IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特開2024-146378カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジ
<>
  • 特開-カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジ 図1
  • 特開-カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジ 図2
  • 特開-カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146378
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/46 20060101AFI20241004BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D61/46 500
B01D69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059236
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 晴彦
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA13
4D006GA17
4D006HA47
4D006HA91
4D006JA03A
4D006JA03C
4D006JA08Z
4D006MA03
4D006MA13
4D006MA14
4D006MC45X
4D006MC73
4D006MC74X
4D006MC75
4D006NA03
4D006NA64
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】使用時の膜の変形、及び水漏れが抑制された、カチオン交換能が良好なカチオン交換積層体、及び、カチオン交換積層体を用いた電気透析用イオン交換カートリッジを提供する。
【解決手段】カチオン交換膜と、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布を含む支持体と、の積層体を含み、前記積層体は、前記カチオン交換膜と前記支持体との積層体からなるイオン交換部、及び、前記イオン交換部の周縁に、前記カチオン交換膜と前記支持体との接着部を有し、前記積層体の平面視における全面積に対する前記接着部の面積が占める割合が2%以上30%未満であるカチオン交換積層体、及び、電気透析用イオン交換カートリッジ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン交換膜と、
熱可塑性樹脂繊維からなる不織布を含む支持体と、の積層体を含み、
前記積層体は、前記カチオン交換膜と前記支持体との積層体からなるイオン交換部、及び、
前記イオン交換部の周縁に、前記カチオン交換膜と前記支持体との接着部を有し、
前記積層体の平面視における全面積に対する前記接着部の面積が占める割合が2%以上30%未満である、カチオン交換積層体。
【請求項2】
前記接着部におけるカチオン交換膜と支持体との平均接着強度が、2N/4.5mm~20N/4.5mmである、請求項1に記載のカチオン交換積層体。
【請求項3】
前記接着部が、カチオン交換膜と支持体とが接着剤を介して積層してなる接着部であるか、又は、カチオン交換膜と支持体との熱融着部である、請求項1に記載のカチオン交換積層体。
【請求項4】
前記カチオン交換膜の厚さが、0.01μm~5.0μmである、請求項1に記載のカチオン交換積層体。
【請求項5】
前記カチオン交換膜が、陰イオン構造基(a2)を有し、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し構造単位(A)と、
前記陰イオン構造基(a2)を有さず、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位(B)と、を含み、
前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計を100モル%としたとき、前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計に対する、前記陰イオン構造基(a2)の含有率が5モル%~90モル%である重合体(P)を、前記カチオン交換膜の全質量に対し、10質量%以上含有する、請求項1に記載のカチオン交換積層体。
【請求項6】
前記重合体(P)が、下記式(1)で表される構造集団(I)、及び、下記式(2)で表される構造集団(2)を含む芳香族ポリエーテル樹脂である、請求項5に記載のカチオン交換積層体。
【化1】


[式(1)及び式(2)において、
、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、又は、CH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10の少なくとも1つはCH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCH2m+1が2つ以上存在する場合には、それぞれのCH2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、プロトン酸基又はプロトン酸塩を表し、X、X、X、X、及びXの少なくとも1つはプロトン酸基又はプロトン酸塩を表す。
、A、A、A、A、及びAは、それぞれ独立して、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、又は、-CO-を表す。
