーク波長のうち最も前記優先順位が高いピーク波長を選択して分析値を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-275892号公報
【特許文献2】特開2021-156720号公報
【特許文献3】特開2022-150584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ICP発光分光分析の主な用途として、金属の定量分析(例えば、完成品が要求仕様を満足しているかの確認、他社品の調査、製品不具合時の成分比確認、開発品の化学的評価等の目的で用いられる)、清浄度測定(例えば、電子基板などの清浄度試験における汚染度測定、洗浄工程の効果確認、残留塩類の定量化等の目的で用いられる)、その他元素分析(例えば、未知化合物の精密定量、開発品又は不具合品の成分比確認、リサイクル品のレアメタル又は有害物の存在の確認等の目的で用いられる)がある。
【0009】
一方、レアメタルのように希少な元素が、ハイテク製品及び省エネ製品等への使用で需要が高まっている。さらに、レアメタルの価格の乱高下リスクを背景に、使用済み製品又は廃棄物からのレアメタルのリサイクルが、極めて重要な取り組みとして認識されている。このような取り組みにおいて、レアメタルの分離回収の方法について技術開発が活発に行われているが、使用済み製品又は廃棄物から得られるレアメタル廃液又はその粗精製分離物に対する元素の定量手法については十分に検討されていない。
【0010】
ここで、ICP発光分光分析における分光干渉に対するこれまでの対処法では、既知の分光干渉パターンをデータベース化した分光干渉データを用いて分光干渉度合いを判断することが前提となっている。しかしながら、このようなデータベースには、予め想定されている分光干渉データしか収容されていないため、想定されていない分光干渉の影響を判定することはできず、判定可能な試料が制限される。
【0011】
本発明者は、既存の分光干渉データベースを用いて、レアメタル廃液に含まれる全元素のICP発光分光分析による定量を試みたところ、多くの想定外の分光干渉の影響が生じており、既存の分光干渉データベースでは分光干渉判定できず定量に支障する問題に直面した。
【0012】
既存の分光干渉データベースで対応できない分光干渉については、人が判定する必要がある。人による判定では、波形の形状及び/又は検量線からの濃度等を考慮して分光干渉の有無を臨機応変に判断できる。しかしながら、人による分光干渉判定の精度は、分析者の熟練度に大きく依存するため、均質性を担保することが出来ないという問題がある。さらに、試料に含まれる元素組成が複雑であるほど工数が多くなるため、逐一人が判断するのは定常作業として現実的ではないという問題もある。
【0013】
このような既存の分光干渉データベースで対応できない分光干渉がもたらす問題は、レアメタル廃液だけでなく、当該データベースで想定されていない元素組成を有するあらゆる試料で想定される。
【0014】
そこで、本発明は、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉であっても、分析者の熟練度に依存することなく自動判定できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討の結果、判定対象元素の標準試料と、判定に供する測定試料との波形形状の乖離度合が所定の範囲を満たす測定波長のデータを、複数の異なる測定波長から絞り込む工程を行うことにより、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉であっても、分析者の熟練度に依存することなく自動判定できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0016】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する、データ取得工程(S1)と、
前記n個の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する、乖離スコア算出工程(S2)と、
前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内にない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する、第1の分光干渉判定工程(S3)と、
前記n個の原子分光分析データから前記第1の分光干渉判定工程(S3)によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データのうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、前記判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、前記判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する、影響度算出工程(S6)と、
前記影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、前記測定波長(b)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する、第2の分光干渉判定工程(S7)と、を含む、分光干渉判定方法。
項2. 前記判定対象元素が、Au、Ag、Pd、Rh、及びPtからなる群より選択される元素を含む、項1に記載の方法。
項3. 前記判定対象元素が、Cr、Cu、Sn、Hg、Pb、Ru、Ti、Ba、Cd、Ce、Co、Er、Fe、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Re、Sm、Te、Zr、In、Y、Al、及びZnからなる群より選択される元素を含む、項1又は2に記載の方法。
項4. 前記測定試料が、低濃度金属元素と高濃度金属元素とを含み、
前記低濃度金属元素及び高濃度金属元素のうち、いずれか一方が前記判定対象元素、いずれか他方が前記干渉候補元素であり、
前記高濃度金属元素の濃度が、前記低濃度金属元素の濃度の8倍重量以上である、項1~3のいずれかに記載の方法。
項5. 前記データ取得工程(S1)が、
判定対象元素を含む測定試料についてN(N≧3の整数)種類の異なる測定波長で測定したN個の原子分光分析データを読み込む工程(S11)と、
前記N個の原子分光分析データから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択する、内標準チェック工程(S12)と、
前記工程(S12)で選択されたデータから、前記判定対象元素の測定濃度が外れ値に該当しないデータを選択する、濃度外れ値判定工程(S13)と、
前記工程(S12)又は前記工程(S13)で選択されたデータが、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいることを判定する、検出限界判定工程(S14)と、
前記工程(S14)を経た、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいるデータから、前記判定対象元素の測定濃度が検量線範囲以内であるデータを選択する検量線判定工程(S15)と、
前記工程(S15)で選択されたデータから、前記判定対象元素の検出強度がブランク強度と有意差が認められるデータを選択することで、前記n個の原子分光分析データを取得する、有効強度判定工程(S16)とを含む、項1~4のいずれかに記載の方法。
項6. 前記乖離スコア算出工程(S2)において、前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す前記乖離スコア[Ps]が、平均二乗誤差の負の常用対数として算出され、
前記第1の分光干渉判定工程において、前記乖離スコア[Ps]の前記所定範囲が2.5超である、項1~5のいずれかに記載の方法。
項7. 前記干渉候補元素が、前記対象波長から低波長側及び高波長側の両方に0.009~0.021nm以内の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲以内で検出される元素に設定される、項1~6のいずれかに記載の方法。
項8. 前記影響度算出工程(S6)において、前記影響度[Pe]が、(前記干渉候補元素の濃度×前記干渉候補元素のピーク強度)/(前記判定対象元素の濃度×前記判定対象元素の前記対象波長でのピーク強度)により算出される、項1~7のいずれかに記載の方法。
項9. 前記干渉候補元素のピーク強度を決定する、干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)を含み、
