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特開2024-146383加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法
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  • 特開-加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146383
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059246
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】白方 陽菜子
(72)【発明者】
【氏名】網野 可菜
(72)【発明者】
【氏名】青木 敬太
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK74A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA13B
4F100CB00C
4F100EH66B
4F100EJ05E
4F100GB08
4F100GB32
4F100GB48
4F100GB81
4F100GB90
4F100JA05A
4F100JD09D
4F100JK08
4F100JN01D
4F100JN21B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】真空成形等で加飾する際にも色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらを発生することなく、かつ、外観にも優れた加飾フィルムを提供する。
【解決手段】基材を加飾するための加飾フィルムであって、前記加飾フィルムは、基材フィルム層1、光輝層2及び接着層4を有し、前記光輝層2は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、前記光輝層2における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内であり、前記基材に前記加飾フィルムを適用する際の温度における前記加飾フィルムの伸び率が30%以上であることを特徴とする加飾フィルムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を加飾するための加飾フィルムであって、
前記加飾フィルムは、(A)基材フィルム層、(B)光輝層及び(C)接着層を有し、
前記(B)光輝層は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、前記(B)光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内であり、
前記基材に前記加飾フィルムを適用する際の温度における前記加飾フィルムの伸び率が30%以上であることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記(A)基材フィルム層のガラス転移点が-20℃~140℃の範囲内であり、
前記(A)基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、前記(B)光輝層のガラス転移点(℃)をTg(B)とするとき、Tg(A)とTg(B)が、下記関係式(1):
-20℃ ≦ Tg(A)-Tg(B) ≦ 50℃ ・・・ 式(1)
を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記加飾フィルムが前記(B)光輝層の上に(D)クリヤー層をさらに有し、
前記(D)クリヤー層は、紫外線透過率が30%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記(A)基材フィルム層と前記(B)光輝層の間に(E)プライマー層をさらに有し、
前記(E)プライマー層のゲル分率が80%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記光輝性顔料が蒸着アルミニウム顔料および/または樹脂被覆金属顔料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
基材を加飾するための加飾フィルムであって、(A)基材フィルム層、(B)光輝層及び(C)接着層を有する加飾フィルムの製造方法であって、
(A)基材フィルム層に(B)光輝層及び(C)接着層を設ける工程を含み、
前記(B)光輝層は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、前記(B)光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内であり、
前記基材に前記加飾フィルムを適用する際の温度における前記加飾フィルムの伸び率が30%以上であることを特徴とする加飾フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法に関し、特には、真空成形等で加飾する際にも色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらを発生することなく、かつ、外観にも優れた加飾フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動車部品、電化製品、小物、インテリア用品等においては高級感を付与できる観点からパール、メタリック等の光輝性意匠が多く利用されている。光輝性意匠を塗料で付与する際には、光輝層の他、プライマー層、クリヤー層等の複数の塗膜層を含めた多層膜の形成のために塗装工程も多段階となる場合が多く、大規模な塗装場所の確保や、煩雑な工程管理、各焼付工程におけるCO排出量の増加といった課題がある。このため、近年では塗料に替わり、加飾フィルムを利用して基材に光輝性意匠を付与する方法が種々に検討されている。
【0003】
特開2004-299220号公報(特許文献1)は、ガードフィルム層(A)と、クリヤー塗膜層(B)と、アルミニウムフレークを含む光輝材(C3)と、配向制御材(C4)が含まれる着色塗膜層(C)とを有するメタリック調積層フィルムの発明を記載し、配向制御材(C4)を添加することにより、高SV値及び高IV値を発現させることができるように、アルミニウムフレークの配向を制御することによって、成型品の加飾に際して優れた加工性を有し、かつ、加飾された成型品に対して、従来の塗装法と同等以上の意匠性を付与し得るメタリック調積層フィルムを提供することができることを記載している。
【0004】
特開2015-66855号公報(特許文献2)は、基材層と、金属光沢層とを有し、金属光沢層が、アクリル系樹脂を50質量%以上含むバインダー樹脂と、樹脂被覆金属顔料とを含む樹脂組成物により形成されてなる、加飾シートの発明を記載し、金属光沢層に用いる顔料として、金属顔料が樹脂により予め被覆された樹脂被覆金属顔料を用いることにより、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を用いた場合にも、金属光沢層に金属顔料を均一性高く分散でき、加飾シートに優れた金属光沢及び密着性を付与できることを記載している。
【0005】
特開2021-160222号公報(特許文献3)は、フィルム基材の表面に伸縮性光輝性顔料を含む塗料を塗布して形成された反射層を有する加飾フィルムの発明を記載し、この伸縮性光輝性顔料は、加飾フィルムが、加飾フィルムの表面が拡がる方向に沿って伸長されると、加飾フィルムと共にその方向に伸長することから、加飾フィルムが覆う面の形状に関わらず(つまり、加飾フィルムが覆う面が曲面又は屈曲面であっても)、被覆面は一様な反射率を発揮し、それにより、加飾フィルムを例えば曲面の多い自動車のボディ等に貼り付けた場合、色むらや装飾むらの無い面が得られることを記載している。
【0006】
特開2021-133615号公報(特許文献4)は、カバー樹脂層、及び金属蒸着層を含む、装飾用蒸着シートであって、カバー樹脂層が、約50マイクロメートル以上の厚さを有し、金属蒸着層が、粒状構造を呈し、装飾用蒸着シートの20℃での破断伸び率が、約120%以上であり、かつ、装飾用蒸着シートの160℃での破断伸び率が、約350%以上である、装飾用蒸着シートの発明を記載し、これによって、高温等を要する成形法に適用したとしても、金属蒸着層又はシート全体の破断等の不具合を低減又は抑制し得ることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-299220号公報