i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のカチオン交換積層体と、支持体とが交互に配置された、電気透析用イオン交換カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カチオン交換積層体、及び電気透析用イオン交換カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、イオン交換にはイオン交換樹脂が用いられるが、経時によりイオン交換能が低下するために、経時安定性の観点から、液を透過させるだけのイオン交換膜が注目され、用いられている。
【0003】
特許文献1は、アニオン伝導性ポリマー膜とカチオン伝導性ポリマー膜とを含む自立膜であって、低膜抵抗性に優れたイオン交換膜を開示しており、例えば、多孔質基材と積層して用いられることが記載されている。多孔質基材として、不織布が用いられ、イオン交換膜と不織布とを一体化して用いられることがある。
また、イオン交換膜としては、ポリ塩化ビニル不織布に含浸して重合させたスルホン酸ナトリウムスチレン-ジビニルベンゼン共重合体を含むイオン交換膜が市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-123648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者による検討の結果、市販のイオン交換膜、或いは、特許文献1に記載の不織布と一体化されたイオン交換膜では、補強用の不織布の種類によっては、膜の変形が生じることがあり、また、多孔質基材とイオン交換膜との積層体から水漏れが生じることが判明した。水漏れが生じるとカチオン交換膜を通過せずに、処理液が通過してしまい、イオン交換能が期待通りの性能を発現せず、改善の余地があることが明らかとなった。
【0006】
本開示の課題は、使用時の膜の変形、及び水漏れが抑制された、カチオン交換能が良好なカチオン交換積層体、及び、カチオン交換積層体を用いた電気透析用イオン交換カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0008】
<1> カチオン交換膜と、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布を含む支持体と、の積層体を含み、前記積層体は、前記カチオン交換膜と前記支持体との積層体からなるイオン交換部、及び、前記イオン交換部の周縁に、前記カチオン交換膜と前記支持体とが接着する接着部を有し、前記積層体の平面視における全面積に対する前記接着部の面積が占める割合が2%以上30%未満である、カチオン交換積層体。
【0009】
<2> 前記接着部におけるカチオン交換膜と支持体との平均接着強度が、2N/4.5mm~20N/4.5mmである、<1>に記載のカチオン交換積層体。
<3> 前記接着部が、カチオン交換膜と支持体とが接着剤を介して積層してなる接着部であるか、又は、カチオン交換膜と支持体との熱融着部である、<1>又は<2>に記載のカチオン交換積層体。
<4> 前記カチオン交換膜の厚さが、0.01μm~5.0μmである、<1>~<3>のいずれか1つに記載のカチオン交換積層体。
【0010】
<5> 前記カチオン交換膜が、陰イオン構造基(a2)を有し、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し構造単位(A)と、前記陰イオン構造基(a2)を有さず、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位(B)と、を含み、前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計を100モル%としたとき、前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計に対する、前記陰イオン構造基(a2)の含有率が5モル%~90モル%である重合体(P)を、前記カチオン交換膜の全質量に対し、10質量%以上含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のカチオン交換積層体。
<6> 前記重合体(P)が、下記式(1)で表される構造集団(I)、及び、下記式(2)で表される構造集団(2)を含む芳香族ポリエーテル樹脂である、<5>に記載のカチオン交換積層体。
【0011】
【化1】

【0012】
[式(1)及び式(2)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、又は、CH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10の少なくとも1つはCH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCH2m+1が2つ以上存在する場合には、それぞれのCH2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、プロトン酸基又はプロトン酸塩を表し、X、X、X、X、及びXの少なくとも1つはプロトン酸基又はプロトン酸塩を表す。A、A、A、A、A、及びAは、それぞれ独立して、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、又は、-CO-を表す。i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
【0013】
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載のカチオン交換積層体と、支持体とが交互に配置された、電気透析用イオン交換カートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、使用時の膜の変形、及び水漏れが抑制された、カチオン交換能が良好なカチオン交換積層体、及び、カチオン交換積層体を用いた電気透析用イオン交換カートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、平面視で矩形のカチオン交換積層体の一例を示す平面図であり、図1(B)は、平面視で円形のカチオン交換積層体の一例を示す平面図である。