前記工程(S5)が、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが不一致である場合に、
前記対象波長と前記干渉候補元素のピーク波長との距離が長いほど大きく設定される補正量を用い、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]に対し、前記補正量に応じて小さくなるように補正をかけることで前記干渉候補元素のピーク強度を算出する、第1補正工程(S52)を含む、項8に記載の方法。
項10. 前記干渉候補元素のピーク強度を決定する、干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)を含み、
前記工程(S5)が、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが一致する場合に、
前記干渉候補元素のピーク強度を、算出強度値と、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]とのうち、いずれか大きいほうの値として得る、第2補正工程(S53)を含む、項8又は9に記載の方法。
項11. 前記判定対象元素の前記対象波長を、該当する複数の波長から所定の優先順位[Pо]で選択する、対象波長選択工程(S4)を含む、項1~8のいずれかに記載の方法。
項12. 判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する、データ取得部と、
前記n個の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する、乖離スコア算出部と、
前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内にない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する、第1の分光干渉判定部と、
前記n個の原子分光分析データから前記第1の分光干渉判定部によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データのうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、前記判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、前記判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する、影響度算出部と、及び
前記影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、前記測定波長(b)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する、第2の分光干渉判定部と、を含む、分光干渉判定システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉であっても、分析者の熟練度に依存することなく自動判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の分光干渉判定方法の実施形態のフローチャートを示す。
図2図1の干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)のサブフローの一例を示す。
図3図1のデータ取得工程(S6)のサブフローの一例を示す。
図4】乖離スコア[Ps]の算出対象となる判定対象元素の測定波形と標準波形との組み合わせの例(乖離度合が小さい例)を示す。
図5】乖離スコア[Ps]の算出対象となる判定対象元素の測定波形と標準波形との組み合わせの例(乖離度合が大きい例)を示す。
図6】第1補正工程(S52)の対象となる判定対象元素のピークと干渉候補元素のピークとの位置関係の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.分光干渉判定方法
本発明の分光干渉判定方法は、データ取得工程、乖離スコア算出工程、及び第1の分光干渉判定工程を必須工程として含む。本発明の分光干渉判定方法の好ましい実施形態においては、さらに、影響度算出工程、及び第2の分光干渉判定工程を含む。本発明の分光干渉判定方法のより好ましい実施形態においては、対象波長選択工程、及び干渉候補元素のピーク強度決定工程をさらに含むことができ;データ取得工程は、内標準チェック工程、濃度外れ値判定工程、検出限界判定工程、検量線判定工程、及び有効強度判定工程をさらに含むことができ;干渉候補元素のピーク強度決定工程は、第1補正工程及び/又は第2補正工程を含むことができる。
【0020】
図1に、本発明の分光干渉判定方法の実施形態のフローチャートを示す。図1の実施形態は、データ取得工程(S1)、乖離スコア算出工程(S2)、第1の分光干渉判定工程(S3)、対象波長選択工程(S4)、干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)、影響度算出工程(S6)、及び第2の分光干渉判定工程(S7)を含む。
【0021】
図2に、図1の干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)のサブフローの一例を示す。図2に例示されるピーク強度決定工程は、第1補正工程(S52)及び第2補正工程(S53)を含む。図3に、図1のデータ取得工程(S1)のサブフローの一例を示す。図3に例示されるデータ取得工程は、内標準チェック工程(S12)、濃度外れ値判定工程(S13)、検出限界判定工程(S14)、検量線判定工程(S15)、及び有効強度判定工程(S16)を含む。
【0022】
以下、図1~3のフローチャートを参照して、本発明の分光干渉判定方法の実施形態について詳述する。
【0023】
1-1.データ取得工程(S1)
データ取得工程(図1のS1)では、判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する。
【0024】
1-1-1.判定対象元素を含む測定試料
測定試料に含まれる判定対象元素としては、原子分光分析で測定可能な元素であれば特に限定されない。判定対象元素の具体例としては、Au、Ag、Pd、Rh、及びPtからなる群より選択される元素、並びに/若しくは、Cr、Cu、Sn、Hg、Pb、Ru、Ti、Ba、Cd、Ce、Co、Er、Fe、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Re、Sm、Te、Zr、In、Y、Al、及びZnからなる群より選択される元素が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる測定試料は、既存の分光干渉データベースで対応できない分光干渉が特に顕著に認められる試料として、低濃度金属元素と高濃度金属元素とを含み、前記低濃度金属元素及び高濃度金属元素のうち、いずれか一方が前記判定対象元素、いずれか他方が前記干渉候補元素であり、且つ前記高濃度金属元素の濃度が、前記低濃度金属元素の濃度の8倍重量以上又は10倍重量以上、好ましくは20倍重量以上、30倍重量以上、40倍重量以上、50倍重量以上、60倍重量以上、又は70倍重量以上、より好ましくは80倍重量以上、さらに好ましくは90倍重量以上、一層好ましくは100倍重量以上であるものが好ましい。
【0026】
本発明で用いられる測定試料のより具体的な例としては、都市鉱山(つまり、廃棄された家電製品及び工業製品等の中に存在する金属資源)のリサイクル過程で発生する処理液、めっき廃液、貴金属の湿式精錬における処理液等が挙げられる。
【0027】
1-1-2.原子分光分析データの数
原子分光分析データ数n(n≧2の整数)は、測定波長数n(n≧2の整数)に応じて定まるが、本発明の分光干渉判定方法の終了までに再測定が決定されることで振り出しに戻る確率を低減する観点から、多い方が好ましい。従って、原子分光分析データ数nとしては、好ましくは≧3、より好ましくはn≧4、さらに好ましくはn≧5の整数が挙げられる。
【0028】
1-1-3.原子分光分析データの種類
本発明において、原子分光分析データは、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析測定によるデータであってもよいし、それ以外の分光分析法(例えば、原子吸光分光
分析法等)測定によるデータであってもよい。
【0029】
1-1-4.原子分光分析データの内容
原子分光分析データの内容としては、測定濃度データを取得可能な内容であれば特に限定されない。当該測定濃度は、測定対象元素のピークの強度が共存元素の分光干渉によって上乗せされることで、真の濃度よりも見かけ上大きくなっている可能性があるものであり、所謂「見かけ濃度」を意味する。