【特許文献2】特開2015-66855号公報
【特許文献3】特開2021-160222号公報
【特許文献4】特開2021-133615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~4は、光輝層を含む加飾シートを用いて基材を加飾する方法について有用な発明を記載しているものの、鱗片状等の特定形状を有する光輝性顔料は配列制御が難しく、特に自動車用プラスチック部品等の複雑形状の基材に真空成形等で加飾する際には色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらが発生して意匠の欠陥や加飾後の基材劣化の要因となりやすいといった課題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、真空成形等で加飾する際にも色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらを発生することなく、かつ、外観にも優れた加飾フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、基材フィルム層、光輝層及び接着層を備えた基材加飾用の加飾フィルムにおいて、光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比を7.5:100~30:100の範囲内とするとともに、基材に加飾フィルムを適用する際の温度における加飾フィルムの伸び率が30%以上となるように調整することで、真空成形等で加飾する際にも色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらを発生することなく、かつ、外観にも優れた加飾フィルムを提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
従って、本発明の加飾フィルムは、基材を加飾するための加飾フィルムであって、
前記加飾フィルムは、(A)基材フィルム層、(B)光輝層及び(C)接着層を有し、
前記(B)光輝層は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、前記(B)光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内であり、
前記基材に前記加飾フィルムを適用する際の温度における前記加飾フィルムの伸び率が30%以上であることを特徴とする加飾フィルムである。
【0012】
本発明の加飾フィルムの好適例においては、前記(A)基材フィルム層のガラス転移点が-20℃~140℃の範囲内であり、
前記(A)基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、前記(B)光輝層のガラス転移点(℃)をTg(B)とするとき、Tg(A)とTg(B)が、下記関係式(1):
-20℃ ≦ Tg(A)-Tg(B) ≦ 50℃ ・・・ 式(1)
を満たす。
【0013】
本発明の加飾フィルムの他の好適例においては、前記加飾フィルムが前記(B)光輝層の上に(D)クリヤー層をさらに有し、
前記(D)クリヤー層は、紫外線透過率が30%以下である。
【0014】
本発明の加飾フィルムの他の好適例においては、前記(A)基材フィルム層と前記(B)光輝層の間に(E)プライマー層をさらに有し、
前記(E)プライマー層のゲル分率が80%以上である。
【0015】
本発明の加飾フィルムの他の好適例においては、前記光輝性顔料が蒸着アルミニウム顔料および/または樹脂被覆金属顔料を含む。
【0016】
また、本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材を加飾するための加飾フィルムであって、(A)基材フィルム層、(B)光輝層及び(C)接着層を有する加飾フィルムの製造方法であって、
(A)基材フィルム層に(B)光輝層及び(C)接着層を設ける工程を含み、
前記(B)光輝層は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、前記(B)光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内であり、
前記基材に前記加飾フィルムを適用する際の温度における前記加飾フィルムの伸び率が30%以上であることを特徴とする加飾フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空成形等で加飾する際にも色むらや下地の透け、スジ等の装飾むらを発生することなく、かつ、外観にも優れた加飾フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の加飾フィルムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法に関する。
【0020】
本発明の加飾フィルムは、基材を加飾するためのフィルムである。ここで、加飾とは、基材に意匠を施したり、基材とは異なる質感を付与したりすることを意味する。また、意匠とは、形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合である。
【0021】
本発明において、基材とは、加飾フィルムが適用される対象を意味する。基材には各種物品が含まれるが、本発明の加飾フィルムは、光輝性意匠を基材に付与できることから、本発明の加飾フィルムが適用される基材として、自動車や自動車部品、電化製品、小物、インテリア用品等が好適である。また、基材の材質も多様であり、例えば、プラスチック基材や金属基材等がある。
【0022】
本発明の加飾フィルムは、多層構造を有しており、基材フィルム層、光輝層及び接着層を含む。本明細書では、基材フィルム層を(A)基材フィルム層と称し、光輝層を(B)光輝層と称し、接着層を(C)接着層と称する場合がある。
【0023】
本発明において、基材フィルム層とは、加飾フィルムを構成する層のうち、光輝層等を支えるフィルムの層を意味する。
【0024】
基材フィルム層は、樹脂フィルムから構成されていることが好ましい。フィルムに使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ABS樹脂及びPVC樹脂が特に好ましい。樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
基材フィルム層のガラス転移点は、-20℃~140℃であることが好ましく、20℃~130℃であことがより好ましく、50℃~120℃であることが特に好ましい。基材フィルム層のガラス転移点を140℃以下とすることで、特に真空成形等で加熱して加飾シートにより複雑形状の基材を加飾する際の加飾シートの成形性が優れ、また、基材フィルム層のガラス転移点を-20℃以上、特には50℃以上とすることで、加飾フィルムの耐ブロッキング性や耐久性が良好になる。
【0026】
本明細書において、基材フィルム層のガラス転移点(Tg)は、JIS K7244-4に基づく固体粘弾性測定装置を用いて、測定周波数1Hzにて測定される損失正接(tanδ)の温度変化曲線におけるスペクトルピークである。
【0027】
具体的には、固体粘弾性測定装置(例えば、RSA-GII(TAインスツルメント社製))にて、基材フィルム層について、以下の測定条件にて各温度での損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、損失弾性率及び貯蔵弾性率から損失正接を算出し、損失正接の温度変化曲線を作成し、損失正接のスペクトルピーク値を読み取る。
<測定条件>
温度範囲:-50℃~200℃
昇温速度:5℃/min
測定長さ:20.0mm
測定幅:5.0mm
周波数:1Hz
歪み:0.05%
【0028】
基材フィルム層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0029】
基材フィルム層は、厚さが10~1000μmであることが好ましく、50~1000μmであることがさらに好ましい。基材フィルム層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、基材フィルム層の合計の厚さを指す。
