(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146379
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電波送受信装置、電波送受信方法及び電波送受信プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/74 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01S13/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059238
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 雄二
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB14
5J070AC02
5J070AE09
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】通信動作とレーダ動作とを交互に行っても、レーダ信号を正しく処理すること。
【解決手段】電波送受信装置は、電波による通信を行う通信動作と、電波によるレーダデータを取得するレーダ動作と、を交互に行う送受信部と、送受信部を制御する制御部と、を備え、制御部は、通信動作の開始前のレーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から通信動作の終了後の次のレーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、第1期間を調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波による通信を行う通信動作と、前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作と、を交互に行う送受信部と、
前記送受信部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する、
電波送受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通信動作の終了時間と前記最終時間の差分を前記第2期間で除算した数値より大きく、且つ、最小の自然数を、前記自然数として選択する、
請求項1に記載の電波送受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信動作の終了後、前記開始時間を遅延させることで、前記第1期間を調整する、
請求項1に記載の電波送受信装置。
【請求項4】
送受信部で電波による通信を行う通信動作を行い、
前記送受信部で前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作を行い、
前記通信動作と前記レーダ動作とを交互に行う際、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する、
電波送受信方法。
【請求項5】
コンピューターに、
送受信部で電波による通信を行う通信動作を行う処理と、
前記送受信部で前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作を行う処理と、
前記通信動作と前記レーダ動作とを交互に行う際、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する処理と、
を実行させる、電波送受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波送受信装置、電波送受信方法及び電波送受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
UWB(Ultra-Wide Band)通信は、パルス幅の短い(周波数帯域幅の広い及び距離分解能が高い)パルス信号を、2つの通信機の間で送受信し、通信機の間でパルス信号が往復するのに要する時間から通信機の間の距離を推定することができる。この性質から、UWB通信は、ユーザーの所持しているキー端末が車両から特定の距離範囲内にあることを検出、管理することができるので、近年、リレーアタック対策として、車両のスマートキー用途に使用され始めている。スマートキーは、スマートエントリーシステムとも呼ばれ、機械的な鍵を使用することなく、車両のドアの施錠、開錠、エンジンの始動、停止等の操作を行うことができる。
【0003】