図2図2は、本開示のカチオン交換積層体を組み込んだイオン交換カートリッジの一例を示す概略図である。
図3図3は、図2に示すイオン交換カートリッジに組み込まれた本開示のカチオン交換積層体の一例を示す概略図、及び、その拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示について、好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義である。本開示において含有成分量を示す「%」は、特に断らない限り質量基準である。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0017】
<<カチオン交換積層体>>
本開示のカチオン交換積層体〔以下、単に「本開示の積層体」とも称する〕は、カチオン交換膜と、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布を含む支持体と、の積層体を含み、前記積層体は、前記カチオン交換膜と前記支持体との積層体からなるイオン交換部、及び、前記イオン交換部の周縁に、前記カチオン交換膜と前記支持体とが接着する接着部を有し、前記積層体の平面視における全面積に対する前記接着部の面積が占める割合が2%以上30%未満である。
以下、図面を参照して、本開示のカチオン交換積層体の一実施形態について説明する。
【0018】
図1(A)は、平面視で矩形のカチオン交換積層体の一例を示す平面図である。図1(A)では、カチオン交換積層体10は、平面視で矩形のカチオン交換積層体であり、図示されないカチオン交換膜と不織布との積層体12を含む。積層体12の中央部は、カチオン交換膜と不織布とが互いに接着されていないイオン交換部14であり、イオン交換部14の周縁部に接着部18が形成されている。図1(A)では、接着部18の領域を斜線で示している。
積層体12の平面視における全面積に対する前記斜線で示された接着部18の面積は、積層体12の全面積に対し、接着部18が占める割合が2%以上30%未満である。
なお、図1(A)に示すように、接着部18は、イオン交換部14の周縁を囲む位置に存在すればよく、必ずしも、積層体12の端部に存在しなくてもよい。
【0019】
図1(B)は、平面視で円形のカチオン交換積層体の一例を示す平面図である。図1(B)に示す円形のカチオン交換積層体20は、平面視における円形のイオン交換部14の円周方向の周縁部に接着部18を有する。図1(B)に示す態様では、接着部18は、積層体20の端部に位置する。
【0020】
本開示のカチオン交換積層体の平面視における全面積に対する前記接着部の面積(図1(A)及び図1(B)における斜線の領域)が占める割合は、2%以上30%未満であり、5%以上25%以下であることが好ましく、10%以上20%以下であることがより好ましい。
接着部の面積が上記範囲であることで、カチオン交換膜と支持体との接着強度が良好となり、積層体におけるカチオン交換に寄与する領域の面積が十分に確保され、積層体の端部からの水漏れが効果的に抑制される。
【0021】
接着部の面積測定、及び、接着部の面積割合の算出は、積層体を平面に配置し、接着部の幅、及び、長さを定規で測定する。測定した幅、及び長さから、接着部の接着面積(A)を測定する。積層体が円形の場合には、円の直径、接着部の内径及び外径を測定し、面積を算出する。
上記面積は、公知の画像解析装置を用いて、接着部と非接着部との濃度差により測定することもできる。
また、積層体の全体面積を、同様に、定規で測定して全体面積(B)を算出する。
積層体の平面視における全体面積に対する前記接着部の面積(%)は、下記(式1)にて算出する。サンプル3個を測定し、平均値を算出して接着部の面積割合とする。
〔接着部の接着面積(A)/全体面積(B)〕×100(%)・・(式1)
【0022】
本開示の作用機構は明確ではないが、本開示のカチオン交換積層体は、自立膜であるカチオン交換膜と支持体としての不織布とによる積層体を含み、前記積層体は、前記カチオン交換膜と前記支持体との積層体からなるイオン交換部、及び、前記イオン交換部の周縁に、前記カチオン交換膜と前記支持体とが接着する接着部を有することで、イオン交換膜として、カチオン交換膜を単独で用いる場合に比較して、カチオン交換積層体全体の強度がより向上し、流体の通過に起因する変形が抑制される。さらに、接着部の面積がイオン交換膜の積層体の平面視における全面積に対し、2%以上30%未満であることで、接着部により水漏れが効果的に抑制さる。また、非接着部であるイオン交換部では、カチオン交換膜と不織布との界面において、一定の濃度界面が形成され、カチオン交換膜単体よりも、さらに高いイオン交換能を発現すると考えられる。このため、本開示のカチオン交換積層体は、カチオン交換能が良好となると考えられる。
【0023】
前記接着部におけるカチオン交換膜と支持体との平均接着強度は、2N/4.5mm~20N/4.5mmであることが好ましい。
平均接着強度は、積層体の耐久性と、イオン交換能とがより良好であるという観点から、2N/4.5mm~20N/4.5mmであることが好ましく、5N/4.5mm~20N/4.5mmであることがより好ましく、10N/4.5mm~15N/4.5mmであることがさらに好ましい。
【0024】
平均接着強度は、以下の方法にて、資料となる積層体のサンプルを3個準備し、剥離強度を測定し、測定結果の算術平均を平均接着強度とする。
積層体の不織布から、カチオン交換膜を剥離する際の180°剥離強度を以下の条件で測定する。測定は各資料を3点測定し、平均値を測定値とする。
〔測定条件〕
測定装置:TOYOSEIKI製 ストログラフE-S型装置
測定速度:50mm/min