【0030】
フィルムの製造に使用できる成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、圧空成形、TOM(Three dimension Overlay Method:3次元表面被覆法)成形等が挙げられる。
【0031】
本発明において、光輝層とは、加飾フィルムを構成する層のうち、基材に光輝性意匠を付与するために必要とされる層である。
【0032】
光輝層は、光輝性顔料及びバインダー樹脂を含有し、光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比が7.5:100~30:100の範囲内である。また、光輝層における光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比は、10:100~25:100の範囲内であることがより好ましい。バインダー樹脂100質量部当たりの光輝性顔料の割合が7.5質量部を下回ると、加飾フィルムを基材に適用する際の加飾フィルムの成形時に光輝性顔料の粒子間の隙間が広がり、これによって、下地の色が透けたり、色むらが起きたりする。また、バインダー樹脂100質量部当たりの光輝性顔料の割合が30質量部を超えると、バインダー樹脂に対する光輝性顔料の割合が高すぎるため、外観不良や基材フィルム層との密着性の低下につながる。
【0033】
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、インジウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、ステンレス等の金属顔料やガラスフレーク等が挙げられる。
【0034】
光輝性顔料は、フレーク状であることが好ましく、アルミニウムフレークであることがさらに好ましい。
【0035】
フレーク状の光輝性顔料は、平均粒子径が5~35μmで、平均アスペクト比が10~1000であることが好ましい。フレーク状光輝性顔料の平均粒子径は、7~25μmであることがより好ましい。フレーク状光輝性顔料の平均アスペクト比は20~1000であることがより好ましい。また、フレーク状光輝性顔料の平均厚みは、例えば、5~3000nmである。
【0036】
本明細書における光輝性顔料の粒子径とは、SEM(走査電子顕微鏡)により観察される画像における粒子平面の長軸径(外周上の2点を直線で結ぶ最大長さ)と短軸径(外周上の2点を直線で結ぶ最小長さ)の平均値である。ここで、粒子平面が円形の場合は、円の直径が粒子径となる。光輝性顔料の平均粒子径とは、光輝層中に含まれる光輝性顔料の粒子径の平均値である。また、本発明において、光輝性顔料の平均アスペクト比とは、平均粒子径(D)と平均厚み(T)との比(D/T)である。なお、本発明においては、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて光輝性顔料の粒子径及び厚みを測定し、100個以上の粒子を対象にして平均粒子径及び平均厚みを求めた。
【0037】
光輝性顔料は、蒸着アルミニウム顔料および/または樹脂被覆金属顔料を含むことが好ましい。
【0038】
蒸着アルミニウム顔料は、アルミニウムを均一に蒸着させて得られたアルミニウム薄膜を破砕・粒度調整することにより調製される顔料である。また、蒸着アルミニウム顔料は、シリカコート蒸着アルミニウム顔料であることが好ましい。シリカコート蒸着アルミニウム顔料は、シリカ被膜により表面がコーティングされた蒸着アルミニウム顔料である。シリカ被覆量は、蒸着アルミニウム顔料100gに対して0.1~25gのシリカが被覆されているのが好ましく、特に好ましくは5~20gである。
【0039】
樹脂被覆金属顔料は、樹脂により表面がコーティングされた金属顔料である。ここで、金属顔料は、フレーク状であることが好ましく、アルミニウムフレークであることがさらに好ましい。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂であることが好ましい。樹脂被覆量は、金属顔料100gに対して0.1~25gの樹脂が被覆されているのが好ましく、特に好ましくは5~20gである。
【0040】
光輝層中の光輝性顔料の量は、7.5~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。光輝性顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
バインダー樹脂としては、例えば、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。
【0042】
バインダー樹脂は、アクリル樹脂および/またはセルロース樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いることで塗膜の耐薬品性や耐候性を向上させることができる。また、バインダー樹脂としてセルロース樹脂を用いることで塗膜の乾燥性が向上し、光輝層における光輝性顔料の配向を制御しやすくなることから、色むらや装飾むらのない光輝層の形成がしやすくなる。
【0043】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを主成分とする重合体または共重合体であることが好ましい。ここで主成分とは、50モル%以上含まれる成分をいう。
【0044】
アクリル樹脂は、水酸基が少ないことが好ましく、水酸基価が40mgKOH/g未満であることが好ましい。特に1液型塗料である場合には水酸基価が5mgKOH/g以下であるアクリル樹脂を含むことがより好ましい。また、光輝層が複数のアクリル樹脂を含む場合、水酸基価が40mgKOH/g未満であるアクリル樹脂の量は、アクリル樹脂全体の90質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本明細書において、アクリル樹脂の水酸基価は、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0046】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、3,000~300,000であることが好ましく、4,000~200,000であることがさらに好ましい。
【0047】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0048】
光輝層中のアクリル樹脂の量は、5~95質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましい。アクリル樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
セルロース樹脂としては、例えば、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、硝酸酢酸セルロース等が挙げられる。セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、オキシエチルセルロース(ヒドロキシエチルセルロースとも称する)等が挙げられる。また、セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。
【0050】
また、アクリル変性セルロース誘導体、ポリエステル変性セルロース誘導体、及びポリウレタン変性セルロース誘導体も、セルロース樹脂の例として挙げられる。アクリル変性セルロース誘導体は、セルロースエーテル、セルロースエステル等のセルロース誘導体に、例えば、(メタ)アクリレート等のアクリル成分をグラフト重合させて得られる化合物である。ポリエステル変性セルロース誘導体は、セルロースエーテル、セルロースエステル等のセルロース誘導体に、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル成分(即ち、主鎖中に複数のエステル結合を有する成分)を結合させて得られる化合物である。ポリウレタン変性セルロース誘導体は、セルロースエーテル、セルロースエステル等のセルロース誘導体の水酸基に、例えば、イソシアネートプレポリマーを反応させて得られる化合物である。
【0051】
セルロース樹脂としては、ニトロセルロースが特に好ましい。ニトロセルロースは、窒素含有量が10質量%以上であることが好ましい。
【0052】