UWB通信による距離の測定は、パルス信号の往復時間を距離に換算する点で、レーダと類似している。UWB通信が可能な通信機は、自身が送信したパルス信号の一部(周囲の検出対象で反射してきた反射信号)を自身で受信すること、言い換えれば、自分自身とUWB通信を実行することで、ハードウェア的修正を伴わず、比較的簡単にレーダ化することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、UWB信号の送受信により得られる情報に基づいて、複数の機能、例えば、スマートエントリー機能(通信機能)、レーダ機能等を実現する無線装置が開示されている。特許文献1に開示の無線装置では、各種の機能を実現するため、UWB信号の送受信を時分割で行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の無線装置では、例えば、通信機能とレーダ機能とを実現するため、電波の送受信の時分割を行っている。ここで、UWB通信等の通信は、その通信プロトコルにより、その通信期間が決まる。また、レーダは、一定周期で電波の送受信を繰り返すため、その繰返し回数で、そのレーダ期間が決まる。このように、通信期間を決定する通信プロトコルとレーダ期間を決定する周期及び繰り返す回数とは、互いに独立したパラメータであるため、現実的には、通信期間とレーダ期間とが同じになることはない。
【0007】
レーダは、上述したように、一定周期で電波の送受信を繰り返し、反射してきた電波を受信したレーダ信号(レーダデータ)を一定周期で信号処理することにより、対象物の有無及び距離等を検出している。レーダ信号の信号処理を一定周期で行っている無線装置において、上述したように、電波の送受信を時分割で行うと、通信の通信期間により、レーダでの電波の送受信のタイミングとレーダ信号の信号処理のタイミングとがずれてしまう。このタイミングのずれにより、レーダ信号の信号処理、例えば、フーリエ変換処理を正しく行うことができず、対象物の有無及び距離等を正しく検出できないおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、通信動作とレーダ動作とを交互に行っても、レーダ信号を正しく処理可能な電波送受信装置、電波送受信方法及び電波送受信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電波送受信装置は、
電波による通信を行う通信動作と、前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作と、を交互に行う送受信部と、
前記送受信部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する。
【0010】
本発明に係る電波送受信方法は、
送受信部で電波による通信を行う通信動作を行い、
前記送受信部で前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作を行い、
前記通信動作と前記レーダ動作とを交互に行う際、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する。
【0011】
本発明に係る電波送受信プログラムは、
コンピューターに、
送受信部で電波による通信を行う通信動作を行う処理と、
前記送受信部で前記電波によるレーダデータを取得するレーダ動作を行う処理と、
前記通信動作と前記レーダ動作とを交互に行う際、前記通信動作の開始前の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の最終時間から前記通信動作の終了後の次の前記レーダ動作でのレーダデータ取得の開始時間までの第1期間が、前記レーダ動作でのレーダデータ取得の間隔である第2期間の自然数倍となるように、前記第1期間を調整する処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信動作とレーダ動作とを交互に行っても、レーダ信号を正しく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電波送受信装置を備える車両を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す電波送受信装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電波送受信方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】
図3に示す電波送受信方法におけるレーダ開始時間を求めるフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電波送受信方法によるレーダ動作と通信動作の交互動作の一例を説明するタイムチャートである。
【
図6】レーダ動作単独の場合のレーダデータのIデータ及びQデータを示すグラフである。
【
図7】通信動作とレーダ動作を交互に行う場合のレーダデータのIデータ及びQデータであって、本発明の実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合と、当該方法を適用しなかった場合を示すグラフである。
【
図8】
図6及び
図7に示すレーダデータを高速フーリエ変換で処理した計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[電波送受信装置]
図1は、本実施の形態に係る電波送受信装置の一例であるUWB通信機10を備える車両100を示す概略図である。
図2は、UWB通信機10の一例を示すブロック図である。
【0016】