測定レンジ:2.5N
試料形状:幅15mm、長さ約6cm
【0025】
積層体におけるカチオン交換膜と不織布との接着部の形成方法には特に制限はなく、公知の接着方法を適用することができる。
前記接着部は、カチオン交換膜と支持体とが接着剤を介して積層してなる接着部であってもよく、又は、カチオン交換膜と支持体との熱融着部であってもよい。
【0026】
〔接着剤〕
接着部が接着剤を介して行われる場合、接着剤としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ホットメルト系接着剤等が挙げられ、接着強度の観点からは、エポキシ系接着剤、及び、アクリル系接着剤が好ましく、アクリル系接着剤がより好ましい。
【0027】
〔熱融着〕
カチオン交換膜と支持体とを熱融着して接着部を形成する場合、加熱温度は、カチオン交換膜及び不織布の材質を考慮して選択される。
熱融着は、公知のヒートシーラー等を用いて行うことができ、一般的には、加熱温度は、60℃~250℃とすることができる。加熱の際に、カチオン交換膜と不織布とを加圧密着させてもよい。
【0028】
<カチオン交換膜>
本開示のカチオン交換積層体におけるカチオン交換膜は、カチオン交換能を有していれば、特に制限なく用いることができる。
カチオン交換膜は、自立膜であることが好ましい。
カチオン交換膜は、耐久性の観点から、厚さが、0.01μm~5.0μmであることが好ましい。
カチオン交換膜の厚さは、0.01μm~10.0μmとすることができ、0.01μm~5.0μmであることが好ましく、0.1μm~3.0μmであることがより好ましい。
【0029】
カチオン交換膜の厚さは、日本分光社製分光光度計(エリプソメトリ)を用いて測定することができる。
具体的には、屈折率nの膜に光がある角度(θ)で入射すると,膜の表面からの反射光Aと裏面からの反射光Bが干渉して,波打った干渉スペクトルが生じる。ある波長範囲(λ~λ)内における干渉スペクトルのピーク(山又は谷)の数(Δm)を数えることで、下記数式(1)から厚さ(d)を算出することができる。
【0030】
【数1】
【0031】
本開示に係るカチオン交換膜は、陰イオン構造基(a2)を有し、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し構造単位(A)と、前記陰イオン構造基(a2)を有さず、主鎖を構成する末端が周期表の16族原子を含む基である繰り返し構造単位(B)と、を含み、前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計を100モル%としたとき、前記構造単位(A)と前記構造単位(B)との合計に対する、前記陰イオン構造基(a2)の含有率が5モル%~90モル%である重合体(P)を、前記カチオン交換膜の全質量に対し、10質量%以上含有することが好ましい。
【0032】
より具体的には、前記重合体(P)が、下記式(1)で表される構造集団(I)、及び、下記式(2)で表される構造集団(2)を含む芳香族ポリエーテル樹脂であることが好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
上記式(1)及び式(2)において、R~R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、又は、CH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、R~R10の少なくとも1つはCH2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、R~R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCH2m+1が2つ以上存在する場合には、それぞれのCH2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
~Xは、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF、プロトン酸基又はプロトン酸塩であり、X~Xの少なくとも1つはプロトン酸基又はプロトン酸塩である。
~Aは、それぞれ独立して、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、又は、-CO-を表し、i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。
【0035】
カチオン交換膜は、カチオン構造に係る極性基であるプロトン酸基を有することが好ましい。プロトン酸基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、アルキルスルホン酸基、アルキルカルボン酸基、アルキルホスホン酸基等のプロトン酸基が挙げられ、これらの中でもスルホン酸基が好ましい。
本開示においてプロトン酸塩とは、プロトン酸基の水素原子が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの第1族および第2族元素、アンモニウムイオンなどで置き換えられた塩化合物を指す。これらのなかでも、プロトン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、また、これらの混合物であってもよい。
重合体(P)におけるプロトン酸基又はプロトン酸塩の含有量としては、カチオン交換能の観点から、重合体(P)に含まれる全構造単位に対し、プロトン酸基又はプロトン酸塩を有する構造単位の含有量は、8モル%~70モル%であることが好ましく、10モル%~50モル%であることが好ましく、25モル%~30モル%であることがさらに好ましい。
【0036】