セルロース樹脂の重量平均分子量は、20,000~150,000であることが好ましく、30,000~140,000であることがさらに好ましい。また、セルロース樹脂は、重量平均分子量が20,000以上で且つ80,000未満であり、好ましくは30,000~70,000であるセルロース樹脂と、重量平均分子量が80,000以上で且つ150,000以下であり、好ましくは80,000~130,000であるセルロース樹脂とを含むことが好ましい。本明細書では、重量平均分子量が20,000以上で且つ80,000未満であるセルロース樹脂をセルロース樹脂(CE-1)とも称し、重量平均分子量が80,000以上で且つ150,000以下であるセルロース樹脂をセルロース樹脂(CE-2)とも称する場合がある。分子量の異なるセルロース樹脂(CE-1)とセルロース樹脂(CE-2)をあわせて用いることで、光輝感に優れる加飾フィルムが得られやすくなるとともに、フィルムの耐油脂汚染性が向上する。
【0053】
セルロース樹脂(CE-1)とセルロース樹脂(CE-2)の質量比は、95:5~5:95であることが好ましく、90:10~50:50であることがさらに好ましい。
【0054】
光輝層中のセルロース樹脂の量は、1~80質量%であることが好ましく、2~70質量%であることがより好ましい。セルロース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
光輝層は、その他の成分として、光輝性顔料に該当しない顔料、分散剤、酸化防止剤、沈降防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、付着性付与剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、殺虫剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、帯電防止剤、導電性付与剤等を必要に応じて適宜含んでいてもよい。
【0056】
光輝層のガラス転移点は、40℃~120℃であることが好ましい。
【0057】
本明細書において、光輝層のガラス転移点(Tg)は、JIS K7244-4に基づく固体粘弾性測定装置を用いて、測定周波数1Hzにて測定される損失正接(tanδ)の温度変化曲線におけるスペクトルピークである。
【0058】
具体的には、固体粘弾性測定装置(例えば、RSA-GII(TAインスツルメント社製))にて、光輝層について、以下の測定条件にて各温度での損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、損失弾性率及び貯蔵弾性率から損失正接を算出し、損失正接の温度変化曲線を作成し、損失正接のスペクトルピーク値を読み取る。
<測定条件>
温度範囲:-50℃~200℃
昇温速度:5℃/min
測定長さ:20.0mm
測定幅:5.0mm
周波数:1Hz
歪み:0.05%
【0059】
光輝層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0060】
光輝層は、厚さが2~40μmであることが好ましく、5~20μmであることがさらに好ましい。光輝層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、光輝層の合計の厚さを指す。
【0061】
光輝層の製造に使用できる塗装手段としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)、シャーワーコーター塗装、ディッピング塗装等が挙げられる。
【0062】
本発明の加飾フィルムにおいて、基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、光輝層のガラス転移点(℃)をTg(B)とするとき、Tg(A)とTg(B)が、下記関係式(1):
-20℃ ≦ Tg(A)-Tg(B) ≦ 50℃ ・・・ 式(1)
を満たすことが好ましい。基材フィルム層のガラス転移点(℃)と光輝層のガラス転移点(℃)が関係式(1)を満たしていないと、基材フィルム層と光輝層の間で剥離等が発生しやすくなる。
【0063】
本発明において、接着層は、接着剤から構成される層である。接着層及び接着剤は、それぞれ粘着層及び粘着剤と称される場合もある。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、これらの中でも、アクリル系接着剤が好ましい。
【0064】
接着層の厚さは、20~200μmであることが好ましい。
【0065】
接着層は、被塗物の表面に接着剤を塗布することで形成することができる。本発明の加飾フィルムはその接着層を介して基材に適用されることから、接着層は本発明の加飾フィルムの少なくとも一方の表面に位置している。
【0066】
本発明の加飾フィルムが基材フィルム層、光輝層及び接着層から構成される場合、本発明の加飾フィルムの多層構造の例としては、接着層/基材フィルム層/光輝層、基材フィルム層/光輝層/接着層等がある。本明細書において、多層構造として例えば接着層/基材フィルム層/光輝層と表現される場合、本発明の加飾フィルムは、接着層と基材フィルム層と光輝層がこの順番に配置されている多層構造を有することを意味している。
【0067】
本発明の加飾フィルムは、クリヤー層をさらに含むことができる。本明細書では、クリヤー層を(D)クリヤー層と称する場合がある。光輝層を保護する観点から、本発明の加飾フィルムにおいて、クリヤー層は、光輝層の上に位置していることが好ましく、光輝層から見て、基材フィルム層が配置されていない側に位置していることが好ましく、また、加飾フィルムの表面に位置していることが好ましい。
【0068】
本発明において、クリヤー層とは、可視光透過率が30%以上である層を意味する。クリヤー層の可視光透過率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
【0069】
本明細書において、可視光透過率は、可視領域(360nm~750nm)における全光線透過率を意味し、JIS K 7375:2008に準拠して測定することができる。
【0070】
クリヤー層は、紫外線透過率が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
本明細書において、紫外線透過率は、280nmから400nmまでの波長範囲の光の透過率を意味し、分光光度計(例えば、島津製作所社製UV-2450)を用いて測定することができる。
【0072】
クリヤー層は、通常、樹脂を含む。クリヤー層中の樹脂の量は、40~99.5質量%であることが好ましく、50~99質量%であることがより好ましい。クリヤー層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、各クリヤー層中の樹脂の量を指す。
【0073】
クリヤー層に使用できる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂等)、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
クリヤー層は、その他の成分として、顔料、分散剤、酸化防止剤、沈降防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、付着性付与剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、殺虫剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、帯電防止剤、導電性付与剤等を必要に応じて適宜含んでいてもよい。
【0075】
クリヤー層のガラス転移点は、40℃~120℃であることが好ましく、50℃~110℃であることが好ましい。ガラス転移点が40℃以上となることで耐薬品性等の塗膜の耐久性や耐ブロッキング性が向上する。また、ガラス転移点が120℃を超える場合には、真空成形等によって複雑形状の基材に加飾フィルムを適用する際の追随性等に課題を生じる場合がある。
【0076】
本明細書において、クリヤー層のガラス転移点(Tg)は、JIS K7244-4に基づく固体粘弾性測定装置を用いて、測定周波数1Hzにて測定される損失正接(tanδ)の温度変化曲線におけるスペクトルピークである。
【0077】