【0030】
1-1-5.原子分光分析データの形式
取得される原子分光分析データ形式については特に限定されず、原子分光分析測定の結果を取得できる任意のソフトウェアによる出力形式が挙げられる。ソフトウェアの具体例としては、例えばICP発光分光分析測定結果の取得においては、Agilent ICP Expert systemが挙げられる。
【0031】
1-1-6.n個の原子分光分析データの取得のために行われ得る前処理
n個の原子分光分析データは、原子分光分析測定装置により測定されたデータそのものであってもよいし、予め前処理として任意の判定処理を経たものであってもよい。例えば、本発明の好ましい実施形態においては、n個の原子分光分析データは、図3に示される前処理(つまり、N個の原子分光分析データ読み込み工程(S11)、内標準チェック工程(S12)、濃度外れ値判定工程(S13)、検出限界判定工程(S14)、検量線判定工程(S15)、及び有効強度判定工程(S16))に供されたものとして取得してもよい。
【0032】
1-1-6-1.N個の原子分光分析データ読み込み工程(S11)
この前処理を行う場合、まず、判定対象元素を含む測定試料についてN(N≧2、但しN≧n、好ましくはN≧3、より好ましくはN≧4、さらに好ましくはN≧5の整数)種類の異なる測定波長で測定したN個の原子分光分析データを読み込む(S11)。これによって、N個の原子分光分析データから測定濃度(見かけ濃度)データを取得する。
【0033】
1-1-6-2.内標準チェック工程(S12)
N個の原子分光分析データを読み込んだ(S11)後、内標準チェック工程(S12)では、N個の原子分光分析データから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択する。有効範囲は適宜設定すればよい。具体的には、内標準補正比が所定の有効範囲外であるか否かが判断され(S12)、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっていない場合(S12のYes)は、当該測定波長でのデータは除外され(S121)、そうでない場合(S12のNo)は、次の工程に進む。N個の原子分光分析データから当該データが除外され(S121)た後、残存データ数N1がゼロであるか否かが判断され(S122)、残存データ数N1がゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S122のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S122のNo)は次の工程に進む。内標準元素としては、発光強度が大きく、測定元素との分光干渉がなく、またサンプル中に含まれない元素であれば、特に限定されない。また、原子線を測定する際には原子線の内標準元素を選択し、イオン線を測定する際にはイオン線の内標準元素を選択することが好ましい。
【0034】
1-1-6-3.濃度外れ値判定工程(S13)
まず、前記工程(S12)による残存データ数N1が3未満であるか否かが判断される(S130)。残存データ数N1が3未満でない場合(S130のNo)、濃度外れ値判定工程(S13)が行われ、そうでない場合(S130のYes)、本工程をスキップする。
【0035】
濃度外れ値判定工程(S13)では、前記工程(S12)で選択されたN1個のデータから、判定対象元素の測定濃度が外れ値に該当しないデータを選択する。外れ値に該当するか否かは、測定濃度が正規分布範囲外であるか否かに基づいて判断することができ、その具体的な手法は、当業者が適宜決定することができる。例えば、各測定波長での濃度を元に、測定波長ごとに統計量を算出し、算出された統計量が臨界値を超えている測定波長でのデータを、外れ値を含むデータと判定できる。より具体的な例において、統計量は、Smirnov-Grubbs検定法に基づき、以下の式1に基づいて算出できる。
【数1】
【0036】
本工程では、具体的には、判定対象元素の測定濃度が正規分布範囲外であるか否かが判断され(S13)、測定濃度が正規分布範囲外である場合(S13のYes)は、当該測定波長でのデータは除外される(S131)、そうでない場合(S13のNo)は、次の工程に進む。N1個の原子分光分析データから当該データが除外され(S131)た後、残存データ数N2がゼロであるか否かが判断され(S132)、残存データ数N2がゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S132のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S132のNo)は次の工程に進む。
【0037】
1-1-6-4.濃度の検出限界判定工程(S14)
前記工程(S12)による残存データ数N1が3未満である場合(S130のYes)、及び前記工程(S13)による残存データ数N2がゼロでない場合(S13のNo)、濃度の検出限界判定工程(S14)が行われる。濃度の検出限界判定工程(S14)では、前記工程(S12)又は前記工程(S13)で上述のように選択されたデータが、判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいることを判定する。具体的には、判定対象元素について検出下限濃度以上の測定濃度を示すデータ数が、残存データ数(前記工程(S12)により残存したデータ数N1又は前記工程(S13)により残存したデータ数N2)の半分未満か否かが判断され(S14)、検出下限濃度以上の測定濃度を示すデータ数が残存データ数(N1又はN2)の半分未満である場合(S14のYes)は、判定対象元素が検出下限未満であると判定し(S141)、判定処理を終了する。検出下限濃度以上の測定濃度を示すデータ数が残存データ数(N1又はN2)の半分以上である場合(S14のNo)は、次の工程に進む。
【0038】
検出下限濃度については適宜設定することができるが、例えば0.01mg/L、好ましくは0.05mg/Lに設定することができる。
【0039】
1-1-6-5.検量線判定工程(S15)
検量線判定工程(S15)では、前記工程(S14)を経た、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいるデータから、判定対象元素の測定濃度が検量線範囲以内であるデータを選択する。具体的には、判定対象元素の検出強度が検量線の範囲(つまり、検量線の最低濃度以上最大濃度以下)を超えているか否かが判断され(S15)、検出強度が検量線の範囲を超えている場合(S15のYes)、当該測定波長でのデータは除外され(S151)、そうでない場合(S15のNo)は、次の工程に進む。N1個又はN2個の原子分光分析データから当該データが除外され(S151)た後、残存データ数N3がゼロであるか否かが判断され(S152)、残存データ数N3がゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S152のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S152のNo)は次の工程に進む。
【0040】
1-1-6-6.強度判定工程(S16)
強度判定工程(S16)では、前記工程(S15)で選択されたデータから、前記判定対象元素の検出強度がブランク強度と有意差が認められるデータを選択することで、前記n個の原子分光分析データを取得する。具体的には、判定対象元素の検出強度とブランク強度との有意差が無いか否かが判断され(S16)、判定対象元素の検出強度とブランク強度との有意差が無い場合(S16のYes)、当該測定波長でのデータは除外され(S161)、そうでない場合(S16のNo)は、残存したデータを、n種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データとして取得終了する。N3個の原子分光分析データから当該データが除外され(S161)た後、残存データ数nがゼロであるか否かが判断され(S162)、残存データ数nがゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S162のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S162のNo)は、残存したデータを、n種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データとして取得終了する。取得されたn個の原子分光分析データは、乖離スコア算出工程(S2)に供される。
【0041】
1-2.乖離スコア算出工程(S2)