上記式(1)で表される構造集団(1)及び式(2)で表される構造集団(2)については、特開2021-123648号公報の段落〔0033〕~〔0054〕に詳細に記載され、ここに記載の構造集団を有するプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂のうち、カチオン交換膜として機能するものは、本開示の積層体におけるカチオン交換膜として好適に用いられる。
【0037】
前記重合体は、環状構造を含む剛直な主鎖構造を有し、所定量のプロトン酸基を含むことで、強度とカチオン交換膜とのいずれもが良好なカチオン交換膜として機能する。
【0038】
例えば、プロトン酸基を有する上記式(1)で表される構造集団(1)は、下記構造単位(1-2)又は(1-3)であってもよい。
【0039】
【化3】

【0040】
また、プロトン酸基を有しない上記式(2)で表される構造集団(2)は、下記構造単位(2-2)又は(2-3)であってもよい。
【0041】
【化4】
【0042】
本開示のカチオン交換積層体は、前記スルホン酸基を有する構造単位(1-2)又は(1-3)を、重合体(P)を構成する全構造単位100モルに対し、25モル%~30モル%含むことが好ましい。
カチオン交換膜の製造方法については、実施例にて詳述する。
【0043】
<不織布>
本開示のカチオン交換積層体の一例は、上記カチオン交換膜と不織布との積層体を含む。本開示のイオン交換膜に用いうる不織布としては、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布が好ましい。
不織布を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-α―オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレートからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、ポリエステルを含むことがより好ましい。
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0044】
〔不織布の好ましい物性〕
不織布の好ましい物性としては、目付が1g/m~50g/mの範囲であることが挙げられる。目付は、5g/m~20g/mの範囲であることがより好ましい。
また、不織布の厚みは、15μm~1000μmが好ましく、15μm~500μmがより好ましく、20μm~50μmがさらに好ましい。
【0045】
不織布の他の好ましい物性としては、イオン交換能を低下させず、積層体に必要な強度を与えるという観点から、JIS L 1096:2010 記載のA法(フラジール法)で測定される通気度が、100m/cm/s~400m/cm/sであることが好ましく、100m/cm/s~400m/cm/sであることがより好ましい。
上記通気度は、JIS L 1096:2010に記載のA法(フラジール形法)に基づき、以下のように測定される。
20cm×20cmの試験片を試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸い込みファン及び空気孔を調整し、垂直形気圧計の示す圧力を測定する。測定した圧力と空気孔の種類から試験機に附属の換算表によって試験片を通過する空気量を求める。
【0046】
上記不織布とカチオン交換膜とを積層させる方法としては、接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせてもよいし、不織布とカチオン交換膜とを重ね合わせ、周辺部を枠材で挟んで固定してもよい。本開示の積層体では、イオン交換部の周辺部に接着部を有することから、不織布とカチオン交換膜とを重ね合わせ、イオン交換部、即ち、不織布とカチオン交換膜とは接着されない状態とし、イオン交換部の周辺部に接着部を形成する態様が好ましい。
なお、不織布とカチオン交換膜とを接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせる場合、不織布の開口部がふさがれるとイオン交換能が低下することがあるため、接着剤又は粘着剤は、不織布を構成する繊維のみに塗布することが好ましい。
【0047】
カチオン交換膜と不織布とを積層した本開示の積層体は、それぞれの構成材料が実質的に独立している構成である。このため、例えば、市販のイオン交換膜の如く、多孔質基材にイオン交換樹脂を含浸させてなる構成に比較して、多孔質基材の劣化によるイオン交換樹脂の剥離が抑制され、積層体の耐久性がより良好となるという付加的な効果をも奏する。
【0048】
本開示の積層体は、例えば、適宜、適当な大きさに裁断されて、使用或いは販売に供される。
本開示の積層体は公知の用途に制限なく用いることができる。
用途としては、例えば、電気透析用膜、拡散透析用膜、逆電気透析用膜;燃料電池(例:メタノール型燃料電池)の他、固体高分子膜電池や各種2次電池の電解質膜等が挙げられる。
例えば、電気透析用膜では、本開示のカチオン交換積層体が低抵抗膜であるため、ランニングコストの低減が期待できる。また、拡散透析用膜では、カチオン交換膜が薄層であっても、耐久性が良好であり、水漏れが抑制されることから、イオン透過流束の飛躍的向上が期待でき、逆電気透析用膜では、イオン交換膜が高輸率・低膜抵抗であることから、出力性能の向上が期待でき、燃料電池用電解質膜では、同様に理由により、プロトン伝導性の飛躍的向上が期待できる。
【0049】
<<電気透析用イオン交換カートリッジ>>
本開示の積層体は、電気透析用イオン交換カートリッジに好適に用いられる。
本開示の電気透析用イオン交換カートリッジは、既述の本開示のカチオン交換積層体と、支持体とが交互に配置された、電気透析用イオン交換カートリッジである。
【0050】
図2は、本開示の電気透析用イオン交換カートリッジの概略構成図である。電気透析用イオン交換カートリッジ30は、本開示のカチオン交換積層体26と、公知のアニオン交換積層体28とを交互に6層~20層積層し、端部に一組の電極32A、32Bを設けてなる。図2において、実線は濃縮水ラインの流路を示し、破線は稀釈水ラインの流路を示す。