具体的には、固体粘弾性測定装置(例えば、RSA-GII(TAインスツルメント社製))にて、クリヤー層について、以下の測定条件にて各温度での損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、損失弾性率及び貯蔵弾性率から損失正接を算出し、損失正接の温度変化曲線を作成し、損失正接のスペクトルピーク値を読み取る。
<測定条件>
温度範囲:-50℃~200℃
昇温速度:5℃/min
測定長さ:20.0mm
測定幅:5.0mm
周波数:1Hz
歪み:0.05%
【0078】
クリヤー層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0079】
クリヤー層は、厚さが5~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがさらに好ましい。クリヤー層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、クリヤー層の合計の厚さを指す。
【0080】
クリヤー層の製造に使用できる塗装手段としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)、シャーワーコーター塗装、ディッピング塗装等が挙げられる。
【0081】
本発明の加飾フィルムにおいて、基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、クリヤー層のガラス転移点(℃)をTg(D)とするとき、Tg(A)とTg(D)が、下記関係式(2):
-20℃ ≦ Tg(A)-Tg(D) ≦ 50℃ ・・・ 式(2)
を満たすことが好ましい。基材フィルム層のガラス転移点(℃)とクリヤー層のガラス転移点(℃)が関係式(2)を満たしていないと、基材フィルム層とクリヤー層の間で剥離等が発生しやすくなる。
【0082】
本発明の加飾フィルムが基材フィルム層、光輝層、接着層及びクリヤー層から構成される場合、本発明の加飾フィルムの多層構造の例としては、接着層/基材フィルム層/光輝層/クリヤー層、接着層/光輝層/クリヤー層/基材フィルム層、クリヤー層/基材フィルム層/光輝層/接着層等がある。
【0083】
図1は、本発明の加飾フィルムの一実施形態を示す概略図である。図1に示される加飾フィルムは、基材フィルム層1と、基材フィルム層1上に配置された光輝層2と、光輝層2上に配置されたクリヤー層3とを含み、基材フィルム層1の光輝層2が配置されていない側の表面に接着層4を有している。図1の加飾フィルムは、接着層/基材フィルム層/光輝層/クリヤー層の多層構造を有する加飾フィルムである。図示しないが、基材フィルム層1と光輝層2の間に、後述するプライマー層が存在していてもよい。
【0084】
本発明の加飾フィルムは、プライマー層をさらに含むことができる。本明細書では、プライマー層を(E)プライマー層と称する場合がある。
【0085】
本発明において、プライマー層とは、基材フィルム層上に最初に設けられる層であって、光輝層、接着層又はクリヤー層に該当しない層を意味する。基材フィルム層と光輝層間の付着性を改善する観点から、本発明の加飾フィルムにおいて、プライマー層は、基材フィルム層と光輝層の間に位置していることが好ましい。
【0086】
プライマー層は、ゲル分率が80%以上であることが好ましく、82~100%であることがさらに好ましい。ゲル分率は、有機溶媒に対するプライマー層の耐性の程度を表す指標となる。ゲル分率の低いプライマー層上に光輝層を形成すると、光輝層形成用の塗料が想定以上にプライマー層に浸漬してしまい、光輝性顔料の配向が乱され、所望の光輝性意匠を付与することが困難になる場合がある。本発明の加飾フィルムの好ましい実施形態によれば、ゲル分率が80%以上であるプライマー層を用いることで、基材フィルム層と光輝層間の付着性と、所望の光輝性意匠の両立を容易に達成することができる。
【0087】
本明細書において、プライマー層のゲル分率は、完全に乾燥及び硬化した状態のプライマー層を有機溶媒中に浸漬させた際に溶出せずに残存するプライマー層の質量割合をいう。
具体的には、浸漬前のプライマー層の質量をM1とし、浸漬後のプライマー層の質量をM2とするとき、以下の式からプライマー層のゲル分率を求めることができる。
ゲル分率(%)=M2/M1×100
ここで、浸漬とは、プライマー層1gに対して100gの量のトルエンとアセトンの混合溶液(質量比1:1)中にプライマー層を還流下で5時間浸漬させることを指す。浸漬後のプライマー層の質量は、浸漬後に105℃で30分間乾燥した後のプライマー層の質量である。
【0088】
プライマー層のゲル分率は、プライマー層形成用の塗料に使用される樹脂のガラス転移点(Tg)や水酸基価及び硬化剤の官能基含有率を適宜調整すること、プライマー層形成用の塗料に硬化促進剤や反応触媒を使用することなどによって調整することができる。
例えば、プライマー層形成用の塗料に、Tgが40~120℃、好ましくは50~100℃である樹脂を用いたり、水酸基価が25~250mgKOH/g、好ましくは50~200mgKOH/gである樹脂を用いたり、硬化剤の官能基(例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基等)の含有量を塗料の固形分中に2~10質量%、好ましくは3~8質量%とすることなどによって、ゲル分率が80%以上であるプライマー層を得ることができる。
プライマー層形成用の塗料について、樹脂のガラス転移点(Tg)は、FOX式により求められるガラス転移温度を意味し、樹脂の水酸基価は、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0089】
プライマー層は、通常、樹脂を含む。プライマー層中の樹脂の量は、30~99質量%であることが好ましく、50~95質量%であることがより好ましい。プライマー層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、各プライマー層中の樹脂の量を指す。
【0090】
プライマー層に使用できる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
プライマー層は、その他の成分として、顔料、分散剤、酸化防止剤、沈降防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、付着性付与剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、殺虫剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、帯電防止剤、導電性付与剤等を必要に応じて適宜含んでいてもよい。
【0092】
プライマー層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0093】
プライマー層は、厚さが3~15μmであることが好ましい。プライマー層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、プライマー層の合計の厚さを指す。
【0094】
プライマー層の製造に使用できる塗装手段としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)、シャーワーコーター塗装、ディッピング塗装等が挙げられる。
【0095】
本発明の加飾フィルムが基材フィルム層、光輝層、接着層及びプライマー層から構成される場合、本発明の加飾フィルムの多層構造の例としては、接着層/基材フィルム層/プライマー層/光輝層、基材フィルム層/プライマー層/光輝層/接着層等がある。
【0096】
本発明の加飾フィルムが基材フィルム層、光輝層、接着層、クリヤー層及びプライマー層から構成される場合、本発明の加飾フィルムの多層構造の例としては、接着層/基材フィルム層/プライマー層/光輝層/クリヤー層、クリヤー層/基材フィルム層/プライマー層/光輝層/接着層等がある。
【0097】
本発明の加飾フィルムは、基材に適用される際の温度における伸び率が30%以上であり、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。このように本発明の加飾フィルムの伸び率を調整しつつ、上述のとおり光輝性顔料とバインダー樹脂の質量比を7.5:100~30:100の範囲内とすることで、真空成形等で基材を加飾する際にも色むらや装飾むらの発生を抑えることができる。更に、本発明の加飾フィルムの伸び率を確保したことで、加飾フィルムを基材に適用する際の加飾フィルムの成形時にワレやハガレの発生を抑えることもできる。これらのことから加飾フィルムを基材に適用した後の外観にも優れている。また、本発明の加飾フィルムは、その伸び率の上限について特に制限はないものの、例えば、基材に適用される際の温度における伸び率は400%以下である。