乖離スコア算出工程(図1のS2)では、前記複数の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する。
【0042】
図4および図5に、乖離スコア[Ps]の算出対象となる判定対象元素の測定波形Wmと標準波形Wsとの組み合わせを例示する。図4は標準波形Wsと測定波形Wmとの乖離度合が小さい例であり、図5は標準波形Wsと測定波形Wmとの乖離度合が大きい例である。乖離スコア[Ps]は、これらの乖離度合を示す数値である。
【0043】
乖離スコア[Ps]の算出方法としては特に限定されず、波形の乖離度合を評価する指標を算出できる任意の方法が採用される。波形の乖離度合を評価する指標の具体例としては、MSE(平均二乗誤差)、コサイン類似度等を利用する指標が挙げられる。
【0044】
波形の乖離度合を評価する指標として、MSE(平均二乗誤差)を利用する指標を用いる場合、乖離スコア[Ps]は、以下の式2に示す通り平均二乗誤差(MSE)の負の常用対数として算出することができる。
【数2】
【0045】
1-3.第1の分光干渉判定工程(S3)
第1の分光干渉判定工程(図1のS3)では、前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内にない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する。具体的には、上記工程(S2)で算出された乖離スコア[Ps]が所定範囲内でないか否かが判断され(S3)、乖離スコア[Ps]が所定範囲内でない場合(S3のYes)、一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合が大きく(つまり、判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が大きく)許容範囲外となるため、当該測定波長でのデータは除外され(S31)、そうでない(乖離スコア[Ps]が所定範囲内である)場合(S3のNo)は、次の工程に進む。n個の原子分光分析データから当該データが除外され(S31)た後、残存データ数n1がゼロであるか否かが判断され(S32)、残存データ数n1がゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S32のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S32のNo)は次の工程に進む。
【0046】
なお、乖離スコア[Ps]として、上記の平均二乗誤差(MSE)の負の常用対数を用いる場合、乖離スコア[Ps]が2.5超、好ましくは3.0超である場合を判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が大きく許容範囲外と判定することができる。この判定においては、判定対象元素の検量線に基づく濃度に関わらず、1種類の乖離スコア[Ps]を用いることができる。また、本発明の一実施形態においては、判定対象元素の検量線に基づく濃度に応じて乖離スコア[Ps]の基準を複数設けることもできる。この場合、具体的には、判定対象元素の検量線に基づく濃度が2mg/mL以上である場合、分光干渉度合が許容範囲外と判定する乖離スコア[Ps]の範囲を3.0超と設定することができ、判定対象元素の検量線に基づく濃度が2mg/mL未満である場合、分光干渉度合が許容範囲外と判定する乖離スコア[Ps]の範囲を2.5超と設定することができる。
【0047】
1-4.対象波長選択工程(S4)
対象波長選択工程(図1のS4)では、第1の分光干渉判定工程(S3)で選択されたn1個の原子分光分析データについて、判定対象元素の対象波長(つまり判定対象元素のピーク波長)を、該当する複数の波長から所定の優先順位[Pо]で選択することができる。優先順位[Pо]としては、デフォルトの順位を採用してもよいし、当業者が適宜設定した順位を用いてもよい。また、解析履歴を参照して、適宜順位を変更してもよい。
【0048】
1-5.干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)
干渉候補元素のピーク強度決定工程(図1のS5)では、n1個の原子分光分析データにおいて、干渉候補元素のピーク強度を決定する。
【0049】
1-5-1.干渉候補元素の選択
干渉候補元素の具体的な選択基準は、当業者が適宜決定することができる。本発明の好ましい実施形態においては、干渉候補元素としては、対象波長(判定対象元素のピーク波長)から低波長側及び高波長側の両方に0.009~0.021nm以内の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲以内で検出される元素を選択することができる。
【0050】
1-5-2.干渉候補元素のピーク強度の決定方法
干渉候補元素のピーク強度を決定する具体的な方法については特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。本発明の好ましい実施形態においては、干渉候補元素のピーク強度を決定する具体的な方法として、図2に示す処理を行うことができる。
【0051】
図2に示す処理においては、まず、判定対象元素のピークと干渉候補元素のピークとが一致か否かが判断され(S51)、一致である場合(S51のYes)は、第1補正工程(S53)を行い、不一致である場合(S51のNo)は、第2補正工程(S52)を行う。なお、ピークの一致とは、見かけ上1個のピークとして認められる態様をいい、見かけ上ピーク割れ又は肩ピークが認められる態様は該当しない。このため、ピークの一致は、見かけ上1個のピークとして認められる態様であれば、対象波長(判定対象元素のピーク波長)と干渉候補元素のピーク波長とが完全一致でなくてよい。
【0052】
1-5-2-1.第1補正工程(S52)
第1補正工程(図3のS52)では、干渉候補元素のピーク強度を、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]に対して補正をかけることによって算出する。ここで、干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]は、干渉検知幅内にある干渉候補元素であればどのようなものでも(対象波長(判定対象元素のピーク波長)からの距離にかかわらず)判定対象元素の測定濃度への影響度合いが同じである前提で設定されている強度であり、このような干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]は、通常の干渉判定プログラムに搭載されている。
【0053】
第1補正工程では、干渉候補元素による判定対象元素の測定濃度への影響度が、当該干渉候補元素のピーク波長と対象波長(判定対象元素のピーク波長)との距離が短いほど大きい(具体的には、図6に示すように、干渉候補元素のピーク波長から遠い干渉候補元素のピーク1と、近い干渉候補元素のピーク2とは、濃度が同程度であるにもかかわらず、ピーク2の方が、干渉候補元素のピークの見かけ濃度への影響度が大きい)ことを考慮し、その影響度に対応する量を補正する。具体的には、対象波長(判定対象元素のピーク波長)と干渉候補元素のピーク波長との距離が長いほど大きく設定される補正量を用い、当該干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]に対し、当該補正量に応じて小さくなるように補正をかけることで当該干渉候補元素のピーク強度を算出する。補正量としては、好ましくは、対象波長(判定対象元素のピーク波長)と干渉候補元素のピーク波長との距離(単位はpm)を用いることができ、当該補正量に応じて干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]が小さくなるように補正をかける方法としては、好ましくは、干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]を当該補正量(但し>0)で除する方法を用いることができる。
【0054】
1-5-2-2.第2補正工程(S53)
第2補正工程(図3のS53)では、干渉候補元素のピーク強度を、算出強度値と、干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]とのうち、いずれか大きいほうの値として得る。
【0055】