図3は、図2に組み込まれる本開示のカチオン交換積層体26の一例の概略図及びその拡大概略断面図である。図3に示す積層体26は、拡大概略断面図に示すように、カチオン交換膜22が2枚の不織布24に挟まれた積層構造を有し、前記積層構造の周縁部に接着部18を有する。
図3で示すカチオン交換積層体26は、周縁部に接着部18を有するため、図2に示す電気透析用イオン交換カートリッジ30に組み込まれることで、図2に実線で示す濃縮水ラインの流路を妨げず、さらに、不織布24に挟まれたカチオン交換膜22及び不織布24の空隙からの水漏れが抑制される。なお、図2では、水漏れの方向を破線の矢印で示しているが、図2に示す電気透析用イオン交換カートリッジ30は、通常、しばしば生じるカチオン交換積層体からの水漏れが抑制されているため、水漏れに起因する未処理の液の漏れが抑制され、効率のよいカチオン交換能を発揮する。
【実施例0051】
以下、本開示に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0052】
本実施例及び比較例で用いた略称の内容を示す。
【0053】
(1)溶媒
DMSO :ジメチルスルホキシド
NMP :N-メチル-2-ピロリドン
DMF :N,N-ジメチルホルムアミド

(2)芳香族ポリエーテルの構成成分
DFBP :4,4'-ジフルオロベンゾフェノン
DSDFBP:5,5'-カルボニルビス(2-フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)
TMBPF :3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン
BPA :4,4’-(2, 2-プロパンジイル)ジフェノール

本実施例において使用した水は、ミリポア社製の「MQ Academic A10システム」により精製した水を使用した。
【0054】
<膜厚の測定方法>
カチオン交換膜の膜厚は、日本分光社製分光光度計(エリプソメトリ)を用いて測定した。
具体的には、屈折率nの膜に光がある角度(θ)で入射すると,膜の表面からの反射光Aと裏面からの反射光Bが干渉して,波打った干渉スペクトルが生じる。ある波長範囲(λ~λ)内における干渉スペクトルのピーク(山または谷)の数(Δm)を数えることで、下記数式(1)から厚さ(d)を算出した。
【0055】
【数2】


測定は5か所以上行い、その平均値を膜厚として決定した。(測定箇所5か所以上の平均値)
【0056】
<接着強度の測定方法>
カチオン交換膜と不織布との積層体において、不織布から、カチオン交換膜を剥離する際の180°剥離強度を以下の条件で測定して、接着強度とした。
測定は各資料を3点測定し、平均値を測定値とする。
〔測定条件〕
測定装置:TOYOSEIKI製 ストログラフE-S型装置
測定速度:50mm/min
測定レンジ:2.5N
試料形状:幅15mm、長さ約6cm
【0057】
<接着部の面積割合の測定方法>
接着部の面積測定、及び、接着部の面積割合の算出は、積層体を平面に配置し、接着部分の幅、及び、長さを定規で測定し、測定した幅、及び長さから、接着部の接着面積(A)を算出した。
また、積層体の全体面積を、同様に、定規で測定して全体面積(B)を算出した。
積層体の平面視における全体面積に対する前記接着部の面積(%)は、下記(式1)にて算出した。サンプル3個を測定し、平均値を算出して接着部の面積割合とした。
〔接着部の接着面積(A)/全体面積(B)〕×100(%)・・(式1)
【0058】
<電気透析性能評価及び液漏れ量測定>
電気透析性能評価は、アストム株式会社製卓上電気透析装置(マイクロアシラザーS3)を用いて行った。実施例又は比較例のカチオン交換膜1枚及びアストム株式会社製ASMを1対のユニットとし、6ユニットの2室法電気透析装置で評価した。
有効膜面積 330cm、電極溶液は5質量%硝酸ナトリウム水溶液 500mL、希釈側溶液は0.5mol/%の塩化ナトリウム水溶液 500ml、濃縮側溶液は0.5mol/%の塩化ナトリウム水溶液 500mlで、25℃、平均電流1.0A、電圧10Vで電気透析を行い、電気透析の開始後60分の時点での希釈側溶液のモル濃度と濃縮側溶液のモル濃度との比(濃縮側溶液のモル濃度/希釈側溶液のモル濃度)より電気透析性能を評価した。
この数値が高いほど、電気透析性能(カチオン交換能)が高いと評価する。
一方、電気透析開始後60分の時点で外部に流出した液量を液漏れ量とし、その量を、電気透析性能の評価終了後に測定した。
【0059】
〔合成例1:樹脂1の合成〕
(1.単量体1(DSDFBP)の合成)
特開2014-533号公報の[0061]段落(合成例1)に記載の方法で、下記構造の単量体1(DSDFBP)の白色結晶を得た。収量は155.2g(0.386mol、収率70%)であった。
【0060】
【化5】
【0061】
(2.樹脂1の合成)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた5つ口反応器に、上記で得られた単量体1であるDSDFBP 40.1g(0.095mol)、DFBP62.2g(0.285mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)及び炭酸カリウム65.7g(0.475mol)を秤取した。これにDMSO783.4gとトルエン261.1gを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で12時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。
【0062】
引き続き、160℃で12時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にトルエン570gを加えて希釈した後、メタノール2400gに排出し、析出したポリマー粉を濾過、洗浄後、150℃で4時間乾燥してポリエーテルケトン粉171.6g(樹脂1)を得た。