UWB通信機10は、車両100の車内(車室内)の中央部、例えば、天井に配置される。UWB通信機10は、基本的には、車両100のスマートキー操作に使用され、ユーザーの所持しているキー端末20とUWB通信を行って、機械的な鍵を使用することなく、車両100のドアの施錠、開錠、エンジンの始動、停止等の操作を行うことができる。
【0017】
図1では、UWB通信機10は、車内全体及び車外のキー端末とUWB通信が適切に行えるよう、車内の中央部(天井)に1つ設置する例を示しているが、UWB通信機10の配置数や配置箇所は、
図1に示す例に限らず、適宜に変更可能である。
【0018】
UWB通信機10は、車両100の停止後、ユーザーの所持しているキー端末20とのUWB通信を開始し、UWB通信機10とキー端末20との間の応答時間に基づいて、キー端末20の距離の測定を継続的に実行する。そして、UWB通信機10は、UWB通信によるキー端末20との距離の測定結果により、キー端末20が車両100から所定距離以上離間したことを検出し、その離間検出に伴い、車両100のドアの施錠を実行する。
【0019】
なお、ここでは、UWB通信機10と通信する携帯端末として、キー端末20を例示して説明するが、キー端末20に代えて、UWB通信機能を有するスマートフォン等の端末でもよい。
【0020】
そして、本実施の形態では、上述したUWB通信機10を、車内の生体、例えば、子供(乳幼児)やペット等の検出対象Tを検出するためのレーダとして流用する。
【0021】
具体的には、車両100のドアの施錠後、UWB通信機10は、キー端末20とのUWB通信の通信動作とレーダ動作とを時分割で交互に行い、レーダ動作時に、車内に子供やペット等が置き去りにされていないかを検出する。なお、通信動作とレーダ動作とを交互に動作させるための開始操作については一例に過ぎず、その他の手段による施錠操作(手動による施錠、遠隔操作による施錠)等に基づいて開始してもよい。
【0022】
このように、レーダとして流用可能なUWB通信機10は、
図2に示す構成を有している。具体的には、UWB通信機10は、制御部11、送信部12、受信部13、信号処理部14、警報出力部15を少なくとも有する。
【0023】
制御部11は、図示は省略するが、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、所謂、コンピューターとして機能する。送信部12、受信部13、信号処理部14、警報出力部15は、CPUにより統括して制御される。
【0024】
制御部11は、基本的には、キー端末20との間でUWB通信を行って、スマートキー操作をするよう、送信部12及び受信部13を制御する。そして、制御部11は、上述した開始操作に伴い、通信動作とレーダ動作とを交互に行い、レーダ動作時には生体検出をするよう、送信部12及び受信部13を制御する。
【0025】
送信部12は、送信アンテナ12aを有する。送信部12は、送信アンテナ12aを介して、例えば、マイクロ波等によるパルス幅の短いUWBパルス信号を車内全体及び車外へ放射する。送信部12は、レーダ動作時において、送信アンテナ12aを介して、UWBパルス信号を車内全体及び車外へ周期的に放射する。
【0026】
受信部13は、受信アンテナ13aを有する。受信部13は、受信アンテナ13aを介して、キー端末20からのパルス信号を受信する。また、本実施の形態では、受信部13は、レーダ動作時において、受信アンテナ13aを介して、送信部12から放射されたUWBパルス信号が検出対象で反射された反射信号を周期的に受信する。受信部13は、車内に生体が存在する場合、UWB通信機10の周囲、即ち、車内に存在する生体(検出対象)から反射信号を受信することになる。
【0027】
上記の送信部12及び受信部13は、本発明における送受信部に該当する。
【0028】
信号処理部14は、レーダ動作時に、受信部13が受信した反射信号の信号処理を行って、車内に存在する生体(検出対象)を検出する。信号処理部14は、受信部13が受信した反射信号を、例えば、距離と反射信号の強度とが対になった形のCIR(Channel Impulse Response)のI、Q(In-Phase/Quadrature-Phase)データ(レーダデータ)に変換する。CIRのI、Qデータは、検出対象を検出した場合、検出対象までの距離と検出対象からの反射信号の強度とを含むデータとなる。
【0029】
上述したI、Qデータを、信号処理部14は、例えば、離散フーリエ変換処理を行うFFT(Fast Fourier Transform)で信号処理(周波数解析)を行って、生体の変動動作を示す周波数帯のデータの有無を判定する。生体の変動動作が、例えば、呼吸の場合には、周波数帯としては、0.16Hz~1.0Hzを用いる。これにより、信号処理部14は、生体の有無を判定し、生体までの距離に該当するCIR番号により、生体までの距離を検出することができる。
【0030】
本実施の形態では、車両100のドアの施錠後、UWB通信機10が通信動作とレーダ動作とを交互に行っている。そのため、例えば、キー端末20を携帯しているユーザーが車両100に接近すると、ドアの解錠を行って、通信動作とレーダ動作との交互動作を停止し、通信動作のみを行うようにする。
【0031】
このように、UWB通信機10が通信動作とレーダ動作とを交互に行っているので、キー端末20を携帯しているユーザーが車両100に接近すると、即座に、ドアの解錠を行うことができ、ユーザーの使用感を損なうことはなく、生体検出を行うことができる。