【0098】
本発明の加飾フィルムを基材に適用する際(より具体的には本発明の加飾フィルムを基材に貼り付ける際)の温度は、例えば80℃~120℃である。
【0099】
本発明の加飾フィルムを基材に適用する手段(より具体的には本発明の加飾フィルムを基材に貼り付ける手段)としては、特に制限されず、真空成形法、オーバーレイ真空成形法、手貼り、ブロー成形法、インサート成形法、インモールド成形法等が挙げられる。
【0100】
本明細書において、加飾フィルムの伸び率(%)は、下記測定条件下で引張試験機(例えば、AGS-X(SHIMADZU製))によりサンプルの引張試験を行った際における、降伏点でのサンプルの伸び率、または、降伏点に至る前に加飾フィルムの表面にワレ、亀裂等の欠陥部が生じる場合には加飾フィルムの表面にワレ、亀裂等の欠陥部が目視で確認されないサンプルの最大伸び率である。
<測定条件>
引張速度:5mm/min
試験温度:加飾フィルムが基材に適用される際の温度(成形温度)
サンプルサイズ:10mm×30mm(厚さは、基材に適用される加飾フィルムの厚さである。)
【0101】
加飾フィルムの伸び率は、加飾フィルムを構成する各層に含まれる樹脂の分子量やTgなどを変化させることで、調整することができる。例えば、基材に加飾フィルムを適用する際の温度における伸び率が30%に満たない場合には、樹脂の分子量を高くすることや、Tgを低くすることで伸び率を大きくすることができる。
【0102】
基材フィルム層は、基材に加飾フィルムが適用される際の温度における伸び率が30%以上であり、80%以上であることが好ましく、光輝層は、基材に加飾フィルムが適用される際の温度における伸び率が20%以上であり、80%以上であることが好ましく、クリヤー層は、基材に加飾フィルムが適用される際の温度における伸び率が20%以上であり、80%以上であることが好ましい。
【0103】
本明細書において、基材フィルム層、光輝層及びクリヤー層の伸び率(%)は、下記測定条件下で引張試験機(例えば、AGS-X(SHIMADZU製))によりサンプルの引張試験を行った際における破断時のサンプルの伸び率である。
各層のサンプルは、10mm×30mmのサイズ(厚さは、加飾フィルムを構成する層の厚さである。)のものを用意する。例えば、難被着体であるポリプロピレン(PP)基材上に光輝層等を形成させ、PP基材から剥離することで、単膜を調製できる。
<測定条件>
引張速度:5mm/min
試験温度:加飾フィルムが基材に適用される際の温度(成形温度)
【0104】
次に、本発明の加飾フィルムの製造方法について説明する。
【0105】
本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材フィルム層に光輝層及び接着層を設ける工程を含む。ここで、基材フィルム層に光輝層及び接着層を設ける順番は任意であるが、基材フィルム層上に光輝層を配置した後に接着層を設けることが好ましい。
【0106】
本発明の加飾フィルムの製造方法の一実施形態としては、基材フィルム層に塗料を塗装して光輝層を作製する工程と、基材フィルム層の光輝層が配置されていない側の表面に接着剤を塗布して接着層を作製する工程とを含む加飾フィルムの製造方法が挙げられる。
【0107】
また、本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材フィルム層に光輝層、クリヤー層及び接着層を設ける工程を含む場合もある。ここで、基材フィルム層に光輝層、クリヤー層及び接着層を設ける順番は任意であるが、基材フィルム層上に光輝層及びクリヤー層を順に配置した後に接着層を設けることが好ましい。
【0108】
この場合における本発明の加飾フィルムの製造方法の一実施形態としては、基材フィルム層に塗料を塗装して光輝層を作製する工程と、光輝層に塗料を塗装してクリヤー層を作製する工程と、基材フィルム層の光輝層が配置されていない側の表面に接着剤を塗布して接着層を作製する工程とを含む加飾フィルムの製造方法が挙げられる。
【0109】
また、本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材フィルム層に光輝層、プライマー層及び接着層を設ける工程を含む場合もある。ここで、基材フィルム層に光輝層及び接着層を設ける順番は任意であるが、基材フィルム層上にプライマー層及び光輝層を順に配置した後に接着層を設けることが好ましい。
【0110】
この場合における本発明の加飾フィルムの製造方法の一実施形態としては、基材フィルム層に塗料を塗装してプライマー層を作製する工程と、プライマー層に塗料を塗装して光輝層を作製する工程と、基材フィルム層のプライマー層が配置されていない側の表面に接着剤を塗布して接着層を作製する工程とを含む加飾フィルムの製造方法が挙げられる。
【0111】
また、本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材フィルム層に光輝層、プライマー層、クリヤー層及び接着層を設ける工程を含む場合もある。ここで、基材フィルム層に光輝層、クリヤー層及び接着層を設ける順番は任意であるが、基材フィルム層上にプライマー層、光輝層及びクリヤー層を順に配置した後に接着層を設けることが好ましい。
【0112】
この場合における本発明の加飾フィルムの製造方法の一実施形態としては、基材フィルム層に塗料を塗装してプライマー層を作製する工程と、プライマー層に塗料を塗装して光輝層を作製する工程と、光輝層に塗料を塗装してクリヤー層を作製する工程と、基材フィルム層のプライマー層が配置されていない側の表面に接着剤を塗布して接着層を作製する工程とを含む加飾フィルムの製造方法が挙げられる。
【実施例0113】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0114】
〔加飾フィルムの製造例〕
<光輝性塗料の調製>
下記記載の塗料No1に各種アルミフレークを公知の方法により分散させ、実施例1~8及び比較例1の光輝層用の塗料を調製した。また、塗料No2を用いて同様に実施例9、実施例11及び比較例2の光輝層用の塗料を調製した。さらに塗料No3を用いて同様に実施例10及び実施例15の光輝層用の塗料を調製した。塗料No4を用いて同様に実施例12の光輝層用の塗料を調製し、塗料No5を用いて同様に実施例13及び実施例14の光輝層用の塗料を調製した。
【0115】
<塗料No1>
表1に記載の光輝層のTgとなるようにセルロース樹脂A、アクリル樹脂A及びアクリル樹脂Bをセルロース樹脂A/アクリル樹脂A/アクリル樹脂B=36/28/36の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂A:製品名CAB-381-01、Tg123℃、重量平均分子量50,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂A:Tg80℃、重量平均分子量67,600、固形分43質量%、水酸基価0
・アクリル樹脂B:Tg62℃、重量平均分子量48,000、固形分45質量%、水酸基価3.7
<塗料No2>
表2に記載の光輝層のTgとなるようにセルロース樹脂B、アクリル樹脂C及びアクリル樹脂Dをセルロース樹脂B/アクリル樹脂C/アクリル樹脂D=2/49/49の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、硬化剤混合前の塗料を調製した。かかる塗料にイソシアネート硬化剤Aを当量比が1.0となるように加えて混合し、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂B:製品名CAB-321-01、Tg127℃、重量平均分子量12,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂C:Tg88℃、重量平均分子量33,000、固形分43質量%、水酸基価34、
・アクリル樹脂D:Tg33℃、重量平均分子量80,000、固形分49質量%、水酸基価0
・イソシアネート硬化剤A:製品名スミジュールN3800、固形分100質量%、NCO基含有率11.0質量%、住化コベストロウレタン(株)製
<塗料No3>