【0063】
樹脂(1)は、前記構造単位(1)として下記(1-3)で表される構造を有している。
【0064】
【化6】


また、樹脂(1)は、前記構造単位(2)として下記(2-3)で表される構造を有している。
【0065】
【化7】
【0066】
樹脂1は、前記構造単位(1)の含有率が25モル%である。(但し、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)との合計を100モル%とする。)
【0067】
<合成例2:樹脂2の合成>
樹脂の原料及び溶媒を、DSDFBP80.2g(0.190mol)、DFBP41.5g(0.190mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)及び炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO876.4g及びトルエン292.1gとした他は樹脂1の合成例と同様にしてポリマー粉174.6g(樹脂2)を得た。
樹脂2は、前記構造単位(1)の含有率が50モル%である。(但し、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)との合計を100モル%とする。)
【0068】
<合成例3:樹脂3の合成>
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた5つ口反応器に、単量体1の合成で得られたDSDFBP40.2g(0.095mol)、DFBP62.2g(0.285mol)、BPA 86.8g(0.380mol)及び炭酸カリウム65.7g(0.475mol)を秤取した。これにDMSO756.2gとトルエン302.1gを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で12時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。
【0069】
引き続き、160℃で12時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にトルエン570gを加えて希釈した後、メタノール2400gに排出し、析出したポリマー粉を濾過、洗浄後、150℃で4時間乾燥してポリエーテルケトン粉160.6g(樹脂3)を得た。
【0070】
樹脂(3)は、前記構造単位(1)として、下記構造単位(1-2)を含む。
【0071】
【化8】

【0072】
また、前記構造単位(2)として、下記構造単位(2-2)を含む。
【0073】
【化9】
【0074】
樹脂3は、前記構造単位(1)の含有率が25モル%である。(但し、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)との合計を100モル%とする。)
【0075】
樹脂1、樹脂2及び樹脂3において、合成したポリマーの構成原料及びスルホン酸ユニット含有量を下記表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例1]
合成例1で得た樹脂1をDMF及びトルエンの混合溶媒(DMF/トルエン=50/50(重量比))に溶解させてワニスを調製し、このワニスを、離型剤層を有するPET基材(東洋紡(株)製 A4160)上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂1の膜を得た。
これをPET基材から剥離して自立膜1を得た。
【0078】
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、これらの不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、120℃で面積割合2%にて熱接着して接着部を形成し、実施例1のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0079】
[実施例2]
実施例1と同様に作製した自立膜1に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、これらの不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃で面積割合10%にて熱接着して接着部を形成し、実施例2のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0080】
[実施例3]
実施例1と同様に作製した自立膜1に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、これらの不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃で面積割合20%にて熱接着して接着部を形成し、実施例3のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0081】
[実施例4]
合成例2で得た樹脂2を、DMF及びトルエンの混合溶媒(DMF/トルエン=50/50(重量比))に溶解させてワニスを調製し、このワニスを、離型剤層を有するPET基材(東洋紡(株)製 A4160)上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂2の膜を得た。
これをPET基材から剥離して自立膜2を得た。
【0082】
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、得られた自立膜2を前記不織布で挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃で面積割合20%にて熱接着して接着部を形成し、実施例4のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0083】