【0032】
警報出力部15は、車内に生体が存在すると判定された場合、車両100の周囲の人へ車内に生体が存在することを知らせる警報を出力する。例えば、車内に子供やペット等が置き去りにされていると判定された場合、警報出力部15は、車両100のライト(例えば、前照灯等)を用い、ライトの点滅等により、車両100の周囲の人へ置き去りを知らせる警報を出力する。また、警報出力部15は、音出力機器(例えば、クラクション、スピーカー等)を用い、音出力機器の音、音声により、車両100の周囲の人へ置き去りを知らせる警報を出力してもよい。
【0033】
[電波送受信方法]
上述したUWB通信機10における電波送受信方法について、
図3~
図5を参照して説明を行う。
図3は、本実施の形態に係る電波送受信方法の一例を説明するフローチャートである。
図4は、
図3に示す電波送受信方法におけるレーダ開始時間を求めるフローチャートである。
図5は、本実施の形態に係る電波送受信方法によるレーダ動作と通信動作の交互動作の一例を説明するタイムチャートである。
【0034】
レーダ動作と通信動作の交互動作は、例えば、上述したように、車両100のドアの施錠後に開始される。
【0035】
(ステップS11)
制御部11は、通信動作の通信開始時間tsを通信動作の通信プロトコルに従い計算する。本実施の形態の場合、UWB通信の通信プロトコルに従って、通信開始時間tsを計算する。
【0036】
(ステップS12)
制御部11は、送信部12、受信部13等を用い、レーダ動作を開始させ、レーダ動作の取得間隔t
i1(本発明における第2期間)でレーダデータを取得する。例えば、
図5に示すように、取得周期t
i1でm回(mは自然数)レーダデータを取得する。この場合、レーダ動作のレーダ動作期間t
rは、t
r=m×t
i1となる。
【0037】
(ステップS13)
制御部11は、自身が有する時計機能を用いて、通信動作の通信開始時間tsかどうかを確認し、通信開始時間tsである場合(YES)、ステップS14へ進み、通信開始時間tsでない場合(NO)、ステップS13を繰り返す。つまり、制御部11は、通信開始時間tsになるまで、ステップS13を繰り返す。
【0038】
(ステップS14)
制御部11は、レーダ動作を停止させ、通信動作開始前のレーダ動作において、最後にレーダデータを取得した時間である最終時間tpを記憶する。
【0039】
(ステップS15)
制御部11は、送信部12、受信部13等を用い、通信動作を開始させる。なお、ここでは、通信開始時間tsと最終時間tpとは同じタイミングとしているが、通信開始時間tsは、最終時間tp以降でもよい。後述する期間ti2(本発明における第1期間)の間に通信動作を開始させ、終了させることができれば、通信開始時間tsと最終時間tpは同じタイミングでなくてもよい。
【0040】
通信動作を開始させると、制御部11は、まず、受信部13を受信状態とし、キー端末20からの送信信号を待つことになり、送信信号を受信すると、所定の通信プロトコルを実施することになる。
【0041】
(ステップS16)
制御部11は、通信動作を停止させ、次の通信動作の通信開始時間tsを通信動作の通信プロトコルに従い計算する。
【0042】
(ステップS17)
制御部11は、最終時間t
pから次のレーダ動作でのレーダデータ取得のレーダ開始時間t
nまでの期間t
i2が、取得間隔t
i1のn(nは自然数)倍となるように調整する。つまり、
図5に示すように、t
i2=n×t
i1となるように、期間t
i2を調整する。期間t
i2及び自然数nについては、
図4を用いて後述する。
【0043】
(ステップS18)
制御部11は、自身が有する時計機能を用いて、レーダ動作のレーダ開始時間tnかどうかを確認し、レーダ開始時間tn である場合(YES)、ステップS19へ進み、レーダ開始時間tnでない場合(NO)、ステップS18を繰り返す。つまり、制御部11は、レーダ開始時間tnになるまで、ステップS18を繰り返す。
【0044】
(ステップS19)
制御部11は、終了操作があったかどうかを確認し、終了操作があった場合(YES)、一連の手順を終了し、終了操作がなかった場合(NO)、ステップS12へ戻る。制御部11は、車両100の施錠後、基本的には、上述したステップS11~S19を繰り返すが、例えば、UWB通信機10の停止スイッチ等の終了操作があった場合、上述したステップS11~S19の処理を終了する。
【0045】
ここで、期間t
i2及び自然数nについて、
図4を参照して説明する。
図4に示すフローチャートは、例えば、ステップS17のサブルーチンとして実行される。また、ここでは、通信開始時間t
sと最終時間t
pは同じタイミングとする。
【0046】
(ステップS21)
制御部11は、通信動作を停止させた終了時間tcを取得する。
【0047】
(ステップS22)
制御部11は、下記の式(1)を満たす自然数nを求める。後述する遅延時間tdを最小にする場合、下記の式(1)を満たす自然数nうちで最小のnを求める。最小のnを用いることにより、後述する遅延時間tdを小さくすることができ、効率的に、通信動作とレーダ動作の切り替えを行うことができる。