本発明においては、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉を判定するため、干渉候補元素とピーク波長が一致する判定対象元素の測定濃度に対して干渉候補元素が与える影響度を考慮する場合に、通常の干渉判定プログラムに搭載されている干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]だけでは対応しきれない場合がある。このため、既存の分光干渉データベースで想定されていない分光干渉について別途取得されたデータ(好ましくは当該分光干渉についての事前調査に基づくデータベース)を用い、干渉候補元素の影響度を考慮して算出される干渉強度値(算出強度値)を取得する(S53)。このようにして得られた算出強度値がデフォルト強度[Pdft]よりも小さいか否かが判断され(S531)、算出強度値がデフォルト強度[Pdft]よりも大きい場合(S531のNo)は、当該算出強度値を干渉候補元素のピーク強度として採用し(S532)、算出強度値がデフォルト強度[Pdft]よりも小さい場合(S531のYes)は、当該デフォルト強度[Pdft]を干渉候補元素のピーク強度として採用する(S533)。
【0056】
1-6.影響度算出工程(S6)
影響度算出工程(図1のS6)では、前記n個の原子分光分析データから第1の分光干渉判定工程(S3)によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データ(つまり、n1個の原子分光分析データ)のうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、当該判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する。
【0057】
影響度[Pe]は、具体的には、{(干渉候補元素の濃度×当該干渉候補元素のピーク強度)/(判定対象元素の濃度×当該判定対象元素の対象波長でのピーク強度)}により算出することができる。この算出式において、干渉候補元素のピーク強度としては、上記の干渉候補元素のピーク強度決定工程(S5)によって決定された強度を用いることが好ましい。
【0058】
1-7.第2の分光干渉判定工程(S7)
第2の分光干渉判定工程(図1のS7)では、影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、測定波長(b)での原子分光分析データを、判定対象元素の測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する。
【0059】
第2の分光干渉判定工程(S7)では、具体的には、上記の影響度算出工程(S6)で算出した影響度[Pe]が所定範囲内であるか否かが判断され、影響度[Pe]が所定範囲内である場合(S7のYes)は、当該測定波長でのデータは除外され(S71)、そうでない場合(S7のNo)は、干渉判定を終了する。n1個の原子分光分析データから当該データが除外され(S71)た後、残存データ数n2がゼロであるか否かが判断され(S72)、残存データ数n2がゼロである場合(つまり、データが残存しない場合(S7のYes))は、再測定が決定され(S8)、そうでない場合(S72のNo)は干渉判定を終了する。
【0060】
2.分光干渉判定システム
上記「1.分光干渉判定方法」に記載の分光干渉判定方法は、システム、又は、当該システムの内容をコンピュータにより実行させるプログラムにより実現することができる。従って、本発明は、上記本発明の分光干渉判定方法に対応する分光干渉判定システムも提供する。
【0061】
本発明の分光干渉判定システムは、以下の構成を含む。
判定対象元素を含む測定試料についてn(n≧2の整数)種類の異なる測定波長で測定したn個の原子分光分析データを取得する、データ取得部、
前記n個の原子分光分析データのうち一の測定波長(a)での原子分光分析データにおける前記判定対象元素の測定波形Wmと、前記判定対象元素の標準波形Wsとの乖離度合を示す乖離スコア[Ps]を算出する、乖離スコア算出部、及び
前記乖離スコア[Ps]が所定範囲内でない場合に、前記測定波長(a)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(a)における分光干渉度合が許容外として除外する、第1の分光干渉判定部。
【0062】
本発明の好ましい分光干渉判定システムは、さらに、以下の構成を含む。
前記n個の原子分光分析データから前記第1の分光干渉判定部によって除外されなかった他の測定波長での原子分光分析データのうち、一の測定波長(b)での原子分光分析データにおいて、前記判定対象元素のピーク波長である対象波長に対して設定される干渉候補元素が、前記判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出する、影響度算出部、及び
前記影響度[Pe]が所定範囲内に該当する場合に、前記測定波長(b)での原子分光分析データを、前記判定対象元素の前記測定波長(b)における分光干渉度合が許容外として除外する、第2の分光干渉判定部。
【0063】
本発明の分光干渉判定システムにおいて、上記データ取得部は、
判定対象元素を含む測定試料についてN(N≧3の整数)種類の異なる測定波長で測定したN個の原子分光分析データを読み込む、データ読み込み部と、
前記N個の原子分光分析データから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択する、内標準チェック部と、
前記内標準チェック部で選択されたデータから、前記判定対象元素の測定濃度が外れ値に該当しないデータを選択する、濃度外れ値判定部と、
前記内標準チェック部又は前記濃度外れ値判定部で選択されたデータが、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいることを判定する、検出限界判定部と、
前記検出限界判定部を経た、前記判定対象元素の測定濃度が検出下限濃度以上のデータを半数以上含んでいるデータから、前記判定対象元素の測定濃度が検量線範囲以内であるデータを選択する検量線判定部と、
前記検量線判定部で選択されたデータから、前記判定対象元素の検出強度がブランク強度と有意差が認められるデータを選択することで、前記n個の原子分光分析データを取得する、有効強度判定部とを含むことができる。
【0064】
本発明の分光干渉判定システムは、前記干渉候補元素のピーク強度を決定する、干渉候補元素のピーク強度決定部を含むことができる。
また、前記ピーク強度決定部は、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが不一致である場合に、
前記対象波長と前記干渉候補元素のピーク波長との距離が長いほど大きく設定される補正量を用い、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]に対し、前記補正量に応じて小さくなるように補正をかけることで前記干渉候補元素のピーク強度を算出する、第1補正工程部を含むことができる。
さらに、前記ピーク強度決定部は、
前記判定対象元素のピークと前記干渉候補元素のピークとが一致する場合に、
前記干渉候補元素のピーク強度を、算出強度値と、前記干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]とのうち、いずれか大きいほうの値として得る、第2補正工程部を含むことができる。
【0065】
本発明の分光干渉判定システムは、前記判定対象元素の前記対象波長を、該当する複数の波長から所定の優先順位[Pо]で選択する、対象波長選択部を含むことができる。
【0066】
上記各構成は、分光干渉判定システムが有する制御部により制御される。上記各構成はコンピュータに搭載されることができる。N個の原子分光分析データ又はn個の原子分光分析データを読み込むデータ読み込み部は、コンピュータの記録部(HDD等)であってもよい。この場合、HDDに当該データが保存される。一方で、データ読み込み部はHDD以外であってもよく、例えばネットワークに接続されたクラウド内に保存された前記データを読み込む機能を有する構成をデータ読み込み部としてもよい。なお、データ読み込み部は、当該データを測定するための原子分光分析測定装置に接続されることができる。データ読み込み部以外の上記各構成が発揮する機能は、公知のコンピュータに搭載された演算機構に担わせてもよい。
【0067】
さらに、本発明の分光干渉判定システムで用いられる、乖離スコア[Ps]について設定された閾値(乖離スコア[Ps]についての所定範囲)、影響度[Pe]について設定された閾値(影響度[Pe]についての所定範囲)、干渉検知幅[Piw]、干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]、及び優先順位[Pо]等の各解析パラメータは、HDD内及び/又はクラウド上に、データベースとして予め用意しておくことができる。