表2に記載の光輝層のTgとなるようにセルロース樹脂B、アクリル樹脂C及びアクリル樹脂Dをセルロース樹脂B/アクリル樹脂C/アクリル樹脂D=2/49/49の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、硬化剤混合前の塗料を調製した。かかる塗料にイソシアネート硬化剤Bを当量比が1.0となるように加えて混合し、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂B:製品名CAB-321-01、Tg127℃、重量平均分子量12,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂C:Tg88℃、重量平均分子量33,000、固形分43質量%、水酸基価34
・アクリル樹脂D:Tg33℃、重量平均分子量80,000、固形分49質量%、水酸基価0
・イソシアネート硬化剤B:製品名デスモジュール XP2860、固形分100質量%、NCO基含有率20.0質量%、住化コベストロウレタン(株)製
<塗料No4>
表2に記載の光輝層のTgとなるようにセルロース樹脂C及びアクリル樹脂Eをセルロース樹脂C/アクリル樹脂E=1/99の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、硬化剤混合前の塗料を調製した。かかる塗料にイソシアネート硬化剤Cを当量比が1.0となるように加えて混合し、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂C:製品名CAB551-0.2、Tg100℃、重量平均分子量70,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂E:Tg20℃、重量平均分子量35,000、固形分54質量%、水酸基価27
・イソシアネート硬化剤C:製品名スミジュールN-75、固形分75質量%、NCO基含有率22.0質量%、住化コベストロウレタン(株)製
<塗料No5>
表2に記載の光輝層のTgとなるようにセルロース樹脂A、アクリル樹脂F及びアクリル樹脂Dをセルロース樹脂A/アクリル樹脂F/アクリル樹脂D=10/55/35の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、硬化剤混合前の塗料を調製した。かかる塗料にイソシアネート硬化剤Aを当量比が1.0となるように加えて混合し、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂A:製品名CAB-381-01、Tg123℃、重量平均分子量50,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂F:Tg90℃、重量平均分子量42,000、固形分50質量%、水酸基価16
・アクリル樹脂G:Tg65℃、重量平均分子量27,000、固形分50質量%、水酸基価10
・イソシアネート硬化剤A:製品名スミジュールN3800、固形分100質量%、NCO基含有率11.0質量%、住化コベストロウレタン(株)製
【0116】
・アルミニウムフレークA:固形分70質量%、平均粒子径14.2μm、平均アスペクト比71、樹脂コートアルミ、東洋アルミ(株)製
・アルミニウムフレークB:固形分64質量%、平均粒子径9μm、平均アスペクト比60、樹脂コートアルミ、東洋アルミ(株)製
・アルミニウムフレークC:固形分70質量%、平均粒子径33μm、平均アスペクト比41、樹脂コートアルミ、東洋アルミ(株)製
【0117】
<クリヤー塗料の調製>
下記記載の塗料No6を実施例8のクリヤー層用の塗料として用いた。
【0118】
<塗料No6>
表1に記載のクリヤー層のTgとなるようにセルロース樹脂B、アクリル樹脂C及びアクリル樹脂Dをセルロース樹脂B/アクリル樹脂C/アクリル樹脂D=2/49/49の固形分質量比で混合し、公知の手法により分散させ、硬化剤混合前の塗料を調製した。かかる塗料にイソシアネート硬化剤Aを当量比が1.0となるように加えて混合し、塗料を調製した。使用した材料は、下記の通りである。
・セルロース樹脂B:製品名CAB-321-01、Tg127℃、重量平均分子量12,000、固形分100質量%、イーストマンケミカルジャパン社製
・アクリル樹脂C:Tg88℃、重量平均分子量33,000、固形分43質量%、水酸基価34、
・アクリル樹脂D:Tg33℃、重量平均分子量80,000、固形分49質量%、水酸基価0
・イソシアネート硬化剤A:製品名スミジュールN3300、固形分100質量%、NCO基含有率21.8質量%、住化コベストロウレタン(株)製
【0119】
<加飾フィルムの作製>
(A)基材フィルム層上に、乾燥したときの膜厚(以下、乾燥膜厚)が10μmの(B)光輝層が得られるようにエアスプレーを用いて上記光輝性塗料を塗布し、その後80℃にて30分間乾燥させ、(B)光輝層を形成した。ただし、実施例6では(B)光輝層の膜厚が5μmであり、実施例7では(B)光輝層の膜厚が40μmあった。
【0120】
実施例8については、(B)光輝層上に、さらに、乾燥したときの膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmの(D)クリヤー層が得られるようにエアスプレーを用いて上記クリヤー塗料を塗布し、その後80℃にて30分間乾燥させ、(D)クリヤー層を形成した。
【0121】
(B)光輝層が形成された(A)基材フィルム層ならびに(B)光輝層および(D)クリヤー層が形成された(A)基材フィルム層について、次いで、上記(A)基材フィルム層の(B)光輝層が配置されていない側の表面に接着層として日東電工製「No.5015」を貼り合わせ、加飾フィルムを作製した。
ここで、作製された加飾フィルムは、接着層/基材フィルム層/光輝層の三層構造を有する加飾フィルムおよび接着層/基材フィルム層/光輝層/クリヤー層の四層構造を有する加飾フィルムである。
【0122】
〔加飾フィルムによって加飾された成形品の製造例〕
真空成形装置(商品名NGF、布施真空製)用いて減圧し、近赤外線ランプを用いて当該加飾フィルムを加熱し、PP製成形基板に成形圧着することにより加飾物品を得た。
【0123】
得られた加飾フィルム及び加飾物品を、下記の試験方法に従って評価した。
【0124】
●ガラス転移点(Tg):
固体粘弾性測定装置(例えば、RSA-GII(TAインスツルメント社製))にて、各層について、以下の測定条件にて各温度での損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、損失弾性率及び貯蔵弾性率から損失正接を算出し、損失正接の温度変化曲線を作成し、損失正接のスペクトルピーク値をガラス転移点(Tg)とした。
<測定条件>
温度範囲:-50℃~200℃
昇温速度:5℃/min
測定長さ:20.0mm
測定幅:5.0mm
周波数:1Hz
歪み:0.05%
【0125】
●加飾フィルムの伸び率:
加飾フィルムから10mm×30mmのサンプル(厚さは、表中の加飾フィルムの厚さである)を用意し、下記の測定条件下で引張試験機(AGS-X(SHIMADZU製))によりサンプルの引張試験を行い、加飾フィルムの伸び率(%)を測定した。
<測定条件>
引張速度:5mm/min
試験温度:加飾フィルムが基材に適用される際の温度(成形温度)
【0126】
●加飾フィルムの成形性:
加飾フィルムの成形性とは、加飾フィルムを基材に適用する際の加飾フィルムの成形時に基材の表面形状に追従できる性質を意味する。
加飾フィルムの成形性を目視で下記基準にて評価した。評価が◎や〇である加飾フィルムは、表面にワレ、亀裂等の欠陥が生じておらず、外観に優れた加飾フィルムである。
(基準)
◎:長さ200mm×幅100mm×厚さ2mmの曲面のある成形基板に追従可能
○:長さ200mm×幅100mm×厚さ2mmの平板を成形基板とした際に追従可能
×:平板状の成形基板であっても基板の形状に追従することができず加飾フィルムの表面にワレ、亀裂等の欠陥が確認された
【0127】
●加飾物品の外観(目視):
加飾物品の表面全体の外観を目視で下記基準にて評価した。なお、基材には長さ200mm×幅100mm×厚さ2mmの曲面のある成形基板を用いた。
(基準)
○:加飾フィルムを成形基板に適用したことで、得られた加飾物品に高い光輝感がある。また、加飾物品に色むらや装飾むらはいずれも認められない。
△:得られた加飾物品に色むらや装飾むらはないものの、光輝感等の意匠がわずかに低下する。