【0048】
n>(tc-tp)/ti1 ・・・ (1)
【0049】
(ステップS23)
制御部11は、レーダ開始時間tnを下記の式(2)から求める。レーダ開始時間tnは、終了時間tc以降の時間となる。
【0050】
tn=tp+n×ti1 ・・・ (2)
【0051】
(ステップS24)
制御部11は、遅延時間tdを下記の式(3)から求める。
【0052】
td=tn-tc ・・・ (3)
【0053】
このように、遅延時間tdを求め、終了時間tcから遅延時間tdが経過すると、レーダ動作を開始(再開)する。終了時間tcからの遅延時間tdにより、期間ti2が取得間隔ti1のn倍となるように調整することができる。通信開始時間tsと最終時間tpとのタイミングが同じではなく、通信開始時間tsが最終時間tp以降となっても、終了時間tcからの遅延時間tdにより、期間ti2が取得間隔ti1のn倍となるように調整することができる。
【0054】
以上のようにして、通信動作を行う期間ti2を、遅延時間tdを含めて、取得間隔ti1のn倍となるように調整する。そのため、次のレーダ動作でのレーダデータ取得時に、レーダデータ取得のタイミングとレーダデータの信号処理のタイミングとがずれてしまうことがなくなる。その結果、レーダデータの信号処理、例えば、フーリエ変換処理を正しく行うことができ、対象物の有無及び距離等を正しく検出することができる。
【0055】
ここで、
図6は、レーダ動作単独の場合のレーダデータのIデータ及びQデータを示すグラフである。また、
図7は、通信動作とレーダ動作を交互に行う場合のレーダデータのIデータ及びQデータであって、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合と、当該方法を適用しなかった場合を示すグラフである。
【0056】
図7において、実線(aligned data)が本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合であり、破線(not-aligned data)が本実施の形態に係る電波送受信方法を適用しなかった場合である。なお、
図7において、通信動作時のI、Qデータの信号振幅は0としている。
【0057】
図7に示すように、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合(実線参照)と、当該電波送受信方法を適用しなかった場合(破線参照)と、を比較すると、後者は、時間の経過に伴って、レーダデータ(信号振幅)の測定周期がずれていっている。
【0058】
図8は、
図6及び
図7に示すレーダデータを高速フーリエ変換で処理した計算結果を示すグラフである。
【0059】
図8において、実線(ideal)がレーダ動作単独の場合のレーダデータの計算結果である。長い破線(aligned sample)が本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合のレーダデータの計算結果である。短い破線(not-aligned sample)が本実施の形態に係る電波送受信方法を適用しなかった場合のレーダデータの計算結果である。
【0060】
図8からわかるように、レーダ動作単独の場合のレーダデータの計算結果(実線)と、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合のレーダデータの計算結果(長い破線)とは、ピーク周波数が一致又は略一致している。これは、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用した場合が、レーダ動作単独の場合におけるレーダデータの信号処理のタイミングと同じタイミングでレーダデータの取得ができているからである。
【0061】
一方、レーダ動作単独の場合のレーダデータの計算結果(実線)と、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用しなかった場合のレーダデータの計算結果(短い破線)とは、ピーク周波数にずれが見られる。これは、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用しなかた場合が、レーダ動作単独の場合におけるレーダデータの信号処理のタイミングとずれたタイミングでレーダデータの取得をしているからである。
【0062】
このように、本実施の形態に係る電波送受信方法を適用して、レーダデータを取得することにより、通信動作とレーダ動作とを交互に行っても、レーダ信号を正しく処理することができる。これにより、検出対象、例えば、車内に置き去りの乳幼児等を正しく検出することができる。また、検出対象として、車両の乗員のジェスチャを検出する場合には、ジェスチャを正しく検出することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車両の通信機を流用する生体検出に有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 UWB通信機
11 制御部
12 送信部
13 受信部
14 信号処理部
15 警報出力部
20 キー端末
100 車両