【実施例0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
[1]標準試料液及び被測定試料溶液の調製
実施例において、検量線を作成するための標準試料液及び被測定試料溶液の調製等は、公知のICP発光分光分析方法の手順、具体的にはJIS K0116:2014「発光分光分析通則」に記載された手順に従った。その他、特に記載しない手順についても、上記JIS規格に準拠した。
【0070】
(標準試料液の調製)
濃度既知の化学分析用標準液(1g/L)を塩酸酸性溶液(2.3NのHCl)にて希釈して調製した、金属濃度が5.00mg/L又は20.00mg/Lの溶液と、金属濃度0.00mg/Lの塩酸酸性溶液(2.3NのHCl)とからなる、3つの標準試料液を準備した。また、金属を含む標準試料液は、金属として複数元素を含むように調製されたものであって、事前にプロファイル測定を行うことによって、被測定試料溶液の測定波長において元素同士のスペクトルの重なりがない、つまり、分光干渉の影響がないことを確認したものである。
【0071】
標準試料液には、サンプルの粘性、表面張力、密度などの物理的性質によりサンプルのプラズマへの導入効率が変化する、いわゆる「物理干渉」の影響を補正するため、公知の「内部標準法」を用いた補正に基づき、所定濃度の内部標準元素を添加した。実施例では、すべての標準試料液に内部標準元素が所定の濃度となるように添加した。
【0072】
(被測定試料溶液の調製)
次に、濃度既知の化学分析用標準液(1g/L)を組み合わせ、塩酸酸性溶液(2.3NのHCl)にて希釈することで、表1記載の組成の被測定試料溶液(以下において、単に「試料」とも記載する。)を調製した。標準試料液と同様、「内部標準法」を用いた補正のため、すべての被測定試料溶液に内部標準元素が所定の濃度となるように添加した。
【0073】
【表1】
【0074】
ICP発光分光分析測定装置(Agilent Technologies製 ICP-OES 5800)を用いて、調製した標準試料液を測定し、検量線を作成した。次いで、標準試料液と同様に被測定試料溶液を測定し、検量線に照合して得たスペクトル波形を取得した。
【0075】
[2]干渉判定方法
試料1~4に含まれる測定対象元素の濃度出力のために行った干渉判定を含む手順を以下に記載する。
【0076】
[試料1]
(データ取得工程S1)
(原子分光分析データ読み込み工程S11)
判定対象元素Auの濃度の測定において、ソフトウェア(Agilent ICP Expert system)を用い、表2に示す191.896nm、197.742nm、208.207nm、242.794nm、及び267.594nmの異なる5種類(N=5)の測定波長の測定濃度(見かけ濃度)データを読み込んだ。
【0077】
(内標準チェック工程S12)
読み込んだデータから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択した。この結果、5種類(N1=5)すべてのデータを選択し、次の判定に進んだ。
【0078】
(濃度外れ値判定工程S13)
各波長の濃度から、平均濃度(0.997mg/L)及び標準偏差(0.0230)を算出し、前述の式1に導入して統計量Gを算出した。表3に記載したSmimov-Grubbs検定における有意水準0.025の臨界値を基準とし、統計量Gが表3記載の臨界値を超える場合、その波長の濃度を外れ値として除外判定した。具体的には、臨界値1.72を超える測定波長208.207nmを外れ値として除外判定し、残りの4個(N2=4)の測定波長を採用判定し、次の判定に進んだ。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
(検出限界判定工程S14)
選択されたデータに、検出下限濃度0.05mg/L以上のデータ数が半数以上存在するか否か、判定を行った。試料1では、4個中4個のデータ(つまり半数以上)において検出下限濃度0.05mg/L以上であることから、次の判定に進んだ。
【0082】
(検量線判定工程S15)
0.00mg/L、5.00mg/L、20.00mg/Lの標準試料液を用いていることから、測定波長における測定濃度(見かけ濃度)が検量線範囲内すなわち0~20.00mg/Lの範囲にあるか、判定を行った。試料1では、4個中4個のデータが検量線範囲内であったことから、4個のデータ(N3=4)すべてを採用判定とし、次の判定に進んだ。
【0083】
(有効強度判定工程S16)
Auの検出強度について、ブランク強度との有意差の有無を判定した。その結果、4個のデータ(n=4)すべてについて有意差ありと判定し、次の判定に進んだ。
【0084】
(乖離スコア算出工程S2)
前処理を経た4個のデータ(n=4)について、測定波形Wmと標準波形Wsの平均二乗誤差を算出し、その負の常用対数を乖離スコア[Ps]とした。前述の式2に導入して算出して得られた乖離スコアを表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
(第1の分光干渉判定工程S3)
測定波長における測定波形Wmと、判定対象元素の標準波形Wsとの乖離スコア[Ps]が、閾値として設定した2.50超でないか否か、判定を行った。試料1では、4個中4個のデータで乖離スコア2.50超であったことから、4個(n1=4)のデータすべてを採用判定とし、次の判定に進んだ。念のため、ICP発光分光分析測定装置にて得られたピークを測定者が目視で確認したが、共存元素による分光干渉は目視では確認できなかった。
【0087】
(対象波長選択工程S4)
表5に記載したデフォルト順位に基づき、波長を選択した。試料1では、選択された4個(n1=4)のデータから、順位が最も高いAuの242.794nmを対象波長として選択した。
【0088】
【表5】
【0089】
(干渉候補元素の選択)
試料1において、干渉候補元素の選択は、Auの対象波長242.794nmから低波長側及び高波長側の両方に0.020nm以内(つまり、(242.794-0.020)nm以上(242.794+0.020)以下)の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲内における他の元素の有無に基づいて行った。試料1では、判定対象元素であるAu以外に、Ptが1mg/L、Pdが1mg/L含まれているところ、既存の分光干渉データベースを用いてPtおよびPdが対象波長の干渉検知幅の波長範囲内に含まれるかの判定を行った。その結果、含まれないとの判定を得た。従って、Auの対象波長242.79nmに対して選択される干渉候補元素はない(干渉候補元素による干渉がない)と判定した。
【0090】
試料1についての干渉判定を終了し、対象波長である242.794nmの測定濃度0.989mg/LをAu濃度として出力した。
【0091】
[試料2]
(データ取得工程S1)
(原子分光分析データ読み込み工程S11)
試料1と同様にして、判定対象元素Auについて、表6に示すとおりの、191.896nm、197.742nm、208.207nm、242.794nm、及び267.594nmの異なる5種類(N=5)の測定波長の測定濃度(見かけ濃度)データを読み込んだ。
【0092】
(内標準チェック工程S12)
読み込んだデータから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択した。この結果、5種類(N1=5)すべてのデータを選択し、次の判定に進んだ。
【0093】
(濃度外れ値判定工程S13)
各波長の濃度から、平均濃度(1.016mg/L)及び標準偏差(0.0492)を算出し、前述の式1に導入して統計量Gを算出した。表3に記載したSmimov-Grubbs検定における有意水準0.025の臨界値を基準とし、統計量Gが表3記載の臨界値を超える場合、その波長の濃度を外れ値として除外するものとした。具体的には、臨界値1.72を超える測定波長は存在しなったため(除外対象なし)、5個(N2=5)すべての測定波長を採用判定し、次の判定に進んだ。
【0094】
【表6】
【0095】
(検出限界判定工程S14)
選択されたデータに、検出下限濃度0.05mg/L以上のデータ数が半数以上存在するか否か、判定を行った。試料2では、5個中5個のデータ(つまり半数以上)において検出下限濃度0.05mg/L以上であることから、次の判定に進んだ。
【0096】
(検量線判定工程S15)
0.00mg/L、5.00mg/L、20.00mg/Lの標準試料液を用いていることから、測定波長における測定濃度(見かけ濃度)が検量線範囲内すなわち0~20.00mg/Lの範囲にあるか、判定を行った。試料2では、5個中5個のデータが検量線範囲内であったことから、5個のデータ(N3=5)すべてを採用判定とし、次の判定に進んだ。
【0097】