×:得られた加飾物品に色むらまたは装飾むらが確認される。
【0128】
●密着性:
加飾物品の表面に対してJIS K-5400-8.5.2 碁盤目テープ法に準じた密着試験を行い、下記基準にて評価した。
(基準)
○:剥離やカケ等の異常がみられない場合
×:異常がみられた場合
【0129】
●耐薬品性
「JIS K 5600-6-1」、耐液体性(一般的方法)試験法、点滴法に準拠して、加飾物品の耐薬品性試験を行なった。
試験液としては、試験液は0.1N水酸化ナトリウム水溶液とし、50±2℃に保持した恒温槽に入れ、3時間放置した後、試験体を水洗して拭き取り、試験部の塗面状態を目視により下記の基準で評価した。また、同様に試験液として0.1N硫酸水溶液を使用し、標準状態(25±2℃、50±5%RH)で24時間放置した後、試験板を水洗して拭き取り、試験部の塗面状態を目視により下記の基準で評価した。
(基準)
◎:塗膜表面に変化なし
○:塗膜表面にわずかな変色が認められる。
×:塗膜表面に変色が認められる。
【0130】
(実施例1)
(A)基材フィルム層としてABSフィルム(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂フィルム)を用いた。
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料7.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。
上記<加飾フィルムの作製>に従って加飾フィルムを作製した。加飾フィルムの厚さは1010μmであった。
また、上記〔加飾フィルムによって加飾された成形品の製造例〕に従って加飾物品を作成した。加飾フィルムの加熱温度条件は140℃であった。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0131】
(実施例2)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
(実施例3)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料30.0質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0133】
(実施例4)
塗料No1にアルミフレークBを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0134】
(実施例5)
塗料No1にアルミフレークCを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0135】
(実施例6)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製し、当該光輝性塗料から形成される(B)光輝層の膜厚を5μmとした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
(実施例7)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製し、当該光輝性塗料から形成される(B)光輝層の膜厚を40μmとした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0137】
(実施例8)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部配合して、光輝性塗料を調製した。また、塗料No6をクリヤー層用の塗料として用い、(B)光輝層上に保護層として(D)クリヤー層を設けた。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
(比較例1)
塗料No1にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料5.0質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
表中、「Tg差(TgA-TgBまたはTgD)」の項目には、実施例1~7及び比較例1については、(A)基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、(B)光輝層のガラス転移点(℃)をTg(B)としたときのTg(A)-Tg(B)の値が示され、実施例8については、(A)基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、(D)クリヤー層のガラス転移点(℃)をTg(D)としたときのTg(A)-Tg(D)の値が示されている。
「成形温度」の項目は、加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を示し、加飾フィルムが基材に適用される際の温度を表す。
【0141】
(実施例9)
塗料No2にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0142】
(実施例10)
(A)基材フィルム層としてアクリルフィルム(三菱ケミカル製)を用いた。塗料No2にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を120℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0143】
(実施例11)
(A)基材フィルム層としてポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(オカモト製)を用いた。塗料No2にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を80℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0144】
(実施例12)
(A)基材フィルム層として熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム(大倉工業製)を用いた。塗料No4にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を80℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0145】
(実施例13)
(A)基材フィルム層としてポリカーボネートフィルム(帝人製)を用いた。塗料No5にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を150℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
(実施例14)
(A)基材フィルム層としてPVCフィルム(ロンシール製)を用いた。塗料No5にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を120℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0147】
(実施例15)
(A)基材フィルム層としてガラス転移点が114.3℃のABSフィルム(オカモト製)を用いた。塗料No3にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を120℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0148】
(比較例2)
(A)基材フィルム層としてポリカーボネートフィルム(帝人製)を用いた。塗料No2にアルミフレークAを樹脂分100質量部に対して光輝性顔料12.5質量部の量で配合して、光輝性塗料を調製した。加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を160℃とした。それ以外は実施例1と同様にして加飾物品を得た。
上記の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0149】
【表2】
【0150】
表中、「Tg差(TgA-TgB)」の項目には、(A)基材フィルム層のガラス転移点(℃)をTg(A)とし、(B)光輝層のガラス転移点(℃)をTg(B)としたときのTg(A)-Tg(B)の値が示されている。
「成形温度」の項目は、加飾物品作製時の加飾フィルムの加熱温度条件を示し、加飾フィルムが基材に適用される際の温度を表す。
図1