[実施例5]
合成例3で得た樹脂3を、DMF及びトルエンの混合溶媒(DMF/トルエン=50/50(重量比))に溶解させてワニスを調製し、このワニスを、離型剤層を有するPET基材(東洋紡(株)製 A4160)上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂3の膜を得た。
これをPET基材から剥離して自立膜3を得た。
【0084】
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、前記不織布で前記自立膜3を挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃で面積割合20%にて熱接着して接着部を形成し、実施例5のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0085】
[実施例6]
実施例1と同様に作製した自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が330m/cm/s、厚さが380μm、材質がポリプロピレンである不織布(シンテックス(登録商標)PK-108、三井化学(株)製)を2枚準備し、前記不織布で自立膜1を挟み、これらを一体化させた後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約100℃の温度で面積割合20%にて熱接着して接着部を形成し、実施例6のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0086】
[実施例7]
実施例1と同様に作製した自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、前記不織布の上に接着剤(CAT-I300S 帝国インキ(株)製)を接着部の面積割合20%にて塗布した後、自立膜1を挟みこんで、これらを一体化させた後、オーブンにて80℃の温度で10分乾燥させて、接着部を形成し、実施例7のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0087】
[比較例1]
実施例1と同様にして自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、前記不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた。その後、熱接着せず、接着部を有しない比較例1のカチオン交換積層体を得た。
【0088】
[比較例2]
実施例1と同様にして自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が330m/cm/s、厚さが380μm、材質がポリプロピレンである不織布(シンテックス(登録商標)PK-108、三井化学(株)製)を2枚準備し、前記不織布で自立膜1を挟み、これらを一体化させた。その後、熱接着せず、接着部を有しない比較例2のカチオン交換積層体を得た。
【0089】
[比較例3]
実施例1と同様にして自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、前記不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた。その後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃の温度で面積割合60%にて熱接着して接着部を形成し、比較例3のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0090】
[比較例4]
実施例1と同様にして自立膜1を作製した。
次に、JIS L 1096:2010記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が266m/cm/s、厚さが43μm、材質がポリエステルである不織布(05TH-12(商品名)、廣瀬製紙(株)製)を2枚準備し、前記不織布で前記自立膜1を挟み、これらを一体化させた。その後、スタンドシーラー(NL-453PS-5 石崎電機製作所(株))を使用して、約120℃の温度で面積割合1%にて熱接着して接着部を形成し、比較例4のカチオン交換積層体を得た。
接着部は、矩形の自立膜の周縁部に形成した。
【0091】
得られた各実施例及び比較例のカチオン交換積層体について、既述の方法で、カチオン交換膜と不織布との接着強度、接着部の面積割合〔表には接着面積割合と記載〕、液漏れ量及びカチオン交換積層体のカチオン交換能(電気透析性能)を示す電気透析処理60分後のイオンのモル濃度比を測定した。結果を下記表2~表3に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】
【0094】
実施例1~実施例7のカチオン交換積層体は、電気透析を60分間継続した後も液漏れが認められず、且つ、モル濃度比は10を超え、実用上問題のないカチオン交換能を示すことが確認された。
一方、接着部を有しない比較例1、比較例2のカチオン交換積層体、及び、接着部の面積が狭すぎる比較例4では、液漏れが認められ、結果として、各実施例に比べ、カチオン交換能に劣っていた。また、接着部を有していても面積が広すぎる比較例3のカチオン交換積層体は、液漏れは抑制されていたが、イオン交換部の面積が相対的に低いために、カチオン交換能が各実施例に比べ、劣っていた。
【符号の説明】
【0095】
10 カチオン交換積層体
12 積層体
14 イオン交換部
18 接着部
20 カチオン交換積層体
22 カチオン交換膜
24 不織布
26 カチオン交換積層体
28 アニオン交換積層体
30 電気透析用イオン交換カートリッジ
32A、32B 電極
図1
図2
図3