(有効強度判定工程S16)
Auの検出強度について、ブランク強度との有意差の有無を判定した。その結果、5個のデータ(n=5)すべてについて有意差ありと判定し、次の判定に進んだ。
【0098】
(乖離スコア算出工程S2)
前処理を経た5個のデータ(n=5)について測定波形Wmと標準波形Wsの平均二乗誤差を算出し、その負の常用対数を乖離スコア[Ps]とした。前述の式2に導入して算出して得られた乖離スコアを表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
(第1の分光干渉判定工程S3)
測定波長における測定波形Wmと、判定対象元素の標準波形Wsとの乖離スコア[Ps]が、閾値として設定した2.50超でないか、判定を行った。試料2では、乖離スコア2.50超でなかった測定波長191.896nmのデータを除外判定し、残りの4個(n1=4)のデータを採用判定し、次の判定に進んだ。
【0101】
(対象波長選択工程S4)
表5に記載したデフォルト順位に基づき、波長を選択した。試料2では、選択された4個(n1=4)のデータから、順位が最も高いAuの242.794nmを対象波長として選択した。
【0102】
(干渉候補元素のピーク強度決定工程S5)
試料2において、干渉候補元素の選択は、Auの対象波長242.794nmから低波長側及び高波長側の両方に0.020nm以内(つまり、(242.794-0.020)nm以上(242.794+0.020)以下)の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲内における他の元素の有無に基づいて行った。試料2では、判定対象元素であるAu以外に、Ptが1mg/L、Pdが1mg/L、Mnが10mg/L、Niが10mg/L、Feが10mg/L含まれているところ、干渉候補元素のピーク波長を既存の分光干渉データベースを用いてPt、Pd、Mn、NiおよびFeが対象波長の干渉検知幅の波長範囲内に含まれるかの判定を行ったところ、Mnが干渉候補元素として含まれるとの判定を得た。既存の分光干渉データベースを用いて干渉候補元素Mnのピーク強度を決定した。
【0103】
(影響度算出工程S6)
干渉候補元素が、当該判定対象元素のピーク強度に与える影響度[Pe]を算出した。算出式:{(干渉候補元素の濃度×当該干渉候補元素のピーク強度)/(判定対象元素の濃度×当該判定対象元素の対象波長でのピーク強度)}を用いて算出すると、
[Pe] = 0.081/1.087 = 0.074
の値を得た。影響度[Pe]が0.02以上のものを干渉ありと判定するため、242.79nmの分析値は分析干渉度合が許容外として除外した。
【0104】
残存データ数が3個(n2=3)あるので、当該対象波長についての干渉判定を終了した。
【0105】
(次の対象波長での処理)
表5に記載したデフォルト順位に基づき、順位2位のAuの267.594nmを次の対象波長として選択した。
【0106】
対象波長242.794nmの場合と同様の方法で、次の対象波長267.594nmについて、上記「(干渉候補元素のピーク強度決定工程S5)」に供した。その結果、Auの対象波長267.594nmに対して選択される干渉候補元素はない(干渉候補元素による干渉がない)と判定した。
【0107】
試料2についての干渉判定を終了し、対象波長である267.594nmの測定濃度0.979mg/LをAu濃度として出力した。
【0108】
[試料3]
(データ取得工程S1)
(原子分光分析データ読み込み工程S11)
試料1、2と同様にして、判定対象元素Auについて、表8に示すとおりの、191.896nm、197.742nm、208.207nm、242.794nm、及び267.594nmの異なる5種類(N=5)の測定波長の測定濃度(見かけ濃度)データを読み込んだ。
【0109】
(内標準チェック工程S12)
読み込んだデータから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択した。この結果、5種類(N1=5)すべてのデータを選択し、次の判定に進んだ。
【0110】
(濃度外れ値判定工程S13)
各波長の濃度から、平均濃度(0.997mg/L)及び標準偏差(0.0230)を算出し、前述の式1に導入して統計量Gを算出した。表3に記載したSmimov-Grubbs検定における有意水準0.025の臨界値を基準とし、統計量Gが表3記載の臨界値を超える場合、その波長の濃度を外れ値として除外判定した。具体的には、臨界値1.72を超える測定波長208.207nmを外れ値として除外判定し、残りの4個(N2=4)の測定波長を採用判定し、次の判定に進んだ。
【0111】
【表8】
【0112】
(検出限界判定工程S14)
選択されたデータに、検出下限濃度0.05mg/L以上のデータ数が半数以上存在するか否か、判定を行った。試料3では、4個中4個のデータ(つまり半数以上)においてが検出下限濃度0.05mg/L以上であることから、次の判定に進んだ。
【0113】
(検量線判定工程S15)
0.00mg/L、5.00mg/L、20.00mg/Lの標準試料液を用いていることから、測定波長における測定濃度(見かけ濃度)が検量線範囲内すなわち0~20.00mg/Lの範囲にあるか、判定を行った。試料3では、4個中4個のデータが検量線範囲内であったことから、4個のデータ(N3=4)すべてを採用判定とし、次の判定に進んだ。
【0114】
(有効強度判定工程S16)
Auの検出強度について、ブランク強度との有意差の有無を判定した。その結果、4個のデータ(n=4)すべてについて有意差ありと判定し、次の判定に進んだ。
【0115】
(乖離スコア算出工程S2)
前処理を経た4個のデータ(n=4)について、測定波形Wmと標準波形Wsの平均二乗誤差を算出し、その負の常用対数を乖離スコア[Ps]とした。前述の式2に導入して算出して得られた乖離スコアを表4に示す。
【0116】
【表9】
【0117】
(第1の分光干渉判定工程S3)
測定波長における測定波形Wmと、判定対象元素の標準波形Wsとの乖離スコア[Ps]が、閾値として設定した2.50超でないか、判定を行った。試料3では、4個中2個が乖離スコア2.50超であったことから、2個(n1=2)のデータを採用判定とし、次の判定に進んだ。念のため、ICP発光分光分析測定装置にて得られたピークを測定者が目視で確認したが、共存元素による分光干渉は目視では確認できなかった。
【0118】
(対象波長選択工程S4)
表5に記載したデフォルト順位に基づき、波長を選択した。試料3では、選択された2個(n1=2)のデータから、順位が最も高いAuの208.207nmを対象波長として選択した。
【0119】
(干渉候補元素のピーク強度決定工程S5)
試料3において、干渉候補元素の選択は、Auの対象波長208.207nmから低波長側及び高波長側の両方に0.020nm以内(208.207-0.020)nm以上(208.207+0.020)以下)の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲内における他の元素の有無に基づいて行った。試料3では、判定対象元素であるAu以外に、Ptが1mg/L、Pdが10,000mg/L含まれているところ、干渉候補元素のピーク波長を既存の分光干渉データベースを用いてPtおよびPdが対象波長の干渉検知幅の波長範囲内に含まれるかの判定を行った。その結果、含まれないとの判定を得た。従って、Auの対象波長208.207nmに対して選択される干渉候補元素はない(干渉候補元素による干渉がない)と判定した。
【0120】
試料3についての干渉判定を終了し、対象波長である208.207nmの測定濃度1.032mg/LをAu濃度として出力した。
【0121】
[試料4]
(データ取得工程S1)
(原子分光分析データ読み込み工程S11)
判定対象元素Ptの濃度の測定において、試料1と同様の方法にて、表10に示す203.646nm、214.424nm、217.468nm、224.552nm、265.945nm、及び299.796nmの異なる6種類(N=6)の測定波長の測定濃度(見かけ濃度)データを読み込んだ。
【0122】
(内標準チェック工程S12)
読み込んだデータから、内標準補正比が所定の有効範囲内に収まっているデータを選択した。この結果、6種類(N1=6)すべてのデータを選択し、次の判定に進んだ。
【0123】
(濃度外れ値判定工程S13)
各波長の濃度から、平均濃度(529.85mg/L)及び標準偏差(1150.58)を算出し、前述の式1に導入して統計量Gを算出した。表3に記載したSmimov-Grubbs検定における有意水準0.025の臨界値を基準とし、統計量Gが表10記載の臨界値を超える場合、その波長の濃度を外れ値として除外判定した。具体的には、臨界値1.72を超える測定波長217.468nmを外れ値として除外判定し、残りの5個(N2=5)の測定波長を採用判定し、次の判定に進んだ。
【0124】
【表10】
【0125】
(検出限界判定工程S14)
選択されたデータに、検出下限濃度0.05mg/L以上のデータ数が半数以上存在するか否か、判定を行った。試料4では、5個中5個のデータ(つまり半数以上)において検出下限濃度0.05mg/L以上であることから、次の判定に進んだ。
【0126】
(検量線判定工程S15)
0.00mg/L、5.00mg/L、20.00mg/Lの標準試料液を用いていることから、測定波長における測定濃度(見かけ濃度)が検量線範囲内、すなわち0~20.00mg/Lの範囲にあるか、判定を行った。試料4は、5個中5個のデータが検量線範囲内であったことから、5個のデータ(N3=5)すべてを採用判定とし、次の判定に進んだ。
【0127】
(有効強度判定工程S16)
Ptの検出強度について、ブランク強度との有意差の有無を判定した。その結果、5個のデータ(n=5)すべてについて有意差ありと判定し、次の判定に進んだ。
【0128】
(乖離スコア算出工程S2)
前処理を経た5個のデータ(n=5)について、測定波形Wmと標準波形Wsの平均二乗誤差を算出し、その負の常用対数を乖離スコア[Ps]とした。前述の式2に導入して算出して得られた乖離スコアを表11に示す。
【0129】
【表11】
【0130】
(第1の分光干渉判定工程S3)
測定波長における測定波形Wmと、判定対象元素の標準波形Wsとの乖離スコア[Ps]が、閾値として設定した2.50超でないか、判定を行った。試料4では、4個中2個のデータで乖離スコア2.50超であったことから、2個(n1=2)のデータを採用判定とし、次の判定に進んだ。念のため、ICP発光分光分析測定装置にて得られたピークを測定者が目視で確認したが、共存元素による分光干渉は目視では確認できなかった。
【0131】
(対象波長選択工程S4)
表5に記載したデフォルト順位に基づき、波長を選択した。試料4では、選択された2個(n1=2)のデータから、順位が最も高いPtの214.424nmを対象波長として選択した。
【0132】
(干渉候補元素のピーク強度決定工程S5)
試料4において、干渉候補元素の選択は、Ptの対象波長214.424nmから低波長側及び高波長側の両方に0.020nm以内(つまり、(214.424-0.020)nm以上(214.424+0.020)以下)の干渉検知幅[Piw]に相当する波長範囲内における他の元素の有無に基づいて行った。試料4では、Ptの対象波長214.424nmに対して選択される干渉候補元素はない(干渉候補元素による干渉がない)と判定した。
【0133】
試料4についての干渉判定を終了し、対象波長である214.424nmの測定濃度10.171mg/LをPt濃度として出力した。
【0134】
<実施例2>
本実施例では、特に記載する事項以外の事項については、上記実施例1の方法に準じた。本実施例では、実施例1で調製した試料2について別の実施形態に係る判定を行った。参考のため、表12下段に記載した組成の被測定試料溶液(参考試料)を測定した。
【0135】
【表12】
【0136】
(第2補正工程S53)
判定対象元素のピーク波長の近傍に干渉候補元素の波長がある場合、試料2のように、判定対象元素のピークと干渉候補元素のピークとが一致することで、乖離スコアを用いた第1の分光干渉判定工程S3では干渉が除外されないケースがある。具体的には、Auの検出波長「242.794nm」の近傍にMnの検出波長「242.772nm」が存在し、Ptの検出波長「217.468nm」の近傍にNiの検出波長「217.467nm」が存在するケースが該当する。実際に参考試料を測定すると、AuおよびPtが含まれていないにもかかわらず、AuおよびPtのピーク出現箇所にピークが確認された。
【0137】
そこで、干渉候補元素のピーク強度決定の決定にあたり、干渉候補元素のデフォルト強度[Pdft]から強度補正を行った。具体的には、干渉候補元素の「影響度」を、干渉元素の単位濃度あたりの測定濃度値と定義してそれぞれ算出し、影響度の値と対象波長の強度値との積である最適強度を算出強度値として算出し、最適強度値(算出強度値)がデフォルト強度値[Pdft]よりも大きい場合は、最適強度値(算出強度値)を補正強度として採用した。より具体的には、表14に記載の通り、干渉候補元素のピーク強度として用いる補正強度として、Au(242.794nm)の干渉候補元素としてのMnについては125.3、Pt(217.468nm)の干渉候補元素としてのNiについては1932.8、Pt(299.796nm)の干渉候補元素としてのMoについては126.4を採用した。実施例1の試料2の判定においては、Au濃度の解析においては既存の分光干渉データベースから採用した干渉候補元素Mnのピーク強度を用いたが、Pt濃度の解析においてはこのように補正された干渉候補元素Moのピーク強度を影響度算出工程S6で用いることで、第2の分光干渉判定工程S7でより精度高い判定ができた。なお、ここで得た算出強度値を既存のデータベースに追加する、又は当該算出強度値で既存のデータベースの数値を書き換えることで、既存のデータベースの更新を行うことができ、このように更新されたデータベースを用いることでさらに精度高い判定もできる。
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
(第1補正工程S52)
一方、判定対象元素のピークと干渉候補元素のピークとが不一致となる程度に、干渉候補元素の波長が判定対象元素のピーク波長から離れている(例えば、試料2における判定対象元素Pdと干渉候補元素Niとの関係)場合は、干渉候補元素のピークが判定対象元素の測定濃度に影響を及ぼす度合いは、干渉候補元素のピークが対象波長から近い位置にあるほど大きくなる。対象波長からの距離に応じた補正量をデフォルト強度[Pdft]に反映させ、補正強度を算出した。具体的には、デフォルト強度[Pdft]を、Pdの対象波長(432.122nm)からの距離(pm)で割った値を、干渉候補元素のピーク強度の補正強度として算出した(表15)。このように補正された干渉候補元素のピーク強度を影響度算出工程S6で用いることで、第2の分光干渉判定工程S7でより精度高い判定ができる。
【0141】
【表15】
【0142】
<実施例3>
本実施例では、表16に示す実試料を用い、図1図3のフローチャートに従う自動解析で、それぞれの実試料に含まれる60元素(Au、Ag、Pd、Rh、Pt、Cr、Cu、Sn、Hg、Pb、Ru、Ti、Ba、Cd、Ce、Co、Er、Fe、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Re、Sm、Te、Zr、In、Y、Al、及びZnを含む)全てについて分光干渉判定を行った。各工程の詳細は、実施例1及び2と同様である。なお、乖離スコア[Ps]の閾値は2.5(つまり、乖離スコア[Ps]2.5超でないものを分光干渉有と判定する)、干渉検知幅[Piw]は±0.020nm、検出下限濃度は0.05mg/Lに設定した。
【0143】
上記自動解析による全元素の判定結果を、干渉判定に熟練した人の目視による解析結果と比較した。判定結果において、分光干渉がある元素を除外せず、且つ、自動解析で算出した濃度と実濃度との誤差が±5%以上であったものを「誤判定」と評価した。結果を表16に示す。
【表16】
【0144】
表16に示される通り、極めて低い誤判定率で分光干渉判定が可能であった。これらの実試料が、判定対象元素と干渉候補元素との濃度差が大きい(つまり、判定対象元素及び干渉候補元素のうちいずれか一方の濃度が、他方の濃度の8倍重量以上、10倍重量以上、20倍重量以上、30倍重量以上、40倍重量以上、50倍重量以上、60倍重量以上、70倍重量以上、80倍重量以上、90倍重量以上、又は100倍重量以上である)金属元素組成を有しており、既存の分光干渉データベースでは判定できない分光干渉を多く含んでいたにも関わらず、極めて低い誤判定率で分光干渉判定が可能であったことから、本発明の分光干渉判定方法により、分析者の熟練度に依存することなく自動判定が可能となることが示された。
【符号の説明】
【0145】
S1 データ取得工程
S12 内標準チェック工程
S13 外れ値判定工程
S14 検出限界判定工程
S15 検量線判定工程
S16 有効強度判定工程
S2 乖離スコア算出工程
S3 第1の分光干渉判定工程
S4 対象波長選択工程
S5 干渉候補元素のピーク強度決定工程
S52 第1補正工程
S53 第2補正工程
S6 影響度算出工程
S7 第2の分光干渉判定工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6